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2009/08
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新政権への業界の期待
 政権交代選挙も行方が定まり、安定勢力を確保した新政権に対して、標題の様なことが実際にあるかどうか別にして、金融・資本市場に影響のありそうな政策につき、見てみたい。
【公表されている最終の民主党マニフェスト政策各論より】
 国会を企業に例えるなら、福利厚生面に重点をおいたものが多く、金融・資本市場に直接関係ありそうなものは少ないが、敢えて上げると以下の3つの政策がある。(全体は55の政策各論)
・租税特別措置法を見直し、真に必要なものは「特別措置」から「恒久措置」へ切り替える。=これにより、みなし配当課税や非居住者利息の源泉徴収問題が整理される可能性がある。
・歳入庁の創設構想(国税庁+社会保険庁)があり、税と保険料を一体的に徴収するため、共通の番号制度を導入する。=金融所得一体化の議論も加われば、総合的な損益通算制度が進む可能性がある。
・地球温暖化対策を強力に推進する為、キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設する。=現在、東証を中心に検討されている排出量取引市場創設に向けた動きが、具体化・加速化する可能性がある。
 民主等が、7月中旬に纏めた政策集INDEX2009には、もう少し具体的な業界への施策が書かれている。
【政策集INDEX2009の財務・金融関係より】
・健全な金融市場の育成として、証券取引等監視委員会を改編し、独立性が高く、強力な権限を有し、幅広い金融商品取引を監視する「金融商品取引監視委員会」(日本版FSA)を創設する。また、日本の金融市場の国際的な地位向上を図り、経済を活性化するためには、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させることが重要としている。
・公開会社に適用される特別法として、情報開示や会計監査などを強化し、健全なガバナンス(企業統治)を担保する公開会社法の制定を検討。
・包括的な金融サービス・市場法を制定し、銀行・証券・保険・商品(現物・先物)会社等によって販売されるすべての金融商品に対する包括的・横断的な投資家保護法制の整備を図る。
・地域への貢献度や中小企業に対する融資条件などの情報公開を通じて、金融機関同士の健全な競争と経営を促すために、「地域金融円滑化法」を制定。
※其々が実行されると、その影響が大きい様にも思われるが、名称や組織は別にして、其々の現場において、政策の目指す方向で実態が進行していることも多いと思われる。
【政策集INDEX2009の税制・その他より】
・「総合課税」が望ましいものの、金融資産の流動性等にかんがみ、当分の間は金融所得については分離課税とした上で、損益通算の範囲を拡大する。証券税制の軽減税率については、経済金融情勢等にかんがみ当面維持。
・ベンチャー企業の株式購入時に投資額の一定割合を税額控除できる制度の導入やエンジェルネットワークの設立・運営を支援。
 以上の様な政策概要だが、金融・資本市場関係に関していうと概ね大きな方向性は変わらないようだ。
また、新政権への期待もあり市場は堅調なようだし、国債市場も取りあえずの需給から強い。この様な状況に、業界自らが安堵することなく、新政権の政策ベクトルを読んで、日本の金融・資本市場が抱える問題解決の政策提言を行っていくべきと考える。
 例えば、子育て支援に手厚い政権なら、英国のチャイルド・トラスト・ファンドの様に、子供が18歳になるまで、年間投資額100万円までのキャピタルゲインを含む利益に対する課税を免除する累積投資制度導入すれば、子供は大学の学資を自分で賄う仕組みも可能になる。また、年金制度を一本化するのであれば、年金の自助努力を誘導する政策として、主婦や公務員に対して日本版401K(マッチング拠出は、税制改正で認められたが、法案が国会審議出来ず廃案になったが)を解禁する。その様な本気の提言を、業界としては行っていく時期と考える。
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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

FX取引について
 証券業(第1種金融商品取引業者)において、FX取引(外為証拠金取引)は高成長分野のようだ。
一般の認識においても、この2~3年で随分と変わってきて、いい意味で一般化しているようにも思うが、本来の外為市場における存在感も、機関投資家・輸出入業者・ヘッジファンドに並みになってきている。
 先ず、FX取引の現状は以下の様に拡大している。
【店頭取引分】
・平成21年7月の取引金額は、179兆7,418億円(前月比12.0%増)
[同月末の売建玉は7,942億円、買建玉は1兆2,872億円、円キャリー額(円売建玉から円買建玉を差し引いたネットの円の売建額)」は、5,261億円](金融先物取引業協会調べ)
【取引所取引分(東京金融取引所)】
・平成21年7月末の証拠金残高は、1,033億円、口座数は約16万口座
【FX取引全体の推計】
 調査会社によると、FX取引全体の数字は、本年度推計で証拠金額は7000億円、口座数260万口座という数字もある。また、日銀の調査レポート(本邦外為証拠金取引の最近の動向:平成21年8月)によると、一日の取引量は、平均で3・6兆円に達し、円と他通貨のスポット市場に占める割合の14.5%まで達している。(平成20年1~3月ベース)
 次に、FX取引の実態についても、日銀レポートによる調査報告があるので、その概略を紹介したい。
【FX取引の特徴】
勿論FX取引(外為証拠金取引)の取引は、主婦のみならず個人が主体なので、以下の様な取引の特徴がある。
・基本的には、円売り・外貨買いが主体であり、又低金利通貨の円の特性を活用する金利差収益(スワップ・ポイント)狙いの“キャリー取引”も多い。
・短期的な相場変動と反対方向のポジションをとる“逆張り取引”主体であること。ヘッジファンドなどが順張り傾向あるのとは異なる取引傾向。
・レバレッジ(証拠金に対する建て玉の比率)は、平均するとそれほど高くはなく約6倍程度とみられる。
・米ドルから、高金利通貨へ運用がシフトしているが、NZドルや南ア・ランドは、元々のスポット取引市場も小さいので、FX取引の影響度が増しているとみられる。(グローバル取引の4~5%にも及んでいるようだ。)
 この様に、FX取引は金融商品としての拡大だけではなく、経済取引としてのプレゼンスも上がってきているが、一般の認知度も、調査会社によると、30~50代のネット利用者の8割超が知っていて、FX口座を持たない人の約4割超が、FX取引に意欲や興味がある。高いポテンシャルを持つ金融ビジネスに成長している。
【大証FXスタート】
 この様な状況下で、大阪証券取引所が先月21日、新たに取引所外国為替証拠金取引「大証FX」をスタートさせているが、以下の特徴を持つ。
・取引方法は、オークション方式にマーケットメーカーの取引を参加させる複合的な方式をとって、マーケットメーカーの気配情報もリアルタイムで公表している。
・投資家が差し入れた証拠金は、大証が管理し、受入証拠金残高を投資家が直接Web上で確認することが出来る。
・株式や債券等で、証拠金の代用とすることが可能。
テリバティブ取引に注力する大証ならでわの様々な工夫が見える。
 ここで、業界として考えるべきことは、何故FX取引がこれだけ拡大してるのかではないか。
・FXは、個人にとって現在は機関投資家とほぼ同程度の市場情報が入手しやすい。
・参入障壁は低い為、商品先物業からのみならず新規参入が相次ぎ、結果サービス競争が激化して、投資家側が、幅広いサービスを受けられるようになった。
・レバレッジ競争の結果、個人の投機家の存在を許容し、結果として幅広い投資ニーズを吸収し、取引の多様性を確保できた。
 つまり、FX取引の透明性・多様性の確保と、市場・行政の寛容性があったと思う。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

取引所外取引とPTS
昨日に続き、8月25日の東証社長記者会見内容から取り上げるが、マザーズ改革以外にもう一つの制度改正があった。それは、取引所の立会外取引である“ToSTNeT-1”の取引時間を、現在の午後4時半から一時間延長して5時半までにするというものだ。“ToSTNeT-1”は、主に大口取引の媒介取引などに使われることが多いが、延長するには、この取引システムを使う証券会社側(投資家間の売買の媒介行為を含めて)のニーズが、この時間帯に多いということだろう。実際、東証社長のコメントも、米国など取引価格の公正性の問題があり、欧米のPTS(多分欧米証券会社内の顧客間取引を付け合わせるクロッシング・システムのことを指していると思われる)などがら、東証システムを使わせて欲しいと要望があり、その結果だと述べている。実施時期は11月を目途としている。
 一方、個人の取引所外取引は、私設取引システム(PTS:Proprietary Trading System)でしか対応できないが、最近は、大手証券の参入もあって伸びているようだ。売買金額について見てみると、今年6月、7月のPTSで取扱分は、それぞれ3000億円に達した。勿論、取引所取引(7月分:34兆8513億円)には、遠く及ばないが、取引所外取引(7月分:1兆8269億円)の約17%を占めるまで成長している。
 このPTSは、金融ビックバンによって取引所集中主義が撤廃され、証券における認可業務として認められたことから始まった。5年前の平成16年7月のPTS月間取引金額は、70億円、取引所外取引に占める割合も、0.5%に過ぎなかったが、最近2年でのPTS参入も6社と倍増したこともあって,
取引を伸ばしている。
 PTS各社の傾向としては、ほとんど夜間取引からスタートしており、一部は昼間取引に拡大し、他社接続も認めて、流動性を高めていこうと努力している。
PTSは、許認可業務でもあるので、金融庁よりその認可の条件として、最良気配や取引価格等を他のPTSと比較できるような形で、リアルタイムで外部から自由にアクセスすることが可能な方法により公表する“売買報告制度”がPTS各社に義務付けられている。その公表手段として、日本証券業協会により「私設取引システム(PTS)価格情報等公表システム」(PTSシステム:PTS Information Network)がWeb構築されていて、このサイトにアクセスすれば、誰しもが各PTSの公表する各銘柄の気配情報・約定情報を閲覧し比較することが可能となっている。
 取引時間は、6社あるPTSのうち、2社が23時59分まで、他の2社が翌日の午前2時までとなっていて、夜間取引に4社が対応している。取扱対象は、ETFやREITも含めてほぼ全銘柄が3社、約1800~2000銘柄が3社となっている。
また売買価格決定方式は、以下の5つがあるが、各PTSは顧客の使用目的に応じて複数の方式を用いている。
・市場価格売買方式:終値やVWAP(売買高加重平均価格)を用いて売買する方法
・顧客間交渉方式:顧客同士が価格や数量等の条件について交渉していき、双方が合意に達した条件のもとで売買する方式
・顧客注文対当方式:顧客の提示した指値が、取引の相手方となる他の顧客の提示した指値と一致する場合に、その指値を用いて売買する方式
・売買気配提示方式:証券会社(マーケットメイカー)が一つの銘柄に対して複数の売り気配・買い気配を提示し、これらに基づく価格を用いて売買する方式
・オークション方式:平成17年4月より新たに認められた売買方式。取引所と同様のオークション方式により売買を行う事が可能で、板寄や成行を行う事も可能である。ただし、本方式では、他の方式にはない数量規制がある。
 手数料については通常の半額以下の均一手数料で取扱う証券会社もあり、個人利用を促する為の取組みも行われている。
まだまだ欧米(米国ECN、欧州MTF)の様に取引所を脅かす存在となるには遠いが、多様な取引システムで投資家が便益を受けるのが大事なことと思う。東証の持続的改革を促進していく為にも、PTS各社は頑張って欲しい。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

