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2010/02
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ライツ・イッシュについて再び考える
 既存株主に配慮された増資方法として期待されるライツ・イッシュだが、企業側や増資を取り扱う証券会社側の議論がまだ十分に練れていないようだ。既存株主には有利な方法かもしれないが、時間がかかる・手間がかかる・ファイナンスの収益性(証券会社にとって)が落ちるといったところが、ライツ・イッシュに対するネガティブな反応の背景にある。そこで、ライツ・イッシュの問題点と言われるところを、その仕組みと共に考えてみたい。
 まずライツ・イッシュの基本的な仕組みは、以下の様な手順になる。(例は、筆者が仮定したもの。具体的増資案件ではない。)
① 株主に、新株予約権を無償で割り当てる決議を行う。
【例】2月26日に発行決議。新株予約権の内容は、時価200円の株価に対して、150円の増資払込み。1000株に対して300株分の割当。この権利が有効な行使期間は、割当後2週間。
② 25日以上で、新株予約権の割り当ての基準日を決定。
【例】3月29日時点の株主に割当。同日、株主へは割当て通知、目論見書交付。
③ 基準日から2週間以上たって、新株予約権を株主が受け取る。
【例】4月13日に、株主はそれぞれの証券会社にある口座で新株予約権を受け取る。
④ 株主が、新株予約権を受け取った翌日から2週間は、株主が増資に応じる権利がある。又、この新株予約権を東証に上場し、売買することも可能になっている。
【例】4月14日から4月28日までが権利行使の期間。この間は、150円で増資の払い込みに応じることが出来る。又、この新株予約権は、4月14日に東証に上場され、4月27日まで東証で売買可能。
⑤ 企業にとって増資の総額は、新株予約権の権利行使期日に確定することになる。
【例】4月28日に増資金額は確定。10%は払込みが実施されず、失権。

ライツ・イッシュで問題となるのは次の点になる。
●期間が長くかかる。
(【例】においても、最短で2ヵ月以上かかる。しかし、この期間が長くかかるので発行企業のコストやリスクが増えるという議論は間違いだと考える。一般的な公募増資において、発行決議から払込みまで3週間程度だろうが、公募増資の場合、発行決議前の2ヵ月程度は引受証券の引受審査に対応する実務的な作業があり、結果として3ヵ月近くかかっている。)
●手間がかかる。
(直ぐに払いこんでもらう公募増資に比べ、一旦新株予約権を割当て、その権利行使の勧誘も行わなければならない。但し、本当に手間のかかるのは、株主名簿管理人としての信託銀行と、払込み窓口となる証券会社である。信託銀行も証券会社も、相応の報酬を発行企業から頂ければ良い。)
●証券会社としての収益性がない。
(この議論は少し怪しい。つまり、通常の公募増資であっても、引受証券会社以外は、増資額の数%の手数料を受け取ることはない。むしろ、ライツ・イッシュの方が公募増資より多くの証券会社が、この作業に関係するので、収益化の機会は増加する可能性もある。)

確かにライツ・イッシュの仕組みは、公募増資より複雑になり、その分証券会社を含め関係者の作業も増加する。また、既存の株主増資割当との多少異なる新しい作業も発生する。しかし、株主の支払うコストを考えれば、この新しい増資スキームのライツ・イッシュを、業界上げて取組む必要があると考える。

その為に、以下の様な工夫が必要なのだろう。
○期間の短縮
(発行決議から基準日までの現行25日以上を短縮する要望(14日へ)は出されている。又、新株予約権を割り当てる株主に交付する目論見書の電子交付は推進すべき。)
○証券会社での収益化
(市場仲介者として、証券会社は手間がかかることを惜しんではならない。しかし、窓口となる営業部店へのライツ・イッシュを取り扱うことの収益化への取組みはあっても良い。例えば、株主に割り当てられた新株予約権の権利行使で増資を取り扱うと、対価として数%の払込手数料を発行会社からいただく。)
○ライツ(新株予約権)の権利行使促進(つまり増資)の為の工夫
(新株予約権の権利行使を促進する仕組みはあっても良い。行使価格を引き下げることも考えられるが、失権する新株予約権を、会社が買取り、その対価に新しい新株予約権を株主に渡す。ただし、行使価格は当初の新株予約権より高く、時価を20%程度上回っているが、行使期間は1年間ある、といった様な仕組みは如何か)
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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

大量保有報告書から見えるもの-その2
 このテーマの2回目になるが、大量保有報告制度の基本的な仕組みを復習しておきたい。
○株式等保有割合を5%超保有した場合、報告義務が発生する。
○報告書提出後、1%以上の増減、重要な記載事項について変更がある場合、変更報告書の提出義務。
○約定から5営業日以内に、報告書は提出。
これだけだが、実務的には以下のポイントを押さえる必要がある。

・議決権行使の5%超を行う保有者を公表させることが目的だが、議決権行使の可能性まで押さえようとすると普通株式だけではなく種類株・新株予約権等も合算して把握する必要がある。また契約により、株式を保有していなくとも議決権を行使できる若しくはその可能性がある場合も、その契約を公表しておくことが求められる(5%超の保有)。
・一人であってもグループであっても、同一の目的で議決権を行使されれば、その効果は他の株主にとって同じことである。よって、以下の仕組みで、報告を求められる保有者が捕捉(保有比率が合算)される。
≪実質共同保有者≫議決権その他の権利の行使について合意している者、書面だけでなく口頭での合意も
含む。[株主間契約、株券等の共有、民法上の組合保有、みなし共同保有に該当しない親族・グループ会社等の保有など]
≪みなし共同保有者≫共同保有の蓋然性が高いと見做されるもの。[夫婦、支配・被支配の関係にある企業、組合と業務決定機関の支配者など]
※なお、単独で0.1%以下を保有する者は、みなし共同保有者から除外される。
・その1で取り上げた村上ファンド等で問題になったファンド特例(3ヵ月に一度の報告)は、2006年12月の証取法改正で、2週間に1度に変更されている。
・重要な記載事項としては、保有目的・重要提案行為・貸借契約や担保契約などの重要な契約・取得資金などがあるが、これ等が変更した場合も、変更報告書の提出が必要になる。

 以上を踏まえて、再び金融庁のQ&A案から問題の背景を取り上げてみたい。

【第三者割当における一定期間譲渡しない旨の合意】
報告書に記載する必要があるとされている。経営救済型の割当増資なら一定期間売却しないのは当然と思うが、ファンド等の短期投資と明確に判別するには、記載を義務付けけることは有効かもしれない。

【投資銀行業務に係るもの】
ファンドや機関投資家相手に大量の株式の売買を行う投資銀行業務関係では、
レバレッジ取引や貸株サービス・決済保管サービスなど行うプライム・ブローカレッジ業務で、顧客から預かっている株式に関する報告義務の設問に対し、何らかの契約により、その株式の処分する権限が投資銀行側にある場合は、報告義務があるとしている。また、エクイティ・デリバティブ取引に関して、デリバティブ取引とダイレクト・マーケット・アクセス取引(投資家が取引所へ直接発注:主にアルゴリズム取引)を組み合わせた事例が示されていて、デリバティブ取引におけるロングポジションの保有者は、ショートポジションの保有者がヘッジで実際に取得する株券の実質的保有者として見做され、保有者としての報告義務があるとされている。

【組合での保有】
業務執行組合員等以外の組合員は、自己の持分に相当する部分を、株券等保有割合に算入する必要はないとされている。

【共同保有者の問題】
口頭での合意であっても、当然共同保有者とされる。また、株主提案を共同して行うという明確な行動でなくとも、株主総会での議決権行使について話しあった場合においても、合意した時点で共同保有者に該当すると回答されている。

 大量保有報告書は、単に保有者の持分の移動を表すだけではなく、その時の資本市場に起きている取引手法やファイナンスの影響も、示すものになってきている。

テーマ : 証券・金融関連業務
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大量保有報告書から見えるもの-その1
 誰が公開企業の支配権に影響する程、株式を大量(5%超)に保有しているかという情報は、投資家・株主にとって、その投資判断に影響を与える重要な情報なのだろう。その保有の目的が、純投資であっても、M&Aに関係するものでも、敵対的買収に伴うものであっても、投資家は、その大量保有の目的を適時・的確に読みとろうとするし、今後の展開を推測しようとする。その為、大量保有報告書の記載内容は、投資家の注目度の高い情報になっている。証券会社は、この情報を解説付きで顧客に提供しようとするし、ネット上でも、金融庁のEDINETで適時公表されているにも関わらず、多くの速報や集計をするサイトが目立つ。

