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毎月分配型投信
 標題に書くのは、多少気恥ずかし。というのは、投資家にとっては興味あることかも知れないが、業界の方々には、何を今さら思われる位に一般化した売れ筋金融商品になっている。銀行などの窓販では、売れ筋になっている投信は、殆ど毎月分配型とも言われる。しかし、業界における変化若しくはその可能性に関して書くのが、本稿の目的なので、その視点で少し整理してみたい。
 先ず、毎月分配型投信の定義だが、運用する金融資産の利金や配当金及び値上がり益で投信資産が増加した分を、毎月分配することを基本にした投信というのが、一般的だ。
この毎月分配型の投信が、広く販売された結果として、9月末のファンド別投信残高において上位10ファンドの内、9ファンドがこの毎月分配型投信だ(1つは、隔月分配型)。残高1位は、今や毎月分配型の代名詞に近いグロソブことグローバル・ソブリン・オープンで、かつては5兆円以上の残高だったが、4.3兆と群を抜く運用資産であることは、変わらない。このグロゾブであるが、運用開始したのは1997年で、ちょうど日本での金融危機の時期であったが、それまでの投信のイメージとは異なり、信用度は高いが、利回りも日本に債券に比べて高いソブリン債(外国の政府や政府系機関が保証若しくは発行する債券)に投資し、その運用成果を基に毎月分配するということで、注目を集め、短期間に残高が1兆円を超えた事も、話題になった。
しかし、毎月分配型の投信に対しては、当初から以下の様な批判もあった。
・投信として運用成果を上げるには、債券で運用している以上、資産を分配せずに、複利運用を目指すべきではないか。
・外国物と言えども、債券運用ファンドにしては、手数料・信託報酬が高い。
・運用対象となるソブリン債の為替リスクが、投資家に認識されているか。
・運用資産が減少している時でも、一定額以上の分配を続けることは、タコ配ではないか。
今でもこれらの批判は残るが、FX取引の浸透で、為替リスク認識が一般化したり、金商法(含む金融商品販売法)で販売サイドのリスク説明義務も、定着していることもあって、今は批判の声も小さい。
 毎月一定額以上の分配金を想定する以上は、投資対象も高利回りの商品ということになるので、どうしても海外物に目が向かいがちになる。最近、TVインタビューに答えていた60歳前後の個人投資家のコメントが印象深いが、“日本の株は買わない。新興国の債券と株に全て投資する。為替リスク?だって長期でみれば、日本より成長するでしょう。”
 実際に月間(9月末)で二桁以上の運用資産を増加させている毎月分配型投信は、残高10位のDIAMワールド・リート・インカム・オープンの3760億円22.3%増、残高23位の野村世界不動産投信の2311億円70.4%増の海外REITに投資するもの。残高42位のブラジルボンド・オープンの1716億円33.1%増、残高43位の大和外国債券分散ファンドの1716億円20.6%増など成長国債券を中心に、投資するものが目立つ。海外REITや新興国債券では、利回りは7~8%物も多く、投資対象としては主流になっているが、最近は更に利回りの高い米国や欧州のハイ・イールド債(BBB格以下の債券)など、信用リスクを取ったり、ブラジル・レアルなど新興国通貨建てで運用する通貨選択型で、積極的に為替リスクを取っていく毎月分配型投信が、高い配当を出して人気となっている。
 現在では、投信の内、約6割が毎月分配型と言われるが、高い分配金による元本の毀損リスクや為替リスクを理解した上で、それでも毎月一定額以上の配当を期待する投資家が、育ってきているということだろう。例えそれが、年金資金の一部代替目的としても、彼らが新しい投資家層であることに、変わりはない。
 出来れば、その投資対象が日本のハイイールド債に向かって欲しいと思うのは、個人的が願望である。
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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

大証という市場機能
 先にお断りしておくが、銘柄を推奨するつもりは毛頭ない。上場企業なので、先に言い訳から入ったが、日本の資本市場機能を考える上で、どうしても議論は東京証券取引所および東京の金融機能を中心に行われがちだが、大阪証券取引所(以下、大証)には、重要な機能がいくつかある。
 その一つは、日本で最大の新興市場を有することになるという事だ。経営統合するJASDAQに関して、既に有しているヘラクレスとの市場統合のあり方についての方針を、10月27日に公表しているが、それによると、両市場は平成22年秋を目標に完全に市場統合し、市場名称はJASDAQにする。JASDAQ:884社、ヘラクレス・スタンダード:77社、ヘラクレス・グロース:74社、NEO:5社の合計1040社が、上場する新興市場が生まれることになる。市場構成は、
・JASDAQスタンダード:一定の事業規模と実績を有し、事業の拡大が見込まれる企業群
・JASDAQグロース:特色ある技術やビジネスモデルを有し、将来の成長可能性に富んだ企業群
の二つになるが、マザーズ市場の187社に比べ、企業数では圧倒する新興市場である。
その新興市場の機能としては、以下の点が検討されている。
○新規上場基準は現状並み形式基準、成長性評価に関しては外部有識者による委員会で客観性を確保
○問題企業に対しては、新たに“監視区分”を設置して、投資家への注意喚起を促す。更に、“監理銘柄”として、問題を取引所が審査中に企業に対し、上場管理料の割増措置。
○アナリストレポートの拡充・投資家向け説明会の開催・企業への会計・法務セミナーなどコーポレートサービスの充実
○新興市場インデックスの開発、ETF・デリバティブの上場
○リクィディティ・プロバイダー制度の見直し
○上場廃止基準の厳格化:ビジネスモデルの崩壊、低株価でマネーゲーム化の恐れ、浮動株時価総額基準の採用
なお、既上場のスタンダードかグロースかの分類は、企業からの申請をもとに、審査される。
現状では、新興市場間競争において、成長企業の東証一部上場指向を取り込んだマザーズ市場(マザーズ上場であれば、通常500億円の時価総額基準が、40億円に低減される特例措置)に、なお優位性があると思うが、大証には新JASDAQ整備において、具体的改革策を取り込んで、新興市場改革に尽力されることに大いに期待したい。
 もう一つの重要な機能は、デリバティブ取引所としての大証の役割だ。大証の中期経営計画(平成21年~23年)においては、“デリバティブを中心にグローバルに存在感のある取引所”の実現を目指すとしている。
最近の資本市場の規模に関する報道では、株式の取引額で東証が上海取引所に抜かれたとか、上場時価総額で日本株が中国株に迫られているという報道が、多くされるが、デリバティブ市場規模に関する日本の現状は、厳しい。世界の取引所における2008年の契約単位ベースの取引高比較(商品先物も含む)では、1位はCMEグループ(米国)で32.8億単位、2位はEurex(欧州・米国)31.7億単位、3位は韓国取引所で28.7億単位、以下6位にBM&F(ブラジル)7.4億単位、10位に大連取引所3.1億単位、13位に深セン取引所2.2億単位、そして大証は15位で1.6億単位となっている。エクイティ物の先物やオプションだけみても、大証は14位に位置している。
 大証取扱いのデリバティブ取引高は、年2割以上のベースで伸びているが、世界の主要取引所の規模には遠く及ばないのが現実だ。その為、大証は、中期計画で以下の強化策を表明している。
・海外投資家取り込みの為のリモートメンバー制度の導入、コロケーションサービスの拡大等(海外の取次金融機関に利便性を図るもの)
・海外取引所との提携による実質的な24時間取引の実現
・平成22年度上期に新売買システム(NASDAQ/OMX)導入による処理速度向上と売買制度のグローバルスタンダード化
・上場FXの導入(本年実施)
新興市場は、資本市場機能のベースになるものだし、デリバティブ取引増加は、金融サービスの新しい潮流だ。この2つの取組みを大証が行う意義と意味を、金融・資本市場関係者は良く理解する必要がある。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

ネット証券というビジネスモデル
 久しぶりに株式を売買してみると、随分手数料が安くなったと実感する。売買金額によっても異なるだろうが、平均すると0.1%程度まで下がっているのではないだろうか。勿論ネット取引であるが、この水準だと、株価の値動きの中に隠れてしまって、手数料負担は殆ど気にならない。将に、10年来の金融ビックバンによる規制緩和と、IT化進展の恩恵だと思う。
しかし、日本のネット証券ビジネスの現状は厳しそうだ。28日、マネックスとオリックス証券の経営統合が伝えられているが、野村も傘下のネット専業のジョイベスト証券を本体に統合する。ネット証券業界の動向をみると、更なる手数料引き下げ競争で体力勝負の様な動きもあるが、取引サービスの拡充に取り組むものもあり、利用者の利便性も随分向上している。FX取引サービスの拡充は当然として、CFD取引を導入したり、又システム売買(自動取引)機能を充実させて、投資家にサービス(一部有料)としており、中にはこんなことも出来るのかと感心させられるものもある。ただ、これらのサービス拡充の恩恵は、デイトレーダーと言わないまでも、限られた投資家(ネット取引のヘビーユーザー)に与えられてもので、この限定された投資家層の奪い合いという面を否定できない。今まで業界変化のメリットを享受してきたはずのネット証券だが、今後の生き残り戦略が新たに問われている。その新たなネット証券戦略モデルは、米国にある。但し、米国においては、ネット専業証券と言ったビジネスモデルは消滅している。
 米国でのネット証券戦略の流れが2つあって、取引(ブローカー業務)主体から資産管理型へのビジネスモデルの転換と、銀行業務を取り込んだ取扱いサービスの拡張戦略である。
【ネット証券の資産管理モデル】
 その代表が、チャールズ・シュワブであるが、収入面に占める売買手数料は10%台後半、金利収入を含めても半分以下だが、資産管理手数料は収入全体の4割以上を占める。シュワブの資産管理ビジネスの拡大は、名門資産管理会社のUSトラスト買収(その後バンカメへ売却)で富裕層向け信託サービスを取り込んだ事もあるが、一方で、銀行や証券会社に属していない独立系アドバイザー(Registered Investment Advisor)をネットワーク化して取り組む戦略の結果である。このRIAは、自らの顧客である個人投資家へ投資顧問業務を行うが、シュワブはカストディや注文執行・決済等のサービスを提供することで手数料を得ている。
他のネット証券も、このRIAをネットワーク化する戦略を取っているが、シュワブの特徴は、この独立系アドバイザーRIAの独立を自ら支援する独自のプログラムを持っているということだ。例えば、大手金融機関に所属するようなファイナンシャル・アドバイザー(FA)が、単独あるいは数人で独立しようとした場合、RIAとしての会社の設立準備・契約書等必要ドキュメンツの準備・金融商品情報や必要システムの提供など、独立前の半年から1年かけて支援を行う。
 このことを日本において考えてみると、現在は、IFAなど独立色の強いファイナンシャル・アドバイザーが、証券会社の嘱託となっているケースが多い。また、証券仲介業として、証券会社へ注文を仲介しているIFAもいるが、総じても、その数は多くない。日本のネット証券が、シュワブをお手本にするには、このIFAを、既存金融機関から独立させるところから取り組んでみると、新しい金融サービスの流れが出来るかも知れない。
【ネット証券の銀行業務モデル】
米Eトレードは、もはやネット証券という範疇ではないかもしれない。その収益構造をみると、5割以上を銀行業務に係る金利収入が占める。米Eトレードも、2000年にネット銀行テレバンクを買収し、個人向け住宅ローンを中心に収益を伸ばしてきた。
 こちらの方は、日本でも見慣れた戦略となっており、ネット銀行と既存証券の連携が相次ぎ、大和もネット銀行を作るという。ネット証券も銀行の代理店になれば、窓口で預金やローンを取扱いことが出来るが、ネット証券の生き残り戦略として、どう活用されるか、これから注目されるところである。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