マザーズ改革に、新興市場を想う
 新聞でも報じられたが、昨日の東証社長の記者会見で、新興市場マザーズ改革案が明らかになった。かつて年間で200銘柄近いIPOがあった新興市場であるが、本年は今まで公開された銘柄が10銘柄、9月公開予定銘柄を含めても14銘柄に過ぎない。勿論、金融危機による市場・経済環境悪化の影響もあるが、3年近く前から、日本の新興市場という資本市場モデルそのものが問い直されている。
 新興企業側の問題としては、公開後の業績の急激な悪化・業態の変更・虚偽の財務報告(新興企業に限らないが)などの企業内容の急速な変化、MSCB・大量の第三者割当・大幅な株式分割と併合など少数株主の権利を害するような資本政策などによって、株主や投資家の信頼を失する企業もあった。
 一方、市場誘導する証券や取引所側にも問題があった。例えば、前節の様な新興企業側の行動を問題視するあまり、入口基準である上場審査体制などを締めた。この事で、証券会社や取引所の審査部門において混乱を生じるようなこともあり、例えば反社会的な勢力との関係を確認するのに、会社関係者は当然であるが、取引先をどの範囲まで確認するのか不明な状況もあったようだ。
 投資家側の行動についても、ここ近年のIPO銘柄は公開してから2~3ヶ月の個人投資家中心のラーリーが本番で、その後半期年一年と、多くのIPO銘柄の取引量は激減した。機関投資家の取引が望まれていたが、公開後1年以内に取引参加する銘柄は限られていたようだ。
 新興市場問題に関して、分かり切ったと思われるような事を長々書いて申し訳なかったが、この様な新興市場問題を受けて、東証がマザーズ改革に乗り出した。
 改革の内容は、以下の3点である。
【マザーズ上場審査に係るもの】
・マザーズは、成長企業を取り込む為に、利益や売上げなどの形式基準が緩いが、その代りに、新興企業の成長性を担保する為、主幹事証券の“推進書”において“高い成長の可能性に関する事項”を記載させる(主幹事に成長性を判断させるということ)。この記載に代わり、 “最近の1年間、利益1億円以上・前期比で3割以上増加・売上げも前期比増加”という形式基準を、新たに設けた。
・上場審査項目に、“事業計画の合理性”を新たに加え、将来において経営成績が良好となる合理的な見込みがあることを求める。
・現在の上場審査項目である“企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性”の審査については、会社規模や成熟度に応じて行う。(大企業並みを求めない)
【株価に関する上場廃止基準の新設】
・上場後3年間、公開価格の1割未満となった場合、9ヶ月以内(事業改善計画書の提出がない場合は3ヶ月)に回復しないときは上場廃止。(但し、施行日移行の上場会社から)
【投資家説明会の開催義務】
・年2回以上の投資家説明会の開催を義務化する。ただし、質疑応答を可能とするインターネットを通じた開催方法も認める。
【実施予定は、平成21年11月】

これらの改革案は、全般的には支持したい。
上場審査基準に関しては、取引所と主幹事証券の問題の様な気もするが、それでもルール運用を明確化することは、評価できる。ただし、入口基準は、出来るだけ広げて、緩和する方法性を示して欲しい。資本市場の入口は、広い方が良い。その代り、維持基準・出口基準は厳格であっても良いと考える。今回、株価を上場廃止基準に取り入れたことは、画期的で、投資家目線に立つものとして評価したい。
 加えて、業界としては、上場廃止銘柄の受け皿作りにもっと尽力すべきとも考える。フェニックス銘柄制度の制度整備を、もっと本気で取り組むべきだろうが、現在1銘柄だけとは、業界としての本気度が問われる。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

中小企業のM&A
証券や地域金融機関の営業現場では、顧客である企業経営者へのアプローチとして“事業承継”を法人営業の主要テーマにあげるが、この事業承継の最終手段がM&Aであり、親族や従業員に事業を引き継げない場合、会社売却というより事業承継のM&Aといった方が、経営者及び関係者の抵抗感も少ないようだ。
 その中小企業のM&Aは、昨年は流石に減少したようだが、未公開企業が当事者となるM&A案件はそれでも1700件近くある。(未公開企業間のM&Aは約700件)
以下、中小企業のM&Aについて、ポイントとなると思われることの概要を挙げてみる。
【仲介者及び仲介手数料】
 最近は独立系のM&Aアドバイザーも増加してきており、地域金融機関や証券なども部店でのM&A業務を強化しているので、仲介機能は強化・拡大されている。一方コストは着手金(言い値500万円だが、実態は数十万から数百万)+成功報酬(リーマン方式を殆どの仲介者は提示するが、売却先の企業価値に数%の料率を掛ける)であるが、赤字や収益規模が小さい中小企業にとっては、仲介コストの高さ障害になるケースもあるようだ。
【中小企業のM&Aの特徴】
 中小企業白書(2006年版)によると、M&Aの条件として最も重視することは、“役員・従業員の雇用確保・処遇”と77.7%の経営者があげているが、売却価格より雇用関係を第一に考えるのが特徴となっている。以下、“会社の更なる発展”(58.1%)が二番目、“企業の譲渡(M&A)価格”(32.8%)は第3位でとなっているが、障害と考えられるものとしても、“役員・従業員の雇用・処遇”(57.5%)が第1位となっている。
【企業価値算定】
 いくら雇用を重視するといっても、企業価値算定はM&Aプロセスの中で重要なポイントになる。未公開企業なので、類似する上場会社の株価と比較するようなマーケット・アプローチ(市場価値法・類似会社比準法)については、あまり適切でないようにも思う。買い手側は、当然将来期待収益をベースに算定するインカム・アプローチ(DCF法・収益還元法)をとろうとするだろう。しかし、それらの前提となる事業計画に関して、中小企業の場合、その精度等が問題になる場合もあるので、財務諸表をベースに算定するコスト・アプローチ(純資産価額法)が適切だという意見もある。
実際は、「純資産価額方式」が59.5%、「収益還元価額方式」28.6%、「類似会社比準価額方式」2.4%、「その他」9.5%となっている。((財)中小企業総合研究機構調べ)
実際は、売却希望価格に近付ける為、ブランド力、技術力、営業基盤等などをのれん代として上乗せするケースもある。
【引き継ぎ、そして満足】
 多くの場合、売却先企業の経営者は、一定期間会社にとどまり、引き継ぎを行っている。これによって、企業統合後、62%の会社が順調に業績を伸ばしているとし、21%が企業理念も引き継がれていると答えている。よって、M&Aの満足度は、「非常に満足」42%、「やや満足」29%と7割以上が満足しており、不満は8%に止まっている。((財)中小企業総合研究機構調べ)
 以上の通りの実態であれば、中小企業のM&Aは、大企業のそれに比べて、格段に成功率の高い戦略と言える。

