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2009/06
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日本の投信そして世界の投信動向
大業な標記になってしまったが、最近データを見るたびに少し違和感のある数字がある。
今年1月初めの株券電子化移行で、日本で流通する有価証券(日本で発行・組成されたもの)は全て株式保管振替機構に集約されたが、その中での投資信託は、公募・私募約6000銘柄が取り扱われている。
 市況の回復もあって、3月から投信の新規設定も増加しており、3月・4月其々約1700億円、5月約3400億円となり、既存のファンドへの資金流入も伝えられているが、株式保管振替機構の残高は約106兆円と今年に入って殆ど変化がない。
 一方、世界の投信動向に関しては、日本証券経済研究所から以下のレポートが公表されている。
金融危機発生後の世界の投資信託の動向
概要は以下の5つのポイントで、
①世界の投資信託は、2007年末の26.4兆ドルをピークに、2008年末は28%減少の19兆ドルへ
=上記数字は44ヵ国が加盟する国際信託協会の数字、その中で株式投信からMMFに資金が流出している。2009年に入っても第1四半期は、若干減少している模様だが、世界全体の株式投信残高の半分を占める米国の状況では、4月以降、株式投信への資金回帰傾向が見える。
②BRICs4ヵ国の投信残高状況
・ブラジル=残高4793億ドル、GDP比30%(日本は10.3%)、公社債投信が55%を占める。
・中国=残高2763億ドル、GDP比6.3%、株式投信が48%
・インド=残高628億ドル、GDP比5.2%、公社債投信・MMFで66%
・ロシア=残高20億ドル、GDP比0.1%、株式投信が55%
(※相当な増加余地があるということだろうか)
③米国MMF動向
・昨年9月のリーマンショックで、初めて個人向けMMFが、一時的に元本を割り込んだ(97%まで)。
・直後の2日間で、6%の資金流失
・米財務省がMMFの元本保証制度を導入。(米国のMMFは、小切手振出しも可能な決済手段、またMMFはCPの半数近くを買う投資家で、CP市場混乱を恐れての措置)MMFの元本を保証する最長1年間の制度(今年9月まで)で、保証金額の制限はない。
・この結果、昨年10月以降安全資産への逃避としてMMF残高が増加した。
④米国確定拠出年金(DCプラン)動向
=米国におけるDCプランは、2007年末で9.2兆ドル(2008年末、7.1兆ドルに減少)となっており、投信保有はその内約半分に相当する。特に株式投信の53%まで、DCプランの資金が占めていた。今回の金融危機に際して、運用を変更した人が37%、変更しない人が59%(2009年1月、マッキンゼー調査)と比較的冷静な対応。
⑤ETFの多様化が進展
・2008年末、世界のETF残高は7250億ドルと順調に成長(米国5312億ドルに対し、日本280億ドル)、2年以内に残高1兆ドル突破の予想も。
・保有者は、個人が5~6割、
・米国ETFの内訳は、50%が国内株指数連動、21%が外国株、11%が国内株セクター、10.8%が債券。6.7%が商品。スタート時の指数連動から多様化している。

以上の様な報告になっているが、最も注目すべきは、世界で5.8兆ドルと残高が積みあがったMMF、その逃避した投資待機資金の行方ということのようだ。
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2つのエクイティ・ファイナンス
先週、今年の資本市場の流れを象徴するような2つのエクイティ・ファイナンスがあった。
一つ目は、25日に公表されたラオックス(8202)の約19億円の第三者割当増資。二つ目は、26日に公表された大和証券グループ(8601)の約2400億円規模の公募増資。

 一つ目は、会社の再生にかける業務資本提携に関するもので、既にニュース等では好意的に取り上げられているが、蘇寧電器など中国企業2社との業務提携に依る。ラオックスは、自らの再生について郊外型家電量販事業から撤退して、本拠地の秋葉原での事業集約にするという。そこにアキバというブランドに価値を見出す中国企業が、業務資本提携で救済していくという内容である。そのファイナンスの中身を少し詳細に見てみると以下の様になっている。
≪調達資金≫19億円
≪新規発行株数≫125百万株別途、新株予約権部分が20百万株(既発行が約68百万株なので、第三者割当の株・新株予約権を合わせると、新株主の保有割合は2/3超となる。)
≪発行価額≫株は12円、新株予約権の行使価格は20円(中国企業との提携の報道がなされる6月中旬以前は30円台の株価推移、有利発行となるので7月24日の臨時株主総会において、発行決議が必要)
≪資金使途≫15億円は、秋葉原事業の強化の為、残りの約4億円は昨年2月に他のファンドに発行した優先株の償還代金。
≪経営参加≫この増資により、中国2社から取締役4名・監査役2名の過半数の役員が経営に参加する。
≪ポイント≫発行価額の12円は、時価から低すぎるようにも見えるが、増資の緊急性・業務提携のメリットなど株価は大幅に上場、200円を超える場面もあった。しかし、このファイナンスの可否を決めるのは、約3400名の個人株主に委ねられている。

 一方、二つ目の大和証券グループの公募増資は以下の概要となっている。
≪調達資金≫約2400億円相当とみられている。(今後の株価次第では、一割程度減少する可能性も)
≪新規発行株数・売出株数の総数≫新株発行に係るもの344.6百万株と自己株売出し分57.8百万株の合計402.5百万株(発行済株式数の28.6%に相当)
≪発行価額≫未定7月8日~13日までの日のいずれかの終値の90~100%未満。
実際は、上記の期間の重要を勘案して投資家が払い込む発行価格(募集価格)が決定され、それから引受手数料数%を差し引いた発行価額分が払い込まれる。
≪資金使途≫
リテールビジネス及びアジア・新興国を中心としたビジネス拡大の為に、子会社の大和証券中心に1250億円、ファンド出資金として480億円、残り600億円強は借入金返済へ。
≪ポイント≫
昨年来の金融危機を契機にした金融機関の大型ファイナンスが以下の様に相次ぐ。
昨年12月、三菱UFJファイナンシャルGの約2900億円の公募増資(他に3900億円の優先株調達)
3月、野村ホールディングスの約2900億円の公募増資
6月、三井住友ファイナンシャルGの約8600億円の公募増資
5月公表、みずほファイナンシャルG約6000億円の公募増資(他に優先出資証券で約1400億円を6月に調達)
この様に、金融機関の大型公募増資が相次ぐ意味を考えるのは、投資家なのだろうが、我が国の金融が、産業としてグローバルに戦っていくための必要な資本基盤と思えるように、斬新な事業戦略を示して欲しい。
金融機関は、資本市場によるところが大きいのだから、投資家や株主を感動させるような戦略取組みを、見せて欲しいと感じるのは、筆者だけだろうか。

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M&Aルール-英国の場合
 英国流のM&Aルールを導入していこうという動きがあるようなので、少し先回りして英国のM&Aルールについて触れたい。
 その前に、ルール導入の目的は、諸々の問題点の解決である訳だから、現在の日本でのM&Aに関した問題点を、簡略化して挙げてみる。
●買収防衛策=今年は若干減ったとはいえ、上場会社の15%近くが導入している。
●TOB及びTOB価格に対する判断。
●MBOなどにおけるスクイーズアウト(少数株主排除)の問題。
●TOB、MBOなどにおける利益相反問題。
●M&Aに係る第三者割当増資問題。
●M&Aに係るインサイダー取引。
これらの問題に係る紛争を、時間とコストのかかる裁判などで争うのではなく、「シティ・コード」という実務ルールと「パネル」という専門家会合の仕組みで判断・裁定しようとするのが英国のM&Aルールであるが、2004年のEUの企業買収指令によって、その仕組みに強制法規制と公的な地位が与えられている。
【シティ・コードについて】
6つの一般原則と38の規則からなっているが、一般原則(プリンシプル)は以下、
①買収対象の企業の株主は全て同じ扱い。支配権(30%以上)の株主がいる場合は、他の株主は保護されなければならない。
②TOBに関して株主は十分な時間と情報を有すべき、また取締役会はTOBの実施による効果の見通しを提示しなければならない。
③取締役会は会社全体の利益をもとに行動しなければならず、TOBのメリットについて決定する機会を拒否してはならない。
④対象会社・買収会社・その他TOBに関係する会社の株価が人為的に歪められてはならない。
⑤TOBで買収側は、オファーを受けた場合、すべて応じ、またその手当をTOB前に確保しなければならない。
⑥TOBによって、対象会社の業務遂行が合理的な範囲を越えるほど長期にわたって妨げられてはならない。
となっている。
具体的なルール事例として、TOBの買収者側に課されたもので以下がある。
・単独又は共同で30%以上の議決権に相当する株式を取得しようとする場合、他の全ての株主に株式買取りの申し込みを行わなければならない。ただし、救済などの理由でパネルが認めた場合は免除される。
・上記の場合、原則現金による買付け。
・TOB買付価格について、TOB前の12カ月以内に既に取得した株式があれば、その取得価格の最高価額を下回ってはならない。
・買付者は、上記を行うに十分な資金力があることを明らかにしなければならない。
【パネルについて】
パネルは、イングランド銀行の賛助のもとに運営され、シティ・コードを運用する独立の自主機関である。パネルの正副議長3名と産業界からの独立メンバー3名は、イングランド銀行総裁が任命し、その他のメンバーは、パネルが任命したり、銀行家・会計士などの専門職業団体から任命される。

