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2009/12
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国家戦略としての金融教育:英国の場合から
 教育は、国家の基本戦略である。金融教育についても、また然り。と、少し大仰に始めてしまったが、日本の金融教育も、業界や金融機関などによるボランタリー・ベースの段階から、国家戦略として取り組むべき時期に入ってきたのではないだろうか。それは、戦後企業の成長とともにあった日本の仕組みが変化して、金融や家計それぞれに求められる物が変わってきているからだと思う。銀行や郵便局にお金を預けておけば、自然にお金が増えるという感覚は、最早ないし、以前は会社に任せていた老後の年金資金も、自分で責任をもって選択しなければならない事も増えている。お金を使う方も、ローンの選択肢が増えているし、住宅やエコなど補助金や税額控除などの仕組みも複雑化している。又、金融商品・サービスは様々に増え、品揃えが増えた半面、マルチ商法まがいの電子マネーもどきの様な問題も起きる。
 個人として、誰しもが金融関連情報に接し、またそれを選択していかなければならない状況に、日本も既になっている。この日本の家計(個人)に必要な金融教育とは何なのかを、易しく考えれば、金融教育の目的=“お金を使う事”+“お金を貯める事”であろう。お金を貯めることは、日本が対外的にも成長していた時期は、イコール貯蓄で良かったが、現在は“お金を貯めること=貯蓄+投資”でなければお金は貯まらない。証券業界は、この“投資”については、個人のライフサイクルに合わせた金融教育に貢献していくことが出来るが、“お金を使う事”と“貯蓄”に関しての金融教育への知見は浅い。
証券業界視点で言い替えるなら、個人のライフサイクルに合わせた“投資”の必要性を、金融教育の中で、それぞれの個人(小学生から退職者まで、またニートから大学生まで)に本当に理解させていくためには、“お金を使う事”と“貯蓄”まで含めた国家戦略的金融教育が重要となっており、その視点をもって、業界として金融教育に協力していく必要がある。○○の目的で使いお金を貯めるために、◇◇の投資をする、というような、個人にも業界にも理解しやすい取組みのことである。

 このような国家戦略としての金融教育のモデルは、英国にあり、国家プロジェクトとして進行中である。
英国のFSA(Financial Services Authority=金融サービス機構)は、金融システムに対する理解を増進することを2003年11月に国家戦略として宣言し、2004年後半から2005年初めまでかけて国民の金融能力に関する本格的サーベイを実施した。この調査を踏まえて、FSAは以下の内容を目標とした金融能力プログラムを取りまとめ、2006年3月に5カ年計画(2011年までの達成目標)として公表している。
①学校:金銭について学ぶ=国のカリキュラムに金融教育を組込み、教育現場での金融教育に対する対応の変化を促す。
②若年成人:金銭の意味を理解する手助けをする=所謂ニートに対しても、金銭の管理に関するガイダンスにアクセス出来るようにする。
③職場:自分の資金を最大限に活用できるようにする=職場で、従業員に対する一般的な金融教育を提供する。また、金融業界から派遣される専門家によるセミナーを職場で開催する。
④消費者コミュニケーション=金融教育に関するFSAのツール及びコンテンツについて、配布を飛躍的に増加させる。
⑤オンライン・ツール=個人が自らの財政状況を評価し、支援を求めたり、行動をおこす為のツールを、改良し、広くアクセス可能とする。
⑥新たに親になる人々への支援=必要な情報をキット(マネー・ボックス)として配布し、親になることで必要となる金銭的負担能力を高める。
⑦マネー・アドバイス=消費者が、適切かつ魅力的であり、クオリティの高い金融アドバイスを入手できるようにする。
これらの7つのプロジョクトに関して、貯める方の実践の場として、次の様な制度も始められている。
・ISA(Individual Savings Account)=個人貯蓄口座制度:1999年に導入され、2007年に恒久化された制度で、英国民の18歳以上が開設可能な非課税の貯蓄口座。年間7200£を10年間継続して積み立てていくことが出来る。2007年末で、1471万口座。
・CFT(Child Trust Fund)チャイルド・トラスト・ファンド=2005年に導入された制度で、生まれた時から18歳までを期限とする非課税の貯蓄口座。生まれた時と7歳の誕生日の2回、国より補助金250£(低所得者は500£)が支給される。年間の拠出金は、1200£まで。

 教育には、受けた教育内容を実践する場があるのが好ましいが、学校教育で受けた投資教育を含む金融教育で、18歳になった若者が、自分のファンドの資金で、働くか、大学で学ぶ資金とするか、選択する姿は、日本の未来図にあっても良いのではないだろうか。
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金融教育の体系について
 金融教育について、少し体系的に考えてみたい。
個人の金融リテラシー向上は、何故必要とされるのだろうか。加盟国国民への調査により、OESD(経済協力開発機構)は、金融教育がなぜ重要であるか、その背景として以下の点を上げている。
① 老後生活における糧
② クレジットカードの過剰な使用と自己破産の増加
③ 貧困層対策
一方、日本においては金融庁の“証券市場の構造改革プログラム”(2001年8月)から、貯蓄から投資への促進を目的に、金融教育への取組みが本格化し、“金融改革プログラム”(2004年12月)では、更に、家計のライフサイクルに応じた金融経済教育の拡充を求めている。また、金融商品取引法においても、認定協会・公益協会・認定団体は、金融知識の普及と啓発が義務化されている。
【金融庁の取組み】
2005年3月に、“金融経済教育懇談会”を立上げて“金融経済教育に関する論点整理”を公表、以下の取組みが始まった。
・金融行政に関するタイムリーかつ中立的な情報の提供
・“金融サービス利用者相談室”を通じた新たな情報発信
・シンポジウムの効果的な活用
・初等中等教育段階への支援として、教育プログラムの開発に参画
・初等中等教育段階、社会人・高齢者段階を通じた支援として、優れた実践事例の周知や“後援”名義の積極的付与
・金融行政アドバイザリーの活用や、現場レベルでの先生との懇談会・研修会の積極的実施を通じた、受け手ニーズの把握
・多方面における連携強化に向けたイニシアティブ
【内閣府の取組み】
2005年6月に、“経済教育に関する研究会中間報告”が公表され、経済教育で取り組むべき課題として、
(1) 現行の教育体系とも整合的な経済教育体系作り
(2) 体系をベースとした現場で使いやすい教材の作成・頒布
(3) 経済学の専門家ではない教員に対する研修・支援制度の整備
(米国の例;米国FEDが主導する中高生および教員のための経済金融リテラシーのトーナメント戦「FEDチャレンジ」、ウェブサイトを活用した経済教育に関する情報のクリアリングハウスなど)
(4) 経済教育のために適切な教授法の検討
(5) 社会人教育の取組み
経済リテラシーを必要とするのは学生・生徒のみではない。社会人教育の取組みも検討することが必要。
とし、“経済教育サミット”(2005年7月)においても課題として議論し、モデル教材の開発などを行っている。
【日銀・金融広報中央委員会】
2005年1月より、子供向け体験型イベントや教員向けセミナーを行う“金融教育フェスティバル”を継続して実施しており、その他講演会や通信教育講座など積極的に金融知識の普及啓発活動に取り組んでいる。
【証券業協会・取引所】
証券業協会は、2005年4月に証券教育広報センターを設置し、
1. 学校向け普及・啓発活動
(1)体験学習型教材「株式学習ゲーム」、「みんなで体験!株式会社とお金のしくみ」等の制作・普及
(2)Web教材「証券クエスト」の制作・普及
(3)教員向けインターンシップ及び夏期講習会の開催
(4)教育関係者向け広報活動の実施
(5)全日本証券研究学生連盟の活動に対する支援
2.一般向け普及・啓発活動
(1)証券投資の日(10月4日)記念イベント、春季イベントの全国開催
(2)個人投資家向けIRセミナーの開催
(3)初心者を対象とした刊行物の発行
(4)証券関係情報を広く一般に提供する証券情報室の設置・運営
(5)一般向け広報活動の実施
などの啓発活動に取り組んでいる。一方、東京証券取引所においては、東証アカデミーとして
・一般向けプログラム:各金融商品、デリバティブ、投資理論、決算書の見方など初級レベルから、個人投資家対象のかなり高度なものまで。
・学生、教員向け金融教育プログラムとして、
学生向け:経済セミナー、授業支援、親子で学ぼう“私たちの暮らしと株式会社”、大学生の為の出張セミナー
教員向け:東証・日銀セミナー、金融・経済フォーラム、教員研修会への講師派遣
などがある。

 この他にも、各種NPO法人による金融・投資教育に関するもの、銀行や証券などのシンクタンクがCSRの観点で進める金融教育支援など数々多様にあって、さすがに教育大国日本の観が強い。
 しかし、各種の調査によると、全体的な日本人の金融リテラシーに関しては、金融知識はある程度あるものの、偏っていると指摘するものが多い。例えば、株式投資や投信には詳しいが、債券や保険に関する知識が乏しかったり、勤めている会社の年金制度は理解していても、会社が制度に参加し、自らも加入する確定拠出年金(401K)の運用方法を把握していなかったりする。

 ここまで読んでいただいた方には恐縮だが、結局、現状の金融教育は、体系立っていないので、個人のライフサイクルをカバーする金融リテラシーの習得には、不十分だというのが現実である。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

今年のIPO市場を想う
 株式公募や社債などの今年の発行市場は、20年来や10年振りの水準となり、ファイナンス・マーケットは、日本企業の為に大いに貢献した年になった。証券会社にとってオーソドックスな投資銀行業務である引受業務の復調の年であったが、対象的に新規公開市場(IPO)は、年間17社と30年来無かったような低水準となり、新規公開ビジネスが壊滅するのではないかと懸念さえ感じる。
 新規公開企業数は、金融危機の昨年48社とそれまで10年間平均で年間100社を超える水準から半減していたが、今年は更に3分の1に減少してしまい、調達資金も全部で403億円(うち半数が12月上場の3銘柄)しかない。又、プロ向け市場として期待されて6月に新たに開設されたTOKYO AIMは、未だに銘柄が上場されていない状況が続いている。
 これも世界不況の影響なのだろうか。確かに、不況期にはIPOは減少するので、世界的に見ても、上場廃止銘柄の増加・新規上場数の減少という現象は致し方ない。
ちなみに、今年の世界各国取引所の新規公開数(11月までの集計:日本は11月までは14社)は以下の様になっている。
米国:87社(ナスダック=30社、ニューヨーク=21社、シカゴ等=36社)
英国:ロンドン=12社
欧州:ユーロネクスト=6社
インド:ボンベイ=55社
ブラジル:ボベスパ=6社
中国:123社(香港=52社、上海=6社、深セン=65社)

