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2009/06
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M&Aルール-英国の場合
 英国流のM&Aルールを導入していこうという動きがあるようなので、少し先回りして英国のM&Aルールについて触れたい。
 その前に、ルール導入の目的は、諸々の問題点の解決である訳だから、現在の日本でのM&Aに関した問題点を、簡略化して挙げてみる。
●買収防衛策=今年は若干減ったとはいえ、上場会社の15%近くが導入している。
●TOB及びTOB価格に対する判断。
●MBOなどにおけるスクイーズアウト(少数株主排除)の問題。
●TOB、MBOなどにおける利益相反問題。
●M&Aに係る第三者割当増資問題。
●M&Aに係るインサイダー取引。
これらの問題に係る紛争を、時間とコストのかかる裁判などで争うのではなく、「シティ・コード」という実務ルールと「パネル」という専門家会合の仕組みで判断・裁定しようとするのが英国のM&Aルールであるが、2004年のEUの企業買収指令によって、その仕組みに強制法規制と公的な地位が与えられている。
【シティ・コードについて】
6つの一般原則と38の規則からなっているが、一般原則(プリンシプル)は以下、
①買収対象の企業の株主は全て同じ扱い。支配権(30%以上)の株主がいる場合は、他の株主は保護されなければならない。
②TOBに関して株主は十分な時間と情報を有すべき、また取締役会はTOBの実施による効果の見通しを提示しなければならない。
③取締役会は会社全体の利益をもとに行動しなければならず、TOBのメリットについて決定する機会を拒否してはならない。
④対象会社・買収会社・その他TOBに関係する会社の株価が人為的に歪められてはならない。
⑤TOBで買収側は、オファーを受けた場合、すべて応じ、またその手当をTOB前に確保しなければならない。
⑥TOBによって、対象会社の業務遂行が合理的な範囲を越えるほど長期にわたって妨げられてはならない。
となっている。
具体的なルール事例として、TOBの買収者側に課されたもので以下がある。
・単独又は共同で30%以上の議決権に相当する株式を取得しようとする場合、他の全ての株主に株式買取りの申し込みを行わなければならない。ただし、救済などの理由でパネルが認めた場合は免除される。
・上記の場合、原則現金による買付け。
・TOB買付価格について、TOB前の12カ月以内に既に取得した株式があれば、その取得価格の最高価額を下回ってはならない。
・買付者は、上記を行うに十分な資金力があることを明らかにしなければならない。
【パネルについて】
パネルは、イングランド銀行の賛助のもとに運営され、シティ・コードを運用する独立の自主機関である。パネルの正副議長3名と産業界からの独立メンバー3名は、イングランド銀行総裁が任命し、その他のメンバーは、パネルが任命したり、銀行家・会計士などの専門職業団体から任命される。

 今までの日本におけるM&Aルールは、買収防衛策にしろ、ポイズンピルにしろ、米国型の判例を中心としたものが主流だった。その意味では、日本においてもM&AやTOBに関する判例が揃ってきたと思うが、時間もコストも掛かることが、株主に有利に働くとは限らない。
英国ルールの様に、一般原則(プリンシプル)をベースに、M&A当事者とパネル事務局の任意のやり取りで殆ど済んでしまうのであれば、時間という貴重な資源を、株主も企業も失うことが少なくなるかもしれない。業界の大人のルールとして、実現まで関係者は頑張っていただきたいと思う。
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