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2017/06
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地域に密着したインフラや事業への投資資金供給へ~地方における資本市場機能充実策その3
地域のインフラや事業に対して、その地域の投資資金(リスクマネー)が提供されることは資本市場の機能としてもいくつかの意味があります。この事は、お金の流れ方を指して地域内資金循環ということもありますが、通常は効率性や規模を求める資本市場の在り方と異なった地域貢献といった目的が大きく影響しています。
簡単に言いますと、“地域住民のお金を地域の為に”という事に帰結しますが、そのお金の流れを資本市場の機能やルールを使って行うことが重要です。

 ☆地域内資金循環のイメージ
 ☆地域におけるリスクマネー供給と証券会社の役割


 本シリーズでは、この地域内資金循環に関して、地域証券会社がどの様に関与していくことが可能かといった視点で基本的なスキームを記載しています。地域において証券関連業務を強化している地域金融機関にとっても、リスクマネーに関する地域内資金循環は同じような課題となっています。

 図に示しました様に、企業応援ファンド(地元関連上場企業対象)やIPO(新規株式公開)など、通常の資本市場機能を使っても地域内資金循環の役割を果たすことは可能ですが、これらはファンドを組成する資産運用会社やIPO審査を行う証券会社にとって高コストです。つまり、高コストを贖う為に相応のビジネス規模が必要で、数十億から百億円以上のリスク資金調達に向いています。

 一方、数億円から数十億円の地元事業や地元企業の資金調達に対しては、低コストで対応できる私募債や私募ファンドが向いており、地域証券会社にとっても地元住民への販売活動が可能な範囲とされています。

 一般的に金融商品を扱う際に、証券会社は発行会社や金融商品内容のデューデリジェンス(精査)を行ったり、投資家に情報提供を行う為の開示内容を監査法人に監査させます。これらのコストが高い為、地域内資金循環の動きも限定されています。しかし、ヘルスケアや再生可能エネルーギーなど地域への貢献が明確で、地域住民が目に触れるインフラや事業であれば、これらのデューデリジェンスや開示監査を大幅に省略して投資家にリスク判断を委ねることも可能です。

 地域における証券業務は、今までの金融商品の販売者との位置づけだけではなく、地域内資金循環のアレンジャーとして資本市場機能を利用していくことを地域証券会社及び地域金融機関に期待します。
 

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地域におけるリスクマネー供給と証券会社の役割
 証券会社の主な機能は、株式や社債などの売買機能の提供や投資信託・外国債券の販売、デリバティブ取引の取次ぎなどですが、一方では企業などへのリスクマネー供給を仲介するという役割もあります。このことは、特に成長戦略でも意識されていて、個人の資金をリスクマネーとして供給する新たな機能も求められています。それが、IPO(新規株式公開)の促進だったり、新規・成長企業に対するファイナンス機能(投資型クラウドファンディング等)やヘルスケアリート解禁であったりしていますが、個人の投資資金をリスクマネーとして仲介していくことでもあります。
 前回は、内閣府が推進する“ふるさと投資”を紹介しましたが、そのことは地域におけるリスクマネー供給を促していくことでもあり、やはりその中心となるのは証券会社若しくは証券会社的機能だと考えます。その現状の概要について以下に纏めてみました。

☆ 地域におけるリスクマネー供給と証券会社の役割
基本的には、地域の企業や事業が必要とするリスクマネーを、地域の投資家から調達することですが、具体的に証券会社が関与する場合、以下のリスクマネー供給スキームが使われます。

【地元上場企業応援ファンド】地域に本社や主要な工場がある上場企業の株式へ投資するファンド(公募ファンド)を組成して、地元証券会社などで地域住民に販売します。一時的にはこの種のファンド組成が流行りましたが、公募ファンドの組成ではある程度の投資規模が必要で、その為にファンド組成が出来る地域が限られてもいます。また、ファンドは株式を流通市場より調達しますので、間接的なリスクマネー供給支援となります。

