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2009/07
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ETFの実情
 今週月曜に、ETFが上場投信として期待されるところを書いたが、その実情について少し触れたい。
【ETFの上場数】(現在)
・東京証券取引所 62銘柄
・大阪証券取引所 11銘柄
6月末のニューヨーク取引所 1022銘柄、ドイツ取引所 460銘柄、ロンドン取引所 314銘柄、ユーロネクスト 464銘柄
【日本のETF指数の内訳】(資産残高は、5月末)
・TOPIXや日経平均関連指数   14銘柄  運用資産残高 2兆3038億円
・外国株指数 (中国など新興国5カ国) 6銘柄  運用資産残高 1329億円
・中小型株指数     4銘柄  運用資産残高 30億円
・プルーチップ指数    1銘柄  運用資産残高 14億円
・業種別指数      38銘柄  運用資産残高 936億円
・REIT指数    2銘柄  運用資産残高 59億円
・商品指数関連    3銘柄  運用資産残高 3兆4639億円(海外上場分も含む)
・通貨連動型 3銘柄  運用資産残高 30億円
※企業グループと債券指数は各1銘柄で、7月以降の上場
【ETF上場の意味を考える】
ETFの上場目的をもう一度考えてみたいが、東証のホームページから抜粋すると、以下の優位性があるということだ。
①分かりやすさ=ベースとなる指数情報も通常に入手しやすく、また個別企業分析をする必要もないので、投資しやすい。
②分散投資が可能=TOPIXや日経指数に対する広域な分散投資が可能。また、外国株や商品先物などにも分散投資出来る。
③少額でしかもコストが安い。
④投資信託と異なり、何処の証券会社でも購入することが出来、投資対象銘柄・購入値段・価格などの情報が入手しやすい。
つまり、個人投資家にとって、非常に有利な投資信託で、かつ上場されているので、情報を個人も取りすいことと言われている。
 一方、ETFの売買が活発になっていけば、その対象となる株式の銘柄に対して、裁定売買のニーズが入ることから、銘柄の流動性を増すことが期待される。
【ETFの現状の問題点を考える】
しかし、実際のETFの取引を見てみると、TOPIX・日経指数物に取引が集中していて、その他の取引も、金や中国株若しくは銀行業など一部指数に偏っており、ETFそのものの流動性も、問題がある物が多い。
事実、本来はETF売買増加から、個別銘柄への流動性の波及が期待される業種別ETFなどは、38銘柄あって運用資産残高が986億円しかないのも問題だが、23銘柄が5月中の売買高が1000万円以下となっていて、とても現物銘柄への流動性波及など期待できない状況である。
 ETFそのものの取引を増加させる為には、ETFの基準となる指数のリアルタイムの公表が必要で、かつ指数とETF価格の乖離情報もリアルタイムで流される必要がある。情報入手コストの問題もあるだろうが、せめて業種別指数に関して、ETF価格との乖離情報を合わせ、東証が提供することぐらいは出来ないだろうか。そのことは、ETF・対象銘柄の流動性向上に繋がる裁定取引を呼び込むし、個人投資家の裾野拡大にも繋がると、筆者は考える。
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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

日本版ISAについて
“貯蓄から投資へ”は、何も一部の富裕層資産の投資への誘導だけではなく、国民全体の貯蓄に偏った金融資産の構成や運用を、何らかの形で株式市場等へ導くことにある。また、“貯蓄から投資へ”政策の実効性を確保するためには、税制からの誘導策も重要になってくる。
 昨年8月に金融庁が公表した2009年度税制改正要望において、以下の税制措置を公表している。
○日本版ISA(Individual Saving Accounts)=小口の継続的長期投資非課税制度の創設
[目的]小口投資家層に投資のインセンティブを付与し投資家の裾野を拡大
○高齢者投資非課税制度の導入
[目的と方法]高齢者の安心のために「第二の年金」として、自助努力で運用する上場株式等の100万円以下の配当、500万円以下の譲渡益に関して非課税とする。(少なくとも2年間)
○証券税制の特例措置における投資家利便への配慮
[目的]投資家利便の観点から、確定申告の際などの手続きで、特例措置の簡素化等
○確定拠出年金(401K)制度の充実
[目的]株式市場の厚みと老後の資産形成の促進
○金融商品間の損益通算の範囲拡大
[目的]取引所上場デリバティブなどを含めて、リスク資産に投資しやすい環境整備
この中で、日本版ISAについては、少額の上場株式等投資のための非課税措置制度として、以下の様な概要で創設されることが、2009年税制改正において決定している。
【制度創設の時期】
 2012年=これは、配当・譲渡益課税の軽減措置(20%→10%)が、2011年末まで延長されており、この措置が終了するのが、制度導入の前提となっているため。
【制度利用の条件】
満20歳以上の居住者で、金融商品取引業者等の営業所に非課税口座を開設できるもの。
【制度の概要】
・年間の投資額100万円を上限として、非課税口座を開設し、上場株式等に投資。
・上記の分から発生する配当・譲渡益に関して、最大10年間は非課税となる。
・非課税口座は、制度開始から5年間の時限措置なので、最大500万円までの累積投資分が非課税扱いになるとみられる。
・非課税口座の管理方法や、ペナルティー(要件違反の場合の)などは、2010年度の税制改正による。
 元々の制度は、英国において1999年に導入された個人貯蓄口座(ISA)であって、当初は2009年までの時限措置であったが、2007年に一般投資家の貯蓄支援の為に恒久化している。
【英国ISA制度の概要】
・現金口座と株式口座の2種類
・年間預入上限額は7200ポンド(約112万円)で、投資対象は現金・株式・債券・投信・保険
・利子、配当、キャピタルゲインが非課税、但し非課税口座内のキャピタルロスは、非課税口座外の投資と損益通算出来ない。(非課税口座内なら損益通算可能)
・口座開設者は、英国居住者で18歳以上(現金口座だけは、16歳以上)。口座は歳入税関庁に承認された銀行等(ISA manager)
【英国ISA制度の現状】
・年間申込口座数 1471万口座(2007年度)
・年間預入金額 357億£(=約5.6兆円 2007年度)
・預入総額 2078億£(2007年10月時点) うち株式等口座801億£(約12.5兆円)

 現状を省みれば、政権選挙前で政策方向も定まりにくい状況かもしれない。また、金融所得一体課税の推進論議も必要だろう。しかし、証券業界は、投資家層拡大の具体策として、日本版ISAの早期実行や高齢者投資非課税制度導入を要望していく時期ではないかと筆者は考える。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

所謂ラップ口座について
 日本の金融ビックバンにおいて、手数料自由化に始まり、金融機関による投信の窓販解禁など、個人資産を市場へ誘導する政策が取られているが、所謂ラップ口座も、2004年4月から投資顧問業法の改正で、証券会社が兼業方式で投資一任業務を行うことが可能になったことから、日本でも始まった。
 証券会社のビジネスとしても、個人資産の運用・管理サービスとして、株式売買委託手数料自由化後の収益構造を変えていくと期待されているが、先行する米国の約180万口座・資産残高約76兆円(2007年6月末のSMAの数字、この他ファンドラップは約327万口座・資産残高約45兆円)には、遠く及ばない。投資顧問協会によると、2009年3月末では、所謂ラップ口座は、37,138口座・投資一任されている金額は4,571億円となっていて、前年の41,615口座・7,469億円から大幅な減少となっている。
 この所謂ラップ口座に関して、少し整理しておきたい。
そもそものラップ(WRAP)とは、包むという意味から、一つの口座で様々な資産運用サービスを包み込むという意味で、ラップ口座と言われているが、資産運用を完全に証券会社に一任してしまう(実際はいくつかの投資パターンから選択)口座をSMA(Separately Managed Account)口座として、証券会社・信託銀行が販売している。運用資産残高に応じて手数料を課すので、証券会社(投資運用業者)の運用が上手くいって、顧客資産の残高が増えれば、証券会社の報酬も増加するビジネスモデルである。
SMAの口座毎に、プロの運用者が対応し、助言者としても専任SMAコンサルタントがつき提案やアフターケアをするモデルが一般的のようだが、適切な分散投資を図る必要上、一定規模の運用資産を要する。
 証券会社等によって異なるが、最低契約金額を数千万から数億円に設定していて、ターゲットとする顧客層は、明らかに億円以上の金融資産を有する富裕層であり、証券会社の手数料は、概ね成功報酬となっている。
一方、金融資産数千万までのマス富裕層(団塊世代の退職者等を含む)を顧客ターゲットにしたものが、ファンドラップ口座であるが、これは投資対象をファンド(投信)に限っているので、そもそも分散投資の為の資産規模は小さくとも済む。顧客の投資方針に応じた運用スタイルを、営業部員が提案し、投資一任契約を結ぶが、証券会社の手数料は、概ね固定報酬のみとなっている。
 ラップ口座の手数料は、資産規模により異なるが、1~3%程度が主流のようである。また、サービス提供の流れは、以下の様になっている。
①専任コンサル若しくは営業部員が顧客と面談、ヒアリングシートで顧客の投資方針を確認
②専任コンサル若しくは営業部員が、投資戦略・ポートフォリオを提案
③顧客と証券会社の間で、投資一任契約を締結(自社が投資運用者の場合、外部に運用者がいる場合は、その投資運用者と契約)
④定期的に運用状況を報告(SMAは専任コンサルがアフターケア、また報告頻度も毎月)
⑤顧客の状況の変化、投資環境の変化に応じて投資計画を見直す。

 証券会社にとっては、期待の大きいビジネスモデルではあるが、米国並みに拡大していくには、いくつかの課題も見える。
例えば、SMAでは大口化への期待もあるようだが、そうした場合、プライベートバンク業務との整理をどの様に行っていくか。また、ファンドラップの受入限度を下げていった場合、既に小口で投資出来るETFの増加や、各種インデックスファンドでの運用と、どう差別化していくか。そして、顧客が高めのコストでも納得する投資助言サービスの提供体制整備などがある。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

