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2009/11
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東証次世代売買システムへの期待
いよいよ、あと後一カ月余りに迫った東証次世代売買システム“arrowhead”。システム素人にも、大容量化と超高速化対応という目標ぐらいは分かるが、ではいったい売買がどの様に変わっていくのか知りたい。そんな投資家の想いに対し、東証は先週末(27日)からホームページ上で、“arrowhead”の概要と売買上の影響に関し、投資家向けパンプレットを作成し、実際の値動きのシュミレーションを、Flashを使っての動画で、説明している。
超高速化対応の “arrowhead”スタートに合わせた売買制度の変更は、既に拙稿(11月20日:東証の取引高速化対応)で簡単に紹介しているが、実際Flash動画を動かしてみた感想は、取引そのものが速くなるのと、連続約定気配値制度によって、投資家に見える値動きが大きくなったように感じる。
実際の売買の約定させる処理スピードは、10ミリ秒以下なので、売買注文の板を見る人間の目には、約定値段が飛んでいくように見えるが、それまでの飛んでいる値幅内の約定は、ミリ秒単位で処理されている。
今までの約定スピードは、1~2秒程度であったので、値動きは人間の目で捕捉され、売買注文板を見ながらの発注も可能であったが、“arrowhead”では、目で見える間に、多くの約定が成立することも多くなるので、板を見ながらの発注は、今までとは意味が異なる。一方、売買注文板に関しても変更があり、今までは現在値段から上下5本の気配値表示だったが、これが8本に拡大する。また、板寄せ後の更新値幅が拡大されるのと、連続約定気配値制度によって、値動きが大きくなることも想定される。
今まで、板情報を目で見て、判断していた一部のネットトレーダーには、捕捉出来ない板情報があるかもしれないが、全体として取引高速化に伴う売買制度の変更で、取引量そのものの拡大を目指す。
 ところで、この超高速対応の取引所としての最大のメリットは何か。
それは、ヘッジファンドや大手機関投資家などの大口注文を取引所取引内に引き込み、取引所取引の流動性を上げることにあるが、超高速化への対応は、当然ミリ秒単位での市場情報を取得し、ミリ秒単位でそれを分析・判断し、そしてミリ秒単位で注文を発注するプログラムと、それを執行するシステムが必要になる。所謂“アルゴリズム”取引であるが、その目的は、大口取引の売買執行コストを、下げることにある。
 簡単に説明すると、以下の様なケースがある。
・Aファンドが、B銘柄を100万株買いたい
・しかし、B銘柄は日々10万株程度しか出来高がない
・一度に市場に買い注文を出すと、自らの注文により、買う前にB銘柄の値段を上昇させるリスクがある。(マーケットインパクトコスト)
・注文を取り次ぐ証券会社に、纏まった売り手を探してもらうこともあるが、B銘柄を買いたいという需要を他の投資家に知られたくない(匿名性の維持)し、売却相手を探している間にA銘柄の市場価格が変動してしまう。(タイミングコスト)
・また市場状況を目定めたり、証券会社に売り手を探してもらう間に、B銘柄の出来高が増減したり、価格が大きく動いて、購入機会を失するリスクもでてくる。(機会コスト)
 大口注文を発注する大手の投資家にとって、証券会社に支払う手数料より、上記のカッコ内を執行コストと考え、重要視する。その結果、Aファンドは、市場環境(市場の注文や売買状況)情報を得た上、B銘柄の買い注文を、細分化して発注する。Aファンドは、自らの大口の買い需要があることを、市場に悟られない様、細分化した買い注文の発注・取消しを、市場環境情報の変化に合わせて繰り返す。
一連の作業を、超高速で行うことにより、B銘柄100万株買いの執行コストを最小限に抑えようとする。
 この様なアルゴリズム取引は、米国では5年程前から発達し、今では米国株式市場の電子取引の半数近くに達していると言われる。米国の取引所及び取引システム、証券会社が運営するダークプール(大口取引の需要マッチングシステム)などは、このミリ秒単位のアルゴリズム取引に対応すべく、システム開発競争を行ってきた。海外投資家間の日本株取引も、このアルゴリズム取引対応のダークプールでの取引されている部分が、相当数ある。
 東証の次世代売買システム“arrowhead”スタートによって、これらのアルゴリズム取引ニーズにも対応可能となるので、大口投資家の売買ニーズに答え、結果として上場銘柄の流動性は向上すると期待されている。
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中国の資本市場
 ドバイ・ショックとでも言うのだろうか。下期に入って、経済指数や海外市場動向に関係なく、ジリジリと、金融危機後の2番底を探しに行くようだった東京市場に、追い打ちをかけられた様な格好である。また、通貨が強いのに、市場が弱いという非経済学的なジレンマと、この国の投資家は、向き合わなければならない。海外市場を重視し始めている個人投資家の気持ちも分かる。
 最近は、あまり報じられなくなったが、日々1兆円台の売買金額の東証を横目に、中国株式市場の規模は、確実に拡大している。世界取引所協会の集計によると、今年1月から10月までの各国取引所のドルベースの売買金額は、
・上海取引所:4兆223億ドル 前年同期比(△84.2%)
・東京証券取引所:3兆3489億ドル 前年同期比(▼31.7%)
となっていて、東証は時価総額では、まだ勝るものの、売買金額(月間ベースでは抜きつ抜かれつ)では上海に抜かれている。中国市場は、これに10月末から話題の新興市場“創業板”(創業ボード)をオープンした深センが加わる。
・深セン取引所:2兆1148億ドル 前年同期比(100.9%)
ちなみに、ニューヨークやロンドン取引所は、同時期に前年比で5割程度売買金額を減少させており、世界の42主要取引所中、売買金額を増加させているのは、フイリピン・韓国・台湾・トルコのアジアの取引所に限られている。
 このアジアの中核市場になりつつある上海取引所の周副総裁が、10月26日に東京で講演会をされ、その記録が日本証券経済研究所より公開されている。
中国資本市場の発展と展望
“中国資本市場の発展と展望”
詳しい内容は、こちらをご覧いただきたいが、資本市場的視点で注目しておくことを、簡単に紹介する。
・中国市場の上場企業:1651社(9月末)=メイン・ボード1334社、中小企業ボード297社
10月末からの新興市場“創業板”27社
・投資家数:4964万口座 (日本の個人投資家数推計は、名寄せした結果約1500万口座)
【中国資本市場の問題=周副総裁の指摘】
・株式市場の拡大に比べて、社債市場の発達が遅れている。(債券市場の中の6%)
・市場メカニズムが効率的に働く取引システムの整備がまだ。(上場審査が行政で行われているので、市場誘導業務の効率性が低い。信用取引制度がない。A株、B株の市場分断の問題。)
・上場企業のコーポレート・ガバナンスの問題(元国営企業だったり、親会社が国営企業の影響)。M&Aや上場廃止ルールの明確化(行政の関与)。
・証券会社の総合競争力の弱さ。(106社あるが、資産規模が小さいし、金融イノベーション力が不足。)
・機関投資家が育っておらず、個人投資家に偏った投資家構造。(流通時価総額の37%が個人所有だが、売買金額では87%を占める。一方機関投資家は、投信の保有する株式の割合が全体の15%だが、保険会社1.7%、公的年金0.9%、企業年金0.1%と投資規模が少ない。)
・自主規制機能の整備が不十分
【中国資本市場の今後の機能整備】
・2006年1月、会社法と証券法の改正により、コーポレート・ガバナンスを強化、M&A制度の向上。
・新興市場=創業板のスタート。
・OTC市場の整備=深セン、天津についで、北京・上海・重慶も申請中。
・債券市場拡大の為、取引所での債券取引に14商業銀行参加へ。
・適格外国機関投資家(QFII)制度に基づく投資枠(現在300億ドルの投資枠で、9月末時点で157.2億ドル認可)の拡大
・ETF市場の開設、その後の信用取引の認可。
 何だか日本市場と重なる部分もあるが、資本主義ではなくても市場経済を目指す今後の動きに、日本の投資家は、大いに注目しているようだ。