そう言えば、大量保有報告に絡んで、過去に事件と呼ばれるようなことがあった様に思う。
・テラメント事件(2008.1)=僅か資本金1000円の会社が、トヨタやソニーなど日本の主要企業5社の51%の株式(20兆円相当)を取得したとして、大量報告書が提出された事件。虚偽報告の目的は不明。
・西武鉄道株主偽装事件(2004.10)=大株主であるコクドが保有する西武鉄道の株を1000人以上の個人名義にしていたことが明るみに。コクドは上場廃止(株主上位保有80%以上で東証上場廃止、コクドグループ保有だけで、実質88%だった)を避ける手段として、40年以上にわたり、株主数を偽装した(有価証券報告書の虚偽記載)。
・村上ファンドによる株式大量取得問題=ニッポン放送株の取得(2003)同株の売却(2004)、TBS株の取得と売却(2005)、阪神電鉄株の取得(2005)などで、ファンド特例(通常は売買約定の5営業日以内の報告が義務付けられているが、ファンドの場合、特例措置で3ヶ月に1度の報告でよかった)を利用した売買が問題視された。
などなど。

 この大量報告書制度に対して、制度の目的に沿った、実質的な対応や判断がされるべきと筆者も思うが、金融庁は、想定される事例への指針としてQ&A案を公表している。(報告制度に抵触するかどうかという判断は、個々の事案によるが、一般論として提示されている。)
このQ&A案は、金融庁に寄せられた数多くの実務的な問い合わせが設問のベースになっていると思われるが、その設問から株式の保有若しくは大量の売買に係る現状の問題が浮かび上がる。

【意図しない保有比率の変更とその後の売買】
5%超保有した時に報告書を提出し、その後1%以上の保有比率が変動した時か、5%以下になった時に変更を届け出るのが基本だが、保有者が売買しなくても保有比率が変化する以下の場合がある。
・公募でも第3者割当増資であっても、保有者以外に新株が大量の割当てられる場合(所謂大量のエクイティファイナンスのケース)
・相当数を自己株式として取得・保有していたものを企業が消却した場合
・相互保有規定で、他の大株主の議決権がなくなった場合
・企業再編によるもの
この問いは、よくあるものだが、保有者が能動的に動かずに保有比率が変更した場合、直ぐには報告義務は発生せず、その後自ら1%以上売買した場合(売買回数に関係なく通算される)は報告義務を負うとされるのが一般論だ。
又、保有比率には新株予約権も含まれるが、新株予約権の行使期間が終了したような場合、その変動部分が1%以上になれば、変更報告の対象となる。新株予約権及び新株予約権付社債の潜在株比率が高い会社は、その行使期限前後で大きく株主保有比率が変化する可能性もある。
※以下、その2は次号へ

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銀行系証券というビジネスモデル
 この言葉は、多分日本独自のものかも知れない。銀行と証券を分けた米国型金融モデルも、子会社方式での参入で、国債・社債(1993年)、投信の窓販・持株会社方式での証券会社保有(1998年)、株式取次(1999年)の解禁が認められてきた。そして、銀行とその系列の証券会社でのファイアーウォール規制も、昨年6月に緩和され、法人情報に関しては垣根が低くなり、また親銀行の役社員が子証券の役社員を兼務出来るようになった。営業現場での兼務も可能となり、銀行員が子会社の証券会社の名刺を顧客企業に出しながら、運用やファイナンスの相談に乗る事も出来る。但し、資金の貸し手という優位な立場にたった銀行の勧誘行為に対して、顧客企業が不利とならないような顧客情報の管理と“利益相反体制”の確立(内容を公表)が銀行側には求められる。この銀行・証券の兼務については、みずほファイナンシャルグループが、一部で取り組み始めていて、みずほコーポレート銀行とみずほ証券の兼職制度、みずほ銀行とみずほインベスターズ証券の兼職者による上場支援などがあるようだ。

 しかし、なんといっても銀行系証券として注目されるのは、昨年10月から三井住友ファイナンシャルグループ入りした日興コーディアルの今後の展開ではないだろうか。
メガ・バンクが主張する銀・証連携によるメリットが、早いペースで試されていくケースになると予想されるが、先行する銀行系証券のる銀・証連携によるメリットは以下の様になっている。(日本証券経済研究所、二上氏“最近の証券業界動向”より2010.2)
・共同店舗:みずほ銀行とみずほインベスターズ証券=149店舗、三菱UFJ銀行と三菱UFJ証券=39店舗、三井住友銀行とSMBCフレンド証券=6店舗
以下の数字は、2009年3月末実績
・預かり資産への影響:三菱UFJ証券12.3%、みずほインベスターズ証券=40%
・口座増加への影響:三菱UFJ証券14.4%、みずほインベスターズ証券=23%
・収益への影響:みずほインベスターズ証券=38%
この様に、銀行系証券にとって銀行との連携強化は、リテール顧客層の拡大とそれに伴う金融商品販売の増加といった面で、影響は大きそうだ。実際、日興と三井住友の共同販売による投信や社債の大量販売は、早々に効果を上げている様に見える。
 一方、機関投資家や企業を相手にするホールセール部門における銀行系証券のメリットは何だろうか。
機関投資家相手のビジネスは、市場仲介能力がコアになるので、銀行系証券としてのメリットは余りないだろうか、企業に対しては、
○融資関係から、上場を目指す企業へ助言業務での優位さ
○上場企業のファイナンス主幹事業務において、メーンバンクとして親銀行の影響力が利用出来る場合もある
○M&Aなどにおいて、必要資金に対するローン提供などの利用で、親銀行と共同で助言業務を進めることが出来る
○企業の余資運用での金融商品提供の機会が、銀行を通して増加する可能性がある
 などが上げられる。
但し一方では、銀行系証券として、企業側の条件が不利になるのを避ける為の利益相反対応も、求められる。現在の日興は、営業収入の半分以上を投信関連収益に頼るリテール証券モデルの利益構造だが、この企業相手のホールセール部門の強化・拡大を急いでいる。銀行系証券として、今後の変化が注目される。

 日本の銀行による証券業務の取組みは、米国での銀行・証券の業務規制の緩和・撤廃の動きと並行して行われてきたが、その米国では銀行系証券への融資規制など、銀行の投資関連業務への規制強化の動きが強まっている。その中で、日本の銀行系証券は、ホールセール分野において、どの様な優位性を示すビジネスモデルを構築していくのだろうか。

テーマ : 証券・金融関連業務
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待たれる上場イベント:第一生命
 日本の資本市場にとっては、久々に明るい話題となりそうな第一生命の上場日(予定4月1日)が、いよいよ迫ってきた。その日、NTTの株主数101万人(昨年9月末)を抜いて、150万人の株主が誕生する。相互会社である生命保険会社の株式会社化は、大同生命(2002年)・太陽生命(2003年)・三井生命(2004年)に次いで4社目となるが、我が国第二位の規模の第一生命は、上場後の時価総額でも1.5兆円以上になると予想されていて、巨大な上場金融機関が、新たに誕生することにもなる。

相互会社である生命保険会社の株式会社化とは、どの様な仕組みなのか、第一生命に例をもって考えてみたい。

 そもそも、相互会社とは何なの。ウイキペディアによると
“相互会社は、相互保険を営むための社団法人であることから、相互会社と呼ばれる。相互保険とは、保険加入希望者が出資し合って団体を構成し、その団体が保険者となって構成員のために行う保険をいう。加入者相互が保険する、相互扶助の精神を基本とする。相互会社は、相互保険の保険者として保険業を営む便宜上、法人格を付与される。相互会社は、保険業を営む法人にのみ認められる法人の形態である。”
とある。この相互会社形式の保険会社は、1995年の保険業法の改正により株式会社への組織変更が認められるようになった。相互会社が株式会社になる時、何が大きく変わるかというと、
・相互保険の契約者は、社員(構成員・出資者)→株主
・社員(構成員・出資者)の社員総会が意思決定機関だが、社員から選出された総代の総代会が実務的に代替している。→株主総会が意思決定機関
・契約者の保険料などで蓄積された会社の内部留保等の純資産は、一人ひとりの契約者の寄与の割合が計算される=寄与分→株式
※第一生命の場合、2009年3月末を基準として、この寄与分の株式への転換が4月1日に行われ、東証1部に上場される。
○交付される株式総数=1000万株
○株式交付の対象=有配当の保険契約者738万人(全契約者数821万人)
○1株以上の割当=306万人で、株式を受け取るか、株式の売却を第一生命に委託して現金を受け取るか選択出来る。現金受取の選択は156万人となっていて、残りの150万人が上場時に株主となり、指定した証券会社口座で株式を受け取る。
○1株未満の割当=432万人(182万株分)は、上場時に伴う売出しで投資家に売却され、現金を受け取る。
過去の大型IPOのNTTやドコモのケースと異なり、いきなり150万人が誕生する。当然、今まで株式投資経験のない方々も、数十万人規模(一説には50万人)いることが予想され、この新しい投資家層の出現に、業界としての期待も高まる。
 第一生命株式の売り出し価格は、3月下旬に公表される予定だが、生命保険会社の企業価値を示す指標のエンベディッド・バリュー(Embedded Value:「潜在価値」=総資産と保険契約から、配当可能利益の現在価値を計算したもの)は、基準となる2009年3月末で1.56兆円あり、1株の売出価格は15~16万程度になるのではと予想されているようだ。
 久々にIPO絡みの明るい話である。