M&Aにおける利益相反
 M&Aというのは、当然だが、会社を売り買いする行為だから、コーポレートガバナンス議論での会社は誰のものだという以上に、ステイクホルダー間の利益相反に十分配慮して進めなければならない。
また、M&Aアドバイザーにおいても、アドバイザーとしての善管注意義務が果たせるよう、自らも含めて、この利益相反問題に細心の注意を払い、そのM&A助言行為を進めなければならない。
 M&Aにおける利益相反問題を、整理してみる。
【上場企業の場合】
 ○経営者(取締役会)として、以下の判断が、株主の利益に反していないか
・買収防衛策の導入
・買収防衛策の実行
・TOBに対する意見表明
・MBOの実行時における買収価格の決定
・特定の者への大量の第三者割当増資
これらの判断は、本来は会社法により取締役会に授権されているが、株主との利益相反に配慮する為、最近は第三者による委員会等を設置して判断を委ねるケースも増えてきている。また、実際の決議を株主総会で行う場合もあるが、この場合も少数株主への利益相反に配慮する為、独立性の高い第三者の意見を表明させるケースもある。
【M&Aアドバイザーの場合】
 M&Aの助言行為は、法規制で定められたものではない。つまり投資銀行でなくとも、誰しもが出来る行為であるが、純粋な独立系アドバイザー以外は、以下の様な助言者としての利益相反の恐れがある。
○銀行の場合=売却先にローンを貸し付けているような再生案件絡みの場合、買い手ニーズに対応した助言を求められる場合であっても、ローンの回収を優先される利益相反のおそれ。また、敵対する複数の競争先への案件持ち込み行為も、問題があるとみられる。
○証券の場合=上場企業の主幹事証券として助言を行う場合、適切なアドバイスを行えるか疑念がもたれる場合もある。特に、買収資金のファイナンスとセットのMBOやTOB案件において、M&A助言行為の適格性が強く求められる。また、買い手側アドバイザーであるのに、売り手企業への投資銀行として出資している場合も問題がある。
○地域金融機関や証券の場合=中小企業のM&Aを手掛ける場合、ビジネスマッチングや事業承継の延長線上で、売り手・買い手双方の代理を行うM&A仲介を行うケースが多い。この場合、中立の第三者として当事者間の調停をすることは、アドバイザーにはあり得なく、どちらかに助言すれば、相手側の利益に反するのは当然である。しかし、この手の行為が日本のM&Aにおいて多いのは、以下の理由による。
・中小企業のM&Aは、企業規模が小さい為、ディールとしての収益性が確保しにくく、その為、買い手・売り手双方からのアドバイザリー収益を期待してM&A助言となるケースが銀行・証券との多い。
・最近は、独立系M&Aアドバイザーも増加したが、M&Aプロセス全体をコントロールできるようなM&Aのプロが少ない。(会計・財務的コンサル、事業戦略コンサルは増えているが)
※以上の行為が全て利益相反で問題あるというのではなく、これらの利益相反の恐れのある行為を的確に管理し、顧客に理解させる手順を、M&Aアドバイザーとして実行していくべきと、筆者は考える。
 ちなみに、この6月より銀行のファイアーウォール規制緩和により、このM&Aを始めとする利益相反管理は、金融機関に求められている。(銀行員が、M&A助言を行う投資銀行と兼業出来るので、より専門的なM&A助言も可能になる。)その為、銀行は、利益相反管理方針を公表し、かつ遵守しなければならないが、この利益相反管理方針でM&A絡みについて比較的よく記載された事例を以下に紹介する。

 ○利益相反取引の類型および主な取引事例(阿波銀行:利益相反管理方針より)
●利害対立型
  当行等とお客さまの利害が対立する取引もしくは当行等のお客さま同士の利害が対立する取引をいいます。
【取引事例】
・お客さまに対し資金調達やM&Aに係るアドバイス等を提供する一方、当該お客さまに対する投資、当該お客さまからの資産購入その他の取引を行う場合
・対立関係にある複数のお客さまに対し、資金調達やM&Aに係るアドバイス等を提供する場合 等
●競合取引型
  当行等とお客さまが同一の対象に対して競合する取引もしくは当行等のお客さま同士が同一の対象に対して競合する取引をいいます。
【取引事例】
・銀行とお客さまとが同一の会社に対するM&Aを行う場合において、そのお客さまに対してM&Aに関するアドバイザリー業務を行う場合
・競合関係にある複数のお客さまに対し、資金調達やM&Aに係るアドバイス等を提供する場合 等
●情報利用型
  当行等がお客さまとの関係を通じて取得したお客さまの情報を利用して、当行等が利益を得る取引もしくは当行等の他のお客さまが利益を得る取引をいいます。
【取引事例】
・同一の融資案件に対して、銀行とグループ会社が融資を行う場合
・お客さまに引受けまたは有価証券発行に関するアドバイス等を行いながら、他のお客さまに当該有価証券の取引の推奨を行う場合 等

※メガバンクのものは、取引事例記載としては抽象的であった。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

投資信託という機能=その2、ETFについて
 前回に引き続き投信の機能を取り上げるが、買いたい時買え、そして売りたい時売ることができる投信としてETF=上場投資信託がある。日本でも増加し、アジア債券や企業グループ指数も最近上場されて、現在は62銘柄(東証)となっており、またこの上場ETFに対して、今年1~6月の個人の売買金額シェア(委託売買ベース)は外国人を上回る45%を確保し、国内ETF市場での個人投資家の存在感が増していることが伝えられている。
 流通市場が、ほぼ未整備な公募投信(解約若しくは買取り請求は、グローズド期間以外可能だろうが、売りたい時、売りたい価格で売却しにくい)に比べて、ETFは、発行市場機能と流通市場機能を整備している。公募投信には、プロの運用者に運用を委ねるというメリットがあるが、最近上場された三菱グループを投資対象にしたETFと、同じ様に三菱グループ企業に投資する公募投信の募集が行われていたので、比較してみた。
【運用対象】
公募投信=主要な三菱系企業21社(運用者の判断により、投資比率・構成銘柄は変化する)
ETF=“S&P 企業グループ指数-三菱系企業群”指数をベンチマークに、運用。対象は主要な三菱系企業26社
【費用】
公募投信=申込手数料は最大3.15%、信託報酬は0.95%、売買時には売買委託手数料(販売会社により異なる)
ETF=申込手数料は、販売会社により異なる。信託報酬は0.5%、売買時には売買委託手数料(証券会社により異なる)
【販売・売買窓口および管理】
公募投信=販売会社として指定され銀行・証券。購入後に別の金融機関へ移動することについて、現状では個人投資家にとって難しい。(現在は個人投資家が、購入した金融機関から別の金融機関へ、投信を移動させるニーズは多くはないが)
ETF=証券会社ならどこででも売買可能。ただし、機関投資家が、大口の追加設定や構成銘柄との交換を行う場合、運用会社が指定する証券会社(指定参加者)に委託する必要がある。銀行は現在扱えない。
※ETFを推奨するものではないが、コスト面や仕組みは別にして、個人投資家にとって、ファンドマネージャーというプロを頼るのか、S&P指数を基準に投資判断するか、販売者の説明は重要になってくる。
 期待され増加もしているETFではあるが、ニューヨーク取引所の1,022銘柄、ロンドン取引所の314銘柄(6月末)に比べて、まだまだ少ない。また、ETF上場の効果は、
①比較的少額の資金で、インデックス投資や分散投資が可能
②流通市場での日中取引が可能で、対象となる銘柄の流動性増加も期待できる
③公募投信などは解約に備え、ある程度のキャッシュ・ポジションを保有する必要はあり、その為運用効率を低下させているが、ETFはその必要がない。(大口の投資家は、構成銘柄との交換をする為)
とされているが、東証の62銘柄にあっても、出来高が少額で、対象指数との乖離が大きくなっている銘柄もある。
その為、更にETF市場が拡大していくには、以下の様な工夫があっても良いと考える。
○ETFそのものに流動性を付ける為、マーケットメーカー制度の導入と、そのマーケットメーカーが、指数(ETFの基準になる)と現物株の裁定取引を行いやすくなる取引所取引費用の軽減措置
○指数との乖離状況がすぐ分かる数値のリアルタイムの公表(Indication NAV等の様な仕組み)
○ETFデリバティブ市場の育成(CFD取引も一つの受け皿かもしれない)
○ETF組成の負担を軽減する為、指数情報以外の法定開示の簡素化

ETFも市場の入れ物の一つであるが、これを拡大時期に改善することで、他の現物市場やデリバティブ市場への改革に繋がると思うので、“鉄は熱いうちにたたく”ではないだろうか。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

