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2010/03
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4月から始まるIFRSの影響-その1
 ディスクロージャーのベースになる企業会計制度が大きく変わろうとしている。日本の会計制度も、IFRS(International Financial Reporting Standards=国債財務報告基準)への共通化(コンバージェンス)や適用(アドプション)に向けた動きが活発になってきており、書店でも特設コーナーが出来る程関心が高まっている。制度変更に向けた詳細な議論は専門家を頼るとして、この動きを資本市場的に考えてみたい。
最近は、個人も新興国などの海外株式に直接投資することが増えてきているが、例えば鉄道インフラ企業に投資したいと考えた時、日本のA社と、海外企業のB社を比較検討するため、先ず財務内容を中心にディスクロージャー情報を見るだろう。
その際、使いやすい道具と比較し易いディスクロージャー情報があれば、投資判断はスムーズに行われる。使いやすい道具の方は、少し先行している様に思うが、公表された財務データを中心としたディスクロージャー情報をインターネットを使って瞬時に読み取るXBRL(eXtensible Business Reporting Language)化が、金融庁や東証の開示資料に対して進められている。一方、ディスクロージャー情報の中核となる財務報告を比較しやすくしようとする動きが、IFRSへの共通化若しくは適用への取組みだ。

 共通化は、自国会計制度を可能な限りIFRSに近づけることで、適用は全面的にIFRSで会計処理を行うということだが、金融庁は2010年3月期から一定基準以上の上場企業の連結決算報告に対してIFRSの任意適用を認めている。この任意適用会社のディスクロージャーは東証の決算短信などのIFRS対応になり、連結決算から経常利益が消え、包括利益(当期包括利益合計額)が表示される。
少し分かり難いかもしれないが、このIFRSも現在一部基準を見直し中であり、2011年6月までこの見直しの為の改修工事が行われている。このIFRSそのものの見直しの背景は、独自の会計制度をもつ米国が、IFRSの自国での強制適用をするかどうか2011年に判断するが、それまで自国制度を可能な範囲でIFRSに共通化する。その前提条件としてIFRSの見直しの動きだ。一方、日本は2012年にIFRSを上場企業に強制適用するかどうかの判断をするが、それまでIFRSへの共通化への取組みは続く。
つまり、日本の上場会社も投資家も、IFRSの影響を免れないことになる。
現IFRSであろうが、新IFRS(2011年見直し完了)であろうが、IFRSの基本的な考え方に変更はない。またIFRSへの共通化が日本でも2011年まで続けられ、日本基準のIFRS化は既に進行している。

 この4月以降、何か変わっていくかを見てみると、
[2010年3月期からの開示変更分](つまり4月末以降の決算発表時に既に変更されている分)
・金融商品の時価開示の充実(持合い株式開示等)
・賃貸等不動産の時価開示(B/Sは従来どおり簿価だが、注記で賃貸ビルや遊休地などの含み損益が明らかになる。)
・金融危機対応として一時的に認められていた債券の保有区分の変更が終了する。(本来の原則所有区分変更不可へ戻る。一部の金融機関で証券化商品が満期保有に変更されていた。)

●IFRS任意適用でのディスクロージャーが始まるが、一部の調査によると上場会社の4%が検討していると言われる。今期何社が対応するか現時点では不明だが、IFRS適用後の開示資料(有価証券報告書)の分量は相当数増加するという欧州の大企業や金融機関の事例もある。何故開示する事が増えるのか。本来IFRSは、原則主義(プリンシプル・ベース)と言われ、日米など詳細な規定を定める会計基準の細則主義(ルール・ベース)と対比されるが、その原則をベースに企業(経営者)が会計処理に関する考え方を示す。その原則がある程度まで細部に渡っていることと、投資家等の理解をすすめる為に、その処理を選択した理由などを注記していくことで開示量が増加すると言われている。
※続きは、その2へ
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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

企業側から見たディスクロージャー制度の問題
 常に上場企業のディスクロージャー制度改革が言われるのは何故だろう。
時々顕わになる上場企業の問題行為を牽制するという目的ではない。粉飾決算が行われようが、内部で何らかの偽装行為があろうが、社長が突然変わろうが、その原因や影響が、株主や投資家にきちんと伝わればディスクロージャー制度は成り立つ。では、常に制度改革が議論されているのは、きちんと伝わっていないという関係者の認識があるのだろうか。

最近、個人も含めて日本の投資家の日本株離れが言われるが、市場取引で一番問題になることは、参加者間の情報の非対称性だ。例えば、ローンの出し手の銀行が大株主になっていたり、企業間で株式を持ち合っていたり、経営者や親会社は半数以上の株式を保有していても良いが、同じ株主(将来株主の投資家も含め)として、投資判断に必要な情報は共有すべきだ。それは、上場会社のディスクロージャーの基本になる。
では、どこまでの情報を共有する必要があるのかとうのがディスクロージャー制度議論になる。
上場会社は平成20年4月以降の事業年度から、四半期報告書と内部統制報告書の提出が金商法の開示制度上で義務付けられているが、企業側は新たな財務・監査対応が求められ、相当のコスト負担になっている。
また、この4月から取引所の適時開示制度において、独立役員(社外取締役&社外監査役)の設置状況といない場合の理由の開示が求められている。

 これらの一連のディスクロージャー強化の動きに対して、企業側から投資家にとって本当に有効に使われているか、そもそもの取引参加者間の情報の非対称性解消に役立っているのかという疑問が強まっている。
日本取締役協会から、ディスクロージャーの改善に関する提言“副題:投資家にとっての有意義な企業情報の充実に向けて”が、3月29日に公表されている。提言内容は以下の概要となっている。(カッコ内は筆者の注記)

①四半期開示の簡素化
企業が作成に係る手間の割には、投資家に利用されていないのではないか。もう少し内容を簡略化してはどうか。(新興企業にとって四半期開示及び内部統制報告書は負担が重いものになっている。新興市場改革においては、これらの開示負担を軽減してはどうかという市場関係者の意見もある。)
②適時開示(決算短信)の簡略化
金商法で義務化されている制度開示との重複を避け、変化する事象に重きをおいて開示し、それ以外は制度開示に委ねるべき。また、無理な業績予想よりも、業績予想に必要な情報をIR活動を通じて提供すべき。(筆者の私見として、この意見は投資家側から見て無理がある。何故なら、企業のIR活動は企業が自主的に行うものなので、取引所開示における企業の業績予想は必要。投資家は別に業績予想の制度を求めているのではなく、業績の先行きに関する企業の考えとその変化を知りたがっている。)
③IR情報の充実
ホームページの活用によるIR情報の充実。長期的な業績目標や市場環境分析などを通して、投資判断に資する情報を提供していく。(情報の充実には異論がないが、IR活動は企業の自主的行為なのでディスクロージャー議論とは分けるべきではないだろうか)
④証券アナリスト機能の充実
短期的な視点のアナリスト分析が多く、現在の証券アナリストの役割に疑問。個人投資家向けアナリスト機能を充実させるべき。
(確かにアナリストカバーの企業数は500社にも満たない。特に個人に提供されるアナリスト情報の分析の質は同業からみても疑問がある。指摘を真摯に受け止めて、業界としての改善を考えるべきだろう。)
⑤証券取引所の情報提供機能の強化
個人投資家を対象として、インターネットを利用した情報提供機能(時系列的な業績情報やアナリスト予想情報等)を充実させるべき。
(情報ベンダーと重なりそうだが、個人向け投資家情報の提供整備はコストが掛かるとしても業界で取り組むべきと考える。)
 

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ライツの初上場に向けて
 もうすぐ4月1日となるが、この日は注目すべき上場イベントが2つある。一つは、第一生命の上場であり、もう一つは初めてライツ・イシューであるタカラレーベン(東証1部:8897)のライツの上場である。
第一生命の上場に関しては、NTTドコモ以来の大型上場となるが、規模より150万人と言われる個人株主が初めからいるという点で、上場後この個人株主を含めて個人投資家がどう動いてくるか注目される。
通常の株式公開は、少数の株主の持分売却と企業の資金調達の為の新株発行の株式の過半数を、個人投資家に中心に販売するが、今回はこの個人株主以上の個人投資家需要を証券会社は集めることが出来るのだろうか。
もう一つの注目は日本初のライツ・イシューに係る株主に割り当てられたライツ(=新株予約権)上場の動向である。

 タカラレーベンのライツ・イシューは、この3月末の株主に対して、1株1新株予約権が割当てられる。株主に割当られた新株予約権は、300円で新株を手にすることが出来る。権利行使期間は5月中となるが、株主はこの割り当てられた新株予約権を、権利行使期間を待たずに売却するもとも可能だ。
対象となる新株予約権は、4月1日より東証に上場され、5月24日まで一般の投資家が売買することが出来る。初めてのライツの上場になる。このライツの価格推移がどうなるか、初の新株予約権上場として、300円(3月29日、権利落ち直後の終値440円)の行使価格に対して投資家がどう投資判断していくか注目されている。
ちなみに、当該株式のライツ付き最終売買は3月26日で、この日の制度信用買い残高分に対する新株予約権は29日に日本証券金融により入札されている。新株予約権の上場を目前に控えているが、この信用取引分の価格は108円47銭となっている。つまり、当該株式に対して300円+108円47銭以上の価値を入札者(証券会社)は現時点で見込んでいる。
 ライツの売買や権利行使はこれから開始されるので、業界からの様々な評価が今後出てくるだろうが、現時点で欧米のライツ・イシューの利便性と比較するのは、関係者には少し酷な様にも思う。ライツ・イシューも、何件が実行されていけは、早期の行使開始や、行使手続きの簡素化、権利未行使分の処理などオペレーションに関する改善がされていくと思われるが、その根拠は、ライツである新株予約権も株式や債券と同様に完全にペーパレス化され、電子データで処理することが可能になっているからだ。