 今までの日本におけるM&Aルールは、買収防衛策にしろ、ポイズンピルにしろ、米国型の判例を中心としたものが主流だった。その意味では、日本においてもM&AやTOBに関する判例が揃ってきたと思うが、時間もコストも掛かることが、株主に有利に働くとは限らない。
英国ルールの様に、一般原則(プリンシプル)をベースに、M&A当事者とパネル事務局の任意のやり取りで殆ど済んでしまうのであれば、時間という貴重な資源を、株主も企業も失うことが少なくなるかもしれない。業界の大人のルールとして、実現まで関係者は頑張っていただきたいと思う。

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株価対策法案の行方
 今は多少懐かしくなった株価対策法規制絡みの現状を、整理してお伝えしたい。
株価対策には2通りあって、一つは市場の極端な売り圧力を緩和する為に空売りを制限するもの、二つ目は、市場から何らかの形(間接・直接)で株を買い上げようとするもの、に分かれていた。
 一つ目の空売り規制はグローバルな金融施策となっており、証券監督者国際機構(IOSCO)でも19日に、各国の市場や市場監督機関が空売りに関する情報を共有したり、フェール(約定されても実際に決済が実効されない)など監視・検査を強化していく4つの原則が以下の様に公表されている。
IOSCO は実効的な空売り規制のための原則を公表
日本においても、時限措置で以下の空売り規制が強化されている。
①売付けの際に株の手当てがなされていない空売り(Naked Short Selling)の禁止。
②発行済株式総数の原則0.25%以上の空売りポジションの保有者に対する、証券会社を通じた取引所への報告の義務付け。取引所による当該情報の公表。
(証券会社毎のPDFファイルで、記載様式もまちまち。銘柄毎にまとめていただく取引所のサービスがあってもいいと思うのは、筆者だけだろうか)
③(空売り規制ではないが)上場会社の自己株式取得規制の、一日平均出来高の25%以内・取引終了30分前の買付け禁止それぞれの措置を適用せず。
これらは、7月31日までの時限措置である。
一方、一時は20兆円株価対策などと騒がれたものもある株式取得機構に関する法案であるが、以下の3つの議員立法による法案提出がなされている。
【A案】銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案(柳沢議員他8名の提出で、既に成立。3月4日に公布され5月から施行されているもの)
【B案】銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案(大野議員他11名の提出で、衆議院は通過、参議院は6月17日財政金融委員会へ付託)
【C案】資本市場危機への対応のための臨時特別措置法案(大野議員他11名により4月27日に議案として提出され、5月7日に衆議院財政金融委員会へ付託、審議中)
【A案の内容】
・銀行等保有株式取得機構の金融機関からの株の買取りは、平成24年3月末まで延長
・銀行等保有株式取得機構の存続期限を平成34年3月末まで延長
・銀行と株式持合いをする会社(子会社分まで含めて)から、銀行株を買取る制度を新たに新設。これも平成24年3月末まで。
・上記の場合、相手の銀行が保有する当該持合いの会社株式について、その銀行が6カ月以内に申し込めば、取得機構はこの会社株式を買取ることができる。
【B案の内容】
・金融機関が保有する上場REITやETFの買取りを、平成24年3月末まで買取ることが出来る。
・買取り対象の銀行保有株及び上場会社が保有する銀行株式について、優先株式を買取対象として加える。
【C案の内容】
・資本市場危機対応機構を設立して、上場ETF中心に平成24年3月末まで市場から直接買い付ける。
・何らかの株価指数に連動する上場ETFに採用されている銘柄の株式一括買付けや、株価指数に連動する市場デリバティブ取引も行える。
・上記の買付実行は、金融危機対応会議で決定され、国が認定した上で実施。
・機構の資本金は国が出資、買付けに必要な資金は銀行借入若しくは債券を発行して調達することが出来る。その債券には国の保証が付く。(この部分が20兆円との話が、ニュースとして流れた。)
・機構は平成24年4月以降、業務を行わなくなった時に解散する。
【A】案は、既に成立し【B】案も成立すると予想されるが、【C】案は市場の回復もあって審議が進んでいないので、成立までは危ぶまれているようだ。
しかし、思い返してみると法案提出から今まで銀行の大型ファイナンスが、この件で多少救われたところがあるかもしれない。その意味では、市場回復と金融危機対応に、これらの議員立法による法案は十分貢献しているようにも思う。

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金融商品取引法改正
 金証法改正案が6月17日参議院本会議を通過して成立したので、この内容について両院の付帯決議も併せて、改めてご紹介したい。
【信用格付業者(=格付機関)に対する公的規制の導入】
・それまでの格付機関を“指定”する方法から、業者として“登録制”へ移行
・登録を受けた業者は、以下の義務を負う
-誠実義務
-格付格付け方針等の公表、説明書類の公衆縦覧の情報開示義務
-利益相反の防止、格付プロセスの公正性確保等の体制整備
-格付対象の証券を保有している場合等の格付の提供の禁止
・業者に対する報告徴収・立入検査・業務改善命令等の監督規定の整備
・無登録業者(格付機関)の格付け利用について、勧誘を行う場合は、無登録格付けである旨の説明義務
〈衆議院附帯決議、参議院の附帯決議も同様〉
○国際的な動向を踏まえて機敏に対応。日本の国情に配慮。
○利益相反の回避について、実効的な規制を。
○格付け後のモニタリングの実績の公表を義務化することを検討
【金融分野における裁判外紛争解決制度(=金融ADR制度)の創設】
※銀行法・保険業法との共通の枠組みを横断的に整備
・国が業態ごとに紛争解決機関を指定。複数の業態で指定を受けて横断的指定紛争解決機関になることも可能。
・苦情処理・紛争解決の手続き(弁護士等が参加)に関する諸規定の整備
・手続きに、時効の中断及び訴訟手続きの中止の法的効果を付与
・紛争解決機関と金融機関の以下の内容を含む契約の義務付け
-苦情処理・紛争解決手段の応諾
-事情説明・資料提出
-和解案の尊重
・紛争解決機関がない場合は、金融機関が苦情処理・紛争取組みを実施
・指定紛争解決機関に対する報告徴収・立入検査・業務改善命令等の監督規定の整備
〈衆議院附帯決議、参議院の附帯決議も同様部分〉
○横断化の取組みを促すこと。郵貯・簡保についても同様の措置を講ずること。
○紛争解決機関相互の連携について確保をはかること。金融サービス利用者相談室(金融庁)のあり方を検証する。
○紛争に関する情報の集約を行い、国・国民生活センターなど関係者との連携を強化
〈参議院のみの附帯決議部分〉
○金融のコングロマリット化の進展に伴う、優先的地位の乱用や利益相反行為にも配慮
【特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)の移行手続きの見直し】
・プロからアマへの移行の有効期限は1年だが、これを顧客の申出があるまで有効に。
・アマからプロへの移行は引き続き1年だが、それ以前の申出があればアマに戻ることを可能に。
【有価証券店頭デリバディブの分別管理義務の導入】
・金融機関間の取引など投資家保護に支障ないと認められるものを除き、新たに分別保管義務の対象に。
【金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れ】
・株式会社金融商品取引所が認可を受けて商品市場を開設できることを明確化
・金融商品取引所と商品取引所が其々を子会社とすることか可能であることを明確化
・金融商品取引清算機関が、承認を受けて商品取引のクリアリング業務を行うことができることを明確化
〈衆議院附帯決議、参議院の附帯決議も同様部分〉
○金融と商品の其々の監督当局間の密接な連携を図り、縦割り行政の弊害を排除する措置を講ずること。
〈参議院のみの附帯決議部分〉
○金融商品取引所の業務運営、情報開示等が一層適切に行われるよう監督当局が配慮。また天下り問題に注意。
【開示制度見直し】
・発行登録制度で、発行予定額に変えて、発行残高での記載を容認。
・既発行有価証券の売付け勧誘等について、有価証券の性格や投資家の属性(機関投資家のみ、多数の一般投資家)に応じた、法定開示・簡易な情報提供・開示免除の3種類の開示規制を整備
≪施行日≫
公布から一年を超えない政令で定める日(来年6月末ごろまでか)。ただし格付機関への規制と金融ADR制度創設は、公布から一年半を超えない日。

