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2009/05
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商品取引所その2
世界経済の先行きに関する不安が拭えない中でも、金や原油・金属などの値動きが底堅い。不況対策で、各国が、資金供給する景気刺激策で、資金が実物経済に向かう前、商品市場に流入しているのではとの見方もあるようだが、プロの運用の世界ではヘッジファンドに代わり注目を集めているものに、商品や株・債券の先物市場で資金を運用することに特化した商品投資顧問=CATが注目を集めている。
 アマに関しては、金先物以外はまだまだ商品先物取引が本格化しているとは言い難いが、それでも国内の商品先物取引に関し、プロもアマも使いやすい市場の整備を目指して、今国会(171回)に“商品取引所及び商品投資に係る事業の規則に関する法律の一部を改正する法律案”が提出されている。
 概要は以下の様になる。
【透明な商品先物市場の実現の為の施策】=公布から三か月以内に施行
・相場操縦行為規制=商品取引所外での行為も追加→会員等に関する取引・受託・建玉制限、証拠金の引上げなど
・グローバル化に伴い、外国規制当局との個別取引情報を始めとする情報収集・交換手続きの整備
・大口取引情報を毎日当局へ報告
・異常な相場過熱時など緊急時における証拠金引上げ命令等の規定を整備
【使いやすい商品先物市場の実現】=公布から一年以内に施行
・取引の証拠金を銀行保証で代用可とし、中小の事業者負担を軽減
・取引所の上場商品を多様化し、試験上場も可能とする
・取引所の議決権制限5%以下を20%まで拡大し、内外取引所等との連携を促進。また兼業規制を緩和し金融商品取引所や排出量取引を認めることで、金融商品取引所との相互乗入を可能に。
・商品取引所に、自主規制委員会を設置
【トラブルのない商品先物市場の実現】=公布から一年半以内に施行
・商品取引所法と海外先物法を一本化し、国内外・取引所内外で隙間のない制度整備
-海外取引所への取次・店頭取引に関して、取次業者の参入規制がなかった部分を原則許可制へ移行
(大規模事業者のみを相手する場合は、届出制)
・金融商品取引法と同様のプロ・アマ規制を導入
  アマには委託者保護を徹底した行為規制を強化するが、プロには損失補填の禁止・顧客資産の分別管理などに限定。
・預かり金の保全に万全を期すため、委託者保護基金制度の機能を強化
・特にトラブルの多い取引所外取引(ロコ・ロンドンまがい取引)について、不招請勧誘を禁止
以上の様な改正により、
①世界での商品先物取引の増加に対応して、国内でも商品先物取引所中心に制度整備し、金融商品取引所との連携を強めながら、少なくともアジアの中核的取引システムとしての地位を奪回する。
②G8サミットで問題になったような国際的市場操作まがいの動きを早期に捉えるための、各国当局間の情報共有体制を整備する。
③中小企業などの事業者・アマの投資家にも配慮しながら、プロを引き付ける取引システムを整備する
ことなどが目標とされていて、金融・資本市場の機能と重なる政策となっている。
もっとも、株や債券であろうが、原油や金属であろうが、先物はデリバティブで、デリバティブは金融商品取引法の定める金融商品でもある。今回の商品取引法改正で、そのことを思い出すプロの投資家も多いと思う。
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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

商品取引所その1
 実際に商品取引所に注文を出す人は少なくても、原油や金、または商品指数に連動する投信・仕組み債などを購入する投資家は増加している。
 また、一部のネットトレーダーが、CFD取引を使って、個別の商品指数などに対し、売りから入るような取引も、目立ち始めた。
 商品への投資は、昨年前半の原油や食料品の高騰時に、ヘッジ・ファンドなどの投機的動きが批判されたが、個人も機関投資家も、資金運用する立場からすると、分散投資の投資対象とするのは、今や当たり前である。では、その個人や機関投資家は、なぜ商品取引所へ注文を出さないのだろう。
 簡単にかつ恐れなく言うなら、日本において、投資対象としての商品取引システムが整備されていなかったからである。世界の投資資金は、商品にも向かっていたし、金融危機後も向かうことが予想されている。
 商品市場の拡大は、世界全体では2001年から2008年にかけて6倍に増加し、約18億枚の取引。この間、日本では、半分以下になって約0.46億枚。日本国内で約87%の取引シェアを占める東京工業品取引所も、取引所規模としては、アジア首位から落ちて、中国の大連、インドのマルチ商品取引所に抜かれ、世界9位の取引規模まで落ちている。
 商品先物取引の機能としては、
○価格変動リスクのヘッジ機能
○透明かつ公正な価格形成機能
○資産運用機能 
などがあるが、これらのニーズを、市場(取引所)につなぐ仲介者である商品先物取引業者の、過当競争の問題もあって、投資家への行為が、問題になった時期もあった。(2002、3年度に国民生活センターへの苦情・相談件数も国内商品取引所関連だけで5000件を超えていた。商品取引法が改正され、これら仲介者の行為規制が強化されて、2008年度は300件に急減している。)
 しかし、これらの問題に対して経済産業省主導で改革が行われており、数度に渡る商品取引法改正だけではなく、海外商品先物取引を規制する法(海外商品市場における先物取引受託等に関する法律)との連携から、価格形成の透明性を高めようとしたり、海外取引所に劣後しない取引システム強化を、東京工業品取引所がスタートさせ、その組織を会員制から株式会社へ変更して資本増強を図らせたり、国内4つの商品取引所の清算機関を統一させ、その清算機能強化プランを進めている。
 金融・資本市場側でも、既に金商法を改正して、取引所と商品取引所の相互乗り入れを可能にしている。
最近、東証の取扱量が上海取引所に抜かれたことが報じられ、業界関係者として、少なからずショックを受けたが、日本は世界2位の投資国であることは当分変わらない。
 であるなら、取引システムも、その投資規模に合わせて整備されるべきことなので、商品先物取引に関する取引システムの早急な整備は、日本のインフラとして重要なテーマであることを強く訴えたい。
本年度から、我が国でも始まるであろう排出量取引についても、東証などで取引システムを検討しているようだが、本来はCO21トン当たりと数えるのだから商品先物取引の1種類として検討・整備した方が分かり易いし、天然ガスや石炭・原油との連動性のある取引も可能になる。商品取引所の機能整備の中で考えた方が、関係者の腑に落ちるのではないか。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