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個人向け社債増加、しかし個人の需要に答えているか?
昨日は、エクイティ・ファイナンスがバブル最盛期の1989年に迫りそうだと書いたが、社債市場の方も、高水準の発行で堅調であり、日本企業のファイナンス・ニーズを支える本邦発行市場の機能は、フル回転している様に思う。特に、社債発行市場での個人向け社債の発行は、昨年度ほどではないが、本年度も、高水準を維持しているようだ。住友信託調べでは、個人向け社債は、以下の様な状況になっている。
・2009年度(4月~10月末まで)9372億円(社債発行中の13.6%)
この数字は、2008年度 2兆141億円(社債発行中の21.0%)には及ばないが、それ以前の過去5年間の発行平均約4200億円(社債発行中の6.1%)を大きく超える。
 個人資産が社債に向かっている様にも思え、社債市場にとっては、大変結構なことと考えたが、過去に個人向け社債が増加した時期:2001年度1兆2209億円(社債発行中の14.9%)、1999年度1兆2290億円(社債発行中の15.8%):は、ITバブル崩壊後や前回の金融危機後で、信用リスクが増加した時と重なる。社債発行が、最近増加した中身を見ると、2008、9年度個人向け社債発行額の6~7割が、銀行債・銀行劣後債となっている。つまり増加分は、銀行の劣後調達(資本調達)に応じたものとなっていて、エクイティ・ファイナンスでも金融機関の大型時価発行増資が相次いでいる現状をみれば、個人投資家は、随分銀行の資本増加に貢献している。
 個人向けと機関投資家向けの社債の相違は何か、少し考えてみると以下の様なことがある。
・個人投資家は、機関投資家程金利変動に敏感ではなく、金利の水準を重視する傾向にある。
・個人投資家は、機関投資家程信用リスクに敏感ではなく、金利の水準を重視する傾向にある。
・しかし、販売サイドでは、個人への社債販売に関して、信用リスクをA格以上あることを原則にして、それ以下の格付け(電鉄や銀行は除く)の社債投資には、投資家の同意書を、前提にするところがある。つまり、販売の手間がかかる。
・社債の発行額面が機関投資家債は1億円だか、個人向けは100万円。又、機関投資家向けは、社債を管理する者が財務代理人だが、個人向けは社債管理会社。よって、個人向けの方が、発行時・期中との若干発行者にとってコスト高になる。
・発行者が引受業者に支払う募集手数料も、若干個人向けの方が高い。
 少し言葉は悪いが、発行者や販売者にとって、困ったとき(金利・信用リスクが増大し、多少コストをかけても資金調達したい時)の個人向け募集になっている。
 この結果、1441兆円の個人資産に占める社債の割合は、この6月末で0.03%と一向に増加しない。ちなみに国債は2.5%となっていて、社債の80倍以上保有されていることになる。社債市場の改革を議論する時に、いつもこの個人保有の低さが問題になるが、
○個人向け社債の発行が増加している。(但し、銀行の劣後債中心)
○個人の外債投資・外貨建てファンド投資は、ハイイールド債(低格付け債)を含めて拡大している。
という個人の債券投資ニーズを、日本の社債市場が取り込めてない現実につきあたる。簡単に言い切ると、個人の社債投資ニーズ(需要)はあるが、供給が上手くなされていない。
 発行する企業の問題なのだろうか。そんなことはなく、BBB-格以下まで信用リスクを拡大してみると、相当数の企業が信用リスク(個人が望む数%台の利回り)にあった利回りでの発行を望んでいる。それが出来ていないのは、やはり発行市場仲介者(証券や銀行など社債の販売者)の問題なのだろう。
 現在の個人向け社債販売は、引受業者によって行われるが、この場合、発行者との引受契約を引受業者(引受業務の認可【資本金規制】が必要)が結ぶ必要があり、結果引受業者しか社債の新規販売は出来ない。個人向け社債は、この引受方式に頼らないで、主幹事の下に販売団(銀行・証券・信金等)をおいて、その販売団に、其々の販売額を引き合わせる方法をとり、販売チャネルを拡大させては如何か。
 そうすれば、多様な販売現場での個人の社債投資ニーズを集約し、投資ニーズに応える為に信用リスクを拡大して引き受ける主幹事が増える。結果、社債発行企業の裾野が拡大していくのではないだろうか。
 ちなみに、NRI(野村総研)の2009年度調査によると、2000年以降、個人が投資を始めた金融機関は、銀行が44%、郵便局は7%に対して、既存の証券会社は31%、ネット証券は14%となっていて、金融商品の販売チャネルとしては、銀行にシフトしている。この現実を、既存の引受証券会社はどう考えるのだろう。

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エクイティ・ファイナンスの状況
 企業の資本調達に応えることは、資本市場の重要な目的なので、エクイティ・ファイナンスが増加することは、日本の株式市場が機能しているという証しである。本来は、好ましいことだが、流通市場への配慮も必要だろう。新株式が急増して、市場環境が変わる可能性があるときは、それなりの激変緩和措置も必要かもしれない。かつてのバブル時に、エクイティ・ファイナンスが急増し、その調達を制限する為に、金融当局(実質は当時の大蔵省、形式的には証券業協会)によるファイナンス規制が行われた。ファイナンスの事前審査(金融当局が行うもの)、利益配分ルール、などであったが、10年以上前90年代半ばには、全て撤廃された。利益配分ルールは、エクイティ・ファイナンス後の増配や株配などの株主への利益配分を、調達企業に強制的に迫るものだったが、今でもその名残りがあり、増資発表時の記者発表文に、調達後の株主への利益配分を、記載する欄(何もしなくとも)が必ずある。
 しかし、この様な金融当局による規制は、先進国の成熟した市場では2度と行うべきではない。市場の需給は、市場自体に委ねるべきであり、発行市場の急拡大による流通市場の低迷も、結果としては市場参加者(調達企業や投資家)の選択の結果なのだ。だた、本年の時価発行増資は、10月までに払込みを終了したものだけで、29件3兆2381億円、11月発表分が現在(11月20日)まで、14件約1兆8500億円あり、合計すると43件で5兆円を超える。出来高が日々1兆円台の市場取引には、相当厳しい数字であり、このままいくと、公募増資金額は過去記録であるバブル最盛期1989年の5.8兆円(227件)を超える可能性さえある。また1件当たりの増資額が急増しており、本年の公募増資の1件当たりの平均調達額は、約1100億円。バブル最盛期の調達額の平均約260億円と比べると4倍の調達規模になっている。11月に公表された公募増資のうち1000億円以上の大型ファイナンスは、
・T&D(11月5日公表) 1200億円調達  発行登録制度利用(本年2度目の調達)
・NEC(11月6日公表) 1236億円調達  希薄化率=28.3%
・郵船(11月12日公表) 1428億円調達  希薄化率=37.4%
・日立(11月16日公表) 3000億円調達  希薄化率=34.1%(他にCB1000億円)
・三菱UFJ(11月18日公表) 1兆円調達  発行登録制度利用(昨年末以来)
※NEC以外は、公表時の数字で、実際の調達額と異なる。(実際の調達額は、発行価格が決定してから)
これらの大型ファイナンスは、国内外で募集を実施するグローバル・オファーリングである。
以前にも紹介したが、グローバル・オファーリングの際には国内外の募集配分を決めるため、公表前に海外主要投資家に需要を事前打診(プレヒアリング)して、海外募集分を決める発行慣行(海外引受業者の慣行)がある。つまり、国内にいる投資家や株主より、事前にファイナンス情報を得る可能性がある海外投資家がいるということだ。企業にとって、ファイナンスは戦略を実現する為の重要な資本調達なのだから、ファイナンス情報に対する配慮は必要で、せめてファイナンス情報が投資家や株主間で平等に行き渡る発行登録制度を利用すべきというのが、大型ファイナンス=グローバル・オファーリングに対する筆者の主張である。
発行済みの3割以上発行するのも、最近の大型ファイナンスの特徴であるが、希薄化(ダイリューション)に対する配慮も、必要である。公募増資に当たっては、以下のことも、検討されては如何か。
・公表時より、株価が大きく下落した場合は、増資を延期する。(時価以下発行の規定に拘らないで)
・公募増資よりは、市場インパクトが緩和されるCB(新株予約権付社債)で調達を行う。銀行の様に、直接資本調達が必要な場合は、一旦劣後CBで発行しておいて、株式への転換を、段階的に強制転換するスキームで、国内募集中心に行う。CBは国内上場して、CBの流動性を高めておく。
企業が、金融危機後の積極的な事業展開で、資金調達をしていることは分かるが、本当に時価発行増資が、最善のファンナンス手法なのだろうか。ちなみに、2006年には、公募増資1.6兆円に対して、CB調達は2.6兆円あって、合計4.2兆円の企業の資金調達を支えた。
引受業者は、もう少し工夫する必要があったかもしれないというのが、現在の株式市場水準での、答えだろう。
日本企業の公募増資

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投信の目論見書
 永くこの業界で仕事をさせていただいているが、最近の投信のテーマ選択は本当にすごいと感心している。金融危機後の株式市場が安値をつけた2月以降を見ても、株式市場の反転を見込んだ目標設定型・グローバル金融株そして中国株から新興国投資、さらにグローバルREITから外債ファンドまで続いているが、証券会社のアドバイザーの言う事聞いて、ちゃんと乗り換えていけば、ヘッジ・ファンドも敵わない運用成果になったと後悔している。投信は、売る物ではなく、投資するものだったと改めて思い返す。
 この投信に関して、販売する際の情報開示をもっと分かり易く、かつ投資家が不利益を被る可能性があることを、ちゃんと公表していこうという原則案が、証券監督者国際機構(ISOCO)より11月16日に公表されている。以下、投信=集団投資スキーム(CIS)を、リテール投資家に販売する際の開示原則案の概要について紹介する。(カッコ内は、筆者の解説)
①重要情報として開示されるものに、商品の基本的な利益・リスク・条件及び費用、販売時の仲介者の報酬や利益相反に関する内容を含む。
(投資家との利益相反若しくはその可能性がある情報を開示することになるが、例えば投信を管理する手数料の一部が、仲介者へ払い戻される割合の記載等)
②重要情報は、投資家がその内容を検討し、投資判断を行う機会を持つ為に、販売前に投資家に無償で提供もしくは利用可能とする。
(日本に於いては、投信目論見書の提供は、交付目論見書(目論見書の主要部分)をあらかじめ又は同時に交付することが義務付けられているが、実態は、投信の購入を実質的に決定した後に交付されている場合が多い。例えば、投信内容を比較する為、口座開設前に投信目論見書を請求しても、実際に入手できるかは、証券・運用会社でマチマチな対応となっている)
③重要情報は、投資家に適切な方法で提供もしくは利用可能とされるべきである。
(運用会社や販売する証券に請求したら、目論見書が必ず送付されるのも良いが、投資家が投信の購入前に比較検討を目的にした場合、ネットでダウンロード出来る方が利便性は高い)
④重要情報の開示は、競合商品との比較を容易にするため、平易な言葉で、簡略で、入手しやすく、比較可能なフォーマットで行う。
(現行の投信目論見書も、一昔前に比べると随分分かり易くなったと思うが、問題は投資家が比較検討するには、相当読み込まなければ難しい。同一フォーマットで開示すれば、比較はし易いが、問題はその比較検討する投信の目論見書の、入手の容易さが必要になる。例えば、投資戦略毎に分類された投信目論見書プラットホームの様なものが構築されれば、投資家の利便性は格段に向上するだろう。)
⑤重要情報の開示は、明瞭で正確であるべき。それが、定期的に更新されるべき。
(例えば、運用方針や運用管理会社の変更などの情報をどう伝えるか。日本では、目論見書は販売時点での開示資料なので、運用報告書などで、投資家への開示を充実させるのか、又は別の手段か)
⑥どのような重要情報開示を仲介者(投信の販売者)と商品組成者(運用会社)に課すかは、開示する情報を誰が管理しているか考慮。
以上が、ISOCOの6つの原則案であるが、投信目論見書に開示が義務付けられても、投資家が読まなければ意味が無いとして、投信目論見書を読みこなすだけの金融リテラシーを強化する為、投資家教育への支援を求めている。
一方、本年度の金融商品取引法改正を受けて、開示制度における内閣府令案が現在パフリック・コメント中(12月7日まで)であるが、その中でも投信目論見書に関して、以下の見直しが行われている。
・交付目論見書を、読みやすく、比較しやすくする為に、新しいフォーマットにして提供する。
・請求目論見書は、有価証券届出書と同じとし、幅広い情報を提供。
・電話による請求でも、目論見書の電子交付を利用できる(今は書面か、電子メールでの投資家の承諾)
しかし、業界の人間であれば開示書類を読みこなすことは仕事であるが、比較検討する為、投信の目論見書を数冊読み込むこと自体、相当な労力を要する。一つのアイデアとして、開示書類はXBRL(eXtensible Business Reporting Language=ネット利用の共通言語)化しているのだから、個人投資家用に投信目論見書を比較検討しやすいXBRL用ソフトを開発し、投信の販売会社間で共同利用しては如何だろうか。