筆者の感想としては、金融審議会での議論より、より個人投資家保護色が強まっていて、規制としてはコンサバに強化されている印象を拭えないのだが。

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地方取引所について
 地方証券取引所は、本当に必要なのかという議論をよく耳にする。
結論からいうと、間違いなく必要なのだが、それは存の公開株式を売買する投資家の為ではないようだ。
既存の株式は、電子化されデータとなっているので、どこの誰でも、そのデータにアクセス出来れば、取引は出来る。名古屋、札幌、福岡の各取引所は、その売買システム・情報システムに関して既に東証のシステムに乗っているので、その地方の投資家が、その地方の上場株式を売買する場合であっても、別に地方取引所である必要はない。東証と地方取引所の重複上場のことをいっているのではない。
地方取引所の単独上場銘柄であっても、既に売買・情報インフラは、東証のものを使っているのだから、形だけ、東証の“地方部”として、東証で実質的に売買しても、問題はない。
 また地方の企業に不便かというと、売買も情報も、データ化されて、全国の投資家に伝わるので、取引所がどこにあるかは、彼らの問題ではない。新興企業や地方企業は、取引所によって多少上場基準という入口が違うが、成長する企業株を、売買する前提であれば、これも大きな問題ではない。
取引参加者の多くは、東証や大証の参加者なので、市場仲介者の多くも困らない。
多少の暴論覚悟だが、公開株式は東証か大証に集約してしまっても、実は大した問題ではないのだ。
この基準だけで議論すると、常に地方取引所の不要論がでる。
また、地方取引所の運営についても問題がある。
それは取引所の成り立ちに係るが、取引所とは、そもそも取引参加者による取引の場の提供から始まったので、建前上、その運営は、取引参加者である取引所会員によって為される会員制組織である。株式会社されても、会員である証券会社が株主へ入れ替わっただけなので、ガバナンスは、取引参加者である証券会社が握る。その取引参加者の多くは、東証や大証の取引参加者でもあり、別に地方で取引参加するインセンティブは、その全国ネットの証券会社にはない。つまり、ガバンンスを握る全国展開型証券会社に、地方取引所活性化の差し迫った目標を押し付けるのは、無理がある。また、地方取引所の人員不足により、地域の有力企業や金融機関から、スタッフが出向しているが、そのスタッフ中心に、地方市場活性化議論をしてみても、目新しい施策は出にくい。

それでも、やはり地方取引所は必要なのである。
それは、資本市場の裾野拡大の為である。二つの目標があって、
①中小及び新興企業(上場前の)の資本市場機能利用の場の提供
②地域機関投資家の投資関連情報共有の場の提供
と筆者は考える。
時価総額10億以上の企業しか相手にしない、運用資産10億以上の投資家しか情報が流れない・・・そんな大手投資銀行ビジネスモデルを超えて、中小利用型地域投資銀行モデルをサポートする場の提供にこそ、地方取引所の活路があると考える。
具体的には、
・放置されているグルーンシート市場及びフェニックス市場の再活用
・ベンチャー、地方再生ファンドの流動化支援
・私募債流通市場
・地方債流通市場
・地域ファンド組成とその流通
等あると思うが、地方取引所として議論する相手は、これらの売買に関与することが想定される新しい取引参加者である地域金融機関及び地域ファンド等ではないだろうか。
少なくとも、東証と同じ目線で、新興市場活性化策を議論するのは、地方においては意味がないと筆者は考える。

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保険という金融商品
金融審議会の“保険の基本問題に関するワーキング・グループ”において、金融商品としての保険のあり方に関する議論が纏まり、“中間論点整理”という形で19日に公表された。
 ここで、振り返って金融商品としての保険について考えてみたい。
そもそも「保険」とは何か。広辞苑を引くと、「人の死亡・火災などの偶発的事故の発生の蓋然性が統計的方法その他によってある程度まで予知できる場合、共通にその事故の脅威を受ける者が、あらかじめ一定の掛金(保険料)を互いに拠出しておき、積立金を用いてその事故(保険事故)に遇った人に一定金額(保険金)を与え、損害を填補テンポする制度。」とある。引用が長くて申し訳ないが、これは金融商品なのだろうか。長年、金融商品の開発に携わってきた身とすれば、やはり多少違和感がある。しかし、証券も銀行も窓販において保険商品を売ってきた。
銀行の保険商品販売の経緯は、
※2001年4月:信用生命保険、火災保険や海外旅行保険など解禁
※2002年10月:変額年金、定額年金を解禁
※2005年12月:一時払い終身・養老保険、個人向け損保商品(自動車保険を除く)を解禁
※2007年12月:終身保険や定期保険などの死亡保障保険と、医療保険やがん保険、自動車保険など全面解禁
となっているが、保険と投資の複合商品としての変額保険は、販売時の手数料も大きいこともあって、ここ5年間では平均で50万件以上の新規契約数を増加させていた。
 金融商品として、何が問題なのだろうか。
保険契約として膨大な約款からの分かり難さ・保険料不払い、未払い問題・そして最近の変額年金保険の販売停止。
そろそろ金融商品として、整理する時期にきているのだろう。ワーキング・グループの報告書概要は、以下の様になっている。(なお、カッコ内は筆者の私見)
○情報提供の義務:「契約概要」(簡易目論見書に相当)、「注意喚起情報」(リスク情報開示)などが既に導入されているが、募集時の説明義務を強化すべく、これらの書面交付義務を法定化。
○適合性の原則:これも既に導入が始まっている「意向確認書面」の法定化。
○募集文書:募集時の文書が全体に多すぎるのでこの簡素化と、約款を読み易く簡易化すべき。当面は、「契約概要」の活用状況を検証
○公告規制:保険商品は一旦誤認されると訂正が難しいので、自主ガイドラインの検証と運用の強化
○募集主体:平成7年に導入された“保険仲立人制度”の利用が進んでいないので、制度の見直し
○募集コスト開示:代理店が保険会社から販売に際して受け取る手数料情報の開示を検討
○募集人の資質向上:不払い・支払い漏れ問題を踏まえて、研修・試験制度の改善
○保険金支払い:支払いへの迅速な調査義務、支払い請求への情報提供義務・注意喚起義務などのルール化
○商品のあり方:簡素化を進めるべき
○保険料積立金等の支払:解約返戻金に係る商品審査基準を明確化等

保険商品は、人のライフ・スタイルやライフ・サイクルなどのライフ・プランに関係するので、人々の生き方が多様ならば、それに即した多様性があってもいいと、筆者は考える。
しかし、貯蓄性や投資性などの金融商品と結びついた時、どの部分がライフ・プランに関したリスクで、どの部分が金融商品としてのリスクか、明確に説明出来るのでなければ、金融商品取引業者としては成り立たない。

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市場仲介者としての証券会社の取組み
16日、日本証券業協会より証券業界として取り組むべき施策・政策要望について取り纏められた報告書が公表された。
 証券業界を先導して協会が推進していく施策と思うが、内容は以下の4つに纏められている。
【1】金融リテラシーの普及推進について
【2】市場仲介者に求められる役割について
【3】投資家との対話を重視したコーポレート・ガバンンスの推進について
【4】投資環境の整備について
となっているが、【1】は今までの学校における金融教育中心の取り組みで、多少目新しいのは上場会社の役職員に対するインサイダー取引規制・確定拠出年金制度や日本版ESOP知識普及である。また【3】については、経済産業省の研究会や金融審議会、取引所で相次いで公表されているので内容は省略する。
 問題は、市場仲介者の証券会社の協会であるのだから、【2】で市場仲介者として証券会社に何を行わせるか、若しくは協会として何を行うかの具体策である。
①顧客満足度の向上に向けた取組みの強化
※CS調査を実施する証券会社が、全体の6割ということに不満らしい。
②証券会社のディスクロージャーの強化
※FX業者も含めて最近色々な形の証券会社(第一種金融商品取引業者)が増えてきたが、300以上ある証券会社のうち上場会社は18社のみ。業法で店頭備置が定められる業務報告書でさえ協会で閲覧できるのが50社にも満たないのが現状。一般投資家向けに、協会として真剣に取り組んで欲しいと筆者は考える。
③証券会社のCSRの取組み等の強化
※証券会社の取組みが62%と銀行87%・保険79%に比べて低いとのこと。
④証券会社のコンピューターシステム安全基準作りへの関与強化
※金融情報システムセンターで行っている安全基準づくりへの参加が17社(参加金融機関は669社)のみ
⑤反社会的勢力に関する情報収集の強化と照会業務の拡充
※取引・ファイナンス・IPOなどの“反社会的”のチェックは厳しくなっているが、確認するためのデータベース整備は協会として早急に行うことが証券会社から望まれていた。
⑥横断的かつ包括的な裁判外の苦情・紛争化解決サービスの提供
⑦証券市場における不適切行為等の早期発見及び対応に向けた
※上記2つは協会そのものの問題のように感じるのは筆者だけだろうか。
以上は、其々が証券会社として大事な事案だろうが、市場仲介者としての投資家に望まれる重要な取組みは以下の【4】で取り上げられたことかもしれない。
①資産運用手段の拡大
・確定拠出年金制度(日本版401K)の拡充=拠出額の拡大や主婦や公務員の参加が望まれる。
・投資家ニーズに合わせた商品・サービスの多様化=取り合えず投信商品の多様化。
・社債市場の活性化=個人も利用できるような市場環境の整備。個人の社債投資も増えているので、本気で早急に整備する努力をして欲しい。
②投資を促進するための税制の構築
・少額の上場株式等の非課税措置(日本版ISA)の適正な実施
・金融所得課税の一本化の推進
・納税者番号制の積極的な検討
・配当の二重課税の撤廃
・子供を対象とした税制優遇投資スキーム(日本版 Child Trust Fund)の創設に向けた検討
③金融・資本市場統計情報等の整備・充実
※協会の市場関連データは、業者へのヒアリングベースが多くて、使い難いというのは筆者の個人的感想。
税制改正要望に力点があるようにも思うが、投資家にとっては重要なことなので、オバマ流に、数値を定め、期限を決め、優先順位をつけて取り組んでいただきたい。