日本や欧州は、今回の世界的経済危機の回復から遅れていると言われているが、日本のIPO市場の現状は、本当にそれだけの問題なのだろうか。日本証券業協会においても、昨年9月から新興市場のあり方について、業界関係者による議論がなされて、今年4月末には報告書が公表されている。その中でいくつかの問題点の指摘とともに、提言もされているが、証券会社としてどの様な改善への取組みがなされているのだろうか。年末なので、証券会社が対応すべきと思われる部分を、筆者が以下の様に推測してみる。

【IPOの公開価格の問題】
IPOの公開価格は、その初値とともに最も投資家の注目を集めるものだが、低く設定されれば良いというものでもない。安い公開価格の設定は、IPO株の抽選に当たった投資家にとって、嬉しいかもしれないが、むしろ弊害の方が多く、公開直後の1~2ヵ月取引が盛り上がり、その後の下落と共に取引も減少していくパターンを繰り返した。つまり公開価格の設定=プライシングを間違うと、取引者を限定してしまうリスクを負う。これを回避する為には、公開価格の適正なプライシングが必要なのだが、このプライシングは、実質的にIPO主幹事証券の仕事である。つまり、主幹事のプライシングに問題が多いということだが、新規公開企業のプライシングを行うのに、機関投資家の関与を増やす仕組みを考えるべきであり、公開後の機関投資家の売買誘導の仕組みを、検討するべきである。(その意味では、TOKYO AIMなど、プロ向け市場のあり方が注目される。)

【アナリスト・レポートの問題】
IPO銘柄に対し、機関投資家などの売買を促進する為に、アナリストレポートの必要性を論じても、証券会社のアナリストの自主性に任せていては、この問題はいつまでも解決しない。公開銘柄が4000近くあっても、実際にアナリストカバーされている銘柄は4~500社に過ぎない現状であれば、むしろ主幹事証券に対して、公開後2年間はアナリストレポート作成を義務付けては如何だろうか。このアナリストレポートは、外部作成(アウトソース)も可能とすれば、IPO銘柄に関する独立系調査会社も育つ。

【市場誘導業務の問題】
証券会社は、IPO審査とIPO業務に徹して、それ以前の市場誘導教務と言われる株式公開までのコンサルティングは、会計系コンサルティングや地銀など企業に密着している金融機関に任せては如何だろうか。昨年や今年の様な状況が続けば、専門性を問われ長い時間が必要なIPO営業や上場コンサルティング部門は、証券会社にとって重い負担となっている。この業務を、いっそ会計事務所や地銀に任せてしまえば、これらとのアライアンスも深まるし、社内の負担も軽くなる。

【上場会社サポートの問題】
上記とは反対に、開示制度や企業IRに慣れない新規公開会社に対して、上場後のサポートは厚くした方が良い。TOKYO AIMの様に、証券会社若しくはIR会社の支援サポートを制度化するのも方法だが、今までの主幹事の様に、いつかのファイナンスの為に、無償で支援するのではなく、サポートする専門部隊を、有償で対応させるべきと考える。勿論この業務も、アウトソース可能とし、外部の専門家を養成すれば、業界の底も厚くなる。

以上、新興市場に関する証券会社サイドの問題を、年末のお掃除の様な気持ちで書いてみた。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

ライツ・イッシュ=株主割当増資が、資本調達方法として定着する為に
本年後半の株式市場は、公募増資急増による影響を大きく受けたので、市場にやさしく、株主の負担感が軽い資本調達方法の一つとして、欧州での主要な資本調達方法であるライツ・イッシュが注目を集め始めている。これは、株主に対して新株を引き受けいる権利を与える手法で、日本でも株主割当増資として高度成長期までは、主要な資本調達方法であった。しかし、公募増資が主流となった1980年代以降は、減少して最近10年間では、年に1~2件あるかないかという状況であった。
 株主割当増資においては、株主が新株に払い込む権利を“新株引受権証書”として新株の払込日まで売買する制度も東証にあり、割り当てられた新株への払込みを行わない株主の“新株引受権証書”を、この制度を使って証券会社が集め、失権株公募として新たな投資家へ売りだすこともあった。
 一方、旧商法の2001年改正において新株を引き受ける権利を“新株予約権”として定義し、会社法においては、この“新株予約権”を株主に無償で割り当てる“無償割当て”制度が整備されたことによって、株主割当増資=“新株予約権”の“無償割当て”として整理することが出来る。ちなみに、この“新株予約権”の新株への払込み価格は、いくらでも良く、株主に割り当てる為に、有利発行(株主総会決議が必要)とは関係ないので、通常のファイナンスと同様に取締役会で決議する。
具体例を上げると、発行済み株数2億株、株価250円のA社が、新たに200億円の資本調達を考えた時、株主に対して、新株の払込価格200円を“新株予約権”を、1株につき0.5株分割当てる。既存株主に対して、1億株分の新株予約権(払込み総額200億円)が割当てられるが、このうちの7割が新株の発行に応じたとして、残り3割の株主は、この“新株予約権”を売却する(株主割当増資における失権に相当)。売却された“新株予約権”を購入した投資家は、新株の払込期日まで、新株の代金を払い込めば200億円の増資が完結する。
問題は、この3割の株主の“新株予約権”売買を、どう円滑に行うがであったが、東証が、旧商法下の株主割当増資時に使われていた“新株引受権証書の上場制度(会社法制定時に、自動的に”新株予約権証券の上場制度“になったもの)”を、改訂して、株主増資割当(東証はライト・イッシュと呼んでいる)を推進する考えだ。
 具体的な改訂内容は、新株予約権1つに対して新株1株割り当てるとしていた基準を、12月30日から削除する。
今まで:1株に対して、1個以上の新株予約権を付与する必要(会社法上)→1個の新株予約権に対して新株1株(上場規則)
改訂後:1株に対して、1個以上の新株予約権を付与する必要(会社法上)→1個の新株予約権に対して新株1株未満の割当も可能(上場規則改定)⇒結果、1株に対して1株未満の株主増資割当が容易になる。
 本年多かった発行済みの3割を超える公募増資を選ぶのか、既存株主に3割の新株予約権を付与する株主増資割当を行うか、企業のファイナンス手法の選択肢が増える可能性がある。
一方、株主割当増資に対して、疑問視する業界関係者も多いが、以下の様な論点もある。
・株主割当増資だと、実際の増資まで少なくとも2ヵ月以上、売買される新株予約権の行使期間を含めると、少なくとも合計で3~4ヶ月は必要で、時間が掛かり過ぎるのではないかとの指摘。
(しかし、普通の公募増資においても主幹事証券の審査などで、企業は2~3ヶ月の準備期間を必要とする)
・直ぐ払込みを実行しない株主の新株予約権は、有利発行の問題もあるので、証券会社が引き受けて販売することが出来ない可能性があるとの指摘。
(この事は、旧商法下の新株引受権証書制度における失権株公募のイメージによる証券会社サイドの思い込みの様にも思うが、株主が直ぐ払込みを実行しない新株予約権は、上場制度があれば、特に証券会社が引き受けて販売する必要もない。)
・株主割当増資においては、資本調達が調達目標額に達しないリスクがあるとの指摘。
(事例で上げたように、すぐ払込みを実行しない3割の株主の“新株予約権”は、取引所の上場制度で売買することは可能だが、この分の払込み確定は、この新株予約権の行使期間があるうちは確定しない。しかし、このことが問題か、筆者は疑問をもつ。むしろ、新株予約権の権利行使に対して、市場仲介する証券会社が、数%の手数料を得る仕組みを作れば、新株へ払込みを行う行使は促進されるのではないだろうか)
いずれにしても、ファイナンス手法で工夫をしていくのは、業界の責任である。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

クレジット市場という考え方
今年は、エクイティのみならずデットファイナンス(社債発行)に関しても、例年に比べると格段に多く、年間通算で約11.4兆円の発行となった。これは、昨年まで10年間の年間社債発行額平均7.5兆円を大きく上回っており、1998年の12.6兆円につぐものだが、金融危機の翌年は、社債発行額が急増する傾向があるようだ。
 しかし、発行量の増加があったとしても、流通市場が整備されていない・個人や外人投資家の参加が少ないなど、日本の社債市場は問題が多く、その機能が発行市場に偏っている。主要な問題点を上げると以下の様な現状となっている。
・銀行の劣後債などこの1年は個人向け社債が増加したものの、個人か直接もしくは間接的(投信で)に保有する比率が低く、個人の主要な投資対象になっていない。
[社債保有者に占める家計・投信の比率:日本2%⇔米国30%]
・海外投資家の投資も一部の銘柄に限られていて、これも投資対象になっていない。
[社債保有者に占める海外投資家の比率:日本0.6%⇔米国24.1%]
※平成22年度の税制改正において、海外投資家の保有する社債に関して、利子・償還差益に対する非課税措置が、平成25年3月末まで発行分に対して手当てされた。
・米国のTRACE制度の様な流通価格情報や、ローンなどと社債の関係を示すような情報など、社債に関する情報インフラが整備されていない。
・米国では、社債の清算機関としてDTC(Depository Trust Corporation)により、円滑な清算機能が提供されており、付加サービスとして社債を貸し借りするレポ機能も社債流通の活性化に役立っているが、日本にはない。

 以上の問題は、証券業協会において“社債市場の活性化に関する懇談会ワーキング・グループ”で、具体的改善策の検討がされているが、現状の社債保有の半数は銀行等であることから、ローン市場などと密接にリンクしているのが現状である。

○社債の発行残高:59.1兆円(10月末時点)
○シンジケートローン残高総計:58・5兆円(10月末時点:但し、ターム・ローンとして貸し出されているものは、そのうちの38.2兆円)。本年から始まった電子債権取引では、大手企業の電子手形など電子債権を、中小企業の資金繰りの為に買い上げる仕組みして注目を集めているが、シンジケートローンなど大口ローンを社債の様に売買する仕組みとしても期待されている。
○社債やローンのリスクをヘッジするデリバティブとして、CDS取引があり、現状は店頭取引であるが、来年度以降に清算機関を設立するための準備が進められている。
以上の3つの市場は、関連性が強く、総じてクレジット市場として捉えるのが昨今の考え方である。日本においても、この3つの市場其々を示すインデックスが使われ始めているし、格付けなどの信用情報も共有されている。