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東証の取引の高速化対応
 話題としては少し早いかも知れないが、来年1月4日には東証の次世代売買システム“arrowhead”が稼働する。取引対象は、東証で取り扱う全ての現物(株、CB等)にかかるオークション取引である。このシステムは、東証が300億円を投じて開発したといわれるが、注文応答のスピードが100倍以上速くなり、10ミリ秒以下の高速化に対応する。勿論、高速化だけではなく、注文・約定・注文板などの取引情報を三重化して保護する信頼性も確保して、世界最高水準の取引所システムになる。
 “arrowhead”での取引開始に合わせて、東証は以下2つの施策を行う。

【売買制度の見直し】
・年末年始の半日取引→全日取引(オプション・先物も)
・同時呼値の配分ルールは、数量の多い順から配分(同数の場合は、記録順)
・呼値の単位を一部細分化へ:例=株価2000~3000円は、現行5円から1円へ
・制限値幅及び更新値幅の拡大へ:例=株価1000~1500円は、現行制限値幅200円・更新値幅20円から其々300円・30円へ
・連続約定気配の新設:更新値幅の2倍を超えて売買する場合には、“連続約定気配”を表示。更にその値幅を超えて売買が続く場合には、“特別気配”を表示
・板寄せ時の合致条件の見直し:ストップ配分時には、最低単位の反対の売買呼値があれば、売買が成立

【コロケーションン・サービスの拡充】
 取引参加者による取引の高速化に対応する為、取引参加者の自動発注サ-バーと、取引所の売買システムや相場報道システム等との距離を縮め、データ授受の遅延を極小化することを目的に、取引所のデータセンター内、又はアクセスポイント近くに、取引参加者が機器を設置する場所を貸す。米国では、取引所サービスとして拡大していて、複雑なプログラムを組んで大量に多数の銘柄を売買する証券会社やファンドの高速化ニーズに沿ったものだ。

 取引の高速化対応は、取引所機能の充実の為には必須条件となるが、それを使いこなす証券・投資家側も、高速でやり取りする情報の処理の為、プログラムの開発や取引所システムとの接続機器能力の向上が求められる。勿論、取引所システムに直接接続できるのは、取引参加者の証券なのだが、その証券業者より提供されるDMA(Direct Market Access)サービスにより、ヘッジ・ファンドや主要な機関投資家は、直接取引所への注文発注が可能になっている。よって、ミリ秒単位の取引所の売買システム高速化のメリットは、証券会社は勿論のことファンドや機関投資家までに及ぶ。
最近、米国を中心に一部には売買システムの高速化が進むことに、批判が出始めている。フラッシュ・オーダーの件は、拙稿(10月15日公表分)で紹介したが、DMAで提供されるサービスで、証券会社が顧客に市場で自由に超高速取引を行うことを許可する「ネーキッド・アクセス」について、米SECが規制を検討していることが、先月末、伝えられている。背景には、超高速売買で多額の利益を上げているGSなどの投資銀行批判(ニューヨークタイムズ)があるようだが、一方では米国での超高速売買は取引高の半数以上を占めるほど拡大している現実がある。
 大口取引を行う投資家は、別にヘッジ・ファンドでなくとも、取引の匿名性の確保と、自らの取引が市場に与える影響を極小化しようとするのだから、取引数が多くなるのは避けられない。それを処理する為のプログラムも高度化するのは、当然だろう。取引の高速化は、取引手法のイノベーションを生むので、海外市場の堅調を横目に、日々の売買高1兆円台に留まる東証の為にも、推進し、かつ活用すべきだろう。
確かに、ミリ秒単位更にそれ以上のマイクロ秒単位は、現状では個人の取引では直接使えない高速化かもしれない。しかし、日本株の取引が、海外などのダークプール(海外の証券会社内取引システムもしくは証券会社間共同の取引システム)に流れて東証取引が空洞化しない為の工夫も必要で、東証の出来高が増加すれば、日本市場での流動性も増し、それが個人投資家への恩恵となる。
ただし、取引高速化の個人への直接のメリットを考えるのは、市場仲介者の宿題でもある。
 

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ファイナンシャル・プランナーというビジネス・モデル
 FPといわれるファイナンシャル・プランナー(以下FP)について、金融商品のチャネルの視点から、改めて考えてみたい。
そもそもFPとは、何なのか。一般的な解釈は、顧客のライフプランに合わせて、預貯金、株式・投信・債券などの金融商品、保険、不動産、税金、年金、ローンといった幅広い分野に関するアドバイスを行う業務とされ、具体的には、
①顧客情報をヒアリング
②顧客の金融面でのゴールや目的を確認
③問題点を見極める
④書面による提案書を作成
⑤提案書の実行を支援
⑥その結果の検証を行い、必要な調整もアドバイス
といった行動をとるとされている。なかなか専門性の高い業務だが、日本におけるFPは、この3月末で15.4万人もいて、現在8万人の証券外務員数よりかなり多い。日本のFPは、業法で定められる業務ではなく、資格保有者の呼称であるが、以下の様になっている。
AFP(Affiliated Financial Planner)=資格更新要件である継続教育により常に知識とスキルを高めている FPに付与される普通資格:13.8万人
CFP(Certified Financial Planner)=世界水準のファイナンシャル・プランニング・サービスを提供できる、プロフェッショナルであることを証明する上級資格:1.6万人
以上は、日本FP協会により認定されるが、この他にFP技能士という国家資格もあり、これらの資格保有者を総称してFPとしている。この総数は、25万人いると言われている米国のFPに劣らない規模になっているが、金融商品販売チャネルとしての実態は随分異なるようだ。
 それは米国のFPがビジネスとして成り立っていて、FPの半数近くが、独立系のFPかFPが設立したプランニング専門会社に所属しているが、日本は、生保及び生損保代理店に所属するFPが2割、一般事業会社・証券や銀行など金融機関・官公庁など既存組織に属するものが5割となっていて、独立系のFPは限られていることだ。まだ日本では、本業のビジネスに付随するサービスとしてファイナンシャル・プランニングを実施している事が多いようだが、それでもFP業務の収益性は向上している。
 日本FP協会による“平成21年度FP実態調査”によると、FP資格者の内、約1割程度がFP業務により収入を得ているようであり、FPとしての経験が長くなるにつれ年間収入が高くなる傾向にあり、業務経験9年以上のFPの16・7%が、年間1000万円以上のFP業務収入を上げている。
また、業務収入の内訳は以下の様な調査結果となっている。【】内の数字は、5年前調査
・相談料(1時間あたり):8,500円【6,200円】
・法人顧客1人当たりの顧問料(1ヵ月):76,000円【29,000円】
・個人顧客1人当たりの顧問料(1ヵ月):18,000円【11,000円】
・提案書作成(1件当たり):42,000円【38,000円】
・執筆料・講師料(1件当たり): 40,000円【22,000円】
・講演料・講師料(1件当たり):36,000円【30,000円】
・募集・仲介・販売手数料収入(1ヵ月当たり):562,000円【403,000円】
5年前に比べると、法人の顧問料と金融商品手数料が大きく伸びているのが分かる。
 もっとも、金融商品手数料を得る為には、証券仲介業をするか、証券会社と個別の契約を結ばなければならない。つまり、FP業務そのものは、現在は業法には縛られないが、ファイナンシャル・プランニングの結果、金融商品を販売若しくは仲介しようとすると、金融商品取引法による仲介業登録をするか、証券会社と専任契約が必要になる。またプランニングで、投資する対象が株や投信の金融商品に及べば、金融商品への投資助言業(登録制)にあたるのではないかとの議論もある。
 せっかく日本においてもFP業務が育ちつつあるようなので、投資助言と金融商品販売を兼ねるFPを一括してFP業として登録制にして、独立系のFPが育つ為の議論をしては如何だろうか。