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靴ひもと電話
冬季オリンピックもたけなわで、バンクーバーから伝えられる日本選手達の映像は、勝っても負けても大きな感動を与えてくれる。男子フィギュアスケートでも、3人の演技は其々に良かったが、靴ひもが切れて演技が中断した選手もいた。不運とか悲劇という報道も目立つが、アスリートならリングに出る前から試合は始まっているのは当然だし、このことは本人が一番自覚しているだろう。

 一方、KDDIによるJCOM(ジュピターテレコム)出資問題で、当初KDDIが実質的に37.8%保有する出資スキーム(資産管理会社を通じて出資する分は、34.1%)が、3分の1以上を保有する場合は少人数(10名以内)であってもTOB(公開買付け)を実施しなければならないTOB規制に抵触するとして、31.1%の保有に減じた。このことは、金融庁とKDDIの話し合いで決定された。
 KDDIが、一旦出資を公表した後、金融庁の調査によって、出資比率を引き下げたことで、法規制に記載がない資産管理会社スキームでの保有まで規制するのかといった、批判が一部にあるようだが、今回の件は、金融庁の対応を全面的に支持したい。
確かに、TOB規制には、今回の出資スキームの様に、株式を保有する資産管理会社を買収する場合の記載はないが、間接的に保有する場合でも、実質的に議決権をKDDI側が行使出来る場合は、株主総会で3分の1以上の議決権を行使する拒否権を、KDDIが握ることが出来る。TOB規制の目的に照らすなら、当然、今回の出資スキームも、TOBを実施すべきだったというのが、資本市場としての結論ではないだろうか。

元々JCOMは、1995年に住友商事とリバティー社(今回、KDDIに株式を譲渡する)が合弁事業として設立し、2005年にジャスダックに上場している。今回のKDDIの出資は、合弁契約解消に伴うリバティー社持分の取得になる。出資スキームが、複数の資産管理会社を通じて行なわれるのは、この合弁事業進展の過程で、出資比率や事業戦略上の問題があってのことだ。KDDIの取得に関して、出資スキームの創意・工夫があったようには、公表文の範囲では分からないが、せめてTOB規制に関する事前確認を、証券会社・弁護士を通じて行うべきであった。
今回の出資案件では、JCOMが上場会社である以上、当然ファイナンシャル・アドバイザーとして投資銀行業務を行う証券会社が付いていると思われるが、もしそうであれば、資本市場のプロとしては甚だ甘い判断だと言わざるお得ない。

市場のルールは、形式要件さえ守っていれは、後は自由に振舞える時代では最早ない。証券取引法から、金融商品取引法に替った時、証券会社等の行為規制に関しては、あれ程ナーバスに対応した証券会社だが、どうもTOB規制など投資銀行業務に関するルールの判断では、時々エラーが出るように思う。
今回の件も、大きく言うとM&Aに関する助言なのだろうが、いまやM&Aアドバイザーは、証券会社でなくとも誰でも出来る。しかし、M&Aの対象が上場会社の場合、資本市場に向き合った助言行為が必要になり、法律事務所や会計事務所では判断が難しい事象も発生する。
 証券会社は、上場会社が関係するM&Aの場合に、他のアドバイザーに比べてこの様なアドバンテージがあるのだから、その助言内容も資本市場ルールの目的に沿ったものでなければならない。また、企業に対して、資本市場利用の利便性を図るとともに、ルールの目的を認識させる必要もプロとしてある。

その様なプロフェッショナルを育成してこそ、投資銀行としての強みが発揮されると、日本の証券会社にも期待したい。

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少額投資というビジネスモデルについて
 おそらく、証券業界が最も不得意な分野かも知れない。しかし、どうして話題に取り上げたかというと、この業界において、新しい潮流の一つになる可能性があると考えるからだ。テーマは当然、“貯蓄から投資へ”だ。世間一般からは、昔ほどではないが証券会社は敷居が高いと思われていて、実際、証券会社の対応を見てみると、少額の投資家は、コールセンターやネット取引に誘導するようになっている。銀行も、店頭での対応はATMへ誘導する様になっているのだから、金融ビジネスのあり方としては当然の様に思えるが、様々な機能を有するようになった銀行のATMと異なり、証券での少額投資に関しては、今までは制約が多く、ハッキリいって現状の証券業界は、少額投資に上手く対応するようになっていない。

 少額投資の現状を考えてみると、少額投資には少額継続投資(所謂“るいとう”など)と少額レバレッジ投資の2つがある。

 少額継続投資で、最も影響力があるのは340万人(うち10万人は個人型)が参加する確定拠出年金制度=日本版401Kだが、口座数は大手証券に匹敵する。(野村475万口座、大和334万口座、昨年12月末時点)この340万口座の年金資産を、200余りの運用管理機関が、金融商品を提供し、制度に参加する個人の指示に従って個々の運用を管理する。しかし、現状では国の年金制度の方向性の問題があることを差し引いても、この制度のインフラとしての運用管理機関の作り込み方に、問題が多い。インフラシステムとしての不備もあるが、最大の問題は、運用対象とする投資商品=投信の品揃えが少なすぎる。運用管理機関によって、投資商品数の差は相当あるが、参加する個人が運用管理会社を選択することは、330万人分の企業型では困難だし、仮に出来たとしても一ヶ月以上の移行期間がかかる。(この間運用は停止される)

少額継続投資の2つ目は、平成24年1月からスタート予定の日本版ISA(少額の上場株式等投資のための非課税措置)だが、以下の要領で試験的に始まる。
・上場株式等の配当、譲渡益に対して、年間100万円までの投資に対して10年間非課税措置
・3年間連続して総合計投資額300万円まで
・口座開設は、居住者で20歳以上
・途中売却は可能
各証券会社での、新たな口座管理の為に、システム対応が求められるが、日本版401Kの運用管理機関の様な投資家にとって投資商品の選択がし難い対応にならないよう期待したい。

3つ目は、少額を毎月再投資していく累積投資があるが、対象が株式だと証券会社だけだが、投信だと銀行などの金融機関も扱える。最近は、投信の継続投資最小単位を1万円から1000円に引き下げる動きもあり、投信のペーパレス化の恩恵も出始めている。また、政策面では、個人の継続した証券投資を促す為に、銀行(登録金融機関)の証券累積投資口座において、一ヶ月以内・10万円までの貸越を認める内閣府令の改正が行われている。これにより、銀行と証券投資の累積投資契約を行っていれば、もし口座に残高がなくとも、毎月決めた金額の投資は継続して実行されることになる。
少額継続投資に関するポイントは、提供される投資商品、つまり少額の投資に向いている投信の品揃えだろうが、投信の運用会社も増加していることもあって、投信供給サイドの競争が進む過程で、品揃えが十分に充たされていくと期待できる。

 次に少額レバレッジ投資についてだが、今はそんな言葉があるのかというところから始まるかもしれない。
手段はCFD取引だが、投資対象は株・債券・指数・商品など様々、ただし投資資金のレバレッジが数倍~数十倍かけられれば、少額であっても、通常は大きな元手が必要な債券取引や商品投資も可能となる。今年から始まる個人へのCFD取引規制の中で、ロスカット・ルールが徹底されるが、そうなると少額でもリスクを限定して投資が出来る手段として活用される可能性がある。現状のCFD取引においては、注文時にロスカット・オーダーも同時に入れる取引が、殆どというのが実態でもある。

 少額継続投資にしろ、少額レバレッジ取引にしろ、今まで証券界が不得手としてきた分野だが、それぞれ新しい投資家層を発掘していくためには、取り組んでいかなければならない分野である。しかし、その為には、少額投資に見合った投資商品の供給体制と、新しいシステム投資=設備投資が、初戦のキーとなると思う。

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投信の目論見書改正の目的とは
 投資信託の目論見書制度が、この4月から変わる。具体的に何か変わるかと言えば、現在40~60ページの交付目論見書が原則10ページ以内になって、記載内容も比較検討しやすいようになる。加えて、投資信託の有価証券届出書内容を記載した請求目論見書の方は、電子交付を促進する為に、メールや申込書以外に電話で申し込むことも可能になる。なんだ、それだけ手続きの話かと思われるかもしれないが、ひょっとしたら投資信託の売り方が変わるかもしれないと期待したい部分もある。
 そもそも現在の交付と請求に目論見書を分けたのは平成16年の改正によるが、目的はゆうに100ページを超える目論見書を、投資家にとって利用しやすくする為だった。これにより、以前より随分と記載内容は一般の投資家が理解しやすくなった。しかし、どう考えても一般の投資家が、積極的に交付目論見書利用しているようには思えない。

