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2009/09
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守るべき金融所得一体課税
 新政権になって税調のあり方も変わり、税制決定のプロセスも政府主導になるようだ。今までは、自民税調が主体であった税制対応も、本来の政府主導になるということは、行政プロセスの分かり易さから、良い事なのだろう。しかし、市場や業界の方は、新政権への不安が今のところ勝っている様にも思う。証券業界の不安の最たるものは、“優遇税制”だろう。この証券優遇税制に関しては、昨年度の税制改正(平成21年度改正)により、2年間延長されて、平成23年まで譲渡益に対する10%課税の軽減措置(業界は優遇税制という)となる事が決定している。業界首脳の心配は、この軽減措置延長が廃されることのようだが、元々この優遇税制という譲渡益の軽減措置は、平成24年には終了する。つまり、20%の課税になる訳だが、1~2年早くなることがそれほど業界にとっての大きなダメージになるとも思えない。
(長年、業界としては市況悪化への懸念を材料に、10%軽減措置要望を繰り返した前例はあるが、税制を課される個人投資家の方は、今更右肩上がりの市場を考えて日本株市場に投資しているわけでもないので、筆者は、譲渡益課税軽減措置撤廃の影響は、限られると考える。)
 ただし、金融業界としては見逃せない動きもあるようなので、コメントしておく。
それは、総合所得課税に一本化しようとする動きである。つまり、金融所得に対する20%の課税を取りやめ、総合課税にしようという考えである。この考え方は、民主党だから若しくは金持ち優遇批判をする社民党だから出てきた訳ではなく、元々政府内にも根強くあるようだ。
 この預金利息や配当・譲渡益など金融商品に課せられた20%の課税とは何か。
金融所得一体課税の考え方は、遡れば、2003年6月の政府税調中間答申において、「金融商品間の中立性を確保し、金融資産所得を出来る限り一本化する方向を目指すべき」とされ、具体的には以下の様な考えが示されている。
・金融所得を、勤労所得などと分離して、課税する。
・金融商品の種類や所得分類にかかわらず、同一の方式で課税する。
・金融商品から生じた収入の総計から、要した費用、生じた損失を控除することで金融所得を算出し、その金融取得に対して比例税率で課税する。
・全体の損失があれば翌年以降に繰り越し、金融所得のみと相殺する。
つまり、株の譲渡益も配当も、預貯金・国債などの利子所得も、金融所得として一体で考え、これを通常の所得とは分離して税制上考えるとのことだ。“少子・高齢化社会における税制のあり方”の中で、検討された結果であり、決して金持ち優遇税制ではないのが、金融所得一体課税の考え方の根底にある。2030年には、65歳以上の人口が、全体の4割にも達するようだが、個人の勤労意欲は別にして、税金を持続的に支払っていくような雇用の確保は、一般論として難しい。また、定年延長といっても、当金融業界など50歳台後半でも、再雇用は難しいので、現実的に思えないし、投資家であれば、そのような会社への投資は敬遠するだろう。 結局、老後の人生資金で頼るのは、個々の金融資産となるのだろう。
 もし、政府の一部の方々が仰るように、税制は単純なのが望ましいので総合課税化するなら、誰が利率の低い国債や日本の社債を買ったり、新興国に比べると成長性の低そうな日本株への投資をするのだろうか。
債券投資も株式投資も、成長性を買う個人の長期投資は、一層海外へ向かうだろう。
結局、資本・資金調達コストは上昇して、日本企業の成長力を更に減少させてしまう。
今、金融所得一体課税を守るのは、単に金融界だけの問題ではなく、日本の経済システム全体に影響を及ぼす可能性もあることを、業界は新政権にちゃんと説明する義務がある。
 これから、団塊世代の退職も本格化し、退職金など個人の金融資産も増加するだろうが、安全資産先行であっても、低金利の日本の預貯金に滞留しているだけではない。新興国など海外の国や企業が発行する債券に向かう部分も多くなり、安全資産であっても、国外流失の懸念は常にある。まして、リスク資産なら、成長の限界を感じる日本企業ではなく、これも新興国投資に向かうトレンドは強まるだろう。
 金融所得一体課税を守るのは、日本の資本市場の空洞化を防ぐ前提であるとのコンセンサス形成を早急に金融業界は行うべきである。

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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

REIT投信について
 再び地価の下落が伝えられているが、REIT投信への投資は、回復しているようだ。流れは2つあって、一つは海外REITへ投資する投資信託への資金流入、もう一つは日本のREITへの支援策が始まったことへの安心感だ。
8月のREITへ投資する投信への新規資金流入額は、約2013億円だが、その内の増加の9割を占めるのが、海外REIT投信であり、7~8%の分配金額の高さが注目を集めている。これまで、同じく利回りの高い新興国債券に投資する投信が、売れ筋となっていたが、ここ2~3ヶ月は、経済危機回避への安心感から、各国のREIT指数が、大幅に改善していることも背景になっている。8月のREIT指数の月間上昇率は、日本が1.6%と少し落ち着いてきてはいるが、米REIT指数が13.5%、欧州の不動産関連証券指数も15.2%の上昇となったことも、海外REIT投信への注目を集める結果となった。
もっともグローバルなREIT指数(S&PグローバルREIT指数)は、今回の金融危機に始まる世界同時経済危機以前から、大幅な下落調整を、2年以上続けてきた。米国サブライム問題が顕在化し始めた2007年年初に、REIT指数はピークをつけ、本年の3月にはピーク時から7割も下落する様相となっていた。
ここで、REITについて少し考えてみたいが、Real Estate Investment Trust=リートとは不動産投資信託のことで、REIT投信とは、そのREITに投資する投信のことである。不動産のキャピタルゲインを目指す私募の不動産ファンドと区分するなら、REITは賃貸料などのキャッシュ・フローを確保した不動産投資を行い、資金調達とREIT自身の流動性確保の為に取引所に上場するのが常態だ。3月末の状況では、日本では39銘柄があり、保有物件ではその三分の二がオフイス、10%弱の商業施設を加えると景気の影響を直接受ける部分が四分の三以上を占める。それでも、1%台前半の国債利回りに比べて、5~6%程度の分配額が想定されている。
海外のREIT市場については、米国が全体の時価総額の半数以上を占め、これにオーストラリア・英国を加えると全体の四分の三になる(日本は全体の8%)。日興アセット調べでは、本年4月末時点の世界のREITは、約20ヵ国で制度が導入され、257銘柄で時価総額約26.7兆円になり、分配金利回りの平均は、8.3%である。新興国では、中国・ブラジル・インドでのREIT制度導入も、今後検討されている。
一方、欧米に比べてREIT市場規模の割には銘柄数が多い日本においても、今後REIT間の統合が進むとみられ、REIT投資法人間の統合を法的に可能とする「投資信託及び投資法人に関する法律施行規則等の一部を改正する内閣府令」を、7月1日より施行している。
また、昨年10月には、ニューシティ・レジデンス投資法人が、資金繰り悪化により、REITで初の実質的破綻をしたが、この9月5日には、REITの資金繰りを支援する“官民ファンド”も立ち上がり、REITの資金繰りに対する投資家の不安解消に影響している。
 官民ファンドの正式名称は、「不動産市場安定化ファンド」で、不動産など関連する民間企業40社程度が約300億円を出資し、日本政策投資銀行による劣後ローン・銀行借入金などを含めたファンドの規模は最大5000億円となる。ファンドを設立の目的は、REITの資金繰りを支えることで、9月以降に集中している社債の償還期限が対応し、リート融資に慎重な金融機関に代わって融資する。また、業界再編を促進するため、リート同士の合併に必要な資金も認めている。融資期間は原則3年以内で、最長は5年半としており、不動産市場の安定化を目指している。
 米国でも同様の官民ファンドが立ち上がっているが、安定化政策が始まったばかりなので、拙速な政策見直しがないことを期待したい。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