なお、会社側からライツ・イシュー公表後(3月5日)、株主や投資家から寄せられた問い合わせに応える形で、Q&Aの追加が3月16日に公表されている。追加Q&Aの概要は以下のようになっている。
○単元未満(この会社の単元は100株)株式へのライツ=1株に対して1新株予約権が割当てられるので、単元未満株にも割当てられる。但し、上場される新株予約権の単位も単元数に沿って100単位となる為、取引所外で売買することは可能。(現時点で、会社側が買取る仕組みは示されていない。)
○行使価格300円の設定理由=必要な事業資金から1株当たりに割当て場合をベースに検討。会社側が考える1株当たりの株式価値ではないとしている。
○新株予約権の行使手続き=証券会社に口座を持たない特別口座の株主は、新株予約権を売却するか行使するかの場合に、新たに証券会社に口座を作る必要がある。(特別口座の株主は、ライツが同様に割当てられるが、何もしないと行使期限がきて権利が消滅するのを待つだけになる。)
○米国での登録を行わないので、米国株主は新株予約権を売却しなければならない。

以上の様なこともあるが、増資の方法としては株主に最も負担が少ない増資であることに違いない。大量の新株発行による希薄化や、それを嫌った株価の下落、投資家や株主が負担する新株のデスカウントや販売手数料相当のスプレッドなどが回避され、結果としてファインスに伴う株主の不利益を減少させる増資手段となる。この増資手段、ライツ・イシューが日本でも定着するよう期待したい。

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増加するETF
ETFは金融ビジネスとして急拡大している。世界全体では、銘柄数は2000銘柄、ETF投資資産総額が1兆ドルを超えているようだ。
昨年増加したのは、新興国へのセクター別の投資指数や、ハイイールド債投資を含む債券関連、商品投資関連だが、日本においても同様の動きが強まっている。今年、東証に上場されたものを見てみると、
・3月19日、エネルギー、産業用金属、農産物などに連動する14種類の商品ETFが上場
・2月24日、BRICsを含む新興国22カ国の株式市場をカバーした株価指数に連動する新興国株式ETFが上場
となっており、これで86銘柄と急増している。(昨年3月末は58銘柄、一昨年3月末は34銘柄)
また、4月以降ベトナム株指数に連動した海外ETFなども、日本で売り出されるようで、ドイツ銀行グループなどが日本でETFビジネスに本格参入することも伝えられ、東証上場のETF以外でも、海外ETFの取扱いを証券会社が本格化する兆しが出始めている。

 新興国投資、ハイイールド債、商品指数、海外REITなど、この1年投資信託の販売でテーマになったものは大概ETFでの投資が可能になってきている。但し、以前にも触れたが、投資信託は銀行等金融機関の窓販で購入することも出来るが、ETFは証券会社だけの取扱いになる。(※銀行が証券の仲介業を営めば、実質的に取り扱うことも可能)
ETF増加は世界的な傾向だが、確かに新興国の株式や債券に投資したくとも情報の収集と分析には相当の労力を要するので、一般的な個人投資家には難しい。そこでプロの運用者にお任せするのだが、投資信託の販売以上の問題として、アセットなどの運用会社が指定した証券・金融機関でなければ特定の投信を販売出来ない。Aという公募のファンドを購入したくとも、自分の証券口座のある証券・金融機関が、そのAファンドの指定証券会社でなければ、Aファンドの指定証券会社一覧から証券を選択して新たに口座を開設するか、Aファンドと似た様なファンドを探すしかない。結構な手間である。
そこで、Aファンドと同様の投資効果が期待できるETFがあれば、証券会社(リテール向け)ならどこでも購入することが出来る。これは、証券業界全体にとってはメリットである事に違いはない。欧米の取引所の様に、4~600以上のETFが上場されるようになれば、このメリットが現実になる。

その他、投資家にとってのメリットを考えると以下の様なこともある。
○ファンドに比べて、購入・維持費用が安い。(ETFは募集手数料の代わりに、株式と同等の委託手数料分、信託報酬の公募のファンドに比べて低い)
○基本的に信用取引も可能で、空売りやレバレッジ取引も出来る。
○購入・売却値段を自分で指定できる。(一定期間、指値をしておくことも可能)
○現物に投資するETFは、一定の投資規模になれば、現物と交換することも可能。
○取引時間中は、売買値段がリアルタイムで公表されている。

以上のメリットばかりではなく、東証ETF制度への問題点の指摘もされている。
●銘柄によっては出来高が極端に少なく、指数との乖離が目立つものが日本株業種別指数関連では増えている。出来高や残高の減少による上場廃止基準はなく、指数と連動比率が0.9以上なら上場は維持されるのが東証の現制度。流動性を付与するマーケットメーカーの規制やメリットが少ないとの指摘もある。

また、売買を仲介する証券会社にとっては取扱い易い金融商品である半面、既存の投資信託・外国債券・外国株式投資とのすみ分けや戦略も求められている。但し、新興国投資を始めとするグルーバル化、商品投資などの多様化に対応していく方法として、ETFを使いこなすことは、世界の潮流となってもいる。

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配当指数について
 いよいよ期末も近づいて、明26日は3月期末の権利付最終売買日となる。週明けは、所謂配当落ちとなる訳だが、日経によると3月決算の上場会社下期配当予想は約2・8兆円(前期比5%増加予想)で、理論的にはこの分時価総額が下がる。1株当たり数円でも、全体で見ると大きなものだろうし、ポートフォリオ管理している投資家にとっては、この様な配当落ちに伴う資産価値の変動は、自ら管理したいのだろう。良く考えてみると、この2.8兆円が実際に投資家に支払われるには三ヵ月以上の期間が必要だし、その間に取締役会決議や総会決議の手続きを経なければならない。つまり、現時点で予想されている配当も、3月末で決算を締めてみた上で増減される可能性が、まだ2ヵ月弱残っている。そもそも、配当予想を公表していない企業もある。
大量の銘柄の株式を保有する銀行や証券、ファンドの運用者にとって、例えば2%だと想定している配当利回りも、実際1.5%に低下すると運用パフォーマンスに影響する。この2%を確保するために、期末売りの期初買いのエクイティ・スワップ契約や貸株契約を結んで行う配当スワップ取引が5~6年前から行われるようになっていた。最近は日本でも1日数十億円規模の取引が行われているようだが、この様な取引に対して、金融商品としての整備の取組みも、株価指数ベースに各国で始まっている。
・欧州:ユーロSTOXX50株式指数の配当指数は2008年6月から公表。同配当指数先物がユーレックス(ドイツ)に上場されている。
・英国:FTSE100種総合株価指数の配当指数を2009年に公表し、同先物を上場へ。
・米国:S&P500種株価指数の配当指数を2009年に公表し、同先物を上場へ。

そして、日本でも配当指数先物取引が始まる。3月23日に東証より公表された制度の概要は以下の様になっている。
【上場対象】
○日経平均株価指数(日経が算出)
○TOPIX配当指数(東証が算出)
○Core30配当指数(TOPIXCore30構成銘柄対象)(東証が算出)
【指数計算の基本的仕組み】
1年間保有(暦年ベース)した場合に受け取ることの出来る配当金を積み上げて指数化したもの。
指数を構成する各銘柄の実績配当金が確定したつど、株価指数の計算式に当てはめ累積していく。
暦年の最終となる12月期の配当は、3月末までの株主総会で確定するので、前年の指数の確定値=最終値は翌年の4月1日になる。つまり2010年の配当指数は、2011年3月末まで取引されて、翌日確定する。
【取引の仕組み】
・立会時間中はTOPIX先物取引等と同様の方法で、ToSTNeT取引時間も同様に準じて。証拠金・建玉・決済等のルールも同様の予定。
 ・例えば、配当指数先物を150ptsで売っておいて、構成企業の減配により、3月末の最終値130ptsで終了したら、差額を受け取る。
【取引開始】
本年7月26日取引開始を目途としている。

【配当指数変化のイメージ】
 東証での制度公表に先立ち、3月18日、日経は日経平均配当指数(2010)を4月から公表を開始するとしている。ちなみに、この時点での日経平均配当指数(2009)の値は151.15円。
実際の数値の変動イメージについては、理論上は各年の1月から算出され、それを順次積み上げていくが、2月中間決算に対する中間配当が反映される4月頃まではゼロで、配当が確定する毎に指数に累積し、翌年の3月(12月期分)に構成銘柄の全ての配当が確定したところで、最終値が決定するとしている。

 この配当指数も資本市場のイノベーションであるが、欧米に余り遅れていないことに、少しほっとしている。

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地方債市場としての問題点
前回に続き、地方債を取り上げるが、社債以上に流通市場が小さく投資家も限られたものを何故取り上げるかというと、市場として今後大きくなると期待されるからだ。それは、地方財政改善計画などで、地方債全体の発行額は抑えられたとしても、国の財政投融資資金や地域金融機関での証書方式(実質的にローンで流動性がない)分の引受減少分を、市場公募債市場で補っていかなければならない。つまり、地方債は、地方債市場≒市場公募債市場として今後も発行増加が見込めるからだ。