投資信託という機能=その1
12年前に始まった日本での金融ビックバンによって、投資信託は、個人金融資産を資本市場へ導入する仕組みとして、最も重要な地位を占める様になった。端的にいうならば、投信は何処でも売っている。
コンビニはさて置き、郵便局でも銀行でも、ネット上でも、わざわさ証券会社に行かなくでも、金融機関なら(金融機関でない証券仲介業者・銀行、保険、信託の代理店であっても)、何らかの投信は取り扱っている。これは、以下の投信のメリットにより、個人金融資産に占める割合が、日本だけではなく世界的に高まっていると言われている。
①少額での分散投資を可能とする。
②一個人では投資困難な資産への投資を可能にする。
③専門家による運用・リスク管理サービスを享受できる。
④資産運用や金融市場等に関する情報を得られる。
⑤資産管理に係る取引コストを低減できる。 等
 日本においても、これだけ拡大した投信市場(6月末投信協会調べ、57.1兆円、うち株式投信47.9兆円)であるが、本当に機能は整備されているのだろうか。
 例えば、はやりの中国株投信を購入しようとした時、筆者はいくつかの不便を感じる。
○数ある中国株投信の中で、どれが自分の投資戦略にあっているのか判断しにくい。
・投信に関する情報で、各ファンドのパフォーマンス数値を簡単に比較する情報サイトはあるが、運用方針や実際の投資銘柄を比較するものがない。
・興味をもった投信の中身について知りたいが、目論見書をすぐ引き出せない。(多分EDNETで検索するべきだろうが、ファンドの正式名称や発行時期がわからなければ、ファンド間の比較には使えない。)
○投信を選んだとして、販売会社が限定されていて、自分の使っている金融機関が取り扱っていないと、仕方ないので、同様に思えるものを探す。
○売る時、株の様にいくらで売れるか分からないし、解約や買取請求を選ばなければならない。
※つまり、買いたい時、買いたい投信が買えないし、売る時に一抹の不安を感じる。
公募投信と称しているのに、何故望む投信が、望む金融機関で買えないのだろうか。何か素人の様な事を言っていると笑われるかもしれない。販売会社が投資家にちゃんと説明して販売し、ファンドの運用会社がキッチリ運用しているので良いのだろう。いまどき多少高いと思える販売手数料や、信託報酬も、ちゃんと難しい目論見書の内容を説明し、他の投信と比較してくれ、運用や管理もしっかりやってくれれば、それは適正な手数料。しかし、個人投資家がそれを確認する術はない。
 投信の販売会社や運用会社と、個人の投資家は、そもそもの情報格差があって、その為の利益相反行為がおきる事実が、以下の様に確認されている。(欧米における調査事例から)
【販売会社に関して】
●手数料の高い投信を優先的に販売する。
●自社グループの運用会社の投信を優先的に販売する。
【運用会社に関して】
●運用スタイルを自己都合で変更する。
●アクティブ運用で高い手数料を課しながら、実質はパッシブ運用。 など
これらに対して、目論見書内に、利益相反事項や売買回転率に関する記載を、米SECは義務付けている。
 日本でも投信目論見書に関する開示制度の改革が行なわれるようであるが、投信に関する情報は、単にパフィーマンスに関する数字だけではなく、投資判断に影響があると思われることを、共通基準化して、誰もがアクセスしやすい方法で開示して欲しい。その分、販売会社の行為規制にかかる負担を軽くしては如何か。
 また、公募投信なら、第一種金融商品販売業や金融機関の何処でも取扱い可能とする努力をして欲しい。
筆者は、そのことを不可能とは思わない。決済制度改革で、既に投信は電子化というデータ(現状は委託者指図型投信のみ)になっていて、株式保管振替機構にアクセス出来る金融機関なら、運用会社との投信データのやり取りも容易になっている。運用会社からみて、直販しなくとも販売ルートは拡大しやすくなっている。
クラブ・ディールに拘らず、オープン・ディールを、販売会社は試みて欲しいと、一投資家として思う。
(※文中のいくつかの記載は、金融研究研修センターによる報告“実証ファイナンスの視点からみた投資信託市場を巡る論的整理”を参考にさせていただいた。)

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社債市場に対する問題意識
 国債も社債も、同じ債券という有価証券であるが、国債市場と債券市場の間には、その機能と実態に随分隔たりがある。つまり、国債市場は、発行市場も流通市場も整備され、決済においても、いち早くDVPが実現し、実務的には、T+0も可能な市場機能を、有している。片や、社債市場は、発行市場はあるが、流通市場については、一部に店頭取引があるだけで、とても市場というレベルではない。ただし、我が国の決済制度改革(有価証券の)によって、今年の年初に完了した株券電子化よりいち早くペーパレス対応(スタートは2006年1月)になり、今は殆ど流通しない私募債も、株式保管振替機構の投資家口座内にデータとして管理されている現実がある。社債市場に関して極論してしまえば、発行はなんとかあるが、高格付けや一部の業種に偏っていて、流通は市場として整備されていないが、決済・保管だけは電子化で完備されているという、ちょっとアンバランスな状況になっている。
 上記の様なコメントをしなくとも、金融・行政当局や業界も、シンジケートローン・社債・CP・CDSなどのクレジット市場の中で、社債市場の改善は必要として、業界関係者による検討会などを立上げている。日本証券業協会による取組みは、7月14日の拙稿で取り上げたが、金融庁金融研修センターにおける研究会で、以下の様な調査報告がなされている。

クレジット市場における検討課題
その内容から、社債市場に関する問題点を取り上げてみると、以下のようになる。
(カッコ内は、筆者のコメント)
【根本的な社債市場の問題】
・社債市場の規模が、欧米と比べて小さい
・社債保有の半数近くが金融機関で、社債投資家が育っていない
(社債市場改革は随分前から言われているが、進まないのは、社債に関する証券業者の収益性の低さがあるのではないかと思う。以下の問題を解消するためには、業界としても、人的負担とコストが掛かる。社債のビジネスとしての収益性を高める可能性は、CDSなどのデリバティブ・証券化・ファンド組成・指数化にあるのではないかと考える。)
【発行に関する問題】
・社債の利回りが低すぎる
-金融機関のローンの代替になっている可能性
-発行時の条件決定において、今の主幹事による主要投資家へのあいまいなヒアリングではなく、投資家へのロードショーやPOT方式のような需要精度を高める仕組みが必要。その為の金商法改正を。
(金融機関同士が、保有する社債の社債要項などの情報を共有する仕組みがあれば、ポートフォリオ内での、社債入れ替え需要が起きるのではないかと考える。)
【流通に関する問題】
・社債流通価格に関する情報が、取引実態を反映していない。
(単なる業者へのヒアリングベースではなく、取引実態を例えば15分以内に報告するシステムを業界で共有しては如何か。また、この秋からCPについては、証券保管振替機構が毎日かなり細分化された取引実数を公表する予定になっているが、社債の決済に関しても同様の取組みがされれば、発行・取引実態の情報が共有化されるのでないか)
・流通における税制の問題=非課税法人・課税法人・非居住者ごとに異なる源泉税、譲渡益課税など金融所得課税の一本化(これが本当に有効と思われるなら、業界として税制改正要望を強く行うべきと思う。)
【仕組みに関する問題】
・社債管理会社=融資を発行会社に行っているメインバンクが行っている現状で、社債券者との利益相反問題に関する疑念。
・社債に関して、国債のような清算機関がない。このことが、社債の貸借(レポ取引)サービスなど取組み難くしている。(国際的な流れで、CDSの清算機関を整備する動きがあり、東証や東京金融取引所での取組みが伝えられている。CDSと社債は連動制が高いのだから、業界として両所に社債の清算機関設立を依頼しては如何か)
※紙面の関係で、一部のみ取り上け恐縮に思う。
社債市場改革の影響は、日本の金融・資本市場の仕組みを大きく変えていく可能性があるので、関係者の頑張りに期待するとともに、是非、粘り強く取り組んでいただきたいと思う。

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ジャンル : ビジネス

商品先物取引法について
 最近、経済ニュースの解説で、多少違和感を感じることある。
それは、ドル・円相場の見通しで、株高なので、円がドルに対して売られるでしょうという説明を為替ディーラー達がすることである。勿論、彼らは為替取引のプロなのだから、実際にその連動性に注目して、為替売買を行う取引者が、実際にいるのだろう。しかし、何故日本株が上がると、円が売られるか、筆者の頭では、なかなか理解できない。
 理解出来なくとも、連動制・非連動制が明確なら、それは何らの裁定取引を生むので、市場にとって良い事なのだろう。少し話題を逸らしてしまったが、株式市場の参加者から見て、商品先物市場は代替投資市場で、運用対象のデリバティブの一つという見方は、ヘッジファンドでなくとも定着しつつある。
 その商品先物取引に関する“商品先物取引法”が国会を通過して、7月10日公布された。
この法律は、今までの商品取引所法と海外先物取引法を一本化したもので、国内外でも商品取引所内外であっても統一した規制の対象となる。つまり、ロコ・ロンドンまがい取引の様な海外先物取引であっても、業者を登録制にして、ちゃんと行為規制で縛るという仕組みに変わっている。随分金融商品取引法に寄ってきたと感じるが、商品先物取引は立派なデリバティブ取引なので、金融商品取引法と同様の構造になるのは当然なのだろう。まして、金商法でも、金融・商品取引所間の相互乗入れが法的に整備され、両者はほぼ同様の法規制となる。
 その概要は、以下のようになっている。
【使いやすい商品先物市場の実現】
○商品取引所+海外先物法→国内外、取引所内外で隙間ない制度の構築
○取引所証拠金を銀行保証での代用可能とし、事業者の負担を軽減
○取引所上場商品の多様化を図る
○取引所株式保有制限(20%未満)を緩和し、金融商品取引所との相互参入を可能にした
【透明な商品先物市場の実現】
○取引所外取引の実態把握を可能にするとともに、取引所外の取引を利用した相場操縦行為に関する罰則を整備
○海外当局と連携した相場操縦行為等の摘発を可能とする為、情報交換手続きの整備
○大口取引情報の営業日毎の提出等、取引所から当局への報告事項を拡充し、当局による市場監視を強化する。
○実態経済の需給とかけ離れた異常な相場過熱時など緊急時において、証拠金の引上げ命令等を行う規定の整備を行う。
【トラブルのない商品先物市場の実現】
○取引所外取引・海外先物取引は、原則許可制を導入、行為規制を強化する。大規模業者のみを顧客とする業者は、届出制。
○プロ・アマ規制を導入し、プロについては円滑な市場利用を可能とし、アマは十分な保護を実現。
○顧客から預託を受けた預かり金の保全の為、委託者保護基金制度の機能を強化。
○ロコ・ロンドンまがい取引に代表される取引所外取引について、不招請勧誘の禁止。
以上となっている。
 ただし、商品取引員の最近の現状は、
商品取引員数 51社(←93社平成17年8月末)
外務員数  5,960人(←13,898人 同上)
委託者数 89,061人(←105,263人 同上)
と、大きく縮小している。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