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提言:大型時価発行は、発行登録制度の利用を
本当にバブル期に匹敵するような数字になりそうだ。公開企業の時価発行増資であるが、20年とか30年ぶりといった大企業のファイナンスが相次いでいるので、それも当然かも知れない。ちなみに、20年前のバブル絶頂期である1989年の公募時価発行は、5兆8302億円(東証要覧より)であった。
 数百億円とか、数千億円の時価発行が相次ぎ、ついには過去最大となる1兆円増資(普通株)まで出てきて、日本の発行市場は、低迷する流通市場を横目で見ながら、大繁盛である。資本調達の場としてフル回転(?)で機能しているのだから、本当は結構なことなのだが、このままでは6兆円にも達しそうな調達額と、毎日の売買高が1兆円台の流通市場を並べてみると、日本の流通市場だけ低迷する理由として、ファイナンスによる需給悪化といった月並みな理由を上げたくなる気持ちも分かる。
 しかし、ファイナンスによる資金調達の中身をみてみると、大型の設備投資や投融資(ただし、アジアなど海外への投資中心)が多く、企業がリスクマネーを調達して、積極的に事業展開しようとしている戦略が読み取れ、金融危機不況からの脱却を試みようという積極姿勢が明確になっている。これだけのファイナンスを消化するのだから、日本の発行市場も大層なものである。現在の、流通市場の低迷は、日本企業が生まれ変わる、産みの苦しみと解したい。
 ただし、流通市場への配慮は必要だ。発行済株数の3割以上を調達する大型ファイナンスを実施する企業が目立っているが、これらの大企業は歴史も古く、個人株主数も多い。この個人株主まで、きちっと理解できるよう、ファイナンス情報を適時・適格に公表する仕組みとして、大型の時価発行増資において発行登録制度を利用することを提言したい。
ファイナンス情報は、元々重要事実としてインサイダー情報になるが、この情報の取扱いについて、大型ファイナンスの場合の引受慣行から、公表前に一部投資家が知る可能性が高い作業を行うケースが多い。
ファイナンス公表前の、発行プロセスの概要は以下の様になる。

【グローバル・オファーリングの概要】
・発行する企業は調達額を纏め、調達方法を主幹事(引受証券)に相談
・大型時価発行の場合、国内と海外で募集するが、この比率は、主幹事のアドバイスによる。
・主幹事は、国内外の時価発行株に対する投資需要を想定するが、国内分は自らの販売網から推測を行う。一方、海外分は主幹事(海外業者)が、主要な投資家にヒアリングを行い、その投資需要を集約する。
・主幹事は、上記の作業から国内・海外の募集割合に関する企業にアドバイスし、企業はこれを基に発行を決議して、時価発行の内容として公表される。
※つまり、大型時価発行のファイナンス情報は公表前に、このプロセスにより海外の主要な投資家に伝わる可能性が高くなる。勿論、海外分の主幹事は、年金や投信など中長期投資家主体に投資需要のヒアリングを行うが、ヒアリングを行うのが海外業者なので、日本の法規制や日本の主幹事の情報管理は及ばなくなる。

 事例として適切かは別にして、直近の日立の増資に関しても、会社公表前に時価発行3000億円、新株引受権付社債(CB)1000億円と、その後の会社側公表に近いファイナンス内容が報道されていたが、これらのファイナンス情報を、公表数日前に知る投資家の存在を、既存株主はどう考えるだろうか。調達資金が、企業の戦略に沿った前向きな使われ方をするにしても、3割以上の希薄化を伴う情報に関しては、その取扱いはセンシティブであるべきだ。
グローバル・オファーリングの概要で上げた最初の段階で、調達総額とその方法を発行登録書で公表して、既存の個人株主にもファイファンスの概要を知らせる。その後、需要予測を国内・海外で堂々と行い、その結果に基づいて国内外の募集比率を決める。ファイナンス情報共有の為、その位の手間をかけても良いのではないだろうか。
※通常の開示制度では、国内募集分は有価証券届出書、海外募集分は臨時報告書となるが、筆者の主張は、調達総額を纏めて発行登録書で公表しておいて、国内外の比率が決まれば、この発行登録書を取下げ、国内分の有価証券届出書、海外分の臨時報告書を改めて出し直す方式。今年1度目の野村のファイナンスがこの形に近い。

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社債市場改革は何故必要なのか
 日本の社債市場は、何故改革しなければならないのか。一般の投資家からみると、本当は分かり難い議論かもしれない。一応、米国と比較してみる。(日本は2009年3月末、米国2008年末:1ドル=90円換算)
・社債市場の規模は十分か?:日本での発行残高56.1兆円(GDPの11%)、米国での発行残高338.4兆円(GDPの26%)となっているが、貸出比率の高い日本の銀行モデルと米国の違いを指摘する考えもある。
・個人の保有は進んでいるのか?:日本銀行資金循環統計によると社債の個人保有は0.1兆円(社債全体の1%未満で、同時期の米国149.4兆円(社債全体の15%)と大きくことなる。筆者の感覚では、昔から電力や電鉄などの個人向け社債があるので、個人の社債保有はもう少し多くても良いよう思うが、米国での個人保有水準とは全く規模が異なっていて、社債の個人保有はまだまだ進んではいない。最近、日本国内でも低格付けの個人向け社債が発行されるようになった事は、多少の改善か。
・社債の発行は十分か?:日本では313銘柄、うちA格未満は15銘柄。米国では7062銘柄、うち非投資適格(ジャンク債と言われる格付けがBBB未満のもの=最近はハイイールド債とも言う)は445銘柄。
・社債の売買高は十分で、流通機能が市場で確保されているか?:日本証券業協会によると一日当たりの社債売買高は2000億円、米国は1兆3000億円。
以上の様な相違になっていて、経済構造や金融モデルの違いを差し引いても、社債市場の問題は、①個人保有拡大推進②低格付(BBB格)以下の発行機能構築③流通市場の機能整備という3つの問題に集約することが出来る。しかし、考えてみるとこれらは社債市場における10年来の問題でもある。何故、10年も改善しないか、若しくは改善するポイントは何か、市場仲介者の視点で、少し考えてみる。

【社債の個人保有】
日本の低金利の社債を個人が選好するかとの懸念もあろうが、国債は個人向け貯蓄国債が始まってから個人はその保有残高を39.4兆円まで拡大している。個人向け高格付け低金利債といっても、本来はクレジット・リスクから、国債よりは利回りが上回るのだから、問題は売り方だろう。又、最近は個人資金が海外のハイイールドボンドへ、直接・間接(ファンド)により1000億規模で流れているので、個人の社債に対する見方も変化している。証券・金融などの現場では、未だに個人への販売を原則A格以上とし、それ以下は実質取り扱かわない場合が多いと聞くが、ファンドで良くて債券では何故問題なのだろうか。両方とも元本保証ではない金融商品なのだが。(社債の場合は償還リスク)

【低格付け債の発行】
米国では、投資リスク許容度の回復によりジャンク債(ハイイールド債)の発行が回復・増加していて、企業の倒産率を数%押し下げていると報じられている。実質経済にも影響を及ぼす本来の市場機能とは、この様な効果を生むものだろうが、残念ながら日本にジャンク債(BB+格以下)市場はなく、BBB格の発行市場も十分と言えない。せっかく個人投資家が、ハイイールド債投資に注目しているのに、その資金が日本を素通りして、海外に向かうのは、国全体の経済でみると損失以外の何物でもない。証券・金融の市場仲介者は、低格付けの発行ニーズを掘り起こし、投資家へ販売すべきである。個人への販売を考えるなら、BBB格BBB-格は直接、BB+はファンド化して投資ニーズとマッチングする努力を行えば、日本でもジャンク債市場は構築出来る。金融機関を抱える私募債も、ファンド化して販売する事を試みれば、一気にジャンク債市場が成長する可能性もある。

【流通市場】
日本の投資家は、社債に関してバイ・アンド・ホールドだからと流通機能拡充を諦めないで、市場仲介者が行うべきことがある。それは、社債に関する情報について、取引参加者間で共有することだが、個人投資家まで含む前提で社債市場拡充を検討するのだから、公表と言うことになる。
①社債そのものの情報である社債要項。
②発行者の信用力に影響を及ぼすローンの特別な借入条件の開示。
③流通市場での取引情報。
④格付情報、CDS(クレジット・デフルト・スワップ)取引情報。
以上を公表し、いつでも投資家が引き出せる情報共有の仕組みが必要である。

 よく社債市場の議論になると、日本の公募社債や私募債の金利がクレジット・リスクに比べ低すぎるとの批判がでる。また銀行の保有比率の高さも問題になり、融資の代替との批判も出る。しかし、これらの議論は、日本の金融構造の論点となり、神学論争的に混線しかねない。市場仲介者として為すべきは、取引者間の情報共有の促進と、せっかく大きくなりかけている個人の投資ニーズを、発行体にマッチングさせる工夫を行うことだと考える。