IFRS:注目の金融商品会計見直し
金融株が総じて大きく調整しているのは、何も中小企業モラトリアムのせいではない。世界同時不況の危機は、リーマンショック後一年でどうにか回避され、金融危機も脱したようだが、金融機関にとっては2つのルール改訂が、大きな重石になりそうだ。
一つ目は、グローバルな金融機関への規制強化で、自己資本規制や報酬規制を中心に、週末の金融サミットで合意されたが、注目されていたコア自己資本(普通株)を4%とする案も含め自己資本規制は、景気回復を前提として、2012年からの段階的導入をする方向で、内容は2010年中に合意するとされた。
 日本の金融機関にとっては、取りあえず早急な資本増強は避けられそうだが、巨額の公的資本注入の欧米銀行と、資本市場から調達している日本の金融機関が同一の自己資本強化対応を求められることには多少の不満を感じる。
 二つ目が、金融商品会計の見直しである。日本の会計基準もIFRS(国際財務報告基準)へのコンバージェンスということで、その内容はどんどんIFRSに近づく改正が行われているが、金融危機の影響はIFRSにも及んでいる。本来、IFRSは、時価(規則上は公正価値という)会計のイメージが強かったが、金融機関の経営に大きく影響する金融商品会計や保険の基準に関しては、金融危機対応を考慮したな基準の見直しが、年内を目途に行われている。以下、IFRSの金融商品会計改訂で注目される金融機関の問題を上げてみた。
【国債・持合株式保有:日本の金融機関】
日本の銀行(ゆうちょ銀行を含む)が保有する日本国債は、この3月末で248兆円、全体の36.8%保有しているが、これが公正価値(時価)適用となると、銀行決算及び国債市場に多大な影響を与える。
現状では、貸出金の様に元本と金利で構成する単純な商品性で、かつ金利収入の得る目的に該当する金融商品として、公正価値適用せずの方向性。 また、持合い株式に関しては、本来金融機関保有を減少させるべきとの意見が日本国内で強いが、売買取引を資本取引と見做し、売却益は包括利益として純利益とは別に管理する案が優勢とみられる。そうなれば配当など銀行の資本政策にも大きく影響する。
【証券化商品:欧州の金融機関】
欧米の金融機関が大量に保有する証券化商品に関して、時価会計を緩和する動きがあるが、IFRS(案)による公正価値ヒエラルキー(金融商品の分類)のレベル3では、市場で取引のなくなったような証券化商品も、自ら計算した理論価格の採用が認められる。ちなみに、レベル3の資産は、この6月末で、ゴールドマン・サックスで約540億ドルと総資産の約6%。ドイツ銀行も640億ユーロと、自己資本の約1.9倍まで積み上がっている。 [※IFRSの金融商品分類は、以下の3つに分かれる]
・レベル1:活発な市場における公表価格があるもの。上場株式・国債など
・レベル2:上記以外で、取引価格がわかるもの。金利スワップなどのデリバティブなど
・レベル3:取引価格が観測不能なもの。ローン等を担保にした証券化商品、非上場株、複雑な仕組み債
【保険(CDS):米国の金融機関】
保険契約(IFRS第4号)についても見直しの動きがある。保険負債の公正価値(時価)測定を進める考え方がIASB(国際会計基準審議会)にある。保険契約をすると、保険料見合いで、契約時の利率や死亡率をベースに保険負債を積む(ロックイン方式)が、この利率や死亡率を、毎年見直す考え方だ。この方法だと、金利が低下した局面では、保険負債が増大し、結果として、ソルベンシーマージンが悪化する可能性がある。CDSも原型は保険契約なので、その影響は日本と基準が同様の米国金融機関にも大きな影響を与える。現状は、議論が紛糾している模様 。
 方や、このIFRSの金融商品会計の見直し動向を注視しながら、日本においても、企業会計基準委員会(ASBJ)が“金融商品会計の見直しに関する論点整理”を公表しており、ヘッジ取引や持合い株式などに関する見直しの議論が進んでいる。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

最良執行義務について考える
2005年4月から導入されている“最良執行義務”に、ついて少し考えてみたい。
この制度は、金融商品取引法第40条の2に定められていて、証券会社(金融商品取引業者)等が、有価証券の売買及びデリバティブ取引の顧客注文を取り次ぐにあたり、“最良執行方針”を定めて、これを公表し、この方針に従って注文を執行する。また顧客に対しては、事前に“最良執行方針”を定めた書面を交付しなければならないが、注文執行後顧客が求めた場合は“最良執行方針”に従って執行された旨を説明する書面も交付しなければならない。
 対象となる取引は、金融商品取引法施工令第16条の6に、有価証券の売買(上場株(新株予約権付社債を含む)の売買・店頭売買有価証券の売買・取扱有価証券の売買)とデリバティブ取引であり、銘柄毎に最良執行方針を定めなければならないとされている。
 なかなか大変であるが、証券会社は市場仲介者として、顧客に対して、その注文を、顧客の為に最良の取次ぎを行う義務を負っているという当然のことだ。では一体新たに法律で定めなければならないような弊害が何かあったのだろうか。
結論は、あったかも知れないが、分からないということだろう。同一銘柄を複数の取引所やECN(日本のPTSに相当)で取り扱う米国では、あったことが証明され、同様の制度(レギュレーションNMS)があるが、取引所間の銘柄取引情報を比較する情報提供システムも、投資家に提供されているので、最良執行しない弊害は分かりやすい。
 日本に於いては、この制度導入後に、“最良執行方針”を定めた書面を事前に交付しなかったり、“最良執行方針”に定めた市場とは異なる市場へ誤って取り次いだ事例があるが、注文執行が投資家にとって最良になっているか、若しくは最良執行に向けて投資家がメリットを受けるような改善点があったか分かり難い。実際の“最良執行方針”を見てみよう。(野村証券の概要)
【対象となる有価証券】
・上場株、新株予約権付社債、上場投信(グリーンシート、フェニックス、取扱有価証券(証券業協会が勧誘を認める有価証券)は取り扱わない)
【執行の方法】
・顧客が指定する取引所への取次
・PTSには取り次がない
・複数の上場市場がある場合、流動性が高いと定めた市場(別途リストあり)
・顧客が店頭取引を望んだり、上段のリストの市場と異なる市場を指定した場合は、そちらを優先
・投資一任契約、累積投資、単元未満株買取りは除く
と当然の事が書いてある。
こう見ると、現在の日本に於いては、最良執行義務が余り有効に活用されていないようにも思えるが、本当にこの様な最良執行対応で良いのだろうか。
 例えば、野村はFX取引を顧客向けに提供していないので、以上の内容でも良いのかもしれないが、FX取引はデリバティブ取引であり、本来は店頭取引で金融商品取引業者が顧客注文に向かわない限り、他の業者か、取引所(東京金融取引所か大証)に注文を取り次ぐ。この場合、どういった取次方法が最良執行になるのだろうか。
 また、機関投資家などの債券取引などで、複数の業者に対して引き合う取次を業者が行った場合、この取次行為で、最良執行はどう担保されるのだろうか。
 せっかくある最良執行義務規定なので、投資家(含む機関投資家)の為に有効に活用したいものだ。
(蛇足だが、最良執行方針を盾に、ファニックスやグリーンシートと取り扱わないというのは、業界の雄(野村)として好ましくないと考える。)