消費者としての投資家保護の論点~とりあえず米国
 日本では9月から消費者庁が発足したが、今月22日に米国下院金融サービス委員会は、金融消費者保護庁を創設する法案を賛成多数で可決した。オバマ大統領もこれを支持し、今後上院へ法案審議が回される。この動向を受けて、米SECは6月から投資家助言委員会(SEC Investor Advisory Committee)を設置し、個人投資家保護の視点で、証券規制や業界ルール等の見直しを行う。7月のこの委員会の会合において、以下の9つの項目が当面の検討課題として上げられているので、そのポイントと日本に当てはめた場合、何が問題となるか、少し考えてみたい。
【受託者義務=Fiduciarty Duty】
個人の多くが、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)に依存して投資を行うが、個人投資家にとってFAは、ブローカーなのか、投資顧問なのか、その相違が理解されていない可能があるとの指摘。つまりブローカーは、金融商品を投資家に販売して手数料を得ることを目的としているが、投資顧問は、運用助言を受託した顧客資産を最も効率良く運用する義務を負う。例えば、同一の商品内容の投信とETFで、投信は販売手数料が掛かるが、ETFは比較的少額の売買手数料になる。ブローカーは投信の他の優位性をもって、個人投資家に薦めるだろうが、投資顧問は受託した資産の効率的な運用を目指さなければならない。この受託者義務の問題は、日本にもあるように思うが、金融商品のブローカーなら金融商品取引業であり、投資顧問を行おうとすると助言・代理業務になる。投資一任勘定(金商法の投資運用業)が認められたこともあって、多くのリテール証券では、第一種金融商品取引業と助言・代理業務、更に投資運用業を兼業するところが多く、SMAやファンド・ラップが投資顧問(助言)サービスとして提供されている。日本の個人投資家も、この法的相違を認識できる仕組みになっているのか。米国で、投資顧問業務の受託者義務が問題になっているということは、この業務とブローカー業務の兼業が、個人投資家にとって利益相反の可能性があるということだ。
【適切なディスクロージャー】
指摘されたディスクロージャー問題は2つあって、投資商品及び業者に関するものと、上場会社の持続可能性に関する開示内容の追加であるが、ここでは投資商品=投信に関するものを取り上げる。投信情報に関しては、以下の3つの開示を検討すべきとしている。
①ブローカーが手数料の高いファンドを進める可能性があることの開示
②ファンド運用会社から、証券会社等に毎年ファンド資産から支払われるコストの開示(販売促進費用を含む)
③401K適格商品のコスト及びそれが関係者間でどう配分されるかの情報開示
そもそも、これらを目論見書に記載したとしても、投資家にその目論見書が交付されるのは、約定後であれば、個人投資家の投資判断にこれらのディスクロージャーが役立っているのかとの指摘もあり、販売前の交付を義務付ける検討もされている。この目論見書交付タイミングの問題は、日本でも重なる。
――以下の7項目は、コーポレートガバンスとSECの個人投資家にとっての機能を検証しようとする問題と思えるが、日本に当てはめようとする場合、今後の具体的議論を待つ必要があるのではないかと筆者は考える。
【テクノロジー】
SECにおける個人投資家との情報の双方向性を改善する為、テクノロジーの活用。
【金融リテラシー】
金融リテラシーとしての投資家教育の定義と、SECの関与。
【資産評価の重要性についての投資家の理解】
個人投資家が、ファンドやポートフォリオの評価の役割を理解しているか。
【会社役員の過半数賛成投票による選任】
大企業以外の米企業の役員選任方法は、多数決によっているが、過半数賛成投票を強制すべきか。
【企業の経営陣と投資家のコミュニケーション】
コミュニケーションを効率的に行わせる方法の検討。
【議決権行使】
議決権行使プロセスの検証。
【SECの資源】
SECは投資家保護の使命を効率的に達成する為の資源をもっているか。

※IAC委員会報告の内容については、日本証券経済研究所、杉田浩治氏“米国にみる投資家保護についての当面の課題”を参考にさせていただきました。

テーマ : 証券・金融関連業務
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フェアバリューについて
この業界にいると、株式や債券などの金融商品取引のフェアバリューに関してよく聞かれ、フェアーバリュー=時価でしょうと、答えがちになるが、最近はそう簡単に考えてはいけないようだ。そもそも時価とは何かと聞かれる事も多いので、先にこれを答えておくと、証券会社の回答として一般的なのは、日本証券業協会の第三者割当の場合の“時価”に関する定義である。株の発行決議をする日から遡ること6ヶ月間の、ある一定時期の市場の終値平均を“時価”とし、この90%以上の発行価格でなければならないとしている。証券業協会ルールはあくまでも、仲介者である証券会社を拘束するものだが、税法などでもこの考え方が使われることがあるので、“時価”定義として定着している。時価の算定期間の決め方は、ある一定期間とあるので、6ヶ月間のどの時期をとってもよく、それが1週間でも3ヶ月でも構わない。
【自社株取得のフェアバリュー】
 この“時価”問題で、企業から一番多く問合せを受けたのは、自社株式取得時の株価に関するものであった。持合い解消や大株主から大量に株式を取得する場合(自社株TOBや立会時間外取引)も、資本政策で自社株取得を市場から行う場合も、会社は配当可能利益という株主が会社にプールしてある資金を使って、他の株主から自社株式を取得するのだから、不当に高く買取ることは許されない。一方、安すぎても株主から自社株を取得できないが、多くは持合い先や大株主が納得する株価水準でなければならない。
 よって、証券業協会のルールを基に、直前3もしくは6ヶ月の終値平均を時価として、数%のプレミアムを付けたケースが多かった様に思う。銀行などの場合は慎重で、直前株価を時価とし、若干のディスカウントで自社株取得価格としていた。
【会計制度のフェアバリュー】
 一方、株式や債券などの金融商品会計においても時価会計は進展してきたが、最近なにかと話題になるIFRS(国際財務報告基準)は、公正価値=フェアバリューで企業の資産を評価し、その変化額を収益として認識するという原則(プリンシプル)である。その公正価値に関する考え方は、時価で評価する事を原則にしていると思いこんでいたが、直近の金融商品に関するフェアバリュー=公正価値の考え方は異なっているようだ。つまり、金融商品の公正価値は、市場で取引されている市場価格の時価ではなく、保有者が、最も有利に取引できる市場もしくは取引方法で、評価・算定しようという考え方だ。
市場価格が消滅したような証券化商品を大量に在庫を抱える欧米の金融機関においては、致し方なく、この考え方は、金融サミット等の国際的な金融危機対応でも支持されている。勿論、最も有利に取引出来る市場の選択方法は開示され、経営者が責任を取るので、容易には変更出来ない。 
【TOBにおけるフェアバリュー】
 10月26日の日経には、9月に下された大阪高裁によるサンスターのTOB価格引上げ決定の特集記事が掲載されていたが、MBOにおける株式取得価格の公正価値=フェアバリュー決定の難しさを問うものである。元々、TOBにおける取得価格の決定は、投資銀行業務の中でも難しい仕事であり、単純に買い手・売り手の双方の株価算定書に記載された幅の範囲で、買い手・売り手が納得することでは、終わらない。
 TOB対象となる企業の経営者は、他の株主に対してもTOB価格決定の根拠と、そのプロセスを示さなければならない。特にMBOの様に、買い手に経営者が深く関係するような場合で、上場廃止からほぼ売却に追い込まれる株主に対して、時価及びプレミアムに対する考え方を、経営者として示す必要がある。
冒頭に上げた様な、形式的な時価に対する考えではなく、経営者が自分で判断する時価が必要なのだというのが、大阪高裁の決定で示されたことではないだろうか。(実際にMBOの検討期間は、1年以上に及ぶ場合が多い)(また、大阪高裁の決定したTOB価格自体には、多くの議論が生じていると思う。)