インサーダー取引=業界の対応
 金融・資本市場関係者から、インサーダー取引関連の問題が明らかになると、またかという思いに捉われる。別に業界だから、金融商品取引法上問題になりそうな行為に対して、厳格に対応し、範をたれろと言うつもりではない。
 5月21日、M&Aに関連したTOB5件の情報を使った公認会計士のインサイダー取引で、野村証券のM&A部門の社員から情報が伝えられたことが明らかになった。証券会社社員からの内部情報でのインサイダー取引摘発は、初めてで、学校時代の後輩・先輩の関係での内部情報漏洩らしい。
 昨年も、同証券のM&A部門の社員によるインサイダー取引が、摘発されている。
M&Aは、当然であるが、何らかのかたちで株式を集めようとする為、公開会社が対象の場合、TOBを実施しなければならず、その為、市場価格以上のプレミアムを乗せて、TOB価格を、決定する。
M&Aがこれほど一般的になり、かつ増加もした現状では、この情報の事前取得でのインサイダー取引増加は、容易に想像されることでもあった。
昨年は、NHKの報道関係の社員・TOB公開資料などを扱う宝印刷の社員・そしてデューデリジャンスに参加する新日本監査法人の公認会計士など、M&A業務に深く係る人達のインサイダー取引事件が相次いだ。
これらのことを、少し冷静に考えたい。
勿論、違法行為を行う本人たちが一番悪いのだが、M&A情報など、法人の非公開情報に係る専門家達は、それぞれ厳しい社内ルールを設けている。前述の問題を起こした企業や組織も、
・株式の売買の事前申請
・株式取引に関する短期売買の禁止
・仕事で担当する銘柄の売買禁止
など、厳しく規制している。
NHKに至っては、事件後、役職員の株式売買を全面禁止にした。
再発防止策として、社員の株式取引ルールの厳格化で、今まで対応する事が多かったが、本当にこれらが有効なのだろうか。
社員に、行動規範の徹底を行い、社内ルールを厳しくしても、インサイダー情報を日常扱う、証券会社や会計事務所における、問題解決にはならないのではないか。
証券会社の社員であろうが公認会計士だろうが報道スタッフであろうが、普通の人たちがするようなミスは、普通にする。つまり、意図的な違反取引はしなくとも、うっかり誰かに言ってしまう、偶然インサイダー情報に触れてしまうようなことはあるだろう。今回の証券会社社員から公認会計士に情報が伝わったのは、この様なケースかも知れない。
問題の本質は、このM&A関連情報の管理にあるのではないか。
 M&A業務で、インサイダー関連情報が発生するのは、必須なのだから、その現場での情報管理の徹底こそ、業界で早急に求められていることで、対象となる未公開の法人関連情報をシステム的に管理する必要がある。例えば、その情報に誰が何時アクセスしたが記録が残るようなタグを、その情報そのものに付けて、管理することなどあるのではないか。
 少なくとも、社員の株取引を禁止することは、業界内では、問題の解決にならないと考える。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

事業承継の取組み-大阪の場合
証券の支店や地域金融機関で経営者を相手にしている部門の話を聞くと、その殆どが事業承継といったテーマに集約され、現場でのお客様のニーズも高いのだろう。
 以前は、相続税対策の金融商品販売が、営業上の目的だったが、考えてみれば、これは子息など身内に事業を引き継ぐ場合を、想定している。商工会議所などの調査によると、中小企業の6割程度がこのケースで、残り4割近くは、後継者が未定となり、第三者(従業員も含む)への譲渡若しくは廃業を、想定しなければならない。
最近の営業現場でのセミナーも、事業承継―M&Aの可能性についてなど、他者への譲渡を前提にしたものが増えてきている。
 また、事業承継に対する公的支援制度も年々拡充されてきており、以下の様な支援の枠組みが整備されている。
【税制】
○事業承継に係る相続制・贈与税の納税猶予制度(平成21年度の税制改正で創設予定)
○事業承継に係る相続時精算課税制度
○小規模宅地等の課税特例
【株式の移転】
○後継者への自社株式集中を可能とする民法特例
○分散した自社株・事業用資産の取得資金に係る融資制度
○中小企業投資育成株式会社による株式引受けによる経営安定化
○親族以外の後継者が自社株式・事業用資産を取得する資金に係る融資制度
【第三者との接点】
○開廃業マッチング支援
○事業承継ファンドによる出資・支援
○M&A支援事業
税制以外のこれらの施策は、事業承継の現場である地域で、地方公共団体・政府系金融機関・商工会議所などにより取り組まれるが、製造業の中小企業が集積する大阪において、国会図書館が、現地調査を行っており、これを紹介する。
大阪府における中小企業の事業承継をめぐる動向
報告においては、大阪商工会議所が、率先して取り組んだM&A手法の活用である“M&A市場”(1997年4月)が、紹介されている。これは、M&A仲介者などを、登録アドバイサーとしてネットワーク化したもので、企業の売却ニーズ吸上げに、役立っているようで、東京やその他の地域でも、同様のネットワーク構築を模している。今まで25件のM&A成約案件があるという。
 中小企業の事業承継対策は、官民あげての取り組みであろうが、これだけ制度が整備されてきたのだから、今後は、民の取組み=特に地域金融機関の対応が期待される。特に、中小企業のM&Aに対して、単なるリレーションシップ・バンク対策での、顧客企業への支援サービスではなく、M&A仲介者としてのビジネスの確立(収益性を確保したサービスという意味)が必要ではないか。
 中小企業に一番近い立場にいる地域金融機関が、M&Aビジネスのインセンティブを持ってこそ、中小企業の第三者への事業承継が、促進されると思うのだが。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