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

銀行の証券業務
2年前の9月30日に、それまでの証券取引法が改称され金融商品取引法になってから、証券会社という言葉は根拠法的には金融商品取引業者になってしまった。それまでの証券も、そうでない者も、法律上は金融商品を取り扱う業者なら、皆金融商品取引業者である。多少厄介なのは、銀行に対しては、預金を預ったり、お金を貸しているという優先的な地位の濫用を防ぐ為に、原則的には法第33条第一項において有価証券関連業を禁止しているが、登録金融機関という名目で、株式及び株式関連のデリバティブを除いて“証券業務”を認めている。つまり、銀行の窓口で、投信以外にも国債・社債などは登録金融機関として販売して良いのである。
では、銀行の子会社なら“証券業務”を何でも行うことは出来るのか。結論は、原則出来るが、親銀行との顧客情報のやり取りは、ファイアーウォールという壁で管理されている。その壁も、今年6月から法人情報に関しては垣根が低くなり、また親銀行の役社員が子証券の役社員を兼務出来るようになった。ファイアーウォール規制の緩和である。
 ここで、銀行及び銀行子会社の証券業務に関して少し整理しておく。銀行の主な証券業務は以下の様になっている。
1993年 子会社方式で国債・社債を取り扱うことが認められる。
1998年 投信の窓販解禁、持株会社方式で証券会社保有を認める(銀行の兄弟会社)。
1999年 銀行の証券子会社に対して株式取次業務を認める。
2002年 銀行・証券の共同店舗を認める。
2004年 銀行による証券仲介業を解禁。
2009年 ファイアーウォール規制緩和(役職員の兼務・法人情報の共有)
なお、顧客情報の共有に関しては、銀行は子会社(若しくは兄弟会社)の証券と共有する為には、顧客個々の情報共有に関する同意書が必要だったが、法人情報に限り、顧客企業が拒否(オプトアウト方式)しない限り共有することが可能になった。また、役職員の兼務解禁から、銀行員の営業マンが証券の営業も兼ねることも、法的には可能だ。(実際は、チャイニーズウォール・顧客との利益相反防止措置の構築が必要)
では、銀行は法人情報を顧客と共有して、何のビジネスを行いたいのだろうか、推測してみる。
A:M&Aに関連したビジネス(TOB、MBOなどを含む)
B:社債や株式、場合によって劣後調達など、ローンとは異なる企業のファイナンス
C:有利な運用(金融)商品の提供 等が考えられる。
Aについては、M&Aアドバイザーだけなら銀行の付随業務として4年前から可能になっており、別に証券の専業業務ではない。しかし、上場会社が関わる時は、TOBなど株の決済に係る業務は、証券でなければ出来ない。Bに関しては、企業の資金調達において、顧客企業のニーズにもよるが、ローン対応より、資本・劣後調達の方が収益性が高い。Cに関しては、金融商品の品揃え豊富な外証の証券仲介業でも良いと思うが、証券仲介業は、顧客口座を仲介元の証券に作らねばならず、顧客資産がグループから流出する。
これらは、銀行業務における収益性を高める為には必要なビジネスとなってくるのであろうが、A~Cまでよく考えてみると投資銀行業務である。
メガバンクの中には、明確に投資銀行宣言をしているところもあったが、いずれもファイアーウォール規制緩和を機に、証業業務の中で投資銀行業務(最近は余り明確に言わなくなったが)を強化して、収益性を高めるという10年来の戦略である。この事は、日本のメガバンクがグローバルな競争力を付けていく為に、必要なことである。また、投資銀行業務の収益性の要諦は、やはり投資と融資が複合するレバレッジにある。欧米主要銀行は、この膨らみ過ぎたレバレッジを規制する方向にあるが、日本のメガバンクとして、子会社の証券にどの位レバレッジを掛けさせるかが、グループとしての収益性を左右する。
 折しも、今週末の金融サミットで金融規制強化が強まるだろうが、メガバンクは、自らの証券業務=投資銀行業務を推進する契機を見定めていただきたい。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

今、改めて考える金融システム改革としてのペーパレス
 金融危機は一服したはずなのに、銀行株指数のトレンドで見ると、再び3月の安値に向けての下方トレンドにも見える。また、先月から始まった金融審議会での議論では、マクロプルーデンスという言葉が躍っているが、これは個々の金融機関の破綻を防ぎ投資家や預金者を保護することを目的にしたミクロプルーデンス政策から、金融システム全体に危機が及ぶことを防ぐ政策への転換を意味するようだ。政策的には、グローバル金融危機の原因となった金融機関に対する欧米金融当局の規制・監視強化があり、これに日本の行政も合わせる部分も多くなり、日本の金融機関の負荷が重くなる可能性もある。コア自己資本強化・金融商品会計などの影響も懸念され、株価が下落しているのは、何も大臣発言や新政権への不安ばかりではない。日本の金融・資本市場競争力強化の取組みをここ10年近くしてきて、欧米に比べて遅れていた証券化・ファンド・取引システムなど、追いつくのに良い機会とも思えるのに、欧米の金融当局動向に流されて、規制強化一辺倒では勿体ない時期ではないだろうか。国家戦略局においても、グローバルな金融システム戦略を進めることは、結果として生活者(預金者・投資家)重視に繋がる視点を、お持ちいただきたい。長い前置きになったが、では今までの金融システム改革はどうなのかというと、その成果はこれからといったところだろう。初回は金融システムのインフラ整備としてのペーパレスについて考えてみたい。
 ペーパレスは、本年1月からの株券電子化をもって完了したが、おおよそ日本の中で自由に流通する有価証券は、完全にデータ化され、証券保管振替機能において一元的に管理された。
2003年3月からのCP(短期社債)で、17兆円5,214銘柄(8月末)
2006年1月からの社債で、243兆円69,256銘柄(8月末)
2007年1月からの投資信託で、108兆円6,057銘柄(8月末)
2009年1月からの株式で、3,989億株3,784銘柄(8月末)
のデータが集められており、日々の決済も完全にデータ対応でなされる。
現在では、有価証券の決済インフラとして先進国でも最も進んだ決済システムとなっている。
例えば、取引所が時に発表する日本の株主数延べ4000万人に増加したということに関して、実は日本で株主を保有する人が4000万人もいる訳はないが、では一体何人が株式(現状は公開株式のみ、グリーンシート株が含まれない)を保有しているという事が分かる。答えは、8月末で1,509.2万人で、意外と多くいることが分かる。仕組みは、完全ペーパレス化された株式は、証券会社や金融機関の口座(特別口座を含む)にデータ保管されるが、当然一人で複数の証券や金融機関に同一の株式を預ける場合もある。この延べ数が2336.6万人で、同一人を名寄せすると先の数字となる。
この事は、決済事務の効率化に留まらず、有価証券に関する諸々のデータが、証券保管決済機構に集約されており、そのメリットも活用した有価証券に関するビジネス拡大の可能性を示す。
【株式】
決済期間の短縮(現在T+3)は、もはや証券や金融の実務体制とそのIT対応の段階まできている。また、決済が完全に電子化され、加えて担保区分も明確化しデータ管理されたことにより、他の電子化された有価証券も含めて、投資家サイドの担保活用(証券・金融からみた担保サービス)増加効果が期待される。更に、レンディングなど株券の持つ機能を投資家が活用しやすくなってもいる。
【投信】
 証券保管振替機能には、公募された国内発行の6000以上の投信につき、その内容がデータとして管理されている。この投信内容のデータを分析・分類すれば、投資家が同様の商品内容の検索し比較することも可能になる。また、その様な投信内容の情報と時価情報がセットで投資家に提供されれば、解約や買取請求だけではなく、投信そのものを売買することも容易になる。
【社債】
 社債の流通市場の整備は常に言われているが、5.5万銘柄以上の私募債を含んで約7万銘柄の社債要項等のデータが、証券保管振替機構には整備されている。社債に関するデータはあるのだから、機関投資家が情報にアクセスできることと売買システムが整備されれば、社債の流通市場整備が可能となる。