 目論見書とは何か。金融商品取引法によると、投資信託などの募集する運用会社は、募集の際して、まず目論見書を作成しなければならない。投資信託を販売する証券や銀行は、その投資信託を販売する際には、目論見書をあらかじめまたは同時に投資家に交付する義務がある。なんの為に交付するかというと、投資家が投資判断をする為であるが、投信の募集勧誘を受けている時に100ページ超の物を読んで、更に投資判断するというのは、プロでも難しい。それが40ページでも、スムーズに投資判断する投資家は限られる。では、目論見書は実際にどう使われているかというと、販売用資料などで一通り説明を投資家が受け、実質的に投資信託の購入が決まってから、若しくは契約締結前書面と一緒に渡されているケースが多いとの指摘がある。
 つまり、目論見書は投資家の投資判断の為の資料ではなく、販売会社の行為規制目的で投資家に交付されている実態が浮かび上がる。何も日本だけの話ではなかったが、近年米英とも目論見書利用に関しては、本来の目的である投資判断=特に投信は数が多いので比較検討できるように、そのルールが改正されている。

 今回の投信目論見書改正において、交付目論見書が10ページ以内に収まるよう新しい記載様式も開示の内閣府令では示されており、投信を比較検討し易いように具体的記載文案も、投信協会で準備されているという。

 今回の投信目論見書改正に対する、投資家側の評価は、金融庁における内閣府令改正に伴う意見交換会において、フォスターフォーラム(良質な金融商品を育てる会)より、以下の意見が示されている。(概略)
[今回の投信目論見書改正を評価出来る点]
・交付目論見書の新しい様式(25号様式・25号の2様式)が示されたことで、投資経験の浅い投資家にも読みやすくなると期待できる。
・表示方法が統一されることで、今まで難しかったファンド比較が容易になり、投資家の適切な商品選択が促進される。
・投信会社(外国投信においては管理会社)等の情報と運用実績の記載が義務付けられたことで、投信の事業者を、投資家が判断しやすくなった。
[更なる改正を期待する点]
・請求目論見書での一層の情報の充実
・投資家にとって分かり易い記載の具体的記載内容、特に投信会社や運用者情報に関するものも含めて
・運用報告書の見直しについても、投資家目線にたった改正が必要
としている。

 投資信託は、この業界における成長産業であり、ファンド数も増えれば、投信を組成する運用会社も、登録制になったこともあって増加している。販売の理想は、投資家が数多くの投資信託の中から選択し、同様のものと比較検討した上で、投資判断を行うことだ。
今回の投信目論見書改正により、一般の投資家に比較検討できるように分かり易く、かつ販売会社の行為規制対応と分離して、交付目論見書が投資家に、事前に配布される。先ずは投資家にとっては一歩前進というところだろうが、本当に投資家が比較検討する為には、交付目論見書が容易に入手できる仕組みも、また必要なのではないだろうか。

テーマ : 証券・金融関連業務
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TOBルールの考え方、金融庁Q&Aより
 TOB(公開買付け)ルールは、資本市場における手続きなので、市況環境やその時の企業のあり方によって、時代とともにその対応が変わっていくべきものなのだろう。その意味で、最近注目されているJCOM(ジュピターテレコム)株の大株主間の株式移動に係る動きは、TOBルールの目的を改めて考えさせてくれる教材になっている。
2月15日、住友商事は、以下の内容のJCOM株式に対するTOBを公表した。
・公開買付株数:下限は、459,147株。上限は875,834株。(応募多数の場合は、比例案分の方法による)
・買付け価格:139,500円(2月12日株価92,900円の50.16%のプレミアム。但し、1月25日に公表されたKDDIによる同社株式の大量取得時に株価と同じ)
[算定根拠は、ゴールドマン・サックスの財務分析による。
市場株価平均法:84,039円~91,141円
類似会社比較法:83,418円~131,742円
DCF法:113,995円~189,950円
類似取引比較法:141,030~145,240円]
・公開買付期間:3日3日~4月14日(30営業日)
・買付代金:1221.8億円
【TOBの背景とTOB完了後の変化】
現在、JCOMはリバティー社と住商の合弁会社が57.46%を保有しているが、この保有株は合弁事業契約終了によって、2月18日に両社に配分される。(リバティー社は33.71%分、住商は23.75%分)
先にKDDIが公表したのは、リバティ社分(元来リバティ社の子会社が保有する分も含めて)37.37%分について、リバティー社よりKDDIが譲渡されるということだったが、金融庁よりTOBルールの指摘で、31.1%(2月19日取得予定)に減額すると公表されている。これに対して住商は、現在保有分の3.66%に加え、配分される株及びTOBでの取得で、40%までの保有比率を目指す。

 一方、金融庁より“株式等の公開買付けに関するQ&A”追加案が示されている。内容は、TOBルールの一般的な考え方を示すものだが、今までの11の設問に対して、新しく26の設問が加わっており、年間70件以上ある様々なTOBの実務に応えようとするものだ。

上記の件に関係するとみられる設問は2つあって、
【3分の1超を所有する資産管理会社の株式取得時、TOBルール上の留意】
形式的にはTOBルールに該当しなくとも、その資産管理会社が株式等の買付けの一形態に過ぎないと認められる場合は、TOBルールに抵触すると考えられる。
【組合での株式保有で、解散時に株式が分配される場合】
・自らの選択か若しくは協議により現物株式での分配を選択する場合
・近いうちに組合が解散され、株式で分配されることを知って組合に出資する場合
など、自らの意思で株式を所得すると認められる場合は、TOBルールに抵触すると考えられる。

となっている。また、TOB実行者と関係者の定義を確認するものもあり、特別関係者(買付対象者と株式の持分を加算)については、TOBの買付者への出資が20%超ある個人は、買付者が組合である場合でも、その親族も含めて特別関係者として見做されることも確認されている。
その他、主要な設問としては、TOBの撤回に関する条件に関するもの、TOB買付者と大株主間のTOBに関する契約に関するもの、MBOの際のTOB価格や利益相反に影響のある事情の公表に関するもの、TOB成立により対象会社の取締役が報酬を約束された場合の問題等、あって、TOBの増加に伴い、様々なケースの問い合わせが金融庁に寄せられていることが窺える。
 但し、金融庁がQ&Aの前提で示しているとおり、TOBルールも法制度の趣旨を踏まえて、実質的に解釈・適用されると考えるべきなのだろう。

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コーポレート・ガバナンス強化の為、開示強化へ
10年程前から、会社は誰のものかといった議論を、企業とし始めたように思うが(コーポレート・ガバナンス強化の必要性)、旧商法において自己株取得の解禁や新株予約権・種類株制度の整備などで、企業の資本政策の相当部分が取締役会で決定することが可能となってきたし、持株会社化を含めて多様な経営形態を企業が選択することも出来るようになった。つまり、重要なファイナンスやM&Aは、取締役会で実質的に決定されるが、その取締役会の運営が、株主や将来株主の投資家にとって分かり易くなっているかということも、コーポレート・ガバナンス強化の一側面としてあった。その間、不祥事・虚偽記載・不公正ファイナンス・防衛策・MBOなど公開企業として行為の目的を問う動きも強まった。
 しかし、一部では公開会社法の検討が噂されるものの、コーポレート・ガバナンス強化で議論された独立性の高い社外取締役の導入を義務付ける法規制の改正までには至っていない。現状の社外取締役は、親会社や主要取引先など企業と関係が深くても会社法の“社外”規定では許されるので、その“社外”取締役の、企業からの独立性をどう強めるかが問題になっていた。もっとも、その現行の社外取締役さえ置かない公開企業は全体の56%あるが、監査役会において半数は“社外”監査役なのだから、外部チェックは十分とする企業側の言い分もあった。妥協の産物といっては東証に申し訳ないが、上場規則改正で、“独立”役員の1名以上の設置が新年度から求められる。この独立役員は、取締役でも監査役でもよく、現行で社外取締役がいない過半数の会社も、社外監査役の“社外”の独立性を高めれば、対応できるようになっている。対応できない場合は、その理由を取引所開示において明確に示せばよいという構成になってもいる。
 一方、ディスクロージャー制度から、このコーポレート・ガバナンス強化を目ざす開示府令の改正案も、2月12日金融庁より公表され、以下の内容の開示が、今3月期末ベースの有価証券報告書等開示書類で求められる予定である。

【コーポレート・ガバナンスの体制について】
・コーポレート・ガバナンス体制の概要・当該体制を採用する理由(現状、公開会社の2.3%=社外取締役が半数以上必要な委員会設置会社、その他は監査役会設置会社だが社外取締役がいる企業はその内の44%)
・財務及び会計に関する相当程度の知見を有する監査役又は監査委員の有無(監査役機能を充実させる目的なのだろう)
・社外取締役・社外監査役と内部統制部門との連携(監査機能をサポートする社内体制の整備へ)
・社外取締役・社外監査役の設置状況・設置していない場合の理由 等

【役員報酬】(取締役責任限定規定(定款)との関係で、何らかの開示をする場合がある)
・1億円相当以上の役員報酬(金銭・ストックオプション・賞与・退職慰労金等)の報酬等の種類別の個別開示
(現状、役員報酬の個別開示を行っている公開企業もあるが、ごく少数)
・役員の役職ごとの報酬等の種類別の額
・報酬等の額又はその算定方法に係る決定方針の内容及び決定方法 等