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社債市場への改革意識
 少し前の経済番組で、個人投資へのインタビューを聞いて、少し考えさせられた。
“最近は、新興国の債券を買っています。”(為替リスクなどありますが、・・)
“いや、為替リスクがあったとしても、人口も増加して、結局長い目でみれば経済成長するんですから、日本の国債より安全ですよ。”こんなやり取りだったと思う。
 確かに最近は、高金利の外債や外債ファンドが個人投資家に売れているようだ。一方、日本の社債市場においても、個人向けの発行額の増加が話題になった。銀行劣後債や、一部低格付け高金利銘柄が個人投資家に売れたようだが、金融危機からの社債市場回復の一助になったようだ。
 そもそも、日本の社債市場は、どうなっていて、またどうなるべきなのだろうか。金融危機から発行市場が回復したのに安堵しているのではなく、元々流通市場機能の未整備が言われていたのだから、この機会に抜本的な改革をし、欧米市場の機能に追いつく活性化を目指したらどうか。そんな動きが、業界・行政・日銀・民間識者などを集め、日本証券業協会において“社債市場の活性化に関する懇談会”として7月から始まっている。金融危機回復期のこの時期に、日本の社債市場の遅れを取り戻そうとする良い動きだ。
日本の社債市場の現状
 先週末に、7月に実施された会議の議事要旨が公表されているが、市場改革のポイントになりそうな意見を下記に紹介する。
【全般について】
・日本の社債市場の現状は、発行体・投資家とも、非常に参加者が限られている。一方、個人や年金など巨額の資金を有するが、社債の保有が少ない投資家が存在する。
・制度や市場関係者などグローバルなプラット・ホーム化を進める必要があり、アジア市場との連携も。
【発行市場】
・機関投資家の社債への潜在的な需要はあるものの、発行ロットが小さく、また流通市場でも一定数量を買えない。
・日本の金融機関の貸付けは意外に機動的であるが、社債発行の効率性を改善していく必要がある。
・BBB債は期待収益に見合うため注目しているが、なかなか発行されない。また低格付け債は、分散投資が必要なので、発行銘柄数を増やすことが投資の前提だが、柔軟なプライシングも求められる。
・四半期開示の義務化から、起債可能な時期が狭まり発行が集中する傾向がある。またこれによる引受証券会社の審査事務も発行会社の負担になっているので改善を。
・個人投資家の存在感が増している。
・BB格以下の社債発行は出来ないが、それには格付機関の努力による格付けへの信頼性向上も重要
・格付け費用が、発行者負担のままで良いのか
・証券会社は市場仲介者として、発行・流通市場の分断化を解消すべく、投資家への情報提供等に努力する必要がある。
【流通市場】
・社債レポ市場を整備すれば、業者間のポジション調整などにより仲介者が需要をつなぐことができインセンティブも働く。
・フェイルを全く容認しないマーケットでは流動性の向上は望めない。
・社債市場の基礎データ御世に市場関係者・投資家向け情報を充実すべき
・国債市場の様に、現物市場とデリバティブ(CDS)市場の橋渡しを強化すれば、流通市場も活性化する。
・決済システムはペーパレス化してはいるが、海外振替機関の様に付随サービスを強化すべき。

※筆者は、先ず投資家の求める社債関連情報を、集約して提供することから始めるべきと考える。また、同会議の議論の進展と、業界での社債市場改革実行に強く期待する。

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金融教育の3つの流れについて
“貯蓄から投資へ”の流れを促進する為には、学校教育の段階から金融・資本市場に関する教育が必要である、いや引退された方など高齢者にも理解してもらうべきだ、大学のゼミでの専門的研究を助けるべきだなど、どれも必要な金融教育について、前回の金融危機(日本の)以降もう10年近く取り組まれているが、業界としてもコストの掛かる話しなので、最近は証券会社などのCSRなどの一環で取り組まれることも多い。厳しい業界環境を反映して、金融教育に関する熱気は多少下火になっている。
 この金融教育に関して、3つの視点=流れで考えてみたい。
【上流の金融教育】
この部分は、最近なかなか厳しい状況かもしれない。ここでいう上流というのは、金融の専門家達と見做されている層のことである。例えば、買収防衛策に関する法律解釈、企業統合に係る米国法基準対応(米国株主の為の)、複雑な金融商品に関する会計処理方法、複雑になった開示制度への対応とその対策などについて、専門家である投資銀行・専門分野の弁護士・専門処理する会計士は、どの位、企業側の複雑なニーズに対応し、投資家側の透明性の確保要請に応えられているだろうか。
 そんな背景もあって、金融業のなかでも、さらに金融の専門家“金融士”制度をつくろうという動きが金融専門人材に関する研究会(金融研究研修センター)で検討されている。内容は、金融法務・財務会計・ファイナンス理論(リスク管理を含む)に関して専門性を問う試験を行い“金融士”(仮称)の資格を与える。金融の業務に携わる弁護士や会計士も、この資格を求められるようだか、金融の専門性を業とする金融機関の経営層などのマネージメント部門も、何らかの資格条件が求められていく可能性がある。
 業界としては、グローバルに競争する上で、欧米の金融機関と競合できる金融の専門性を求められていくので、良いことなのだろう。逆にいうと、現在の日本の金融専門家の専門性について、企業側も投資家側も不満があるということなのだろうから、業界としては良く議論してもらって、結果を謙虚に受け止めるべきだろう。
【中流の金融教育】
この部分は、段々厳しくなっている。ここでいう中流とは、金融サービスを使う企業のことである。例えば、企業が金融・資本市場の機能を使って、金融機関からそのサービスを受けようとした場合、その前提となるディスクロージャー制度負担は年々重くなっている。加えて、金融サービスを使おうとした場合、その影響の測定も、会計基準や内部統制上求められそうなのが、最近の考え方になりつつある。
 つまり、企業の経営者は、投資銀行や弁護士・会計士の専門家任せでは、企業に大きな影響を及ぼす金融サービスは使えず、コーポレート・ガバナンス上の責任や、国際会計基準上で求められる企業としての判断基準に対応する為に、金融サービスに対する専門知識が、企業の経営者にも求められそうだ。
 前述の、金融のプロ“金融士”資格を、CFOなど企業の財務部門に拡大して、その資格基準を義務付けては如何かとの議論もあるようだ。しかし、業界としてはプロの専門性が求められているので、専門的な情報提供を、企業側に容易に理解出来るよう提供することも、プロの仕事と考えるなら、余り金融サービスを使う側の負担を、これ以上負荷すべきでないと私見では思う。
【下流の金融教育】
上中下の下の意味ではなく、ここでは拡大する裾野の意味である。金融知識の裾野拡大の為には、学校教育は当然必要だろうし、業界としても持続的な教育支援を行っていくことは誰しも否定しない。しかし、現在協会やNPOで行われている学校への金融教育が、本当に実になるよう、金融教育の成果が生きるようなビジョンも必要だと思う。“必要”こそ教育の基本なのだから、学校教育で行う金融知識が広く必要となるシステム構築にも尽力する必要がある。平成21年度税制改革で、創設が決定した日本版ISA(少額非課税投資制度)でも良いし、証券業協会が提案するチャイルド・ファンド構想でも良い。日本版401Kの参加者拡大や制度充実でも良い。業界として、これらの少額投資スキームを、個人投資家拡大のビジョンとして注力することこそ、金融教育が活きる金融ビジネスの裾野拡大になると信じたい。

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地方債という金融商品
 政権選択選挙も始まって、10日後には結果が出るのだろうが、選挙戦前の人気知事達の活躍もあって、地方分権(若しくは主権)の動きは強まりそうだ。そうなると財源が注目されるが、税収の国からの移転だけでは当然賄えなく、国債から地方債へ借金の方もシフトしていく動きが多分強まるのだろう。
結果、国債から地方債への金融商品としての重心も移っていく可能性もある。
 そこで、金融商品として地方債を考えてみたいが、実はこのことは少し難しいのが現状と思われる。理由は、地方債の多面性にある。例えば、地方銀行が証書(債券発行でなく)で引き受ける部分も、銀行等引受の証書方式といって地方債にカウントしてしまう。また、一時のブーム様な取り上げられ方はしなくなったが、住民向け公募地方債があって、一般の市場公募債を発行している地方公共団体も、病院や記念館・環境施設建設の為に別途地域住民から募集する。更に、10以上の地方公共団体が共同で地方債を発行したりもする。当然であるが、償還財源は各地方公共団体により、別に国が保証している訳ではない。(暗黙の保証といった考え方は、一部にはあるようだ。)この様な、多面性をもった商品を、標準化や透明性も求める金融商品と同一視してよいのかという議論もある。しかし、道州制などで地方分権が強まれば、やはり地方債を重要な財源=重要な金融商品として考えざる得なく、その投資家として海外投資家や個人に馴染む金融商品化する事が求められる。約62兆円(民間消化分)ある地方債残高であるが、金融機関での消化に頼るのではなく、個人や海外投資家に如何に保有してもらうかというのが、金融商品としての地方債の大きなテーマになっていく。
 地方債における海外投資家への取組みに関して、地方債協会の研究会により、この3月に公表された報告書があるので、内容をいくつかご紹介する。
・2008年3月末時点で、海外投資家保有の地方債は29銘柄で総計1,072億円全体の0.17%
うち20年・30年の超長期債が投資額の94%
・海外投資家の業態=欧州のカバード・ボンド発行銀行、アセットマネージメント、銀行・生損保・年金、ヘッジファンド、中央銀行、政府系ファンド
・クロス・カレンシー・アセット(自国通貨・短期金利ベースに引き直す)後、LIBORベースでの水準で魅力があるなら投資。カバード・ボンド発行銀行の30年債投資は、ほとんどこの投資。
・アセットマネージメント、中央銀行、政府系ファンドは、円ポートフォリオの中で投資を検討。一部日本国債の代替投資を検討
・2007年度には、東京都・福岡県・地方債協会による地方債の海外IRが行われ、投資家への個別訪問も実行している。海外投資家から求められ情報として、以下の3分野が上げられている。
○地方自治法・財政法など信用力・安定性に関する情報=特に暗黙の政府保証が地方債制度を支えていることを説明する論理構造を説明した資料
○発行スケジュールやアスク・ビットなど、金融商品として発行・流通に関する基本的情報
○欧州の金融機関が、内部格付けシステムに必要とする財務指標等に関する情報=自主財源比率・経常収支率・将来負担比率など
 
日本株のみならず、日本の債券の受け皿として海外投資家と個人投資家は非常に重要になってくる。海外投資家に関しては、今は規模が小さく、投資スキームが偏っていても、いずれ金融機関の会計制度改善に合わせたような、投資促進の改革を行っていけば、その保有シェアは飛躍的に拡大するかもしれない。一方、個人投資家向けに金融商品としての機能を整えていくことも、業界関係者として期待したい。そうい合えば、地方債の住民向け発行が始まった8年程前に、ある取引所が個人向け地方債市場を創設されようと尽力されたことがあった。地方債も電子化され、PTSも多様になってきた今こそ、地方債にも金融市場インフラが必要と、改めて思う。