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コーポレート・ガバナンス向上の目的は
上場会社のコーポレート・ガバナンスについて、永年議論されてきた。金融庁の金融審議会での“我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ”において2年半、経済産業省では研究会の名称が変わっていったが、ここ5年以上は議論されていた。
 そもそも、このコーポレート・ガバナンス向上は、何の為だったのだろうか思い出してみたい。前商法の改正・会社法制定により、委員会設置会社など会社形態の選択肢は随分広がった。また取締役会の権限も強化され、企業統治のあり方もコーポレート・ガバナンスとして議論された。しかし、日本の企業の企業統治のあり方とは別に、これは上場会社のコーポレート・ガバナンス強化なのだ。
 10年以上前の前回金融危機で、金融機関の保有する株式の受け皿として、外人か個人しかいない中、国際的な投資基準として、海外に通用するコーポレート・ガバナンスの強化が求められていたはずだった。
 その間、買収防衛策議論や不正会計処理、MBOやM&Aでの取締役会と株主の利益相反問題などが顕在化した。米SOX法などの影響もあり、内部統制も強化されたが、日本の上場会社のコーポレート・ガバナンスは、国際的な投資基準からみて改善されたのだろうか。
 17日、金融審議会のスタティグループ・経済産業省の企業統治研究会それぞれがコーポレート・ガバナンス向上にむけた報告書を公表した。金融審議会の方は、既に拙稿(6月11日)で取り上げているので、ここでは企業統治研究会報告書の提言概要について紹介したい。
提言内容を纏めると、
上場会社の企業統治の形として、以下の3つの形態がある前提で、
A:委員会設置会社(東証上場企業の2.3%)
B:監査役会設置会社で取締役会に社外取締役がいる(同43.7%)
C:監査役会設置会社で取締役会に社外取締役がいなく、監査役会の社外監査役のみ(同55%)
カッコ内の実情を踏まえて、
【社外役員(取締役・監査役)の独立性】
・当該会社及びその子会社のCEO等でない事に加えて、親会社・重要な取引先の親族も含めてCEO等でないことを独立性の要件に。(3ないし5年年限が経過していれば要件を満たすとの考えもあり)
【社外取締役】
・一定数の社外又は独立取締役の導入をルール化。
・導入が困難な場合は説明を求める。
【法規制】
・会社法改正と上場規則等の制定を組み合わせる前提。
以上のような内容となっているが、昨今の経済危機を意識して、欧米型ガバナンス強化への信頼の揺らぎがあるのだろうか、独立性の確保に関しては少しトーンダウンしている感がある。
 しかし、この上場会社のコーポレート・ガバナンス強化について、別に欧米の年金基金向けだけではなく、新興国の機関投資家など、国際的な投資判断基準に耐え、かつ先端を走って海外投資家の信認を得ていかなければ、資金は東京市場に集まらないとの認識が、市場関係者にはあったはずだ。
 この基本に帰って、東証ルールでの規則整備を関係者には望みたい。

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経済界の要望―金融関連
16日、日経連より2009年度日本経団連規制改革要望が公表され、金融関連でも10の規制緩和要望が出されている。その内訳は、企業のディスクロージャーに係るものが2つ、銀行業務に係るものが6つ(うち信託が1つ)、保険業務に係るものが2つとなっていて、証券業務に関する要望がないのは、少し寂しい。この内容に関して、資本市場的視点で、以下に取り上げてみたい。
(証券業界としての問題は、日本証券業協会が同日の16日に、“金融・資本市場に関する政策懇談会”報告書を公表しているが、上記の件と直接繋がらないので、後日取り上げる。)
【企業のディスクロージャーに係るもの】
①物的分割時のおける有価証券届出書の廃止
-分割時に新会社の株式を割当てることから、自動的に有価証券届出書提出義務を負い、その後の5年間の継続開示を義務付けられる。その事が分割した会社の負担となる。その為、新会社の株主50名未満なら、そもそもの有価証券届出書提出義務を負わないことを要望。かなりテクニカルな事象ではあるが、開示制度の目的を考えれば、筆者もその通りと考える。
②四半期報告書制度の簡素化
-45日以内に監査証明を受けて公表する内容が多くて負担・四半期決算短信と整理統合を要望。東証の開示制度である決算短信との整理要望は分かるが、ディスクロージャーは資本市場の基本なので、企業側の努力は必要。まして内部統制を進めたはず。ただし、新興企業への開示負担に関しては、軽減策検討の余地があると考える。
【銀行業務に係るもの】
③不動産デリバティブ取引等の差金決済型デリバティブ取引の解禁
-銀行でも排出権や商品のデリバティブが出来るのだから、不動産や船舶運賃のデリバティブも銀行及び証券子会社で認めて欲しいとの要望。取引参加者が増えることは良い事だが、筆者の不明でこの様な要望が銀行にあるのは知らなかった。
④銀行の株式保有ルールである5%ルール・15%ルールの運用対象から信託資産を除外すること
-銀行も信託業務を行う現状では、信託との同様の措置(信託は既に除外)が望ましいと考える。
⑤業務報告書等の見直し
-開示制度・取引所開示で重複する部分も多いので、銀行や保険持株会社の業務報告書は簡素化若しくは廃止を要望。これについて、筆者は少し違和感がある。そもそも業法で定められた業務報告書は、証券会社も提出・備置義務があるが、一般へのディスクロは義務化されていない。未上場会社が多くなった証券などは、むしろ積極的な業務報告書の公表が求められる。
⑥銀行代理業の許可要件に関する規制緩和
-届出期限・内容の簡素化、銀行の子会社の兼業承認基準対象外へ。
⑦信託契約代理業に係る規制の適正化
-信託契約の内容によって、信託契約代理業なのか金融商品取引業なのか、その定義を整理して欲しいと要望。(現状=自益信託→金融商品取引法、他益信託→信託業法)
⑧コミットメントライン契約の借主の対象範囲拡大
-中小企業(資本金3億円以下)や地方公共団体、学校法人、医療法人、相互会社、海外債務者、また証券化のための合同会社、有限責任中間法人を対象範囲に新たに加えること。また証券化の適格借入人に、PFIや船舶ファイナンスに係るSPCを加えることなどを要望。
【保険業務に係るもの】
⑨特別勘定に関する現物資産による保険料受入、移受管
-年金制度に現物拠出する場合、コストや市場への影響を避ける目的で、株、債券等の現物資産による保険料受入、移受管を可能にする要望。
⑩保険会社における会社分割等の単位の見直し
-責任準備金の問題点の整理