この様に、金融商品のフェアバリューに関する考え方が、難しくなってきている今こそ、業界のフェアバリューに関する見識が、投資家・企業の両サイドから求められている。

テーマ : 証券・金融関連業務
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業界に於ける取引関連情報の取扱いに関して
額面100円の仕組み債で、8円も抜いた(仕入れ価格と販売価格の差)と営業マンに聞いた時は、そんなことを機関投資家相手にして良いのかと一瞬思った。しかし、話を聞いてみると、20年債の○○リンク債なので、例えば想定利回り8%の物を、7.6%でも顧客に納得いただいて購入していただいたものだと理解し直した(話を単純化している)。この様に、取引に関する情報は、伝え方や取扱いの仕方によって、投資家の信頼を得る事もあれば、逆に失ってしまう事もある。
現在、業界内に於いて実際に議論され始めていたり、また何らかの問題が発生していたり、あるいはその可能性があると思われる業界内の取引関連情報について、少し考えてみたい。
【株式関係】
米国で問題になったフラッシュ・オーダーの様な仕組みは、日本にはないので、取引情報に関しては、リアル・タイムで個人投資家でも入手することは容易で、何の問題もない。しかし、株式を貸し借りする情報に関して、改善の余地があるように思う。現在は、制度信用の貸借銘柄情報・信用取引全般を集計した信用銘柄情報があるが、この部分は、全体の日本株の貸し借りの5~6分の1程度に過ぎないと見られている。銘柄を大量に保有する機関投資家は、現金や流動性のある債券を担保にとり、外証などを通して、海外のヘッジ・ファンド等に株式を貸し出すレポ取引がある。日本株の貸し借りの相当部分を占めるレポ取引の情報に関しては、個人は知る事は出来ない。
一方、昨年10月から始まっている空売り規制において、発行済みの0.25%の空売りポジションを保有した者に対して、日々の報告義務を課しているが、この情報は取引所で公表される。しかし、開示されている報告書様式が証券会社毎まちまちで、全体像を把握するのは難しい。せめて、銘柄毎集計を公表するのであれば、投資家によって有意義な情報となるかも知れない。
【債券関係】
 債券取引は、殆どが相対取引なので、国債以外の取引情報の共有が難しいと思われていた。社債市場改革の為のワーキングにおいても、社債市場発展の為には、この取引情報の共有問題が取り上げられている。
 現在、社債の取引情報に関しては、20社の証券会社へのヒアリングベースで、日本証券業協会が、公社債店頭売買参考統計値(個人向け社債は、10社ヒアリングの個人向け社債等の店頭気配情報)があり、日々公表されている。集計の労を取られている協会には敬意を表したいが、これらのデータは証券会社や債券投資家にとって、取引の為の情報として、有効と見られていない(筆者は、格付けマトリックス別の集計された利回り情報など参考になると思うが)。それは、何故か考えてみたが、2点ある様に思う。一つはこの情報が、あくまでもヒアリングベースであって実際に取引された債券価格でないこと。二つ目は、毎日の集計ではあるが、取引時に必要なリアルな情報ではないこと。この2点に、債券取引情報の改善の余地がある様に思うが、改革のヒントになるような動きもある。
この10月から、CPに関しては期間や格付けに分類した実際の取引データを、証券保管振替機構が公表する様になった。CPに関しては、既に100%電子化され、取引者も限定されていて、かつ証券保管振替機構において、DVPで物とお金が同時に決済される。この決済データを取引データとして使用した訳だ。社債についても、物は100%証券保管振替機構において決済され、資金取引も同時に行われるDVPは、全体の取引の3~4割だと言われているが、この決済データを取引データとして活用すれば、逆にDVP部分も増加する可能性もある。(ただしコストがかかるので、誰がコスト負担するかという問題がある。)
 勿論、顧客個々の取引情報に関しては、例え海外ファンド等であっても守られるべきだが、取引された結果の情報は、取引参加者間で共有する仕組みを有してこそ、取引参加者も増加し、取引も拡大する。仕組み作りのコスト負担は、業界が共同で行うことではないだろうか。

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個人のシステム取引
 最初のお断りをしておくが、特定の証券会社を推奨したりするつもりは毛頭ない。世の中は進歩しているなと、つい自分たちの足元を見直した時、多少の感動を思えたことの一つに、株式取引のシステム売買がある。このシステム売買の事を、簡単に言い切るなら、高度な数学理論を駆使して取引ルールをプログラミングし、売買執行指示を自動化したもの。最初は、大手投資銀行の商品部隊で、自らのトレーディング用に開発していたものを、自分達の有力顧客である機関投資家やヘッジ・ファンドに、取引サービスとして提供していた。勿論、個人のネット・トレーダーの中には、システム化の猛者もいて、取引論理を自ら開発して、注文を自動発注するシステム取引を自ら行うものもいる。ここで取り上げるのは、証券会社が、サービスとして提供するシステム取引についてである。
 当然であるが、システムを組む前に、売買判断をする為の市場分析が行われる。この市場分析には、大きく分けて2つの分析手法がある。一つは、市場のデータから、売買シグナルを読み取るもの、例えば、高値から数%下落したら売れとか、反対に買えといったもの。もう一つは、異なる複数の要因から、その関連性を、ロジックとして導き出し、売買指示を出すもの、例えば、債券指標が数%下落したら、株式先物指数を買えといったもの。実際に、個人に取引サービスとして提供されているシステム取引(自動売買との呼称もある)を、以下に紹介してみる。
・逆指値:ネット証券では一般化した注文手法になってきたが、下がったら売れはロスカット取引、反対に上がった買えはトレンドフォロー取引に使える。
・W指値:普通の注文と、上記の逆指値若しくは引け値成り行きを組み合わせ(普通の注文が出来なければこちらを注文執行)たもので、利益や損失確定取引に使える。
・+(プラス・マイナス)指値:始値・前日の終値・これからの約定価格ベースに、10円上がったら買う、30円下がったら売るといる取引に使える。
・リレー注文:A銘柄の売り注文が出来たら、B銘柄の買い注文を発注する取引。銘柄の乗り換えに使える。
・Uターン注文:1000円で買えたら、1100円で売りという注文を同時に出す。さや取り目的の利益確定取引に使える。
・トレーリングストップ注文:高値安値に合わせて、逆指値注文を自動的に修正する取引。例えば、高値から、5円下がったら売りという注文だと、高値が上方に修正された場合、その逆指値の注文水準も上方に修正され、高値により近い水準で売却することが可能となる。
 ここまででも、個人取引でこんな事ができるのかと十分驚いたが、更に個人投資家の考えたプログラミングを、システム取引として注文取次してくれるサービスも出始めている。例えば、公表されている国債指数が数%下落したら、株価指数オプションを買い、銀行株ETFの変動幅が、TOPIXの変動幅より小さければ、銀行株ETFを売却するというようなシステム売買も、個人が行うシステム取引で可能になっている。(事例として挙げたので、実際に、この様な取引が何か意味のあることかどうかは、筆者は分からない。)又、プロ投資家が行っているような、オプション限月間の裁定取引をプログラミングすることも可能なのだろう。個人投資家で能力があれば、自らプログラミングしたものを売買発注システムに載せてくれるし(有料)、取引ロジックだけ考えたのであれば、有料でプログラミングしてくれるサービスもある。
また、既成品として一般的(機関投資家などプロにとって)な取引ロジックを、売買システムとして販売仲介するサービスも提供している。これらの売買注文取次システムは、将に個人版DMA(ダイレクト・マーケット・アクセス)と言え、取引のITイノベーションがここまで及んだのかと感じる。
 勿論、この様な取引を利用するのはネット取引の更に一部の個人投資家かも知れないが、業界の人間としては、この様な株式取引の変化を、理解しておく必要もあると、強く思う。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

商品先物規制強化(米国)を考える
永年この業界にいる体質なのか、右肩上がりのグラフには安心感を覚えがちになる。原油価格が再び80ドル台を突破したり、金が史上最高値更新していたり、商品市場の回復は、リーマンショック後、世界経済縮小の危機が去った印象を与える。これで、投資資金も活力を回復し、株式や債券など金融商品市場にも、良い影響を及ぼすのではと期待したくなる。しかし、やはり不謹慎かもしれない。
 2007年から2008年夏までの原油や貴金属、さらに穀物まで含めて商品先物価格は数倍に急騰し、そして急落していった。その影響は、開発途上国で暴動を招いたりしている。実質経済に悪影響を与える投機や投資は、制限されるべきというのが一般の考え方なのだろう。
 投資する側にも言い分があって、高齢化・人口減などの対策が示せない日本の株式や債券などよりは、世界人口が増加し、世界経済が拡大していくなら、長期投資として商品先物投資を行い、また運用主体の金融商品との非連動制から、オルタナティブ投資として必要であるとの考え方が、分散投資でも主流になってきている。機関投資家のみならず個人投資家に関しても、そう言える。
しかし、市場である以上、市場機能を維持する為のルールは必要で、どの取引所でも価格形成の透明性と取引の健全性守る為のルールがある。米国においても、商品取引所法を基に、商品取引委員会(CFTC)が、各商品先物取引所と先物取引業者(登録制)を監督・監視する。各商品先物取引所は、過当投機を避ける為に、建玉制限等の規制を行うが、実需家など取引参加者によって、この取引規制は免除されている。現在、米国議会等で問題視されているのは、この商品先物取引規制(特に建玉制限)を回避する抜け道が、以下の3つあるのではないかという指摘である。
○エンロン・ループホール:商品先物取引所以外の店頭取引分(OTC)に関しては、商品取引所法の適用は受けておらず、したがってCFTCへの報告義務もない。OTC取引は、実際に相対で約定するものもあるが、電子取引システムで売買ニーズを付け合わせるICE(Intercontinental Exchange)OTCなどの取引も増加している。
○ロンドン・ループホール:現商品取引所法は、海外の先物取引所には適用されないが、NYMEX上場のWTI原油先物とほぼ同様の取引を、ロンドンの電子ネットワークシステム(ICEヨーロッパ)が米国のトレーダーに提供している。
○スワップ・ループホール:商品先物取引所において、スワップ・ディーラーと呼ばれる大手金融機関は、顧客である年金基金や・SWF(政府系ファンド)との店頭取引のヘッジに取引所取引を使用していると見做され、取引のヘッジ利用として扱われるので、建玉規制を受けない。よって年金基金などが、このスワップ取引という名の取引を、スワップ・ディーラーと行うことで、建玉制限以上の取引を行うことが実質的に可能となっている。
以上の3つに対して、米政府・議会での批判も強まっているが、CFTCは以下の規制案を検討していると、報じられている。
・スワップ・ディーラーに対する建玉制限免除の撤廃、商品インディックス・ファンドへの投資規制
・石油会社や投資ファンドの、金融機関にあるディリバティブ取引口座に対して、共通識別番号制を導入。
・OTC取引の実態把握の為、金融機関に対してCFTCへの報告義務を課す
・取引情報を基に、年金基金の実質的建玉を把握し、その上限を制限へ。
・ヘッジ・ファンドを建玉を分けて表示し、CFTC建玉明細の情報量を増やす。
今後のCFTC動向は、その他の金融規制強化との関わりで注目されるが、取引に関する情報の非対象性(情報の偏在)は、許されないような環境になってきたことを、スワップ・ディーラーを兼ねる大手金融機関は、認識せざるお得ない。何も米国だけの話ではないだろう。

※文中の米国規制動向に関し、国立図書館調査及び立法考査局 “レファレンス 2009.10:米国における商品先物規制強化の動向”を参考にしました。詳細の規制の背景と内容は、同文を参照下さい