 社債市場のあり方も、クレジット市場全体の中で考えていかなければならないが、難しいのは“信用情報”に関する共有かも知れない。例えば、クレジット市場における3つの市場のメインプレーヤーである銀行には、審査部があり、個別の未公開の“信用情報”をもつが、他の投資家は、格付け情報と社債の財務制限条項(社債要項に記載されている場合)に頼るしかない、という“信用情報”の非対称性問題がある。新たなローンの条件によって、社債保有者が不利となるリスク(つまり社債の価格が下落する可能性)を、どう知り得えるかといった問題は、現状では、格付け機関か企業の債券IR活動に頼るしかない。
 しかし、3つの市場において清算機関が整備され、それぞれの取引参加者により、信用情報を共有されていけば、全体のクレジット市場としての“信用情報”は、社債の投資家(個人を含む)に、有効に活用されるかもしれないと期待している。

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コーポレートガバナンスは、どうやって強化されるのか
最近の大企業による大型ファイナンスを見ていると、公表から値決めまで株価が3割以上下落しても増資を実行する、更に値決めは時価から3~4%のデスカウントで、このコストは既存株主が支払う、引受証券に支払う4~5%の手数料は、公募増資に応じる新規の株主が支払う、と株主の負担が非常に重いものになっている。この増資による資金で、戦略的投資がなされ企業価値が拡大することを期待して、既存株主は耐えるのだが、将来の増配など利益配分増加の約束は、殆どされない。
この増資判断は、取締役決議でされるが、ファイナンスの最終条件等は、代表取締役に一任されるケースが多い。この様な既存株主に負担が大きいファイナンスや、利益相反行為が隔離されるべきMBOなどの決定において、コーポレートガバナンスは、どの様に働くのだろうか。
 企業の外部からのチェック機能を、働かせ易いと言われる委員会設置会社は、上場会社の2.3%に過ぎなく、残りの監査役会設置会社のうち56%は、社外取締役を専任していない。株主としては、重要な決定をする企業の経営トップを信じたいが、同時に適切な監視機能が働くことも重要視するのが、投資の世界では常識だ。その為に、コーポレートガバナンス強化として、企業からの独立性の高い取締役選任について、経済産業省の企業統治委員会や金融審議会のスタティ・グループで導入すべき方向性が示されていた。この独立取締役導入に関して、法制度での義務化は経団連の反対で見送られ、米国の様に取引所ルールでの導入に、ゲタを預けられたかたちになっている。
 経団連の独立取締役制度化に反対する理由の概要は、以下の様なものだ。
・形式的な独立性の基準は、意味がなく、またその判断は、取締役に関する開示情報をもって、株主が判断すべき(独立性の基準がある米国においても、大企業の不祥事はあった。)
・既に上場会社の44%が社外取締役を選任していて、コーポレートガバナンス報告書による開示も行っている。(企業統治の形は、多様性があったほうが良く、その判断は企業に任せるべき。)
・監査役会では、半数が社外監査役であり、現行制度でも十分に監査機能は発揮されている。(監査役による会計監査人の選任や報酬決定に関する権限は必要ない。)
と、なかなか議論がかみ合わない。
 もともと最近のコーポレートガバナンス議論は、企業不祥事が続いて発生したり、MBOや大規模な第三者割当増資が、既存株主を無視する様な方法で行われたことで、企業統治のあり方を、改めて問うものであった。
東証は、以上を踏まえ、上場する会社に対して、1名以上の独立役員の確保を、2010年度以降義務付ける。筆者の感想では、かなり経団連の主張に配慮されたものになっているが、概要は以下のとおり。
・独立役員は、経営者から独立性の高いと思われる社外取締役若しくは社外監査役のことを指す。
(※社外監査役は、取締役会で検討される事案につき、意見を述べることはできるが、決議には参加できない。)
・独立役員は、その独立性について形式基準を設けないが、企業と利益を共有するような場合、その指定理由をコーポレートガバナンス報告書に記載する。(独立性に判断は企業及び開示文書を読んだ株主・投資家が行うことが基本。一般株主と利益相反の恐れのある企業と関係が深い者を、独立役員に指名する場合は、取引所への事前相談を、要請。)
これで、本当に無謀なM&Aやファイナンスに対する牽制機能が果たせるのだろか。株主や投資家が、売却という選択を取らない為には、一部民主党議員が主張する公開会社法の制定を待たなければならないのだろうか。(※筆者は、会社法に加えて公開会社法の制定は、屋上屋を重ねる策だと思うので、可能な限り、上場ルールで、コーポレートガバナンス強化策を強制するのが望ましいと考える。)

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

信用取引という制度について
 所謂“信用取引”という制度について、この制度そのものが少し古くなっていて、その信用取引関連情報が、投資家にとって、重要度が低下しているのではないかといった疑問をもっている。
 そもそも、信用取引を簡略化して考えてみると、現物の株の取引以外に、お金を借りて株式を買うか、株式を借りてその株式を売るか、この売買行為を行う投資家に、証券会社は“信用”を供与する取引の事を言う。証券会社は、“信用”を供与する為に、上場株式など流動性のある有価証券か現金を担保にとる。
その担保を基に、証券会社は投資家にお金か株式を貸すのだが、手持ちになければ証券金融会社で、お金か株式を借りてくる。この証券金融会社を使う取引を“貸借取引”=制度信用取引、証券会社のみで完結するのを一般信用取引と言い、お金や株式の貸し借りの状況は、日々集計され、銘柄毎に公表されている。
 これは、投資家が、“信用取引”という仮需要をみるのに、重要な投資情報となっていた。
一方、最近増加しているCFD(Contract for Difference)取引において、投資家は証拠金を差入れ、CFD業者はカバー取引を行うが、CFD取引のカバー業者(取次いでいる証券会社ではない)は、証拠金を担保に、投資家に替って数倍~数十倍のレバレッジをかけ取引を行う。つまり、CFDカバー業者は取引を行う投資家に、レバレッジを掛けてお金や株式を貸す行為を行っているが、CFDカバー業者の殆どが海外の金融機関等とあって、この数字は公表されない。元々、この株式に関するCFD取引は、エクイティ・スワップと呼ばれ、欧米の機関投資家向けに投資銀行が開発した取引であった。
また、大量に株式を売買するヘッジファンドなどが、裁定取引を行う場合、株式レポと呼ばれる大量の株式の貸借が行われるケースが多いが、株式の貸し手は生保や本来は長期保有の機関投資家となっていて、この数字は、株式レンディング業務を行う一部投資銀行かカストディー業務を行う信託以外は、把握し難い。
 以上を纏めると、投資家がその株式の仮需要を知ろうとした場合、信用残高にCFD取引などの広義の証拠金取引残高、株式レポ取引残高は知る必要がある。つまり、トヨタの売りの仮需要は、信用取引の貸株残高だけではなく、CFD取引の売り建て残高、株式レポでの株式のレンディング残高を合算して見なければならない。
 実際に、その様な株式の仮需要に関する集計が出来るのかと問われは、現状では難しいかも知れない。信用取引の貸株は、証券会社毎報告しなければならないが、CFD取引も株式レンディングも店頭取引で特別な報告義務はない。しかし、信用取引残高報告の目的が、もし投資家へその株式の仮需要を知らせることにあるなら、証券会社に別途CFD取引と株式レンディングの報告義務を課さなくとも、以下の情報は、投資家に仮需要を推測させるデーターとなるかも知れないと考えた。
【空売り規制の報告の銘柄毎集計の公表】
現在、来年の1月末までの時限的措置となっている“空売り規制”において、発行済株式総数の原則0.25%以上の空売りポジションの報告・公表義務が課せられていて、現在取引所で日々証券会社毎の報告用紙が公開されているが、これを銘柄毎に集計しなおして公表すれば、大口の空売り需要は、一般に分かり易いものとなる。12月17日に金融庁より公表された“金融・資本市場に係る制度整備についての骨子(案)”においても、この空売り報告制度の整備が示されていて、この報告制度が、個人を含む一般投資家にとって、分かり易い仮需要の公表を目指すことを望む。
【株券保管振替機構データの活用】
 本年より、株式は完全ペーパレスになって、公開株式の売買や貸借など全ての移動は、株券保管振替機構で行われる。11月に取引された公開株式の取引所取引による1日平均の移動(保管振替)は8.7万件だが、それ以外に、PTSやダークプールで取引された分及び株式レンディング分などは一般振替として金融機関間を移動し、これは1日平均で14.7万件もある。この一般振替分を、銘柄毎にその移動数値を公表していけば、一般投資家が知る事が出来ないダークプールでの取引量や、株式レンディングの総数に近い数字が把握でき、取引所取引以外の仮需要を知る事ができる。
 以上は、取引所と株券保管振替機構の手間が掛かるが、それ程のコストでもないので、投資家への利便性向上の為にも、公表されることを期待したい。