しかし、債券市場として地方債市場が発展して行く為には、主に以下の事が必要だされている。
○投資家の多様化
○流通市場整備
○地方債インフラの整備

 まず投資家の多様化だが、簡単に言い切ると、海外投資家と個人投資家(ファンドなどでの間接保有も含めて)の保有分が少ない。この傾向は、日本の債券市場全般にも言えるが、国債の保有に関しては、海外投資家と個人投資家が其々全体の5~6%保有するのに比べても極端に保有割合が見劣りする。特に海外投資家の保有は超長期債に限られていて、それも1000億円程度となっている。
この為、税制面での整備が行われ、平成20年から地方債も国債と同様に利子及び償還差益に対して非課税化し、発行体毎必要だった非課税手続等の事務処理も本年から簡素化される。また、地方債協会や一部発行体は、地方債の海外IRに取組み始めている。海外投資家からの指摘事項で多いのは、決済制度や流通の仕組み、発行体の英文情報、発行ロットの規模への指摘(少なくとも500億円以上の発行規模を要求)などだが、やはり海外投資家への情報発信が少ないということのようだ。
 一方、個人投資家増加への取組みは、資金使途を病院や地元施設の建設等に限定した住民参加型市場公募債もブームを過ぎた様で、平成18年の123地方公共団体3513億円の発行をピークに、最近は発行体・発行額とも減少している。この住民参加型の地方債は、地域に必要な施設をつくる為、住民に建設費用の一部負担に参加してもらうということで平成13年から始まったが、単なる投資とは異なる住民参加という新しい概念を地方債に取り込んだことでは評価される。しかし、通常の市場公募債の投資家として個人を呼び込む取組みも、地方債の投資家拡大の為には必要だ。

 投資家の多様化を考えた時、資本市場の論理としては、その多様な投資家間で売買取引に必要な情報を共有化する事から始まるべきだが、債券の場合、その情報は大きく分けると発行体の信用力に関する情報(クレジット情報)と価格及び流通量に関する情報(流動性情報)に分けられる。
地方債に関するクレジット情報に関して、“暗黙の政府保証”や公会計問題の議論は専門家に委ねるとして、格付け情報や地方債CDS情報なら、クレジット情報として個人まで活用できる可能性がある。
 地方公共団体の格付取得は、近年増加しているとは言え、市場公募債発行団体47団体のうち24団体に留まっている。R&Iは、公表データをベースに勝手格付け(発行体から依頼されない)のop格付けを行っていたが、2008年末をもって取り下げられ、投資家サイドからは惜しまれる。市場公募債は、個人も取得可能なので、何らかの格付取得を義務付けて欲しい。
一方、地方債CDSも価格情報が一般に流れるようになってきている。債券やローンの保有者がリスクヘッジの目的(地方公共団体の場合、米国以外が破綻することはなく、元利払いに遅延・条件変更リスク回避が主な目的になる。)のCDSの購入が、地方債保有の金融機関にも使われ始めているが、最近は、債券・ローン・CDSをセットで、クレジット市場として捉えるのが一般化しているので、CDSの価格情報も有力な投資判断情報になる。

 社債市場でも問題になっている流通価格情報は、東京都債など一部の銘柄を除いて、個人投資家には取得し難い状況が続いている。日本証券業協会の行う公社債店頭売買参考統計では、地方債では1732銘柄が毎日午後5時半には公表されているが、社債の場合と同様、実際の売買に有効な価格情報とされていない。
但し、決済インフラは他の有価証券と同様にペーパレス化され、証券保管決済機構で保管・決済が集約される。この決済の際に、売買代金も一緒に決済するDVP決済が地方債取引の一部で行われていて、この分は価格情報が証券保管決済機構に集まっている。実際の地方債取引の価格情報となるが、この価格情報の活用は、社債の場合と同様期待されている。

決済インフラをもっと有効に活用し、地方債関連情報を個人も含めて共有する仕組みを構築していくのが、目下の命題だと考える。その為には、発行者として市場評価を素直に受け入れる地方公共団体側の対応も必要になるだろう。

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資本市場からみた地方債概要
 地方債に関する議論をする時、関係者によってその言葉の意味する範疇が異なる場合があるので、資本市場(つまり投資家の立場で)的に少し整理してみたい。

 発行残高200兆円を超える地方債は、買い手によって以下の様に区分される。
①政府資金引受分:財政投融資資金 発行形式は譲渡しないので証書借入方式  平成22年度発行計画分 4.3兆円
②地方公共団体金融機構引受分(平成20年に公営企業金融公庫から組織変更)発行形式は証書借入方式 平成22年度発行計画分 2.2兆円
③銀行等引受債:地方公共団体が地元の地銀・信金等地域金融機関に対して発行 発行形式は証書借入方式と譲渡可能な証券発行方式 平成22年度発行計画分 5.1兆円
④市場公募債:個人も含めて投資家なら誰でも購入できる。 発行形式は証券発行方式 平成22年度発行計画分 4.3兆円

資本市場からみて地方債という場合、③の証券発行方式分と④を指す。つまり、投資家によって売買可能な地方債という市場は、直近の在庫で以下の様な規模になっている。(平成22年2月末、証券保管振替機構)
③銀行等引受債のうち証券発行方式分の残高=5682銘柄 22兆4062億円
④市場公募債=2180銘柄 44兆2302億円
③´地方公社債分(銀行等引受債のうち証券発行方式分の残高)=43銘柄 5402億円
④´地方公社債分(市場公募債)=51銘柄 5536億円
つまり、売買可能な地方債は、約8000銘柄、約68兆円分(地方債全体の3分の1)ある。

この分の投資家別保有は、
・地銀、信金、信組及びの農協系などの地域金融機関で、全体の約4分の1
・郵便貯金や簡保などで、全体の約4分の1
・民間生保や共済保険で、全体の約4分の1
・年金基金(民間・公的)で、全体の約6%
・個人は全体の2%程度だし、海外投資家は0,2%未満
となっている。
③の銀行等引受債のうち証券発行方式部分の半数以上は、元々の割り当てられる地域金融機関から保険会社や年金などの投資家に転売されているようだが、この分に関してブローカーとして証券会社が仲介機能を果たすことはなく、当事者間の直接的取引が主になる。

 結局、資本市場からみて狭義の地方債定義とは、地方債全体の22%の市場公募債になる。この分は、証券会社は発行時に引受幹事として投資家に販売することも出来るし、市場仲介者としてその後の売買に関与する。また、地方債全体は、地方財政の改善や借換債発行のピーク(平成15年度)を超え、発行総額が減少し始めているが、市場公募債は以下の様に増加している。
○平成11年度  28都道府県及び市  2兆0867億円
○平成21年度(1月まで発行) 47都道府県及び市  5兆9190円 
(この他に住民参加型市場公募地方債は、73都道府県及び市 2162億円)
また、この市場公募債は投資家のニーズに合わせて銘柄の多様化が進んでいて、10年債・5年債の定番以外に、15年・20年・30年の超長期債、3年の短期債、7年債、外貨建発行、共同発行債、個人向け債券に該当する住民参加型市場公募地方債など、債券としては一通りの投資家ニーズに応える取組みが為されているように見える。

 しかし、この市場もやはり発行市場での対応に追われていて、流通市場整備は未だ取り組む気配さえない。(現在、証券業協会では社債市場の活性化に向けて、流通市場機能整備へのワーキングが行われている。社債市場と市場公募地方債市場を比較すると、残高で7割強、発行で5割強の規模になる。)
 この問題は、発行者の地方債協会で議論すべきなのか、市場仲介者の証券業協会で議論すべきなのか、社債市場改革の取組みの最中に多少気が速いかもしれないが、可能な範囲で少し考えてみたい。次回に・・・

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金融商品取引業界の概要と、規制強化
拙稿では、時々この業界という言葉を使うが、証券会社を念頭においての物言いだ。しかし、証券取引法が2007年に金融商品取引法に変わったように、日本の資本市場をつかう業者は、証券会社から範囲を広げ、金融商品取引業者として機能している。勿論、証券会社は市場仲介者として引き続きその中心にいるが、金融商品取引業界(金融商品取引法で規制される業界)の概要は以下の様になっている。

 金融商品取引法での規制対象となる業の類型は、以下の4つに分けられる。(業者数は、昨年12月末)
○第一種金融商品取引業
 有価証券やFX取引などの店頭デリバティブを扱う業者だが、PTS(私設取引システム)業務の認可制以外は登録すれば参入出来る。(最低資本金は、5000万円、元引受業務は3億円。他に自己資本規制あり)
・証券会社=304社
・FX専業者=52社
○第二種金融商品取引業
 私募ファンドなどの自己募集や、信託受益権の販売業、投資信託の直接販売、取引所デリバティブを扱う業者だが、ファンドや信託受益権の運用対象は不動産やワイン・映画など多岐にわたる。この業種も登録制だが、最低資本金は1000万円で、個人(個人の場合は、営業保証金1000万円)も行うことができる。
・第二種金融商品取引業者=1299社
○投資運用業
 投信やREITなどの運用業者、私募ファンドなどの運用や投資一任運用が対象となる。この業種も登録制だが、最低資本金は5000万円で、純資産額は最低資本金を上回る必要がある。
・国内投資信託運用会社=87社
・上場REIT=39社
・その他投資法人資産運用会社=17社
・その他の投資運用業者=178社
○投資助言・代理業
 金商法制定以前の投資顧問業者で、最低資本金はないが、500万円の営業保証金が必要。
・投資助言・代理業者=1211社