以上、ペーパレスの効果を活用していくことは、業界の責任において進めるべきことであり、その進捗があってこそ次の前向きな金融システム改革が要望できる。

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金融商品としての排出量取引
政権ネタはかり追うのは本旨ではないが、新政権は2020年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを1990年比25%削減する高い目標を掲げた。これに対して、17日に日経に掲載された新日鉄会長のコメントは、無理な削減目標では、生産拠点を海外に移さざる得なく雇用も減り、また中国やインドなど新興国を利するだけだと、相変わらず強い抵抗を示している。しかし、民主党は、日本でもキャップ&トレード方式による実効性のある国内排出量取引市場を創設することを政策として公表している。
 ここで、金融商品としての排出量取引の概要について、少し整理して考えてみたい。
排出量取引は、金融商品取引法において金融商品として定義付けられている。また、金融商品である以上、金融商品取引所において上場及び取引が可能であることが、排出量取引市場拡大にとって必要であるので、東証の事業計画にも、排出量取引市場創設への検討という項目が、2年連続で盛り込まれている。
また、日経・JBIC排出量取引参考価格では、1トン当たりのCO2は、1751.6円(9月14日)となっている。この排出量取引に関して、金融的視点で見直すなら、それは実際の経済活動によって発生するCO2など温暖化効果ガスの削減枠に対するデリバティブ取引と見なすことが出来る。加えて、この金融商品は、通貨の様な性格をもっている。それは、国際的に流通する通貨もあれば、国内で主に流通する通貨、そしてある特定の地域にしか通用しない地域通貨・・・イメージとしては、この仕組みに近い。
【国際通貨としての京都ユニット】
全ての排出量取引のベースになる仕組みだが、以下の4つに通貨の呼称及び取扱い可能者が分かれる。(但し、単位は1t当たりのCO2量)
AAU(Assigned Amount Unit):京都議定書に参加した先進国に割当てられた排出量枠。取引は国のみ。
RMU(Removal Unit):森林拡大部分など加味して、追加した排出量枠。取引は国のみ。
ERU(Emission Reduction Unit):主に東欧やロシアなどに割当て枠で、省エネなどの削減プロジェクト(JI)を実施すると与えられる。個別企業も売買することが可能。
CER(Certified Emission Reduction):主に発展途上国に割り当てられた枠で、個別企業の削減プロジェクト(CDM)に対して与えられる。個別企業も売買することが可能。
※ERUやCERは、例えば火力発電所に代わりに水力発電所を建設したことによるCO2削減予定枠を売買するということになり、京都クレジットと呼ばれる。実際の売買は、CDMによるCERが多い。
【欧州通貨としてのEU-ETS】
 2005年からスタートしているEU域内の排出量取引EU-ETS(European Union Emission Trading Scheme)は、EU域内の大企業の発電所や工場など1万ヶ所以上に対して、温暖化効果ガスの排出量枠を割当るキャップを行い、それを取引するトレードを行わせている。キャップを適用された企業は、必要に応じて排出量EU-ETSを売買するが、それ以外にもトレード主体の業者の売買も認められている。この制度のポイントは、上記の国際通貨である京都ユニットと、このEU-ETSが交換可能な仕組みとなっており、EU-ETS取引の影響が京都ユニットに及ぼす影響も大きい。
【日本の制度:国内排出量取引制度】
 日本国内においてのCERを中心にした京都ユニットの輸入やそれに伴う売買は、電力会社や業界団体の実需をベースに、商社や排出量取引仲介業者も参加して、店頭取引(OTC)で行われている。国内通貨の状況としては、環境省・経済産業省中心に試行的に行われていたが、昨年10月より国内クレジット制度が始まり、以下の概要となっている。
・参加主体:事業所・個別企業(トレード主体の金融機関も可能)・鉄鋼及び自動車の業界団体
・取引対象:今までの試行制度で交付された排出枠、京都ユニット、“国内クレジット”
・国内クレジットについて:この制度に参加する企業が自主的に削減目標を設定、不足が予想される部分は、中小企業などの削減プラン(大企業が技術・資金支援=このプランは政府の委員会が承認する必要がある)を国内クレジットとして購入し、削減枠を達成する仕組み。ちなみに、国内クレジットについては、7月までに約1600トン分(約280万円分)が承認されている。(省エネ法により、削減目標を求められるものは、2010年4月からは、年間のエネルギー使用料1500klの事業者が対象となることが決まっている。)
 現在は、欧州でのキャップ・アンド・トレードとは程遠く、取引所の必要性は見いだせないが、民主党による実効性のある政策で、強制的に削減枠を割り振るキャップ・アンド・トレードが実施されれば、多くの排出量取引需要が生まれる。京都ユニットにおけるCERの様に、国内クレジットも大手企業の削減目標に沿って中小企業が温暖化効果ガス排出量削減に参加することは、中小企業の技術・経営改革にも繋がるので重要な仕組みだろう。しかし、それらの有効にするためには経済効果が明確になる市場原理を使うべきだし、その条件として国内クレジットと国際通貨の京都ユニットの交換を円滑化する仕組みも必要だ。そうすれば、一律の温暖化対策税に頼る必要がない排出量取引市場が、日本に生まれるかもしれない。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

新大臣に業界が望むべきこと
 新政権が確定した9月に入っての株式市場で、米国や中国などは景気回復基調を織り込み始めたのに比べ、日本の市況が何とはなく力弱く感じるのは、新政権への不安があるのかも知れない。
 しかし、いよいよ16日から民主党政権が発足し、亀井氏が郵政民営化・金融行政の担当大臣に起用されると報じられている。予算執行への対応などから、どうも今までより政治家(民主党)主導で行政がおこなわれそうだと市場は感じ始めており、また政権の状況や民主党のスタンスから大臣任期も長くなるかも知れない。つまり、業界にとって亀井新大臣による金融行政が、今後4年近く続く可能性を、明確に認識しておく必要がある。 
 一部には、亀井新大臣の郵政民営化に対する姿勢を不安し、また民主党の大企業には厳しそうな姿勢を懸念する見方もあるが、大手金融機関への行政関与が厳しくなりそうなのは、グローバルでみても金融危機再発防止の視点では避けられない。むしろ、業界としては、大手金融機関のビジネスに関与する部分が大きいグローバルなルールや基準作りにおいて、日本の金融・資本市場強化を目的として、戦略的に関与する部分を強化し、方や中小企業向け融資返済猶予だけではなく、中小企業も成長企業なら利用できる資本市場の整備等を、進める施策を早急に政策提言していくべきではないか。
【グローバルな金融・資本市場の基準作りに関する戦略】
・新BIS規制において、グローバルに活動する金融機関の自己資本規制が強化されることがG20で決定されているが、普通株を中心にしたコア自己資本規制に動きが欧米当局中心に強まっている。既に公的資本注入した欧米金融機関に比べ、優先株等の比率の高い日本の金融機関には不利になる可能性があり、この基準づくりにグローバルな金融競争力戦略として、積極的に関与して欲しい。
・IFRS(国際財務報告基準)への早期適用は既に金融庁から示されているが、金融危機によって現在IASB(国際会計基準審議会)では、金融商品会計に関する見直しも進めている。金融商品区分では、金融機関の国債保有や企業の持合い株、時価問題(IFRSでは公正価値という)では欧米金融機関が多く保有する証券化商品、また保険契約の時価測定の問題もある。これらは、当然ではあるが日本の企業に大きな影響を及ぼす。
・民主党政権は、温暖化ガス25%削減政策を進め、排出量取引についてはキャップ・アンド・トレードの市場整備を唱っている。欧米に比べ、相当遅れている排出量取引市場の早期創設を後押していただきたい。排出量取引は金融商品として既に定義付けられているが、グローバルな取引とリンクし、かつ他の金融商品(含む電力量取引や天然資源取引)と相関しあう整備なされれば、日本の金融市場の機能も充実する。その為にも、年末に予定されているCOP15(国連気候変動枠組み第15回締約国会議)に向けて、排出量取引市場整備を、炭素税議論とは切り離し進めていただきたい。
以上、グローバルな金融の基準づくりは、国益として関与強化を提言していくべきと考える。
【中小企業が便益をうける金融・資本市場の整備】
一方、中小企業向けには救済型の政策も必要かもしれないが、成長支援型の政策も期待したい。
・中小企業基盤整備機構や地方自治体中心に、地域ベンチャー・ファンドが整備されてきているが、この中から成長企業をピックアップしていく仕組みとして、ファンド間でベンチャー企業株式を売買したり、ファンドそのものを売買するプロ市場があっても良い。
・エンジェル税制活用を促進する為、経済産業省と共同で対象企業やファンド売買の仕組みを整備してはいかがか。
・金融行政としては、新興市場改革やグリーンシート市場整備など、中小の成長企業が活用できる仕組みには、当然注力して欲しい。(多くは、業界自体の責任ではあるが)
【生活者視点の金融機能の整備】
日本版401Kの一層の促進の為に、主婦や公務員も参加させれば参加者は一ケタ増加し、国の制度として定着する。また、既に導入が決定されている日本版ISA(少額投資優遇措置)の取組みを着実に進めることも、業界として要望すべだ。チャイルド・ファンドなどの考え方も、民主党政策に合うかもしれない。業界としては、証券優遇税制廃止(既に日本版ISA導入を前提に、2012年には廃止予定)に怯えるのではなく、金融一体課税推進の流れの中で、生活者視点の要望を強く行うべきだろう。
以上のような事が、金融行政として取り組んでいかれるなら、業界としては、郵政関係の民営化案件IPOに頼らなくても、業務の拡大に取り組んでいける。