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金融審議会凍結に反対する
 はっきり言えば、金融ビックバン後ここ10年来の金融・資本市場に対する行政については、比較的透明性が高かったと信じている。それは、変革が必要な問題に関して、金融審議会のワーキングなどで議論がなされ、方向が固まれば、翌年の施行を前提に法制度が整備される。そのプロセスが出来あがっていて、証券や金融は、審議会の動向を見ながらの組織整備を行ってきた。本年のファイアーウォール規制緩和に伴う動きなども、その流れに沿っている。
 ワーキング・グループやスタディ・グループでは、異なる意見も明確にされ、議論に関しても、詳細な説明資料や議事録により、論点整理のプロセスの透明性は確保されていた。重要なことは、整理された議論の結果(結論)ではなく、その結論にいたった文脈が明確に示されることによって、何故変える必要があるか、この業界の関係者が理解することだ。
この業界も、金融技術進化という名の下に、業務が複雑化してきていて、金融商品毎、デリバティブ、取引と決済と管理のプロセス毎、問題の本質は専門家でなければ理解し難いことも増えている。金融審議会のワーキングにおける主要プレーヤーの説明や学識者の議論は、この複雑化した問題を、業界の経営者等が文脈で理解する上で役立っていた。新規参入者もそうかも知れない。つまり、金融・資本市場参加者にとっての、問題点理解に為の情報共有の“場”として、十分に機能している。
勿論、金融審議会で纏められたことが、全て政策に反映される訳ではないし、法規制改正の全てが金融審議会による訳でもない。金融危機対応や、投資家が不利益を受けることは、行政として金融庁が迅速に施政されることもある。
 報道によると、その金融審議会は、現在審議中の金融規制の再構築を探る基本問題懇談会報告をもって、当面凍結するという政務官表明が伝えられている。
 一方、来年度の通常国会に向けて、金融・資本市場に係る以下の件を検討することを、政務3役名で13日に公表している。
○店頭デリバティブ取引に関する規制
・清算機関の位置付け等
○ヘッジ・ファンドに関する規制
○証券決済・清算態勢の強化
・国債レポ等の清算機関の態勢強化等
○証券会社の連結規制等
○投資家保護・取引の公正の確保
・デリバティブ取引等に係る公正の確保等
以上に関して、市場関係者から適宜調査を行い、論点整理・骨子を纏め、その内容を年内に公表することを目途としている。
 検討項目に関する感想を述べると、決済・清算機能の強化以外、金融サミットで合意されたグローバルな監視体制の構築に関するものが中心となっていて、日本の金融・資本市場の強化戦略がないのが残念に思う。例えば、まだ起動してこないプロ向け市場・資本市場の入口となる新興市場改革と活性化の問題・証券業協会でワーキングが立ち上がった社債市場改革など、市場の成長戦略が、今後織り込まれる事を期待したい。
この業界の問題は、金融危機で問題となった証券化商品でなくとも、金融取引は複雑で専門的な事が多い。 事業仕分けなど見ていて、政治主導とはこういったことかと改革の風も感じるが、結論だけの箇条書きの公表だけでなく、専門家や主要プレーヤーの異なる意見も公表されてこそ、市場の参加者間の情報が共有され、何故そう判断したか、結論が文脈で理解される。
そうあってこそ、日本国民みんなの金融・資本市場の戦略も、見えてくるのではないだろうか。

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CDS清算機関は何故必要か
CDS(Credit default swap)取引は、そもそも日本においては取引量も余り多くはないし(取引関係者によると、日に30件程度)、取引所もないのに、何故CDS清算機関が必要なのだろう。一部の方々を除いて、金融関係者でもなかなか分かり難いが、実際に東京証券取引所と東京金融取引所においては、それぞれ清算機関設立案を検討するワーキングが開催されていて、現在もその実現に向けて、検討中である。
議論としては、CDS取引は社債やローンのクレジット・リスクのヘッジに使うのであるから、そもそも日本における社債市場を活性化したり、その社債の清算機関を作る方が先ではないかとの考えもあるが、例え社債市場が未発達であっても、清算機関が必要な理由を考えてみたい。
CDS取引の流れを簡略化すると、以下の様になる。
①取引を約定=保証する債権にたいして、プレミアムをいくら払うか。又、対象とする債券の保証は、どの様な事象(クレジット・イベント)で実行するか決める。
②約定照合=取引そのものは相対で決めるが、混乱やトラブルを避ける為、主要な取引者である金融機関は、ISDA(International Swap and Derivatives Association(国際スワップデリバティブ協会)の定めた基本契約書を事前に取り交わし、CDS取引に関する定義書及び取引様式に沿った取決めが為されているか、取引の照合を行う。
③担保授受=取引の履行を確実にするため、CDS取引に関する担保額を定め、その担保(高格付け債券等)を受け渡す。その後も、取引リスクの変化に応じて、担保額は調整されるので、この分の受渡決済も加わる。
④プレミアム授受=保証料のプレミアムは、対象とする債権に対するパーセンテージで示されるが、その受渡しは、3ヵ月若しくは半年に一度なされ、これが取引終了期限まで続く。
⑤クレジット・イベント発生とその確認=クレジット・イベント発生確認は双方の合意によるのが基本だが、最近はISDA解釈を求めるケースもある。例えば、事業再生ADRを申請したアイフルに対して、第二位の債権残高をもつあおぞら銀行は、債権の大半をCDSでヘッジしていると言われるが、新しい企業再生手法である事業ADRで再生されるこのケースに関して、支払い条件等の変更に当たるクレジット・イベントなのかどうか解釈を求めている。
⑥クレジット・イベントによる決済=現物のローンや社債を引き渡すか、現金決済をおこなうが、対象企業からの資金回収は、保証した側(プロテクションの売り手)が行う。最近は、全体の回収期間を早める目的で、主要なCDS取引者間(欧米大手銀行)によるオークションが実施される場合が多い(ISDA主催)。オープションにおいては、CDS保証内容と想定される回収率によって、CDS引き取り値段が決定される。
 簡単に書いたつもりでも、あまり間緑化出来なかったようだが、それ程照合作業とオペレーションは多岐に渡り、そして複雑化している。これらの作業をサポートする目的で、既にデータベースや照合システムが作られていて、DTCC(The Depository Trust and Clearing Corporation=米国の証券決済機関DTCの親会社)が提供しているが、これが欧米金融機関間ではディファクト・スタンダード化している。
日本における清算機関設立試案においても、約定照合においては、このDTCCが提供するCDSのデータベースと決済照合システムの活用が前提になっている。では、日本のCDS清算機関は何をするかというと、以下の2つの主要な目的があるように思う。
A:CDSの主要な取引者間のカウンターパティー・リスクを減じる。=日本においても、現在の主要な取引者は、欧米の金融機関であるが、リーマン・ショックの様なケースの場合、日本の取引者である金融機関への連鎖的影響を避ける為には、清算機関があった方が良い。ちなみに現在の清算機関検討案は、金利スワップも含むOTCデリバティブの清算機関として合わせて検討されているので、日本の金融機関にとっても影響は大きくなっている。
B:清算機関設立を通して、日本におけるCDS取引の標準化を図る。=アイフルのケースでも分かる様に、CDSの売り手買い手が日本の金融機関であっても、クレジット・イベントの解釈などが、欧米の金融機関の取引ルール(ISDA)に大きく影響されているのが現状だ。この事は、アイフルでもJALでも、CDS取引が相当積み上がっていれば、個別企業の再建にも影響を与えることもあり、GMのケースも問題になった。つまり、日本企業の再建と日本の金融機関の信用リスク判断を、海外に委ねるのを避けたいという行政判断も今後あるだろう。
 CDS清算機関設立の意義は、取引実態からは分かり難いが、その意味を日本の金融機関は理解して、相応のコスト負担に応じた整備を、欧米清算機関に遅れることなく、実現してもらいたい。
(海外のCDS清算機関としては、現在ICE(インターコンチネンタル取引所)グループのものが欧米で優位に展開しているが、日本の設立は、早くても来年後半以降の模様)

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金融危機の主因としてのCDS取引
 リーマン・ショックから1年を過ぎて、今回の金融危機の原因に関する、金融システム論からの分析も、だいぶ出揃ってきた。一時あったような、欧米の金融機関の貪欲さを原因とする情緒論的議論から、だいぶ分析にも冷静さが戻ってきていると思う。当初はサブ・プライムや証券化商品が原因と言われても、日本の金融市場からみて、何故これほどまでに証券化商品を、欧米金融機関が積み上げたか、実感として良く分からなかった。つまり、信用リスクのチキン・レースの如く、自己資本を越えるまで証券化商品を積み上げる行為を、金融工学技術や金融リスク管理に優れた欧米金融機関が、積み上げてしまったのか。
 学術的分析は研究者に譲るとして、資本市場的視点でいうなら、この信用リスクを本来はヘッジする目的のCDS(Credit default swap)取引及びCDSの証券化商品としてのCDO(Collateralized Debt Obligation)に関する需要と供給が大きく歪んでしまったからだと考える。
そもそものCDSは、以下の様な内容になっている。(単純化している)
【CDSの基本構成】
・保有する債権(ローン・社債)の信用リスクを縮小させたい銀行や投資家が、プレミアムを支払い元本の保証を買う。(プロテクションの買い)
・信用リスクに投資したい保険会社やファンドなどが、保証を売る。(プロテクションの売り)
・保証する債権の相手方は、国・政府系組織・企業となる。(参照組織)
・保証することが決まる事象をクレジット・イベントと言い、①倒産②支払不履行③支払条件の変更(リストラクチャリング)の3つを指定するのが一般的で、この事象が対象となる企業で起きた場合、プロテクションの売り手は、買い手に対して、保証した債権の弁済を実行しなければならない。
・弁済の方法は、プロテクションの売り手が、プロテクションの買い手に保証金額を支払い、保証した債券やローンを受け取る現物決済。又は、保証した債権の回収率(参照組織:企業からの)を想定して、それを保証した債権から差し引いた金額を支払う現金決済がある。
・現物決済の場合、企業からのローンや社債の元本回収は、債権を保証したプロテクションの売り手が行うことになる。
 以上の様に、CDS取引は、本来は金融機関にとって、保有するローンや社債の信用リスクヘッジなので、この取引自体だけなら、サブ・プライム・ローンの様な問題商品の破綻の影響はあったとしても、金融危機までにはならなかったはずだ。(日本では、ここまでの機能も未発達である。)
 しかし、CDS取引は急拡大し、かつ仮想CDS取引ともいえるCDSの証券化商品CDOの増加が加速し、ピークといわれる2007年上期にはCDS残高は57兆ドル、その証券化商品であるCDO発行残高は350兆ドルに達した。
 冷静に考えるなら、本来は信用リスクのヘッジに使われるCDS取引が、なんと6つ以上のCDOで使われたことになり、一つのCDSがクレジット・イベントを起こすと、その影響は6倍にも増幅されてしまう。
【CDS取引増幅装置としてのCDOの組成】
・CDOは、個別企業のCDSを購入して、均等割合でポートフォリオを組む。
・優先劣後の構造を使い、格付けの高い順からスーパー・シニア、シニア、メザニン、エクイティと切り分けられ、投資家に販売される。最上級格付けAAAのスーパー・シニアは、CDS全体の半数以上を占めるが、利回りが抑えられる。その為、シニアやメザニンが販売されても、除々にスーパー・シニア部分が売れ残るケースが増加していた。
・売れ残ったスーパー・シニアを集め、再証券化を試みると、同一のCDSが再度使われることになった。これが数度繰り返されたケースも増加。結果として、CDS残高が膨張した。
・CDOの利回りを上げるため、材料であるCDS価格を上げる必要があった。その為、CDSの弁済率は、本来100%なのだが、例えば50%に抑えて、CDSそのものにレバレッジを掛ける仕組みも使った。つまり、同一の債権を保証しているはずなの、CDSその1は100%、CDSその2は50%の弁済なので、実際の回収に対してCDSその2は、2倍の効果を持つ。