【株式保有の状況】(政策投資と言われる、企業間の株式持ち合いがし難くなる方向へ)
・純投資以外で保有する目的の株式で、貸借対照表計上額の上位30銘柄に該当する場合若しくは、資本金の1%以上について、銘柄、株式数、保有目的、貸借対照表計上額

【議決権行使結果について】
・臨時報告書の記載内容として、株主総会における各議案ごとの議決権行使結果(得票数等)を追加する。得票数を集計しないような事前行使分や大株主による当日行使分で過半数となった場合、その理由の記載。

ディスクロージャーは、株主・投資家にとって情報が多い方が良いとされているが、その情報も使用する目的が明確でなければ、開示する側の負担やリスクを考えた時、本当に必要なのかと考えてしまう。役員報酬開示の必要性もまた一つの議論になると思う事項である。

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問題第三者割当への業界の対応
 公募増資であっても第三者割当であっても、企業が資本を調達するファイナンス機能は、資本市場にとって最も重要な機能である。しかし、最近はMBOや買収防衛策とともに、第三者割当も、企業の問題ある行動が散見され、コーポレート・ガバナンス強化の対象となる企業行動として取り上げられることが多い。
勿論、第三者割当方式によるファイナンスが、良くないというのではない。企業再生や業務提携などの資本調達目的で、株式や新株予約権付社債などの公募方式が取れない企業にとっては、重要なファイナンス手法であることにかわりはない。問題のある第三者割当とは、主に以下のことを指す。

① 有利発行の問題
 著しく市場価格よりも有利な新株の割当ては、既存株主の利益を損なう可能性があるので、有利発行として株主総会決議によらなければならない。その有利発行に当たらなければ、通常のファイナンス同様に取締役決議で済む。問題は、この有利発行に当たらない発行価格水準(株価)はいくらかということだ。
結論は、ファイナンス決議を行う取締役が、有利発行でない合理的算定根拠を示す必要がある。
日本証券業協会のワーキング・チームの調べによると、発行価格水準が公表直前日の株価を10%超下回ったのは、
平成19年:第三者割当増資151件中、71件
平成20年:第三者割当増資121件中、26件
平成20年:第三者割当増資150件中、52件
となっている。
10%以内のディスカウントなら、特定の第三者に割当ても良いということではなく、発行企業は、その株価が有利発行でない合理的根拠を、示す必要がある。(既存株主には、発行差し止め請求権がある。)
この事は、昨年東証上場規則や金融商品取引法の開示府令でも手当てされた。

② 割当者の裁定取引行為、短期売買
 大量の第三者割当は、本来の目的は、事業再生や本格的業務・資本提携によるものなので、割当てられた先が短期売買するはずはないが、短期の資金繰りの代替に使われた場合、割当先のファンド等が大幅にディスカウントされた新株を使って、市場で売却するなどの裁定取引を行う事がある。株主に示されたファイナンス目的とは異なる結果になる。しかし、取引所規則や法規制で、一旦割当られた新株の売買を規制することは出来ない。

③ 第三者割当の実行に係る疑義、及びインサイダー取引や相場操縦など不公正取引行為
 このケースが目立つのは、増資対象企業の業績悪化が続いて、株価が低迷しているような場合の第三者割当だ。業績悪化の企業の、第三者割当が問題と言う訳ではなく、この様な企業を利用して、不公正取引を行う犯罪行為もあるということだが、資金繰りに窮している企業が狙われやすい。企業が第三者割当で再生することもあるし、またファイナンスに至らずに市場から退場していくケースもある。それらを選別するのも、また市場の機能だが、これらの企業を不公正取引の犯罪行為から遮断する取組みも、市場機能としては、また必要だろう。


 第三者割当の場合は、証券会社にとって引受行為は発生しないので、自ら当事者となるアーバン事件のBNPパリバの様な稀なケースや、M&Aに関係しなければ、あまり関与しない。しかし、問題第三者割当が日本の資本市場機能を損なっているとするなら、取引所規則や法規制に頼るのではなく、市場仲介者として行うべきことがあるように思う。とりあえず以下の3点を上げてみた。

○第三者割当の割当先から、ある一定期間は、当該銘柄の売却注文を受けない。受ける場合は、売却理由の公表を求める。(海外業者へも取次がない。)
○少額のファイナンスに対しても、対応する部門を作り、機関投資家等への取次、ファンド組成など、中小ファイナンス対応を一定規模以上の証券会社に義務付ける。(引受判断は自らの方針に沿うべきだが、引受審査件数を義務付ける。)
○上場会社の主幹事機能を明確にし、有料を前提に第三者割当のファイナンシャル・アドバイザー機能を主幹事若しくは幹事証券に義務付ける。

 自由な資本市場の方が、参加者には好ましいだろうが、行き届かない資本市場機能の修正の為には、これぐらい、市場仲介者として証券会社が果たす市場修復機能が、必要なのだろう。

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再び、業界のインサイダー取引について
 有利な情報は誰しも欲する。時には、その情報がビジネスの起点ともなるので、仕事をする人にとって有利な情報の入手には労力を尽くす。しかし、それがインサイダー情報で、かつ自らの有価証券売買(株だけではなく、最近は債券やデリバティブも含めて)を実行しようとすると、インサイダー取引という犯罪になる。
こんなことは、業界のプロと言われる人々なら十分承知しているはずだと思われるが、インサイダー情報に最も近い分、インサイダー取引のリスクは最も大きい。業界のインサイダー取引の問題は、拙稿2月8日分でも取り上げたが、証券会社としての問題を、少し捕捉してみたい。

 本日10日の日経記事に、BNPバリバに対する東証などの取引所・日本証券業協会の過怠金1.8億円の記事が掲載されていたが、日本証券業協会が不当利得の還元を求めたことを受けて、1月18日には、BNPパリバは、12億円を「証券市場基盤整備基金」などへの寄付を前提に「社会還元措置」に投じると発表した。この原因は、アーバンコーポレイションの増資引き受け問題など一連のインサイダー取引及び相場操縦行為に対するものだ。特にアーバン事件は、BNPパリバが自らインサーダー情報を作り、その情報を操作し、その情報に基づくインサイダー取引を行ったと判断されても否定しがたい。(事件の詳細は、拙稿“再考:アーバンコーポレイション事件 (10月14日)”をご参照ください)事件の内容は、資本市場関係者としておおよそ信じられない行為だが、第三者割当のファイナンス・それに絡んだデリバティブ(契約形式)・そして情報操作とインサイダー取引と大仕掛けで、とても個人の犯罪行為とは思えないのが業界での感想だろう。欧州の名門投資銀行であるBNPパリバの組織的関与がないことを信じたいが、そのことは日本の資本市場における自らの行動で示していくことかも知れない。

 一方、証券会社等を監視する立場の証券取引等監視委員会(SESC)は、以下の3つを最近の重点課題として上げている。
【不公正ファイナンス】
証券会社が引受業務等を通じて関与するケースは多くはないが、アレンジャーとして業界関係者が関与するケースが少なくなく、ファイナンスに係るインサイダー取引や相場操縦行為で、特定の証券会社が利用されることもあるという。ちなみに、SESCから課徴金納付勧告や告発を受けたインサイダー事件の件数は、平成19年事務年度(7月から翌年6月まで)23件、平成20年事務年度25件、そして直近の平成21年7月から12月までは、半年間で24件と倍のペースになっている。
【業務の多様化に伴う証券検査の実効性の向上】
投資銀行や一部の証券会社の業務は、従来のブローキング業務から自己資本を使い収益を求める業務に変化しているので、信用リスク・市場リスク・流動性リスク等財務の健全性に関するリスクが高くなってきている。一方、私募ファンドなどの集団投資スキームの業者の一部に、詐欺に近いような行為も見られる。
【新たな商品、取引、市場等に関する強化】
CDSなどの店頭デリバティブ取引、DMA(Direct Market Access=ファンドなどの機関投資家が、証券会社のシステムを通じて、直接取引所システムに発注できる)やアルゴリズム取引などの取引手法、ダーク・プール(証券会社単独若しくは複数で行う顧客注文の付け合わせシステム等)等新たな市場におけるインサイダー取引などの不正取引の監視。その為のITシステムの高度化対応。
 
 証券会社内においても、M&Aやファイナンスに係るインサイダー情報は、法人関連情報として管理されているが、適時に情報の入力と管理がされているか、情報入手後の情報にタッチした者の記録はされているか、利益相反行為のチェックは適時実行されているかなど、今後益々投資銀行としてのインサイダー情報管理(法人顧客の未公開情報)をシステム的に強化して行うことが求められている。コストが掛かるとしても、それが日本の投資銀行の質を高めていくことに繋がると信じたい。