これらの金融商品取引業者に対して、次の様な規制強化が現在国会に提出されている改正金融商品取引法で予定されている。
●大規模な証券会社(総資産が一定銀額を超える第一種金融商品取引業者)に対して、企業グループの状況に応じたグループ・ベースの規制・監督の枠組みを導入
・連結ベースの事業報告義務を課し、連結自己資本規制を導入
・企業グループとして届出、グループとしての財務状況等の報告を義務付け
・グループ各社に対する報告徴収・検査等の監督規定を整備
※これは、グルーバルな金融機関規制で、大規模な金融機関への監視を強める政策協調の一環。改正金商法の公布後、1年以内に施行。
●金融商品取引業者全般に対する当局による破産手続開始の申立権の整備
今までは当局は、証券会社に関しては、破産手続開始の申立てが可能だったが、これを第二種金融商品取引業者(ファンドの販売者等)や投資運用業者に対しても可能とする。詐欺的な事案で、資金が流出するのを防ぐ目的。
※改正金商法の公布後、同時に施行。

 なお、金商法の制定後、増加している第二種金融商品取引業について、参入基準も緩やかだった事ので1300社(個人を含む)近い業者数になっているが、一部にファンドの自己募集に関して、勧誘などをめぐる訴訟事案や法令違反による行政処分の事例がでている。
 このことから、金商法規制だけではなく、第二種金融商品取引業としての自主規制及び業者と投資家間の紛争処理機関も必要との考え方が広まっている。現在は、日本証券業協会を中心に、第二種金融商品取引業の為の業界団体(協会)設立が検討されていて、
・リテール向け販売・勧誘ルールなどの自主規制の制定
・会員の監査
・会員に対する指導・勧告及び制裁
・利用者からの苦情の解決・あっせん
・会員等に対する研修
などが、新年度後半めどに業務開始を行うこと前提としている。

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コーポレート・ガバナンス開示強化に関する投資家・企業の考え
 本年3月末決算分から、公開企業のコーポレート・ガバナンス充実のために、開示が強化される。この事は既に拙稿“コーポレート・ガバナンス強化の為、開示強化へ (2月15日)”で開示省令改正の内容をお伝えしたが、日本アナリスト協会と全国銀行協会から其々意見書が金融庁に提出されている。前者を投資家代表、後者を企業代表として、それぞれの意見を見ていきたい。
(勿論、開示内容が強化されることは、結果としてはコーポレート・ガバナンスの充実に役立つのだが、開示が強化されれば、その分だけ企業側の負担が増える。問題は、企業側が増加した負担分以上に、投資家側が感じる効果が増しているかだが、最近では四半期開示や内部統制報告のあり方について、投資家側からもその効果を一部疑問視する声がある。)≪カッコ内は、筆者注≫

○コーポレート・ガバナンス体制について
【投資家側】
企業統治体制の概要及び当該体制を採用する理由の具体的記載を義務付けたことで、今後はコーポレート・ガバナンス体制の全体像について記載が増えるので、例えば社外取締役に対する各企業の考え方などが把握し易くなる。
【企業側】
東証の取引所開示と平仄を合わせた記載で良いかとか(負担軽減目的)、開示省令文言の確認など。
≪かなり技術的な確認≫
○役員報酬関係
【投資家側】
役員の役職ごとの報酬等の種類別の額と、その算定方法に係る決定方法や方針の義務付けで、各企業の考え方が把握し易くなる。反面、1億円以上の個別役員名開示は、その効果を疑問視。
【企業側】
個別役員名の開示は義務付けるべきではない。個人情報として、プライバシーの問題もあるので、説得的な制度改正理由を示して欲しい。また“主要行等向けの総合監督指針”改正案でも役員報酬に関する積極的な開示が望まれているが、それとの関係を確認したい。
○株式の保有状況
【投資家側】
以下の開示で、株式の持ち合い状況が明らかになり、投資成果、株価変動による財務リスク、現金への感金可能性など分析に有用な情報が増える。
① 投資目的以外の目的で保有する株式で、イ)又はロ)のいずれかに該当するものの銘柄、株式数、保有目的、貸借対照表計上額
イ)当期又は前期の貸借対照表計上額が資本金の1%を超える場合
ロ)貸借対照表計上額の上位30銘柄に該当する場合
②提出会社が持株会社である場合における主要な連結子会社(提出会社と連結子会社のうち投資株式計上額が最も大きい連結子会社)で一定の要件を満たすものの株式について①と同様の事項
③純投資目的で保有する株式の上場・非上場別の当期・前期の貸借対照表計上額の合計額 等
【企業側】
金融機関の保有銘柄開示は、企業の信用力に与える悪影響も懸念されるため、極めて慎重に判断願いたい。政策保有目的の開示は、その確認の為に企業の同意(開示に対する)が必要な場合もあって、実務的に困難な場合もある。また、改正後の初回の開示について、1%基準は対象外とすべき。(前年度はこの開示を前提に事業活動を行っていない為)
開示対象に、非上場株式も含まれているが、これは企業の信用力への悪影響も懸念されるので、上場株式に限定すべき。≪アナリストが非公開株の保有情報をどう評価するか分からないが、また銀行が株式を保有することで信用力に悪影響がでるメカニズムも良く分からない。≫
○議決権行使結果
【投資家側】
特に意見なし。≪議決権行使結果を現在公表しているのは30社余り。公表することで株主の議決権行使を促進すると考えるのでプラスではないだろうか。一部には、議決権行使助言会社の仕事が増えるだけとの意見もあるが、結果、個人も含めて議決権行使が進むことがガバナンス強化へ繋がると考える。≫
【企業側】
開示は、賛否が拮抗して総会当日にならないと可否が決定しない場合に限定すべき。当日行使分を含めた開示は実務的に困難。≪内部統制上の社内手続きとしているが、数日作業にかかるという理由のようだ≫
また役員選任議案の個別名ごとの開示は、投資家にとって有用かどうかわからないので、開示方法などは会社の判断に委ねるべき。

 資本市場は、有効な情報が必要であり、確かに開示内容は多ければ良いというものではない。コーポレート・ガバナンスの開示の充実も必要だが、有効でない情報の簡素化も行うべきではないだろうか。例えば、4月から投信目論見書は簡素化されるが、開示情報も“事業仕分け”が必要な部分もあるのではないだろうか。なお、企業のディスクロージャー問題は、次にIFRS対応という大きな問題を控えている。

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金庫株の今日的意味
 金庫株とは、主に公開企業の保有する自己株式のことを指す。公開企業は発行している株式に関して、自らが原則市場より買い戻すことが出来るが、これは以下の経緯による。
 本来企業は自らの資本を充実する為に、株式を発行するが、蓄積された剰余金を株主に払い戻すとい目的で、次の様に自己株式取得が緩和されていった。(緩和の目的は、企業間株式持合いの解消の為の受け皿)
1994年:旧商法改正で、自己株取得解禁。但し、株主総会での決議。取得方法は市場からの買付けかTOB。自己株取得後は、原則消却。
2001年:旧商法改正で、金庫株解禁。つまり、消却やストック・オプションへの充当の目的がなくても、自己株式を取得し、そのまま置いておくことが可能になった。この使用目的が定まっていない自社株式保有の状況を金庫株という。
2003年:それまでは、自己株取得は株主総会で取得そのもの若しくは取得枠を承認される必要があったが、定款に取得枠を予め定めておけば、取締役会決議で取得が可能となった。自己株式取得の機動性が向上したということだ。
 この結果、企業によっては発行済株式総数の1割を超える自社株式を保有する企業も相当数あるようになったが、企業が目的もなく自社株式を保有し続ける状況が正しいのだろうか。そしてこの業界は、企業からよく金庫株の使用目的や使用方法に関するアドバイスを求められる。株主総会での質問の定番に、金庫株の使用目的が入っていると思うが、金庫株の使用目的=保有し続ける理由は以下のようなものがある。
(※株主・投資家が一番求めるのは消却することだが)

○役社員へのストック・オプション見合いの保有。ただし、ストック・オプションの効果そのものは、投資家の評価は余り高くなってきているが、役員の退職金見合いの“1円ストックオプション”なら今でも多少評価されるかもしれない。
○M&Aの為の買収通貨として保有しておく。確かにこの目的だと大量の自己株保有の名目もたつが、実際の事業戦略に繋がるようなM&A戦略をディスクロする必要がある。
○新株予約権付社債の行使目的の保有。新株予約権付社債を発行し、その調達資金で自己株式を取得、新株予約権の行使請求があるまで、保有し続けることも可能だ。これだと、新株予約権が5年債なら5年間の保有名目はたつ。
○ESOP(税制適格な従業員持株制度)使用目的。ESOPの制度設計と金庫株保有は直接関係ないし、株主からみれば評価は中立だと思われるが、金庫株の使い途が明確に示されることは好感されそう。
○広くはM&Aに含まれるが、業務提携に係る資本提携において、金庫株を割当てることは可能だし、最近の傾向として増加している。ただ、業務提携目的がない場合、単なる株式の持ち合いになるので、割当て目的は明確にしておく必要がある。
○株主に無償で割り当てる。2006年に会社法が制定されて、株主に対する無償割当ての制度が出来た。企業が自社株価が安すぎると思ったとき、市場より買付け、株価が一定水準に戻ったら株主に無償で割り当てる。ある意味で、この制度の理想のようにも思うが、剰余金が潤沢にあること株価操縦行為に配慮する必要もある。
○取得条項や全部取得条項などがついた種類株の対価とすることも可能だが、かなり特殊な企業の状況になるだろう。
 以上の様な金庫株保有目的に関して、企業と議論していくのも投資銀行の大事な仕事である。但し、昨年から株式が完全ペーパレス化していて、金庫に入る株券はもはや無い。それに、以上の様な使用目的は、あくまでも自己株式の保有目的であって、実際は上記の使用目的の為に新株を発行しても同様の効果がある。(金庫株使用の方は、新株発行の為の登録免許税削減の効果はあるだろう)