TOBの風景
 TOB(Take Over Bid:公開買付)は、個人投資家にとってはIPOとともに関心の高いテーマである。
それは、通常のTOBの場合、時価(半年若しくは3カ月の平均株価を指すケースが多い)の3割程度プレミアムが上乗せされて公開買付価格が決まる事が多いので、株主や投資家にとって、TOBに関する話題は、注目せざるお得ない。それだけ投資家の関心の高いTOBに関する証券会社の現場の対応について少し触れてみたい。(ちなみにTOBは、実質的に証券会社でなければ実務業務を行うことが出来ない。)
【スタート:目的探し】
 TOBは、あくまでも株を大量に集める手段(原則発行済み株数の5%以上、以降3分の1、過半数と適用除外規定が狭められる)なので、証券会社は企業やファンドに対し、その大量に株を買い集める目的を提案し、また相談にのる。その目的とは、M&AやMBOなどがほぼ全株式を集めようとする買収案件から、業務提携を強化する為の資本提携、企業救済型の増資とセットになったもの、また大株主の売却意向に自社株取得で対応しようとするものなど、資本政策や大型の投資に関わる様々なケースがある。
【ローンチ:具体化へ】
 TOBは、買い手の行為なので、その目的に沿って売り手(既存の大株主)や企業経営者と大まかな合意が必要となるが、アドバイザーとして証券会社はその仲介をお膳立てする。買い手と売り手場合によっては企業経営者との正式な交渉スタートは、基本合意契約書からローンチ(実務的開始という意味)する。
 この段階に入ると、TOBの実現性は高まるので、案件に関する情報は当然インサイダー情報として管理されなければならない。もっとも証券会社としては、買い手・売り手が具体的検討に入った段階から、これらの情報は法人関連情報として厳格に管理されるが、TOBに係る案件を進めるアドバイザーとして、他の関係者から情報が漏えいする可能性を排除する努力をする必要もある。
【案件進行のポイント】
 案件進行のポイントは、DD(デューデリジェンス=財務を中心にした精査)と公開買付価格の二つある。DDそのものは、買い手が会計系事務所を使って行うことであり、アドバイザーとしてはDD作業の為の支援をするということだろうが、実際のM&A案件では、このDDの結果で案件が消滅してしまう場合も多い。買い手としては、DDは当然の行為なのだが、売り手にとっては自らの機密情報を相手に晒してしまうので、そのリスクは高い。公表されていたローソンによるam/pmや三菱UFJ信託による日興信託の買収交渉は、この段階で白紙撤回されている。売り手側には、この段階では別のアドバイザーが指名されているのが通常だが、交渉決裂した場合の防衛措置として違約金を定めることが必要な場合もある。
 公開買付価格に対するプレミアムの目途も検討しておく必要があるが、単に株価算定書だけではない。買い手側の買収メリットと売却予定の大株主や対象企業の経営陣の考え方を調整しておくことは必要で、アドバイザーとしてその仲介を行うこともある。また、自社株取得などは財源が企業の配当可能利益なので、プレミアムが余り高すぎても問題があるし、救済型のTOBの場合は特定の売り手以外を排除する目的でマイナスプレミアムの場合もある。プレミアムに対するアドバイスは、市場の専門家として証券会社の重要な機能である。
【TOB実務】
 TOBそのものは、市場外での株式大量買付行為なので、株の受渡しができる証券会社の専任業務である。売却希望の株主の口座を設け、株式を受入れ、キャンセルにも対応し、時には株主からのTOBに関する問い合わせにも応じる。証券会社の機能をTOBの為に貸し出す訳だが、この対価に数千万円のフィーを課す事が出来るM&Aアドバイスとは独立したビジネスである。しかし、この段階になると証券会社内の関係者も増加するので、TOB公表まで、より厳格な情報管理が求められる。
【TOB公表まで】
 段階が進捗するに伴って関係者が増加してくるが、このTOBに関する情報は、証券会社内は勿論、関係する金融機関、印刷会社、会計事務所等での厳格な管理が求められる。アドバイザーとしての証券会社は、これら関係者にもインサイダー情報の管理の徹底を促す努力も必要だ。
 社内売買の管理は勿論、公表前に情報を限定された関係者以外にメールで流すようなことは決してあってはならない事である。
以上、しつこいくらいの情報管理徹底である。
誰が為の公開会社法
 会社は誰のものか、といったコーポレート・ガバナンス上の議論をする時、それは会社という組織内において権力を有する経営陣を牽制したり、短期的利益の追求から、組織にとって時に横暴と思える要求をする株主の行為を制限しようという意図が含まれる場合が多い。
 勿論、会社は株主を含むステークホルダーのもの(社会全体の)であろうが、公開会社の場合は、市場の機能を使って資金調達もするのだから、投資家という将来株主もこのステークホルダーに含める必要がある。
民主党の新政権になって新しい政策が注目されるが、マニフェストにはなかったものの政策INDEX2009には公開会社に適用される特別法として公開会社法の検討がある。目的は、公開会社の情報開示や会計監査などを強化し、健全なガバナンス(企業統治)を担保する為である。民主党には、公開会社法プロジェクトチームもあり、7月に纏められた素案が9月14日の日経では特集記事となっている。
 この素案は、日本取締役協会や経済財政諮問会議のワーキンググループで検討され2年前に纏められた“公開会社法要綱案(第11版)”がベースになっているようだが、元々の要綱案には、従業員代表が監査役会に参加する案はなかった。
ここで、目的としているコーポレートガバンンス強化の一連の動きについて整理しておきたい。
そのそも、エンロンやワールドコムの不正に限らず、日本でも、虚偽記載や偽装問題など明らかなる不法行為以外にも、大量の第三者割当増資や大幅な株式分割・併合など少数株主にダメージを与える資本政策などがあった。経営者の行き過ぎた行為を誰がチャックするのか、経営者が知らなかったという会社の歪みをどう修正するのか。
このコーポレートガバンンス強化に関しては、2つの流れがあったが、一つは開示の徹底、もう一つは経営や業務に関する監視機能の強化である。
【開示の徹底】
会社法上では、内部統制システム構築の基本方針の明文化義務付け(大会社)とその事業報告での開示。
金融商品取引法では、四半期開示・内部統制報告書の提出。
取引所開示では、適時開示(タイムリーディスクロージャー)の更なる徹底、コーポレート・ガバナンス報告書の充実。
これらの結果として、公開企業の開示負担は、ここ数年相当に重くなってきている。
【監視機能の強化】
・J-SOX法対応ということで、内部統制システムの構築を公開企業はここ数年求められてきた。
・M&AやMBOなどで、経営者と株主の利益相反が懸念されるような場合、最近は第三者委員会を設置して、外部意見書を公表するケースが増えている。
・社外取締役の独立性に関しては、機関投資家や海外投資家などから独立性強化を求める動きが強く、これを受けて上場規則改正の動きがある。
・監査役の監査機能強化については、大会社は半数以上の社外監査役が必要で、その監査機能強化の為にも、監査役選任への監査役会参加や監査スタッフの充実をするための上場規則改正の動きがある。
つまり、コーポレート・ガバナンスの強化に関する開示対応は、現在相当行われているし、監視機能の強化については、取引所の上場規則で対応しようとする動きがある。
 会社法・金融商品取引法・上場規則と確かに3つにわかれている事を、公開会社法として一つに取りまとめることは一見効率的にも思えるが、ことコーポレート・ガバナンス強化を目指すのであれば、今は最近取り組まれた諸々の施策の実効性を見極める事と、この6月まで議論されてきたガバナンス強化策を早急に取引所規則に取り込み実効性を上げる時期ではないだろうか。
 公開会社は、コーポレート・ガバナンス強化は勿論必要だが、企業として成長しなければならない。また、次のテーマとしてIFRS(国際財務報告基準)への対応も控えている。
公開企業のあり方について、常に議論していくことは必要だろうが、統合議論による混乱は、ステークホルダーが避けて欲しいと思うことでもある。