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不動産証券化そしてJ-REIT
 ここ10年の金融の中での最大の功績は証券化の進展だろう。確かに直近の金融危機で、証券化商品がフリーズしてしまって、危機の主犯の一人にされてしまっているが、どんな取引にもバブルのような過熱と、その修正はある。しかし、証券化によって、新たな流動性が与えられ、原資産市場が拡大した功績は、否定できない。その恩恵は、バブル後の日本の不動産市場においても、証券化により、その回復が支えられた。
 日本の不動産は、2300兆円の規模があるそうだが、その中で法人所有不動産が490兆円うち賃貸可能なものは68兆円あり、その中の42兆円は、既に何らかの形で証券化されている。
 住信基礎研究所が、今年一月時点で行った不動産私募ファンド実態調査によると、私募ファンドが13.2兆円、J-REITが7.4兆円となっており、合わせると20兆円を超えて、証券化された不動産のうち半分近くが、投資家の手に渡っていることになる。
 同調査は、半年ごと5年間実施されてきたが、私募ファンドの前回半年前の13.5兆円から市場規模が減少したのは初めて(J-REITは変わらず)。昨年は、ファンドを運用する不動産会社の破綻が相次いだり、それまでの出口の受け皿としてのJ-REITでの初の破綻で、私募ファンド自体の流動性に関する問題が顕在化している。組成基準などの標準化、運用などの開示の透明性の確保と、どこの証券化市場でも問題は同じだろうが、出口戦略を見直して、ファンドの転売をし易くすることだろう。
買い手として期待されているのは、国内年金基金・海外機関投資家・国内富裕層だそうだが、売る手としては、地方銀行を初めてとする金融機関が見込まれている。
 一方、制度発足7年にして初めてその成長が止まったJ-REITだが、金融商品としての諸問題も顕在化してきている。例えば、上場株式は、会社法と金融商品取引法が前提となっていることは誰でも知っているが、J-REITは、“投資信託及び投資法人に関する法律”(投信法)と金証法。この会社法と投信法の違いは、J-REITのファイナンスやM&Aなどにどの様に影響するのか。また、コーポレート・ガバナンスに準じる仕組みはどうなっているか(運用会社と投資法人に分かれる仕組みは、どの程度投資家に理解されているか)。これらのJ-REITに関する問題を、不動産証券化協会のワーキンググループで議論している。ポイントは以下。
【合併や再編】
・合併やM&Aに必要な税制・法規制・取引ルール・非上場化等の整備
【ガバナンス】(投資法人と運用会社に分かれている仕組みを前提に)
・投資法人による運用会社の忠実義務等の監視強化
・運用会社における社外取締役の選任
・運用会社の報酬体系のより一層の工夫
【ファイナンス】(以下の法整備)
・株主割当増資
・転換社債
・種類株
・自己投資口の取得(自己株買に相当)
・配当の自社株交付(株式配当)
・減資規定の創設
【投資家層拡大】
・株式や投信の認知度に比べて大きく劣っているが、銀行窓口での販促に期待
・年金への普及促進
【情報開示】
・英文開示、NOIや直接還元利回り等の開示、物件取得時の長期修繕費用の開示等
・住宅価格指数(米のS&Pケース・シラー住宅価格指数のような)の開発
などが上げられている。

同時に公表された参考資料がよく出来ていると思うので、時間があればご覧いただきたい。
ワーキンググループ参考資料

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ヘッジファンドについて
 休日の14日、午後9時からNHKスペシャル“マネー資本主義 第3回 年金マネーの“熱狂”はなぜ起きたのか“で、ヘッジファンドに関係する人々及びヘッジファンドに運用を頼った年金基金の姿が取材されていて、金融関係者として、改めて考えさせられることが多くあった。
 何故、通貨当局も脅かすソロスの様な特別な人は別にして、本来は一部の富裕層の資金運用に特化していたヘッジファンドに、巨額なお金が集まったと命題に、カルパース(CalPERS=カリフォルニア州職員退職年金基金(The California Public Employees' Retirement System)の略称)の事例をもって説明されていた。
 1990年代、カルパースは運用難から株式投資枠を増やし、それが上手く行った後2000年のITバブルの崩壊で損失を抱え、その損失を取り返す為、代替投資としてヘッジファンドに投資を増やした。そのこと自体は、上手く行って、そしてヘッジファンドには、多くの年金基金からお金が集まった。
 日本においても、証券や投資銀行の営業マン達が年金基金などの機関投資家に対して、代替投資=オルタナティブ投資の必要性を説き、ファンドを売り回った。そんな中に、番組でも取り上げられた青果市場の年金基金があったのだろう。彼らがヘッジファンドに投資した理由は、まったくカルパースと同じものであった。
 この年金運用担当者が、昨今の金融危機でヘッジファンド運用においても大きな損失を被り、その対応が報じられていた。折しも、世界的な金融危機の後では、このヘッジファンドを規制していこうという動きが強まっている。4月の金融サミットで合意された内容を再度取り上げると、
☆ヘッジファンドおよびファンド・マネージャーの登録制の導入
☆レバレッジ等の情報を継続的に金融当局へ報告
☆グローバルな取引に対応する為、上記の情報は関係金融当局間で共有することを目指す
☆以上のことを2009年末まで実施
☆ファンドのレバレッジを監視し、取引相手である金融機関のエクスポージャーを制限する努力をする
ということが、各国の金融当局者間で合意されている。
 今は、欧米で金融危機の原因探しのようなことをしている(巨額の財政出動を伴ったので、議会対策として)が、その中に以前から実態があまり明確でなく、その割に影響の大きいヘッジファンドも含まれてしまった。金融危機前後の商品相場の急騰と急落、そして株式市場の急落への不安や不満から、ヘッジファンド規制は、当然の様な流れが出来てしまった。
 しかし、金融危機の原因は、ヘッジファンドでないことは、金融関係者のみならず金融当局者自らもご存じだ。代替投資は、機関投資家には必要で、ヘッジファンドはその受け皿として重要な役割を果たすであろうことも知っている。
では、何がヘッジファンドの問題なのか、識者の言われる点を以下に上げてみた。
(カッコ内は、筆者の感想がある場合のコメント)
○大きな空売りを仕掛けてきて、相場を崩す。
(ネーキド・ショートの様な手当がされない空売りは問題だと思うが、レンディングが出来るのなら問題はない。ヘッジファンドの問題ではなく、取引業者やシステムの問題と考える。)
○大きなレバレッジをかけてくる。
(これも与信を与える金融機関や取引業者の問題)
○実態が掴みにくい。
(本年中に、実質登録制へ移行される予定)
○運用ルールやガバナンスが不透明。
○時価が分かりにくい、解約しにくい。
(上記2点は、ファンドの出資者の要請に応じて、ヘッジファンド間で競争が進み改善されることが期待される。)
NHK番組での以下の2つが強く印象に残った。
・ヘッジファンド運用者が、年金基金は貪欲な要求をぶつけてくるといったこと
・青果市場の年金基金運用者が、ヘッジファンドは結局分かりにくいので運用を止めることを考えるというコメント

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信用金庫と信用組合
信用金庫と信用組合は、それぞれ会員(組合員)間の相互扶助を目的として設立された協同組織金融機関であるが、当事者の方々(信金281金庫で約11万人、信組164組合で5万人、8万人強の証券界の1.5倍の従業員規模)には申し分けないが、信金と信組は一体なにか違っていて、そして何が問題なのか、少し整理してみたい。
【実態の概略】
○信金・信粗とも協同組織の非営利法人
○出資は、実質的に地域(信組の場合、業種、職域別もある)を制限された会員(組合員)で、個人もしくは、規模を制限された法人。実態は、従業員が50人未満・売上規模5000万未満の企業が95%を占める。
○預金を預かることに関して、信金は制限がないが、信組は組合員以外の預金は20%までに制限。実態は、殆ど地元の個人・中小企業から。
○貸出に関する制限は、地域外(信組によっては、業域・職域制限)への制限がある。また、会員(組合員)外への貸し出しは、信金は総資産の30%、信組は20%に制限される。
となっていて、以下の問題点を考える上では、大きな違いとはいえない。
【問題点】
○預貸率は、両者とも50%台半ばに低迷している。貸出以外の預金は、預け金として信金中央金庫や全信組合連合会の中央機関に預けられるのと、有価証券で運用されるが、有価証券運用の方が多い現状では、昨今の金融危機の影響が懸念されている。
○地元中小企業への貸出が中心なので不良資産比率が、平成19年度では信金6.4%・信組10.3%と、地銀の4.4%に比べて高いが、最近の経済危機で、更に上昇していると見られる。
○会員は約920万人、組合員は360万人と、合わせると全世帯数の4分の1に及び、この状況は20年間変わらない
 以上のような信金・信組の実態を基に、金融審議会のワーキング・グループでは、そのあり方について現在議論されている。
【議論】
・中小企業から資金を集めて、中小企業へ貸し出す相互扶助的組織なのだが、本当に資金を必要とする中小企業に資金が適正に回っているのか。特に新規案件や再生支援など、地元が期待する企業へのコンサルティング機能は、果されているのか。
・金融機関のガバナンス組織の在り方として、総代会制度(株主総会に相当)や理事会制度(取締役会に相当)・監事制度(監査役会に相当)の改革が必要ではないか
・組織の在り方や業務内容(余剰金の運用など)に対して、ディスクロージャーを高めるべきではないか
等であるが、大前提となってるのは銀行などの金融機関とはことなる相互扶助を目的とした金融機能は必要だということである。