 以上の様な基本構造がCDS取引を必要以上に増加させ、一部はその内容を劣化させたが、問題は本来信用リスクをヘッジするべき金融機関が、グループとしてあるいは本体で売れ残ったCDOを保有して、信用リスクを増加させてしまった。また、CDOの商品組成も、自らのグループあるいは本体で行っていたので、結果は売り手、買い手、仲介者の一人3役を演じたケースも多いようだが、信用リスク回避手段のCDS取引が、信用リスクを増幅させたのは、何とも皮肉な結果である。

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資本市場に於ける情報の共有について
市場参加者における情報の共有は、一般論としては当然の様に思うが、では何処まで情報共有が必要なのかというと、議論や学説も分かれることがある。それは、取引参加者自らが、自分でコストを負担して入手(分析)した情報もあるので、その場合、自らの利益を優先して取引を行うことは、情報の共有より優先する。しかし基本的には、その市場における取引参加者間で合意された範囲で、情報の共有が行われるべきで、何が共有されている情報で、何が共有されていない情報かは、市場及びその仲介者が、明確化する必要がある。問題があるとすると、共有されていると思われる情報が、実は取引にとって余り意味がなかったり、情報共有の目的とは異なったものであることだ。単純に言い切るなら、使えない情報は、共有化しても無駄になる。
 日本の資本市場において、例えば機関投資家と個人の様に、取引参加者間で、明らかに情報収集能力の格差がある場合の情報共有問題に関して、現状の論点を考えてみたい。
【株式市場】
 インサイダー取引や相場操縦など取引に関する行為規制があるので、取引参加者間の情報共有は最も進んでいる。公開企業の情報は、開示制度により、その情報共有化は問題ないとして、取引に関する情報も随分共有されているが、以下のことは、少しその意味を考えるべき時期ではないだろうか。
 所謂信用取引に関する情報であるが、この情報共有の意味は、何なのだろうか。勿論、情報を判断することは、個々の投資家の問題なのだが、よく投資家が注意を払う信用残高や信用倍率は、どの様に一般的に解されているのだろうか。もし、お金を証券会社に借りて株を買っている分・株を借りて売っている分→短期的な売買指向の統計と思われているなら、実態は少し違うかもしれない。
 お金を借りてする取引は、ファンドなどが使うエクイティ・スワップやCFD取引でもあるし、株を借りて空売りする取引は、株レポ取引(株式レンディング)と言われ信用取引での貸株の数倍の規模になっている。もし投資家が株を借りて空売りしている株数の情報が欲しければ、信用売り残にこの株式レポ取引でレンディングされている分を合算しなければ、その実態に近づかない。
 株レポ取引は、大手投資家同士の取引(例えば生保が貸して、ヘッジ・ファンドが借りる)で、証券が仲介するOTC(店頭取引)なので、その集計は報告義務でも課さない限り難しい様にも思える。しかし、投資家がこのレンディング情報の共有化を望むのであれは、方法はあると筆者は考える。売買でも、貸し借りでも、ペーパレス化された株式のデータを移動させなければならず、その移動されたデータから現物取引及び信用売り分を差し引けば、レンディング数量の把握は可能である。問題は、誰がコストを負担して、その様な作業をするかということだろうか。
【社債市場】
 そもそも流通市場は未発達と言われて久しいが、バイ・アンド・ホールドの投資家に頼る発行市場中心の対応であれば、社債市場全体の発展は望めない。現在、日本証券業協会において社債市場の活性化に関する議論が行われており、その中でも流通市場の情報共有をどうするかポイントの一つだ。
流通市場価格については、日本証券業協会により、公社債店頭売買参考統計値という業者をヒアリングしたベースのものを毎日公表しているが、取引参加者にとっては使えないという評価が定着している(労を取られている協会には申し訳ないが)。何故かと推測するに、実際の売買価格と乖離していると参加者が見ていることが、最大の理由に思われる。社債の取引もOTCなので、これも報告義務を仲介者に課さなければ、その売買情報の把握は困難と見られているが、米国は、社債売買に関する報告制度と、売買情報共有システムがある。売買情報の共有によって、社債取引は活発化するかどうか別にして、取引者にとっては、取引の透明性が高まるので好ましい。
社債に関しての情報共有は、もう一つあって、信用情報の共有も必要である。その一つは格付情報の共有であるが、格付機関規制により、格付企業への定期的見直しとその公表は義務付けかれるが、個人まで含めた投資家のアクセスを可能とする必要がある。また、企業そのものの信用に関する情報は、CDS取引や株価とも裁定されたり連動したりする場合もあるので、開示項目として定義する必要があるのではないだろうか。
 いずれにしても、情報共有はコストの掛かる話しなので、その負担を誰がするか明確に示すことが市場関係者には求められている。

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四半期開示に対する利用者側の視点
 ディスクロージャーは、公開企業と投資家の会話なのだから、それはスムーズになされるのが望ましいし、市場機能としての開示制度は、本来その仲介をするのが目的であるはずだ。
最近のディスクロージャーは、開示制度もIR活動によるものも随分充実してきているようにも思うが、情報を発信する企業側の負担は、相当に重くなってきている。四半期開示制度や、内部統制報告書制度が導入され、公開会社の開示制度の負担に見合う、投資家側の活用は有効にされているのだろうか。
 特に四半期開示については、企業側の負担感に見合う、投資家側の有効活用について、一部に疑問視する考えもあり、東証の上場制度整備の実行計画2009においても、四半期開示のあり方に関して、別途専門部会を設けて検討されている。
 そもそも四半期開示制度は、金商法上の四半期報告書と、取引所ルールの四半期決算短信によるが、制度としては昨年度から始まっている。その開始2年目の制度に関して、その有効性や更なる充実を見直すこと自体、非常に良い事だと思う。東証では、情報を開示する側の上場会社に対する調査とともに、提供された情報の利用者側調査として、機関投資家14社31名のアナリストにヒアリングを実施。その結果を、10月21日に公表しているが、その概要から、四半期開示に対する論点を以下に整理してみた。
【四半期開示の有効性に関して】
・制度としての四半期開示は、日本と米国だけだが、欧州の有力企業も自主的に四半期開示を行っているので、グルーバルな投資家を想定する場合には有効。
・業種毎に財務情報に関しては特性があり、小売りは1ヵ月ごと自主的に売上高を開示する場合も増えてきている。建設やソフトなどは、1年単位で業績を見る必要がある。つまり、業種によって四半期開示は、それ程有効でない場合もある。
・投資家側の短期的な利益指向を助長している面がある。
・実際に四半期開示情報を分析する対象銘柄は限られている。
【四半期開示の時期に関して】
・注目する大企業に関しては、足元の業績動向を迅速に伝えて欲しいので、正確さより早い方がいい。出来れば、欧米企業並みの2~3週間後を目途にしてほしい。
・アナリスト・カバーしていない銘柄の迅速性は求めない。(セルサイドの証券会社のアナリスト・カバーは、公開会社の半数以下と言われている)
【四半期開示の内容に関して】
・四半期決算短信の簡略化には反対する。開示時期の早期化よりは、セグメント情報(現在任意)等の充実を求める。
・サマリー、定性的情報も一部では定型化しているものの、会社側の考えを知る上では有効。また、現在連結情報の開示において、単体情報も欲しい。
・カバーしている銘柄に関しては、決算補足説明資料の公表や、説明会開催など、市場との対話の必要性を求めるが、取引所ルール化ではなく、取引所の推奨・要請によるべきとの意見が多い。
【現四半期開示の問題点に関して】
・四半期決算短信(取引所開示)については、軽微な訂正を不要として、正確な数値は四半期報告書(金商法開示)に委ねれば、企業側の負担が軽減されるのではないかとの意見。
・四半期決算短信に対する公認会計士のレビューに関して、米国並みの簡素化を検討して、企業側負担の軽減を試みては如何か。
・四半期決算短信と四半期決算報告書の役割が、投資家にとって明確でない。現状では、四半期決算報告書は殆ど使われないし、反対に四半期決算報告書の提出が早くなれば、四半期決算短信は不要と考える。

以上がアナリスト意見の概要であるが、ディスクロージャーは基本的に公開企業と投資家の対話であるので、双方の負担が大きいものに関しては、両者の選択に任せるべきではないだろうか。
 四半期開示についても、この利用状況から考えれれば、公開企業側の選択に任されても良い様に思う。