テーマ : 証券・金融関連業務
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投資銀行について
 投資銀行という言葉は、この一年多少使いにくかった。ベアー・スターンズやリーマンなど米国型投資銀行が金融危機の元凶とされ、高い報酬を求める貪欲さとともに、意外にもリスク管理の甘さが同居する矛盾を顕わにした。但し、欧米ではと断っておく。それ以前は、投資銀行という言葉の持つイメージは、金融機関にとっては、収益性の高い企業や投資家相手のビジネス、金融マンを目指す学生などからは、金融知識水準や報酬も高い憧れの仕事であった。
 そもそも投資銀行とは何か。企業や機関投資家を相手にするビジネスであることは間違いないので、証券会社的区分であれば、リテール業務に対してホールセール業務という大雑把な分け方ができる。しかし、業務内容に関しては明確な定義がないので、以下の業界で使われている定義だと、
A:【伝統的投資銀行業務】債券や株式の引受、債券や株式など金融商品のトレーディング、M&Aアドバイスなど
B:【拡大した投資銀行業務】証券化ビジネス、自己投資、ファンド関連ビジネスなど
となり、現在だとAとBを総称したものを投資銀行業務と呼ぶのが一般的になっている。
 Aの部分は、証券会社内ではホールセール部門として、企業や機関投資家との良好な関係を基に、ここ数十年ビジネスをしてきているが、Bの部分は、この10年で急拡大した部門であり、自己投資部門は他の部門との利益相反リスクもあるので、組織的には分離している場合が多い。
 今回の金融危機で問題となったのは、欧米投資銀行のB部分の業務でのレバレッジが高くなりすぎ、証券化商品が流動性を失った瞬間に、一気に破綻まで追い込まれた。また、この部門のマネージャー・クラスの報酬が、一般の感覚では異常に思える程に高かったこともあって、金融機関の報酬規制の動きが欧米行政サイドで強まった。金融機関特に投資銀行の貪欲さを非難する動きは、グローバルに広まっている。この様な動向を受けて、嘗ての投資銀行業界内(欧米において)では、Aの伝統的投資銀行に戻ろうという考えも出て、A業務のアドバイスを中心とするブティック型投資銀行を目指す動きもあるようだ。しかし、間違いなく言えることは、Bの証券化もファンドも、現在の金融機能の中で重要な役割を果たしており、重要でかつ必要な投資銀行業務であるということだ。又、レバレッジを掛けることが問題ではなく、レバレッジが管理されていなかったことが問題で、これは経営と監督の問題に集約される。
以上は、欧米でのことである。
 リーマンショック後一年たったが、日本ではその投資銀行に関する銀行と証券の考え方の違いから合弁解消の動きが明らかになった。三井住友FGは大和SMBCへの出資(4割)を引き揚げる。
 発表によると、当初三井住友FGは大和に対して銀・証一体化で投資銀行業務を強化する為、合弁の大和SMBCへ出資を増やすことを大和に提案した。確かに、投資銀行業務において引受でもM&Aでもメガバンクと組むメリットは大きい。また証券化や自己投資においても、後ろに金融資産や金融機能が控えている強みもある。欧米の投資銀行が再編と業務縮小を余議なくされている今こそ、周回遅れと言われていた投資銀行業務について、追いつくチャンスと考えるなら日本の金融グループの戦略としては当然の戦略だろう。
 一方、大和は金融危機の影響から、グローバルな金融行政は銀・証分離の方向に向かっているとして、自らの投資銀行業務に銀行の影響力が強まることを拒否した。投資銀行業務において、銀行の金融機能と組む場合、Bの証券化や自己投資のメリットの方が大きいが、このB部分のメリットが大きくなりすぎるとA部分への弊害も出始める。投資銀行内における利益相反の問題である。投資銀行にとって、顧客である企業や機関投資家のメリットを第一に考えていくなら、Bの部分が過大になることを避けねばならない。
これはこれで正しい。
 双方の投資銀行戦略が異なった結果の合弁解消だが、一方はここ10年来の欧米型投資銀行モデルを、一方は金融危機によって修正された投資銀行モデルを、其々目指すとし、相反した状況であり、今後の展開が注目される。

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業界ルール改正の小と大
 ルール改正の小というのは失礼かもしれないが、現場実務に即した微調整ということだ。そのルール一部改正(金証業等府令・投信法施行規則・定義府令・金商法等ガイドライン)が、9日に交付され即日施行された。改正内容は以下の様になっている。
①損失補てんの事故確認について、原則財務局の確認が必要だが、例外として原因が事故によりかつ弁護士等が代理する和解が成立していて、損失が1000万円未満の場合は、財務局による確認が求められない。金融商品取引法改正により金融ADR(金融分野における裁判外紛争解決制度)制度が始まるのに伴い、損失が1000万円未満の場合は、財務局確認に代わり、協会等のADR委員会の確認で済む。
②登録金融機関(株式以外の有価証券が取り扱える金融機関)における証券取引に係る総合口座貸越を以下の要件の下で可能とする。
・1月以内に完済するものであること
・累積投資契約に係る取引であること
・信用供与の上限額を10万円とすること
この制度を金融機関がどう使うか注目されるが、投信などを毎月定額購入する契約(一月10万円以内)をしていれば、一時的に口座に現金残高(若しくはMMF等)がなくても投信が購入されるといったイメージだろうか。
③現行制度上、投信目論見書の電子交付については、書面交付後5年間、投資家の請求に応じて電子メール等により交付することができる態勢を整えれば、常にホームページに掲載することは不要であるとされているが、投資信託の運用報告書・投資信託約款の電子交付について同様の規定を整備したもの
④業者が顧客の金銭・有価証券を管理しない取引(媒介など)についても、四半期の間に取引があれば取引残高報告書を交付することが義務付けられているところ、これを不要とするもの。これにより、有価証券取引を媒介したり代理取引するものが手数料を得ても、報告書交付義務は免除される。
⑤従業員持株会を通じた株式所有スキームのうち一定の要件を満たすものについて、集団投資スキームに該当しないことや投資信託及び投資法人に関する法律第7条に反しないことを明確化。
一方、大の方のルール改正(次期金商法改正等)については、例年通り金融審議会で議論が始まるが、金融危機の原因究明や影響を踏まえて、我が国金融・資本市場のあり方を考えようと基本問題懇談会が本年から設置されている。先月末から議論が始まっているが、そのポイントと思われる点を以下に紹介する。
【基本問題懇談会議事要旨より】
・証券化商品について、安易な組成を防ぐ為にオリジネーター(組成者)に証券化商品の一部保有を義務付けるとの議論があるが、それだけではファンドマネージャーの行動を縛れない点に留意。
・金融危機が急速に拡大した背景には、各主要金融機関のリスク管理手法は共通化していた。
・市場に多様な投資家が存在することが重要であり、長い期間で投資を行う投資家が増えることでシステムが安定するのではないか。
・流動性リスクへの対処法としては、市場参加者が市場全体で抱えているリスク量について情報を共有することが考えられる。
・金融機関が投資家の高い投資利回りの要求に応える動きとして、ヘッジファンドから売買注文を受けて取引の執行等を行うプライムブローカレッジ業務についても研究するべき。
・我が国でもファンドマネージャーの報酬体系について経済界等で従来から議論がなされてきたが、他人の資金を運用する場合、最終的な損失は投資家が負うことになり、どのようなインセンティブを与えるかはなかなか難しい問題
・市場型金融が拡大する下では、流動性リスク管理が重要となるため、レポ市場などについて整備を進めるべきであるほか、再証券化商品を始めとした証券化商品の格付けのあり方や、金融機関のリスク管理の方向性についても考えていくべき。
・規制のみでなく、格付けの手法などを含めた市場慣行について、市場関係者による改善が図られていくということが重要な視点
 勿論、金融危機後の日本の金融・資本市場整備をづしていくか大きな方向性は必要だが、それを実効性のあるものにしていく現場対応力の小さな努力は、業界に求められることでもある。