利益相反について
 金融・資本市場において、公正性・透明性の確保は当然だろうが、一方では市場の仲介者のビジネスとして、何らかの情報の非対称性(顧客との情報格差)に頼るところが残っているのも、また事実だろう。
 金融機関等が新しい金融商品・金融サービスを、顧客へ提供していくとき、この情報の非対称性を使っていこうとするなら、“利益相反”に関して厳格に処理していかなければならないというのが、最近の潮流になっている。
 金融機関グループの対応だけではなく、“利益相反”行為として、何らかの対応が法制度上求められていることに関して、以下の様な状況である。
【ファイアーウォール規制緩和に伴うもの】
 6月からの規制緩和の前提として、銀行グループが利益相反管理を義務付けられている。
未公開の法人情報を、グループ間で営業に活用しようとしたとき、何が問題か、どの様に利益相反を管理しているか等を、“利益相反管理方針”として公表している。
例えば、M&Aの助言を行う場合、グループ各社が競合する企業にそれぞれアドバイスを行うような場合、これらの情報は遮断されなければならないし、かつM&A案件の進展によっては、どちらか一方を、若しくは双方との取引を中止しなければならない。また、株式・社債をグループの証券が引受、その資金が親銀行の借入金返済に充てられる時、このことを投資家に公表しなければならない。その他、
・シンジケートローンに関する業務
・資産・債券流動化に関する業務
・プリンシパル・インベストメントに関する業務
・社債管理に関する業務  等についても、同様の利益相反の管理が求められる。
【格付け機関に関するもの】
 格付機関規制については、前回触れたが、利益相反については、以下の様な問題があると考えられている。
・格付費用を、格付けする企業・発行者が負担すること自体が、そもそも利益相反ではないかという疑問。
・格付け機関の営業活動上行う格付けコンサル活動は、投資家が求める厳格な格付けとの間に、コンフリクトを起こしていないか。
・格付機関や格付け担当アナリストが、自ら格付けする証券に投資する行為は、利益相反の可能性がないか。 等
【Jリートに関するもの】
 投資会社や運用会社のガバナンスが、投資家の為に適切に行われているか。スポンサーである不動産会社や金融機関等の影響を強く受け、以下のような利益相反行為があった。
・アスベスト対策や増改築中の賃料未収機関を考慮することなく、割高に物件を購入したケース。
・第三者割当増資に対して、社外取締役が反対したにも関わらず、取締役会議事録で事実と異なる記載をし、増資を実行。
・運用会社の利害関係者が売り主のケースで、資産取得時に、鑑定業者に不当な圧力。また、売り主が負担すべき費用まで、投資法人が負担。
【コーポレート・ガバナンスに関するもの】
 独立取締役導入の議論のベースになった、経営者と株主の利益相反行為に関して、以下のような事例があった。(以下に対する対応は、取引所ルールで整備される予定。)
・極端な株式併合による少数株主の排除行為。
・MBOなど、上場会社が売り手となった場合の企業価値の算定に関して、買い手となる経営者と、売り手の株主の利益相反。
・買収防衛に関するもので、買収相手への現金の提供行為や、防衛策そのものが、株主の利益に反していないかという疑義。
・大規模な第三者割当増資における、既存株主との利益相反行為。

 金融ビックバンによって、金融・資本市場への参入障壁が低くなり、また金融サービス・金融商品も多様化した。しかし、この様な利益相反行為を突き付けられては、市場仲介者への行政管理が厳しくなっているように思うのも、仕方ないのだろうか。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

格付機関規制について
 金融・資本市場において、格付けの問題は本当に難しい。それは、投資判断に重要な影響を及ぼす格付けを行う格付機関が、利益を求める民間の企業であることに集約される。そして、難しいからこそ、政府がやる、それもグローバルで規制する。サブプライムの証券化商品が問題になった一昨年から、欧州や米国は、格付機関を登録制移行し、規制を強化している。日本でも、この6月に成立した改正金融商品取引法で、格付機関規制が導入され、来年末までに実行される。
【規制導入の背景・問題点】
・AAA格の証券化商品が、突然短期間に急速にBBB未満の投資不適格に格下げされるような状況。事後の調査で、証券化プログラム上のミスが発覚した事例もあった。
・本当に公正な格付けがされているのかといった疑念。例えば、前回の日本の金融危機下で、国債格付けがアフリカ諸国と同様になったのに、財政赤字が膨らむ米国が高格付けのまま。
・格付けを取得する企業が、複数の格付け機関に格付けを依頼した場合、仮格付け段階で、低い格付けを排除したり未公表にするケースも散見された。
・自ら調査能力を持たない個人や中小の機関投資家が、格付けに頼るのは仕方ないとして、国が指定格付け機関として、金融機関の自己資本比率やソルベンシー・マージンの算定基準や公的組織の運用基準として、格付けそのものに依存しすぎていないか。
・格付けの定期的見直しは、発行者のコスト負担なので、本当に持続的に行われていたか。その見直しに関する情報は、投資家の入手し易いところにあったか。
・格付けの独立性や透明性が確保されるのは当然として、その為に組織としての格付け機関のガバナンスは、どうなっているか。企業へのコンサルと格付作業の様に、利益相反する場合や、格付けアナリストや格付機関が、格付対象証券に投資することなど、どうチェックされていたか。
・格付けの表示に関して、企業に対するものと、ストラクチャーもの(証券化商品)で、同様の表示方法でいいのか。
・そもそも、格付けする対象の企業や発行者から、格付費用を徴収する仕組みは、利益相反ではないか。
【成立した格付機関規制の内容と国会附帯決議】
○今までの指定する方法から、格付機関を信用格付業者として登録する制度を導入
○業務にかんする規定の整備
1.独立した立場・公正かつ誠実に業務を遂行
2.利益相反防止措置を含む業務管理体制の整備を義務付け
3.自己名義で、他人に信用格付け業務を行わせない
4.自らが利害関係者である場合、格付けの提供・閲覧等の禁止規定の整備
5.格付け方針等を公表し、その方針に沿って業務を遂行
○監督規定等の整備
-事業報告書を作成し、提出する義務
-業務の状況に関する事項を記載した説明書類を作成し、備置・公衆縦覧・インターネット等での公開
-検査・業務改善命令・業務停止・登録取消等の規定整備
○無登録の格付機関の格付けをもって勧誘を金融証券業者が行う場合、無登録である旨の説明を義務化
[国会での附帯決議]
国際的な動向を踏まえて、機敏に対応。日本の国情に配慮
利益相反の回避について、実効的な規制を
格付け後のモリタリングの実績を公表を義務化することを検討

海外での状況について簡単に触れると、既に登録制を導入した欧州については、発行者に対して登録した格付機関の利用を義務付ける方向が示され、米国は、登録制を導入しつつも格付機関への依存を減らす方向を模索している。米SECが、格付機関への依存度を低くする指針案を策定、また発行者が格付けを公表する前に、複数の格付け機関が判断した仮の格付けの公表を、義務付けることを、検討していることも伝えられている。

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空売り規制について
 空売り報告義務の恒久化の報道が流れているので、もう一度空売り規制について整理してみる。
そもそも空売り規制そのものは、前回の金融危機後の1998年に旧証券取引法(現金融商品取引法)で導入されたが、昨年のグローバルな金融危機で、各国が導入もしくは強化(米国は大手金融機関株中心)した。日本での、10月末から強化され、その内容は、以下。
(1)原則直前の価格以下での空売りを禁止した価格規制
(2)売付けが空売りであるか否かの別の明示・確認を取引者等に義務付ける明示・確認義務
(3)各取引所における、全銘柄合計及び業種別の空売り状況の日次公表(昨年10月14日以降)
これに加えて、昨年10月30日以降の時限措置として、
(4)売付けの際に株の手当てがなされていない空売り(Naked Short Selling)の禁止。
(5) 一定規模(発行済株式総数の原則0.25%)以上の空売りポジションの保有者に対する、証券会社を通じた取引所への報告の義務付け。取引所による当該情報の公表。
(6)上場会社の自己株式取得に関する、取得制限(一日の出来高25%まで、引け前30分の取得禁止)を停止
となっており、この(4)~(6)の部分は、この7月末までの適用期限となっていた。
報じられたのは、この(5)の部分の空売り報告義務恒久化である。

 市場への規制に関しては、今回の金融危機のような緊急時であっても、市場関係者からは根強い反感がある。また、空売り規制に関する反発や効果を疑問視する識者もいる。大量の空売りを仕掛けるヘッジファンド等からの、注文減少を心配するトレーダーの気持ちも分からなくない。しかし、本当に空売り規制強化は、市場にとって問題なのだろうか。規制強化を問題とする意見を纏めると、以下の様になる。(カッコは筆者の株式市場の運営という視点からの私見)
○空売り規制は、個別株の流動性を低下させる=ヘッジファンドが原油買いの金融株売り、A社売りのB社株の裁定取引などを実行すれば、金融株やA,B社の流動性は著しく上昇する。欧米は、売った株式が渡せなくても、フェールルールがあるので、Naked Short Sellingのような空売りでも、問題ないとする考え。裁定取引による流動性確保を重視。(ヘッジファンド等の裁定取引は、市場の重要な構成要素だと思うが、借りる見込みのない株までも、取りあえず売っておく行為が、ヘッジファンド等大量な売買で行われることに疑問)
○空売り規制は、プットオプションの価格を上昇させる=ヘッジの為に、プットオプションを購入するのは有効。そのオプションの売り手による、デルタヘッジの為の売りがし難くなり、プットオプション価格を上昇させる。その為、ヘッジしようと思っている投資家のコストアップになるという考え。(オプションの受け手が、自らの売りを、株を借りて行う。この借り株のコストも、オプション価格に反映させるべき。つまり借りにくい株なら、オプション価格が上昇するのが当然。)
○空売り規制は、相場の反発力を弱める=大量の空売りがなければ、大量の買い戻しもなく、市場の大幅な反発は望めないとする考え。(そうかも知れないが、そこまで市場のボラティリティを確保する必要があるか筆者には判断できない。)

 市場には、ヘッジファンドのみならず機関投資家・個人投資家と多様な投資家と投資ニーズがあることこそ重要だと考えるが、空売り規制強化が、この投資ニーズの多様性に弊害を及ぼすかどうか、規制内容を検証する必要もある。(ヘッジファンドを登録義務制にする法案が、15日米国会に提出されている。)
 今回、恒久化が報じられている大量の空売り(発行済みの0.25%以上)の情報公開は、市場の透明性確保から、続いてもいいのではないかというのが筆者の考えである。報告する証券会社は、多少の事務コストがかかるだろうが、ヘッジファンド以外の投資家にとって、この情報の価値はあると思う。ただし、現状の報告様式は、各社各様で見難い。せめて、同一様式による記載で、エクセルなどで作成していただければ、集計や加工もし易く、投資情報としての価値をもつ。せっかく続けられるなら、日本の多くの投資家への情報提供としてお願いした。