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企業が考えるコーポレート・ガバナンス
会社は誰のものかという時に、会社は株主のものでもあるが、そこで働く人や、取引先などステークホルダーのものでもある。ここ数年、コーポレート・ガバナンス向上に向けた取組みは、経済産業省の研究会・金融庁の金融審議会・そして東証などで議論されてきたが、どちらかというと株主若しくは将来株主である投資家寄りであったかもしれない。企業側の立場では、この4月に、コーポレート・ガバナンスについての主要論点の中間整理として提言を行っているので、その概要を紹介しておく。
―監査役会設置会社(東証上場企業の約97%)におけるガバナンス強化について
【論点1:社外取締役の設置義務について】
東証上場会社においても、半数以上は社外取締役を設置していない。しかし、取締役会を補完する目的で社外有識者によるアドバイザリー・ボードを設置している企業もある。米国の様に取引所規則で社外取締役設置を義務付けても、不祥事が起きる場合も目につくので、形式論での議論は無意味。各企業の自主的選択が認められるべき また企業は投資家との会話を増やす努力をIR活動などで強化していて、取締役が適正な監督を行う見識や能力があるか、株主は投票行動で判断できる。投資家から社外取締役を求める声があるなら、各企業がIR活動を通じて丁寧に説明していかなければならないこと。
【論点2:社外性要件の独立性要件への見直しについて】
 機関投資家や海外から、親会社や取引先等の社外取締役に対する批判がある。経営陣からの独立性に関しては議論されなければならないが、逆にステークホルダーの一員として外部の立場で企業価値の向上に役立っている面もある。その社外性については、取引所開示などで充実してきているので、多様性を認め、最終的には、選任する株主が判断する現行の仕組みが望ましい。
【論点3:監査役の役割と権限の強化について】(社外取締役設置や社外性の独立性強化などが難しければ、監査役の権限を強化してはとの考えがかることについて)
 現在の会社法上、既に、監査役には取締役とともに業務執行に対する監査権限が与えられている。この権限を十分機能させる為、各企業は監査役業務をサポートする事務局体制の充実や内部統制部門との連携整備など各企業が努力していくべき。
【論点4:会計監査人を選任したり、報酬を決定する権限を、取締役から監査役に移すべきとの議論について】
 会計監査人選任・報酬決定に関しては、既に監査役には影響を行使する権限がある。監査役に、会計監査人の選任議案や報酬を決定するという業務執行権限を与えることになれば、監査役は経営陣からの独立の存在としての監督機能を果たすという制度趣旨に反し、業務執行と意思決定の二元化をもたらしかねない。(筆者注:この部分は分かり難いので、主要論点の中間整理(概要)の記載そのまま)
【論点5:総会における議決権行使結果の公表】
 最近は多少増加したとはいえ、それでも総会議案の投票結果公表は30社弱程度。株主とのコミュニケーションを一層充実させる観点から評価できるが、実務的に株主総会当日出席の賛否の詳細集計を省略している場合がある。また投票結果を広く公表することで、株主総会の外からの影響力が増大する心配もあり、個々の企業の判断に委ねるべき。
【論点6:大規模第三者割当について】
 有利発行でない限り、授権株式の範囲で取締役会に授権された権限ではあるが、株主が予想しない支配権の移動や、権利の希薄化は問題。発行会社としてのアカウンタビリティを充実させ、既存株主の権利が不当に毀損されないよう、取引所での割当先に対する実質審査や開示は充実されるべき。

 上場企業の開示負担は、四半期開示・内部統制報告書など相当に重くなっているし、IRコストも増加している(日本IR協議会調べでは、2008年のIRコストは1社当たり2,210万円と大幅に増加している)。また上記のようなことをコーポレート・ガバナンス強化目的で、全て上場規則化してしまうのも、途中でルールを変更する競技のようで、競技参加者としての企業は負担に感じるのだろうか。
 しかし、企業としてコストも余り掛からない経営判断によることなら、投資家・株主との会話促進や総会運営の透明性確保努力など、合理的な物差しで対応していただきたい。

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ベンチャー・ファンドについて
 IPOが資本市場への入口とすると、ベンチャー投資はその種蒔きと思っていたが、どうもこの考え方自体が良くないようだ。つまり、日本のベンチャー・ファンドは、余りにもIPOに頼り過ぎていたのではないかとの反省は、新興市場でライブドア・ショックがあった2007年から強まっていて、実際ファンド側の出口戦略としては、M&Aにも注力しているようだ。
 IPOに関しては、昨年は42社、今年は今まで公表ベースで14社なので総数は更に減少する可能性が強い。ファンド投資の出口としての新興市場には頼れそうもないので、一部には新設されるプロ向け市場に期待する動きもある。M&Aに関しては、一部に大企業の同様な事業部門への持込みもあるようだが、M&Aアドバイザーにとっては案件規模が小さくて本格的に稼働してるとは言い難い。つまり、既存ベンチャー・ファンド自体は、出口戦略の見直しを迫られているが、ファンド間のセカンダリー売買を含めて模索中と見られる。
 そんなベンチャー・ファンドの出口戦略再構築もあって、日本のベンチャー投資は減少している。2006年度にはベンチャー・キャピタルの年間投資額が2876億円あったものが、2007年度は1933億円、2008年度は約1000億円まで減少したようだ。
 少子化も困るが、企業社会において新興企業が増えないのも経済基盤の問題としては大きい。新興企業を育てるベンチャー投資の少なさは、いつも問題になっているが、諸外国との状況を比較すると、この国のベンチャー・ファンドの脆弱さが顕わになる。
・日本のベンチャー・ファンドにおける海外からの投資額は、全体の3%。欧米の投資は日本を素通りして中国やインドへ向かっている。
・日本のベンチャー・ファンド残額はここ数年約1兆円前後。これに対して、米国は約26兆円、欧州は約40兆円と規模が違う。
など、ベンチャー・ファンドの存在感が全く異なる。国策としても、企業育成が必要なことは誰しも分かっていると思うが、中小企業の資金繰り対策だけでなく、新しい企業を生むのにリスクマネーが集まり易い政策を、政権政党に期待したい思いになる。
 一方、ベンチャー投資に関する新しい動きもあるようだ。
・バイオベンチャーが資金・販売での大手製薬会社とのアライアンス戦略をとったり、コンテンツ系ベンチャーが独自に中国やインドの企業と提携を始めている。
・NTTや旭化成など事業会社が、コーポレート・ベンチャー・キャピタルを設立するケースが増加している。
・環境技術など日本の産業技術に期待する海外ベンチャー・ファンドなどが、日本での活動を始めている。
・米系ベンチャー・ファンドが、日本のベンチャー・キャピタルや大学などとの連携を強化し始めた。
 以上の様なベンチャー企業やベンチャー・ファンドの動きに応えるために、日本の資本市場関係者は、以下の取組みを早急に行うべきと考える。
○新興市場の再整備(証券会社の引受及び引受審査体制の再構築も含めて)
○プロ向け市場における、新興企業対応
○グリーンシート市場の再整備
○小型M&Aにも対応可能な金融機関のM&A部隊の整備
○ベンチャー・ファンド間の合併や持ち分の売買を促する為の、仲介機能の整備
○特色のあるベンチャー・ファンドの組成とその公募販売
ベンチャー企業育成などは、実際、地域金融機関に頼るところが大きいかもしれないが、受け皿や仲介機能整備は、証券・金融に期待されている事だと思う。

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証券は何を期待されているのか:個人編
 証券業も金融サービス業なのだから、サービスを受ける側の投資家が、何を望んだり何を不満に思っているのか、個人の場合について少し考えてみたい。
 金融庁が定期的に公表している“「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等”の4月~6月分では、個人から同相談室に毎日200件以上の金融サービスに関する質問・相談・意見等が寄せられているようだが、その内約30%3,815件は投資商品・証券市場制度等の金融商品取引法関連所謂証券関連業務分である。
 主要な証券業務別に、その相談等の事例内容をみてみると、
【金融商品の販売に関して】
・株式、債券、投資信託等の金融商品を購入しようする際、財産の状況を詳しく聞かれたり、長時間の説明を聞かなくてはいけないかとの問い。
=金融商品取引法により、契約締結前の書面交付義務があったり、金融商品の販売時に、適合性の原則の確認等の行為規制がある為、初めての顧客に関しては長時間の説明・確認行為が行なわれているようだ。
しかし、顧客が不快に感じない時間内での対応が出来るよう、確認作業の効率化やネット活用などは、サービス業として取り組む課題なのだろう。
【投信の販売に関して】
・銀行で投資信託を購入する際の注意に関する問い。
=銀行・郵便局でも投信の購入が可能となるのは良い事で、何処でその投信を販売しようが金融商品取引法上は、前述のような義務と行為規制に対応しなければならない。もし、銀行で売っているものは元本が保証されると錯覚する投資家がいるのであれば、金融教育の問題のような気もするが、投資家としての自立も求められるのではないだろうか。
【未公開株式について】(今回は未公開株関連の相談が大幅に増えている)
・金融庁等との関係を騙って、未公開株を勧誘したり、買い増しを薦めたりする業者に関する相談
・既に購入している未公開株式に関して、買い増しや買取りに関する詐欺的行為に関する相談
・業者から、値上がり確実等の勧誘をうけた相談
・購入した未公開株の名義書換えに応じない業者に対する相談
・事業会社からの未公開株勧誘にかんする相談
=IPO市場が低調なのに、上場等を前提にした未公開株勧誘に関する相談が増加しているのは皮相な想いもする。中には、取り込め詐欺的な事例もあるようだが、反面、成長期待のある未公開株投資に関して、個人投資家側の強い期待もあるのだろ。しかし、業界としてこの成長企業投資ニーズに応える努力が不足しているのも、事実ではないだろうか。IPO企業が少ないのは、審査ルールの厳格化に業界が上手く対応していない結果(決して経済や市況環境だけではない)だし、未公開株で唯一勧誘が認められているというグリーンシート市場銘柄は、実際に取り扱わない証券会社が多く、情報も一般の投資家から遠い。
ベンチャー投資に関しては、上場ベンチャーファンドや所得控除が1000万円近くまで拡大されたエンジェル税制などの施策があるが、業界の営業現場では殆ど取り扱われない。相談事例の様な業者を排除する為には、業界として未公開株投資ニーズに応える取組みが必要だし、それが成長企業へのリスクマネー供給にも繋がる。新興市場・グリーンシート・ベンチャーファンド・ベンチャー投資への取組みは、業界の頼る資本市場の基盤作りとして考える時期かもしれない。