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金融教育≒投資教育の目的について、業界目線で考える
個人(家計)の立場で金融教育というものを考えた時、大きく取り纏めてみると、それはお金を使う事とお金を貯めることの知恵と知識を、金融リテラシーとして身につけていくことになる。特に、お金を貯めることは、一般的には貯蓄することであるが、低成長期の日本に於いては、“お金を貯める事=貯蓄+投資”でなければ、お金を貯めるという目標は達成しにくくなっており、証券を始めとする金融業界は、投資教育という側面で、金融教育の現場を支えている。
一方、国際的にも金融教育の必要性は高まっていて、OECD(経済協力開発機構)では、各国での調査をもとに、何故必要かとの背景として①老後生活における糧②クレジット・カードの過剰な使用と自己破産の増加③貧困層対策などがあるとしている。(2006年7月“金融教育の重要性”より)
日本における金融教育に関する行政面をみていくと、金融庁の“証券市場の構造改革プログラム”(2001年8月)から、『貯蓄から投資へ』の促進を目的に、金融教育への取組みが本格化し、“金融改革プログラム”(2004年12月)では、更に、家計のライフサイクルに応じた金融経済教育の拡充を求めている。また、金融商品取引法においても、認定協会・公益協会・認定団体は、金融知識の普及と啓発が義務化されている。
この結果、日本における金融教育は子供向けイベントや教員向けセミナーをイベントとして行っている金融広報中央委員会(日銀)を中心に、証券業協会の証券教育広報センターや東京証券取引所の東証アカデミーなどが提供するコンテンツもあり、学校教育向けは、随分充実してきたように思う。

 しかし、日本の個人資産の内容は、余り変わらない。直近の日銀:資金循環統計による家計の金融資産(2009年9月末時点)1499兆円で、現金・預金の占める割合は54.9%と、5年前の53.8%より若干増加しているが、株式や債券・投信の占める割合は、13.5%とむしろ2.5%の減少になっている。この現金・預金比率の高さは、先進国では群を抜いていて米国の14.4%(昨年9月末)に比べると、3.8倍の比率となっている。

 教育は、国家の重要な戦略であろうが、金融教育も英国の様に国家戦略的に行われていくことが望まれる。例えば、英国のチャイルド・トラスト・ファンドの様に、学校教育に於いて習得した金融リテラシーを、18歳になれば必然的に使うようになる仕組みは、教育とその実践が一つの戦略的取組みとなった事例と言える。日本においても、現預金に偏っている個人の金融資産を、個人のライフサイクルに合わせて、“貯蓄から投資へ”移行するような仕組みが求められる。その為には、個人を消費者=生活者としてみなし、人生において纏まった資金が必要となる、大学進学などの高等教育・住宅購入・退職後生活資金などに合わせた長期間の“お金を貯めていく仕組み”が必要となっている。
 金融教育に関して、各種業界関係(“連合”などの労組関係も含む)のNPOを中心に、学校教育への支援や、地域でのイベント、Webを通じた情報発信など、頻繁に行われる様になってきている。しかし、現場の金融教育関係者からは、金融教育が体系立っていないとの指摘をよく聞く。

 教育には、実践が伴ってこそ効果を発揮するのだが、金融教育が体系立つ為には、個人のライフサイクルに合わせた実践の場が必要であり、それに金融サービスの提供で応えていくことも、証券・金融業界は求められている。日本において、その実践の場として現状で期待したいのは、以下のものがある。
・確定拠出年金(日本版401K)の参加資格の拡充=年金制度全般の中で見直されるのだろうが、現在参加が認められていない公務員や主婦の参加により、多くの国民が自らの年金資産の運用と向き合うことになる。
・日本版ISAの拡充=平成24年より開始される非課税投資制度だが、現在の3年連続の投資から、英国並みに10年程度まで長期間になれは、例えは住宅の購入資金の積み立てなどライフサイクルに合わせた非課税投資が可能になる。
・少額の積立投資への金融機関の取組み=最近、ネット証券や一部の金融機関で、投資信託の継続投資の最小単位の金額を引き下げる動きがある。また銀行の証券累積投資口座では、一ヶ月以内・10万円までの貸越を認める内閣府令の改正が昨年行われた。これらは、若年層などを投資に参加させる仕組みとして期待されている。

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業界のインサイダー取引に関して考える
 深刻なテーマではあるが、敢えて取り上げた。何故、深刻なのかというと、インサーダー取引はインサイダー情報が無くならない限り、無くならないからである。逆説的な物言いで、読まれている方々に失礼したかもしれないが、法規制が強化されても、違反や犯罪が確率論的に起きる様に、インサイダー取引も決して皆無にはならない。その前提で、業界や市場に起きる事象を捉えた方が、理解しやすい。またインサイダー取引は、スピード違反や飲酒運転などの交通違反と同じ様に起き易い違反行為と捉えた方が良い。そのインサイダー取引対象者が、例え業界のプロと言われる人々であっても、同様である。
 市場の取引参加者が欲する重要情報としては、業績予想の大幅な変更以外は、M&A関係かファイナンス関係になるが、この重要情報の未公表のものがインサイダー情報となる。M&Aは、TOBに係るケースが多く、当然大幅なプレミアムが付くので買い情報、ファイナンスは大幅な希薄化の場合には売り情報、と見られやすいが、M&Aにしてもファイナンスにしても、実務が専門的になるので、多くのその道のプロが関与していくことになる。最近のインサイダー取引摘発では、このプロと言われる人々の取引事件が明らかになっている。
 M&A案件に係る専門性の高い弁護士・公認会計士、証券会社のM&Aの実行部隊、届出書等の印刷を行う専門の印刷会社社員、法定広告に関与するマスコミ等、資本市場に関係するプロフェッショナル達によるインサイダー取引だが、プライベート・エクイティ・ファンドのパートナーの関与する事件が、今週号(100号)の日経ヴェリタスに取り上げられている。
この事件は、ユニゾン・キャピタルの元パートナーが昨年10月に証券取引等監視委員会(SESC)の強制捜査を受けたものだが、ユニゾン側は、事件の真相の究明を第三者委員会に委ね、12月末にはこの第三者委員会の報告により社内体制の整備など再発防止策を公表している。記事は、この報告書をもとにユニゾン側が自らのファンドに投資する出資者に2月5日説明会を行う際に配布された報告書内容によるものだ。その内容は、元パートナーの2002年から2009年までの株式取引は100銘柄約7500件信用取引を中心に行われ、ユニゾンが投資に関与した約40銘柄については、インサイダー取引の疑義があるというものだ。
 ここでインサイダー取引が何故か明らかになるかというと、証券取引等監視委員会による日常的市場監視活動によるが、ポイントは内部通報を含む情報収集活動と取引所などからの取引審査の2つになる。その最近の状況を見てみると、インサイダー取引関連でSESCに寄せられている情報は、昨年の4月から12月までで315件、SESCが実施した同期間の取引審査は477件ある。これらをもとに、SESCは犯則事件の調査や課徴金調査を行い、証券会社等への勧告や建議、若しくは違反者の告発につながっていく。
 通常、M&Aやファイナンスを行う証券会社の実務部門は、担当銘柄もしくは個別株の売買が禁止されるし、もし個別銘柄に個人的に投資していても3~6ヶ月の保有が義務付けられていて短期売買出来ない。勿論、信用取引や個別株オプション取引については、証券会社の役社員が禁止されている有価証券の投機的売買に該当する可能性があるとして、投資銀行業務を行う証券会社では、全社員が禁止されている。
 筆者は、ここまで個人の投資活動を縛る事が良いとは思わないが、M&Aやファイナンスに関与するプロフェショナルを抱える組織は、案件に対応するプロ達の株式投資状況を、内部管理として把握すべきだと考える。
今回のユニゾンの場合、普通の投資銀行とは異なり、この内部者の株式投資に関する報告システムがなかったが、M&Aやファイナンスに関与する弁護士・会計士・ファンド関係者やその他専門家達も以下のシステムに加入させて、案件への関与と個人の投資活動の隔離を明確にすべきだと思う。

【J-IRISS(ジェイ・アイリス:Japan-Insider Registration & Identification Support System)】
不公正取引等の防止及び市場の透明性・公正性の維持の観点から、日本証券業協会が構築するシステム。登録情報は、証券会社の顧客口座と定期的な照合が実施され、照合の結果、役員の口座であると確認された証券会社の顧客については内部者登録カードが整備され、インサイダー取引の防止等に活用される。
~日本証券業協会HPより
個人のJ-REIT投資
J-REITの平均分配金利回りは、6%を超えているが、株式の1.7%(全銘柄平均配当利回り)や国債の1.3%台に比べると随分と高い利回りに思える。昨年、国内外のハイ・イールド債が個人に売れていたことを思うと、個人のJ-REIT保有が増加していても良いようおもうが、どうもそれ程の増加にはなっていない。
J-REITに占める個人の保有シェアは、10%を少し超えた程度で、海外投資家保有シェアの半分以下となっている。株式や債券などの有価証券投資に対する代替投資手段として、もっと個人のJ-REITが増加しても良いのだろうが、実際は個人のJ-REITは、低水準に留まっている。不動産証券化協会の“個人投資家に対するJ-REIT認知度調査(昨年12月末時点)によると、
・個人投資家の認知度として、J-REITの内容を知る割合は32.7%
・個人投資家の投資状況で、現在保有している割合は7.9%
・個人投資家の投資意向で、新規又は追加で投資を検討する割合は4.5%、投資に興味を持っている割合は11.1%
となっていて、一年前に比べると若干改善しているものの、大きな変化は起きていない。
 J-REITがスタートして10年目になるが、当初2割以上あった個人投資家の保有比率は、2005年後半からの海外投資家の活発な投資資金流入によって価格が上昇、個人投資家の利益確定売りで、保有比率を下げているとされている。この価格上昇があった時期の2006年、個人投資家はJ-REITを3000億円以上と大幅に売り越している。以上はJ-REIT全体の話であるが、個別銘柄毎には相当差があり、時価総額の規模が小さい銘柄や10%超の高分配金銘柄では、個人投資家の保有比率が2割を超えるものの銘柄数は増える。
ただし、年間を通じた売買状況でみると、やはり個人は殆どの年次で売り越している。