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IPOというビジネス
結論からいうと、IPO(株式公開)という業務は、証券会社内における単独のビジネスとして成り立たなくなっている可能性がある。ただし、“今のやり方のまま”ならという注釈が付く。
 元々、証券会社においてIPOビジネスは、装置産業的なところがあり、
A:新規上場企業を発掘する営業部門
B:発掘してきた企業に対しIPOコンサルティングを行う支援部門
C:社内の審査及び取引所審査に対する指導を行う審査部門
の、IPOの為の専門部隊が必要で、取引所のOKが出て上場スケジュールが見えたところから、引受・アナリスト調査・販売戦略などが加わる。
上場に至るところでは、投資銀行としての総力戦になるのだか、そこに達するまでA~Cが対応する部分が、平均で1~2年、長ければ3~4年を要することもある。元々、大手の証券会社でも、数年に一度の民営化案件や大型金融機関の上場・再上場でもなければ、単独のビジネスとしてのA~Cの様な組織の維持は難しかった。 実際、IPO案件の減少期には、A部門を他の営業部門に配置転換させたり、Bなどは会計系コンサルが代替するケースも増加していた。
 しかし、IPOは企業にとって資本市場の入口になるのだから、証券会社の機能としてIPOは重要である。Aの様なIPO企業発掘の為には、市場誘導業務として地域金融機関など連携したり、有望企業に対してはファンドの形で投資したり、M&Aビジネスとリンケージさせたりし、証券会社はこのビジネスの収益性改善に努力してきた。
 現実のIPO市場は、極端に縮小している。この様な経済情勢と、市況環境なので仕方ないという見方で良いのだろうか。
 14日に、あずさ監査法人のIPOサポート室が、本年上半期(1~6月)のIPO動向について公表している。以下、概要。
IPO社数:9社←24社(2008年同時期、年間では49社)←73(2007年同時期、年間では121社)←93社(2006年同時期、年間では188社)
調達資金:常和ホールディングス(不動産業)の34億円を除けば、数億円規模、調達なしが2社
上場初値:3社が公募価格2倍前後の初値、それ以外は公募(売出し)価格前後。
 この様なIPO市場の縮小原因について、経済情勢と市況環境以外に次の2つの問題があると筆者は考える。
○審査の問題(取引所、証券会社)
○公募価格プライシングの問題
ここ数年、新興市場を中心とした問題として、粉飾決算や極端な第三者割当・ファイナンス・反社会的勢力との関係など、投資家にとってコーポレートガバナンスを問題にしたくなるような案件が相次いだ。この事で、証券及び取引所の審査が厳しくなることは問題ない。しかし、審査のグリップが緩まったり、締められたりする(多分、行政の姿勢を、審査する側が勘案してということだろうが)ことがもしあれば、外部からは分かり難い。そのことで、市場誘導する側の混乱があるのではないか。
また、プライシングに関して、新興企業ということで価格算定根拠から大きくディスカウントして公募価格を抑え、初値が高くつくのがよい事ではない。販売する側は、プレミアム商品ということで重宝するだろうが、結果は、初値で公募価格の倍、その後半年で初値の半分以下になってしまう新興市場であれば、短期売買以外の投資家が離れていくことは、現実の新興市場が証明している。このことは、関係者の努力で、現在改善しつつあると信じたい。

証券会社の社員なら、入社した時に、一度は下記の様な話しを聞いているだろう。
戦後、取引所を再開した時に松下を、上場した時にソニーを、1000株(最小の売買単位という意味)数万円で買っていれば、それが数億円の資産になっている。
目先の利益ではなく、投資の夢を語れる新興市場にする為には、どう市場の仕組みを作り直していくか考える時期に来ている。プロ向け市場で、審査対応を簡便化するのもある。また、新興企業のファイナンスに関して、投資家がその成長を見守ってやれる仕組みとして、株主割当増資は有効かもしれない。
そう言えば、高度成長期のファイナンスは、株主増資割当が主流だった。

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社債市場の改革にあたり
 資本市場において、資金調達側の企業は、ファイナンス方法として株式か債券で行う。しかし、その株式市場と債券市場は随分とイメージが異なる。簡単に言ってしまえば、株式市場は流通マーケット主体であり、債券市場(国債以外の)は発行マーケット主体である。また、債券の投資家についていうなら、金融機関中心の機関投資家に限られていたし、企業が発行した社債が、株の様に流通しているといったイメージには随分遠かった。
 その様な社債市場について、改革しようと、日本証券業協会で経済界・金融界の有識者を集め、社債市場の現状及び活性化に向けた様々な課題の検討、取組を進めるため、今月初め「社債市場の活性化に関する懇談会」を設置した。このこと自体は、日本の資本市場強化においても非常に重要なことで、是非実行力のあるプランを、数値目標・期限・優先順位のオバマ流で進めていただきたい。
 以下、日本の社債市場に関して、多少のコメントを、資本市場強化の観点から述べる。
【社債市場の実況】
株式保管振替機構の6月末データによると、以下のような実態となっている。
・社債(公募)=2,432銘柄、発行残高57.6兆円
・社債(非公募)=55,945銘柄、発行残高12.6兆円
・資産担保社債(公募)=62銘柄、発行残高1兆円
・資産担保証券(非公募)=927銘柄、発行残高5.4兆円
・非居住者の国内発行合計=361銘柄、発行残高9.9兆円
※国内で発行される社債もペーパレス化が完了している。現状は殆ど流通していない、私募債(上記の社債(非公募))も電子化されており、流通・保管に掛かるコストは、著しく低下している。
【社債発行市場の問題点】
・公募債では、低格付けの発行が未だ機能していない。
・公募債は引受業者との関係で、発行額の下限がある。
・私募債に関して、財務制限条項(発行会社の財務的な制約)を含めて、社債の発行要項を入手しにくい。
【社債流通のプロセス】(簡略化して)
社債に関する情報の集約(売買価格情報、信用格付情報、企業情報、社債の発行要項等を集約)
     ↓
売買ニーズの集約(実際は、証券会社(仲介者)が投資家ニーズを収集して、社債を仕入れる場合が多い)
     ↓
売買ニーズのマッチング(上記の流れで、証券会社が取引相手となる場合が多い)
     ↓
社債の受渡決済・保管(投資家のポートフォリオを管理する口座に移動若しくは証券会社に取りあえずそのまま)
【社債流通市場の問題と課題】
・全般的に流通市場があまり機能していない。
・特に私募債が流通する仕組みは、中堅・中小企業の資金調達力に大きく影響するが、ほぼ無い。
・流通の為に何が必要かについては、上記社債流通プロセスにあるように、社債の電子化で決済・保管の負担が投資家・流通業者たる証券会社双方軽くなっているので、まず初めのプロセスの社債に関する情報集約とその公表に注力するべきと筆者は考える。
・社債の価格情報については、現在行われている証券会社へのヒアリングベースのものではなく実際に売買された情報を集約し、公開する仕組みが必要。(実際に売買されていないものは、類似する社債の売買価格情報が比較可能へ)
・社債の格付け情報に関しては、グローバルな格付機関規制の中で、格付情報(更新分も含め)の公表が義務付けられるので、これを活用してどうか。
・社債の発行要項に関しては、既にデータとして株式保管振替機構に集約されているので、この情報を活用し公開される方法を検討するのが現実的。
・実際の売買に当たり、カウンターパティー(取引相対者)リスクを低減する為、機関投資家間で社債クリアリングを共有する方法が望まれる。
・更に、売買ニーズのマッチングの為に、機関投資家が自分にニーズを流通業者の証券会社に引き合えるシステムの構築(国債では既にある)が望ましい。
・大和証券が個人向けに国債PTS(私設取引システム)を始めたが、個人向けにはこの様な取組みも必要。

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M&Aのインサイダー取引
資本市場に係る業務に従事するものにとって、未公開の重要事実に接する機会は多々あるが、この情報の管理こそ、信頼できる投資銀行としての最低限の必要条件であることに疑いはない。
 重要事実には、勿論、売上げの1割以上の変動といったような数値基準はあるが、株主や投資家の投資判断に影響があるかどうか判断出来てこそ、M&Aやファイナンスなどの投資銀行業務のアドバイザーに相応しい。会計や経営コンサルの専門家であっても、この情報管理が出来なければ、M&Aなどのアドバイザーとしては適正ではない。況や、証券会社や金融機関は、この6月からファイアーウォール規制が緩和されているので、法人に係る未公開情報の取扱いは、最善の体制で臨まなければならない。
 しかし、人より有利な情報というのは誰しも欲するが、それを自らの株取引に利用してならないのがインサイダー取引である。そのインサイダー取引に関して、課徴金対象となった33事例が金融庁から公表されており、やはりM&A関連が15事例(うち2事例は重なる案件)と多いので、概要を紹介する。
【M&A:TOB(公開買付け)絡み】
・証券会社社員、MBO案件で、買付け対象会社役員よりTOB契約提携を知る(公表の3カ月以上前)。公表の3日前に、知人名義で買付け。
・買付け会社の監査役、公表の2カ月前の経営執行会議でTOB計画を知る。公表の2週間前から3度に渡り自社社員名義口座で買付け。
・印刷会社社員の友人・元同僚、TOB関係書類を作成する印刷会社社員から情報を、複数のTOBの進捗に合わせて入手(10社分と3社分)し、買付け行為を繰り返した。
・対象会社の監査役、MBOで対象会社の経営者が買付け会社として設立準備していた者から公表の約2カ月前に情報を入手、公表の約3週間前に親戚名義で買付け。
・対象会社の取引先社員、公表の2カ月近く前に、対象会社の役員から業務提携の解消と新たな業務提携・TOBについての情報を入手、公表直前まで知人名義で持続的に買付け。
【M&A:業務提携絡み、違反者が複数に及ぶ】
(資本業務提携案件において)
・提携先役員よりの情報受領者、公表日の前日、提携先役員より資本業務提携情報を入手。公表日の直前に買付け。
・資本業務提携を取材した放送局の職員3名、公表日の公表直前に知り、即買付け(一部信用取引を利用した。)
・業務提携先の役員7名、総販売代理店になるという業務提携に関して、公表前の1~2週間前に顧問や営業担当者から情報を入手、その後公表までの間に買付け(1名配偶者名義)
・社員3名(営業、経理、業務管理担当)、社内会議において業務提携及び第三者割当増資に関する情報を入手、公表の約1週間前に買付け。
【M&A:合併、統合等に絡み】
・関係会社の管理に関する事務に従事する者、吸収合併に絡んで別の社員からメールで合併委員会の議事録を入手、公表直前の一週間で買付け。
・与信審査事務に従事する社員、合併に関してのデューデリジェンスへの参加で情報を入手、約1カ月前に信用取引で買付け。
・会計・決算事務に従事する社員、合併に関してのデューデリジェンスへの参加で情報を入手、公表の約3カ月前に買付け。
・役員及び予算・財務管理に従事する社員、公表の3か月前に株式交換に関する会議資料のコピーの入手及び上司から予算検討の指示で情報を入手、公表の直前・2週間前に、知人・親族名義で買付け。
【M&A:業務提携及び第三者割当】
・業務提携先の会社自身、業務提携に係る第三者割当実施の公表前に、対象会社株式を買付け。