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国際会計基準スケジュール概略
 国際会計基準が、日本の上場企業にも強制適用される可能性が強まっている。最近は経済雑誌の特集記事などでも大きく取り上げられているが、企業会計審議会で6月末に公表された「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」(“案”の公表は2月)において、2010年3月期からの任意適用を認め、強制適用(アドプション)については2012年を目途に判断するとされ、3年間の準備機関後、早ければ2015年にも上場会社については強制適用される可能性がある。この国際会計基準に関する動向について、少し整理しておきたい。
 まず国際会計基準(以後IFRS)→International Financial Reporting Standardsは「国際財務報告基準」と訳されるが、メディアでは国際会計基準とされる事が多い。またIFRSの読み方について、諸説はあるが、現在はそのままアルファベット読みするか、イファースと読むようだ。
このIFRSは、2001年に設立された国際会計基準審議会(IASB)で検討され、2005年からEUの域内企業に対して適用され、2009年からは域外企業に対する適用を求めるというスケジュールであった。IFRSの最大の特徴は、“原則主義(プリンシプル・ベース)”と言われているが、詳細規定が多く“細則主義(ルールベース)”と言われる米国基準や日本基準と大きく異なる。適用される企業は、この原則的考え方に照らして、具体的な会計処理を決定するが、その為に、どの様に会計処理を選択したか、会社の状況がよりよく理解できるよう、多くの開示を行わなければならない。ただし、原則主義なので、BRICsのような新興国も採用しやすく、現在でも100以上の国が採用している。
 会計原則に対する考え方の異なる米国にあっても、中長期的に自国基準とIFRSの相違を減らし、両者を収斂させるコンバージェンスの方向を取っていた。日本においても、企業会計基準委員会(ASBJ)はIASBとの間で、日本基準とIFRS間の差異解消の為に、2007年「東京合意」により、IFRSへのコンバージェンス対応を行っている。この合意では、IFRSとの重要な差異26項目につて、ほぼ同等と合意されるよう2008年中に対応を行うこととされ、実際には昨年末までにASBJにより、企業結合・連結・退職給付・ストックオプション・金融商品など23の会計基準が日本では改訂された。
この改訂により、日本基準も米国基準と同様にIFRSと同様であると、欧州委員会(EC)により最終決定された。これにより、日本企業は日本基準に基づく財務報告によってEU域内での資金調達が可能になっている。
 一方、IFRSそのものも2011年7月からは新しい基準とする為の準備が進められているが、新基準は、米国や日本にもある程度配慮される可能性もある。その為に、米国は自国基準をIFRSへコンバージェンス(収斂)させる方向から、アドプション(適用)する方向へ舵をきったのではないかと見られている。米国SECは、2007年末から外国上場企業に対して求めていた米国基準との差異の調整を廃止して、IFRSだけでの開示を認め、2008年11月には、米国上場企業に対するIFRS適用(アドプション)のロードマップを提示している。2011年6月には、米国企業に対する強制適用の採否を決定するという。
 現実は、日本の上場企業もIFRSへの適用(アドプション)が避けられない情勢なのだ。2011年6月、日本がようやくコンバージェンスを終わったところで、米国がIFRS適用へ踏み切る可能性があるなら、金融・資本市場としての準備は今から必要だろう。中間報告では、強制適用へ踏み切る(判断は2012年米国の一年後)判断材料として以下の課題を上げている。
1.IFRSが、我が国の商慣習・企業実態を反映したものになっていること
2.IFRSが日本語に適切に翻訳され、それが認知されること
3.IFRS設定におけるデュープロセスの確保
4.IFRSに対する実務の対応、教育・訓練(投資家を含む)
5.IFRSの設定やガバナンスに関する我が国の国際的なプレゼンスの強化
6.XBRLのIFRSへの対応

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少し分からない事・ディスクロージャーの方向性
毎年の様に企業のディスクロージャー負担は重くなるように思うが、それは会社と株主、あるいは株主間(将来株主の投資家を含める)の情報の非対称性を、可能な限り減じるという目的だと思っている。つまり、“貯蓄から投資へ”のような政策目標があるのなら、個人の株主や投資家の視線に合わせたディスクロージャー制度が構築されるべきである。
・内容は、分かりやすく
・タイムリーディスクロージャーというか、情報の公表は迅速に
・公表される情報の入手手段は、一般個人にも負担なく
以上のようなディスクロージャーの方向性は概ね守れていると信じるが、時々少し分からなくなる様なことに遭遇することがある。
 内容の分かりやすさに関しては、企業のディスクロージャーはIRなどの経験も踏まえて随分進歩して、有価証券報告書や決算短信等の記載は、一般的に平易なものになっていると思う。しかし、時として難解なディスクロージャーに出会うものの代表は、MBOなどのM&A関連についての会社の意見表明である。
 買付け側の買収目的も悪文の典型のようなものが目に付くが、株主からの訴訟リスクに備え、法的リスクを避ける目的で弁護士が作成したものなので仕方ないかもしれない。しかし、会社側経営者は、その賛否に関しての理由を、株主に明確に伝える義務がある。
 また、投信の目論見書(有価証券届出書)記載が、個人投資家には分かり難いと言われ、予定される開示制度改革では簡素化・標準化の動きがあるようだ。証券などの販売現場では、目論見書交付義務があるので、投資家には配布するが、実際は販売員も投資家も販売用資料(目論見書内容に沿った)で対応しているのから、不便を感じないのかもしれない。しかし、販売用資料は販売時しか入手できないので、その後、投資家が内容を知る手段は、EDINETで提供される目論見書内容だけになる。よって、目論見書改革は、個人投資家の立場からは期待されている。
 一方、株主や投資家に対する業界からの情報提供も、一種の業界ディスクロージャーだと思うが、業界の統計資料などは、過去何十年も同じ手法で集計しているような物を公開していたのでは、投資家のニーズに応えられない。例えば、証券化商品は一括の集計になっているが、証券化されているものの内容を知りたいし、空売り規制で各証券からの報告一覧表を見たいのではなく、銘柄毎の集計が知りたいが、その集計表はない。株主や投資家ニーズを意識した情報の集計や公開は、業界の責任であると思うが、情報ベンダー頼りでは、少し情けない。
 情報入手手段については、殆どの投資家が何らかの形でネットにアクセス可能なので、EDINETやTDNETにより、投資家間の情報入手の非対称性は随分と解消された。しかし、この情報入手(企業側からの情報発信)体制についても、多少疑問を感じることがある。それはEDINETやTDNETでの、情報提供側に対応が義務付けられたXBRLであるが、導入目的は、投資家の企業間の財務データ比較等を容易にし、海外投資家への英文表示にも対応できるとされている。このこと自体は、海外・機関投資家の売買を促し、国際間のM&Aへの利便性も強化されるという事なので、非常に重要なことである。しかし、現段階では投資家サイドがこのXBRL開示を利用しようとすれば、何十万、何百万とする専用ソフトが必要である。現段階では、この情報入手手段において、投資家間の非対称性があると言わざる得ない。
 確かに、XBRL処理はお金の掛かることだろうが、それなら業界が負担し、個人投資家利用も可能とするべきではないだろうか。