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コーポレート・ガバナンス改革-その全体像
 上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する強化案が、6月10日金融審議会の“我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ”で、報告書案として明らかになった。
このスタディグループでの議論は、過去何度か取り上げたが、報告書案も出たところであり、その全体像を紹介して、今後の展開を推測してきたい。
 報告書案によると、コーポレート・ガバナンスの問題は、企業と投資家双方の問題としているが、まず資本市場における企業の問題行動を、規制する事項として、以下が挙げられている。
1.新株式の発行等
(ア)第三者割当増資一般についての対応
―資金使途の詳細・割当予定先との資本関係・事業上の契約や取決め・割当先の保有状況や保有方針の詳細・増資資金の手当ての確認などの開示を、法定開示及び取引所ルールで。
有利発行かどうか明確でない場合、発行価額について監査役の意見表明及びその公表の義務化。
(イ)希薄化や支配権の移動を伴うような大規模な第三者割当増資等への対応
―第三者からの意見表明若しくは株主総会決議へ。取引所でのチャックの強化。
(ウ)MSCB等の発行に対する対応
―既にルールは整備されているが、MSCBに類似した取引も対象へ。発行条件の合理性や行使状況を開示。
(エ)当局や取引所等における執行面の充実・連携強化等
―金証法157条(不正行為の禁止)違反も、課徴金の対象へ。
2.キャッシュアウト
―現金を対価として行う少数株主の締め出しに関して、第三者割当後の予定がある場合は、開示を義務化。
3.グループ化
―子会社の経営上の重要な行為や経営状況が、重要な影響を与える場合の、当該子会社経営陣の見解の開示。
4.子会社上場
―取引所ルールで、親会社から独立性の高い社外取締役及び監査役の選任を求める等、少数株主の利益に配慮。
5.株式の持合い
―持合い状況の開示へ。銀行保有株については、銀行等保有株式収得機構の活用等で解消することを望む。
次に、会社の機能であるガバナンス機構に関しては、
1.取締役会のあり方
―取引所がコーポレート・ガバナンスのモデルを提示、上場会社はガバナンス体制の内容とそれを選択した理由を開示。
2.監査役の機能強化
―監査役監査を支える人材・体制の確保、独立性の高い社外監査役の選任、財務・会計に知見を有する監査役の選任。
3.社外取締役・監査役の独立性
―独立性に関する会社の考え方の開示
4.監査人の選任議案・報酬の決定権
―監査人の選任議案・報酬の決定権を、監査役の権限とする。
5.役員報酬の開示
―役員報酬の決定方法及び報酬の種類別内訳の開示。
また、投資家による議決権行使等もめぐる問題については、特に機関投資家の議決権行使について、
①受託者責任に基づく適切な議決権行使の徹底
②議決権行使に関するガイドラインの作成及び公表
③議決権行使結果の公表
が、機関投資家それぞれに求められており、上場会社はこれに対して、
①上場会社等による株主総会議案の議決結果の公表
②議決権行使に係る環境整備(総会日の分散、招集通知の早期発送、ホームページへの掲載等)
③議決権電子行使プラットホームの利用促進(現状1割程度)
④有価証券報告書・内部統制報告書の株主総会提出
となっている。

いろいろ議論もあったようだが、これらは主に上場規則などの取引所ルールや、開示省令の改正によって今後進められそうである。

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引き続き、取引所という機能-そして欧州の場合
上場株式の取引は、株式取引所で行わなければならないという取引所集中義務がなくなってから10年以上(1998年12月)経つが、その間に証券会社が運営する私設取引システム(PTS)や取引の匿名性を重視するダーク・プールなどが、日本でも取り入れられた。
 しかし日本では、まだまだ取引所取引の割合が大きいイメージが強く、例えば、東証が発表している3市場(東証1、2部とマザーズ)の5月の売買株数は約458億株、これに対して日本証券業協会が会員からヒアリング集計している同月の取引所外取引は約20億株で、5%にも満たない。PTSの取引に関しては、最近数カ月の平均で、その取引所外取引の1割程度である。
 PTSについては、最近大和証券の参加もあり、月間売買株数は1億株台から4月には3億株と倍近くに増加しているが、まだまだPTS参加者が少なく、取引の主体もネット取引主体のようだ。
ダーク・プールについても、一部の外資系証券が持ち込んではいるが、機関投資家などの売買ルールが障害になっているとされて、日本での取引所外取引システムは、それほど増加していないと見られていた。
 本当にそうなのだろうか。
実態は、なにか欧米で起きた様な変化は進んでいないのだろうか。例えば、株券電子化になって、株式の移動に伴うリスクやコストは低減された(若しくは、される)はずだが、そのことが何か影響していないのだろうか。
株式保管振替機構が発表している上場株式の移動を示す株式振替株数1日平均の5月の数字でみると、取引所取引約16億株に対して、一般振替株数約55億株となっている。一般振替そのものは、金融機関間の単純な株の移動も含むが、その3分の1は資金の移動を伴うDVP取引で約8万件(1日平均)ある。
レンディングや株式レポなどの取引もあるだろうから、全てが株式売買取引とはいえないが、上場株式の取引所外取引が、全体の5%程度しかないのは実態とは思えない。
 例えば、米国やカナダでは、取引所取引を代替するシステムが、ATS(日本のPTSに相当)やダーク・プールとして発展し、取引所取引に迫るような状況になっている。そんな海外の機関投資家が、日本株でも、海外にあるダーク・プールを使って、売買してもおかしくない。
 欧州においても、金融商品指令(MIFID)により、2007年11月より取引所集中義務が廃止されて、取引所外取引が解禁された。取引所代替システムとしてChi-XやBATSヨーロッパなどのマルチラテラル・トレーディング・ファシリティ(MTF=日本のPTSに相当)が急速にシェアを伸ばし、全体の2割に達したようだ。

日本証券経済研究所が以下のレポートを公表している。
ヨーロッパの市場間競争
欧米での、このような既存の取引所と取引所代替システムの競争は、取引の主体である投資家に、メリットを、もたらすはずである。
単に、夜間取引するとか手数料の安さを競うだけではなく、日本のPTS及びダーク・プールも、株券電子化を契機に、機関投資家の売買取引ニーズに応えていく可能性があることを、期待している。

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取引所という機能
 資本市場にとっては、水や空気の如くあるのが当然と思っている“取引所”といものも、そのインフラとしての機能を、時々考えさせられることがある。
 最近、東証の売買高がアジアの中でもそのシェアを落としていると報じられたが、かつてバブル時代の世界一位だったことが、遠い昔になってしまった。これは、国際取引所連合(WFE)が月次で公表しているデータにおいて、アジア・太平洋地区の18取引所(日本は東証とジャスダック、大証)の1-4月の総取引額(ドルベース)で、東証がこの地区の25%まで低下、上海取引所が27%と初めて取引量首位に立ったことを指摘している。東証・ジャスダック・大証のオール日本の合計でも、この地区のシャア26%に対し、上海・深圳・香港のオール中国は49%と、アジア・太平洋地区の取引量半数を占める。中国投信が、売れるはずである。
中国株の年初からの隆盛を思えば、なんだか納得してしまいそうだが、経済規模では、まだ世界2位で、金融・資本市場もアジアでは断トツで発展していると思っている日本国民から見ると寂しいニュースである。一応、時価総額(ドル)ベースでは、東証の25%に対して、上海取引所の18%となっているが、これも、オール日本27%で、オール中国の36%に大きく差をつけられていて、こちらの方が驚愕すべきことかもしれない。
 この取引量や時価総額のことは、経済・政治と幅広い国力を反映しているのだから、ここで論じることではないか、取引所の資本市場に機能としては、どうなのだろうか。
 市場の機能を単純化して考えると、売買する人・取引の場の提供・決済と保管に分かれる。この内、決済と保管に関しては、今年年初に株券電子化を終え、これで投資家が扱う債券・投信と有価証券全てが電子データで取り扱えるようになった。このこと自体は、証券決済インフラの飛躍的向上に繋がるはずで、世界に誇って良いことだろう。
 しかし、現状では、取引自体はあまり変わらない。インフラの向上に合わせた、取引サービスそのものが変わらないからである。確かに、6月からTOKYO AIMも始まり、東証の売買システムも来年度強化される予定とのことであるが、新しい取引サービスが、日本でも発達する為には、東証も国際市場を睨んで努力するであろうが、その東証の取引所取引に対抗する取引サービスの発達があってこそ、双方の競争により、取引サービスが強化され、日本の資本市場も強化される。
取引所に対抗する取引システム→PTSやダークプールなど、取引所取引を代替する取引システムの発達が、その答えだと考える。このことで、野村総研が以下のレポートを公表している。

野村総研
今後の拡大が期待される日本の代替執行市場
 ここで言う代替執行市場とは、取引所取引以外で何からのシステムを使って行う取引を言うが、始めは社内の異なる顧客の注文付け合わせから始まったダークプールやPTSなどの代替取引システムは、欧米においては、取引所と競争しつつ発展している。日本でも、株券電子化を契機に、この様な取引所取引を代替する取引システムの発達が望まれている。