テーマ : 証券・金融関連業務
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分断されている資本市場:グリーン・シート&フェニックス
本年の上場廃止企業数が、2年連続戦後最多更新で163社と報じられている(帝国データバンク調べ)。
この内、親会社による完全子会社化や合併・グループ化によるものは113社あり、何らかの形で親会社やグループ企業に統合され、株主は現金か親会社株を取得できるが、残りの50社程度は経営破綻等による上場廃止なので、多くの場合、株主はそのままとなる。数千名、場合によっては数万名の株主は、流動性を失った株式を保有する。勿論、投資の自己責任の結果なのだが、中には比較的早期に再生する企業もあるし、非上場となっても、株主が一定数以上の株主が存在しているうちは、継続開示義務があるので、証券会社の店頭で売買することは可能である。
しかし、実際に証券会社の店頭で、上場廃止になった銘柄の売買を申し込んでも、殆どの場合は売買が出来ないだろう。一応、上場廃止になった株主への救済措置としてフェニックス市場があるが、現在は1銘柄しか取り扱われていない。
 一方、大企業による大型・大量ファインスでバブル期以来の調達額となった時価発行増資とは対照的に、新規上場企業数は、17銘柄(他市場からの上場を除く)とバブル崩壊後最低の水準となっている。新規公開企業数が、最近10年間平均の5分の1以下と極端に少ないのは、金融危機を契機に極端に悪化した景気動向によるものなので、仕方ないとして、ここ10年来、新興市場への橋渡しとして期待されグリーン・シート市場が、成長力のある未公開企業の資金調達の場として、機能していない状況も、続いている。
 成長力のある未公開企業にしても、上場廃止になった再生中の企業にしても、グリーン・シート市場やフェニックス市場という流通制度があり、上場企業とほぼ同様の企業開示を行い、適時開示にも対応しているが、取り扱う証券会社がかなり限定されていて、売買するには困難を伴うような環境なのだ。
 何故なのか、少し考えてみたいが、グリーン・シート&フェニックス市場銘柄は、
・企業の情報・・・開示制度・適時開示制度に準じたディスクロージャーを行っていて、企業の情報はある。(残念ながら、アナリスト・レポートは殆どない)
・株価の情報・・・売買をしようとしたとき時価情報をすぐ入手することが、難しい
・取扱証券会社・・・銘柄毎に取り扱う証券会社が、2社~5社と限られていて、受渡し決済の方法が煩雑になる。
 となっていて、企業情報はある程度あるが、価格情報や売買インフラが、一般の投資家から分断されている。この分断の理由は何なのか。
【制度的分断】
・グリーン・シートにしてもフェニックスであっても、市場と言うものの、売買の形式は店頭取引の形態を取る。例えば、上場株式を取り扱かわない証券会社はないが、グリーン・シート&フェニックス市場銘柄を、うちは取り扱わないと言ってしまえば、証券会社の問題はない。
・では、グリーン・シート&フェニックス市場銘柄を取り扱うことのメリットは証券会社にあるのか。これも実状は、負担感が多くして、メリットが少ないという状況である。銘柄毎に取扱う証券会社は、毎日か毎週少なくとも一度は取り扱う銘柄に売買がなくとも気配値を出さなければならない。これを、取り扱う部店の店頭に表示しなければならない。同時に市場を管轄する証券業協会への報告義務もある。(実際の売買ニーズがなくとも、取扱証券であるうちは継続しなければならない。)
【システム的分断】
・実際A銘柄を買おうと思って、企業情報を調べようとすると、協会が運営するグリーン・シート&フェニックス市場(其々独立したWeb)に辿りつけば、企業情報は入手する事が出来る。
・しかし、価格情報はこのWebサイトでは分からない場合が、殆どである。まさか取扱い証券を調べて、その店頭まで行く訳にいかないので、その代替するものを探すと、日本証券代行が運営するグリーン・シート&フェニックス市場PTS(私設取引所)があるが、一応、銘柄毎気配値は表示してある。
しかし、リアルタイムで価格情報が表示されているとは言い難く、とても取引システムと言えない。
以上の様に、一般の投資家から分断されている理由は、はっきり言うと、このグリーン・シート&フェニックス制度(証券業協会規則による)が、実状に即していないからである。
 気配値表示は証券会社ではなく専業者にコストを払って毎日実行させる・取扱証券会社制度を止め証券会社に取扱いを義務付ける・ちゃんとした取引システムをコストを払って(証券会社共同出資か、基金からの拠出)構築し、証券会社に利用させる。などの改革を行って、日本の資本市場の入口・出口の機能を整備していくことは、業界の課題だと思う。

テーマ : 証券・金融関連業務
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証券業の業務内容の多様化
先日、最近注目度が高まっている排出量取引は、証券会社の扱える金融商品なのかと問われた。質問の趣旨は、証券会社=金融商品取引業者は、金融商品取引法によって金融商品(有価証券及びそのディリバティブ)を取り扱うことが出来るが、金商法2条に定める有価証券定義には、排出量取引がないので、どの様な定義なのかと問合せだった。実際に排出量取引及びそのデリバティブ取引やその媒介・取次・代理を行っている証券会社は、現在10社ある。この排出量取引は、証券会社にとって届ければ業務を行うことが出来る“届出業務”として金商法上は定義されているというのが回答だった。
 金融ビックバン後、10年以上経過した現在の証券会社の姿は、随分変化してきたように思うが、収益構造面(顧客からの手数料)でその変化を見てみると、金融ビックバン以前と直近では、以下の様になっている。
手数料変化


※上記グラフは、東証総合取引参加者の決算概況よりの比較
委託手数料率の減少とその他手数料の拡大が目立つが、株式の委託手数料率は、この間0.35%から0.07%と5分の1に低下している。その他手数料では、投信の代行手数料(運用会社より、投信保管残高に応じて支払われる)が大きな割合を占めるが、M&A手数料や保険募集・ローンの仲介手数料などが含まれる。
この様な証券会社の手数料構造の変化は、顧客へのサービスが、有価証券の売買や募集以外に多様化している結果なのだろうが、冒頭に上げた排出量取引の様な、本来の有価証券売買関係と異なる業務の実態について、日本証券業協会の“会員における業務内容の実態調査(平成21年度)”の中から取り上げてみたい。
まず、証券会社の本来の業務ではないが、金融庁に届出すればよい“届出業務”については、協会員305社中179社(58.9%)が行っていて、多い順には、
・保険募集に係る業務・・・95社
・金地金の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務・・・50社
・貸金業法に規定する貸金業その他金銭の貸付け又は金銭の媒介に係る業務(主にローンの媒介)・・・47社
・自ら保有する不動産の賃貸・・・43社
・その行う業務に係る顧客に対し他の事業者のあっせん又は紹介を行う業務(ビジネスマッチング)・・・40社
・匿名組合契約の締結又はその媒介、取次若しくは代理に係る業務(私募ファンド)・・・39社
などがあるが、少し変わったもので、
・他の事業者の業務に関する広告又は宣伝を行う業務・・・24社
といったものまである。
また、金融庁の承認を受け、47社(15.4%)が行っている“承認業務”としては、
・グループ会社の業務遂行の為の業務
・リミテッド・パートナーシップ契約の締結の媒介・取次若しくは代理に係る業務
・カストディ業務に係る媒介等に係る業務
・商品現物取引・その媒介・取次若しくは代理に係る業務
・国外の商品先物取引所における媒介及び代理業務
・クレジット・デリバティブ取引又はその媒介若しくは代理業務
・郵便貯金及び預金等の受払事務の受託
・クレジットカード募集取扱業務
・ファンド管理業務
など、金融・商品取引分野に拡がっている。
 勿論、本業の金融商品分野でも、外国株外国債券の取扱いの拡大・FXやCFDなど先物証拠金取引の拡大などの変化が進んでいるし、資産管理型への営業ビジネスモデルの転換努力も続いている。
業として見た証券会社は、金融ビックバン後に雇用者数を減少させてはいるが、これらの変化や業務の多様性を維持していけば、金融分野での成長力は失わないと信じている。

テーマ : 証券・金融関連業務
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信用情報としてのCDS
 企業の信用情報としては、一般の投資家が知るのは格付け情報であるが、これは社債を発行していなければ公表されないし、余程に財務内容が変化するような事でも発生しなければ、半年に一度程度見直される信用情報である。しかし、CDS(credit default swap)が取引されていれば、リアルタイムなクレジット市場の信用情報となる。企業再生が懸念されるような企業にとって、この信用情報は株価にも大きな影響を与えるのは当然である。例えば、JALやアイフルなどの再建計画が進行中の上場企業などにおいては、CDSの価格が急上昇すれば、銀行などの債権者との再建交渉を不安視して株価が下落する可能性が強まる。CDS価格と株価の逆相関性が明らかな再生中の企業の信用情報は、投資情報になる。
 この投資情報としての信用情報を悪用するケースが、今年5月に米国でSECによって摘発されている。
内容は、ニールセンメディア等のホールディングカンパニーVNU N.V.が発行する社債において、当該企業は、元利払いなど特別な支払い条件を想定したが、この内容は、この企業の他の社債やローンに影響を与えること(既存の社債やローンが劣後する可能性)が予想されていた。この社債の引受主幹事の米投資銀行のトレーダーが、担当するヘッジファンドのマネージャーに、この社債発行情報を公表前に告げ、ヘッジファンド側は、当該企業のCDSを購入、社債発行公表後に売却して120万ドルの利益を上げたというものだ。最近、米SECは、ヘッジファンドによるインサイダー取引の取り締まり強化の一環として、CDS取引などのデリバティブなどの金融商品に照準を合わせる方針であることを明らかにしている。
 ところで信用情報としてのCDSは、何によって価格を大きく変動させるのだろうか。基本的なことを考え直してみたい。
元々CDSは、ローンや社債などの債権を保証するものだが、CDSの買い手は、自分の保有する債権のリスクヘッジの為にCDSを購入する。CDSの売り手は、この債権の保証料相当と思われる金額を受け取り、債権に対する保証義務を負う。つまりCDSの売り手は、もしもの場合、この企業への債権を代替して、CDSの買い手に債権元本を支払い、その後は自らがこの企業から債権を回収する。問題は、CDSの売り手が、この債権の代替を実行するタイミングである。企業が破綻してしまえば、その代替行為を行うことは明確だが、CDSの契約によると、以下の様な事由によりCDSの買い手は、債権の支払いを実行しなければならない。これは、CDSのクレジット・イベントという。
○破産:法的破綻
○支払不履行:一定額以上の債務の支払い不履行
○リストラチャリング:一定額以上の条件の変更
クレジット・イベントが発生すれば、CDSの売り手は債権支払い義務が生じるが、各クレジット・イベントによって、想定される債権の回収率が大きく異なってくる。この為に、CDSの価格はどのクレジット・イベントの可能性があるかによって、大きく変動する可能性がある。
 再生企業の株価にさえ大きな影響を与えるCDS価格の大きな変動は、このクレジット・イベントの判断による。本来は、CDSの買い手(債権を保証される側)とCDSの売り手(債権を代替する側)の合意により判断すべきクレジット・イベントであるが、例えばアイフルの事案の様に、CDS契約時には、想定していなかった事業ADRなどの手法は、上記のクレジット・イベントに該当するのかどうか判断が難しい。その為に、このクレジット・イベントの判断を、ISDA(International Swap and Derivatives Association=国際スワップデリバティブ協会)の専門委員会(Crdit Derivatives Deteminations Commttee:CDS市場参加者による会議)に委ねるケースが多い。アイフルの件では、第二位に債権者のあおぞら銀行がCDSを多く保有していると言われ、このクレジット・イベントの判断に注目が集まっていた。勿論、CDS売買当事者が、ISDAの専門委員会の決定に不満であれば、CDS契約の履行を求めて訴訟することになるが、債権の回収にかかる時間や訴訟コストを考えれば、殆どがこの専門委員会の決定に従う。
 ところで、ISDAとは、1985年に欧米の主要金融機関10社により設立され、現在は58ヵ国840社の金融機関が参加するニューヨークに本部がある組織で、CDSをはじめ主要な金融機関が取引するディリバティブの契約書や約定ルールなどを定めている。
 金融危機後、企業CDSのクレジット・イベントの増加により、株式や債券などの資本市場にも、信用情報としての重要性を強めているISDAの判断であるが、個人を含めた投資家にどう伝えるかは、業界の宿題なのだろう。
不公正ファイナンスについて
 時価発行増資のラッシュのどうにか一段落して、多少の安堵感を覚える市場関係者も多いのではないだろうか。株式の発行市場は、バブル期以来の活況だったが、公募増資額は流石に1989年の5.8兆円には及ばないものの、5兆円台に乗せたようだ。このことは、企業にリスクマネーを供給する市場機能が働いたと考えれば、日本の資本市場にとって、投資家の底力を示す喜ばしいことである。但し、この恩恵は、合計50社足らずの企業に限られていたようだ。メガバンク・大手証券を中心にした金融機関や大手企業の1000億円を超える大型発行が目立ち、この大型発行の為の募集方法として、国内・海外同時募集(グローバル・オファーリング)が使われたが、以下の特徴があった。
・発行済み株数の3割を超える時価発行が多かった。
・増資公表から、1~2週間程度で増資価格が決定するが、その間3割近い大幅な下落も目立った。
・グローバル・オファーリングにおける引受業者としては、野村の一人勝ちの観が強い。
株主から見ると、ダイリーション(持分の希薄化)が進み、株価も大きく下げたが、3割下げた株価は元の水準に戻る為には5割上場しなければならない。この為の成長戦略を描くのは、資本調達した企業の責任であるが、この様な公募増資が可能なのは、先進国では日本だけである。
ちなみに、欧州は最近日経でもよく取り上げられる株主割当増資が原則で、それ以外の者に割当る場合は公募であっても株主総会の事前承認決議を得ることが基本である。また米国では、取締役会で新株の発行は出来るが、発行済み株数の20%を超える発行の場合は、上場規則で株主総会の決議を得なければならない。日本の株主も、不公正発行の場合は、発行差し止め請求が可能であるが、公募の場合には適用することは困難と考えられている。
一方、大型ファイナンスの引受業務で、野村はほぼ一人勝ちしているのは、リーマンの海外部門の買収等で、海外における株式売買シェアを高めた結果であり、明らかに投資銀行としての戦略の成功による。