ちなみに、公開企業の自己株取得・消却状況は以下のようになっている。(東証調べ)
2009年:≪取得≫398社、8359億円≪消却≫79社、8123億円
2008年:≪取得≫800社、4兆315億円≪消却≫161社、2兆5303億円
2007年:≪取得≫541社、4兆4942億円≪消却≫67社、1兆6709億円

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CFD取引の現状
 問題が起きる前に対処することは、一般論としては正しいと思うが、その対象が新しい金融商品・金融サービスであれば、ある一定規模にならなければ問題の本質は見えてこないのではないだろうか。
 CFD取引規制のことだが、確かに仕組みはFX取引と同様なので、FX取引が急増した時に起きた投資家との問題と同様の事態を想定して規制する、このことは正しいのだろう。FX取引で問題になった取扱業者による投資家の証拠金流用など防止するため、顧客の証拠金は金銭信託で保管することや、投資家の保護を目的として取扱業者に対し、ロスカット・ルールの整備・遵守を義務付ける。又、不招請勧誘禁止など取引業者への行為規制も整備される。(関係する法令は、昨年8月に施行され、既存業者は半年間の経過措置期間後、この2月から適用)

 このCFD市場はどの様になっているのだろうか。
日本証券業協会が、証券CFD取引業者18社からヒアリングした結果、昨年12月末時点では以下の様になっている。
・口座数:42,745口座(←13,139口座、昨年3月末)
・証拠金残高:74.3億円(←20.7億円、昨年3月末)
・取引件数:226,568件(←149,708件、昨年3月末)
・月中取引高:6,305億円(←1,518億円、昨年3月末)
・取扱会社数:18社(←7社、昨年3月末)
※現時点では取扱会社数は、20社(新たに、楽天・マネックス)に増えていて、この他に商品関連の指数を取引対象とする商品CFD取引のみの業者が5社ある。(CFD取引は、株や債券のみならず商品や天候指数など、指数化可能なものが取引され、その内金融商品に関係するものを証券CFD、商品関連を商品CFDと呼んでいる。証券CFD取引は金融商品取引法をベースにデリバティブ取引として規制されるが、商品CFD取引は、商品先物取引法により規制される。)
 実際の為替市場にも大きな影響を及ぼすようになったFX取引の昨年12月末残高182兆円に比べれば、まだまだ創生期の域を出ないCFD取引だが、僅か9ヵ月で3倍以上の取引規模が拡大しているという成長力は金融商品として侮れない。取引の仕組みは、証拠金をベースにレバレッジを掛けて取引するのでFX取引と同様となり、取扱業者の25社のうち23社がFX取引を取り扱っている。(ちなみにFX業者は、60社)

 FX取引においては、新たな取扱業者が金融商品取引業者として参入し、中には大きく成長したものもある。新規参入が容易だった理由は、FX取引において、顧客注文を、海外のカバー業者(海外金融機関等)に取次ぐだけで良いからだ。FX取引業者が自ら市場で売買する必要はなく、カバー業者との取次契約と顧客に取引状況を示すシステムさえあれば、FX業者として成り立つ。CFD取引も同様の仕組みとなる。(なお、カバー業者の収益は、顧客の注文に対するオファー・ビットの差(売り値・買値提示)と、取引が日を超えて継続した場合、取引に必要な資金を顧客に提供したということでのファイナンスコストになる。)
 FX取引の場合、インターネットなどを使えば、今なら殆どリアルタイムで取引値段を知る事が出来るが、CFD取引の場合、顧客が求める投資対象の指数をリアルタイムで知らせることと、同時に売買注文に対応して、取扱業者からカバー先まで注文を取次ぐシステムが必要になる。取り扱うCFDの銘柄が多ければ、当然カバー先も多くなり、CFD取扱業者はシステム運行態勢とカバー先の管理が求められる。
このシステムとカバー先をセットで、CFD取引業者に提供するCFD取引本場英国の大手CFD専業者の動向が注目されている。
 IGグループ・ホールディングスとCMCマーケッツグループだが、自社のシステムをCFD取扱業者に提供し、カバー先との取次ぎも行うようだ。ホワイトラベルの契約を行うことで、CFD取扱業者は自らCFD取引システムやカバー先開拓を行うことなく、CFD取引に算入することが出来る。両社は、既存FX業者や証券会社との提携を進めている。
 果たしてCFD取引は第二のFX取引になるであろうか。その答えは、FX取引での取引特性を、投資家の立場でもう一度見直してみることの中にある。筆者は、取引価格が分かり易く、いつでも入手できることにあると思うが、・・・。
証券業に起きている変化=最近の証券会社検査の状況から見えるもの
 法規制は遵守するのが当然だが、日々変化している市場や進化している業態においては、意図しなくてもルールの目的に照らすと問題があったり、必要な実務が抜けていたりする事がある。問題が大きければ、その業者の存続の危機にも追い込まれることもあるが、業界全体としては、キチンと対応してきたので、最近は株屋などと言われなくなった。そう信じている。
その意味で、証券取引等監視委員会(SESC)におけるここ1年の証券会社への検査で、指摘されている事項をみてみると、その背景には、今のこの業界に起きている変化で、一部の業者が実務的に対応しきれていない事象がある。
先ず変化の方から見ると、

・IT化の進展=インターネット取引が個人の金融商品取引で定着し、主要ネット証券5社で7割のシェアを占めるようになってきたが、この5社のうち証券会社だったのは松井だけで、残りは他業種からの参入組である。最近は、株式に加え投信や債券、そしてFX取引と取扱う金融商品の幅を広げていて、個人投資家に対するネット証券の重要性も増している。一方、大手の機関投資家に対する証券会社のサービスとして、売買注文を専用システムを使って直接取引所に取次ぐDMA(ダイレクト・マーケット・アクセス)が日本でも使われ始めている。本年から超高速化した東証新売買システムで、このDMAが大手投資家のアルゴリズム取引等に活用され、市場全体の流動性が向上することも期待されている。

・投資手法の変化=金融危機を経験したことで、個人投資家のセオリーとされてきた長期投資に見直しもあった。まして日本に関しては右肩上がりの持続的経済成長に対するイメージが湧き難い昨今だ。マスコミでは、大手証券の投信の販売手法の相違が一時話題になったが、新規に買う投信の利益目標を設定して達成したら次のテーマの投信に乗り換えてもらう販売手法が良いのか、長期投資を前提に投信の残高を増やしていくのが良いのか、個人投資家がその事を決められる時代になっている。一方、機関投資家(海外ファンドも含む)は、上記の様にIT化の恩恵を取引手法上も受けているが、一方ではグローバルな金融規制の影響もあって、“空売り規制”は報告体制から強化され、特にネーキッド・ショート・セリングと言われる株式を全く手当てしていない空売り禁止されている。(時限措置だったが、恒久化される可能性が高い)

・顧客情報の管理態勢=M&Aが増加していて、上場企業が関係することも多い。TOBに係る関係者のインサーダー取引の摘発も増えているが、インサイダー取引でなくとも未公開の法人関連情報は厳格に扱うのが当然だ。まして、オプトアウト方式で法人情報は銀行・証券で共有出来るように昨年6月から変わっているのだから、顧客法人の利益相反を避ける為にも、情報管理態勢が求められている。

以上を踏まえて、以下SESCの指摘事項をみて欲しい。
【売買審査体制の不備】
・内部者取引等不公正取引未然防止の観点からの売買審査未実施
・DMA取引に係る不十分な売買審査態勢
【法人関係情報の管理態勢の不備】
・引受審査部が取得した法人関係情報を売買審査部へ報告することを失念
・海外関連会社が関与するM&A案件に係る法人関係情報の登録漏れ
【空売りの明示義務に係る内部管理態勢の不備】
・フェイル(引き渡す株式がなくて決済できないこと)を多発させている空売りの注文顧客について、フェイル発生原因等に係る確認の未実施
【相場操縦行為】
・特定の銘柄の相場を固定させる目的をもって買付けの申込み等を行う行為
【経営管理態勢に係る重大な不備】
・コンプライアンスよりも収益を優先した営業推進を行い、多数の顧客に投信の乗換えに係る重要事項の説明をせず、管理者もこうした状況を黙認
【システム管理が十分でないと認められる状況】
・電子情報処理組織の管理に係る業務改善命令を受けて金融庁に報告した改善策の実施状況が不十分
・大規模なシステム障害が立て続けに発生したことに加え、障害復旧態勢の整備が不十分
【異名義入金に係る顧客管理態勢の不備】
・証券口座名義と銀行口座名義が異なっていても入金が可能で、有価証券の買付けが可能となるなど顧客管理態勢に不備