いずれも上場会社のM&Aに関連したものであるが、M&Aアドバイザーは、顧客の情報管理指導まで含めたプロジェクト管理能力を、求められている様にも思える。その厳格さがあって、資本市場を利用したM&A業務が成り立つのだろう。

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虚偽記載事例について
資本市場を利用しようとする企業にとって、投資家との接点はディスクロージャーによるが、そのデスクロージャーの中核になっている開示制度(法定開示)において、虚偽記載は株主や投資家に大きな損失を負わせ、かつ資本市場の大きな負担を残した。企業側に対しても、コーポレート・ガバナンス強化議論では、外部のチェック機能として独立取締役導入議論を呼び、内部統制報告の負荷を負わせることになった。
 その虚偽記載に関して、先月証券取引等監視委員会(SESC)から課徴金事例集が公表されており、23件の事例が公表されている。事例の概要は以下。
・架空売上計上で、純損益が約5.4億円過大計上→課徴金約223万円
・工事進捗率による売上げの過大計上及び原価の過少計上・損失引当金の過少計上により純利益額が約204億円過大計上→課徴金約16億円
・2期に渡り、工事関係の売上げの過大計上及び売上げ原価の過少計上で、純利益を約7億円・約9億円過大計上→課徴金約2500万円
・3期に渡り、不動産に係る売上げの過大計上、貸倒引当金繰入額の過少計上で、純利益を約17億円・約23億円・約23億円過大計上→課徴金約1200万円
・2期に渡り、システム開発プロジェクトでの売上げ及び棚卸資産・前渡金等の過大計上で、純利益を約1億円・約2億円過大計上→課徴金約2000万円
・4期に渡り、自動車販売に係る売上げの過大計上・貸倒引当金の過少計上等で、経常損益を約9億円・約24億円・約6億円・約2億円過大計上→課徴金約2億円
・工事に係る売上げ原価の付け替え・繰り延べで、経常利益を約3億円過大計上→課徴金約1.3億円
・システム開発に係る損失の繰り延べで、純利益を約6億円過大計上→課徴金約2000万円
・3期に渡り、循環取引やスルー取引でソフトウェアの架空売上げ等により、純資産額を約9億円・約1億円・約1億円過大計上→課徴金約3000万円
・子会社が100%支配する孫会社を連結に含めなかった・EB(交換社債)発行に係る日程の虚偽による評価益の計上で、連結経常利益を188億過大計上→課徴金5億円
・工事に係る売上げの前倒し経常により、連結の純資産額を約10億円過大計上→課徴金165万円
・建物の引き渡しに係る売上げの前倒し計上で、純損益約3億円過大計上→課徴金約200万円
・受注の扱いで、売上げの前倒し計上により、純損益約3億円過大計上→課徴金300万円
・コンサルティングなどの売上げ前倒し計上により、純損益約4億円過大計上→課徴金300万円
・機械出荷に係る売上げ前倒し計上等により、純損益約1億円過大計上→課徴金300万円
・2期に渡り、ソフトの売上げ・のれん・売上債権の過大計上等で、純資産額約40億円・約26億円の過大計上→課徴金600万円
・2期に渡り、アウトレットに係る売上げ原価の過少計上により、純損益約4億円・約8億円の過大計上→課徴金500万円
・3期に渡り、棚卸資産の過大計上で、純資産額約5億円・約4億円・約5億円の過大計上→課徴金750万円
・2期に渡り、売上げ原価の過少計上で、純損益約6億円・約9億円の過大計上→課徴金600万円
・2期に渡り、リース収益及びリース資産の架空計上等で、純資産額約10億円・約10億円の過大計上→課徴金約350万円
・退職給付引当金の過少計上で、経常利益6億円の過大計上→課徴金200万円
・自治体プロジェクトに係る架空売上げ及び架空仕入れの計上で、純利益や約4億円過大計上→課徴金300万円
・関係会社株式の過大計上・関係会社損失の過少計上で、純資産額が522億円過大計上→課徴金830万円

なにか、うっかりミスの様なものまで含まれているようにも思うが、監査されている以上、投資家には言い訳できない。また、内部統制上、経営者が知らなかったということも出来ない。

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地域金融機関のM&A
この様な経済情勢下なので、日本企業のM&A市場も今年前半(1-6月)は金額ベースで3.8兆円と前年比で43%減となっているが、件数ベースでは1360件と前年比6・9%減にとどまる。(トムソン・ロイター調べ)金融危機の再発の懸念が遠のいても、取りあえず企業は手元資金を厚くし、投資は後回しといった大企業の行動の結果だというが、景気の先行きに係らず地方の中堅・中小企業において、事業承継というテーマに係るM&Aのニーズは高いとみられている。
 これらのM&A支援は、地域金融機関が中心になるだろうが、実際どのように取り組んでいるか、8日金融庁から公表された“20年度の地域密着型金融の取組み状況”から、その実績を取り上げてみる。

【M&A支援実績】
・支援件数365件=うち地銀315件(1行あたり平均2.9件)信金50件(1金庫あたり0.2件)
・上記のうち事業承継に係るもの158件=うち地銀126件、信金32件
【取組み実例】
(M&Aのマッチング支援)
○ 取引先の事業承継対策、将来戦略の選択肢としてM&Aを検討してもらうため、他行やM&A仲介会社と連携しM&A支援組織を設立。事業承継セミナーの開催や定期的な情報交換による情報力強化、他行・他機関案件のマッチング強化で、取引先への提案機会の増加に努めている。
○ 本部に税務・法務等の専門知識を有する事業承継担当者を配置し、取引先の要請により営業店担当者と帯同訪問し、M&A等による事業承継問題の解決を支援している。
○ M&A業務専担者を配置し、情報集約や事業承継スキームの立案等事業承継に関する総合的なアドバイスを実施し、営業店をサポートする。
○ コンサルティングプラザを設置し、外部専門家(税理士)との連携による事業承継・M&A相談等の顧客相談体制を構築した。
(外部専門家と連携した取組み)
○ 取引先の企業実態を深く理解している顧問税理士と提携し、事業承継セミナーの開催や税理士を交えた相談会により、事業承継ニーズ把握に取り組んでいる。
○商工会議所との連携を図るとともに、外部機関セミナーへの職員の派遣や勉強会の実施等により、本部及び営業店担当者の専門知識の強化に努めている。
(事業承継ファンドの組成・活用)
○事業承継ファンドが前経営者の相続人から会社の全株式を取得し、経営陣を派遣することにより事業継続と雇用確保等を図った。
○ 地域の中小企業の事業承継を実現することを目的として設立された事業承継ファンドに出資。
(株式買取に関する資金面の支援)
○ 大手製パン会社の事業再構築に伴う工場売却ニーズに対し、地場製パン業者を仲介。日本政策投資銀行と共同アドバイザーを務め条件調整等を図るとともに、買収企業に対し地元金融機関等と協調融資を実行し、M&Aの成立を支援した。
(外部機関への派遣等)
○ M&A業務に必要な税務、法務、企業評価手法及び実践的交渉術を職員に習得させるため、専門部署からM&A専門仲介会社へ研修派遣している。

 以上のようにM&A支援ビジネスとしては、専門部署の設置や外部専門家との連携構築段階で、創生期の感が否めない。しかし、逆説的に言うなら、その分M&A支援ビジネスとしての潜在力が大きい。
 また外部のM&A専業者を含めたネットワーク作りを試みているのは、M&Aビジネス基盤としての可能性を感じさせる。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