 以上は、標題とは関係ない公正なファイナンス市場であるが、公募増資出来る企業はまだしも、ビジネスモデルが行き詰っているような上場企業の小型ファイナンスも、第3者割当増資の形で実施されることも多い。これらの小型ファインスを繰り返す企業は、株価操縦や風説の流布・インサイダー取引・粉飾決算などの証券不公正取引に繋がる場合もあり、証券取引等監視委員会(SESC)は、不公正ファイナンスとして注意や情報提供を呼び掛けている。SESCは、不公正ファイナンスの特徴として以下の内容を示している。(SESCの講演会資料より)
【発行会社の属性】
経営不振企業、株価下落企業、株主の大幅な変更、ビジネスモデルの大幅な変更で投資事業中心になるケース
【ファイナンスの割当先】
割当先の属性や出資者の実像が分かり難く、実態不明のファンド。英領バージン諸島のSPCなど海外オフショアを使うケース。割当先の財務内容が分かり難い。
【資金使途】
資金調達手段と資金使途の整合性がない(新株予約権を多用するケースなど)。過去のファイナンス調達資金の使途が、社外への投融資や特別損失に充てられる。
【発行条件の合理性】
価格や規模に問題があり、希薄化には殆ど配慮されていない。
【企業行動上の問題】
複数回の支配権の移動などにより、コーポレートガバナンス機能が問題あり、結果として取引所での上場企業としての企業行動規範が守られない。
【関係者】
監査法人や公認会計士、法律事務所や弁護士、アレンジャーや証券会社など、業界の関係者が関与する場合が多く、また香港の会社設立業者が主体となるケースもある。

 不公正ファイナンスによって最もダメージを受けたのは、新興市場であり、企業がいつの間には資本市場から資金を調達するだけの“箱”企業化したことで、一般投資家を新興市場から遠ざけた。会社法の制定において、新株予約権や種類株整備など、資本調達手段の機能を拡充し、取締役会授権などで、企業の資本政策の利便性を高めたが、この様な不公正ファイナンスの横行で、市場機能を損うような非常に残念なケースも発生した。上場廃止規則の整備が、この様な不公正ファイナンスの予防措置となったかも知れないが、これらの責任は、当該企業のみならず、発行市場・流通市場各々の参加者の負うべきところではないだろうか。

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株式の取引情報について
ネットで自分の取引口座にアクセスすると、株式価格の情報では、約定前の売買注文状況(所謂板情報)まで見せるのが一般的になってきたが、最近その板情報に、見慣れぬ数字が並び始めた。例えば現在値500円の株価に対して、501円での売り注文の間に、500.1円・・1000株売り、500.3円・・5000株売り、反対に499円での買い注文の間に、499.9・・1000株買い、499.7円・・5000株買い。など、取引所での最小値幅1円の間を刻む売買注文である。勿論、取引所の板情報ではなく、その証券が参加するPTS(私設取引システム)の売買値段が、11月下旬から1円刻みから10銭刻みに細分化されたことによるPTSの板情報である。
 またあるネット証券のサービスでは、現在株価より上下5本の売買注文を板情報として情報提供しているが、これを東証の新売買システム稼働に合わせて、全ての売買注文を見せるし、売買注文の合計数字:例えば、500円に現在値のA株が、499円から490円までの間の買い注文数量をリアルタイムで表示するという。
 これらのことが、株式取引においてどの様な意味があるが、筆者はトレーダーではないので、ハッキリいってよく分かっていない。しかし、これらの個人向け新サービスは、東証の新売買システムと関係があることは間違いなさそうだ。
 3週間後に稼働を始める東証新売買システムは、ミリ秒単位の注文処理スピードを誇るが、この超高速化は、ファンドや機関投資家の大口注文を処理するアルゴリズム取引を、取引所内に誘導する目的を持つ。今まで、取引所外のダークプールで取引されていた大口取引(特に海外で)などが、超高速対応のアルゴリズム取引で、取引所取引に参加すれば、取引所の流動性は増す。この超高速化取引開始は、大いに期待されているが、一方、いままでの取引に比べて、以下の点が変わると予想されている。
・値動きは、早く、かつ大きく見える。(東証の売買ルールの変更される)
・目で、詳細な売買注文情報(板情報)を追う事は、不可能になる。(アルゴリズム取引は、ミリ秒単位で、売買注文が出されたり、取り消されたりを繰り返す為=これらのアルゴリズム取引は、大量に売買しようとする大口投資家の、売買執行コストを下げる目的で、高速処理のプログラム化がされている。)
つまり、今までの数秒単位の処理スピードでは、売買注文状況である板情報を目で読んで、取引するトレーディング手法もあったが、ミリ秒単位で売買注文が変わる板情報を読むには、高速処理のシステムを持つか、売買情報を少し離して、小さいトレンドで読むしかないのだろう。勿論、個人が高速処理システムを保有することは、現在はコスト的に難しいので、冒頭に紹介したような新サービスで、個人のトレーダーは、売買注文動向を探るのだろう。
 一方、超高速のアルゴリズム取引が進んでいる米国においては、この売買注文情報取得や処理スピードに関して、大口投資家のファンドなどと個人では、差がつくのは仕方ないとしても、超高速処理されたものの結果の情報(アルゴリズム取引での発注状況や約定状況について)は、個人も含めて取引参加者間で共有すべきとの見解が、米議会や米SECで強まっていて、一部では、超高速のアルゴリズム取引を行うダークプールに対する情報開示規制が、実施されそうである。
 東証の売買システム超高速化は、間違いなく日本の取引システムの機能強化なのだが、その情報を受けて処理する投資家間格差が、欧米では問題になり始めている。筆者の個人的な意見は、大手のファンドなどに投資銀行がシステムサービスするのであれば、ネット証券はそれに対抗すべく新サービスを、個人のネットトレーダーに提供していくので良いのではと思うが、共有可能な情報は、可能な時間内に、投資家間で共有すべきというのが、金融危機後の、グローバル金融規制のトレンドなのだろう。
 東証は、新売買システムの稼働に当たり、取引参加者間の情報の非対称性への対応といった宿題にも対応しなければならない。

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最近のリテール戦略:大手2社の場合
世間一般の企業と同様に証券業界の雇用環境も厳しいが、過去十数年で2度の金融危機にあった割には、証券業というものは意外にシッカリしている。その証拠に証券会社数は、この間300社前後(2009年12月3日現在で307社=証券業協会員数)で推移していて、毎年約1割前後が入れ替わっているが、銀行や保険そして他の金融機関数が統合などで大きく数を減じているのに比べ、金融の中では、堅調な業界だ。これも金融ビックバンと規制緩和(許可制から登録制など)の影響で、業界が活力を維持したからだと思える。しかし、業務の内容は大きく変化した。株式委託手数料から投信募集手数料へ、対面からネットへ、営業マンからファイナンシャル・アドバイザーへ、などリテール営業現場での変化は、証券会社の業態転換さえ促した。この証券のリテール戦略に関して、今後の動向を予想する目的で、大手証券2社の直近決算説明資料から読み込んでみたい。(※投資勧誘を目的としたものではないので、あくまでもリテール戦略のみの比較になる。)
【大和のリテール戦略】
・対面営業のコンサルティング部門の収益の柱は、やはり投信販売となっていて、旗艦ファンドとなる外債ファンドの販売残高を積み上げて、投信代理事務手数料を増加させるという基本戦略だ。またタイミングを見て、新興国ファンドを設定するという。株式については、アジア株などの外国株売買取次を拡大するというが、10月時点では、株式関連収益の3割を外国株が占めるようになっている。債券販売に関しては、現在月間1000億円前後リテール部門で販売している外債・仕組債を新規資金導入ツールとして使うが、この会社が注力する個人資産運用のラップ口座は、今期の残高目標3000億円から2年後には1兆円への拡大を目指すとしている。
・ネット取引口座の増加にも注力していて、9月末時点では120万口座まで口座数が拡大し、オンライン証券専業と比較してもSBIに次いで2番目の口座数となっている。こちらの戦略は、品揃えと利便性の向上から、“アクティブな投資スタイルの提供”と舵を切っていて、FX取引の拡充やCFD取引の開始など、所謂ネットトレーダーにも対応するサービスを充実させている。
・IT証券への変貌と銘打っているのが、IT投資を進めることで、電子事務フロー確立による人的事務量の極小化を図り固定的経費を削減するのと、その効率化の余力で、営業部門への人員シフトを進める。
【野村のリテール戦略】
(直近の投資家向け説明資料は、投資銀行部門を中心にした戦略説明になっているので、決算説明資料より、リテール部門の中期成長戦略について)
 今までの野村のリテール営業部門を、富裕層に強いメリル・リンチ型と定義して、今後は、ネットやコールセンター・対面営業(独立系アドバイザー中心)を多面的に使い、商品ラインナップも豊富なチャールズ・シュワブ型や、ITプラットホームを活用して、銀行や企業内の金融サービスに応えるフィデリティ型で、資産形成層への営業を拡大するとしている。方法論としては、
・アクセスポイントの拡充(店舗網、代理店を含む)の拡充と、人材育成による対面ビジネスの強化
・オープンアーキテクシャーで高機能化した商品・サービス(良い商品・サービスなら、何処の提供するものであっても、営業現場で顧客に提供出来る)
・ジョインベストの統合など、ネット・コール体制の整備
・だいこう証券ビジネスとの提携による地方銀行との連携(地銀が販売する金融商品に対して、例えば野村が提供し、だいこう証券ビジネスが事務サポートを行うことを想定)
・職域ビジネスの拡大(企業内個人へ、企業を通して金融サービスを提供する。過去は、持株会などの支援サービスが中心であったが、企業の401Kへの支援業務拡大を通して、個人金融資産形成をサポートすることを想定)
 大和は、金融商品やサービスの内容を、野村は、個人への対応の仕組みを、それぞれ戦略的に変えようとしているが、両社ともネット取引拡大を想定している様で、今後のネット証券とのサービス競争も注目される。