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不公正ファイナンスの仕組みと証券会社の対応
箱企業というのがあるようだ。この意味は、企業の目的とする本来のビジネスとは別に、単にお金の出入りに為の“箱”の様に使われる上場企業ということだが、主に株式や新株予約権などの第三者割当増資の手法を使って行われる不公正ファイナンスの発行企業のことを指す。証券取引等監視委員会によると、以下の様な事が、箱企業悪用のメカニズムのようだ。

(3月10日東京証券取引所メールマガジン:証券取引等監視委員会「不公正ファイナンスへの対応(その2):箱企業悪用のメカニズム」より)
・箱企業は経営不振から資金調達に困難をきたし株価も下落している。
・しかし、箱企業に目的としては公開市場から調達した資金を社外に流出させることなので、何としても上場維持しようと第三者割当増資等のファイナンスを試みる。
・この様な箱企業は、ファイナンスが公表されれば資金調達の目途がたったとされ、株価が上昇することもある。また、箱企業を実質的に支配している特定の株主やその周辺のグループが株価操縦により意図的に株価を高騰させることもある。
・ネットの掲示板を利用して、買付けを煽るような風説の流布も行われる。
・この様な状況を利用して、第三者割当増資公表前に買付け、公表後に売り抜けるようなインサイダー取引も行われるケースもある。
・第三者割当増資で調達された資金も、公開された資金使途では借入金に返済やM&A資金となっているが、実際は社外への投融資にかたちで流出し、翌期には特別損失で処理される。
・箱企業の監査は、財務内容に悪化からゴーイクング・コンサーン(継続企業の前提)に注記がつくが、監査法人に変更も多く、監査法人の中には箱企業の駆け込み寺のようなところもある。
・この様な過程の中で、箱企業のガバナンスは崩壊し、仕手筋や反社会的勢力とも結びつき、ファイナンスを使ったマネーロンダリングや、関係者の脱税など様々な違法行為を誘発する。

 上場の際、多大な苦労をされて新規株式公開まで辿りつく企業の末路として、何とも切ない想いに囚われるが、市場仲介者の証券会社として、何か出来ることはあるのだろうか。
 証券会社が上記な不公正ファイナンスに関与しないのは当然だが、この4月1日から以下の対応をとるよう自主規制ルールを改正している。
○企業からファイナンスを引き受ける場合で、過去5年以内に第三者割当増資がある場合、当初の割当先の変更がある場合は、その内容を公表するまで引受けを行ってはならない。
○自らがMSCBなどの買受け者となる場合、直前の第三者割当増資において割当先の投資行動が当初の公表と異なっていた場合は、買受けを行ってはならない。
○関係会社での買受けや、斡旋も同様の対応を企業に要請する。

 上場企業と証券会社の関係でいうと、確かに主幹事・幹事証券(ファイナンス時以外でも)として企業から重要な相談を受ける場合が多い。しかし、不公正ファイナンスを行う様な企業は、箱企業化する過程で、証券会社の方から足が遠くなるのも、また現実の様に思う。
 幹事証券として、企業から一番相談事が多いのはディスクロージャーの件に関してだが、このディスクロージャーを通して、企業のコーポレート・ガバナンス強化に役立っていくというのが市場仲介者としての証券会社の機能であり、またそれが限界なのだろう。
やはり、時代や経済環境の変化やビジネスモデルでゴーイクング・コンサーンが難しなった企業は、公開市場という場から退場してもらうのが本来のあり方だと思う。この業界は、市場からの退場システム整備に尽力する必要も、求められている。

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初めてのライツ・イシュー
 今月5日に、日本で初めてのライツ・イシューが行われる。年に数件あるかないかという株主割当増資の一種だが、株主に割り当てられた増資に応じる権利=新株予約権を、初めて東証に上場する。発行者はタカラレーベン(東証1部:8897)だが、内容は以下の様になる。(記者発表文より)
・1株に1株分の新株予約権を、3月31日時点の株主に割当てる。
・新株予約権の払込み価格は、300円(発表直前日4日の終値517円)
・新株予約権の行使期間は、5月6日から5月31日まで
・この新株予約権は、4月1日東証上場を予定していて、権利行使を行わない株主は、東証で売却することが出来る。
・また新たに上記の新株予約権を取得すれば、既存株主でなくとも権利行使をし、新株を取得することが出来る。

 そもそも昨年後半からライツ・イシューが話題になった背景は、大手金融機関や大企業の大量公募増資が相次ぎ、特に11月~12月の大量発行が集中した時期は、大量公募増資は市場の需給関係を悪化させた主因と見做された。また、欧米では大量の増資の際は、株主総会決議を求められるなど制限があるが、日本では発行済株式総数の3割でも4割でも取締役会で発行出来ることの批判も出始めた。
 そこで、既存株主の希薄化を避ける方法として、英国など欧州では一般的な増資形態のライツ・イシュー(株主割当増資)が注目された。日本にも、株主割当増資があったが、株主は増資に応じて払い込まなければ失権するだけだった。ライツ・イシューは、株主が、増資に応じるか、新株予約権として割当てられたもの売却するか、選択することが出来る。今までの株主増資より、株主は経済的メリット(増資で株価が下落するというデメリットに対して)を多く受け取る可能性がある。
なお、ここまでならインボイス(東証1部:9448)が2004年に行った株主に新株予約権を無償で割り当て、不要な株主から買い取る新株予約権買取制度で、同様の効果があった。
 今回、このインボイス事例と異なるのは、新株予約権が東証に上場されて、ある一定期間(とは言っても18営業日)売買することが出来る。株主が売却する事も、新たに新株予約権を取得して増資に応じることも可能だ。この為に、昨年末、東証がライツ・イシュー用に新株予約権の上場制度を変更しているが、今回の様に1対1の割り当てでなくても、1対0.4の割り当てでも上場可能となる。つまり、発行済みの4割の公募増資の代わりに、4割のライツ・イシュー(株主割当増資)を行うことが出来る仕組みだ。
 ライツ・イシューに関しては、時間が掛かるとか、実質的に有利な発行価格での第3者割当になるようなケースへの懸念も聞かれるが、増資による既存株主のダメージは小さくなる。この増資方法が日本でも定着することを、筆者は切に願う。

 また、発行会社のディスクロージャーのスタンスとして、今回の記者発表文において、株主や投資家向けに“Q&A”を公開したことは、非常に良い事だと思う。

なお、業者の性で、以下の事が多少気になった・
・調達資金約47億円に対して、2.7億円の費用計上をしている。
(調達額の5.7%に当たり、初めてとはいえ弁護士費用や株主名簿管理人費用では高すぎるように思う。権利行使費用として、払込みを取り扱う証券や銀行への手数料なのだろうか)
・筆頭株主である代表取締役社長の権利行使予定に関する記載が記者発表文にあるが、624万株の割り当てに対して200万株の行使予定が伝えられている。さらに以下の記載内容もあるが、誤解ないようにそのまま表示すると、“(行使予定がない分について)当該本新株予約権の一部又は同人(社長のこと)の保有する当社普通株式等を売却し、得た資金のうち、税金及び諸費用を除いた全ての資金を充当することにより、その一部又は全部の本新株予約権を行使する予定である”
※この事を判断するのは、株主・投資家の各々の責任においてです。

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金融商品取引法改正を業界目線から考える
 この業界の根拠法になる金融商品取引法改正案が3月9日国会に提出された。この改正案の主要なテーマは、証券会社に対する規制と監督の強化、清算機関の整備に関する2つだ。
 日本版金融ビックバン後、証券業界は手数料自由化やネット取引など多くの変化を経験し、業態転換を迫られて、中には撤退する証券会社もあったが、それまでの許可制から登録制になったこともあって、他業種からの新規参入がこの業界を支えた。証券取引法から金融商品取引法(平成19年)に変わる際には、営業現場での行為規制は厳格になったが、業界への新規参入は登録制が維持され、また従来の証券会社に加え、FX取引などの専業者も含めて第一種金融商品取引業者として金融商品ディストリビューターを増加させる政策が維持されている。この第一種金融商品取引業者は、昨年12月末時点で357社(うちFX取引専業者は52社)あるが、この部分の規制・監督が強化される。

 この背景は、登録業者のいくつかの不祥事はあった事への対処と、金融危機後の金融サミット(G20)において各国で合意した規制強化への対応がある。

●第一種金融商品取引業者及び投資運用業者(投資信託・ファンドの運用者)の50%超の株主に対する届出義務を課し、この株主に対する金融庁の措置命令等を可能とする行政処分の対象とする。
(証券子会社等を悪用する親会社を排除することも可能になる。)
●総資産の額が一定規模以上の大規模な証券会社に対する連結規制・監督制度を導入し、企業グループとしての財務状況の報告を義務付ける。大規模な証券会社は、今まで単体ベースの自己資本規制だったものが、連結ベースもしくは親会社・兄弟会社も含めた金融グループとしての連結ベースでの連結自己資本規制としての対応を求められる。
(金融危機時などに大規模な証券会社の健全性を維持する為、親会社の責任を明確にし、利益相反を防ぐ目的。金融庁による親会社や子会社・兄弟会社への報告徴収・検査も可能になる。)
※以上は、改正法案が国会で成立・公布後に1年以内に施行される。
●ファンドの販売業者(第二種金融商品取引業者)や運用業者(投資運用業者)が、投資家から出資を受けた資金を流用する詐欺的事案への対策として、ファンド財産の流出を避ける目的で、金融庁か破産手続開始の申立てを行うことを可能にする。(現在は、証券会社など第一種金融商品取引業者に対して可能だが、金融商品取引業者全般へ拡大)
※以上は、改正法案が国会で成立・公布後、直ちに施行される。