タンス株の行方
株券電子化という世紀の(?)イベントが年初に行われ、上場株式・公募投信・公募社債(つまり個人が制限されずに売買できる有価証券)に関しては、物理的な証券は無くなり、完全にデータ化されたペーパレスの仕組みになった。
この有価証券のデータは、全て証券保管振替機構(ほふり)に集約され、管理される。
もちろん(ほふり)に、個人が直接アクセス出来ないので、これら有価証券を株主や投資家から預かる証券・信託銀行などの金融機関が(ほふり)に直接アクセスできる口座をもち、株主や投資家の有価証券データを管理する。これら有価証券の売買・貸借・担保提供する場合には、データを動かすため(ほふり)に指示する必要があるので、結局証券・信託銀行に、有価証券データを管理する口座を作らなければならない。
しかし、売買も貸借もするつもりなく、資産として(長年タンスの中で?)保有してきた株券は、多数あって、このような株券を“タンス株”と呼び、そのままでは将来の売買等に支障がでるということで、証券会社等が“タンス株”を自社で口座開設してもらって預かりましょうというキャンペーンを、昨年は大々的に行い、株券電子化移行をイベント化していた。
で、このタンス株はどうなった。
証券や信託銀行に預けられたタンス株は、(ほふり)の証券・信託が管理する口座にデータとして加わったのだが、残ったタンス株は、これもデータとしてちゃんと纏められ発行会社が管理する“特別口座”に入れられた。
実際は、この“特別口座”の管理は、発行会社が名義書換代理人の信託銀行等に依頼しているので、この費用は、発行会社の負担になっている。
つまり、そのままにしておいたタンス株は、自動的に発行会社の特別口座でデータが管理される仕組みに切り替わって、タンスの中の株券は無効になってしまった。このタンス株主は、特別口座の管理費用はかからないが、将来売買等する為には、証券・信託に口座を作り、この特別口座からデータを出さなければならず、この間の口座費用は発行会社が負う。
こんな特別口座が、この3月末で、まだ1000万口座もあるらしい。
大半が資産として保有されて、当面の売買・相続などの予定がない方が保有するものだろうが、金融機関からみると、有価証券として活用されていないので、非常に“もったいない”思いがする。
この新タンス株=特別口座で管理する株式データは、発行会社から見てもコスト削減から減少させたいだろうが、このタンス株の中には、本当にタンスの隅に残ってしまった所在不明株主の保有する分もある。
5月22日、富士通がこの新タンス株の中にある所在不明株主の株式買取を実行した。
この制度は、旧商法の時に導入され会社法に受け継がれたが、
【所在不明株主】株主名簿に記載された住所あてに発した通知または催告が5年以上継続して到達せず、かつ5年間配当金を受領していない株主
○所在不明株主の株式買取を、取締役会で決議することができる。
○所在不明株主には、公告及び催告を行い、3か月以上を経て実施できる。
○株式の売却代金は、会社が供託し、株主からの申し出で支払う。債務消滅の時効まで10年と考えられている。
という制度になっている。
この制度は、2006年8月に新日鉄が最初に行い、約2万名の所在不明株主の株式を売却した。
今回の富士通は、昨年7月末に取締役会決議し、この22日に約2000名分を2億円で自社で買い取ったものである。
所在不明株主への対応に関しては、歴史が長く株主数が多い企業ほど頭を悩ませていたが、株券電子化で新タンス株化した分は、その処理が促進されていくのだろう。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

ファンドへの期待
先週、プロの投資家=必ずしもプロの運用者ではないというテーマを書いたが、金融商品取引法でプロとして適格機関投資家に定義される金融機関でも、プロの運用者として機能するのは、ごく一部で、基本は、外部の専門家達に委託する。この外部の専門家達を、総称すると“ファンド”ということになり、金融商品取引法では、集団投資スキームとして定義されていて、小は競走馬ファンド・コンテンツファンドから、大は投資信託・PEファンド・ヘッジファンドの類まである。
実際にファンドを運営するには、金商法の運用者の登録をしなければならないが、相手がプロの適格機関投資家だけであれば、適格機関投資家特例業務となって、届出で済んでしまう。(登録制度には、登録拒否要件があるが、届出制度にはない)
つまり、プロの投資家だけ相手にしているファンド・マネージャーなら、その投資家さえ認めるなら、誰でもなることが出来る、プロ運用者を輩出しやすい制度になってもいる。
一方、ファンドという機能そのものにも、リスクマネーを必要なところに仲介していく者としての期待が強まっていて、金融界のみならず、産業界からも、ファンド機能の強化に向けた政策が、望まれている。
(一部のPEファンドを、買収ファンドとして警戒するのは、これも一部企業の問題)
一応、期待されるファンド機能を整理すると、以下の様になる。
○PEファンド=投資する企業に対して、事業戦略やネットワークを使ったビジネスの拡大で、企業価値を高める
○アクティビスト・ファンド=上場企業に投資し、経営戦略等に対する提言で、企業価値を高める
○地域再生ファンド=地域企業の再生の為に、経営資源を提供したり、債権の債務化などの資本政策に係わり、リスクマネーを供給する
○ベンチャー・ファンド=ベンチャー企業にリスクマネーを提供し、経営指導等も行い成長を支援する
 
いずれの場合も、銀行や生損保など既存の金融機関が負えないリスクマネーの提供を、行うことが、期待されているが、資金を供出する投資家からみたファンドの有効性は、以下の様に、考えられている。
①単体では出来ない、大規模な投資案件への投資が、可能
②リスクを分散・低減するスキルを持つファンド・マネージャーが、投資をコントロールすることで、複雑で高度な案件への、投資が可能
③株主の立場で、人材やスキルを提供することで、企業価値を、向上させる
④ファンドそのものに対して、法人税が非課税(パススルー課税)
通常、上場会社に対しての社債や株式の資本市場機能の提供は、証券や金融機関が行うが、それ以外の企業に対する資本市場機能提供は、このファンドしかない。特に、地方企業の再生やベンチャー企業への投資では、ファンドへの期待は、企業・行政・投資家とも強い。
 そんな中で、最近、昨年度改正されたエンジェル税制を活用したベンチャーファンドが計画されたり、独立系ベンチャーキャピタルが、ベトナム企業へ投資するファンドを立ち上げたりしていることは、資本市場の裾野拡大にとって、よい兆候が出始めていると思う。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

新興市場について
企業にとってIPOは資本市場の入口であり、またIPOにおいて、新興市場の果たす役割は大きい。
しかし、ここ一年の金融危機による資本市場へのダメージがなくとも、新興市場の機能に関する疑問符が、投資家のみならず、市場関係者といわれる発行市場業務に携わる証券業界の関係者間でも、出されていた。
確かに、財務報告に関する虚偽記載や極端な資本政策が問題となる新興企業もあったが、不祥事は新興企業だけの問題ではない。それだけで、投資家の信頼を失ったという訳ではないだろう。
 そんな中で、プロ向け新市場TOKYO AIMが今月中にも認可され、上場第一号が夏過ぎにも上場される見通しであることが、5月19日の東証社長記者会見で明らかにされている。
 この市場は、特定投資家という定義のプロと海外投資家しか売買に参加できないが、上場企業を市場に誘導し、かつ上場後もサポートするスポンサー制(J-Nomad=日本でノミネートされた上場アドバイザー)をとっており、この制度は英国の新興市場AIM(ロンドン取引所)のNomad制度を模したものである。
 実は、冒頭のような新興市場からの投資家離れの動きは、何も日本だけではなく、欧州などの新興市場でも、一時その傾向は強まっていた。しかし、スポンサーが強く上場企業をサポートするAIMの成功を見て、AIMの様なスポンサー制度を強化するのが、世界の新興市場での潮流となっている。
 東証とロンドン取引所の合弁会社が開設する新市場は、この制度を取り入れスタートするが、6月中旬には、日本やアジアの新興企業を上場サポートするJ-Nomadが選定・公表されるようである。
 一方、既存の新興市場はどうするかというと、日本証券業協会によるワーキングチームにおいて、同じく19日に、新興市場のあり方に関する報告書が発表されている。
 新興企業を市場へ誘導する仲介者=証券業者からの新興市場改革の提言がされていて、概略は以下の様になっている。
○上場審査時における引受証券と取引所間の情報共有の強化
○上場後も新興企業へのサポートを強化するため、スポンサー制度を参考に、企業との情報交換を強化する
○流動性向上に向けて、マーケットメーク制の改善等の検討を行う
○上場廃止基準について明確化・厳格化
○新興企業の情報発信を支援・強化する取組を行う
●公開価格のプライシングにつき研究
◎アナリストカバーを上げるため、新興企業に対するレポートに褒賞制度導入を検討
関係者には大変申し分けないが、なんだか具体性に欠けた内容になっていて、グリーンシート市場に関しては実務的提言さえない。
 新興市場の一番の問題は、何なのだろうか。
新興企業の情報が不足するのであれば、◎は直ぐに取り組んで欲しいし、新興企業が市場ルールに慣れていないのならスポンサー制を取り入れるべきだろう。但し、上場主幹事にスポンサー的対応を取らせるのではなく、スポンサー自体がメリットのある仕組みでなければ、制度の実効性と継続性は確保できない。
●は、筆者の私見だが、この問題が持続的な売買に障害を与えていて、新興市場問題で一番重要なことではないかと思う。
 つまり、公開価格の2倍近い値段で初値が付くようなプライシングを放置した結果、一般の投資家・機関投資家が離れるような状況になったのではないか。報告書では、プライシングについて研究を行うとあるが、プライシングの実態を詳細に調査し、企業のフェアバリューに近づける努力を、証券業者にさせることこそ、企業・株主・投資家3者が、メリットを受ける新興市場を、持続させる要諦だと考える。