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金融審議会報告から見える事、見えない事:証券業界の将来図
12月9日に、今次の金融危機の経験を踏まえて、今後の我が国金融システムのあり方についての金融審議会・基本問題懇談会報告が公表された。金融全般とはいっても銀行システム中心の議論にならざるお得ないが、その中から証券関連(市場機能及び市場仲介部分)について、現状の問題意識は何で、今度どの様な行政の方向が打ち出される可能性があるのか、その部分について、まず取り上げてみたい。
[現状の問題意識]
 日本の金融システムは、未だ銀行部門の比重が高く、市場型金融が育っている(欧米に比べて)とは言い難いとし、引き続き市場型金融の制度整備・実務的取り組みの積み上げを行っていくべきとしている。
 その為には、取引システムの持続的整備、機関投資家のすその拡大、良質な投資商品の提供などが必要としている。
 なお、金融業の課題として、起業段階の企業に対するベンチャーキャピタルや成長段階に入った企業に対する分散投資手法の提供など、企業の成長段階に応じた多様な資金供給ルートの確保は重要な課題として取り上げている。
[市場インフラの再構築](カッコ内は、筆者注釈)
・CDS等の店頭デリバティブ取引に係る清算制度の整備
(CDS清算機関設立の動きは、金融危機後のこの1年で欧米政府の要請により、それぞれに設立されている。清算機関設立の目的は、CDSや金利スワップなど店頭デリバティブ取引の主要な取引者である大手金融機関同士のカウンターパーティー・リスクを軽減する(連鎖破綻の回避)のと、清算機関を通して各国金融当局による取引の実態把握が目的と言われている。CDS取引量の少ない日本にあっても、直近のアイフルや日航など、CDS取引内容が今後の再建に影響する可能性もあるので、日本の金融当局が把握可能な国内清算機関は必要という見方もある。)
・債券市場における決済期間の短縮化
(決済リスクを低減する為、国債取引であってもT+1、可能ならT+0を目指すべきという考え方がある。)
・証券清算機関の基盤強化・利用拡大
(現在、日常取引される有価証券は全て電子化されペーパレスとなり、株式保管振替機構で決済されるが、取引者間において、資金決済とリンクする清算機能が100%なのは、株式の取引所取引に限られる。つまり、取引者間でお互いのカウンターパーティー・リスクを負わない清算機能が、CP・債券(国債を含む)及び株や債券のレポ取引など望まれている。)
・国債レポ市場の改善
(金融危機時の国債レポ市場の混乱を経験した日銀の主張によるところが大きいが、国債レポ清算機能の整備と、売却した債券の手当てがつかない場合のフェイル・ルール整備を想定している。)
以上の問題が取り上げられているが、いずれも大手金融機関に係る決済・清算機能問題に集約している。
[報告からは見えないこと]
具体論は、通常なら分科会やワーキングで議論されるので、現段階でコメントするのは多少気が引けるが、一応項目だけ上げておく。
・貯蓄から投資への具体策(税制改正で、2012年から予定されていた少額投資非課税制度がとり止めになり、401Kの拡充策も前国会で廃案(=議論ざれずで)になった。)
・プロ向け市場の動向(TOKYO AIMは出来だが、ハードルが高くて機能せず。現状ではお手本とするロンドンのAIMの様に育つとは想像できず)
・新興市場改革及びベンチャー投資機能と資本市場への誘導策の整備(東証の市場改革プログラムに期待したいが、制度支援も必要なので、行政を含めて議論すべきでは)
・機関投資家の機能強化(日本におけるヘッジファンド機能の整備や、適格機関投資家のリスク投資促進策につき、議論の継続を期待したい)
 などなど、金融審議会におけるオープンな今後の議論を期待したい。

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ライツ・イッシュ=株主割当増資の背景と仕組みについて
 グローバルな金融危機をどうにか乗り切った観もあるが、日本の金融機関は公的資金を使わなかった代わりに、株主や投資家がそのコストを負担した。3大メガバンクの巨額の資本調達に耐えたのは、三菱UFJ(62万)三井住友(22万)みずほ(44万)合計すると128万の株主である(2009年3月末時点)。さらに資本調達は、時価発行方式の公募増資で行われ、みずほFGの増資を例にとると、市場時価190円から3.16%ダウン184円で発行価格が決定されていて、この差額分は既存株主の負担とみることが出来る。
[なお、この発行価格は投資家が新株の募集に対して、引受証券に払い込む金額で、みずほFGの実際の資本に払い込まれる部分は、払込金額176.4円。この差額7.6円(払込金額に対して、4.3%)は引受証券の募集手数料になる。この分は、公募増資に応じる新規株主の負担となる。]
 この事例では、新規の資本を得る為に、合計すると7.46%のコストを、44万株主が負担したことになる。銀行は資本を得て安堵し、引受証券は巨額の引受手数料を得て潤うが、既存及び新規株主が負担したコストの見返りは何になるのだろうか。勿論、グローバルな金融機関競争に勝ち残って、金融グループとしての企業価値を上げることが前提だろうが、株主への利益還元のストーリーを明確にするという資本市場のルールは、守っていただきたい。
 前置きが長くなったが、最近株主の負担が比較的少ない増資方法としてライツ・イッシュ=株主割当増資が、日経などで取り上げられるようになってきたので、その背景と方法論について述べたい。

【株主割当増資の背景】
 現在の様に、一般の投資家から時価に近い株価で新株を募集する方法=公募増資の方法が定着したのは30年程前からであるが、欧米では株主持分の希薄化に配慮され、新規公開(IPO)時以外は、株主割当増資=ライツ・イッシュが殆どである。日本における資本調達方法しては、時価発行の公募増資・CB(新株予約権付社債)が発達した為、株主増資割当はこれらの増資方法が使い難い状況での代替手段とみなされていた。
[バブル崩壊後に、発行市場においても公募増資が実質的に停止・規制された際、銀行などが時価と額面の中間の株価で新株を発行する中間時価発行増資を実施。この新株を引受する権利を、株主に割当てた。なお、この増資に応じない株主は、その権利を失権したと見做され、この分に関して証券会社は、失権株公募として新たに新株の公募に応じる投資家を募集した。]

【株主割当増資の仕組み】
 会社法になって、株主に新株を引き受ける権利を与える事が、新株予約権(=欧米で言うところのライツ)として定義された。株主割当増資は、この新株予約権を株主全てに付与するが、新株予約権の権利行使の対象となる新株の払込価格はいくらでも良い。前記のみずほFGの例でいくと、1円でも良いし、300円でも良い。勿論時価でも良い。以下、みずほFGの事例で、仮想で株主増資割当を実施した場合の仕組みの概略を説明する。
≪仮想です≫
・6月30日、株主全てに、保有株数100株に対して30株の新株が引き受けられる新株式予約権を付与することを公表。(なお株主の確定は、7月末実施)
・新株予約権の内容は、新株の払込価格200円(6月30日の終値230円に対して、13%のデスカウント)、予約権の権利行使期間は、2009年8月10日から2010年の3月15日まで。
・株主に割当られた新株予約権は、8月10日から東証に上場し、新株予約権の売買が出来る。(但し。2010年3月10日まで)
・証券会社は、新株予約権を割当てられた株主に対して、権利行使を実行して新株の払込に応じるか、新株予約権そのものを売却するか確認。
・新株予約権上場の8月10日以降は、証券会社は当該新株予約権売買を投資家に仲介。
≪仮想終り≫

以上の様な株主割当増資方法を行えば、株主に希薄化その他のコストを負わせることなく、大量の自己資本調達を、期中に実施することも可能である。
但し、通常の時価発行公募増資より、発行者も証券会社も手間がかかるが、このコストは、日本の資本市場健全化の負担として、利用者・市場仲介者が負うべきものではないだろうか。