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社債市場改革における個人投資家対応
 ハイイールド・ボンド・ファンドや新興国債券ファンドが個人投資家に売れているのに、この債券投資資金が日本の社債市場に流れない。いや流れないのではなく、日本の社債市場が、個人投資家の債券投資の受け皿として機能していない。低金利の日本では致し方なしと諦める前に、日本にもハイ・イールド(BBB格以下)の社債はあって、4~5%台の利回りが期待できるが、個人投資家は、自分が投資したいと判断した時に購入できるようになっているのか。
一方、この7月から日本証券業協会において、“社債市場の活性化に関する懇談会”が開催されて、日本の社債市場改革に向けた議論がされている。日本の社債市場の11倍の規模である米国社債市場との比較もされているが、日本の個人投資家は、社債全体の0.1%を保有するのに対して、米国は個人の社債保有比率が、直接保有分14%、社債ファンドでの保有分11%と、合計すると社債全体の四分の一に達している。この米国での社債の個人保有を促進した要素として、日本においても対応可能と思われるポイントを、2点上げてみたい。社債情報の共有と、日本版ハイイールド・ファンド需要作りである。
【社債情報の共有】
 本年は、ソフトバンク債の様なハイイールド債も、個人向けに発行されているが、個人投資家がいつでも日本のハイイールド債に投資できるかと言うと、そのような状況には程遠いと言わざるお得ない。その理由の一つは、販売する証券・金融機関等での現場対応の問題もある。例えば、営業コンプライアンス・ルールから、BBB格以下の社債投資には、投資家からの確認書徴収を義務付けているところが多い。更に、ハイイールド債の商品情報が、一部の大手に偏っているという現実がある。もともと、日本の社債市場の流通市場は規模が小さいが、実際の取引仲介をする証券会社も限られているので、個人投資家が既発行のハイイールド債情報に接すること限定されている。この状況を改善する為には、社債情報を個人投資家が入手しやすくし、仲介窓口を増加させる必要があるが、米国にはその為の先例があるので、ここに紹介する。
米国の社債流通市場では、取引価格の透明性向上の為に、TRACEという仕組みが2002年に導入されている。これは、社債の取引に関して、仲介者である金融機関(米国の金融取引業規制機構[FINRA]参加者)が、その取引価格等の情報をTRACEに報告し、TRACEがWeb上で公表を行う。段階的に強化されているが、現在は、社債取引の仲介者は、その取引の15分以内に報告する義務があり、その情報はリアル・タイムで流される。TRACEの運営費用は、この取引仲介者間で基本的に負担されるが、取引仲介者は自社のシステムとTRACEがインターフェースしていて、STPなどで事務処理コスト削減のメリットを受ける。TRACEで処理される取引情報は、市場データとして活用されるが、個人が利用する場合は無料、機関投資家や情報ベンダーがリアル・タイムで利用する場合は有料となっている。
この仕組みが、Web上での個人投資家向けプラットホームの役割を果たし、個人の社債投資拡大に貢献したと言われている。
【日本版ハイイールド・ボンド・ファンド需要作り】
社債市場裾野拡大の為には、個人投資家の投資拡大が必要なのだろうが、国債に数十ベース乗った程度の高格付け債への投資では、やはり限られるので、BBB格・BB格程度までハイイールド債投資が必要だ。また、BB債までが実質的に起債可能となれは、中堅企業の資金調達多様化への貢献も出来、本来の資本市場機能としての果たす役割も拡充する。その為には、ハイイールド債への分散投資機能をもつファンドの整備が業界のテーマかも知れない。ハイイールド債への分散投資の方法としては、中小企業の私募債を合成した東京都のCLOなどが既にあるが、ファンドの方が少額投資が可能であるので、このファンドが活用できる様な、投資スキームも望まれる。例えば、日本版401Kの対象拡大や、少額投資非課税制度の整備などが、日本版ハイイールド・ボンド・ファンドの需要の為の、少額分散長期投資として期待できる。

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業界規制には、産業育成の視点を
 先週末の16日、本年6月24日に公布された改正金融商品取引法の施行に伴う政令・内閣府令案が公表された。マスコミでは、新たにCDF取引の規制案が報道されていたが、改正金商法で以下の5点が決まったので、具体的規制案を示したものだ。
①格付け機関(=信用格付業者)に対する規制を導入
―グローバルな金融規制への対応で、欧米の規制強化方向に沿った動き
②金融ADR制度の創設
―ADR(裁判外紛争解決)制度整備の一環
③有価証券店頭デリバティブへの分別管理義務の導入
―証拠金取引の証拠金を、金銭信託の方法で分別管理する義務を課す
④金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れを可能に
―議決権保有制限のある取引所で、取引所間の保有制限の撤廃・緩和
⑤「有価証券の売出し」に係る開示規制の見直し
―外債など、販売の実態に沿った開示制度の整備
これらの具体的規制案の内容に関しては、下記の金融庁の概要資料で分かり易く纏まっているので、ご参照いただきたい。政令・内閣府令案の概要(金融庁へリンク)
この中で、業界内での産業育成の視点で行政に考えていただきたいのは2点で、格付け機関規制と店頭デリバティブの分別管理義務導入に伴うレバレッジ規制の問題である。
【日本の格付け機関の強化・育成は、日本の金融・資本市場には必要。その為に・・】
導入される規制案は、格付け機関を登録制にして、その登録要件として、厳格な格付け業務プロセスや利益相反への体制整備を求め、業者としての禁止行為を定め、投資家向けの情報開示を義務付けるものだ。格付けの品質管理を、組織として徹底しなければならない。格付け情報に関しても、一般への公表を適時・適切に行う体制が必要だ。業界としては好ましい規制内容であると考える。また、欧米の規制内容も、概ね同様の方向となっている。
しかし、グローバルな格付け機関規制の中で、日本の格付け機関のポジションというものを考えなければならない。ムーディーズやS&Pは、グローバルな格付け大企業であるが、R&IやJCRなどの日本の格付け機関は、比較すると資本金5億程度の中小企業である。格付けの様な投資判断基準となるビジネスは、業界や行政がビジネスとして育成していくという視点が必要だと思うので、格付け業として成り立つ取組みを支援するべきだ。例えば、格付け企業や格付け対象者との利益相反問題があるなら、格付け費用に関しては、原則債券などの金融商品の仲介者が負担する仕組みを、業界・行政で検討すべきではないだろうか。また、証券や金融機関が保有する格付商品の残高に応じて、対象となる商品の格付機関に費用を配分する格付け基金があれは、日本の格付け機関の陣容も拡大・充実していく可能性もある。
【市場参加者の多様性は確保すべき。その為に、投機家も必要では】
 FX取引のレバレッジ規制が決定されてから、CFD取引に関しても同様の規制が掛かることは想定されていたが、内閣府令案は、有価証券店頭デリバティブ取引について、・個別株=レバレッジ5倍以下、・株価指数=レバレッジ10倍以下、・債券=レバレッジ50倍以下を、来年11月か12月あたりから規制するとしている。規制の目的は、顧客が不測の損害を被るおそれを避ける顧客保護・顧客損失が証拠金を上回ることにより業者の財務の健全性に影響が出る事を避ける業者のリスク管理・過当投機の排除としている。既に、証券業協会でのCFD取引に関するワーキングがお伝えしたが、同ワーキングでは、個別株10倍・株価指数20倍・債券50倍という意見が過半数を占めていた。
そもそも、投資家保護・育成は金融行政の柱であるだろうが、同質の投資家のみで構成する市場のリスクは、今回のCDS・CDO市場の崩壊で、業界が身にしみたことではないだろうか。市場の多様性も維持することこそ、市場の健全性を確保することで、その為には投資以外に、投機も必要なのだ。その投機を、ヘッジ・ファンドだけに任せておいて良い訳ではない。本来、ヘッジ・ファンドも他人のお金を預かって運用するので、本質的な投機家は個人しかいない。この結果は、業界の責任かもしれない。個人投機家の必要性を、ちゃんと議論すべきだったと考える。
 個人投機家を育成するという視点で、CFD取引のレバレッジ規制には反対する。むしろ規制すべきは、ロスカット・ルールと取引対象とする指数情報提供の徹底ではないだろうか。

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市場としての排出量取引市場整備を
新政権になって、モラトリアム問題もあり、金融は何となく割を食っているイメージが強いが、証券業界として、政権の方向性に沿った実効性ある取組みを行ってもいいのではないだろうか。
 その一つに、国内での排出量取引市場の整備がある。
何だか経団連に嫌われそうなテーマに思うが、新政権になり、鳩山首相が国連で25%温室効果ガス削減のコミットメントを行ってから、風向きも変化している。民主党マニフェストにも、“キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設する。”と唱ってあり、担当と思われる環境相も、この制度の導入を2011年度目標とすると考えを示している。
 一方、国内では昨年10月より、企業の自主的参加による“国内クレジット制度”(国内排出削減量認証制度)が始まっているが、この排出量取引制度ではなく、新取引制度を目指す民主党の考え方を、市場機能整備の視点から、考え直してみたい。
 先ず、大きく異なるのは、温室効果ガス=CO2を含む6種類のガスの排出量(全てCO2で表示)に関する取引を自主的に行うか、強制的に参加させられるかである。キャップ&トレードは、個別企業若しくは個別事業所別に、温室効果ガス排出枠=キャップを割当てて、割当られた企業は自己の排出枠の過不足を基に取引=トレードする。では、それが自主的申告による排出枠の現行制度では、何か問題になるのか市場目線で考えてみたいが、その際問題になるのは現行のグローバルな排出量取引制度=京都ユニットとの関係をみる必要がある。温室効果ガスは、世界中の総量が減少しないと意味がないので、国内取引もこの京都ユニットとリンク(交換可能という意味と、制度の考え方が基本的に同じという意味)が求められるからだ。
国家間の排出量取引の対象となる京都ユニットは、以下の4つに分けられる。
・初期割当量(Assigned Amount Unit, AAU)=京都議定書に参加する各国(主に先進国)に割当てられた排出枠
・吸収量(Removal Unit, RMU)=各国が森林や湖水保有・植林などで、温室効果ガスを吸収していると認められる排出量削減枠
-以上の排出量に関しては、割当られた国同士がユニットを売買することも可能。
・認証排出削減量(Certified Emission Reductions, CER) =先進国が開発途上国などに資金・技術援助して行うクリーン開発メカニズム(CDM)事業で得られた排出量削減枠で、例えば水力発電所建設プロジェクトなどがある。
・排出削減ユニット(Emission Reduction Units, ERU)=先進国が他の先進国で行う温室効果ガス削減の為の共同実施事業(JI)によって得られた排出量削減枠。
-以上2つは京都クレジットと呼ばれ、個別企業も売買することが可能である。
これらのユニットは、京都議定書に参加する国毎に“国別登録簿”によって集計・管理され、またこの国別登録簿は、“国際取引ログ”(ITL)というシステムにおいて決済管理される。
つまり、国内での排出量取引も、実際にCO2排出量を削減する効果は勿論だが、この国別登録簿での総量減少に貢献しなければ、国際的には効果が薄いものいなってしまう。
現行の“国内クレジット”取引は、関係者の様々な努力により実現しているものなので敬意を表したいが、自由参加で、排出量削減枠を自主設定しているうちは、その排出量取引の増加が見込み難い。ここは、欧州の様に、個別企業・大型事業所毎に排出量枠を割当てて、排出量取引の総数を増加させるのが市場機能の整備に繋がると考える。“国内クレジット”取引制度には、京都ユニットのCDMを模して、大企業(京都ユニットの場合、先進国)が中小企業(京都ユニットの場合、開発途上国)に資金・技術援助を行って温室効果ガスを削減した分を、国内クレジットとして取引する仕組みもある。この仕組みは、京都クレジットにおけるCDMと同様に、必要な取組みなので、是非取引増加を期待したいが、ベースになる排出量枠が、強制的に割り振られないうちは、その取引量も限定的で、国内クレジットの有効性も薄れる。
 市場機能の精通している業界は、市場機能整備の視点から、産業界を納得させる市場運営の蓄積があると信じたい。