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上場制度の整備について
表題の様なことを書くと、一昔前なら大半が新規上場の為の基準やルール改訂に係るものであったが、商法(会社法)での資本取引の原則自由化や会社組織の柔軟化など、上場会社が取り得る資本政策が多様化して、株主及び投資家に判断に大きく影響することも随分多くなった。
例えば、
○極端な株式分割や株式併合
○現物市場と裁定のし易いMSCB・優先株式の発行
○企業価値を毀損する可能性のある買収防衛策
○大量で支配株主が変わるような第三者割当
○開示される財務上の数字の虚偽記載
これらの事に対して、今までは個別に対処したり、企業行動規範ということで、上場企業が順守すべき事項として定め、公表措置に原則ペナルティが限られていた。(適時開示等の規則違反に関しては、改善報告書を求め、上場廃止まで至る事案かどうかは個別に審査していた。)
極論して申し訳ないが、上場という入り口では、その基準は明確だったが、上場維持の為のルール、若しくは上場廃止に至るルール違反の基準が、資本市場の変化に追いついていなかった。
この事に関して、5月19日東証より、今までの企業行動規範を上場ルール化するような制度整備が好評されている。
つまり、今までの企業行動規範の遵守すべき事項に違反した場合、今までの公表措置に加えて、上場契約違約金という金銭的ペナルティーを課すことをルール化する。加えて、改善報告書の提出を求め、一定期間は特設注意市場銘柄として指定する。
また、適時開示等の規則違反についても、今までの改善報告書を求めることに加え、公表措置を明文化し、上場契約違約金を課す。これも、一定期間は特設注意市場銘柄として指定する。
(今までの、注意勧告制度は廃止する。)
大枠は以上の様に、(上場維持の為の)ルール化を明確にするもので、個別に整備されることでは以下の対応がある。
〈第三者割当で、大量の株式が発行される場合〉
・希薄化率が300%を超える場合は、上場廃止。
・支配株主が異動した場合、支配株主との取引について年一回以上報告義務。3年以内に健全性が著しく毀損し、他の株主の利益侵害するおそれが大きいと認められる場合、上場廃止。
・希薄化率が25%以上の場合は、独立性の強い外部の意見書若しくは株主総会での決議(緊急性の高い場合は除く)
〈第三者割当〉
・割当先の資金手当ての確認
・発行価額の算定根拠及び具体的説明
・割当先が反社会的勢力と関係ない旨の確認書 等 を必要とする。
〈株式併合〉
・株主が不当に議決権を失うような場合は、上場廃止。
〈MBO〉
・MBOを行う場合、必要十分な適時開示を行うことを、企業行動規範の遵守すべき事項として定める。
以上のような、上場規則の明確化は、資本市場では好ましいことであるが、今回の企業行動規範整備にあたって、東証への事前相談要請も、明文化されている。
制度浸透の為には必要なことかもしれないが、事前相談が、行き過ぎた窓口規制にならぬよう、企業との対応現場で、規則整備の目的の徹底を、東証にも、お願いしたい。

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少し粗いのでは、M&Aアドバイス
最近、大型のM&A案件において、投資銀行的立場から見て、少しアドバイザーに問題があるのではないかと思う様な事例が、相次いでいるように思う。
①5/19報道されている、ローソンによるam/pm買収の白紙撤回
②5/14発表された三菱UFJ信託による日興シティ信託買収撤回
③3月末に日経に特集記事として取り上げられた米国株主10%ルール対応で、日本の企業同士の合併が延期
それぞれの案件には、当然プロのM&Aアドバイザーがついていて、M&A業務として遂行しているはずであるが、
①の案件は、2月末に基本合意したが、am/pmの店名使用で、商標権をもつ米国am/pmの了承がどれず、破談になっている。諸々の事情はあるのだろうが、am/pmの店名利用が基本合意の前提なら、商標権利用の事前調整は、アドバイザーとして基本と思うが筆者の認識である。
②の案件は、昨年12月末に250億円で買収と基本合意されたものであった。当該信託の業務の殆どが投信の管理業務に特化していたが、最近系列の日興アセット売却で、三菱UFJ信託が売却先の一次選考から外れてしまった。その為、信託と投信(アセット)がセットにならなければ相乗効果は期待出来ないとして、違約金なしに、三菱UFJ側が、下りてしまった。通常、同業種のM&Aに関しては、競争相手でもある売り手側の情報をデューデリジェンスで入手するので、もし破談になった場合の違約金は、高めに設定しておくのが、M&Aアドバイスの常識と思う。
③の事象については、複数の事例が紹介されていたが、中でも新日石と新日鉱HDの企業統合事例では、この米国法対応の為、半年間統合が延期されたが、この経済環境下での統合の遅れは企業の大きな損失に繋がる。(詳細は、拙稿“M&A業務の障害―取り除く努力を”3/31ご参照)
 いずれの事例も、M&A対象となる企業の企業価値を毀損するリスクをもつ事例である。
ちなみにM&Aアドバイザー業務を、大概に分けてみると以下の様になる。
○M&A戦略に関するアドバイス
○相手探し
○相手企業のデューデリジェンス支援
○想定M&A後の事業価値評価
○売買実行(TOB等も含む)
となるが、これを投資銀行のM&Aアドバイスのフルサービスとして、高額のM&A手数料を顧客企業からいただく。この手数料テーブルをリーマンテーブルというのが、最近は何か面映ゆい。
売買金額5億円未満       5%
5億円超~10億円未満部分   4%
10億円~50億円未満部分   3%
50億円超の部分        2%
での成功報酬となるが、着手金や案件の進展に応じた部分的な支払条件などある。
また、最近はフルでサービスするより、顧客にニーズに応じて部分的にサービスを提供する業者もいて、例えば相手企業探しのみ・価格算定書のみなどで、部分的に参加する専業者も増えている。
しかし、資本市場への影響の大きい公開企業のM&Aは、買い手・売り手が其々M&Aアドバイサーを雇い、企業価値を向上させるために努力するのであるから、案件に深く係るM&Aアドバイザーは、少なくとも顧客企業の企業価値を下げるリスクを避ける努力は最大限にすることが求められる。
それが、高いと言われがちな手数料の対価である。