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不動産EXITとしてのREIT
最近の増資ラッシュに巻き込まれて、J-REIT指数も9月始めまでの1000台乗せから、2割近く下げて11月27日には、814.88まで下落した。12月に入って、日経平均の反発とともに、J-REIT指数も900台を回復していて、平均分配金利回りは6.4%(時価総額加重平均)となっている。
 REIT指数の本格回復は、6月後半に、官民ファンド立上げで不安視されていたJ-REITが発行する社債の償還資金に目途がついたことや、REIT自身の統合に向けた法制度整備がなされたことが契機になった。実際にREIT統合は、来年の4月始めまで含めると現在の42法人(うち1社非上場)が、4社統合されて、38社になる(資産規模7兆7128億円)。最近の投資口の新規募集(株式の時価発行に相当)も4社で620億円程度なので、市場からの過去調達実績(2007年7144億円、2006年1兆5144億円、新規公開分も含む)からみて、それ程供給圧迫感があるとも思えない水準だ。
 不動産市場から、その最終的買い手(EXIT)として期待が強いJ-REITだが、投資家からはどの様に見られているのだろうか。住信基礎研究所が9月末時点で実施した、年金基金の不動産投資に関する実態調査では、以下の様なREIT対する投資姿勢となっている。
【REIT投資を開始・増加させたい理由】
・現在のREIT価格が割安な水準である為・・・38%
・オルタナティブ投資としてのアロケーションを増加させたい・・・24%
最近のREITの値動きは、株が下がれば、それ以上に下げ、株が上げればそれ以上に上げる傾向があり、株式投資の代替機能が見難い。むしろ、株式投資とは逆相関傾向にある国内債券投資の代替投資としての機能はあるのだろう。
・REIT市場が、今後安定するとみている・・・20%
【REIT投資を開始・増加させたい理由】
・価格変動が大きい・・・40%
・市場規模が小さい・・・7%
確かに、J-REITのボラティリティ(価格変動率)は異常に大きくなっていて、不動産証券化協会に調査によると、最近の国内株式のボラティリティー18%程度(60営業日ローリングでの日次リターンの標準偏差)であるが、J-REITは25%程度で再び上昇傾向にある。株よりボラティリティーが高い状況は、この3年以上続いていて、本来は利回りを狙う投資商品だが、株より高いというのは、市場規模が小さいことに繋がる。
・まだ価格下落がある・・・23%
J-REITが保有する不動産は、千代田区など東京都心のものが44%、その他東京を含めると61%が東京圏(関東圏まで含めると、78%)となっている。つまり東京都心のオフィスの賃料動向が、REITの予想配当利回りに影響を与える。賃料動向は、現在の不況に影響されて下落しているが、不動産業界では、東京都心オフィスの下落調整は、最近の調査では最終局面(不動産投資家の想定する期待利回りの上昇=キャップレートが、そろそろ止まりそう)に入ったと見られているようだ。
 一方、個人投資家の方は、海外REITへの投資を強める傾向が再び活発になってきているようだが、ある運用会社の資料には、海外REIT市場への投資に関して、以下の点をアピールしている。
・世界経済の回復が、REITの追い風
・世界的な金利低下によるメリット
・各国の景気対策が追い風に
・過去、景気回復に先駆けて回復した米国REIT指数
・米国REITの資金調達環境は改善傾向へ
何だか、米国REITの宣伝になってしまったが、海外REITの6割以上が米国なので、この動向がREIT全体を左右する。しかし、自国債との利回りは、日米でそれ程変わらない。
 日本のREIT投資には、人口減少の影が付きまとっているのだろうか。それとも、景気対策に対する不安感なのだろうか。投資シナリオ作りは、業界の仕事だと思うのだが。
 

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銀行のファイナンスについて
 週明けの日経に、一面を使って銀行の劣後債募集広告が載っていた。年限は8年と少し長いが、利率は1.83%と、10年物国債(現在の窓販利回り:1.201%)をかなり上回る。三井住友銀行の発行であるが、募集予定額が3200億円と個人向けとしては、多分過去最大規模になる。傘下の日興コーディアルとSMBCフレンドで販売するという。
 これで、4月以降だけみても個人向け債券発行は、1.3兆円を超え、暦年・年度ベースとも、発行は過去最高を更新している。昨年も1兆円を超えており2年連続の高水準となるが、その7割程度は銀行の社債・劣後債になので、エクイティ市場での時価発行増資による調達を含めて、発行市場は銀行のファイナンスで大繁盛である。欧米の金融機関の様に、公的資金に頼らず、大量の時価発行や劣後調達を支える個人投資家層の厚さは、日本の金融機関と発行市場を支えているが、金融機関の自己資本強化の動きは、グローバルな金融規制によって、まだまだ続きそうなので、そろそろ株主や個人投資家への配慮を検討すべき時期にきているのでないだろうか。
 そこで、銀行のファイナンスにつき、以下の様な試案を考えてみた。
【社債】
 BIS基準の資本増強条件に合致する様な劣後債調達は、どうしても5年超の長期債になる。その為に、個人をターゲットにした劣後債調達を行う場合は、個人が保有する銀行劣後債の流動性を確保する仕組みを作っては如何だろうか。現在でも、銀行劣後債を含めて債券は、個人が保有する分を償還以前に換金しようとする場合、販売した証券会社に買取ってもらうことは出来るが、その際は、証券会社の提示する時価(個人投資家は事前に知るはなく、換金を申し込んでから知ることが殆ど)から、手数料(額面100円に対して、0.4%程度)を差し引かれての換金となる。証券側は、直ぐには転売できないで、在庫になる可能性が高くなる為、この方法は、証券会社では一般化した個人社債の扱いとである。
しかし、これだけ個人向け銀行劣後債が発行されているのだから、いっそいつでも個人が売却したり、途中の購入も可能となるようなPTS(私設取引システム)を、作ってみては如何だろうか。そうすれば、個人投資家は、保有する銀行劣後債若しくは購入を希望する銀行劣後債の価格がリアルタイムで分かる。加えて、銀行劣後債の格付け情報や社債の内容・劣後内容の変更に関する情報等がワンストップで得る事ができれば、個人投資家の利便性は向上する。
 これだと、どうも個人向け劣後債に関する情報を集約して、個人に提供していくシステムが必要なようだが、銀行ファイナンスで潤う業界がコスト負担していけは、銀行劣後債を含めて日本の個人向け社債の流通インフラ構築に役立つ。
【時価発行増資】
 先に苦言から申しあげると、銀行の自己資本調達が必要なのは分かるが、その資金使途がローンや債券運用(大部分が1.2~3%の利回りの国債運用)と書かれてしまうと、何の為の資本調達か株主には分からない。まして、預貸率が6~7割程度の地銀の時価発行増資だと、これらの銀行の資本コストに対する考え方を聞きたくもなる。しかし、他行や証券などを買収する戦略性のある資金なら、株主も納得するだろうが、それでも出来れば市場インパクトが小さい方がよく、劣後CBが好ましいと考える。
とはいえ、どうしても時価発行増資で、直接の資本調達が必要な場合は、株主割当増資を検討されては如何だろうか。日経には、先週ライツ・イッシュ(株主に増資に応じる権利を与える=新株予約権の株主への付与)に東証が対応する(新株予約権の上場)記事が掲載されていた。現状の大型ファイナンスに見られるように、一気に発行済み株式数の3割以上も増資するなら、株主に保有株数の3割に当たる新株予約権を付与し、権利行使の期限を1年程度に限り、その間の権利行使は株主の判断に委ねる。権利を行使しない株主の分は、新株予約権そのものを上場して流通させ、他の投資家に売買させる。

 投資銀行は、銀行へのファイナンス提案で、もう少し株主や市場に対する配慮をした工夫があっても良いのではと思うのは、筆者だけだろうか。

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投信の販売について
 リテール証券会社にとって、投信の販売動向が収益を左右するようになってしまい、もはや証券会社(個人にとっての)は、株を取り扱う会社から、投信を販売する会社へ変わっている。
 日本で組成される投資信託は、この3月末から10月末を見ても、順調に拡大していて、銘柄数で240銘柄増加の6146銘柄、残高も3兆5017億円増加の109兆947億円(株式保管振替機構調べ:私募投信も含む)となっており、成長が持続している。
 投信の拡大の恩恵を受ける証券業界であるが、今や投信販売の窓口としては、ゆうちょ銀行を含む銀行に肩を並べられており、投信販売チャネル間の競争は厳しさを増している。
 そのような投信への個人の投資状況に関して、投信協会による“投資信託に関するアンケート調査報告2009”が公表されているが、その中から注目するポイントを取り上げてみる。
【投信の保有状況】
 全体の33.3%が、現在投信を保有しており、20代は僅か3.2%だが、60代・70台以上は半数が保有している。投信が、老後資金の運用対象として定着していることが分かる。つまり、纏まった資金の運用対象なのだろうが、少額資金で投資する対象としては、まだ遠い商品なのかもしれない。米国での個人の投信保有を促した仕組みとして、401Kが上げられるし、英国の少額投資制度やチャイルド・トラスト・ファンドが、若年層の投信保有を後押しした。日本においても、新政権化の税調で少額投資制度実施予定(2012年からの)が中止されたことは残念だが、日本版401Kの対象者(現在380万人程度)を拡大すれば、結果として20代を含む若い世代の投信保有が、更に拡大していくだろう。
【販売員の説明・勧誘方法】
 投信を保有する個人の半数は、販売の際の説明に対して何らかの不満があるようで、不満理由として、「投資経験に応じた説明をしてほしい」「説明が多すぎて重要なポイントが理解できない」が多い。業界の人間としては、販売現場でFAなどが懸命に説明を試みている姿が目に浮かぶが、これは彼ら(彼女たち)が、説明能力が不足していたり金融知識の使い方が不味い訳ではないと思う。販売現場での説明は、目論見書もしくは販売用資料を使って行うが、この内容は投信の有価証券届出書の記載内容ベースであるので、説明もその範囲に限られる。つまり、この届出書や目論見書記載内容が分かりにくい事が、説明への不満の原因ではないだろうか。そもそも、説明を要しなければならない投信ではなく、目論見書を見て投資家が理解できるのが、投信販売現場の理想だと思う。
【投信の利点】
 投信を保有する個人が、投信の利点だと感じているところは、
・定期的に分配金が受け取れる・・・52.1%
・比較的高い利回りが期待できる・・・45.4%
となっていて、毎月分配型が売れる今の販売傾向を裏付ける。
【投信への不満】
 投信を保有する個人が、投信への不満で一番多いのが「元本保証がない」(64.4%)だが、これは利点の傾向と合わせて考えると、株や債券への投資スキームというより、貯蓄の代替手段として考える投資家層が増加している結果なのだろう。次に多い不満は、
・手数料が高い・・・38.3%
・運用実績が分かりにくい・・・33.1%
となっている。手数料に関しては、販売時の募集手数料と、運用を委託する為に年間で支払う代行手数料部分があるが、これは証券会社の重要な収益源になっている半面、投資家の負担感が大きい。証券会社には申し訳ないが、販売時の手数料は、ネット販売や運用会社の直販(今回の調査では、販売チャネルとして8.8%に増加)が拡大していけば、必然的に下がるだろう。一方、運用実績の分かりにくさは、単純に運用パフォーマンスを類似インデックスと並べてみても解決しない。オーソドックスな方法なら、過去の運用報告書を分析して、説明をおこなうべきだろうが、更に販売員の説明が長くなって、これは一般的には無理だろう。結局、目論見書に分かり易く記載されることを期待したい。