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TOBプレミアムについて
 最近の三菱ケミカルによる三菱レイヨン買収の報道に限らず、市場ではTOB特に買付価格のプレミアムについて関心が高い。嘗ては欧米並みに、買収プレミアムを3割程度とする考え方も一部にあったが、多少回復しているとは言え、多くの企業経営者・株主は株価水準が歴史的に低いと思っているので、最近のTOB買付価格のプレミアムは高めに見える。(昨年TOB実施した69企業のプレミアムは、直前三カ月の株価水準に比べて48%)
 しかし、このTOBプレミアムは、実際にはTOBに応じる予定の大株主による合意がなければならない。また、買収対象の公開企業の経営者は、買収行為に関する賛否を求められるだけではなく、買収価格に関する見解を求められる傾向にある。TOBプレミアム決定に関する透明性は高まっている。
直近事例として、以下のプレミアム決定の根拠が示されている。
【大株主間の株式の移動で、一方が親会社となったケース】
・8月7日公表、MonotaRO(マザーズ:3064)=買付価格1010円(前日株価より▼31.3)
・買付価格決定の根拠=売却者である住友商事と買付後親会社となる実質的買付者クレンジャーが合意契約を提携した6月19日の過去三カ月株価平均では、△3.5%のプレミアム。また、7月下旬の臨時株主総会で、発行済みの11%を、住友商事から会社が自社株取得した価格875円よりも上。
・会社の買付価格に対する経営者の判断=独自の確認は行わない(但し、TOBそのものには企業価値を向上させるとして賛同)
※買付者が53%を保有する親会社となるものの、対象会社は上場を維持し、東証1部上場を目指す。時価より相当低い買付価格なので、TOB応募が6月契約時点で合意されや住友商事に限られると予想される。
【プライベート・エクイティ・ファンドによる買収、非公開化】
・7月30日公表、バイオセキュア(ヘラクレス:3809)=買付価10万円(前日株価より△30.2)
の経営陣と実質的買付け者であるPEのアント・キャピタルとの合意による。但し、買付者は、投資家から投資資金を預かるPEとしての性格上、買付価格に対する客観性を確保する為、価格算定を第三者機関として監査法人に依頼。
・会社の買付価格に対する判断=会社側は、第三者委員会を設置して、会社側が別途用意した価格算定書を基に審議し、その第三者委員会の意見を踏まえて、売却予定者となる経営者を除いたうえで合意決議した。
※買い手、会社側双方とも利益相反行為に対しては相当の注意を払い、合意プロセスを進めている。しかし、一旦は非上場化して少数株主を排除するのであるから、プレミアム等には、過去株価や業況をどの位まで読み込むか議論があるだろう。
【MBOのケース】
・7月27日公表、リオチェーン(名証2部:9834)=買付価480円(前日株価より△21.5)・買付価格決定の根拠=現経営陣が6割以上を保有する同族経営であるが、MBO手法での非公開化を目指して、経営者の持株会社以外の全ての株主からの取得を目的にしている。また、過去3ヶ月、6ヶ月の平均株価の50%以上のプレミアムがあるとしている。なお株価算定は、会計コンサルが行っている。
・会社の買付価格に対する判断=買付け当事者となる経営者を除く取締役・監査役全員で賛同決議を行った。買付価格に関しては、別のコンサルから株価算定書を取得。
※上場廃止を前提としてのTOBでは、少数株主は次にスクイーズアウトされるので、株価算定には相当の配慮が必要であるが、9年2月期ベースで1株当たり純資産が993円(四季報)あるのが気になる。

以上、直近事例として3例上げたが、TOBプレミアムは買付け者と売り手の株主による合意で決定される。当然のことかもしれないが、現在は、その決定プロセスの透明性と、利益相反に対して以下に配慮されたプロセスであるか示す事が求められている。

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CDSについて
 十数年前、CDS(クレジット・ディフルト・スワップ)に筆者が金融マンとして初めて接した時、ある種の感動を覚えた。企業の信用力を、デリバティブとして取引できる事に対してである。あの会社は、財務状況が悪化しているから、CDSを売っておこう、―――お金を貸してもいないのに、そんな事が可能となるデリバティブとして期待した。しかし、その頃も、信用力の低い企業が社債を発行する為に、信用力の高い保険会社に保証してもらって社債を発行するというスキームがあった。企業は、保険会社に保証料を支払うのだが、CDSはこの保証料が変形したものに思える。
【基本的仕組み】
倒産リスクやデフォルト・リスクを回避したい金融機関・投資家が保険会社等に保証料を支払うのが原型で、CDSの買い手はこの場合プロテクション・バイアーと呼ばれる金融機関・投資家、売り手がプロテクション・セラーと呼ばれる保険会社、そして保険料がプレミアム。
【基本的な問題】
 CDSは、2000年代に入り、ほぼ毎年取引残高が倍増するように増加してBISによると2008年には、57兆ドルまで想定元本が増加した。CDSは、そもそもデリバティブ(派生商品)なのだが、その元となる企業へのローンや社債発行が、毎年倍々ゲームで拡大するはずはない。対象となる企業は、社債が独自で発行可能な、成熟した大企業なのだから、いくらグローバル化で資金需要が増えても、負債が倍増を続けるはずはない。では何故かというと、CDSプレミアムそのものを、金融機関同士で流通しだしたからだ。同じA社のCDSを、金融機関同士で何度か売買すると、その売買取引条件が多少違えばCDSの取引残高として元のA社のCDSの何倍も膨らむ。そんな膨らんだCDSの受け皿として、AIUと証券化商品のCDOが上げられる。
 AIUは破綻すると、金融機関への連鎖不安が起きるし、CDOは値段が付かないと保有する金融機関の不良資産になる。今回の金融危機の原因として、サブプライム・ローンと並んで主役格にCDSが上げられるのはこのような背景がある。(実際は、金融機関によるCDSの流通が問題ではなく、レバレッジを効かせ為に取引量を膨らませた金融機関同士の取引が問題だろうが)
【応急の対応策】
 今回の金融危機対応で、各国金融当局は金融機関同士(ヘッジファンドを含む)のCDSを始めとする店頭デリバティブ取引に関する監視体制(報告主体)を、年内に構築しようとしている。特にCDSについては、清算機関設立を業界に求めている。清算機関は、CDS取引の一方の相手方になるので、もう一方の金融機関が破綻しても、取引は決済され取引者のカウンターパティーリスクは減少する。また、その為にCDS取引の標準化を行わなければならないので、取引の透明性も高くなり、取引参加者も増加しやすい。欧米での清算機関設立の動きとしては、LCH.Cleanet Ltd(欧州で清算業務を開始)、ICE Trust(欧米で清算業務を開始)、CMEグループがあるが、当初はCDS指数取引に関する清算から、個別CDSへ清算業務を拡大するようだ。
 CDS清算機関が機能拡充していけば、なんだか直ぐにでもCDS取引所が出来そうであるが、実はCDS指数の取引所上場について、EUREX(ドイツやスイスを拠点とするデリバティブ取引所)やCME(米国)で2007年にCDS指数が上場されたが、殆ど取引されず上場商品としては失敗している。
 今回の金融危機に当たり、金融機関の抱えるCDS関連商品を流動化させる為、お互いのクレジットリスクを排除する清算機関設立を共同でCDS取扱金融機関に行わせている欧米金融当局の政策がある。通常だと、順序が逆にも思うが、清算機関整備から取引所機能へ発展すると前向きに見ておきたい。
【日本での動き】
 最近報道された主要銀行の4-6月決算で、保有するCDSの値下がりにより、収益を下方修正との記事があった。銀行がリスク回避の為に購入したCDSが、金融危機再燃が遠のいたことから値下がりして、CDSの評価損を出す為である。何だか、銀行にCDSを売り付けた金融機関の逞しさも感じるが、日本においてもCDS清算機関設立の動きは、東証や東京金融取引所においてある。東京金融取引所は、7月下旬から、CDS指数であるMarkit iTraxx Japanインデックスの価格情報を、公表し始めた。
 清算機関設立は、いずれ取引所取引を誘導するアドバンティージを持つと思うので、日本におけるCDS関係者の努力に期待するところが大きい。だたし、日本においては、社債の流通市場整備も必要だと感じている業界関係者も多いと思う。

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企業のIR活動に対して、業界は
 公開企業のディスクロージャーに関する負担は相当に重い。会社法での株主通知の早期発送や総会での議決権行使状況の開示要望、金融商品取引法開示での四半期開示や内部統制報告書、取引所上場規則での適時開示要請やコーポレート・ガバナンス報告書作成義務など、とても財務・経理部だけでは対応できそうにない状況になっている。更に、少し先とはいえ連結決算内容が大きく変わる国際財務報告基準(IFRS)対応が控えている。
 加えて、株主や投資家とのコミュニケーションの充実要望から、IR活動は当然の様に求められる。
その状況に関して、東証によるコーポレート・ガバナンス白書2009(今年1月公表)から取り上げてみると以下の様になっている。
【個人向け定期的説明会実施】
東証上場会社の全体の26.9%が実施(前年比+4.8%)。実施会社の83.3%が代表者による説明。
※一部特定投資家に対して優先的に企業業況等の情報開示を実施するセレクティブ・ディスクロージャーをポリシーとして行わない会社も。
【アナリスト・機関投資家向け定期的説明会実施】
東証上場会社の全体の70.9%が実施(前年比-0.5%)。実施会社の98.4%が代表者による説明。
開催方法として、遠隔地からのネットや電話を使ったミーティング開催もある。
※限定された投資家のみを対象とする問題点を認識して。その内容を自らのホームページで配信する取組みも。
【海外投資家向け説明会実施】
東証上場会社の全体の16.3%が実施(前年比+0.7%)。実施会社の90.0%が代表者による説明。
年一回、説明会や個別ミーティングを開催する方法が一般的で、欧米だけではなく、最近は東南アジアへも。英文によるネット説明会や、アニュアルレポートの充実も施策に。
【IR資料のホームページ掲載】
何ならかのIR資料を自社のホームページ上で掲載しているのは、東証上場会社の全体の87.5%が実施(前年比-5.1%)。IRの補足説明資料として掲載されているもので、「決算情報」24.0%、「有価証券報告書」36.9%、「株主総会招集通知」8.3%。
【IR専任部署(担当者設置)】
東証上場会社の全体の80.7%がIR専任部署を設置している。
 これらの公開企業のIR活動に対して、日本アナリスト協会では、証券アナリストによるディスクロージャー優良企業の選定(平成20年度は、13業種215社対象)を行っていたり、東証もディスクロージャー表彰制度を実施して毎年5~7社程度を表彰している。また、IRコンサルティング会社などが、企業のホームページをIRの視点から評価する表彰制度もある。
 公開企業のディスクロージャー制度の負担は相当に重くなっているので、企業によりIRの深度が異なっても仕方がないようにも思うが、表彰制度等で、企業に一層の投資家・株主向け情報発信を促すのは、これも市場仲介者として当然の行為だろう。しかし、同一企業情報にあっての、個人と機関投資家、外人と日本の投資家の情報の非対称性があってはいけない。
 表彰して、IR意欲を引き出すことも良いが、企業が発信する株主・投資家向け情報を、集約するインフラがあった方良い。例えば、同業他社の決算説明会比較が出来るサイトの提供などは、協会などが率先して行うことの様に思う。企業がコストを払うIRコンサルティング会社のサイトに頼るのではなく、市場仲介者がコストを負担してIR情報を集約化し、投資家・株主にIR情報を提供するインフラ整備は、業界としての当然のコスト負担だと思うのだが。