【地元企業IPO】現状では、個人投資家にとってはもっとも分かりやすく、かつ参加しやすいリスクマネー供給スキームです。また地域金融機関などでも、地元企業IPO推進は注力するところでもありますが、実務的IPO審査機能は、大手証券にほゞ集中しており、その為投資家ニーズも主幹事となる大手証券の顧客ニーズに集中しがちで、地元投資家の投資ニーズが十分取り込めるとは言えない状況です。反対に、IPOまで達する企業は地元投資家への依存が小さくなっても良いのかも知れません。

【株主コミュニティ制度】本年6月から始まった制度で、証券会社が対象となる企業の投資家リストを管理(株主コミュニティ)し、そのリスト内での売買やファイナンスを証券会社が仲介することが可能となっています。その地域において利用者や関係者が多い未公開の企業にとって、有効な制度となることが期待されていますが、証券業協会の自主規制ルールで運用されており、情報提供や決済などのインフラ整備が待たれます。

【投資型クラウドファンディング】この制度も、本年6月から始まっていますが、取り扱うためには少額電子募集取扱業者としての登録申請が必要なので、もう少し実現まで時間がかかりそうです。但し、クラウドファンディング全般に関して社会的関心も高く、投資型の利用推進は成長戦略における新規・成長企業へのリスクマネー供給の目玉政策になっている観があります。また、ふるさと投資推進と相まって、地域金融機関や都道府県などが地元でのクラウドファンディング業務取組強化の動きを見せています。

【地元事業ファンド】地元投資家の資金を、地域における事業へのリスクマネーとして証券会社が仲介するスキームとして、最も現実的で利用される可能性が高いもとではないかと思われます。投資対象の事業は、太陽光や風力発電などの再生エネルギー施設、そしてヘルスケア施設などですが、例え数億円と規模が小さくとも私募ファンドの形で組成しやすいことと、インフラファンドやヘルスケアなどの上場リート市場が整備されたで、私募ファンドの出口(買い手)も確保しやすくなりました。

以上のスキームを、その事業・企業に合わせて提供していくことで、地域における証券会社のリスクマネー供給の役割も一層深まっていくと考えます。

投資としての“ふるさと投資”について
 “投資型”クラウドファンディングは、金融商品取引業の業務として関係法令・自主規制ルール其々5月末から施行されていますが、実際はクラウドファンディング業者として登録(各財務局に)してからとなりますので、実際の業務開始ではまだ数ヵ月かかりそうです。

 一方、“ふるさと投資”という言葉が昨年後半から使われはじめていますが、これは内閣府が進める地方創生プロジェクトの一環として、地方公共団体や地域金融機関などが、地元企業や事業の必要資金をクラウドファンディング的手法を活用して支援していこうとするものです。

 昨年10月に、内閣府地方創生推進室が中心となって、地方公共団体・地域金融機関・支援団体等の関係者が集まり、「ふるさと投資」連絡会議が設立されました。各地域における取組みを紹介したり、クラウドファンディング活用のポイントなどを纏め、また情報共有プラットフォームをつくって関係者間の情報共有活動を行っています。

 これはこれで重要な事なのですが、今後開始される投資型クラウドファンディグへの影響を考えてみました。

○地方公共団体(主に都道府県)が関与することで、クラウドファンディングを活用して資金を集める地元事業者へのコストの一部もしくは全部が補助金として支給されるケースが多く出てくると予想されます。実際に、大阪府や北海道ではこの様なクラウドファンディング活用者への業者に支払うコスト負担を補助金名目で支給した事例があり、今後、地方公共団体に政府より交付されるふるさと創生支援金などが、地方公共団体を通じてクラウドファンディングのコストとして利用される可能性があります。

○地域金融機関が関与することで、その事業の地方での重要性や経営者などの信用力評価などクラウドファンディング業者が行う審査作業の精度が増す可能性があり、より多くの投資家にアピールしていくことも可能になります。