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個人という債券投資家
 債券市況を述べる立場ではないが、昨年の金融危機後、各国の金融緩和政策を見込んだのと安全資産として、国債などの高格付け債券に、機関投資家や金融機関の資金が集まった。その反面、信用リスク不安から、一般社債市場は不調で、銀行の劣後債や一部の高格付け債のみの発行となっていたが、どうやら発行市場機能は、回復してきたようである。5月の国内社債発行市場は、25本で8,213億円の発行となったが、その中には、ソフトバンク債(BBB)600億円の発行があった。
 この債券は、期間2年で、利率5.1%というもので、個人投資家の人気を集めたようであるが、ここ一年ぐらいは、社債発行市場において、信用リスクをとることが可能な投資家としての機能を強めていた。
ちなみに、昨年度の個人向け社債の発行額は、2兆144億円で前年度の4,370億円から大きく増加しているが、このことは個人の安全資産への投資選考の結果なのだろうか。
 機関投資家が、安全資産への投資選考を強め国債への投資を増加させていた時期に、個人はその低利率から、国債への資金流入を大きく減少させていた。4月募集の個人向け国債は、募集額3,200億円と、1月募集の5,047億円からも大きく減少し、ピーク時の5分の1程度まで水準を落としている。
考えて見れば当たり前だろうが、個人投資家は機関投資家の様な安全資産へ投資する必要がなく、そのまま預金口座に置いておけばよい。機関投資家のとり難いような時期にも、信用リスク・為替リスクそして市場変動リスクを取ることが出来る。
上記の5月発行社債以外に、国内で個人向けに売り出された債券は、約2000億円あるが、高金利通貨の為替リスクを取る外貨建て債であったり、株式市場の変動リスクを利用するデジタル・クーポン債などがあり、債券を使った投資の多様性が見える。
CDS市場や証券化市場の崩壊から、今や市場機能で最も重要なことは、多様な価値観をもつ投資家を
確保することが常識となったが、その為に取引を標準化し、透明性を上げることが、どのような市場においても潮流となっている。
債券市場においても、そのことは例外でないと思うが、個人が債券市場に影響を与えていくほどの投資家になるには、まだまだ工夫が必要だ。
今月中旬に東証が上場を予定している債券のETF(日本を除くアジアの国債・公債に投資)は、個人が債券投資を行う導入商品としては期待されている。
また、賛否は別にして、本来は限られた者たちの取引であった外為取引で、FX取引(外為証拠金取引)が為替相場に影響を与えるようになったことを考えると、例えば日本国債を取引対象にした証拠金取引が整備されても良いのかもしれない。
 貯蓄から投資への受け皿は、何も株や投信に限られることではない。限られたプロの市場にも、個人が参加できる仕組みを整える努力をすることが、証券や金融に求められていることではないか。
ちなみに、CDS市場の整備に、個人も参加させるとの考え方はあるようだ。

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専門家としての中小企業
金融機関からみると、営業店のお客様の富裕層は、中小企業の経営者と重なることが多いので、中小企業向けの事業承継セミナーを開催するのは、今や当たり前の営業活動だろう。内容は、保険商品から節税対策、そして今はM&Aが中心となっている。
 そんな金融機関的な視点を恥じるような中小企業に関するレポートが、常陽地域研究センターの月刊誌JOYO ARC 6月号に公表されたので、紹介したい。
経済混乱期における中小企業
早稲田大学商学学術院の鵜飼教授による。
 指摘されると当然のことのようにも思うが、中小企業は多品種少量生産である。しかし、これらの受注は、直接か間接的かは別にして、大企業に発注元がある。今回のような経済不況の中、大企業の大減産の影響を一番受けやすく思うが、様々な工夫により環境の変化への対応力・付加価値力をつけて生き残りを図る事例が、その背景まで含めて紹介されていて、目を洗われる思いであった。
この大不況の中でも、不要な不安感を持たず淡々と業務を拡大している事例が取り上げられているが、
○取引先と仕事内容を多様化する。
○仲間の工場と専門的な工作機械など生産インフラを融通しあうネットワークを持っている。
○技術力のある会社同士が、より高度な受注を取るために連携を図る。
など、独自の技術を持つ専門家として生き残る為、自発的・自律的に交流を行い、連携を作りだす努力が中小企業生き残りのポイントなのだろう。彼等は独自の技術に特化した専門家集団なのである。
 このような生き残りを図る中小企業に対して、M&Aビジネスとして取り組む金融機関は、大企業へのM&Aサービスとは全く異なる対応が必要なのかも知れない。企業価値向上や企業価値・事業価値判断は、中小企業の経営者自らが行うし、ファンドが求めるような効率性は、現場では通用しない。
 そうなると、公的機関や商工会議所が行っているような支援サービス的なことが、中小企業を想定したM&Aビジネスの中心になるのだろうか。
 実は、金融の中においても、中小企業が生き残るためには、“多品種少量生産”が必要だと筆者は考える。
顧客が出す多様なニーズに、付加価値をもってサービスしていくためには、顧客からみた専門性が重要になってくるし、金融のアンバンドリングの進展で、大手の金融機関でさえ、一部専門的業務を外注するようになっている。高い専門性が求められるM&A業務も、当然この流れに沿って、最近は独立系のM&Aアドバイザーも増加している。
 製造業もM&Aアドバイザーも、生き残るためには、独自の技術(専門性)が必要だが、中小のM&A業者や地域金融機関がM&A業務を推進する為には、M&A関連情報を共有するようなインフラの共有や、適時にお互いが連携できるようなネットワークの構築が必要なことは、生き残っている中小企業を見ても明確である。
 公的に準備されている事業承継ネットワーク基盤を、M&Aビジネスにおいて有効に使う為には、これらM&Aビジネスの中小企業(専門家)を積極的に取り込んでいくことが重要である。
 

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

金融からみた不動産
 不動産について門外漢で、少し無謀かもしれないが、金融からみた不動産について少し考えたい。
今回の100年に一度の経済危機、その原因になった金融危機は、米国においてはサブプライム問題が発火点であった。よって、米国においては、原因の原因である住宅市場の回復がなければ、本格的な回復にはならないのだろうが、日本の金融・資本市場においても真っ先に行き詰まったのは、不動産関連企業である。そのことを考えると、日本の景気本格回復の前提としては、不動産市場の回復も大きな要因なのかもしれない。
 前回の金融危機からの回復過程において、不動産は証券化という形で流動化され、そのことが不動産市場の回復にもつながったが、今回の金融危機ではどうなるのであろうか。Jリートであれ、特定目的会社であれ、GK-TKスキームであれ、それらは集団投資スキームとして、投資家の資金を集めて、特定の不動産に投資された。
 5月26日、国土交通省より平成20年度の不動産証券化の実態調査が公表されている。
○平成20年度中に証券化された不動産資産額は約3.1兆円で、過去最高となった平成19年度
の実績(約8.9兆円)から大幅に減少した。件数は470件で、過去3年間平均の三分の一規模。1件当たりの資産額は約65億円となり、平成19年度に比べて増加した。
○スキーム別実績は、信託受益権で合同会社等を通じて証券化する方法(GK-TK 等)がもっとも多く、
1兆1,763億円で全体の約38%を占めている。J リートが6, 2 7 7 億円(Jリートの累計は、過去12年間で、約8.6兆円)。
○用途別実績は、オフィスが全体の37.7%、住宅が15.1%、商業施設が21.6%などとなっている。前年度と比較すると、住宅の全体に占める割合が減少し、オフィス及び商業施設の全体に占める割合が増加している。
 ここ10年、不動産に限らず証券化が様々の資産に対して進み、その派生商品(デリバティブ)も金融商品として成長したが、今回の金融危機で、限られた参加者でもメリットを享受できた初期の成長段階は終わった。不動産証券化市場も、更なる拡大を目指す為には、透明性を高め、取引の標準化を進めて、多様な取引参加者を呼び込むことで、成長の第二段階たる成熟した市場の拡大を目指す時期に入ったのではないだろうか。

 国土交通省の不動産リスクマネージメント研究会では、この3月に、不動産リスクをコントロールできる市場の整備として、不動産証券化市場の活性化を目的としたデータベースの整備を以下の様に提言している。
○オープンな不動産評価データの整備
・不動産価格データの利用可能性の拡大
・証券化商品など構成資産の詳細開示
・ベンチマークとしてのインデックス、標準的な不動産評価モデル整備
○物理的データの整備
・自然災害や土壌汚染など地歴データ
・過去の住宅地図など
○オペレーショナル・リスクに関するデータベース化とその整備
・事業者のサービス評価の為のデータ(苦情・クレーム等も含める)
不動産リスクマネジメント研究会の総括と今後の課題について

市場が、限られた参加者のものから、金融市場とリンクする拡大された市場を目指す為には、取引を標準化する必要がある。その為には、情報を共有し、それを公表して、市場の透明性を確保するオープンなデータべースの構築は、他の金融商品市場でも、最も重要なことである。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