 一方、清算機関整備の問題は一般には分かり難いかもしれないが、日本の金融・資本市場のインフラ整備とグルーバルな金融危機対応への協調と対応という視点から、非常に重要な問題を内包している。元々相対で取引し、決済のお互いのカウンター・パティー・リスクを計りながら取引しているのを、費用をかけて清算機関をこれから作り、コストを利用者である金融機関に新たに負担させる。しかし、大手金融機関の連鎖破綻を防ぐ為にも、取引清算を集中させ、当局による監視を行わなければならないというのが、金融サミットでの各国の合意で、2012年末までに、大手金融機関の取引するCDS取引に金利スワップも加えた取引の、清算集中・取引情報保存・報告体制整備を行うことを約束している。米国の行ったし、欧州も清算機関設立を推進した。今回の金融商品取引法改正案では、以下の様な仕組みをつくる。

①CDSと金利スワップ取引(店頭デリバティブ取引という)に対して、清算機関整備の為の制度を作る。
-主要株主規制(20%以上の議決権保有を許可制へ)
-最低資本金規制の導入
-国内清算機関及び外国清算機関も免許制へ
-清算機関利用のあり方は3通り:国内清算機関利用(CDS取引を想定、主要指数取引での利用を義務化)、国内清算機関と外国清算機関の連携を利用(金利スワップを想定)、外国清算機関の利用(金利スワップ取引での相当部分で既に利用されている)
②CDSと金利スワップ取引の取引情報蓄積機関の指定制度を創設。
-有価証券と異なり、デリバティブ取引は契約書ベースで、約定後の履行義務も管理していかなければならない。その為、取引情報蓄積機関にこれら取引に係る契約書やその他情報を集約していくことが必要だが、有価証券決済に対するホフリのイメージに近い機能。
③CDSと金利スワップ取引を行う金融商品取引業者は、自ら当局へ取引報告を行うか、取引情報蓄積機関を利用して取引情報を保存し報告するか、選択できる。
※以上は、改正法案が国会で成立・公布後、2年半以内に施行される。
(それまでに、国内清算機関が整備される。)

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投信販売というビジネス
 証券会社の収益で4割近く占めるようになった投資信託の販売。2月も好調の様で、投信情報会社のリッパーによると、国内追加型株式投資信託(ETFを除く)の純流出入額(設定額から解約額と償還額を引いたもの)6201億円の純増となって26ヵ月ぶりの高水準、12ヵ月連続の増加となっている。
 この投信販売において、証券会社にとっての売上げは、販売時の募集手数料と、販売後に顧客の投信を預かることで投信の運用会社からキックバックされる信託報酬の一部(概ね投資家が支払う信託報酬の半分)だ。最近の主要証券会社24社の昨年4月~12月までの決算状況において、この投信販売時の募集手数料に相当する“募集売出手数料”は、概ね倍になっているが、一方、信託報酬を受け取る“その他受入れ手数料”は、1~3割程度の減少になっている。
 つまり、証券会社においては投信販売は増加しているが、投信残高が減少しているのではないかということになって、次の2つの事が推測される。
①証券会社での投信販売において、投信の乗換えが相当数あるのではないか。
②投信はその残高が増加しているので、証券会社とは別の販売チャネル、つまり金融機関で投信の販売及びその残高が増加し続けている。

 投信の乗換えに関しては、過去に証券会社の手数料(募集手数料)稼ぎと批判されることもあったが、最近は投信といえども、投資家に販売した後の収益とリスクの管理を証券会社サイドがキチンと行うべきだと資産管理型の考えも強まって、1年ほど前の相場下落局面では、投信設定時より一定割合価格が上昇したら償還してしまう目標設定型が人気を集めた。また、金融株・海外REIT・新興国インフラ・海外ハイイールドボンドなど一定時期にその時のテーマを決めて販売活動を集中する手法も目立った。
しかし、顧客の意図しない投信乗換えは厳格に制限される必要がある。証券会社にとって、投信販売の王道は、地道に残高を積み上げることであり、安定収益としての信託報酬の一部のキックバックを積み上げていくべきだとの考え方も、この業界には根強くある。
 前者は野村、後者は大和、と其々の投信販売手法の違いをマスコミに取り上げられたこともあった。どちらが正しいか決めるのは、投資家自身の問題になる。

 一方、証券会社において投信の残高が増加していなければ、もう片方の主要な投信販売チャネルである金融機関で投信残高は増加しているはずだが、その9割近くが毎月分配型だと言われている。この金融機関の投信販売に関して、運用会社の日興アセットは “投信窓販白書2010”を2月に公表している。
昨年2月の発行に続くものだが、金融機関向け研修イベントでの250名の販売担当者・マネージャーを対象にアンケート調査を行ったものの分析が中心になる。詳しくは同白書をご覧いただきたいが、業界の人間として、とても興味深い内容もあるので、その一部を紹介しておきたい。

・リーマンショックによる相場下落は大変だったが、良い経験(販売担当者)
・上司が投信販売にあまり協力的でない。(金融機関にとって、サイドビジネス的に店内で見られることが多い)
・単一の通貨やテーマに集中する傾向
・上司に求められるものは、相場観ではなく投資観
・手数料の投資家への説明について、販売手数料は販売会社への相談料、信託報酬は運用会社への顧問料・販売会社のメンテナンス料・受託会社の保管料
・目論見書や資料の顧客への翻訳が、販売者の仕事
・分配金問題に関して、正しく整理しておく必要性

これらは、販売者向け研修内容の結果としても、一般に白書の形で公表していくのは、面白い取り組みである。投信販売の先達である証券会社にとっても、その内容を、自社の販売対応に照らしてみる必要があるのではないだろうか。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

社債価格情報の共有に係る問題について
何故、社債の価格情報の様な一般の方々には余り馴染みのない事を取り上げるかというと、この業界の情報の取扱い方に関する典型的な事例の様に思うからである。それは、実際の取引価格情報が偏在していて、その為、主要な取引者間で取引の殆どが成り立っている。一方、市場全体の拡大が望まれていて、その為に流通市場整備の視点から、取引価格情報の取引者間での共有問題が取り上げられている。しかし、主要な取引者間の本音で言えば、取引価格情報は現在のブローカー業務の収益の源泉と思っているので、情報共有は余り気が進まない。
 前回からの視点で言えば、情報の非対称性に頼る現在の社債市場では、今後の拡大が望めないので、米国(TRASE制度)や欧州(ICMA制度)の様に個人まで含めて取引参加者間で取引情報を共有してはどうかというテーマになる。10億円のオーダーを出す海外投資家も、5億円の機関投資家も、500万円の個人投資家も、同じ取引情報を共有するということだが、このことは店頭取引主体の社債市場において、ブローカーとしては抵抗があるかもしれない。
 ここで少し取引情報に関して整理しておかなければならない。ブローカーの係る取引情報については、注文を発注する顧客の売買需要に関する情報と、実際取引が成立した約定情報があるが、ここで共有しようとする情報は約定情報の方で、この情報で市場の取引実勢価格を取引参加者間で共有しようとするのが欧米の制度だ。ブローカーの重要視する顧客ニーズ情報を共有しようとする訳ではない。

 とはいっても、約定情報の共有の為には、ブローカーが取次いだ約定を、集約する必要があるが、この為に新たな取引約定報告制度を作るのだろうか。手間とコストを掛けて、新報告制度をシステムから作るのも、社債市場拡大の為には必要かも知れないが、そこまでしなくても代替する仕組みは既にある。
 社債も流通するものはペーパレスになって証券保管振替機構(ホフリ)で決済される。その決済時に売買代金の決済を同時に行うDVP決済は、社債の取引の三分の一に達すると言われている。つまり、社債とDVP決済でお金が同時に動けば、取引価格は逆算できるから、ホフリの機能を使えば、この部分は実勢の取引価格を敢えてブローカーの手間をかけずに集約・公表することが今でも可能である。三分の一の取引価格情報でも、無い(今は)よりは有った方が良いと思うのは素人(筆者は債券プローカーではない)考えだろうか。ちなみに個人投資家相手の一定金額以下の取引を除いて、社債の取引照合に証券保管振替機構を活用させれば、取引のカバー率は上がる。

 一方、この問題でいつも混線しがち(関係者には申し訳ないが)になるのは、証券業協会が業者から手間とコストを掛けてヒアリングベースで毎夕集計している“公社債店頭売買参考統計値”“個人向け社債等の店頭気配情報”である。両方合わせて、2200銘柄の社債参考価格情報を集計して毎日公表している。しかし、知りあいの債券ブローカーの殆どが、取引情報としては使えないという。その理由は、取引実勢を反映していないからと言うことだが、では取引に使えない情報が何故存在を続けるのか。その理由は、使われ方が違っているということのようだ。本来は、この集計は売買や発行条件の参考にするのが目的なのだが、実際の使われ方は、ファンドなど機関投資家の評価やリスク管理の為の参考データとしての利用が多いようだ。実勢価格と異なると分かっているデータを、評価やリスク管理に使って良いのかとの疑問もあるが、毎日定時(午後5時半)に公表される数字は機関投資家自ら評価するより便利なようだ。