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証券会社として襟を正すべきこと
 最近は、証券会社等に対する行政のありかたもベターレギュレーション・プリンシプルベースと言われ、結果として規制強化への方向性が強まってきている様にも感じるが、ルールを遵守する側の証券会社にも、多少疑問符がつくような事もあるように思う。中には、明らかなルール違反もあるが、ルールには違反していないが、市況や経済環境から、若しくは投資家の立場から見て、好ましくないと思われる事である。
 これらの行為は、市場仲介機能をもち又市場への影響力も強い証券会社として、襟を正して対応すべきと考えるので、敢えて取り上げる。
【自社グループのファイナンス】
 野村総研(4307)のCB500億円発行が、転換価格(新株予約予約権行使価格)決定日直前の9月8日に中止された。中止理由は、本社債には格付けがされていないので、主幹事の野村証券が引受けられないことが判明した為という。発行会社の理由ではなく、引受会社選定の問題になってしまった。
 そもそも証券会社は、グループ会社の有価証券の引受主幹事となることが、弊害防止措置として金融商品取引法上禁止(法第44条の3)で禁止されているが、例外として
A:格付けを取得した有価証券(内閣府令第153条4号イ)
B:売買高もしくは時価総額が100億円以上のなど一定の条件を満たす上場有価証券(内閣府令第153条4号ロ)
については、主幹事が審査を甘くしたり、発行条件を歪めたりする問題がないとみられ、規制を適用除外されていた。つまり、格付けを取得した債券(CBを含む)か、株式の引受であれば今までも問題がなかった。少し問題が複雑なのは、本年6月から施行されたファイアーウォール規制緩和に伴い、上記AとBの規制に追加する形で、一定の人的・資本関係(直接保有で5%未満)を有していなければ、
・引受幹事会社として登録され
・引受業務に十分な経験を有していれば
例外的に許容されると項目が、内閣府令第153条4号ハに追加された。まさか、この項目をミスリーディングしたとは思えないが、上記規制のAとBは法律上そのまま残っている。
 何故東証に上場を予定するCBなのに、格付け取得をしなかったか疑問が残るが、CBの償還直前に会社側が強制的に買取り、新株発行し、その時の時価から見て新株が安ければ不足分を現金交付で補うことが出来る(会社側選択により)新しいスキームは、それなりに評価できたのに惜しい気がする。
しかし、引受中止は、株主・投資家にとって不信を招く行為であることを、引受証券会社は強く意識する必要がある。
 【自社のファイナンス】
 野村を書いたので、次は大和という訳ではないが、発行会社としての大和グループの対応にも多少の疑問が残る。マスコミにも大きく取り上げられた、三井住友グループとの合弁解消の動きであるが、業務提携見直しまで進むかどうか分からないし、会社側からの公表もない。しかし、7月に大型の時価発行増資を行っていて、この時期に報道されることに多少の違和感がある。加えて、格付け機関の格下げは8日に公表されている。ファイナンスも提携戦略も、そして格付け見直しも、一つ一つのことは、きちんと市場対応されていると思うが、全体の流れが悪い。せめて、情報開示を徹底していただく事で、業界の雄として市場に配慮されることを期待したい。
 証券会社でも、事業会社の一つなのだから、多くの問題や課題を抱えて会社は運営されていくのだろうが、一方で市場仲介者として、企業に対してコーポレート・ガバナンスの強化や適時開示の徹底を求める立場でもある。それが故の厳しいルール遵守姿勢は、プリンシプルベースでも求められているのではないだろうか。

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地方債の共同発行について
新政権になっても、地方の自治拡大の流れは変わらないだろうし、地方への財源委譲とともに地方自治体の地銀に頼らない資金調達能力の拡充も求められるだろう。その手段としては、地方債の機能整備が第一に上げられる。そして、何が地方債の機能整備に一番重要かという点については、筆者は流通市場整備だと思うが、まだまだ発行機能についても工夫余地がありとの地方債関係者(主に発行体や関連機関)の考え方も強くあるようだ。その中心になるのが、地方債の共同発行という考え方だ。
 会計検査院より公表される“会計検査研究”9月号に「地方債の共同発行に関する論点整理」が報告されているが、地方債の共同発行に関しては、共同発行市場公募地方債とこの6月に発足した地方公共団体金融機構(元々は公営企業金融公庫)が取り扱われている。このうち地方公共団体金融機構は、政府保証のない債券を独自に発行して、地方自治体の上下水道や交通など15の公営事業と地方道整備に貸し付ける機能なので、間接的に地方自治体の共同発行と言えなくもないが、地方自治が絡んで市場からは分かり難い部分もあるので、本稿では共同発行市場公募地方債について、金融市場的視点で取り上げてみる。
【共同発行市場公募地方債の沿革と実状】
・2003年4月に、27団体でスタート
・2009年度は、33団体参加で総額1兆3900億円(毎月1200億円程度の発行)
・直近の発行は、8月25日発行10年債(満期一括償還)応募者利回り1.54%=第77回共同発行債
[信用補完](地方債に対する“政府の暗黙の保証問題”は別にして)
・各参加団体が連帯債務を負う形で発行
・各自治体の減債基金の積立金の一部を募集受託銀行に預入れるファンド設定
[共同発行のメリット]
・発行ロットの拡大により流動性が確保しやすくなる。(少額発行の地方自治体に有利)
・信用補完により、信用力が向上して調達コストが低下する。
では、実際の流通市場でどうなっているか以下の状況となっている。(9月8日基準値複利利回りベース:地方債協会)
・第77回共同発行債=1.455%
・長期国債301回リオープン=1.324%
・東京都672回債=1.423%
・北海道平成21年6月債=1.571%
【共同発行市場公募地方債に対するコメント】
金融市場的視点でみると、地方債の共同発行スキームは地方債版CBO(Collateralized Bond Obligation:社債担保証券)と言えなくもない。しかし、CBOの場合は、引受業者が小口の発行ニーズを集約し各引受審査を実施した後に債券を組成するが、共同発行市場公募地方債は、発行体である自治体の共同発行連絡協議会自らがその組成を行う。また、共同発行する自治体の内、三分の一程度は格付を取得していないので、一般からみて格付け比較による利回りスプレッドを比較することが出来ない。
共同発行による地方債発行のメリットは十分に地方自治に活かされるべきと思うが、やはり市場機能を活用しようとするなら、市場基準に沿った対応の方が、投資家層を拡大しやすい。
共同発行の自治体間においても、自ら格付取得しディスクロージャーに注力するところは、単独発行での調達コストも低いので、共同発行調達コストが上回った場合の判断が問題になるようだ。そのことから、東京都そして2007年以降は福岡県・横浜市・名古屋などが共同発行を取り止めている。
地方自治体が自らの資金調達能力として地方債機能の活用を考えるなら、市場規律をもって市場に誘導するのは金融機関の勤めだとも思う。市場の自己責任原則が、各自治体の自治機能強化に役立つよう、業界としての努力も必要だろう。

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未公開株の売買について
 最近は取引所でも協会・金融庁でも、業界関連組織で“未公開株の売買”に関して注意を促すような場面が増えてきているように思う。今月1日からの消費者庁の発足もあって、消費者=一般の個人の方々の金融商品被害増加に、業界が多くの注意を払っている。そして、その被害事例の中でも未公開株売買に関するものが多い。“上場予定があり、上場時には値上がりが確実である”といった投資勧誘だけではなく、最近は、手持ちの未公開株を買取るといった売却を促すものまであり、中には証券取引等監視員会を連想させるような名称を騙って、投資被害の仲介手数料や報酬まで要求するものもあるようだ。
 勿論、これらは登録された金融商品取引業者の行為ではなく、詐欺的行為の悪徳業者が行う犯罪であり、業界としては、これらの行為を排除する努力を最大限に行っている。
 しかし、業界としては、これらの行為の背景にあることにも配慮しなければならない。“未公開株の売買”→“株式公開(IPO)への期待”について、個人の方々にも強い関心があり、その関心に業界として“未公開株の売買”に関する対応が不十分なのではないか。“未公開株の売買”について、少し整理してみる。
【未公開株の売買に関して】
・未公開株といえども、売買することは当然可能であるが、増資に応じる新株取得の場合は、発行会社と増資契約を結ぶし、他の株主から取得する場合も、殆ど譲渡制限が付いているので、発行会社の承認が必要となる。これらの株式取得は、発行会社・譲渡人の株主と相対で行う経済行為。
・上記の行為に、金融商品取引業者(第一種)は原則として勧誘することが金融商品取引法上は出来る。
・しかし、しかし実際は日本証券業協会の規制のよって、協会員である金融商品取引業者は、例外の除いて未公開株の売買を勧誘することが禁じられている。未公開株=店頭有価証券と定義されるが、協会員に許される未公開株の売買に対する例外とは、
○勧誘相手が適格(金融商品取引法上で認められた)機関投資家の場合
○売買対象銘柄がグリーンシート銘柄・フェニックス銘柄(上場廃止銘柄からの移転)として登録されているもの
○上記の勧誘行為を行う場合、会社内容説明書(有価証券報告書に準じて作成されたもの)を投資家に交付する義務がある。
・つまり、金融商品取引業者でなければ、未公開株の売買勧誘は出来ないが、金融商品取引業者は協会ルールから、全くの未公開株はグリーンシート銘柄でなければ取り扱えない。
【グリーンシート市場について】
結論から先にいってしまうと、グリーンシート市場は、一般個人投資家の未公開株売買の場として機能を果たしているとは言い難い状況にある。
・現在69銘柄が上場されていて、PTS(私設取引システム)も稼働しているし、売買値・気配値も公表されている。
・しかし、同銘柄を取り扱う証券会社は14社のみで個人投資家との接点が限定されている。
・取り扱う証券会社は、部店ごとに取り扱う銘柄の気配値を、週一回以上の頻度で公表しなければならない。この事が証券の負担になって、取扱い証券会社が増加し難い構図になっている。(元々売買が少ないのに気配値表示だけでも負担感が重い)。他の証券会社では、取扱い有価証券のリストに入っていない場合も多く、取次さえも出来ない。
・結果、グリーンシート市場は一般個人投資家にとって余り馴染みのない市場になっている。
【個人の未公開株式売買への対策について】
・個人投資家が有望なベンチャー企業を自ら探して、直接投資することも不可能ではない。昨年から拡大されたエンジェル税制の対象となる企業を、経済産業省が事前確認制度として企業一覧を公表(現在30社)している。
・ファンドの活用による未公開株への間接的な投資。個人向けには、既に上場されているベンチャー・ファンドが2銘柄あるが、企業の成長段階に合わせた段階別投資や業種に的を絞ったファンドの組成が望まれる。(これらのファンド組成は機関投資家向けには既に行われている。)
・業界としては、一般個人投資家の背後にある未公開株への成長期待を取り込む必要があり、その為には現グリーンシート市場の抜本的改革が必要な事は、業界関係者なら誰も否定できない。
 個人の未公開株への関心を、ファンドや制度整備で応じていく努力こそ業界に求められている事である。