Jリートという金融商品
バブル後の不動産市場において、不動産の証券化・私募不動産ファンド・Jリートは随分貢献した。
約68兆円といわれる賃貸オフイスなどの収益不動産のうち約42兆円が証券化され、その内私募フォンドで13.2兆円、Jリートで7.4兆円(昨年12月末の運用資産額)となっている。
またJリートは、私募ファンドなどの主要なEXIT先となっていて、Jリート市場の回復は、金融市場・不動産市場双方から期待されている。
 Jリートがスタートしたのは2001年9月で8年近く経つが、昨年度は新規上場もなく、またスポンサーが破綻する銘柄も出た。金融商品として見直す時期に入ったのだろう。
不動産証券化協会のファーラムにおいて検討され「Jリートを中心とした我が国不動産投資市場の活性化に向けて」として、7月6日に公表されている。以下、検討内容の概略を金融商品としての視点でみる。
【Jリート再編のための整備】
・支払い配当が損金算入される仕組みで、税務上の所得から会計上の利益へ判定式が改正。またJリートが合併した際の負ののれん代も、今年度から配当対象から除く措置へ。
・Jリートが合併した場合、合併比率の端数調整の為の合併交付金の明確化
・Jリートが合併した場合、相手株主に割り当てられるべき(実際は売却代金)端株相当分のTosTNeT活用を可能に。
・清算による非上場化も可能だか、合併・スポンサー変更・運用会社の交替で市場に留まる努力を期待
【Jリートのガバナンス】
・上場企業のガバナンスと比べると、投資法人・運用会社・スポンサー(運用会社の主要株主)とそのガバナンス構造が一般投資家に分かりにくいのではないだろうか。また、昨年は4社(運用会社のみは2社)が利益相反行為や内部管理体制の不備で、行政処分を受けている。その為、以下の取組みを。
①投資法人による運用会社の忠実義務等のモニタリングを強化。その為、投資法人の執行役員を始めとする陣容の充実を。
②運用会社において、業務執行のモニタリングが出来る社外取締役の選任を。
③運用会社の報酬体系のより一層の工夫を
※上場企業も投資家の信頼を得るコーポレート・ガバナンス改革を実行中だが、同じ市場に立つのであれば、スポンサーに頼らないJリートのガバナンス整備は必須と筆者は考える。
【ファイナンス】
・ファンドである以上、エクイティとデットの比率は運用に大きく影響するが、昨今の様な金融情勢ではエクイティ部分を強化するためのファイナンスも必要だろう。しかし、ファンド的性格を考えるなら、既存株主への希薄化配慮は、一般企業以上に配慮されるべき。また、企業のファイナンス同様に、資本政策に関する法整備及び機能整備が期待される。
①株主割当増資(※筆者は、この手法がJリートファイナンスの基本と考える。)
②転換社債
③種類株
④自己株式の取得、株式配当、減資規定の創設など企業なみ資本政策の整備
【投資法人債】
・この9月から償還が始まる投資法人債は、約6400億円発行されている。また金融機関がJリート向け融資(約2.9兆円の融資残高)に慎重なこともあって、この資金繰りを支える目的で官民ファンドの創設が報じられている。内容は、政策投資銀行・金融機関・大手不動産で最大5000億円の基金を8月にも創設し、投資法人債を購入、Jリートの資金繰りを支える。

現在41銘柄のJリートであるが、不動産市場のEXITとして更なる拡大が期待されているので、官民上げた支援体制は必要なのだろう。しかし、ガバナンスの強化・明確化に自ら努めなければ、金融商品としての拡大は難しい。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

FX取引規制=業者側の対応と懸念
有価証券も店頭デリバティブも、売買や売買の媒介などの勧誘行為を行うものは、証券会社でも外為証拠金取引業者(以下FX業者)でも第一種金融商品取引業者であり、金融商品取引法を根拠法としての登録制度に組み入れられている。
 つまり5,000万円の最低資本金規制と、金融庁が定める登録拒否要件に抵触しなければ、誰しもが参入することが出来るのが、この第一種である。(元引受業務は、最低資本金10億円、PTS業務は許可制)
 最近は、FX業務を行う証券会社も増加してきているが、FX業専業であっても、この第一種金融商品取引業者としてFX業務を営むことが可能な制度となっている。証券会社は315社あるが、FX取引を行うことが可能な商品先物専門会社は61社あって、これらは証券会社ではない金融商品取引業者である。
 このFX取引に関して、最近はレバレッジ規制が話題になるが、その前に、来年の6月までにFX取引に関して、顧客証拠金の分別管理とロスカットルールの運用を徹底しなければならない。(内閣府令)
その為に、金融庁はFX取引についてFX業者への“監督指針(案)”を下記のように改定することを公表している。
①FX取引の区分管理の方法が金銭信託に一本化されることに伴い、監督上の留意事項等を明確化。
②金融商品取引業者にFX取引に係るロスカットルールの整備・遵守が義務付けられることに伴い、勧誘・説明態勢やリスク管理態勢に関する監督上の留意事項等を明確化。
③低スプレッド取引を提供する金融商品取引業者に関して、勧誘・説明態勢やリスク管理態勢に関する監督上の留意事項等を明確化。
④新規に第一種金融商品取引業の登録申請を受けた場合の留意事項として、登録拒否要件等に該当しないかを確認するため、疎明資料の提出を求める旨を明確化。
この“監督指針(案)”に対して、主にFX業者からのコメントが寄せられていて(パブコメの公表)、FX業務を多少垣間見ることが出来るので、概略を以下に紹介する。
【顧客証拠金の分別管理について】
・カバー取引先(金融機関等)への自己資金預け入れが増加する。(今までは、顧客証拠金を預ける部分があった)
・今まではカバー取引先が複数あるようなケースがあったようだか、顧客証拠金を金銭信託で別に管理しなければならず、その為カバー取引先から何らかの与信を受ける必要がある。この与信の条件に、カバー取引先を一社に限るという条件があるようだ。
・顧客の損失拡大が、カバー取引先との与信拡大につながって今まで以上の資金が必要になる。
・カバー取引先との与信枠確保で、顧客証拠金を金銭信託している信託銀行の保証状(LG)で対応しているケースがある。またLGの担保として、信託受益権に質権設定している。
【ロスカット取引について】
・ペア取引や更に複数の取引でポジションを管理している顧客が、一つの取引でロスカットルールに抵触した場合、ロスカット取引が必要かどうかという業者の問いに、金融庁は個別取引ごとに管理することを要請。
・ロスカット取引は個人に限定される。(内閣府令修正)
・変動の大きい通貨のロスカット取引については、想定以上のロスが拡大する場合あり、この場合は業者の責任は問われない。
・ロスカットルールに逆指値注文を受託している場合は、ロスカット取引と見なされる。
・ロスカット取引について、顧客証拠金以上の損失は発生した場合、経営への報告が義務付けられる。
【低スプレッド取引について】
・低スプレッド取引を宣伝しているFX業者での、取次実態は調査される。広告との実態乖離や、顧客が指定したレートと実際の約定レートの相違(スリッページ)の実態は調査される。

FX専業業者は、証券会社ではないが、同じ金融商品である店頭デリバティブとしてのFX取引を、金融商品取引業者として取り扱う。FX業者が、金融商品取引業者として生き残っていくためには、証券などの既存金融商品取引業者との営業現場での協働があってもいいのだろう。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

地域における債券市場構想
 今回の金融危機は、米サブプライム・ローンで顕在化し、CDS(クレジットデフォルトスワップ)で一層深刻化したが、いずれも証券化商品であった。この金融機関に溜まった証券化商品が、流通しなければ、金融は安定化しないと関係者は誰しも思っているだろう。官民ファンドの動きが注目されるが、一方、証券化市場回復の為、金融サミットでは年内までと期限を区切った取組みが続く。先月末には、証券監督者国際機構( IOSCO)が、「資産担保証券の公募及び上場のための開示原則( ABS 開示原則)」を公表した。これは、証券化市場回復の為に、開示の基本項目を増やし、共通化し、アレンジャーとなる金融機関にも一部保有を求める考え方だ。
 一方、中小企業の資金繰りの為、地域においてCLOやCBOの債券市場を整備していく目的で、東京都債券市場構想や広域CBOの取組みがある。
 いずれも東京都が主導しているが、東京都債券市場構想の方は、10年間で16,100社に7,100億円の資金を供給している。ここ3年では、大阪市や横浜市・神戸市なども参加しているが、基本的スキームは、CLOやCBO発行を前提に、信用保証協会の保証がついたローンや社債を、地元中小企業に発行させて、それらを集約した上で証券化する。投資家は、主に金融機関や企業であるが、一部を大和証券などが個人投資家にも販売している。
 毎年の発行額は、概ね600~800億円の水準となっていて1000億円を超えた年も2回ほどあったが、今年3月の発行額は、流石に109億円に減少している。
 CLOに関しては、デフォルト率(東京都分について東京都保証協会が代位弁済したもの)も公表されているが、既に償還されている5年分については平均して6%弱となっている。発行額が1,247億円の発行となった2006年3月発行分は、既に13%のデフォルト率に達している。(本年3月末の状況)
 また、広域CBOに関しては、これも東京都が主導して、東京都債券市場構想と同様の考え方で、2006年3月に、東京都を含む7自治体(大阪などの政令都市)が参加、期限3年強で発行総額881億円となった。2回目も、2007年3月に発行されたが、発行総額は164億円にとどまった。(3回目の本年の発行は中止)広域CBOに関しては、東京都が運営する専用のホームページまで容易されている。
この広域CBOの1回目元本割れ償還が、7月3日に報じられた。優先劣後の構造で、4本に分かれたうちの3本841億円分がデフォルト対象となり、発行当初のトリプルA格だったB号が85%の償還率になるとのことだ。
関係者への失礼を承知で率直に申し上げるなら、中小企業を対象にしたCLO・CBOのみならず小口ローンを集約したものは、その債券を構成する個々の案件のデフォルトが必ずある。今回の経済危機の様な状況になれば、元本を毀損することも当然発生する。それを承知で、投資家が納得する発行条件をアレンジするのがアレンジャーの能力であり、資本市場の機能である。
東京都債券市場構想の様な取組みは、資本市場の機能を広く利用してくためにも、間違いなく必要である。
また、証券化商品に個人投資家を参加させていくのも必要なことだ。しかし、その為には、格付けなどの信用情報や価格情報を、個人投資家が入手しやすくする工夫が必要だとも今回の件で感じた。
東京都の努力というより、アレンジャーを中心とした金融機関の努力である