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株主総会へ向けて
 3月決算期の6月株主総会シーズンまでひと月余りとなったが、企業側は、そろそろ株主招集通知の発送時期に入る。個別に注目される総会もあるだろうが、全体としては主要な法制度改正に係る部分が終わっているので、そもそも論に関したものが、注目されるのではないか。
 つまり、会社運営の仕組みを問うコーポレート・ガバナンスに関するもので、これを強化しなければならないという方向性は、一致しているものの、その方法については、公開会社の3%未満の委員会設置会社が良いのか、4割程度が導入している社外取締役制度の強化が良いのか、最近提言され始めた社外監査役が半数以上必要な監査役会制度の改革がいいのか、別れる現状がある。
 これらの議論は、6月までに金融審議会のスタディグループや、経済産業省の企業統治研究会で、報告書として纏められるようだが、金商法にせよ、取引所ルールでの運用にせよ、会社・会社経営者から独立した外部のチャック機能強化を、上場企業が、求められる方向は、変わらない。
 よって、今株主総会での取締役・監査役選任案について、社外の方の独立性が注目されるケースも、多くなるのではないだろうか。
 このことは、投資家の反対が強い買収防衛策(昨年度は500社以上が導入)への賛否行動にも影響するであろう。
海外のアクティビストのみならず、日本の機関投資家も、上場企業の社外役員(監査役を含む)選任に当たっては、以下の様な独立性基準を持つものが増えている。
・メインバンクの関係者でないこと
・一定株式を保有する実質的親会社の関係者でないこと
・経営者の親族でないこと
・会社と取引関係にある弁護士・会計士・税理士等でないこと
・一定期間以上長期にわたり社外役員として在任していないこと
・社外役員を相互に派遣していないこと
など
 一方、これだけの経済環境悪化の時期でもあるので、企業の戦略に係るものにも、注目は集まる。
総会議案の中には、当然事業戦略に関するものは含まれるわけではないが、資本政策戦略に係るような定款変更や自己株取得・償却、剰余金処分に関する議案は、通常以上に、関心が高まるだろう。
 折しも、金融機関や大手企業の大型の資本調達が、相次いで公表されている時期でもある。
一例として挙げると、野村ホールディングス(8604)が、5月15日以下の定款変更案を公表している。
定款の一部変更に関するお知らせ

 この中で、BIS対策の資本基盤強化として、4種類合計8億株の優先株式の発行を可能とする定款変更案が示されている。この半数には、優先配当額を抑える為、普通株へ転換が可能な条項が含まれている。
同社は、この3月に3000億円発行済み株数を3割以上も増加させるファイナンスを行ったばかりでもある。再び、潜在株数を大量に発生させるファイナンスに対して、その資本が、企業価値を増加させる事業戦略に沿ったものであることも、株主には、明確にしていくのだろう。

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プロ投資家とは
プロ投資家について、整理してみたい。
金融・資本市場競争力プラン(2007.12)は、現在進められている政策であるが、このプランの主柱として日本での市場においても、もっと活躍するプロ投資家を育てようという発想があった。
 ではプロ投資家とは何なのか。
金融商品取引法では、特定投資家とし定義されているのは周知だろうが、それまでの証券取引法によるプロ=適格機関投資家といったい何が違うか、もう一度整理し直すと、特定投資家の概略は以下の3層に分かれている。
①適格機関投資家、国、日本銀行
②投資者保護基金、上場企業や資本金5億以上の法人等内閣府令で定める法人:金融商品取引業者が、アマ=一般投資家に戻れる旨を告知、一年ごと更新手続きが必要
③3億以上の取引を行うことが見込まれれる法人・個人:金融商品取引業者が要件を確認する義務があり、一年ごと更新手続き必要
つまり従来のプロ=適格機関投資家以外は、上場会社であろうが3億円以上の運用資産がある個人であろうが、証券会社がアマに戻るか(②)、プロとして扱われたいか(③)を1年ごとに確認する必要がある。
(※今後の金商法改正で、②の更新手続きは、顧客からの申し出があるまで有効になる予定)
プロかアマかの確認・判断は証券会社に委ねられるわけだが、このことは証券会社の顧客に対する行為規制に反映される。以下の行為規制は、プロには適用されない。
○広告規制
○契約提携前、契約締結時の書面交付義務
○販売・勧誘における適合性の原則
○不招請勧誘・再勧誘の禁止
○販売におけるクーリングオフ
○投資運用報告書の交付義務
プロ中のプロである適格機関投資家に対しての、証券会社の行為規制は、以下の3点のみである。
●虚偽の説明の禁止
●損失補填の禁止
●分別管理

その適格機関投資家の概略は、
◇金融機関(信組は、届出た者)
◇10億以上のファンド運用者
◇100億以上の年金基金
◇外国政府、外国会社 等
となっている。

 長々とプロ投資家の定義について述べてしまったが、プロ投資家=プロの運用者ではない。
そのことは、今回の様な金融危機などで、金融機関が大きな運用損を出す度に思い出すのだが、確かにインハウスで運用専任者を持たず、運用部門も人事ローテーションの範疇である金融機関は多いと思う。
勿論、プロ投資家は、プロの運用者を選別出来れば良いのであって、必ずしも運用のプロである必要はない。
反対に、プロ投資家でなくとも、プロの運用者はいるものだ。
 そのことで一つ紹介すると、ある運用会社が行っている10億円想定の疑似運用コンペで、2008年度TOPIXが36%下落する中、優勝者は55%プラス上位5名も20%以上のプラスとなっていて、参加者1500人超の平均はマイナス28%との成績。ちなみにトップの方の運用は、東証一部の数銘柄に絞って、短期投資主体だったというから、個人の中にもプロはいるものだ。
 プロとは、結果を出し続けてこそプロなのだから、この様なプロを発掘する仕組みの必要性を、強く感じるニュースであった。