 この理由は、なんとなく推測できるが、一つの仮説としては、証券会社にとって、個人投資家のJ-REIT投資は、募集活動中心に行われているからなのだろう。つまり、J-REITは、上場時や増資の時は、個人に対して募集活動の中で販売されていくが、その後は利食いの対象となり、利回りをみて上場後市場から購入するという投資行動には、個人投資家の場合、なかなか大きな流れになり難い。
考えてみれば、当たり前のことかもしれない。証券会社の個人営業においては、株でも債券でも投信でも、募集時においては、募集活動という販売促進イベントのもとに集中して投資勧誘をするが、その後は、個人投資家の顧客自らの注文による売買が中心となる。つまり、J-REITの個人投資家比率を上げようとするなら、個人投資家の認知を上げて、高利回りという情報をひろめて、個人投資家がいつでも売買し易いアクセスポイントを増やさなければならない。例えが適切ではないかもしれないが、郵便局の窓口で、本日のJ-REIT利回りと、現在の価格(東証の)が表示されていて、いつでも普通の個人が売買可能になれば、J-REITは個人投資家の代替投資商品に成長する。

そもそもJ-REIT(Real Estate Investment Trust)とは、日本版不動産投信であり、それが上場されていつでも価格情報を入手して売買しやすいようにしたものだ。投信であれば、証券会社以外でも金融機関や郵便局で取り扱える。取引所への取次ぎは、取引所の直接参加者の証券会社に委託すれは、金融機関や郵便局も個人投資家のJ-REIT売買チャネルとなることが可能になる。現状は、まだまた個人にとっては募集中心のJ-REITだが、取扱いチャネル拡大による流通市場の整備は、J-REITそのものに拡大に大きく貢献する。
このことは、J-REITだけでの問題ではない。

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社債の情報整備について
昨年の社債発行(公募債)が11.4兆円と11年振りの高水準に達したことはお伝えしたが、日本の社債市場は、流通市場機能が整備されていると言い難い、個人や外人の保有比率も欧米に比べかなり低い、低格付け債の発行がなされない、など問題が多く、資本市場の機能としては不十分である。このことの自覚は、長年業界にあり、現在も日本証券業協会において、社債市場活性化の為のワーキングが行われている。
 投資ニーズか、調達ニーズか、鶏と卵の議論もあるようだが、現実に海外ハイイールド債への投資ニーズがあったり、低格付け企業の発行ニーズがあるのに、どうも需要と供給がマッチするしない。やはり、仕組みに問題があるよう思う。

専門的な議論は横に置いておいて、社債に関する情報という面からの問題点を考えてみたいが、社債の情報は、概ね以下の3つに分けられる。
①発行企業に関する情報
②発行者の信用力(クレジット)に関する情報
③価格情報

①の発行企業情報は、金融商品取引法や開示制度や取引所の適時開示があるので、あまり問題はない。

②に関しては、格付情報も含まれるが、本年4月から始まる格付機関規制=信用格付業者制度によって、格付情報の投資家への伝達は、今以上に良くなる。ただし、この信用力に関する情報の中で、機関投資家などは、発行者の借入金の財務上の特約(コベナンツ)が公表されていないことを、問題視する向きもある。この特約は、利益や純資産が一定水準を下回った場合、借入条件が変更される可能性もあり、社債が劣後する状況も起こり得る。ただ、発行者や金融機関は概ね借入金のコベナンツ開示を嫌う。このことが社債投資にどの程度影響するか、議論のあるところだが、発行者は社債IRなどでフォローすることが好ましいのではないだろうか。

③の価格情報の共有問題は、流通市場整備において最も問題になっている。つまり、流通価格情報はあると言えばあるが、実際の売買や新規の投資には役立たないと言われている。証券業協会で提示する“公社債店頭売買参考統計値”のことだが、投資に役立たないと言われる理由は、売買の実勢値と異なっているからだ。
ただし、社債の流通市場が未整備な現状にあって、実際の売買価格が分からなければ、機関投資家などが時価評価をする際の価格情報として使っているということでは、役立っているようだ。実勢と異なっていると思われる価格を、時価評価に使っていいのかという問題はあるが、評価する立場のミドルオフイスの手間とコストを削減する為に有効だった。そもそも、実勢に近い価格情報があれば良いのだが、それぞれの立場で問題あると意識しながらも、機関投資家のコスト削減目的では“公社債店頭売買参考統計値”は利用価値があった。

投資には役立たないが、投資家の評価には役立っていたという一見複雑な話になってしまったが、この“公社債店頭売買参考統計値”には、取り纏める証券業協会も、情報を提供する証券会社も相当の手間とコストが掛かっているようだ。社債に関していうと、報告義務のある証券会社20社中5社以上の報告を平均して公表するが、午後3時現在の気配値を午後4時半まで作業しなければならない。この対象となる社債は、一般社債2163銘柄、個人向け社債55銘柄(昨年12月10日時点)ある。
なんとも矛盾した話だとおもうが、これだけ手間をかけているのに、使えない理由は、やはりこの報告制度の仕組みが悪いと言わざる得ない。

 米国にはTRACE制度、欧州にもICMA制度といった、社債価格情報をリアルで投資家に伝えるシステムがあるが、日本にも必要なのだろう。売買を仲介する証券業者からの、報告制度として定着させる為には法制度による整備が必要かも知れないが、現在、株式等保管振替機構(ほふり)で行われている社債のDVP決済(社債が受渡代金と同時に決済される)を活用すれば、少ない証券会社の負担で、流通価格情報を集約することが出来るのではないだろうか。

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KDDIのJCOM株取得問題から、改めて考えるTOB規制
この業界で、企業のファイナンスやM&Aなどの投資銀行業務に携わるものにとって、KDDI・JCOM株取得問題は、またかといった想いに囚われる。JCOMに資本参加するKDDIの行為が、TOB規制に触れて問題がどうかは、金融庁が判断することだが、TOBに係る問題は、時としてTOB制度の隙をつくように起きる。ファンドが、通常なら5営業日以内に報告しなければならない大量保有報告制度で、三ヵ月に1度の報告で済むファンドの特例制度を利用して、その間に市場外で大量に買い進んだり、企業がTOB規制を免れる為、実質的には相対取引に等しい取引所の立会外取引(ToSTNeT取引)で、発行済株数の三分の一以上を買ったり、その当時のTOB・大量保有報告制度でのルール上では規制に抵触しないが、そもそもの立法の目的に照らすと疑問が残る行為があった。
 勿論、法規制・ルールは、時代や環境の変化に沿って変化するだろうが、そもそもの目的の正しさがいきているなら、その目的を守る為に再整備される。TOB規制については、村上ファンドやライブドアなどの買付け行為を受けて、2005年に以下の様な見直しを行っている。

○市場と市場外取引を組み合わせた取得などの脱法的買付けを規制するため、短期間に三分の一以上所有する場合は、TOBの対象となることを明確化した。
○株主や投資家が、TOBの条件について十分熟考の上判断できるよう、対象会社による意見表明の義務化、TOB買付けに対する対象会社の質問機会の付与、対象会社によるTOB期間延長請求などの措置を定めた。
○敵対的TOBに対して、買収防衛策が発動された場合、TOB買付者が著しく不利にならない様に、TOB買付け条件の変更や撤回などを可能とした。
○株主や投資家間の公平性を確保する観点から、TOB後一定割合以上となるものは、TOBに応募する株主全部の買付けを義務付けた。
○TOB期間中に、TOBを防止する目的で、他の大株主が抜け駆け的買い集めをすることを防ぐ観点から、対抗買いにもTOBを義務付けた。
【詳細の条件などは、金融商品取引法27条の2~13まで、ご参照のこと】

TOB規制の目的を、簡単に言い切ってしまうなら、株主間(将来株主である投資家も含める)の所有割合(支配権)に係る情報格差を可能な限り低減させ、売買するための判断情報の公平さを求めるものだ。つまり、1単元の株主も・5%の大量保有者も・20%超保有するグループ会社も・三分の一以上を保有する大株主も・親会社も、一定割合以上の株の移動に関する情報と売買の機会を平等に持つということになる。