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

証券仲介業について
 株式や投信そして債券などの金融商品の販売チャネルの拡大という目的の為、証券会社以外での販売窓口確保を可能にする証券仲介制度(現金融商品仲介業)が2004年4月に始まって5年が経った。
 この制度は、企業や会計士などの個人が、投信や債券などの勧誘を行い、金融商品を提供する提携先の証券会社に取り次ぐ制度で、仕組みの概略は以下の様になる。
・仲介業者で、金融商品の勧誘・説明を行う者は、証券外務員資格の取得と登録を行う必要がある。
・証券会社等と業務委託契約を結び、金融商品及びその情報の提供を受ける。
・業務の監督責任は、委託元の証券会社等が負う。
・証券会社等経由で、金融商品仲介業として管轄の財務局に届出て登録をする。
・顧客に勧誘した商品は、証券会社等に顧客口座を開設し、その口座内で受け渡す。
・当該顧客口座管理は、委託元の証券会社が行う。
・個人も法人も、証券仲介業者となることは可能。
・複数の証券会社等と業務委託契約を結び、商品供給を受けることが可能。
以上の様な仕組みで、金融機関以外の証券仲介業者は、5月末時点において530業者(独立したファイナンシャル・プランナーを含む)となっているが、2008年3月末の623業者から大きく減少している。
仲介業者の内容は、個人のファイナンシャル・プランナーや保険の代理店、小売流通業者などのようだが、上記の様な仲介業であれば、会計士や税理士などが、富裕層相手に、片手間に行うのは難しい。また業務委託する証券会社等は、委託先の仲介業者に対して、損失補てんや虚偽の説明を禁ずる金融商品取引法上の行為規制の網がかかるので、コンプライアンス体制も確立しておかなければならない。勿論、インターネット取引の仲介業というのもあるが、この場合は、インターネット証券取引と同等のものを仲介業者に提供しなければならない。
これだけの負荷が業務委託する証券会社にかかるのは、金融商品取引法上、仕方ないことなのだろうが、販売チャネルの拡大で、証券仲介業を使うのは、なかなか主流になり難い。証券仲介業者側も、委託元の証券会社等のシステム使用料などが、コスト負担となるようである。
また、この制度の目的は個人投資家目線に立った金融商品の販売チャネルの拡大だったので、供給される金融商品に関しても、個人投資家の為に最適な金融商品を、仲介業者側が選択できるのが理想であった。その為には、複数の証券会社等から金融商品の提供を受けるのがベターだろうが、実際は580業者中、複数の証券会社等と業務委託契約を締結しておるのは、57業者に留まる。
 一方、この制度が始まって8ヵ月後の2004年12月には銀行による証券仲介業が解禁されていて、地域金融機関中心に活用が拡がっている。
 こちらの方は、金融機関としてのコンプライアンス体制が既に確立している地域金融機関相手なので、証券会社等も本来の金融商品提供に注力しやすく、またファイアーウォール規制緩和を受けて銀証連携が進む中、地域金融機関側も自らの証券戦略にも沿っているようだ。当然だろうが、大手証券の営業戦略の中には、金融機関との証券仲介業務の推進とテーマがある。
 金融機関の証券仲介業務は、今後も進んでいくと思われるが、前述の一般の仲介業拡大の為には、米国の様に、独立したファイナンシャル・フランナーの増加か必要な条件となりそうだ。その為には、ファイナンシャル・フランナーの独立から支援したり、証券取引のインフラを供給するカストディアン・サービスが必要なのだろう。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

リーマン・ショック後の株式市場
金融危機後の景気回復シナリオがW型なのかJ型なのかは別にして、日本の株式市場も日経平均が再び1万円台を回復して多少の安堵感を持たれた方も業界関係者には多いと思う。最近気になる企業の大型ファイナンスも、大手企業や金融機関が、日本経済の回復を見込んで先行きの積極的な投資を行う為(先行きのリスクを負ってでも)、資本市場の機能を使ってリスクマネーを調達していると思えば、市場全体の先行きは明るいのかもしれない。また証券会社にとっても、普段は余り収益性の高くない株式売買だが、相次ぐエクイティ・ファイナンスで、数%の手数料が稼げるので、収益改善の契機となるかもしれない。
 ところで、株式市場そのものはグローバルにみて、どの様な状況になっているのか。最近では、中国市場が、リーマン・ショック前まで回復したことが伝えられ、その他の新興国市場も、不安定ながら上昇基調にある。その実態を、世界取引所連盟(the World Federation of Exchanges:WFE=52取引所)の集計数字から見てみたい。(集計数字は5月末時点)

○世界の株式時価総額:38兆4800億万ドル(リーマン・ショック前の昨年8月末は、50兆2200億万ドル、約76.6%まで回復している。)
○地域別の株式時価総額:南北アメリカ15兆2600億ドル(世界の39.7%←リーマン・ショック前42.5%)、太平洋・アジア12兆7100億ドル(同33%←同27.8%)、ヨーロッパ・アフリカ10兆5100億ドル(同27.3%←29.7%)
○主要な市場のリーマン・ショック前(昨年8月)からの回復度(5月末時点、時価総額の金額は100億ドル単位)
・ニューヨーク取引所=9兆5700億ドル←13兆5700億ドルで、70.6%の回復度
・ロンドン取引所=3兆600億ドル←2兆2000億ドルで、72.1%の回復度
・欧州ユーロネクスト=2兆2600億ドル←3兆2700億ドルで、69.2%の回復度
・ドイツ取引所=1兆1300億ドル←1兆6700億ドルで、68%の回復度
・上海取引所=2兆700億ドル←1兆8600億ドルで、111%の回復度
・ボンベイ取引所=1兆300億ドル←1兆800億ドルで、95%の回復度
・BM&FBovespa(ブラジル)取引所=9200億ドル←1兆2200億ドルで、75.5%の回復度
・東京証券取引所=3兆1000億ドル←3兆7500億ドルで、82.7%の回復度

やはり中国の上昇が目立つが、上海総合指数は6月以降も12%以上の上昇を続けている。日本も欧米に比べると、何だか健闘しているようにも見える。
 しかし、今年に入ってからの取引量比較(1月~5月)の前年同時期比較でみると、予想通り上海は15.7%の増加、深センも25.2%の増加している以外は、概ね4割前後の取引量の減少になっていて、本格的な回復過程というには、まだ遠く感じる。ちなみに、東証は39.1%の減少、ニューヨークは43.7%の減少であるが、ロンドン55.9%ユーロネクスト66.1%ドイツ54.3%と欧州の市場取引の減少が大きいのは、次の危機は欧州からという市場の懸念と重なって心配に思える。

 一方、最近何かと話題になるETFについて、日本でも随分増加した様な気なっていた。しかし、5月末の国際比較では、東証60銘柄・大証11銘柄に比べて、ニューヨークの1025銘柄は断トツだが、欧州の主要な取引所の概ね400前後の銘柄数に、遠く及ばない。銘柄数の多さは、一瞬投資判断を複雑にするようにも思うが、あまり意味がない企業グループ・ファンドは別にして、例えばアジアの電力会社に投資したいと考える個人投資家にとって、アジア電力会社ETFなどがあれば、いちいち証券会社に調べてもらうより投資しやすい。多様な投資ニーズを資本市場に取り込むためには、収益性に多少の疑問があっても、投信会社・証券会社は、ETF増加の為の不断の努力が、求められと筆者は思う。その事は、資本市場の仲介者としての責任である。

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期待される取引所:東証
最近、色々な問題の対応が、東証に求められていると思う。
○上場会社のコーポレート・ガバナンス向上
○株式市場の先行き見通し
○商品取引所もグループ下に置く、総合取引所構想
○最近、金融機関や上場企業で目立つインサイダー取引への教育
○取引システムの強化
以上は、先月24日、東証の斉藤社長の定例記者会見での記者からの質問項目である。
・コーポレート・ガバナンスについては、金融審議会のスタディグループと経済産業省の企業統治研究会で其々議論されていたが、先月中旬には議論を取りまとめた報告書が公表された。注目されていた上場会社の独立性のより強い社外取締役の法制度上の義務化は、実質見送られた。しかし、東証がコーポレート・ガバナンスモデルを示し、企業がモデルを選択した理由を開示したり、何らの上場ルールで社外取締役の導入を促するような提言になっており、ゲタは東証に預けられた格好である。
これを受けた東証は、上場制度整備懇談会を中心に、年内までに議論を取りまとめる意向だ。
 何度か繰り返して恐縮だが、上場企業のコーポレート・ガバナンス向上の背景には、2000年以降の旧商法改正で、M&Aやファイナンス・自己株取得の資本政策に関して取締役会に授権拡大されたことが多かった。その結果、M&Aに係る粉飾や、第三者割当での問題のあるファイナンスなどが目立ち株主・投資家が被害を受けた。
 問題のない一般の上場企業には、一律規則で義務化されるのには違和感があるのだろう。しかし、外部のチェックが入る仕組みの方が、海外及び機関投資家の投資資金を集めやすく、上場企業としても資本市場を使いやすくなるという企業への教育こそ、東証に求められていることかも知れない。
・市況見通しに関しては、つい記者が聞きたくなるかもしれないが、あまり意味が無い。東証の社長は、日本の資本市場インフラの機能の中核をなす取引所運営のトップであって、取引のプロでもないので、何らかの投資活動に影響を及ぼすとは考えない方がベターだろう。
・よく東証トップが聞かれる総合取引所構想については、先月中旬に金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れを可能とする改正金融商品取引法が成立した。また、グローバルな取引所間連携の中には、証券取引所グループが商品取引所を傘下に収めるケースも目につく。しかし、その前に、商品取引所側は、清算機関の強化及び取引システムの拡充とその為の資本強化という宿題がある。(つまるところ、お金がかかる。)
この資金は、取引参加者から集めるしかないが、システムや清算機関が強化されなければ、その取引参加者も呼び込めない。東証グループの支援が必要だといったら言い過ぎだろうか。
・インサイダー取引に関しては、本来は個人の問題なのだが、東証が出来ることは、上場会社や金融機関の役社員への教育だけだろう。平成19年11月東証の自主規制部門は、自主規制法人として発足しているが、東証COMLECでの上場会社及び取引参加者へのコンプライアンス研修を強化する。
・資本市場インフラとして、取引システムの強化は非常に重要なことである。新オプション取引システム(Tdex+)がこの秋にも導入され、また2010年1月にはarrowhead(次世代売買システムが稼働する。
 以上の期待に応えていく東証グループは、資本金115億円従業員数約800名の株式会社であり、118社の取引参加者でもある証券会社を株主に持つ。また、取引所と自主規制組織を持つ認可業種でもある。
 最近は、上海などアジアの取引所と比較する記事も目立つが、資本市場のインフラとして期待されることは多い。多少加えると、新興市場問題もアローズの一人勝ちではなく、インフラ機能として見直していただきたい。

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