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運用も海外頼みか
投資環境全般では、まだまだ昨年来の金融危機の影響を脱したと言い難いが、最近の国内リテールの営業現場を見ていると、ある種の逞しさを感じる。
例えば、2月金融危機の更なる拡大が懸念され、主要米銀の国有化のリスクが伝えられた時期、グローバルな金融機関に投資するファンドが、300億円ちかく資金を集めた。また、3月の大手証券の3000億の資本調達に対しても、リテール部門の需要は多かったようだ。
米国の金融システムに懸念の残る4月には、避難通貨としての円を指摘する専門家もいたが、ブラジル・レアル建てファンドが、1500億円以上販売されたようだ。
全体としては、小さな動きかもしれないが、何か逆張りの発想で動く個人投資家が、国内市場で育っているように思う。最近は、外貨建て債券の販売が、リテール部門でのブームらしいが、インカム・ゲインを狙う投資は、国内では無理なので、当然海外へ向かう。キャピタル・ゲインも、中国市場を横目でみると、長期投資の目は、どうしても海外へ向かいやすい。国際分散投資は、日本の投資家が避けられない手段となっていて、製造業のみならず投資も海外頼みになっていて、なんだか少し寂しい。
この様な海外頼みの運用を示すレポートが、第一生命経済研究所から公表されているので、紹介する。

金利循環図からみえる運用難の姿

同レポートによると、金融機関が受取る金利収入の3割15.1兆円(2007年度)が海外からのもので、10年前と比較すると倍になっている。一方、国内企業からの金利収入は2割弱10.2兆円と半減していて、国債運用等で国から受ける12.9兆円を下回っている。企業からの金利収入減の要因は、自己資本比率を高め、負債金額を圧縮してきたからということだが、日本の企業が財務レバレッジを縮小していく過程で、逆に欧米金融機関が、実質的財務レバレッジを急拡大させ、そして結果として危機に追い込まれた姿と比べると、対象的である。
また、海外頼みの運用を示す数字として、日銀の2008年末「資金循環勘定」による各金融機関の総資産に占める海外証券投資の割合が示されているが、投資信託40.7%(株式投信は48.6%)、企業年金30.5%、損害保険16.2%、公的年金14.8%、生命12.8%となっている。
確かに、国内の低金利は構造的になっているので、海外での運用を増加させていくのは避けられない。しかし、このことは、金融・資本市場が海外頼みということとは随分違うと思う。
運用が、国内低金利で、海外に出ざる得ないのならば、国内低金利は、資金調達者にとってのメリットのはず。であるなら、海外の資金調達ニーズを、国内に呼び込む機能を整備していく逞しさが、日本の金融機関に求められていることではないか。アジア・ボンド構想でもいいが、国内発行の債券も完全にペーパレスになり、理論的には資金移動と連動した債券売買も可能となっている。
海外の資金ニーズを呼び込むインフラは整備されたのだから、後は金融機関の海外発行者を呼び込む力量なのかもしれないが、出来れば政府の支援で先鞭をつけた動きが望まれる。
ODAの代替に、海外支援事業の国内資金調達を後押しする目的で、債券の国内発行に政府保証を付けるスキームも、有効な海外調達ニーズ誘導策かもしれない。

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証券化商品とCDSの行方
金融機関や大手メーカーの大型資本調達、大手企業の相次ぐ社債発行も伝えられ、最近の資本市場機能は、一部が回復してきた。しかし、今回の金融危機の主因と言われた、証券化やCDS市場の回復は、今だ遠く思われる。
 G20や金融サミットにおいて、グローバルな金融・資本市場における規制強化の方向が打ち出されているが、証券監督者国際機構(IOSCO)のタスクホースによる、証券化プロセス及びCDS市場における信頼改善を目的とした規制案を、中間提言のかたちで5月5日公表している。
IOSCO は非規制金融市場・商品についての中間提言を公表

対象となる商品:資産担保証券(ABS)、資産担保コマーシャル・ペーパー(ABCP)などの証券化商品、そして債務担保証券(CDOs)、シンセティックCDOs、ローン担保証券(CLOs)などの仕組み債商品、CDS

規制案の概要は、以下のとおり。
≪証券化に関する規制案≫
1.オリジネーター/スポンサーに、証券化商品に対する、長期的な何らかの一部持ち分の保有を求める。
2.アンダーライター、スポンサー/オリジネーターによって行われた全ての審査・確認過程について、開示を通じて透明性を促進する。
3.発行者に関与する専門家の独立性を求める。(※主たる専門家は、格付機関)
4.専門家に、残存期間中、報告を再検討及び維持することを求める。
5.原資産プールのパフォーマンス及びアンダーライター、スポンサー/オリジネーターによって行われた審査・確認過程に関して、発行時及び継続的な情報を含めた情報提供の改善を義務付ける。
6.市場における洗練された投資家の定義と共に投資家への適合性要件を強化する。
7.”買い手側“の支援と共に、リスクを評価する代替的手段の開発を促す
≪CDSに関する規制≫
カウンターパティー・リスクの軽減と透明性の確保のため、清算機関の設立を進める。
1.必要な法制度整備で以下を確保
①清算機関の資金源及びリスク管理活動
②取引・市場情報を清算機関が提供する
③規制当局との協力
2.金融機関や市場参加者に、清算機関における清算を促進するため、CDSの契約を標準化する作業を促す。
3.価格、取引量、建玉に関するCDSデータについて、市場参加者、電子取引、プラットフォーム、データ提供者、データウェアハウスによる適切かつ適時な開示を促進する。       等

証券化に関しては、証券化商品組成者達の審査・確認過程を、投資家にも、持続的に開示し、またプロの投資家を一律に取り扱うのではなく、投資家毎の適合性に配慮した販売体制が求められそうだ。
また、CDSに関しては標準化と清算機関への集中の努力が課される可能性もあり、今後の議論の進展が待たれる。
しかし、これらの施策を進めていけば、証券化もCDSも、取引所的機能の整備という事になるのではないだろうか。
両者とも、取りあえずは、流動性の確保が第一なのだ。