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フラッシュ・オーダーという問題
 一応、米国での問題である。しかし、その問題の背景には、今後の日本市場での取引や、取引情報の在り方について、示唆するものがあると思うので、敢えて取り上げてみた。本日の報道でも、有力外証による相場操縦の疑義を指摘する証券取引等監視委員会の処分勧告について、取り上げられていたが、取引に関する情報の扱いは、今後益々重要性を増す。その取引情報の非対称性(この場合、情報取得スピード)を使ったフラッシュ・オーダーの概要は以下の様になる。
 元々の意味は、すぐ取り消される指値注文のことを指すが、米国に於いては、株式でもオプションでも複数の取引所で取引が可能なので、最良執行で他の取引所に注文を回送する前に、特定顧客に1秒未満の注文状況を知らせる仕組みを、フラッシュ・オーダーと言っていた。(1秒以上出される注文は、全米気配情報[CQS]で公表され、自らの取引で成立しない場合、他の取引所で最良執行を行う為に、注文が回送される。)
 7月24日、ニューヨーク・タイムズは、ナスダック等の株式取引所が、特定顧客に対して一般顧客より0.03秒早く市場情報を提供しており、この情報を購入した顧客は、プログラムを利用した超高速取引で巨額の利益を上げていると報じた。記事には、多少の誤解もあるようだが、背景としては超高速取引を執行する業者の取引が、市場取引の半分以上を占めたり、これらの業者による2008年の利益が210億ドルに達したとの調査会社のレポートが公表されていて、一般投資家の利用出来ない超高速取引への反感があったようだ。米国において7月時点でフラッシュ・オーダーを採用していた取引所は、株式オプションでは、シカゴ・オプション取引所を含め3つ、全米取引におけるシェアは1・9%、株式では、ナスダックを含め5つあったが、全米取引におけるシェアは3・1%と推計されている。
米国においては、上院での動きもあり、8月以降、自主的にフラッシュ・オーダー取引を停止する取引所の動きが続いたが、9月17日米SECは、年内にフラッシュ・オーダーを禁止する規制案を公表している。フラッシュ・オーダーをめぐっては、市場に必要な流動性を供給し、金融危機時に市場が円滑に機能することを支援したとの見方もあったが、すべての投資家が公平に取引できる市場形成に向けた規制が必要との指摘が、米上院中心にあり、米SECは、同取引も含めて、公平性を欠く取引慣行を全般的に見直す考えを示している。
 一方、日本においては、東証の新オプション取引システム“Tdex+”が10月5日に稼働しており、注文処理性能の抜本的な向上(注文受付レスポンス平均0.006秒、秒間注文処理件数約2万件など)のほか、ストラテジー取引の導入などの利便性向上を目指す。(同時に、オプション取引における、マーケットメーカー制度も新規導入)
 取引所間の競争において、例えば東証でも海外取引所に上場されている海外ETFは、上場が増加し始めているし、日本株指数は、海外取引所でも取引され、これらは個人であっても取引出来る時代になっているので、T化進展による電子取引対応は、取引所の事業戦略で必須事項だろう。取引システム機能の向上と、清算機能(日本の清算機能の信頼性は高い)の拡充は、日本の資本市場の競争力強化に繋がる。
ただ、秒間の取引を行うには、膨大なシステム投資を行わなければならず、そのシステム開発能力は大手金融機関やヘッジ・ファンドなどでなければ対応出来ない。その反省が、米国でも生じ始めているという事実と、グローバルに遅れていた日本の取引システム機能の充実させる目的と、この双方は業界内でちゃんと消化していく必要がある。
それとは別に、取引情報に関する情報の非対称性は、例えフラッシュ・オーダーの様な秒間の限定された情報であっても、許されないような状況になってきている。このことを、日本の業界も理解した上で、市場機能整備問題を進める事が必要だと思う。
※一例としては、株式取引に係るレンディング情報の整備がある。株式が貸し借りされるレンディングに関する情報としては、一般には信用取組みの情報があるが、これはレンディングに一部にすぎなく、総じたレンディング情報は、投資判断に大きく影響する。又、空売り規制で証券会社毎に毎日報告される情報(大口の空売り)の銘柄毎集計の公表も、有効かもしれない。
※文中のフラッシュ・オーダーの内容に関する記載は、日本証券経済研究所:証券レポート10月号“フラッシュ・オーダー~問題の真相~吉川真裕氏”を参考にさせていただいた。

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再考:アーバンコーポレイション事件
 昨年の8月にこの事が発覚した時は、業界関係者(特に筆者は、長年発行市場業務に携わっているので)としては、まさに事件だと思った。まさか上場企業のファイナンスで、ここまでする業者がいるとは思わなかった。直後のリーマンショックの発生で、それほど報道されていなかった様に思うが、日本の資本市場にとっては大きな問題を抱えた事件であった。本日の日経には、引受業者であるBNPパリバ(以下B社)に対する証券業協会の処分に関する報道がされているが、ここで事件の概要を辿ってみる。
【事件の概要】[BNPバリバ東京支店公表:外部検討委員会資料より、スキーム部分は分かりやすいよう筆者が補正]
・2008年6月12日、アーバンコーポレイション(以下アーバン社)より、B社東京支店に対して、資金調達に関する提案要請あり。
・2008年6月18日、B社東京は「300億円のCB発行」と「二つのスワップ取引」をアーバン社に提案(契約とアーバン株取引・CB引受の主体は、B社フランス本社)
「300億円のCB発行」=所謂MSCBで、2年債であるが新株引受権の行使価格が市場実勢の90%に見直されるもの。
「二つのスワップ取引」=一つ目は上記CBの発行決議から、実際の発行日(7月11日)までの間、貸株で調達したアーバン社株を売却した分、二つ目は上記CBの発行後、MSCBでの新株引受権行使による裁定取引分、其々を、B社フランス本社が行った後、その資金をアーバン社に渡すが、その代りにCBの発行代金としてアーバン社が受け取った300億円は、CBの発行日同日にB社フランス本社に戻すというスワップ取引を指す。
・2008年6月26日、アーバン社とB社フランス本社の「300億円のCB発行」・「二つのスワップ取引」について、アーバン社は取締役会決議、「300億円のCB発行」についてのみ公表を行う。
「二つのスワップ取引」について公表しない理由は、アーバン社によるとB社東京支店の上記スキームを提案した担当者よりの依頼とされる。
・2008年7月11日、「300億円のCB発行」により、B社フランス本社はアーバン社に300億円支払い、「二つのスワップ取引」により、アーバン社はB社フランス本社へ300億円戻す。
・2008年7月12日までの取引で、「二つのスワップ取引」契約により、B社フランス本社から91.2億円支払われる。この間の、アーバン社株式裁定取引によるB社グループの収益は、11.8億円。
・2008年8月13日、アーバン社、民事再生手続開始の申し立て
【事件の問題点】
B社東京支店の外部検討委員会の公表による事件の問題点は、以下の4点ある。
<重要な企業情報の非開示>
重要情報の開示責任は企業にあるが、「二つのスワップ取引」を開示しないことをアーバン社に働きかけた不適切な行為がB社東京支店にあった。
<インサーダー取引>
重要事実である「二つのスワップ取引」を公表しないで、B社東京支店がアーバン社株の取引を行っていた行為は、インサイダー取引の疑いがある。
<相場操縦>
B社東京支店のアーバン社株の取引(6月26日以降)については、作為的な相場操縦行為はされていないと判断。
<内部管理態勢>
B社東京支店の取引判断について、問題ありと判断。
以上に対して、日本証券業協会は専門委員会による調査を行い、“アーバンコーポレイション転換社債契約等を巡る事案に関する小委員会”報告書として2009年2月の公表している。
【追加の問題点】(筆者の考えるところによる)
・本件のMSCB発行+スワップ取引=裁定取引であり、実質的にはファイナンスでもなんでもない。
・よって本件でMSCB発行のみを公表し、スワップ取引を秘匿した行為は、投資家に裁定取引をファイアンスとして偽って公表する行為に等しい。但しこの開示行為の主体は、アーバン社である。
・「300億円のCB発行」・「二つのスワップ取引」の行為主体は、アーバン社とB社フランス本社であり、B社東京支店が同スキームを仕組んだとしても、その行為は斡旋行為である。むしろ、欧州の名門投資銀行としてのB社フランス本社の判断について、ファイナンスと裁定取引の行為主体となったこと自体に、大きな問題がある。
・MSCBの発行前の裁定取引が可能となるスワップ契約の一つ目で、貸株の出処も問題となる可能性がある。(大株主から借りるが、その大株主はアーバン社の経営状況・ファイナンス公表をどう考えていたか)
 以上の様な行為は、日本の資本市場に対する信頼を失わせ、またその機能を失墜させる。
 MSCBそのものが悪いスキームという訳ではなく、それによって救われた企業もある。問題は、B社東京支店の行為にも見られたように、小さなルールを遵守しているふりをして、大きなルール(引受業者としてのプリンシプル)を踏み外した事。この事を、日本の資本市場を守る為にも、二度と許してはいけないとうことだ。