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ファイナンスのプロセス
 1000億円以上の大型公募増資が相次いているが、この様子だと、公募増資だけで本年は4兆円を超え、バブル期のエクイティ・ファイナンス市場に迫りそうだ。3月期銘柄の中間決算も一巡するこの時期は、7~8月とともに、ファイナンスの季節とも言われているが、市場の一部では、重なる大型増資に対して、市場の圧迫要因と見る向きもいるようだ。しかし、資本市場本来の機能を考えれば、企業に対して、必要な時に、リスクマネーを供給する大事な役割を果たしていると考えるべきで、その為に、企業は年々重くなる開示(デスクロージャー)負担に、耐えている。また、投資家にとっても株式の希薄化(ダイリューション)は気になるとしても、企業が事業戦略を積極的に展開するのだから、本来は好ましい事だ。更に、業界にとっても、伝統的な投資銀行業務であるファイナンス引受で、大きな収益が見込めるので、積極的に取り組むのだろう。ファイナンス市場が拡大していることは、市場にとって良い事なはずなのだ。そのファイナンスのプロセスにかんして、投資銀行的視点で、見直してみたい。
【エクイティ・ファイナンス】
突然に、企業単独で、公募増資を決して、公表出来るものではなく、引受証券との交渉から、ファイナンスの具体的作業は始まる。この期間は、概ね2カ月弱だが、以下の様な手順となるのが一般的だ。
・企業と引受証券は、具体的ファイナンス手法(公募増資なのか新株予約権付社債なのか、国内だけでなく海外でも販売するか等)を検討する。
・この検討に当たっては、引受証券側が、当該企業ファイナンスに対する主要投資家の需要を、サウンド(正式な需要調査ではない)する場合もある。
・一方、引受証券は引受判断をする為、当該引受企業の引受審査を実行するが、エクイティ・ファイナンスの場合、最も重要となる判断基準は、当該企業がエクイティ・シナリオを持つかどうかである。
・エクイティ・シナリオを平たく言えば、企業が調達資金を使って業績を伸ばす可能性の検証をすることだ。その根拠を取る為に、経営者や企業の関連部署への調査を重ねる。
・また開示書類は、有価証券届出書の提出が必要だが、直前までの企業内容の変化も取り組まなければならないので、決算発表後にファイナンスが集中しやすい。この有価証券届出書をベースに、正式な販売資料となる目論見書が作成されるが、大型ファイナンスの場合、別途、販売用資料が作成される場合もある。
・企業が調達を希望する金額と、市場が受け入れるファイナンス金額が必ずしも一致するわけではないので、ファイナンスの公表日が近づくに従い、どの市場(国内外)でどの位調達を目指すか、企業と引受証券の協議が行われるが、この比率に関しては、引受証券側の重要調査に頼る場合が殆どだ。
※最近は、M&A関連のインサイダー取引が業界関係者にも及ぶケースが摘発されているが、ファイナンスも重要事実で、当然インサイダー取引の対象となる。ファイナンスは、そのプロセスの進行により、M&A以上に関係者が増加していくので、この情報は法人関連情報として、引受証券内で管理され、自己売買部門は当然関与出来なくなる。
【デット・ファイナンス】
大企業の社債調達に関しては、殆ど発行登録制度が活用されているので、金融市場の変化に対して、即日でも発効できるよう機動的になっている。発行プロセスは、概ね以下のようになる。
・発行登録制度を利用するため、企業は1年もしくは2年を有効期限として発行総額を定めておく発行登録書を提出。
・引受証券になる可能性のある証券は、上記に合わせて、引受審査を事前に行うが、決算資料など新たな開示資料が提出される度、独自の審査内容を見直す。この引受審査は、社債元本の安全性が確認出来る財務基盤に関するものが中心となり、エクイティ・ファイナンスとは異なり、エクイティ・シナリオには関与しない。企業のクレジット・リスク管理は、この審査部機能の中で行われる。
・社債調達に当たっては、企業が調達意向を引受証券の候補に伝え、その候補達から提示される投資家需要動向を基に引受証券が決定。数日で、実際の発行作業に入り、短ければ条件提示から半日で当該社債を主要な機関投資家に販売する。
※社債に関するインサイダー取引の対象となる重要事実は、償還元本に関するものと限定されているが、最近、米国SECは社債の発行内容の変更に絡んで、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)取引に関するヘッジ・ファンドのインサイダー取引を摘発している。
 以上、ファイナンスのプロセスにおける情報は、通常は証券内で隔離されて管理されているが、一層の情報管理の厳格化が求められてもいる。

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三洋電機TOBへの投資銀行的視点
 ようやく実行されるのかといった感想であるが、約1年掛かって実現している。やはりグローバル企業のM&Aというのは、例え当事者同士の合意が出来ていたとしても、時間がかかるし、TOB価格決定も、正直難しいと感じる。何も、市場価格から4割で安くTOBが実行されるからではない。
 この事案を、TOB事例として、投資銀行的視点で考えてみたい。
勿論、主役は三洋電機とパナソニックであるが、関係者はさながら日本における投資銀行のオールスター戦のような様相である。
売り手:大和、ゴールドマン、三井住友
買い手側アドバイザー:メリルリンチ
公開買付代理人:野村
対象会社アドバイザー:アビームM&Aコンサルティング
今回のTOB対象は、2007年3月に今回の売り手に第三者割当で発行された優先株(1株→普通株10株に転換可能)を含め普通株となっているが、公開買付価格は131円と時価より4割低い。時価より低いTOB価格は、事例としては企業救済型などであるが、最近は三洋電機に対して、エコカーに必要となる蓄電池技術やソーラー事業を評価する声も高まっていたので、市場の一部には、TOB価格に意外感をもつ考えもあるようだ。
しかし、今回のTOB価格は、昨年12月19日に合意・発表された三洋電機とパナソニックの資本・業務提携契約によるものだ。蓄電池事業に対する、米国や中国当局の独禁法関連の承認が遅れていたため、この時期まで延びてしまったが、2007年3月の出資者である大和・ゴールドマン・三井住友と、買い手のパナソニック、三洋電機3者間の基本合意はこの時なされ、131円は、この時のパナソニック側アドバイザーのメリルリンチによる株価算定書を基に、決定されている。ただし、この基本合意において、新たに1000億円の投資を、パナソニックが三洋電機に対して行うことも、記載されていた。
今回、TOBを実施する際においても、メリルリンチは、株価算定を買い手側アドバイザーとして行っているが、9月末に提出された算定根拠は、
・市場株価平均法:145~227円(TOB関連報道がされる以前の2008年10月31日を基準日)
・類似会社比較法:21~98円
・DCF法:126~246円
一方、三洋電機側アドバイザーのアビームM&Aコンサルティングの算定書は、11月2日に提出され。
・市場株価法:213~236円
・類似会社比較法:104~156円
・DCF法:87~187円
としているが、1000億円の投資の影響を、反映していないとしている。
勿論、買収価格合意は、パナソニックと実質的に過半数を有する投資者で決定され、TOBは株主交替で必要な手続きではあるが、その他の株主のTOB応募がなくても、三洋電機の子会社化は実現する。
売り手・買い手の合意がされている以上、このM&A案件は一見完了しそうにも見えるが、そう単純でもなさそうだ。それは、以下の理由による。
・買い手のパナソニックは、選択と集中で、上場子会社を完全子会社化している。
・この事案に関しても、将来完全子会社して、上場廃止する可能性を公表している。
・実際のTOBに当たって、予定される売り手分の実質過半数をTOB成立の最低条件として、他の株主分も応募分は全て買取る表明をしている。
そうすると、今回TOBに応募しない株主は、完全子会社化される時点で、パナソニックの株主になるか、スクイーズ・アウトの対象となる可能性があり、その過程で、残存する三洋電機株の買取り請求が起きる可能性がある。今回のTOB価格も議論になる可能性もあり、三洋電機側は、TOB賛同の意見表明をしながら、TOB価格の妥当性については意見を留保するという、難しい対応をしている。
 株主に対しては、TOB価格決定のプロセスと背景をよく理解してもらうしかないので、11月4日公表された公開買付け開始の公表文や意見表明においては、この手の文章には珍しく、詳細かつ分かりやすい文面で、価格決定プロセスが説明されている。
パナソニックが、選択と集中の戦略を進める中で、今回の事案の今後の対応についても、M&Aアドバイザーの適格なアドバイスが求められていく。

テーマ : 証券・金融関連業務
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金融・資本市場関係者の売買
証券会社にいると、株や投信の運用商品に詳しく、その道のプロだと周囲(会社や仕事関係者以外の)から思われがちだが、そんなことはない。自分は、資本市場のプロであっても、運用のプロでないことを、家族にいくら説明しても、値下がりしている株や投信のいい訳にはならないようだ。
実際、証券会社の役社員は、金融商品を売買しにくいのが現状だ。勿論、株や債券・投信を買う事は出来るが、従業員取引規則なるものによって、その投資行動は制限される。この規則は、短期売買を禁止し、売買できる金融商品を限定しているが、会社によって、その内容は異なる。法人部門の役社員は、更に取引を規制される法人部門関係役社員取引規則も加わる。
 何故、この様な規則が設けられているか、少し考えてみたい。
金融商品取引法では、金融商品の売買をするに当たり、いくつかの禁止行為があるが、インサイダー取引や相場操縦など、最近は問題取引が報道されることも多い。これらは、取引行為全般に及ぶもので、証券会社に役社員は更に以下の行為を禁止行為として法令に定められている。
【証券会社の行為規制等に関する内閣府令】
第四条第五項:自己の職務上の地位を利用して、顧客の有価証券の売買その他の取引等に係る注文動向その他職務上知り得た特別な情報に基づいて、又は専ら投機的利益の追求を目的として有価証券の売買その他の取引等をする行為。
つまり、金商法の禁止行為は守るのは当然として、仕事上の情報(インサイダーに当たる重要事実でなくても)を使って売買するのと、投機的取引は、証券会社の役社員は禁止されている。
これを受けて、日本証券業協会により、“協会員の従業員に関する規則”服務規定の禁止行為において、地場受けの禁止とともに、信用取引・デリバティブを禁じられている。何をもって、投機的取引とするかは、各証券会社に判断(各社が定める社内規則)に委ねかれるが、取りあえず投機的取引として証券会社の役社員は信用取引とデリバティブは出来ないない構成になっている。又、短期売買も投機的取引と見做すのが協会の考え方だが、どの位の期間であれば短期かは、これも証券会社各々の判断(社内規則)による。
 このことから、証券会社の役社員の金融商品売買は非常に窮屈なものになっていて、例えば投機的な短期売買の期間を三カ月未満と定めていれば、買った新興国投信が1ヵ月で2割上昇しても売却出来ない。
もし目標設定型投信で、同様のことがおきれば、2割目標達成が1ヵ月で償還なので、売買には当たらないとの判断でOKとなる。同じの目的なのだが、形式が違えば、一方は制限され、一方は受容される。また、証券会社役社員がFX取引を行おうとした場合、個々の事例の判断は証券会社各々に委ねられが、原則は協会規則に定めるデリバティブ取引に当たると考えるのが多数派なので、結果として役社員のFX取引は出来ないということになる。しかし、投機的でないFX取引で、日本証券業協会員でないFX業者との取引に関しては、何をもって規制するかとの議論も残る。(頭の体操の様な記載になったことを、お容赦願いたい。)
 一方、証券会社の役社員でなくとも、業界の仕事をする方々は、金融商品取引法上のインサイダー取引など禁止行為を行わないのは当然であるが、役社員自らの金融商品取引において、何らかの制限を課すのは必要だ。残念なニュースではあるが、日本のPEファンドの草分けで大手ファンドのユニゾンのパートナー(共同経営者)にインサイダー取引疑惑がかかっている。詳細は今後の調査によるが、問題はユニゾンが、役社員の取引に関する報告制度も、社内規則(法人関係情報を管理するルールは当然あったようだが)も、なかったことだ。証券会社の様に、定型的な取引規則や保守的な法制度解釈をして、役社員の投資行動を縛る必要はないが、資本市場で仕事をしている業者として、従業員の取引行為を管理する必要はある。それが、少人数のファンド(投資運用業)であっても、この市場を利用する投資家や企業の信頼を失わない為に必要なことだと、ファンド関係者には理解して欲しい。