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地域再生手法としてのM&A
証券の営業現場では、ここ数年、経営者向けセミナーは、殆どが事業承継・M&Aセミナーの類が殆どである。かつては、この事業承継は、相続対策→その為の節税金融商品の販売が中心だったが、最近はM&Aニーズに繋がるものが増加している。
一方、地域金融機関においても、地元経営者からの後継者問題・事業承継相談から、直接M&Aの話に繋がることが増加していて、事業承継⇒M&Aの図式が、証券・地域金融機関の営業現場で定着しつつある。また、地域の企業にも、M&A=乗っ取りの様なイメージが薄らいできており、地域における事業再生としても、M&A手法の活用が期待されている。
 M&Aの最大のメリットは、売り手は勿論、買い手も、その効果を測定するために、第三者の視点で企業価値(事業戦略を含めた)を測り直すことあると思うが、そのお膳立てをする仲介者機能の充実が必要である。
 内閣府の経済社会総合研究所により、この2月に公表された、M&A研究会報告2009においても、地域活性化の為に、M&A活用を促進していく提言がなされている。

報告書の第IV章地域活性化に向けて
地域のM&A事例(2007年以降の報告から抜粋)

地域におけるM&A案件は、全体の2割程度(2008年は売り手ベースで630件)であるが、その動機は、
(イ)地方の金融機関の再編、
(ロ)民事再生、破産、経営難、債務超過等の要因
(ハ)マネジメント・バイ・アウト (MBO)
(ニ)投資会社やフィナンシャル・バイヤーによる投資
(ホ)小売・流通(事例としては小売の事例が多い)
(ヘ)首都圏及び他地域への進出
(ト)大企業からの営業譲渡や大企業のグループ再編に伴い事業を切り出して移すという動き
(チ)第三セクター関連
となっている。
 報告内容に関しては、地方のM&A活動の現場での、企業や金融機関の息遣いが感じられるような再生事例記載に、興味を覚えた。また、注目したいのは、以下のポイントである。
○地域金融機関のM&Aに対する取組みで、銀行間では大きな相違がある。
マッチングや仲介業務以外に、
・企業価値算定に関するアドバイス業務
・第三者割当増資に関するアドバイス業務
・中期経営計画策定のサポート
・PMI(Post Merger Integration)等
幅広く手掛ける体制を整備し始めた銀行もある一方、まだ多くは、業務のローテーションの中で対応
○M&A情報の流通の円滑化、信頼できる情報のネットワーク化の必要性
 地域金融機関が其々持つ売買ニーズの案件情報を、ビジネスべースでマッチングする為に、ネットワークでつなぐような仕組みが必要
○地域金融機関の支店長の役割が大きくなっている。
M&A関連の相談案件の吸上げ、成約後のフォローアップ
○第三セクターの整理問題における活用
地域再生においては、重要なテーマであり、もっとM&A手法を活用すべきだが、地域における関係者が多すぎて、地域の首長次第か。

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M&Aの環境-全体そして証券
上場会社の経営者に尋ねると、半数以上はM&Aに積極的、もしくはM&A戦略強化を否定しない。
この場合、殆どが自社を買い手として想定しているが、一般企業のM&Aニーズにおいても、買いニーズに対して売りは1割程度だろうか。
 しかし、実際のM&A案件の現場では、売り案件情報を中心に、物事が進んでいくので、M&A業者は、精度の高い売り案件情報を求める。
従って、大手M&A仲介業者は、業界の再編、中堅以下の仲介業者は、事業承継などにテーマを絞って、M&Aにかかる売り案件情報を発掘していく。
当然のことかも知れないが、自らの企業を売り対象にするということは、その業界環境が相当厳しいという危機意識が、原動力になっている。
 今般の経済状況の厳しさから、業界を再編するようなニュースが多くなっているが、帝国データバンクが、全国の二万社超を対象に、業界再編に対する意識調査(回答率51%)を4月下旬に行い、結果を公表している。
業界再編に対する企業の意識調査

それによると、全体の2割、業界再編が進んでいると回答しているが、金融と小売は4割が、業界の再編を認識しており、今後の更なる業界再編ついては、両業界とも6割以上が進むと回答している。
また、業界再編の背景としては、○市場の縮小○価格競争の激化など環境の厳しさに関するものが、それぞれ半数近くを占めたが、金融に関しては、○収益力強化○規模の利益の追求といった利益に関するものが3割近い回答となっている。
 ところで、金融業界の中でも、大手の買収・再編など、最近話題の多い証券の業界環境を、M&A的に見てみると、以下の様になる。
 ○証券会社数:324社うち外証28社(2009年2月)←268社うち外証41社(2003年12月)証券会社は、ここ5年間毎年3~40社程度(15%程度)入れ替わっていて、差し引き毎年10社程度の増加になっている。
 この内、取引所会員は120社前半の推移で殆ど変わらないが、それ以外の増加。金証法の制定により、FX業者など証拠金取引やデリバティブに特化したものや、富裕層・法人関連ビジネスに特化したものの増加による。
 ○従業員数:バブル期の14~15万人には遠く及ばないが、5年前の8万人から増加し、最近は全体で10万人程度と安定していた。(さすがに、直近半年間では4000人減)営業に該当する外務員登録数は、全体の82%で、5年間で増加した殆どが、この外務員数である。
 11年前の金融ビックバンで、証券は許可制から登録制に変わり、基本的には参入自由な金融業となっているし、金証法によって、業務も拡大・登録要件も緩和している。
 ITバブル崩壊後の株式市況回復過程で、2割以上業容を拡大した姿が、証券業界で浮かび上がるが、金融危機後の業界再編は、何も大手だけの問題ではない。
 業界として大きいかどうかの議論は置いておいて、M&A仲介業者でもある証券会社が、自らのM&Aにより業界再編を進め、業界活性化を図って見せてこそ、M&A仲介者たる競争力も得る。

そうであることを信じているし、期待もされていると思う。

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グローバルに求められるもの―金融・資本市場
 5月8日付け日経記事で、1~3月期のAAAからの格下げが、5300件と前年比で倍増していると報じられていた。経済不況なのだから当然だろうが、問題のAAAは最上級の格付けで、各国の国債にとって重要な指標となる。同時期、景気対策の為の財政出動拡大で、スペインやアイルランドが、AAAからの格下げされたが、同国の金融市場には、多大の影響が予想される。
 そもそも、この格付けを行う機関とは何であったか、各国の金融関係者はここ2年近く考えさせられている。格付機関は、民間企業で、収益は格付関連業務から上がるが、影響は、グローバルに及んで、一国の金融政策をも左右する可能性がある。これを、監視する国際的な枠組みが、必要ではないかと。
 経団連より、先月24日に、イタリアで行われたG8ビジネスサミットでの
 G8ビジネス・サミット共同宣言(仮訳)
が、7日公表されているが、この中でも格付機関に対する国境を越えた監督のあり方の見直しが唱えられている。
・格付機関が活動している各国の当局が必要な監視を行う。
・格付機関の利益相反に適切に対応
・格付プロセスに対する透明性と質の確保
・規制当局間の国際的な協力の強化と格付機関同士の競争の促進
今回の金融危機の主因にもなった証券化商品でも、格付機能は大きな役割を担うのだから、それらの商品の流動性回復の為にも、早急な官民の取組みが求められている。