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再考:ジェイコム誤発注事件
東証の次世代売買システム“arrowhead”は予定通り年明けにスタートする。その高性能で安全性の高い取引システムの開始を前に、東証のシステム対応が大きな争点となったジェイコム誤発注事件に関し、誤発注したみずほ証券が、東証に対し415億の損害賠償を求めた訴訟の判決が、明日4日、東京地裁で言い渡される。事件は、ちょうど4年前の12月8日に発生した。(以下、事件の概略)
【事件の背景】取引の対象となった総合人材サービス会社である新規公開株ジェイコム(証券コード:2462)は、発行済み株式数14,500株で、2005年12月8日に上場。予想初値は90万円程度と見られていた。
【事件当日の経緯】
・新規上場当日は、朝から買い気配となり、90万円前後に寄り付く気配の特買いで推移。
・午前9時27分:みずほ証券が、ジェイコム株に対して、1株61万円で売却とするところ、61万株を1円で売却と誤発注。みずほ証券の担当者が東証端末から入力の際には、注文内容が異常であるとする警告が表示されたが、担当者がこれを無視して注文を執行。
・午前9時28分:大量の売り注文を受けて、初値67.2万円がつく。(みずほ証券の売り注文の内、1822株分が成立。
・午前9時29分:みずほ証券の担当者は誤りに気付き、注文取消しを東証端末から入力するが、受理されず。
・午前9時29分:東証が電話にて、誤発注なら取り消すように指示。
・午前9時30分:株価は、ストップ安の57.2万円に張り付く。
・午前9時33分~35分:みずほ証券は取消しを東証端末に入力するが、撤回処理されず。
・午前9時35分:みずほ証券は、この誤発注の売りに対して、自らの買い注文(61万株)を入れる。
<この間、ネットの掲示板では大量の売り注文が話題になり、誤発注を含めた様々な情報が錯綜し、騒然となる>
・午前9時43分:株価は、ストップ高の77.2万円をつけ、その後乱高下、その後、10時20分にストップ高買い気配のまま当日は引ける。
【当日の誤発注の処理】
みずほ証券は、47万株分は買取って相殺(ストップ安時点での、自らの売りに対し)出来たが、14万株分は他者との取引が成立してしまう。このうち、自ら株を購入出来た分以外の9万6236株は、売り約定だけで、発行済みの6.6倍もの株を手当てが必要となった。
【翌日の処理】
・通常の決済が不可能なことから、日本証券クリアリング機構は、現金による“強制決済”(55年ぶり)による解け合い処理と裁定し、すでに買われた株は、事件発生の直前に寄りつきつつあった価格を参考に一株91.2万円での買戻しとした。
【みずほ証券の損失】
 一連の対応で、みずほ証券が被った損害は、407億円とされる。
以上の事件に対して、明日、判決が言い渡される。
 事件当時は、この売買に絡んで利益を上げた個人投資家が、マスコミの話題にもなったが、証券会社にも事件の余波があり、誤発注に乗じた自己売買で利益を上げた証券会社に対して、与謝野金融担当大臣(当時)の批判が伝えられた。大臣の証券会社批判は、「誤発注を認識しながら買い注文を出すことは法的には問題はない」とした上で「顧客の注文を取り次ぐのではなく、自己売買部門で間隙(かんげき)をぬって売買するのは証券会社として美しい話ではないと思う」という内容だったが、この発言を受けて、利益返還の動きが強まった。
その結果は、50社から209億円に上るものであり、この資金は“証券市場基盤整備基金”となっている。
ちなみに、この基金の目的は、証券会社や取引所等におけるシステム障害や大規模災害に備えたバックアップ・システムの構築などに活用するとされている。
東証の新取引システムは、約300億円をかけたと言われているが、この基金とは関係ない。
 

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インターネット取引に関する調査(証券業協会)から
自分の都合のいいときに、必要な情報を得たり、発注できる。わざわざ店舗に行くこともなく、親切だけれど、少し煩わしく思うFAの方の電話を受けるまでもなく、インターネットでの金融商品取引は、今や当たり前と思っている。しかし、この業界の仕事をしている筆者にとっても、ネット上の取引先画面において、普段使っていない機能を使おうとする時、関連する情報の在り処が分からず、往生することもある。そんな時、イラついている自分に、冷静に対応してくれるコールセンターは、頼もしく感じる。
 同じ金融でも、銀行やコンビニのATMは、税金や公共料金の支払いから宝くじまで購入出来、殆どの人が使いこなすが、証券関連のインターネット取引も、早く銀行のATM並みに利便性が高まることを、期待している。
 この証券関連のインターネット取引に関して、日本証券業協会が9月末時点の調査を実施し、その結果を公表している。気になる部分を、いくつか取り上げてみる。
 証券会社でインターネット取引を行っている会社数は、55社であり、半年間で2社減少しているが、2000年以降は、50~60社で余り変動がない。この間、全体の証券会社数は、284社から314社に1割程度増加している。またインターネット取引を行っていない証券会社の割合は8割程度で変わらないが、その中で、2000年にはインターネット取引を始めることを準備もしくは検討している証券会社数は60社(全体の21.1%)あったものが、この9月末は11社(全体の3.5%)と大きく減少している。最近は、ネット事業の他社への売却や、ネット証券同士の統合のニュースが続いたが、証券会社にとってのインターネット取引は、魅力あるビジネスモデルでなくなったのだろうか。
そんなことはない、と筆者は思いたい。
 一方で、インターネット取引を利用している投資家の概要は以下の様になっている。
・インターネット取引での有残高口座数=1079万口座(直近1年半で、11.9%の伸び)
1円以上の残高がある口座数(口座数そのものは1542万)だか、複数で取引口座をもつ個人投資家がいるとしても、実質1500万人と言われる株主数に比べ、相当の数字になっている。
・インターネット口座の年代構成比は、意外と均等で、30才代~60才台まで、其々2割前後であり、70才代も10%(164万口座)を超えている。
・株式の取引に関しては、現物取引の売買代金ベースでは、50才代・60才代で半数を占めるが、信用取引になると30才代・40才代で半数を超えるという常識的な結果となっている。なお、売買代金全体に占めるインターネット取引の割合は、金融危機前は20%程度だったが、この9月末には3割弱まで再び拡大している。(2005年度下半期は、31%)
・投信のインターネット口座での募集については、半期ベースでピーク時の2年前の5782億円の募集取扱高から大きく減少し、1830億円となっているが、前期比では17%増となっている。投信の募集額が全体で大きく回復している中、この取扱高は少なく感じる。但し、年代構成別に見れば、60才代・70才代で半数を上回り、70才代だけでも全体の2割を超えている。
 これだけインターネット取引口座があるのに、投信の募集扱額が少ない理由は、何だろか。
●投信が、インターネットでは購入しにくい。想定される理由は、投信情報・投信の品揃えが、投資家にとって十分ないということが考えられる。
●投信は、分かりにくい商品で、誰かの説明を聞かなければ、その内容が理解できない。自分が投資したいことにあった投信を探し、比較検討することは、現状では意外に難しい。更に、比較した後、すぐに目指す投信を購入するのが、必ずしも可能ではない。
 この問題の実務的検討は、自らの宿題としたいが、銀行のATMの様に、自らのインターネット口座で、投信を購入したり売却したりするのが、理想である。

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ファイナンス増加に想う
 再び、日本悲観論が台頭しつつある様に想うが、ここ数カ月、海外市場動向に余り関係なく、ジリジリと値を下げてきた日本株市場を見れば致し方ない。市場は本来変化を好むものだか、株安は決して新政権への不安とは思いたくないので、この分析は、マクロ・アナリストやストラテジストに任せる。ただ、誰もが分かることに、供給が需要を上回れば値が下がるということがある。市場の日々の出来高が、1.5兆円程度(11/30東証一部売買金額)なのに、月間で1.88兆円の新規の株式供給(11月公表分の時価発行増資の調達予定額の合計:実際の調達額は、これより少ない)をすれば、市場で売買される金額の6%以上が吸収される。であれば、現在の日経平均は9,345円×1.06=9905円相当と思い直したくなるような市場環境だ。
 ただし、調達する側も、この様な低い株価水準で、発行済み株数の3割以上発行するのだから、相当の覚悟での資本調達と考えたい。ここは勝負処と考え、大量の資本調達を行うのであれば、むしろ日本企業が再度成長を目指す契機として、市場は歓迎すべきだ。
昨年までの10年間の時価発行増資は、年平均で8037億円を市場から調達している。今年は、この数字の7倍近くになりそうなので、日本企業は平時の7倍もやる気を出し、市場から調達したリスクマネーを戦略投資に充てる。そう信じれば、株式市場の先行き見通しも明るくなり、日本悲観論も霧散する。
 その為に必要なことは、情報開示であり、事業戦略と資金使途をきちんとディスクローズすることは、資本市場の基本ルールだ。これがもし、市場から調達したリスクマネーを借入金返済に充てるというなら、何でこの高格付けの企業が、低金利で資金調達できるのに、資本コストの高い資本調達(時価発行増資)を行うか、株主は理解に苦しむ。さらに、調達した資金は当面運転資金として、国債などの債券で運用するというと、市場は殆ど反発したくなる。
企業には、それぞれの事情があるだろうが、リスクマネーの調達が資本市場利用の原則であることを忘れないで欲しい。勿論、これらのことは時価発行増資の決議前に、引受幹事証券が審査を行う。調達する資金の使い道は、資本コストに見合っているか。また、調達した資金が利益をちゃんと生むか。これらの審査は、時価発行増資後の株価が、上昇する可能性が高いことを検証する為に行い、引受主幹事証券は企業に“エクイティ・シナリオがあるか”と問う。
 一方、引受主幹事証券は企業からファイナンス手法に関して相談を受ける(若しくは提案する)が、本当に時価発行増資での調達でなければならないか、引受審査で検証しているのだろうか。ここ10年来で、本年に次いで企業のエクイティ・ファイナンスが多かった年は2006年だが、時価発行増資総額1兆6371億円に対して、内外でのCB発行総額は2兆6192億円で、合わせて4兆2463億円のエクイティ・ファイナンスを消化している。ちなみに、本年のCB発行額は、予定分まで含めて4000億円余りで、金融危機の昨年発行額1兆3153億円にも及ばない。現在の大量の時価発行増資は、少しCB発行に変更してもらう位の配慮は、引受証券として時価発行増資を欲する企業へ提案して欲しい。
 現在の大型時価発行増資は、殆ど内外同時募集で、その主幹事は実質的に一つの大手証券に集中しかけている。これは、投資銀行としての引受競争の結果なのだろうが、流通市場に配慮してこそ発行市場の雄とし相応しいし、ダイリューションを緩和するようなエクイティ・ファイナンスの工夫を率先して行うことを期待したい。
 また、他の引受主幹事証券も含めて、特に銀行のファイナンスに関しては、劣後強制転換CB、株主割当増資、BISにコア自己資本として認めさせ得る優先株の設計等、発行市場の知恵を使うべき時だと信じている。

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