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投資教育について
 郵便局に預けておけば、10年で倍の金額になった。会社の持株会で積立てしておけば、10年~20年で立派な資産になった。一般論として、もうこんな事は、自分たちの親の世代の出来ごとかも知れない。  日本が成長している時は、一般の人には、自ら投資を行うという意識はなくとも、その成長とそれに伴う投資の成果を享受することが出来たが、長期投資といっても右肩上がりの成長が見込めない、分散投資と言っても日本の社会全体が少子高齢化によって縮小するイメージであれば、お金は保守的に預金や国債になるか、海外の新興国への長期・分散投資に回さざる得ない。そんなとことが、現在の日本市場のイメージなのだろうか。そうでない事を願いたいが・・。
 もともと投資を一般論で話す事は正しくなく、投資するお金の性格(何の目的)や持ち主(投資家の資産状況)によって投資の仕方(投資スタンス)は様々であるべきで、それを教えるのが投資教育なのだろう。そんな投資教育は、通常の金融商品の販売活動とは異なるので、どうしてもボランティア・ベースになるが、高齢者を集めてセミナーを開催したり、学校に出向いて金融知識の普及を目指して投資の話をしたりする。ファイナンシャル・プランナーなどが個人的に行う以外に、この業界には、投資教育に関する2つの団体がある。投資教育協会と金融知力普及協会であり、どちらも2001年の証券市場改革プログラムによる投資家教育の推進を受けて、2002年に設立されている。
簡単に紹介すると、投資教育協会の方は、現在はネットでの金融情報提供に注力しているようだが、活動の内容は、投資教育インストラクターの育成・e-learningシステムの開発・各種セミナーへの講師派遣・ホームページでの会員(FPや税理士・会計士・金融機関関係者)向サービスの展開とあり、金融知力普及協会の方は、現在は投資教育を行うインストラクター養成に注力しているようだが、こちらの活動内容も、金融知力普及・広報活動(シンポジウムの主催等)・金融経済教育体系の確立(学校教育から企業人材育成までのカリキュラム策定等)・金融経済教育活動の実施(通信教育講座、社員教育セミナー等)・検定試験実施・能力検定(金融知力検定、金融知力インストラクター認定制度等)とある。[両協会のHPより抜粋]
両協会の考え方は、基本的には投資教育を行う人達を支援したり、インストラクターそのものを養成しようという考え方だ。
 地道で、持続性が必要な取組みなので、両協会の取組みには、業界の人間として、頭が下がる思いである。
しかし、投資教育というのは、高齢者の集まりや学校でセミナーをすることで良いのだろうか。セミナーに集まる高齢者は、金融知識より投資情報が欲しい、学校のセミナーは社会教育としての知識で、教えてもらった子供たちは、殆どその知識(特に投資に対する)は使えない。実践の伴わない知識は、制度導入の目的とした消費者としての個人の投資知識の普及とは離れているのではないか。
逆に必要な場面で、投資教育は行われていない。せっかく401Kを会社で導入しても、取扱金融商品の内容が分からないといって、殆ど預金商品になっている、運用内容の指示が面倒なので、殆ど最初に決めた商品から変更されない。金融機関の累積投資は、商品が分かり難く、商品変更も面倒と思ってしまう。勿論、自己責任なのだけれども、この様な人達にこそ、金融教育は必要などではないだろうか。
比較されるのが、英国の金融教育の在り方で、最近は米国も影響されている。
英国FSA(Financial Services Authority=金融サービス機構)は、2003年11月、国家戦略として国民の金融能力向上を目指し、以下を金融能力の構成要素として、金融教育への取組みを始めている。
・収入の範囲でやりくりすること、金銭管理が出来ること
・収支の記録をつけること
・あらかじめ計画をたてること
・金融商品を選択すること、金融商品について情報に基づく意思決定をすること
・金融問題に通じていること、金融問題に関する情報に遅れないようについていくこと
教育とは、やはり国家戦略なのだろう。それが、投資教育であっても、社会を構成する為に必要な教育なら、業界のボランティア・ベースに頼るのではなく、行政サービスとして投資教育を行う必要がある。また、教育は、実践を伴ってこと有効に作用する。日本版401K、2年後に始まる予定の少額投資非課税制度、そして日本でも具体化への検討を望みたいチャイルド・トラスト・ファンドなど、教育の実践の場が整備されれば、日本の投資教育も、国家戦略に応えるものになるだろう。

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証券業界におけるこの10年とここ1年、そして・・・
日本版金融ビックバンと呼ばれる証券市場改革が始まって、もう10年以上経つが、株式委託手数料の自由化に始まった改革は、前回の日本の金融危機直後からであった。そして、昨年のグローバルな金融危機で、グローバルな投資銀行業務といわれる証券関連業務の分野も大きく変わろうとしている。同じ金融危機を契機に、証券業界が大きく変わるようにも思え、感慨深いものもある。
証券業界の10年来、そしてこの1年の変化について、整理してみる。
【10年来の業界の変化について】図-1(資料2枚目)
図-1をご覧いただきたい。日本版金融ビックバン=金融システム改革法の施行に始まる10年来の関連法案とその主な内容であるが、一言で言い切るなら証券業界の“規制緩和”であった。
その中で、主な流れは3つあって、参入緩和・窓口の拡大、金融商品拡充と整備、決済システム強化であるが、其々の主要な内容を見てみる。
・参入緩和・窓口の拡大
1998年スタートの金融システム改革法において、証券業を、それまでの許可制から登録制へ変更し、最低資本金基準も5000万円に引き下げた。引受業務やPTS運営など、一部業務に関しては許可制を残したが、その基準も引き下げて、業務への参入を促している。同時に銀行・保険会社に対して、投信の窓販を認めて、一気に投資信託の販売窓口の拡大を図った。
2003年の改正証券取引法において、証券仲介業制度が導入され、一般の事業会社・個人でも株・投信・債券などの証券関連商品の販売を、証券会社に取次ぐことが可能となったが、施行から8ヵ月後には銀行にもこの証券仲介業が認められた。
2006年に証券関連法案の集約化が図られ、それまでの証券取引法が金融商品取引法となったが、2008年の改正金融取引法によって、ファイアーウォール規制の見直しが行われ、2009年6月よ、銀行・証券の役社員兼任が解禁され、同一グループ間で法人顧客情報を共有することが銀行・証券間で可能となっている。
・金融商品拡充と整備
1998年に金融システム改革法により、株式委託手数料の自由化が行なわれ、2001年に改正投信法でETF(上場投信)、J-REIT(上場不動産投信)の制度がスタートした。2006年の金融商品取引法スタートにおいては、集団投資スキーム(ファンド等)やデリバティブなどの金融商品の整理が行われ、金融商品の範囲が拡大された。2008年の改正金融商品取引法では、プロ向け市場の創設が認められ、2009年の改正においては、商品・金融商品取引所間の相互乗り入れも可能となっている。
・決済システム強化
2002年の証券市場整備関係法の一般債・国債の振替制度創設、2005年の決済合理化法の創設により、CP(2003年3月~)・社債(2006年1月~)・投資信託(2007年1月~)・株式(2009年1月一斉移行)と段階的ペーパレス化により、有価証券の電子化決済システムは、先進国で最も進んだものになっている。
【ここ1年の変化について】図-2(資料3枚目)
グローバルな金融機関規制の影響は、日本の証券業界にも及ぶが、内容としてはヘッジ・ファンド規制(日本では投資運用業・適格機関投資家特例業務)・証券化商品の開示、金融商品会計などある。金融商品会計など非常に影響が大きく、またIFRSへのコンバージェンスが求められているので、その動向に注意を要する。一方、グローバル金融規制の考え方の中には、情報の非対称性や利益相反を問題視する(例え、プロ間の取引であっても)動きもあって、ファンドや機関投資家間の取引に関する開示(主に証券化商品などプロ向け商品)は厳格化しそうだ。
【現在、検討されている金融・資本市場関連テーマ】
・社債市場の活性化に関する懇談会(7月~)
・国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング(9月~)

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業界の税制改正要望
税制改正のプロセスが新政権になってから変わって、改正要望を公募したものを関連省庁が取り纏め、政府税調へ上げるという仕組みのようだが、8月末に金融庁一旦取りまとめた平成22年度要望はあるが)金融庁がこの9日まで公募している。税制改正プロセスを、明確化しようとの動きだが、この公募に応じる形で7日、証券業界関連について、証券業協会等が要望した。
 税制改正プロセスは、変わったが、税制改正要望関して、その内容は余り変わらない。むしろ、実務的な問題(証券会社等の実務)への要望が多くなったよう思われ、詳細な事項が増えているのが印象だ。
税制改正要望の目的としては、主に2点に纏められる。“貯蓄から投資へ”の推進と、アジアの金融センターを目指した“市場整備”に関するもである。以下、その要望内容と筆者の若干のコメントを以下に述べる。
【貯蓄から投資へ関連】
・日本版ISA(少額の上場株式等投資のための非課税措置)は、譲渡益等の軽減税率撤廃(10%を20%に戻す)ことを条件に、平成24年導入が決まっていて、平成22年度税制改正において制度設計をするとされている。これに対して、協会の税制要望は、制度設計の簡素化を要望している。この要望が良く分からない。確かに制度は簡素なものが良いのだが、制度決定前の簡素化に意味があるのだろうか。むしろ業界としては、制度案を提示してからのことではないかと思うので、この要望の具体性は大よそ乏しい。
・上場株式等の譲渡益・配当金への軽減税率は、上記の理由で平成23年一杯ということだが、要望として軽減税率の継続を上げている。税法的には、この軽減税率は平成21年度終了するものを、平成22~23年の2年間について昨年度の税制改正で延長済みである。新政権への不安としては、この既に決定している2年間の軽減措置が取り止められのではないか(社民党が主張:但し選挙前)といったものがあったが、新政権からのこの件に関する正式コメントはない。確かに税率は小さい方が良いが、まさか上記の件もあるのに、軽減税率をずっと続けて欲しいということではないだろう。その様な業界のコンセンサスは、無い筆者は思う。(議論等は公表されていないし、業界としてのワーキングもない。)
・金融所得一体課税の考え方を進める為に、金融商品間の損益通算の拡大を求めている。これは非常に重要なことだと考えるが、株式関連だけではなく債券や預金なども含めて譲渡益・利金配当金などを、金融所得として一体で見て、就労による所得とは分離して課税する金融所得一体課税(勿論低い定率である必要があるが)は、高齢化社会を迎える日本にとっては必須だ。損益の繰延べ制度もあった方が良いが、繰延控除期間が、3年では不足で7年(要望)が適正かどうか一般には分かり難い。もし、個人にとって損益繰延の期間が7年必要なら、それは何か他の長期投資システムと関連付けられるものでなければ、国民は理解できない。
【市場整備】
・社債(証券決済振替機構で取り扱う振替債)の利子・償還差益について、非居住者・外国法人は非課税とする要望を上げている。これは、日本の社債市場(流通市場)が未発達の理由で、個人や海外投資家の保有が少ない事が一因となっている。この為には、国債や地方債と同様に、利子・償還差益かんする非課税措置が必要なのだが、日本に企業の資金調達手段の多様化→社債市場の整備→海外投資資金の呼び込みということを明確化すれば、新政権の理解も得やすい。
【その他】
・高齢者から若年層への資産移転を目的にした株式・株式投信の相続・贈与制度でその評価額を低く見積もる(現行制度の70%以下へ)制度の要望をしていたが、これは良く分からない。本当に、相続する為に株や投信を買って、低く評価したものを相続する動きが“貯蓄から投資へ”の目的で必要なのだろか。
それよりも、世代間の資産移転を目的にするなら、協会で検討されていた英国のチャイルド・ファンドの様な制度導入こと、世代間の資産を移転し、若年層の資産形成に役立ち彼らへの投資教育も有効になると思うのだが、今回の税制改正要望には無い。