また、同共同宣言での金融・資本市場に関連する部分を抜粋してみると、
○ディスクロージャーの拡充
 ・一定水準を超えた空売り
 ・オフバランス取引の開示基準の整備
○金融市場のイノベーションを阻害しない規制の強化と透明性の向上
 ・グローバルに影響を及ぼす金融活動を行う組織に対する、コアビジネス・戦略・リスク構造・レバレッジに関する透明性を高める
 ・但し、金融手法のイノベーションとのバランスを確保
○バーゼルⅡの見直し
 ・銀行の自己資本ルールの見直し(経済環境を考慮したあり方)
 ・ストラクチャーローンや証券取引に関する新しいルール
○政府系ファンド(SWF)の調整かつバランスのとれた扱い
 ・長期的な投資家として期待
 ・但し、投資先の戦略的産業には配慮した透明性の確保・説明責任
 ・SWFを含む外国投資を差別する規制の自粛

いずれも、経済界より、グローバルな金融・資本市場のあり方で、求められていることである。

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東証―上場制度改革の方向性
 上場会社のコーポレート・ガバナンス強化について、上場規則により、定めようという金融審議会等の動向は、お伝えしているが、先月23日、東証の上場制度整備懇談会より、上場会社のコーポレート・ガバナンス強化の一環として、「投資者が安心して投資できる環境の整備」と「株主と上場会社の対話促進のための環境整備」を目的に、以下の提言が公表されている。
安心して投資できる市場環境等の整備に向けて
提言のポイントは、
○第三者割当について
 ・既発行株数の300%を超えるものは、取引所の上場に関する審査の対象
 ・既発行の25%から300%は、株主総会若しくは独立機関からの意見確認
 ・割当先が支配権の移動のある場合、その株主との間の取引について確認
 ・10%を超すディスカウントの場合、監査役の意見を公表(CB、新株予約権は必須)
 ・割当先の資金手当ての確認、公表
○株式併合について
 ・株主併合の結果、多くの株主が、支配権のない単元未満株主へ移行を余儀なくさせられるようなケースは、取引所による実質審査のプロセスを設ける。
 ・株主の利益にできる限り配慮して、反対する株主の株主買取請求権が確保されるような代替手段がある場合には、これを求める。
○議決権行使を容易にするための環境整備について
 ・集中日開催日の回避(最終日の一日前に9割以上が集中した状況は、2008年度48%と改善されているが、最終週への集中は、まだ85%)
 ・招集通知の早期発送(発送から総会まで、法定期限の2週間に対し、平均18日となっている)
 ・招集通知等の電磁的提供(HPでの開示は、全体の35%のみ)
 ・招集通知等の英訳(全体の15%が対応)
 ・電子投票の導入(全体の21.9%が導入)
○議決権行使の開示について
 ・欧州では、インターネットによる開示が義務付への方向性が決定している。

 会社法制定までに、旧商法では保守的に解されてきた会社の資本政策について、金庫株解禁・新株予約権制度・種類株の整理・株式分割と併合・資本準備金の扱い等、順次定められて、取締役会が取り得る資本政策の自由度は、ここ10年で随分と増した。
 勿論、既存株主に悪影響を与えるような資本政策は、ごく一部の企業に過ぎないのだが、上場会社である以上、不特定多数の株主及び投資家に対応する義務は、全ての上場会社が負うものである。
 最近の開示制度の改革や、内部統制対応で、企業の負担は相当増加していると思うが、先ずは比較的コストがかからない、HPでの情報開示の強化・電子投票の導入などは、早々に対応してほしい。
 また、機関投資家・海外投資家の議決権行使を促進する議決権行使プラットホームの参加が、まだ339社と東証上場会社の15%未満なのは、問題である。この制度などは、本来は企業側のメリットが大きいはずだが、コスト負担を嫌う企業側の意向があれば、いっそ取引所のインフラとして、取引所自らがコストを負担し、企業の利用を強制させては如何だろうか。


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コーポレート・ガバナンス-監査役機能の強化
 3月期決算発表も、たけなわになってきたが、企業によっては6月の株主総会への準備に、追われる時期でもある。会社法という企業活動を支える法律が、2006年5月1日に施行されてから、ちょうど3年が経つが、その間、企業の不祥事もあったし、資本市場でも、大量第三者割当やMSCB、買収防衛策問題のあった。別に、海外投資家を意識しなくとも、公開企業のコーポレート・ガバナンス強化は、資本市場における最優先課題である。
 ガバナンス=監督機能であるから、企業の日常の行動を監督するのは、取締役会の機能の基礎。と教科書的であるが、前段の問題に対応する為、取締役会に外部の独立性の強い機能を取り入れようというのが金融審議会等での議論の中心になっている。
 企業のガナナンス=監督機能の形は、以下の3つある。
1.委員会設置会社:(指名・報酬・監査3つの委員会からなり、各委員会の半数は社外取締役)
  東証上場の2351社中、56社で、全体の2.3%
2.社外取締役:(現在の議論は、この社外取締役の独立性を強めた”独立取締役”制度導入を、上場会社に義務付ける案が中心か)
  東証上場の2351社中、監査役会設置会社2295社であるが、その中で、現在の基準の社外取締役がいる企業数は、1003社で、全体の43.7%
3.社外監査役:監査役会の半数が、社外監査役でなければならない。
  東証上場の2351社中、社外取締役のいない取締役会で監査役会設置会社が、1292社で全体の55%
 改定が予想される東証上場規則で、独立取締役の導入が義務付けられるか分からないが、3.の様な会社が過半数を占めるのだから、先ずは監査役の機能を強化してはどうかという流れもあるようだ。
 以下、金融審議会資料から、その案の内容を抜粋すると、
○社外監査役(社外取締役も)の社外性を、独立性の観点から厳格化する法改正
○監査役会議長は、社外監査役。社外監査役の役割強化
○買収防衛策に対しては、社外監査役(社外取締役)を構成員とする特別委員会で判断
○大規模第三者割当増資・親子上場について、監査役会による意見を開示
○株主提案については、その是非について監査役も判断するよう法改正
○監査人の選任・監査報酬に関して、現在の同意権から、提案権を新たに付与
○監査人による内部統制監査報告書の株主総会提出、併せて株主総会提出の事業報告及び監査役会監査報告に内部統制の運用結果等に関する評価を記載するよう法改正

 会社法によって、企業は多様な運用形態で運営されることが可能となったが、公開会社としての責任は、その運営の透明性を高める=つまり業務がどの様に管理され、また誰がどの部分に関して責任がなるのか明確にすることだと思う。


  
 

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