 つまり、“ふるさと投資”を進めることで投資型クラウドファンディングが、金融商品業務(証券業務)として企業のファイナンンスの中に定着していくことが期待されます。但し、その為にも、上記の様に支援される企業側の一方にいる投資家としての利用者に対して、

◇企業や経営者の審査をしっかり行う
◇企業や事業の資金調達後の情報提供を確実に実行する

は、クラウドファンディング業者として最低限の条件です。
加えて

◇投資家側の声(SNSなどを通じて)を、事業者にしっかり伝えていく
◇株式型において、投資家側が少数株主として一方的に不利益を被らない為、仲介者としての最大権の注意をもって企業の経営を監視してく

も、金融商品取引業者(クラウドファンディングは、少額電子募集取扱業務を行う金融商品取引業者)としての責務の中で実行を求められるものと考えます。

地域における資本市場機能~地方からの成長戦略の課題
地域における資本市場機能として先ず思い浮かぶのは、地方の証券取引所です。現在は、名古屋・福岡・札幌の三ヵ所になってしまいまたが、嘗ては神戸、広島、新潟、京都があり、大阪の現物株市場は昨年7月に東証に統合されています。勿論、地方取引所は地域の企業が利用するための市場機能を提供していますが、むしろその地域の企業に対して上場する事のメリットなどを広める活動が中心になっているように感じます。

 成長戦略では、“新規・成長企業へのリスクマネー供給を増やす”が謳われ、成長力がある企業が上場しやすいよう開示負担などの軽減が行われましたので、今後地方企業のIPO(新規株式公開)も増加が予想されます。

 このIPOの実務を担うのが引受証券会社ですが、大手5社がほぼIPOの主幹事の地位を占めている現状では、その市場仲介機能を果たす証券会社も限られています。地方の成長企業への投資を、その企業をよく知る地域の投資家が支えるというのが理想ですが、その仲介を行うが地方証券や地域金融機関ではなく、東京の証券会社ということになりなります。

 一方、成長戦略で新しく整備される”新たな非上場株の取引制度”では、地域のインフラを担うような地域密着の地元有力未上場企業の株式の取引などが想定されていますが、これは地元証券会社など企業や地元投資家をよく知る立場の市場仲介者が望まれます。

 また、同じく制度整備が予定される”投資型”クラウドファンディングに関しても、例えインターネットを利用して、広く投資家を募るとしても、企業の選択を効率的に行い、コアの投資家を集めるのは、地域金融機関や地方証券が中心になっていくと思われます。(※クラウドファンディング調査会社によると、
欧米において投資型クラウドファンディングに応じた投資家の6~7割が、対象企業の関係者や同一地域の投資家だったという調査結果もあります。)

☆ 新規・成長企業へのリスクマネー供給の為の制度整備の現状(概要)

 新しく制度整備される”新たな非上場株の取引制度”や”投資型”クラウドファンディングが有効に利用されていく為には、既存の資本市場の基点にあるIPOに上手く繋がる必要があります。
前回もご紹介しましたが、
① 地域の新規・成長企業が”投資型”クラウドファンディングで資金調達(これを実務的に行うのは、“電子募集取扱業務”を行う地方証券会社・地域ファンド業者)
② 企業が成長し、次のリスクマネーが必要な場合、”新たな非上場株の取引制度”を利用して地元投資家に第三者割当。また、株主間の必要な売買にも応じる。(これを実務的に行うのは、同制度の取引者リストを管理する地元証券会社)
③ 成長してIPOへ。対象となる市場は、プロ向け市場、地方の新興市場、東京証券取引所の新興市場(マザーズとジャスダックは、同一証券取引所内にあるので、その役割が整理されいずれ統合へ)
というような成長企業のステップアップ・ストーリーが望まれます。