税制改正要望において、各社間の要望を集めて出すのではなく、業界としての税制の方法性を議論した上で要望提出しないと、各要望間で平仄の取れないものになって、業界の本気度が問われる。
少し厳しい物言いになったが、自主規制機能だけではない業界の方向性を見定める機能が、協会にはあると考えるからである。

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金融商品としての不動産証券化商品そしてREIT投信
 最近の投資運用業界(投信などの運用会社)の動きには敬意を表したい。金融危機の方向性がまだ定まらない時期のグルーバル金融株投信・新興国ファンド、支援策が決定した段階でのREIT投信、など個別の投資テーマだけではなくいち早く投資テーマを決定して投信を設定していく機動性、通貨選択型や目標設定型など投資手法のイノベーションへの取組み、これらの動きには投資運用業界としてのパワーを感じる。販売サイドである証券会社は、競争激化と業務転換の取組みに苦しんでいるのに比べて、投資運用業(投信の運用会社だけではなく、ファンド運用者も)が成長しているからだろう。
 REITに関しても、分散投資を進める視点で、本年度早期からクローバルなREIT投資を薦める運用会社が複数あって、REIT投信が増加しているが、これも投資家と運用者の良い関係となっていると思う。ただ、最近REIT投信と、REITのETF(これも上場された投信であるが)の関係で少し分からないことがあったので、触れておく。
最近、募集を開始したA社のREIT投信、
・投資対象等:日本に上場するREIT、東証REIT指数に連動した運用、毎月分配型
・手数料:申込時、2.1%、保有期間中は年0.6825%、換金時0.1%
既に上場されているB社のETF、
・投資対象等:東証REIT指数に採用されている不動産投資信託、隔月分配型
・手数料:購入時・売却時は、各証券会社の取次手数料、保有期間中は年0.315%
どちらも東証REIT指数連動の運用なので、一瞬手数料も安そうで流動性もありそうなB社でのETFでも良いよう思ったが、A社の販売会社の立場で考え直してみた。毎月分配される優位性はある。また東証REIT指数より、下がる時下げ幅が小さく、上がる時上場幅が大きいことが期待できる運用なら良いのかもしれない。
 一方、運用全体における分散投資としての不動産への投資必要性(オルタナティブ投資)は増している。
以下、不動産証券化商品の概要は以下の様になっている。
○J-REIT(不動産投資信託)
根拠法:投資信託及び投資法人に関する法律。販売窓口:証券会社等。特徴:取引所に上場され流動性は確保、また数万円からの少額投資も可能。投資家保護:金融商品取引法
○不動産特定共同事業法商品
根拠法:不動産特定共同事業法。販売窓口:不動産会社など不動産特定共同事業者、特徴:優先劣後構造で元本を確保しようとする商品もあるが、事業者との倒産隔離はない。流動性はないので、換金時は販売者との事前の取り決めによる。投資対象は、匿名組合持分で数百万からの投資。投資家保護:金融商品販売法
○資産流動化法商品
根拠法:資産の流動化に関する法律。販売窓口:証券会社等、オリジネーター。特徴:不動産業者がオリジネーターになることが多く、優先出資証券等の資産対応証券を機関投資家向けに販売。期間以前の換金については、投資家自らが探す必要がある。投資家保護:金融商品取引法
○GK(合同会社)-TK(匿名組合契約)スキーム
根拠法:会社法。販売窓口:公募することはなういので、殆ど第二種金融商品取引業者(含む証券)。特徴:匿名組合出資持分(信託受益権)を、機関投資家やスキームの組成関係者に販売。投資家保護:金融商品取引法
○不動産証券化関連商品(FOFs[ファンド・オブ・ファンズ]、ETF)
根拠法:投資信託及び投資法人に関する法律。販売窓口:FOFsは、証券及び銀行などの金融機関、ETFは証券会社等のみ。特徴:FOFsは所謂REIT投信、ETFはそれを上場したもので、両方ともファンド=投信としての扱い。FOFsも流動性がない訳ではなく、換金方法は、通常の投信と同様に解約か買取請求による。投資家保護:金融商品取引法
 以上が、金融商品としての不動産証券化商品である。(分類は不動産証券化協会による)

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投資家目線の開示制度
実は、最近心待ちにしている月例の記者会見がある。東証の斉藤社長の月例会見だが、仕事柄、取引所動向をチェックしておく目的以外に、その会見内容そのものに興味を覚える。多分斉藤社長のお人柄なのだろう、少し込み入った様な事柄も、方向性を明確にされ、分かり易く説明されておられる。そんな対応に期待してだろう、記者も時々脱線しているような質問を投げるが、これにも、ちゃんとボールを返している。東証トップ=取引所の方向性が、明快にかつ平易に示されていることが、大事なのだ。
 その東証の先月末の社長会見で、上場制度整備の実行計画2009が示された事は、既にお伝えしたが、その中に、開示制度の見直しがあり、四半期開示と内部統制の実務の在り方に関して、検討するとある。
 両制度とも、ここ1~2年で導入された開示制度であるが、四半期開示は取引所の適時開示=タイムリー・ディスクロージャーの推進で導入された。(内部統制は、コーポレート・ガバナンス向上を目的に、会社法・金商法の内部統制報告制度で導入されたもの)両制度の導入により、確かに会社情報は、より最近の物が手に入るし、会社の状況も分かり易くなったが、組織の小さな新興企業には相当の負担となっている。東証社長は、この四半期開示を見直すことを以下の様にコメントしている。
・四半期開示は、日本と米国だけ
・海外年金基金などが、本当に四半期開示を必要としているか疑問
・短期利益追求の弊害もある
勿論、適時開示の目的上、四半期開示上あった方が良いに決まっているが、上場会社が負う負担と投資家が受けるメリットを比較すれば、企業規模や業種によって、開示の軽減措置があっても良い。せっかく企業が苦労して作成したデータも、一部アナリストしか使わないのでは、市場機能として適時開示の有効性にも、疑問譜が付く。導入して間もない四半期開示ではあるが、その制度を見直すという姿勢は、とても好ましく思える。
 取引所は、投資家にとって、取引を提供する場であるが、その取引の為に、取引される有価証券の情報を、タイムリーに投資家に提供する場でもある。その意味で、東証の適時開示制度は有効に機能していて、投資家は、情報ベンダーに頼らなくても、適時開示閲覧システムとして、TDnetを活用することが出来る。少し要望を加えるなら、適時開示に関して、以下の点の改善をお願いしたい。
・TDnet活用に関しては、広く投資家の利用が拡がるよう、投資家への啓蒙活動をすること。
・TDnet利用情報に関して、過去2年適度まで利用可能とすること。
・適時開示情報に関して、同一期間内の銘柄毎比較が可能な情報検索を可能とすること。(例えば、M&A、業績修正、増配、株式分割等)
・適時開示情報のXBRL化で、投資家が利用可能なソフトや機能を、分かりやすく提供されること。

取引所があるから、投資家は、上場されている株や債券などの情報を、容易に入手することが出来るが、投信や外債などは、情報入手を証券や銀行などの市場仲介者に、依頼するしかないのだろうか。
 そんなことはなく、国内で募集される投信や外債の金融商品は、金融商品取引法上の開示制度でディスクロージャーを求められる。届出書を出さなければならないし、何か変更したら訂正も求められる。同様の内容は、投資家に目論見書として、募集活動を仲介者が行う時に、仲介者から渡さなければならない。
内容は、EDNETで閲覧することも可能だ。しかし、可能だが大よそ投資家仕様になっていなく、投資家の視点から、求める投信や外債の内容が分かるところまで辿りつくのは、EDNETに精通していなければ難しい。目論見書があるではないかとの意見もあろうが、実はその目論見書を入手する為には、取扱証券若しくは金融機関に、口座を開設しなければならないのが現状である。投信の目論見書に関しては、内容をもっと平易で分かり易くとの議論もされているが、投資の検討段階で、容易に入手できることが重要に思う。そもそも、目論見書の電子交付が可能になっている。投信の目論見書は、よくリスクを説明しなければ渡せないと思っておられる金融機関は、金商法の行為規制を、曲解しておられるように思う。
投信には、取引所の様に、情報を集約して、適時に流す所がないのが、問題なのだろうか。