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投資家の求めるコーポレート・ガバナンスとは何か
企業は株主のものでないと担当大臣にコメントされるのも寂しいが、間違いなく企業は株主のものでもある。そして、コーポレート・ガバナンスは、ステイクホルダーに配慮されたものであるが、株主特に少数株主の立場を守るという原則が貫かれていると信じたい。経済産業省の企業統治研究会より6月に公表された報告書においても、経営に直接関与することのない一般株主(機関投資家を含む)にとって、経営者に近いところで、企業価値の向上についてモニタリングする仕組みとして、社外取締役・社外監査役に期待する意見が強いとされている。大量の第三者割当や、MBO、買収防衛策の導入などが、独立性の高い社外の目で、企業価値を向上させるかどうかとの視点でチェックして欲しいのである。
 しかし、東証上場企業においても社外取締役は、監査役設置会社の55.9%が導入していない。(数字は、東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2009で、2008年の各社コーポレート・ガバナンス報告書をベースに集計。以後の数字も同様)また、社外取締役がいても、親会社・関係会社・大株主・親族など経営者との関係が近い者が41.8%では、その独立性が問題にもなる。 独立性の高い社外取締役が東証上場規則で義務付けられるか、今夏以降の上場ルール改正で注目されるところである。
一方の議論として、監査役会設置会社(マザーズの18社を除く)は、その半数が社外監査役であることが義務付けられているので、監査役会機能の充実する考え方もあるようだが、社外監査役の20.4%は親会社・関係会社・大株主・親族など経営者との関係が近い者であるという現状もある。
投資家としては、企業価値向上の為の判断が出来る機能で、ある程経営者に牽制機能が働く独立性が大事なので、独立取締役導入の上場ルール化が難しいのなら、企業価値向上のコーポレート・ガバナンス格付けの様なものを取引所が公表し、投資家に投資判断材料として提供する仕組みを作ってはいかがだろうか。
その分が取引コストとして負荷されても、投資家側のクレームにはならない。
次にコーポレート・ガバナンス報告書が開示を求めるものとして、取締役へのインセンティブ・報酬関係があるが、ストックオプショが33.6%、業績連動報酬が17.3%の企業が導入している。業績連動報酬制度としては、ストックオプションは好ましく思えるが、投資家としては、社外取締役や社外監査役に付与する必要があるか、付与対象はどのマネージメントの範囲までなのか、権利行使の条件が業績と連動しているか、又、役員の退職慰労金制度と代替としては、付与条件・行使条件が適切かなど、実はストックオプションの中身について開示及び評価がされなければならない。報酬額の個別開示に関しては、コーポレート・ガバナンス機能上それほど問題ではないが、株主代表訴訟に備えた責任限定規定が定款に定められている場合は、実質的な総報酬として開示されるべきだろう。
株主にとって起業に対する具体的行動を起こす場である株主総会関連の運営に関する事は、実務的に重要な部分であるが、最近の注目度は低いようにも思う。
・株主通知の早期発送:法定期日よりも3営業日以上以前に発送した企業は、全体の33.0%
・総会集中日の回避:3月決算期のうち集中日を回避した会社は。38.4%
・電磁的方法による議決権行使:ネットによる議決権の行使など、電磁的方法により議決権を行使できる会社は全体に20.4%と未だに低い。また東証が提供する機関投資家向け議決権行使プラットホームへの参加者数が338社に留まっているのは、この問題に対する企業側の基本姿勢を疑う。プラットホーム参加のコストが問題であれば、いっそ協会等が負担しては如何か。
最後にディスクロージャーの問題になるが、個人向け説明会の定期的開催企業は全体の26.9%、アナリスト・機関投資家向け説明会開催は70.9%、海外投資家向け説明会開催は16.3%となっている。
個別企業のIRに対するスタンスが異なるのは構わないと思うが、株主間や投資家間で、会社情報に関する情報の非対称性が発生することは、コーポレート・ガバナンス上も問題がある。その様な配慮として、説明会内容のホームページ上での開示は、必須と理解していただくよう取引所や協会は、企業に働きかけるべきである。コーポレート・ガバナンスの基盤作りの為に。

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ディスクロージャー制度-投信の場合
公開企業にとって、ディスクロージャーの負担は相当に重くなっている。
会社法による事業報告等の株主関係書類、金融商品取引法の開示制度による有価証券報告書・内部統制報告書など、そして適時開示を求める取引所開示、加えて会社説明会などIR活動。
これらディスクロージャーの充実は、投資家にとって情報の非対称性をなくし、投資判断を容易にする目的で実施されている。
 片や、これだけ一般に広く販売されるようになった投資信託の開示制度は、金商法による有価証券届出書をベースにした目論見書に殆ど頼っている。企業なら、当然製品を作ったりサービスを提供したり企業活動を行っているので、投資家は開示制度によるディスクロージャー以外でも、投資判断する情報を持つが、投資信託は投資活動のみなので、その内容は目論見書を読まなければ分からない。
しかし、多くの投資家は、投信の目論見書を分かりに難いとして、投資家の約6割があまり読んでいないという調査もある。読まない理由は、
①分量が非常に多い。
②全般的に専門用語が多く、表現が分かりづらい
③全体の構成が複雑で、どこに何か書かれているか分からない
④重複も多い
などである。実際の販売現場でも、この目論見書は交付されるものの、販売活動では余り使わず目論見書内容を要約したり図式化した販売用資料(社内のコンプライアンスのチェックを受けた)を使っている。
 投資家の立場からすると、株式への投資は、有価証券報告書内容を比較したり、取引所等の開示情報を使って比較検討できるが、投信の場合は、目論見書(=有価証券届出書)を比較検討する気にはなかなかならない。といって、各金融機関から自分が求める投資ニーズに沿った投信の販売用資料を取り寄せる手間もなかなか大変である。
 現状のA投信が提出している有価証券報告書の構成を見てみる。
【交付目論見書相当部分】(必ず投資家に渡さなければならない)
“第一部証券情報”として投信の名称や発行総額・発行価格や手数料などが記載されていて、その他欄の受益権に関する取り扱い以外は、平易な記載になっていて、3Pの分量。
“第二部ファンドの情報”で、投資判断には重要になるファンドの目的や仕組み・投資方針・投資対象証券や運用体制・運用実績などが32P分記載されている。
【請求目論見書相当部分】(投資家からの請求に応じて投資家に渡される)
“ファンド(投資法人)の詳細情報”として、ファンドの沿革から始まって、各仕組みの定義や手続の詳細、管理内容や財務内容の定義と詳細記載がなされていて、一応マザーファンドの財務の付属明細表として有価証券明細表があるので、現状何に投資しているか分かる。この部分が20P分の記載。
 これらの投資信託の目論見書が、簡略化され標準化されることによって、投資家が比較検討しやすくなるのは大変いい事だと思う。しかし、投信の目論見書改革は本当にそれだけで良いのだろうか。
以下の問題を、筆者は一投資家として感じる。
・例えば、日本のこの成長分野に投資したファンドを探したいと思ったとき、現状の目論見書さえネット上で比較されるように公開されていない。(EDINETで有価証券届出書は閲覧できるが、内容の比較する為の検索は現状出来ないので、投信のネーミングから投資家が探すことになり、事実上の投信間の比較は困難)
・投資方針が変更された時、投資家に対して適時開示されているか疑問(公開会社であれば、重要な資産売却や購入は開示対象である)、つまり発行募集された後の、何らかのファンド内容の変更に関する適時開示がなされていない。(いちいち銘柄の入れ替えを報告することを言っているのではなく、エコファンドといって募集されたものが、エコと定義しにくい投資比重が高まった場合などの開示)
・公募された投信の目論見書が、ネット上で自由に引き出させ様、協会や販売会社・運用会社で工夫して欲しい。(投信比較サイトはあるが、正確な内容や、内容の変更などの情報が提供されていない。)
 郵便局の窓口でも、投信が買える様に一般化した金融商品なのだから、情報の集約やその提供に関係者は努力すべきと考える。