この様なストーリーが可能となる為には、以下の様なことが課題となります。
① 地方証券会社や地方ファンド業者が利用可能な“電子募集取扱業務”のインフラの構築
(インフラ構築には、地方振興の目的で、政府系金融機関や地方公共団体などの政策支援が望まれます。)
② ”新たな非上場株の取引制度”の為の投資家リスト管理・売買決済の為のインフラの構築
(証券業協会や証券等保管振替機構などによる、地方証券会社が利用可能な共通インフラ構築が望まれます。)
③ 成長した企業がIPOに至った時、それまで支えた①や②でサービスを提供してきた証券会社などがIPO時にメリットを受ける仕組み
(IPOの主幹事機能が実質的にある証券会社と地方証券会社の業務提携強化など)

現在取り組まれている施策などが、資本市場における成長戦略としてリスクマネーの供給増加に繋がる為には、上記のような課題の認識とその取組みが必要だと考えます。

地域における資本市場機能について
 アベノミクスによる成長戦略も地方にその重心が移ってくるということですので、地域における資本市場機能について見直してみました。資本市場の裾野拡大の為にも、地域での資本市場機能拡充が重要なのですが、現在の状況と可能性について次の様な状況です。

【地域の成長企業に対するリスクマネー供給について】
 現在はIPO(新規株式公開)に偏っていると言わざるを得ません。取引所に上場して、その際リスクマネーを調達することは分かり易いシナリオで、今後もこのIPOが地方における資本市場機能の中核であることは変わりがないでしょう。むしろ問題は、IPOを仲介する業者(IPO引受証券会社)のキャパの方かも知れません。業者にとってIPOは組織的負荷が重い装置産業で、証券会社でも大手と中堅の一部しか実質的な主幹事対応が出来ません。現在、一部の中堅証券会社ではIPO人員の拡充に動いているようですが、各社の機能拡充には時間がかかりそうです。

 このIPOに替わるリスクマネー供給として、一部の地方ではファンドでの資金調達が行われ始めています。例えば、地元での自然再生エネルギー施設やヘルスケア施設の建設・運営資金調達、地元信用金庫の資本調達など、上場企業でなくとも地元での認識が高い事業や企業のファイナンスでファンド(事業ファンド)が活用されることが増加しそうです。

 またIPOの代替としてプロ向け市場(TOKYO PRO Market)が注目されます。この市場はロンドンの新興市場AIMに模して創られた市場ですが、専業者(J-Adviser)が企業のサポートする仕組みで、企業側がより軽い負担で上場することが出来ます。但し、J-Adviserとしての負担が重かったので、中堅以下の証券会社には敬遠されていましたが、既存の証券会社と組むことを前提にした専業者が沖縄県内で設立され、実績を積み始めているので、より多くの地方証券会社や地域金融機関などが地元企業をこの市場に誘導することが期待されています。

 今後については、成長戦略で制度整備される“投資型”クラウドファンディングと新・非上場株式取引制度があります。今秋にも関連業界において自主規制ルールを整備し、来年4月以降には稼働すると見られていますが、上記其々の資本市場機能と繋がってこそ、資本市場の裾野として上手く機能していくと思われます。

【資本市場に繋がるベンチャー投資について】
 殆どの地域には、地域金融機関や地方公共団体・政府系金融機関などが設立に関与した地域ベンチャーファンドがありますが、これらが資本市場の裾野として機能する為には、ベンチャーファンドが出資した企業が更なる成長資金を調達したり、IPO以外のEXIT(ベンチャーファンドの資金回収)としてM&Aを行い易くする環境整備が必要と考えられています。独立行政法人中小企業基盤整備機構では、このベンチャーファンド間の取引を活性化させようと、ネットワーク構築を試みて2012年2月からベンチャー投資の情報ネットワークとして”ベンチャー投資ナビ”を開設しています。現在、88社のベンチャーキャピタルが参加して563社の企業情報が掲示されていますが、実際の投資やM&Aニーズに応える為の情報共有化(ベンチャーキャピタ間の)は、これからという感じがします。

 率直な感想を述べますと、地方においては既存の資本市場関係者より、ベンチャー投資関係者の方は随分多い様に思います。この各地域間のベンチャー投資関係者間の情報共有が進めば、資本市場の裾野としての地域ベンチャー投資の在り方も見えてくるように思われます。


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