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持ち合い株式について
この業界で、法人関連の仕事をしていると、持ち合い株式に接する事が多い。業務提携などの提案を含めて、相互に戦略的株式持ち合いを提案する時は良いのだが、こちらの都合で相手株式の売却をしなければならない時など、担当者はなかなか辛い思いもする。また、他社同士の持ち合いに関与する時は、TOBを含めたM&Aビジネスや、解消時の相手探しや自社株消却など、実際の業務に繋がることが多い。
しかし、一般には持ち合い株式に対する印象は、余り良くないようだ。理由は2つほどあると思うが、一つは、コーポレート・ガバナンス上の問題が意識される。つまり、企業同士の持ち合いが多いと、その議決権行使は、経営者の意向に沿ったものになり、投資家や市場からみて株主としてのチェックが出来るのかといった疑念である。もう一つは、銀行持ち合い株に対する企業への影響力についての懸念である。
持ち合い株は、全体としては減少していると言われていたが、ここ3~4年は、買収防衛策などの影響もあって、“戦略的持ち合い”という名のもとに、同業間数社で株式の相互保有をしてみたり、事業会社間で、業務上の友好関係構築の為に、少しずつ株式を保有しあう持ち合いネットワークが構築されていた。
銀行の持ち合い株に関しては、近年は全体として若干増加ぎみではあるが、1990年代に比べると半減している。
持ち合い株式は、もともと戦略上保有する目的なので、それが事業遂行上で有効な戦略であっても、財務戦略上の目的であっても、経営者が選択する戦略上有効なら、企業が他社株式を保有する意味はある。問題は、その後どう処理されているかだろうが、今後、会計上の処理方法が、変更される可能性が大きい。
持ち合い株式に関する会計上の扱いは、“その他有価証券”として扱われるが、当然市場価格があるので、評価は時価による。その評価損益は貸借対照表の資本の部に計上しておき、実際に売却したときは損益計算書に反映される。保有している間の配当金は、当然損益計算書に組み入れられる。
これらの持ち合い株式の会計処理は、“金融商品会計の見直し”として変わっていく可能性が高い。ただし、日本の会計基準を国際財務報告基準(IFRS)に共有化(コンバージェンス)させる2011年を目途に変更するので、かなり先の出来ごとにも思えるが、そうとも言い切れない。ベースになるIFRSの方は、この“金融商品会計の見直し”を現在行っていて、所有区分やその処理方法・価格の判断の仕方などは、年内を目途に決定される可能性がある。また、金融庁は日本企業のIFRS早期適用を、2010年3月期から認めている。
このIFRSによる持ち合い株式の会計処理がどうなるかという報道は、最近よくされているが、現状案での解釈だと持ち合い株式は、毎期時価で値洗い替えをして、それを純利益に反映させる方法(現在の日本基準の“売買目的有価証券”の処理に近い)をとるか、評価損益分を包括利益として損益計算書に反映させない方法をとるかに2分される。包括利益に反映させる方法を一旦とると、売却時に売買損益を純利益に戻せなくなるのと、配当も包括利益に入れられ、純利益には反映できないというのが原案(公開草案)だ。
最近の報道によると、IFRSを決定する国際会計基準審議会(IASB)は、持ち合い株式に関して、時価変動を包括利益に計上する方法を選択しても、配当は純利益に計上することを認める方向のようだ。
これは、日本企業への配慮と言われているが、日本企業側の理屈としては、銀行協会がIFRSの公開草案に対して、以下の趣旨で述べている。
―キャピタルゲインを目的としていないので、保有目的は、自社の事業拡大と配当金収入双方になる。
―売却益とは異なり、経営者の恣意性は入らない。
―株式配当の場合、時価が低下、その性格は将来の売却益の一部。
なお、持合い株式で、一旦評価損益を包括利益に計上した後、実際の売却時に、過去の包括利益も含めて、純利益に計上する事(リサイクリング)は、認めない方向には変更はないようようだ。
(※日本アナリスト協会の意見書(9月)では、この原案には反対している。)

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東証の制度整備に関する期待と若干の不満
最近の東京証券取引所の重要な発表は、月1回の斉藤社長の定例記者会見で行われることが定着したようだ。会見内容は、お人柄なのだろう、分かり易く明確な説明が多く、とても好感がもてる。
 先月29日の会見においても、いくつかの重要な施策を発表されていて、大きく報じられたのは、日本において排出量取引所の設立を目指すというものだ。
これは、東証と東京工業品取引所が、排出量取引所創設に向けて、共同出資会社の設立を合意したことを公表したものだ。市場運営会社となる準備会社として、2009年度内に立ち上げ、とりあえずは昨年から始まっている自主的にCO2などの温暖化ガスの排出枠を割当てたベースで排出量を取引する“国内クレジット制度”の現物や先物を、取引することを想定しているようだ。新政権において、排出量削減枠を、特定の大企業や大規模施設に強制的に割り振るキャップ・アンド・トレードが導入(民主党の政権公約には入っている)されれば、排出量取引需要も一気に高まり、取引所機能の有効に活用される可能性がある。
既に、排出量の国際通貨である“京都ユニット”も、国内通貨の“国内クレジット”も、国内での相対取引は行われているが、取引所機能で期待されることは、排出量取引の流動性の向上を通して、国際通貨の“京都ユニット”と国内通貨の“国内クレジット”の交換を、スムーズにする仕組みに寄与することではないだろうか。排出量は、1企業・1個人がそれぞれ削減努力をすることも必要だが、地球全体で削減されなければ意味は無い。そして、その為に、どの様な排出量の取引であっても、国際的枠組みの“京都ユニット”にリンクする必要が求められる。その機能を提供する取引所であって欲しい。
一方、先月末に取引開始された中国版新興市場である深セン取引所“創業板”の過熱ぶりが伝えられるが、日本の新興市場の状況は、未だ厳しそうだ。新興市場改革は、業界全体の問題ではあるが、プロ向け市場TOKYO AIMの機能には期待したい。経済環境も厳しく、市場開設はされたものの、上場企業は未だないが、日本における唯一のプロ向け取引所であること、東証とロンドン取引所の合弁事業であること、英文開示も可能なことなど、海外企業の東京市場への誘致や、プロ向け金融商品の取引所機能に注目する動きもあるようだ。
東証の取引所としての機能に対して、少し期待し過ぎているのかもしれない。コーポレート・ガバナンス強化の問題に関しては、金融審議会も経済産業省の研究会も、其々取引所における対応に下駄を預けた形になって、それを受けた東証は、9月末に上場制度整備の実行2009をロードマップ付きで公表している。そして、一ヶ月後には、速やかに実施する事項に関して、制度整備内容を示した。この迅速さは、賞讃に価する。さすがに上場会社に適時開示も求める東証の姿勢である。
 しかし、その内容に関しては、多少がっかりしたというが正直な感想である。2点ある。
一つは、各コーポレート・ガバナンス強化の為に、あれだけ問題にした独立取締役の導入に関したものだが、上場規則にその導入を規定するのではなく、企業行動規範の〝望まれる事項“に規定するとしている。現在の半数以上の上場会社が、社外取締役を導入していない現状では、独立取締役制度導入の強制は無理との判断なのかもしれない。しかし、問題は独立取締役を指定した場合の開示で、独立取締役として、親会社や取引先・主要株主の関係者が指名されても、その理由を会社側が、コーポレート・ガバナンス報告書で開示すれば良いとされている。これでは、少数株主からみた独立性の確保は困難に思える。
もう一つは、IFRS(国際財務報告基準)導入に向けた体制整備に関してである。IFRSへのコンバージェンスに向けて、日本の会計制度も見直されている最中ではあるが、IFRS自体も、金融商品会計など業界に関係の深い部分も改訂作業中のものも多い。一方、上場企業のIFRS早期適用は、来年3月期銘柄から可能になる。上場会社も投資家も、このIFRSへの理解と、変化(見直し案)への対応が必要なので、これらに関する東証の情報発信機能に期待していたが、先月末公表されたIFRS導入に関する体制整備は企業が行うもので、財務会計基準機構への加入を、促したものに留まっていた。
以上、2つに関しては、東証に期待するだけに、これらに関する取引所の態勢整備を、お願いしたい。

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