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小よく大を制すか、個人投資
 “小よく大を制す”日本人はこの言葉が好きだ。それは、体躯の小ささをハンディとせずに、日本人が勝ち上がっていくスポーツに感動するし、国土の小ささに囚われずに経済成長した日本に誇りを覚える。
 しかし、金融・資本市場は大きな資金に対し有利な仕組みになっていて、個人より機関投資家、マスセールスより富裕層ビジネスに、この業界の関心が向きがちだ。ただし、投資家層の拡大や、金融教育の必要性は常に言われるが、業界としてどこまで本気か時として疑わしい。この国の投資システムにも、小よく大を制する可能性を感じるものが必要なのだろう。その可能性の一つとして、資産を運用すると言う事とは異なる、資産を形成する為に、継続的に長期の時間軸で投資をするものが有効だと思う。
 現状では、個人が長期に渡る投資をするものとして以下があるが、個人投資の拡大という視点からは問題もある。
○持株会
 従業員持ち株会は、成長期企業の従業員の資産形成には、非常に有効な投資手段であった。従業員が拠出する以外に、会社側が助成金の税制上の優遇措置があれば、更に従業員にとって優位だろう。この制度を拡大活用する日本版ESOPは、従業員の大量な自社株購入を可能とするシステムとして期待されている。但し、持株会制度での資産形成は、自社株のみであり、安定成長期に入った企業の従業員資産形成には向かない。
○日本版401K
 既に340万人が活用しているが、97%が会社型で、企業が提供する退職後の為の累積投資システムに近い。老後に備えた資産形成を自らの手で行うという目的であれば、主婦層や公務員などにも個人型を解放するべきではないだろうか。また現状では運用資産が限定されていて株式や商品ファンドなどの購入は出来ないし、運用資産の入れ替え作業などのオペレーションの利便性が悪い。運用管理機関間の競争を即するような政策が必要である。
○日本版ISA
 平成21年度の税制改正で創設されることが決まったが、本年度の税制改正で詳細が確定する予定である。毎年100万円、累積で500万円までの投資のキャピタル及びインカム・ゲインの非課税措置は、資産形成に有効なので、実施を確実にする為、総選挙後も業界として強く税制改正要望していくべきである。
○金融機関が提供する累積投資制度
 現在も銀行や証券が提供する累積投資制度はあるが、殆どが投資信託をだけのもの。(証券では、株の累積投資もある)この制度では、税制上の優遇措置はないが、日本版ISAや日本版CTFが整備されていく過程で、現在の累積投資制度が下地になる可能性もある。その為には、取扱金融商品の多様化や、取扱いコスト削減の為の商品情報やシステムの共有化があっても良い。
※現状の制度ではないが、日本証券業協会の金融・資本市場に関する政策懇談会から、以下のような英国のChild Trust Fund を模した子供を対象とした税制優遇投資スキーム(日本版CTF)創設検討の提案がされている。
☆CTF概要
・利用者の資格:2002年9月以降誕生したイギリス居住の子供(18歳まで運用可能)
・口座開設と7歳の時に、政府から250£補助金支給
・両親、家族等が年間1200ポンドまで拠出可能
・インカム、キャピタルゲインとも非課税かつ申告不要
・18歳以降引出し可能で、使途制限なし

 10年20年に渡る投資は、運用の時間軸が全くファンドマネージャーとは異なるので、大のファンド運用を小の個人長期投資が制する局面も、将来あるかもしれないし、期待もしている。その為に、業界として、制度を確実にしていく為の努力と政策要望も必要である。

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法人関係情報の管理について
 M&Aやファイナンスなどに係る法人関係情報は、関係する金融機関だけでなく投資家や株主そして市場関係者にとって、重要な情報になる。まして、未公開の情報に関する取扱いは、M&Aやファイナンスをビジネスとする投資銀行業務において、その情報管理はイロハのイである。しかし、それでもM&A関連情報に関するインサイダー取引は、この業界関係者でも起こすし、ファイナンスに関連した情報操作まがいの行為や売買もあった。
 どの世界でも、最低限の事故率や犯罪率はあるのかもしれないが、この市場を企業や投資家に使ってもらおうとする業界であるなら、この法人関係情報(非公開の法人情報)の管理は、徹底されるべきである。
 加えて、この6月からは企業向け金融サービスを向上させようということで、ファイアーウォール規制が緩和され、オプトアウト方式で銀行・証券などの金融グループ内で非公開の法人情報が共有される。
 この法人関係情報の問題事例について、証券取引等監視委員会の金融商品取引業者への検査指摘事項が公表されているので、その中から問題事例の概要を紹介したい。
【情報の管理不備】
・経営トップが、上場会社の業績に関する未公開情報を取得したが、法人関係情報として登録していない。
・協会に引受ルールにより、主幹事として上場させた企業の月次決算情報を引受審査部が入手していたが、下方修正に係るにも情報について売買審査部に報告していなかった。
・M&A案件情報について、直接関与していない場合も、法人関連情報として登録・管理するという社内ルールがあるにもかかわらず、海外関連会社が主担当になったグローバルM&A案件で登録が漏れ、管理されなかった。
【投資助言業における管理不備と問題行為】
・社内規定において、法人関係情報の定義が明確化されておらず、これまでも法人関係情報の報告が皆無。しかし、アナリストがヒアリングした自社株取得に関する未公開情報を使って、顧客に対し、当該銘柄の買い推奨の助言をした。コンプライアンス・オフィサーには報告されず。
【ファイアーウォール関連】※緩和以前の事例なので、今後は利益相反体制の整備により、対応。
・金融グループ内における証券会社として、親法人等から、顧客の同意を得ないまま、親法人と顧客の非公開情報を含む情報処理システムを共用していた。
・複数の従業員が、顧客からの同意書を得ないまま、顧客に関する非公開情報を受領。また一部が、コンプライアンス部門に確認することなく、非公開情報を基に、有価証券買付けの勧誘を行った。
【実質的自己売買取引に利用】
・海外部門が引き受けたMSCBについて、まず繰上償還条項を行使する旨を通知し、その公表は発行会社行わせ、市場に新株予約権が行使されないと認識させた。結果、株価が上昇したところで株式を売却。実際は、新株予約権の行使が行われ、その分の株式が売却されたが、この事実の発行会社による公表は、売却後になった。
 法人関連情報は、企業がM&Aやファイナンスでのメリットを受けるよう、市場仲介者として活用されなければならない。しかし、その為には、利益相反行為に十分配慮した情報管理と情報判断が求められている。

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長期投資システムとしての401K
 年金制度を論じるつもりはないが、多層構造になっている制度において、個人が自ら運用を行い、自らの将来の年金給付を確保する確定拠出年金=日本版401Kは、個人が長期投資を行うシステムと見なすことが出来る。
 根拠法は、確定拠出年金法で、当然所管は厚生労働省であるが、税制優遇措置(拠出限度額)も係る。制度は2つあって、
・企業型=掛金は企業が保証し、従業員自らが運用。加入者約330万人(4月末、11,800社)
・個人型=自営業者や企業型に加入していない会社の従業員が、自ら拠出し運用。加入者(自営業者分約3.9万人、従業員分6.3万人)
のような現状であるが、証券業界からの要望もあって、企業型では、従業員が企業拠出分と同額まで拠出が認められるマッチング拠出が法改正で可能となり、合算された拠出限度額の上限(月額)も約1~2割程度引き上げられる(平成21年度税制改正)。ただし、主婦や公務員は現行制度では加入できない。
 制度運用の基本的仕組みは、
①企業若しくは個人が、運用管理機関を選択する。
②運用管理機関は、加入した企業の従業員若しくは個人に対し、運用商品の選定をして、その情報を提供する。
③加入した企業の従業員若しくは個人は、自ら運用商品を選択し、指示を運用管理機関へ出す。運用管理機関は、これらの指示を取りまとめ、実際の金融商品や資金管理を行う資産管理会社(個人型の場合は、事務委託先金融機関)へ指示を行う。
④運用指示を受けた資産管理会社は、実際の金融商品の提供を行う証券・銀行・保険などから金融商品を購入する。
厚生労働省のホームページから、制度のイメージ図を簡略化すると以上の様になる。
 401Kに加入した従業員若しくは個人の接点は、この運用管理機関なのだが、4月末現在で200社ある。企業型は、企業の担当者がこの運用管理機関を選択するので、従業員は選べないが、個人型は、運用管理機関の選択から始まる。地銀・信金やゆうちょ銀行も含まれているので、窓口としては広域をカバーしているといえる。
 しかし、長期運用を前提にしたシステムとして、現状の運用管理機関の機能には、以下の様な問題があり、“貯蓄から投資へ”の促進で、国民資産をリスク資産投資へ向かわせるには、不十分な運用管理機関機能とみられる。
●従業員に提供する金融商品が、品揃えとして十分でない。
-比較的商品数が充実していると言われるA社の金融商品内容を見ると、全部で28商品あるが、内訳は定期預金型が5、保険型が2、投資信託型は21ある。投資信託型が21もあると、一見投資対象の選択には十分な様に感じるかもしれないが、債券運用型の3つを除くと、殆どインデックスか、主要銘柄をパッケージにしたもので、運用者任せになる。例えば、中国株やインド株に投資したいとか、商品指数に投資したいという想いは満たされない。
●運用管理機関のシステムが、積立投資主体に作られていて、従業員や個人が運用指図する仕組みになっていない。
-同じもの積み立てていくには問題はないが、一応運用ということであれば、今までの運用資産を売却して、新しい金融商品で運用することもある。現状システムは、前の運用資産売却が完了してから、新しい金融商品購入注文が出される。管理口座内で運用資産は引き出せないのだから、通常の株式売買の様に、売却注文執行と同時に売却代金も確定出来る訳だから、買付注文執行も同時に行って欲しい。現状の受渡対応は、運用者にとって不便なものとなっている。
●運用管理機関間で取り扱う金融商品が異なるので、もし企業なり個人がこの運用管理機関を変更する場合、一旦今までの運用資産を売却して清算し、現金で新しい運用清算機関へ移さなければならない。
-預金や保険は、難しいかもしれないが、投信が運用対象になる場合、これらはペーパレス化され、移動も簡単になっている。また、200ある運用管理機関も、証券保管振替機構に参加しているはずなので、この金融商品の移動の問題は、法制度整備で早急に解決して欲しい問題である。その事が、運用清算機関間の競争を促し、運用者である従業員や個人にメリットを与える。

 制度設計をする政策当局者や、金融関係者は、自ら使って見ると、この制度の現状の問題が見えてくる、と思うのは筆者だけだろうか。

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