ヘッジファンド規制について
 週末のG20財務相会議では、金融機関の経営者やトレーダーなどの高報酬のマネージャー・クラスに対する報酬規制が話し合われるようだが、金融危機を二度と起こさない為に、不要なレバレッジや無謀なトレーディングを引き起こす金融マンの貪欲さを抑えるということだろうか。大手金融機関への公的資本注入や金融緩和政策で資金供給のメリットを多大に受けているので、これはこれで金融機関が受けざる得ない。
 しかし、G20でも金融サミットでも、ファンド(主にヘッジファンドと言われるが)規制を強化していこうとの動きが強まっていることに、ちょっとした違和感を覚える。
 そもそもヘッジファンドは、サブ・プライムローンやCDS・CDOなどの様に、今回の金融危機の一因だったのだろうか。確かに、金融危機に前後する商品相場の急騰・急落時に、その影響力が噂された時もあったが、そのことと金融危機は直接関与ない。また、ヘッジァンドはレバレッジを活用するが、それはレバレッジを付与する金融機関や取引相手の投資銀行の問題であって、金融行政面でみるとヘッジファンドは金融機関の取引先に過ぎない。
 それでも、4月のG20では、以下の様なヘッジファンド規制が提言されていて、2009年末まで各国金融当局が協力して情報共有を進めるとしている。
【G20:金融システムの強化に関する宣言のヘッジファンド規制部分】
・ヘッジファンドとそのマネージャーを登録する。(監督官庁が金融システムに与える影響を監督出来るような情報開示を求める)
・適切なリスク管理が行われる事を監督する。ファンドと運用するマネージャーが異なる国の場合にも、各国当局の情報共有によって効果的な監督が出来るよう情報共有メカニズム策定を2009年末まで行う。
(この週末のG20財務相会議で、この件に対する報告が行われる予定)
・金融機関のヘッジファンドに対する効果的なリスク管理を求め、当局がヘッジファンドのレバレッジを監視・エクスポージャーに制限を設定するメカニズムを検討する。
【ヘッジファンド規制を必要とする理由(当局者・識者等)】
①ヘッジファンドは、金融危機の主犯でも主役でもないが、危機を促進した可能性があり監視が必要。
例えば、解約が殺到したヘッジファンドのポジション清算により、市場の価格発見機能が障害をもたらしたとの指摘
②ヘッジファンドの取引が不透明、高いレバレッジを活用する可能性、ファンド運用者と投資家間の利益相反が生じる可能性が高いなど、ファンド実態の把握のし難さによる懸念
 筆者が違和感を感じるのは、①は、その市場参加者(市場運営者も含めて)自身の問題で、ヘッジファンドは、その一参加者。②は、やはり金融機関や投資銀行の規制で済むのでは思うからである。
現在でも、ヘッジファンドを含むファンド(金商法の場合、集団投資スキームの投資運用者)に対して既に各国の規制はある。
【日本】
・第二種金融商品取引業や投資運用業として登録制・最低資本金制。報告徴収や検査対象となっている。
【米国】
・登録制は導入されていないが、2007年にはSECによりファンドに対して不正禁止規制が導入され、またSECの要請で、登録投資顧問会社への移行が進んでいる。
【英国】
・ファンドが外国籍でも運用者が国内で業務を行っている場合、登録義務がある。最低資本制あり。
・FSAが大規模なヘッジファンドの運用者をモニタリングしていて、プライム・ブローカー(投資銀行側)もその対象としている。
 ヘッジファンドの行動特性としては、市場や制度などの歪みを活用して、それが裁定されたり解消する方向で、大きなポジションをとる事がある。まさか、その時の意趣返しとも思えないが、ヘッジファンド規制強化は、やはり良く分からない。
(例えば、ヘッジファンドの株式市場への空売りが問題であれば、現状のネーキッド・ショートの禁止と、大口空売りの証券業者への報告義務で済んでしまう。又、機関投資家と異なる投資行動をするヘッジファンドは、市場の多様性を確保する為にも必要とも思うのが筆者の私見。)

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平成22年度税制改正要望(証券業務関連)
 昨日、8月31日金融庁から平成22年度税制改正要望が公表された。新政権により、予算編成プロセスも変わるかもしれないが、証券業にとって税制改正は行政の方向性を確認する重要なイベントであることに変わりはない。金融庁による要望項目の内容を見てみると、以下のような税制上の措置の要望概要になっている。(証券業関連部分のみ)
【個人投資家の積極的な市場参加を促す環境整備(貯蓄から投資への流れの促進)】
○金融商品間の損益通算の範囲拡大
 金融所得として現行の証券税制の源流を辿ると、金融所得一体課税の考え方に至るが、2003年6月の政府税調中間答申において、「金融商品間の中立性を確保し、金融資産所得を出来る限り一本化する方向を目指すべき」とされ、具体的には以下の様な考えが示されている。
・金融所得を、勤労所得などと分離して課税する。
・金融商品の種類や所得分類にかかわらず同一の方式で課税する。
・金融商品から生じた収入の総計から、要した費用、生じた損失を控除することで金融所得を算出し、その金融取得に対して比例税率で課税する。
・全体の損失があれば翌年以降に繰り越し、金融所得のみと相殺する。
この金融所得一体課税の考えにそって、次の具体的事項を要望している。
☆金融商品間(上場株式、公募投資信託(株式のみではなく)、預金、債券、先物取引など)について、損益通算の範囲を拡大。
☆債券の利子所得と譲渡損の損益通算を認めるなど、現行の債券税制の見直し。
【海外投資家による我が国金融・資本市場への投資の促進】
○非居住者による債券投資に係る利子の非課税措置の充実
 我が国の公社債市場における海外投資家の保有比率は極めて低い。
非居住者保有分:国債=7.1%、地方債=0.2%、社債=0.6%(本年3月末ベース)
各国の社債の非居住者比率:米国=24.1%、英国=61.9%、ドイツ=27.7%
この最大の理由は、国内発行の社債について、その利子に対し15%の源泉徴収がなされることである。(海外発行の民間国外債については、平成21年度まで暫定的に非課税化)
また国債(平成11年~)・地方債(平成19年~)については、海外投資家分は非課税措置が既にとられているが、これも対象となる海外投資家が限定列挙されていたり発行体毎に届出なければならず、手続が煩雑との批判がある。この為、次の具体的事項を要望している。
☆非居住者等が受け取る社債等に係る利子についても非課税措置を導入すること
☆非居住者等が受け取る国債・地方債に係る利子について、非課税措置の適用手続を発行体毎ではなく振替機関毎(日銀・ほふり)に変更するなど簡素化し、非居住者の適用範囲も拡充して海外の年金基金が対象になることを明確化する。
【その他要望事項】
☆平成21年度の税制改正において導入が決定された少額の上場株式等投資の為、非課税制度の法制度上の措置の実現(導入は、譲渡益課税の軽減措置(10%)が終了する平成24年から予定)
☆支払通知書等の整備に係る所要の税制措置
☆上場株式等の特定口座への預入れに係る所要の税制措置
☆上場株式等の取得費の特例に関する所要の税制措置
☆上場会社等による自己株式の公開買付けに係るみなし配当課税に係る所要の税制措置
 以上の様な税制改正を有効にするには、最大の目的である個人資産の貯蓄から投資への流れを加速する為の実効性のある証券業界の取組みも待たれている。

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