ガバナンス強化は投資要因か
 上場企業のガバナンス強化に関して、金融審議会の“我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ”において、現在議論されているが、委員会設置会社であれ監査役会設置会社であれ、社外取締役・社外監査役の独立性が問題になっている。
 中小企業まで含めた会社法が定義するところの、社外取締役・社外監査役の独立性は、上場会社としてガバナンスに関与する監督機能の中で、本当に社外のチャック機能が働くのか。親会社や、大手取引先で会社の業務に近い者が、外部の目で業務執行を監督出来るのか、社外取締役・社外監査役の独立性について、特に海外投資家・機関投資家から問題視する声が強い。
 コーポレート・ガバナンス強化に関する具体的な要望としては、「東証上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する投資家向け意見募集に対して寄せられた意見の概要について」(2008年8月)によると、以下の要望が寄せられている。
􀂄大幅な稀釈化を伴う新株発行および不透明な割当先に対する第三者割当の制限
􀂄株式持合いに関する情報開示
􀂄株主権を奪う株式併合の制限
􀂄買収防衛策の導入および発動条件の強化
􀂄社外取締役の導入促進と独立性強化
􀂄社外監査役の独立性強化
􀂄議決権行使時の制約緩和と行使結果の開示
 また、海外の有力機関投資家の団体であるエイシアン・コーポレート・ガバナンス・アソシエーション(ACGA)は、日本企業に最低3人の独立取締役の導入を求めている。
 確かに、昨年までは買収防衛策をブームの様に導入する企業が増えていたし、大幅な第三者割当や株式併合など資本政策で、一部新興企業の問題ある行動が目立った。
 コーポレート・ガバナンスが強化され、経営の透明性が高まった方が、確かに投資し易いだろうが、では、日本の株は、本当にコーポレート・ガバナンスに問題があるので買われないのだろうか。
 昨年、外人は3.7兆円日本株を売り越したが、これは金融危機を契機とするヘッジファンド等の売りが主体だったとする向きがいる。しかし、金融ビックバン以降順調に増加してきた外人持ち株比率も、ここ数年で頭打ちとなっていて、海外機関投資家が、日本株を買い進んでいるとは言えないことも事実である。
 では、コーポレート・ガバナンスが強化され、今議論しているような独立取締役制度が導入されれば、外人や機関投資家は、日本株を買うのであろうか。

 ニッセイ基礎研究所が、独立性の高い社外取締役を有する企業と、それ以外の企業の外人持株比率を比較したレポートを公表している。
ガバナンスは、海外投資家の銘柄選択要因となるのか
当レポートによると、
○独立性の高い社外取締役のいる会社の外人持株比率は、平均で17.4%と、社外取締役のいない会社の平均12.6%を大きく上回っている。(独立性の低い社外取締役しかいない会社の平均は、12.7%)
○過去11年間の外人持株比率の増加をみても、独立性の高い社外取締役のいる会社は、9%増加しているが、社外取締役のいない会社は、6.8%増加に留まっている。(独立性の低い社外取締役しかいない会社は、5.8%増)
 独立性の高い社外取締役の導入が、海外投資家の銘柄選別に影響を及ぼした可能性は、高いと言えるのではないだろうか。

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FX取引レバレッジ規制について
FX取引のレバレッジ(証拠金の何倍まで、想定元本を売買するか)に関して、規制する案が5月29日金融庁より示された。
 導入予定される規制案(内閣府令)は、
○内閣府令の公布より概ね一年後(来年7月あたりか)から、FX取引のレバレッジを50倍までとする。≪経過措置≫
○更に、公布より2年後から、レバレッジを25倍までとする。
ものである。
 この規制の背景になったFX取引に絡む問題事例に関しては、拙稿“外為証拠金取引規制強化―その背景”〈4月30日版〉をご覧頂きたいが、4月24日証券取引等監視委員会からの、
「いわゆる高レバレッジの商品については、僅かな為替変動であっても保証金不足が生じ、顧客に不測の損害を与えるばかりか、業者の財務体質を悪化させるおそれがある。したがって、為替変動を勘案した水準の保証金の預託を受けることを義務付ける等、適切な措置を講ずる必要がある。」という建議を受けたものである。
この建議そのものは、
①証拠金の流用等を防ぐ為、これを金銭信託で分別管理を徹底する。
②顧客に対してのロスカットルールの制定を義務付ける。
③※上記の内容
④FX業者を金融商品取引業者として登録する際、申請書類の記載内容(純資産額等)を裏付ける疎明資料の徹底措置
となっており、①、②に関しては4月28日に規制案として示され、③はレバレッジ規制として今回公表された。
 確かに最近のFX取引に係る競争は激しくなっており、数百倍の高レバレッジで、集客しようとする動きが一時強まっていた。(FX取引のレバレッジ規制が伝えられた最近1~2か月は、甲レバレッジを宣伝するものは著しく減少した。)
このレバレッジ規制について、少し考えてみたい。
例えば、200倍のレバレッジで顧客からの注文を受けるFX業者は、相当数いるが、これだとドル円で50銭も動けば、当初の証拠金以上の損失を出す可能性があるが、25倍だと4円近い変動まで許容範囲が拡がる。
 この事に、何か意味があるのだろうか。
為替相場も、変動する時は1~2日で4%以上変動することもあるし、1週間で0・5%も動かないときもある。そもそも、このFX取引を行う個人は、何か外貨に投資する投資家なのだろうか。
 レバレッジ規制の目的は、一体何なのだろう。FX取引に参加する個人は、もともと個人には向かない為替取引を、レバレッジをかけることで、取引参加可能になった個人投機家達である。
勿論、どの様な市場にも、長期や短期の投資もあれば投機もある多様性こそ必須なことは、今回の証券化市場やCDS市場での動きで証明されている。
よって個人投機家達も為替市場には必要だろうが、投資家保護と同様の視点で投機家を扱うのは、少し違うように思う。
 今回のFX取引レバレッジ規制は、むしろレバレッジ規制そのものではなく、ロスカットルールの徹底こそ行うべきではないだろうか。
確かにロスカットルールの徹底は、FX業者の管理負担とそれに伴う体制整備を強いるが、その様な負担に耐えられるFX業者、またロスカットルールを徹底できる個人投機家、彼等が生き残れるFX取引の基盤整備こそ、金融・資本市場の裾野拡大に繋がるのではないか。

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祝・新取引所
 新しい株式取引所(金融商品取引所)が出来る。先週末、新取引所TOKYO AIMが、6月1日より取引所業務を開始することを、自ら公表している。
 ここ10年、新興市場は、既存の株式取引所に5つも開設されたが、新しい取引所ということになると、実質的に1983年の店頭登録市場=現ジャスダック証券取引所以来、26年ぶりの新しい株式取引所の開設である。その間、京都・広島・新潟の地方株式取引所は閉鎖された。
 証券業界にとって、新しい取引所の開設は、喜ばしいことである。
それで、この新取引所を少し、業界目線で解説してみたい。
【その1=新取引所の概要】
株式会社組織で、東京証券取引所が51%ロンドン証券取引所が49%出資の合弁会社=TOKYO AIMが運営する取引所である。当面(一年程度)は、現在の東証の建物とシステムを使う模様である。
【その2=参加者たち】
 これも、当面現在の東証参加者とロンドン取引所の参加者達が、取引参加する市場となるが、日本の参加者は、プロ投資家(特定投資家)の注文しか取り次げない。日本では、初めてとなるプロ(特定投資家)向け市場である。一方、ロンドン取引所の参加者達は、日本に拠点がなくとも、この市場に直接参加し、英国を中心とする海外の投資家の注文を取り次ぐことが出来る。日本では、初めて海外証券業者(といってもロンドン取引所の参加者に限定されるが)が直接アクセスできる取引所となる。
 このことは、海外投資家の日本市場誘導という意味で、非常に重要なことであると考える。
【その3=上場企業たち】
 取引参加者の半数は、ロンドン取引所の参加者になるとすると、共通言語は英語で、会計基準は国際会計を想定するが、日本語や日本の会計基準でもOKであり、当然日本の成長企業も上場することが期待される。しかし、金融危機前の新市場整備の議論段階では、海外の特にアジアの成長企業を東京の新市場に呼び込みたいとの意図も強くあった。
 近年、SOX法対応や国際会計基準強化・日本の開示制度強化など、上場企業にとってディスクロージャーに係るコストは大きなものになっているが、新市場は、成長企業を呼び込むことを目的にしているので、このディスクロージャー負担を極力低下させた制度設計になっている。
 監査証明は直前期のみで、四半期開示や今年から始まった内部統制報告書は求めない。そして、株主数や売上高・時価総額の数値基準も設けないので、新興企業が入り易い市場となっている。
【その4=市場誘導者たち】
 前記の様に、上場企業には負担が軽い市場となっているが、その分市場誘導者(証券会社など)には負担の掛る制度である。つまり、上場前・上場時は勿論、上場後のディスクロージャーに関して、責任を持って支援・指導する専任アドバイザーとして機能する為に、新市場は、この市場誘導業務の専門家3名以上を組織立てて維持する必要があるJ-Nomad制度(ロンドン取引所のNomad制度を模したもの)を取っている。
 また、このJ-Nomadは、上場企業の流動性確保に努める“流動性プロバイダー”を自ら行うか、その確保に尽力しなければならない。
 今やこのJ-Nomad制度の様な専任アドバイザー制度は、世界の新興市場の潮流でもある。
何か昔のジャスダックの登録申請会員制度を思い出す部分もあるが、新興企業の市場誘導業務を、証券会社として改めて考え直し、また、既存の新興市場の問題点を改革していくには、いい機会だとも考える。
やはり新取引所がスタートするのは、資本市場機能の充実にとって良いことなのだ。

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