以上、現在の開示制度に関する雑感である。

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CFD取引規制議論
最近は、新政権の影響なのか成長力に対する不安なのか、日本の株式市場に対する先行き不透明感も強まって、何かと活力を感じない証券業界であるが、その中にあって小さいながらも急成長している分野がある。既に過当競争気味のFX取引ではなく、CFD(Contract for Difference=差金決済取引)である。
実は、FX取引もCFDも、同じ証拠金取引であり、レバレッジを掛けて対象となる指数を取引する仕組みは同じである。このCFD取引が伸びている。
日本証券業協会の調べによると、現在は証券関連指数のCFD取扱業者は12社で、昨年4月時点の2社、本年3月の7社から急拡大していて、更に増加傾向にあるという。3月時点での取引実態は、7社からのヒアリングでは、証拠金残高20.7億円、口座数13,139とまだまだ小規模だが、月間取引額は1,518億円までに増加している。CFDの投資対象とする範囲は、株・債券などに限らず、原油や食糧など商品指数にも及ぶが、特徴としては、証拠金を基に、10~200倍までの高いレバレッジ(中心は20倍)を掛けることが可能となっている。
このCFDは、法的には店頭デリバティブ(東京金融取引所では、年度内に日経指数CFD上場の計画もあるが)であり、金融商品取引法により、投資家に取次ぐ者は第一種金融商品取引業者としての規制を受ける。つまり、CFD業者は金融商品取引業者とて、投資家との間では、再勧誘や不招請勧誘などの行為規制を受けるし、純資産維持や自己資本規制も受けることになる。まだリテールビジネスとしては創生期のCFDではあるが、金融商品取引法の対象であるデリバティブ取引であることに間違いない。
では、以下の事はどうなのか。
①金融商品の証拠金取引に課せられる顧客証拠金の金銭信託義務
②FX取引に課せられるレバレッジ規制及びロスカット・ルールへの適用
③不幸にして顧客とトラブルがあった時の対応及び新制度の金融ADRの適用
以下、上記に問題について、証券業協会の“証券CFD取引ワーキング・グループ中間報告”(10/2公表)を参考に考えてみる。
【証拠金及びカバー先の問題】
 顧客からの証拠金は、FX取引と同様に来年の6月まで金銭信託の方法で区分管理しなければならない。
FX取引の中小業者などは、カバー先の海外金融機関(レバレッジを掛けた取引を引受け、実際の市場で取引を執行する)に直接預託していたケースもあり、今後は金銭信託先の信託銀行の信用状(LC)をカバー先に提出するケースも出そうだ。また取引金融機関が、カバー先に何らかの取引保証を加えることもあるだろう。一方、カバー先のリスクについても投資家に開示しておくべきとの協会ワーキングでの意見もあり、契約前書面に記載をすることを前提としている。カバー先の明示は、投資家にとっては重要な情報と考えるので、この提言は評価できる。
【レバレッジ規制及びロスカット・ルールに関して】
 筆者はその導入には反対であるが、FX取引においてレバレッジ規制が導入されることは決定している。
来年まで50倍、再来年までには20倍まで制限するが、実際の平均レバレッジは7倍程度のようだ。其々のFX投資家が、全て日ばかりのさや取りをしている訳でもないので、レバレッジを平均することに意味はないかもしれない。同様に、一律に規制すること自体も意味がないが、協会ワーキングでは、個別株10倍・株価指数20倍・債券50倍という意見が過半数を占めたようだ。ちなみに、レバレッジに関しては、信用取引3.3倍、日経平均先物6.6倍という現状がある。一方、CFDはレバレッジが高いのが一般的なので、ロスカット・ルールの徹底は必須である。このロスカット・ルールに関しては、正直まだ整備が完了していない段階とも思われ、複合取引への対応やマージン・コール(追加保証金)との関係を投資家に分かり易く説明する義務をCDF業者は果たして欲しい。
【投資家とのトラブル対応】
 金融ADRが整備されたところであるが、CDFは取引対象が証券・商品先物・債券その他指数に及ぶこともあり、原資産ベースの取引に関する協会などの自主規制機関は多岐に渡る。しかしデリバティブという金融商品である。FX業者が、第一種金融商品取引業者でありながら、証券業協会会員でないケースも多い(多くは金融先物取引業協会員)。またCFD取引の対象が商品指数なら、商品先物業協会にも関与する。証券業協会は、せっかくCFDワーキングを始めたのだから、これら各自主規制団体と連携して、CFD取引を含む個人のデリバティブのあり方を、進めていただきたい。

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証券会社の風景
 10月4日“投資の日”を前に、その投資への大きな窓口である証券会社の近景を、眺めてみたい。
先ず象徴的な事として、10月2日日経一面広告には投信の一面広告が、銀行・証券共同販売の形で掲載されていることに気付く。商品内容は別にして、新規で設定される投資信託を、銀行と証券会社双方の窓口で大々的に販売するのは、初めてのことだろう。このことは、三井住友ファイナンシャルグループが10月1日より日興コーディアルを完全子会社化したことによるが、ここ一年の金融危機の影響もあり、証券業の業界地図の位置や色彩も随分変わってきているように思う。証券業界の再編に関する動向を、少し整理してみたい。
 証券業は銀行業と異なり、基本的には登録業なので、新規参入が容易(登録要件はあるが)である。加えて、“貯蓄から投資”政策の推進もあって、株・ディリバティブ以外の金融商品は、これも基本的に金融機関でも取り扱える。6月からは、ファイアーウォール規制(銀行・証券の情報共有等)も緩和されている。つまり、参入も自由で、銀行との競合部分も増えているので、再編圧力のかかりやすい業界構造になっている。本年に入ってからの、業界再編には、以下の3つのパターンがある。
・銀行と証券の業務融合戦略に関するもの(メガバンクグループ、大手証券及び外銀・外証の問題)
・上記の影響を受けた中堅証券・地域金融機関の動向に関するもの
・競争が厳しくなってきているオンライン取引・FX取引などの事業譲渡に関するもの
更に内容を見てみる。
【銀・証の融合・連携強化に関する動き】
金融ビックバン後の銀証融合の動向だけではなく、ここ一年は、金融危機による米国金融機関の再編(主に投資銀行)や整理に関わる影響を受けている。
・三菱UFJファイナンシャルグループは、三菱UFJ証券とモルガン・スタンレー証券日本法人を来年3月まで統合し、総合証券としての機能を強化することを公表(3月)。新証券の出資比率は、MUFG側が60%、米モルガン・スタンレーが40%の合弁会社となる予定。
・みずほ証券(ホールセール)と新光証券(リテール主体)の合併(5月)により、“新”みずほ証券として、みずほファイナンシャルグループの総合証券を目指す。
・三井住友ファイナンシャルグループは、シティより日興コーディアル証券(リテール主体)を取得。10月からグループ参加の証券会社としてスタートさせた。なお、証券のホールセール業務部門に関しては、証券引受などの業務を日興シティグループ証券から譲渡され、日興シティグループの債券・株式などの商品部門とは業務提携をして連携してホールセールビジネスを進める。
・上記の影響なのか、三井住友ファイナンシャルグループは、大和証券グループとの合弁事業である大和SMBC(ホールセール)への出資を引き揚げる事を公表している(9月)。両グループの協力関係はそのままとされ、自己投資部門(大和プリンシパル・インベストメント)への出資関係は変わらない。
今後の大和証券グループの動向が注目されるが、米国における金融機関の公的資金返済に関わる動向も、グローバルな証券業務へ影響する場合もあり、注意を要する。
【中堅証券の動向、事業譲渡に関するもの】
・CSKグループは、事業再編により、2004年に子会社化・昨年100%保有の完全子会社化したコスモ証券の売却方針へ。(年内売却を目指す方針の模様)
・西日本シティ銀行と東海東京ファイナンシャルグループは、合弁での証券会社設立に関して基本合意を公表(8月)。2010年上半期営業スタートを目標とし、西日本シティ銀行が議決権の過半数を取得予定。
・トヨタファイナンシャルサービス(トヨタFS)傘下のトヨタFS証券と東海東京証券会社が来年4月目途に合併へ。トヨタFSは、東海東京ファイナンシャルグループへ5%出資。(9月)
・野村は、参加のオンライン専業のジョインベスト証券を、11月23日より証券本体に統合。
・かざか証券は、オンライン事業をオリックス証券へ譲渡(事業部門の会社分割)。(9月)
・カドヤ証券(鳥取)は、無償で大山日ノ丸証券に事業譲渡。(5月)
・ばんせい山丸証券は、取引所FX取引事業をインバンスト証券へ事業譲渡(4月)
などがあるが、大手の銀・証連携強化の影響による地域金融機関と中堅証券の動向、競争が厳しくなっているオンライン・FX取引での業務集約への動き、共同事業化を名目にした統合など、今後も続く事が予想される。

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期待される東証上場制度整備
本年度上半期も終了したが、株売買は4年ぶりの低水準で、東証出来高も上海取引所を下回る状況が続いている。2007年12月に、市場競争力プランが策定され、確かに上場ETFなどが充実してきてはいるが、資本市場の基盤となる売買高の減少=投資資金の縮小は問題だ。確かに、新政権への戸惑いが投資家サイドにあるのかもしれないが、本来、“変化”は市場の好むところなので、市場活性化への業界全体の即効性の取組みが望まれる。そんな中で、東証は9月29日に上場制度整備の実行計画2009を公表している。
 テーマは二つあって、“上場会社のコーポレート・ガバナンス向上”と“ディスクロージャー”である。
【東証のコーポレート・ガバナンスへの取組み】
 新政権になって、公開会社法も取りざたされる昨今であるが、既に上場会社のコーポレート・ガバナンス改革に向けた取組みの方向性は、金融審議会(金融庁)のスタディグループ及び企業統治研究会(経済産業省)それぞれの報告書(6月公表)に於いて示されている。その両報告書とも、新法制度というよりは、上場規則改正により、上場企業のガバナンス向上を目指す内容になっており、東証の動向が注目されていた。東証が公表したコーポレート・ガバナンス改革への対応は以下の様になっている。
〈2010年度3月期決算会社からの対応も目指す事項〉
・ガバナンス体制(委員会設置会社・監査役会設置会社、社外取締役制度の導入など)の内容と、その選択の理由を、ガバナンス報告書で開示。
・監査役機能の強化として、監査役監査への支援強化策や知見を有する社外監査役採用などの具体化策を、ガバナンス報告書で開示。
・社外取締役・監査役の独立性に対する会社の考えを開示。
・一般株主保護の為、一般株主と利益相反がないと企業は判断する“独立役員”を求める。
(具体的内容については、来春までに検討)
・株主総会議案の議決結果について、票数までの公表を要請。(法制度の動向を踏まえながら、ルール化を来春まで検討)
・議決権電子行使プラットホーム(機関間投資家や海外投資家の議決権行使を促進する目的の)参加の偽務化は、来春までに検討。
・子会社上場の在り方については、来春までに検討。
・株式持合いに関しては、一定の持合い状況の開示の制度化に向けて、来春までに検討。
以上が、ガバナンス改革への取引所の対応であるが、なにやら開示=ディスロージャー強化ばかりのようにも見える。しかし、直接企業行動を制することは、取引所は出来ないので、基本的に取引所のこの取り組みを支持したい。開示義務違反の最大のペナルティーは、上場廃止でもあるので、ルール策定後の実効性のあるルール運用を期待したい。
【ディスクロージャー充実への取組み】
この内容も更に2つあって、適時開示への一層の取組みとIFRS(国際財務報告基準)対応である。
適時開示への一層の取組みに関しては、その目的は明確なのだが、はっきり言ってどうも具体化手段がはっきりしない。投資家としては、勿論、予見性のある情報を適時に公平にディクロ願いたいのだが、どうも四半期報告書・内部統制報告書導入による混乱の余波があるようにも思う。確かに、組織基盤の弱い新興企業にとっては、相当の負担感かもしれないので、マザーズ銘柄でに特例開示対応があっても良いのかもしれない。しかし、上場会社は大人の企業であるので、開示の原則はあったとしても、余り様式等の形式に囚われた開示ルール作りは避けた方が良いのではないか。行政や会計制度もルールベースからプリンシプル(原則)ベースへ移っているので、開示ルールも原則明示に留めるべきだと考える。ディスクロージャーに関しては、適時開示徹底と、その情報を投資家が利用しやすいことが重要に思うので、投資家による適時開示情報利用の視点を、取引所は持ってもらいたい。
 なお、IFRSへの対応は、取引所及び上場企業の国際競争力上必須なので、その導入をサポートする態勢整備は、大賛成である。

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