 その視点で考えた場合、今回はどうなるのだろうか。KDDIは、JCOM株式を既に保有している会社の株式を保有することで、結果として37.8%のJCOM株を実質保有(うち34.1%分は、ひ孫会社として、残りは孫会社)することになる。判断は金融庁によるのだろう。
但し、手続に問題なければ、現行のTOB規制上の問題にはならない。しかし、TOB規制の目的に照らした場合、疑問が残るのも事実である。このことで、買付け者や同スキームを法的に検証する弁護士事務所を責めるつもりもないが、この様な大型のM&Aには、必ず投資銀行が関与しているはずなので、TOB規制という資本市場のルール遵守に配慮すべき助言を、アドバイザーとして行うべきだったと考える。
 今回の件で、投資銀行としての助言不足の感が否めない事象は、以下の2つについても言える。

・JCOMの親会社の合弁会社が解消され、KDDIが三分の一以上を保有する筆頭株主になるが、このことにかんするJCOM側のデスクロージャーや意見表明は行われていない。(つまり、JCOMの少数株主にとって、今回の親会社解消・KDDI筆頭株主についての、企業価値を上げるものかどうか、会社側情報がないので判断できない)
・取得価格は、第三者機関の算定によるとされるが、その算定根拠が具体的に示されていない。これは、大型の投資を行うKDDIの株主・JCOM株を保有続ける少数株主双方にとって、情報不足ではないだろうか。

 このことは、単にルールを墨守せよということではなく、資本市場のルールについて、その目的に沿ってアドバイスすべき投資銀行の、プリンシプル・ベースの対応と責任ではないだろうか。

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ディスクロージャーを考える:ファイナンスの場合
 企業からのディスクロージャー(情報開示)は、資本市場にとって最も重要な情報になる。当たり前のことかも知れないが、この情報発信は、株主や投資家に向かってのものでもある。制度としては3つ程あるが、会社法での株主への事業報告・金融商品取引法での投資家への開示制度・そして取引所ルールでの適時開示制度があり、この適時開示制度はタイムリーディスクロージャーと呼ばれ、株主や投資家、そして市場に対して最も多くの情報を提供している。適時開示制度は、大きく分けると子会社の分も含めて、決定事項と発生事項、それに決算や業績・配当予想などに分けられるが、企業の戦略決定に関する事は、決定事項として決定したら速やかに開示しなければならない。M&Aやファインナンスも、当然決定事項としてその対象になるが、適時開示としてタイムリーであるとともに、一般株主や投資家が対象の開示なので、簡潔かつ明瞭に会社側の戦略決定を伝えなければならない。しかし、最近の適時開示資料(所謂記者発表分)をみると、これでは一般株主や投資家には分かり難いであろうと思われる。M&A特にMBOなどは、法律専門家による文案作成とみられ、文章量が多く内容把握まで相当の努力を要する割に、実質的情報量が少ない。法的リスクを考慮しての文案と思われるが、ハッキリ言って、一般的には悪文の典型例のようなものも見受けられていた。一方、ファインアスに関しても、取引所の適時開示ルールの雛型にそって記載されている記者発表文ではあるが、専門用語の使用も多く、また現状では何か意味があるのか分からない部分もあり、これも普通の投資家や株主には、正確な理解が難しいと思われる箇所も目につく。ディスクロージャーは、本来は株主や投資家の為のものなのだから、彼らが理解可能な平易さが求められるが、何も公表する企業側の責任だけでもないように思われるので、敢えて事例を使って考えてみたい。

企業にとっても、ディスクロージャーは難しい問題で、自らの戦略(決定事項・発生事項)を平易に語ることはまだしも、数年、場合によっては数十年に一度しか行わない、M&Aやファインナンスについて、取引所が示す開示の雛型や、弁護士や投資銀行の助言をもとに、専門用語を多用した文案を使わざるえない現状もある。

ある金融機関のファイナンスに関する記者発表文から考えてみると、以下の部分が、実態は何か・目的はどうか・状況はどうかといった目線からは、記載方法に工夫が必要に思われる。

・募集する株数について:冒頭の募集株式の種類及び数は、実は募集する株数の全体ではなく、多くの場合、別途、オーバーアロットメットによる第三者割当で発行される新株も加わる。オーバーアロットメントは、引受幹事に割当られるが、引受幹事は、募集新株と一緒に募集活動を行うのだから、投資家にとっては合算した数字が見やすく示される方が意味もある。そもそも、オーバーアロットメントを説明する記載においても、ほぼ同様の記載内容で、投資家には募集と売出しが同時に行なわれる意味が分かり難い。(募集活動を円滑に行う手段だが、そもそも募集出来ないものを、どうして引受けて売り出すか、理解が難しいかもしれない。)

・資金使途:株主にダイリューションの負荷を負わせるエクイティ・ファイナンスで、株主が最も注目するのは、そのリスクマネーをどう戦略的に使うかということだが、持株会社である上場会社の公募増資が、子会社銀行の払込みに使われるのは当然として、その銀行が何に資金を使って戦略投資を行うことで企業価値を高めていくかということが注目されている。その株主や投資家の期待に沿った、資金使途記載があるべきではないだろうか。

・利益配分:株主への利益配分が、増資前と変更なければ、そう記載すれば良い。昔話で恐縮だが、利益配分ルールといって、エクイティ・ファイナンスをした企業が、株主に対する早期の利益還元(配当等)増加を約束した時代と同様の開示パターンの雛型で、記者発表文にはこの記載する箇所があるが、実質何も変更がなければ、無理な記載を求めなくとも良いのではないだろうか。その方が、会社の資本政策に関する理解を、株主がしやすい。

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東証新売買システム稼働一ヶ月
市場の主役は、取引される商品であり、売買するプレイヤーであることに何の異論もない。しかし、売買システムが革新的に新しくなると言われると、何か期待したくなる。それは、パソコンのソフトが、Windows7に変わったり、iPadが発売される時の想いに、少し似ているかもしれない。東証の新売買システムarrowheadが稼働してから一カ月が経ったが、どうなったのかまだ成果を計るには時期が早いかもしれないが、変化していること、もしくは変化しそうなことを見てみたい。

そもそも新システムarrowheadは、今までのシステムと何が異なるか。
【高速性】今までの東証の注文処理のスピードは、2秒前後かかっていたと言われるが、これを10ミリ秒(0.01秒)以下で対応する。(注文応答時間:5ミリ秒、情報配信スピード:3ミリ秒まで)
【信頼性】注文・約定・注文板などの取引情報を三重化したサーバー上で処理。バックアップセンター構築で災害時でも24時間以内の復旧を可能に。
【拡張性】常にピーク時の2倍のキャパシティを確保し、必要に応じて1週間程度で更なる拡張も可能に。
【透明性】複数気配情報を、今までの上下5本から8本に拡張。新サービスでは、全銘柄の全ての情報をリアルタイムで配信することも可能に。(呼値が細分化されたり、値幅が拡張されたり、売買制度も新システム導入で、約定の可能性がより高まる様に変更されている。)
 最も注目されているのが、ミリ秒単位の注文処理超高速化対応で、欧米の取引所では標準になってきたアルゴリズム取引にも対応可能となり、取引高の増加や流動性の向上にも期待されている。

 この新システム稼働後の変化について、1月28日の東証社長会見で以下の事を公表している。
・一日当たり全銘柄平均TICK回数(値段がついた回数)は、200回相当から400回相当まで概ね倍増している。
・売買代金も増加傾向にあり、堅調に推移している。
・注文件数は増加しているが、約定率はやや低下ぎみ。
また、注目のアルゴリズム取引に関しては、海外のヘッジファンド等からの発注が期待されるが、現在は
日本の証券会社とのシステム上の調整があり、今夏には本格的に始まると予想されている。
 
 一方、新システムのミリ秒単位の超高速化対応と売買制度変更により、取引現場への影響も出始めており、ネット証券等を中心に様々な取組みが始まっている。ポイントは、個人投資家に対して、如何にミリ秒単位の高速化を実感させるかということだが、視覚による速さの実感とは別に、以下の様な取組みがされている。
・注文執行スピードは、今まで2秒前後かかっていたが、新システムに合わせてミリ秒単位の処理スピードに対応していることを示す為に、注文所要時間をミリ秒単位で表示。
・気配表示を、上下5本から8本に拡大するとともに、それ以上の気配情報についても、合算して表示。また連続気配値制度の導入に伴い、表示する気配値に対して、特別・連続・寄前・引後など詳細情報を表示。時価情報については、秒単位で取りこんだものを、投資家へは分単位で表示。
・東証の呼値の細分化に対応して、PTSでの更なる呼値を細分化。
・個人投資家に提供されるシステム売買(自動売買)を、新システム対応にバージョンアップし、新システムとの連動性を高める。    等がある。
 
性能が世界トップクラスの東証新売買システムが稼働した中、売買高に次いで時価総額べースでも、中国の上海・深セン取引所(合計)に、東証が抜かれたことが報じられているが、世界最高峰のシステムを利用する日本取引参加者の努力も、また求められている。 

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