 現在、日本証券業協会で行われている社債の価格情報インフラの整備についてのワーキングは、この後の方の協会が取りまとめる参考統計値の改善を中心に議論をされているようだ。しかし、社債の取引実勢を知るには、やはり先のホフリの取引価格の公表が望ましい。
 大事なことは、市場の取引情報という基本的な情報を、参加者間で共有する仕組みを作るか作らないかで、評価やリスク管理の為のサービスは、次善の事になる。(この参考情報の様なヒアリングベースの情報は、いっそ情報ベンダーに集計を任せて、機関投資家向け有料サービスとした方が良いのではと思うのは私見)
社債の価格情報はあるけれども、取引実勢と乖離していて使えないといった議論から脱皮するために、業界で取引情報の公表に踏み切る姿勢が、今問われている。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

市場に於ける情報の共有問題について
 この業界は、投資家の投資ニーズ(需要側)と、金融商品を提供する側の調達ニーズ(供給側)を仲介することで成り立っている。供給側の主役である企業に対しては、市場仲介者として、コーポレート・ガバナンス強化を求め、結果、企業の情報開示は年々充実してきている。(企業側からすると負担感が強まっている)

では、市場仲介者として自らのガバナンスに関しては、この業界はどう考えているのだろうか。とある業界での講演会で、講演会のテーマが“金融サービス業のガバナンスを考える”だった時の話。
 講師と聴衆であった業界関係者の質疑応答で、金融サービス業の利益の源泉は情報の非対称性にあるが、市場のゲートキーパーとして、参加者間の情報共有に努める情報仲介機能も重要との講師の主張に対して、
ルールで定めるべきとの意見が出されていた。長年、規制業種(許可制から登録制になってはいるが)だった業界の慣性を差し引いても、元々情報の非対称で利益を上げてきた業界からみると、情報共有に関して潜在的な抵抗感があるようだ。確かに市場において、誰かが買いたい売りたいという情報は貴重で、市場仲介者としての戦略や戦術にも影響するが、今問題になって情報共有は、市場で取り扱う金融商品そのものの情報のあり方だ。

 金融危機の主因は証券化商品とCDS取引と言われるが、大きく問題となったのはCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)に関する情報のあり方だった。CDSを利用した証券化商品で、同一のCDSが二重にも三重にも利用された結果、投資家は勿論、仲介者自信においてもCDSの対象となる企業や団体の信用リスクの影響が、何処まで及ぶか把握しにくくなった。また、CDSは社債やローンの債務を代替する(保証)機能を持つが、CDSの売り手(債務の保証者)が債務を保証しなければならなくなるクレジット・イベント(破綻・借入条件変更など)の判断も、本来は売り手・買い手が契約に基づいて相対で決めるということから、ISDAの専門委員会で大手金融機関の合意によって決められるという慣行になって、外部や投資家からは分かり難い。このことは、最近のアイフルの事業再生ADRにおけるCDS関係の混乱で、問題が明らかになっている。
 筆者は、ISDAの様な業者間の実務的取決めとその遵守を否定するつもりはない。CDSは確かに大手金融機関とヘッジファンドなど一部の大手投資家間の限定された市場である。しかし、CDS情報の影響はCDSマーケットだけに限定されておらず、社債そして株式が公開されていれば株式市場にも影響を及ぼす。このことを考えるなら、CDSに関する情報は、社債・株式市場の参加者・投資家間で共有されるべきであって、その視点で考えるなら、日本でまだ取引は少ないCDSではあるが取引情報を集約させる仕組みとして清算機関を敢えて作り、CDS取引において清算機関利用を義務付けることは意義があることだろう。今度国会に提出される金融商品取引法の改正案において、このCDS取引のうち、取引量が多額で、その取引に基づく債務不履行が日本の市場に需要な影響を及ぼすおそれがあるものとして、取りあえずiTraxx Japanは、 国内清算機関への清算集中が義務化される。(将来的には、個別企業などのCDSも清算機関義務化の対象)
また、国内での清算機関設立に合わせて、取引情報蓄積機関の整備が可能なように制度整備を行う。日本の市場で取引される有価証券がペーパレス化で証券保管振替機構に集中したように、店頭デリバティブ取引(金利スワップ・CDS取引)においても取引情報を蓄積するのが取引情報蓄積機関だが、既に海外の記録機関の利用が大手金融機関では進んでいるようなので、国内機関での利用義務化は行うわず、取引報告制度を創設し、国内での取引実態を当局が把握する。
 以上の様に、CDSに関する取引情報はルール(グルーバルな金融当局間の合意を前提にした規制)により共有化が促進される。

一方、このCDS取引の影響を受ける可能性のある社債市場に関しては、情報の共有化はどう進められるのだろうか。既に、2月4日の拙稿で触れたが、特に価格情報共有に係る問題については、次回コメントしたい。
 

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

ファイナンスの主幹事というビジネス
 上場企業がうちの主幹事は、○○証券というのと、ファイナンスの場合の主幹事というのは些か意味が異なる。前者は、四季報などの幹事欄の一番左に記載され、企業の期待としては、大事なことを一番最初に相談したい証券会社ということだろうが、後者は実際のファイナンス時に引受団を組成して株式や社債を引き受ける。
 昨年は、このファイアンスの主幹事の当たり年となった。(以下の数字は、日本証券業協会の集計)
株式の公募増資=国内募集分2兆7198億円、海外募集分2兆2277億円、これに第3者割当方式で主幹事証券に発行されるオーバーアロット分が10%程度加わる場合があるので、5兆円超の発行となり、20年振りの高水準
社債の発行=11兆3931億円で、11年振りの高水準
 このファイナンスの引受に伴う証券会社の収益はどうなのか。
公募増資の場合、発行額を5.2兆円として、引受に係る手数料4%(最近の大型公募である三井住友ファイナンシャルグループの募集手数料率3.7%)と見積もると、全体では2080億円の手数料になる。
一方社債の場合、手数料を40銭とすると、455億円の手数料になる。
公募増資のファイナンス主幹事の方が、ビジネスとしての効率は良いように見えるが、昨年公募増資を行った大企業は、20年振り30年振りといったものが多かったように、企業にとっての資本調達になる公募増資は、めったに行わない。一方、社債の方は、同じく高格付けの大企業の資金調達になるが、こちらは、社債という性格上、償還があり、発行の相当部分は借り換え需要による。つまり、証券会社からみて公募増資は、めったにない収益性の高いディール(案件)で、社債発行はリピーターが多い見通し易いディールとも言える。以下、引受証券会社の視点で、公募増資などのエクイティ・ファイナンスへの取組みと、社債引き受けなどの取組みを比較してみる。

【エクイティ・ファイナンスの場合】
バブル最盛期の21年前、1989年に5.8兆円の公募増資があった時は、227社であったが、昨年は同じく5兆円を超える時価発行に対して46社の発行であった。つまり、1件当たりの調達額が大型化している為、国内・海外同時募集のグローバル・オファーリングの形を取らざるお得ない。この場合、海外での主幹事としては、海外での販売力が問題になるが、リーマンの欧州・アジア営業部門を参加に収めた野村の優位性は際立った。勿論、国内に販売力を持つ大手証券が、外資系証券と手を組んで引受提案をすることもあるが、大型ファイナンスの場合、募集活動時期に国内・海外の需給調整(どちらにどの位販売を割当てるか)をしなければならない。一社でそれが行えることは、野村の強みだ。
但し、エクイティ・ファイナンスの場合、引受証券は引受審査を厳格に行わなければならず、その際一番問題となるのがエクイティ・シナリオ(ファイナンスの後、株が上がる可能性を検証)である。その為に、主幹事証券は企業から未公開の事業計画や実務的データを得て2ヵ月程度で審査する。この主幹事としての審査プロセスで最も重要なことは、企業から信頼されているとで、このことは企業との普段からの付き合い方(アドバイス等)で判断される。

【デット・ファイナンス(社債)の場合】
 社債は発行企業も限られるが、投資家も限定される。最近、個人向け社債が増加していると言われるが全体の10%程度で、海外投資家は数%程度、よって金融機関を中心とする主要な機関投資家がメインの需要者になる。発行者も限られ、投資家も限定されているので、一見楽なビジネスに思えるが、その分主幹事としての競争は厳しい。厳しいが、引受条件次第で企業から主幹事獲得のチャンスもあるし、主要な機関投資家のポートフォリオ構築に貢献する為には新発の社債も必要なので、大手証券・銀行系証券が競う。エクイティの時、問題となる引受審査対応も、殆ど開示資料の審査に留まるので、企業側の負担やリスク意識は小さい。(競争の詳しい事例は、3月4日の日経記事“社債引き受け証券各社火花”ご参照)

 最後に大事なことに触れておきたい。手数料のことである。
エクイティ・ファンナンスの場合、募集価格と発行価格の差を使うスプレッドが定着したので、このコストを支払うのは投資家である。
一方、社債の方は社債の発行者が負担する。
 このことの意味を、引受主幹事の証券会社は良く考える必要がある。
(投資家と発行者の間の利益相反など)

直近決算動向からみるオンライン証券というビジネス-その2
 オンライン証券のモデルは米国で始まったが、この米国では既にインターネット取引専業のオンライン証券は無い。強烈な手数料競争の結果、住宅ローンや保険など他の金融商品の取扱いを拡大する方向か、若しくはインターネット以外のネットワーク化(例えば、独立系アドバイザーの系列化など)に進んでいて、ネット企業としては更なる進化が求められている。
 日本のオンライン証券も、成長・拡大期から集約・統合期に入ったようで、そろそろ手数料引き下げ競争(SBIと楽天間の)も限界だろう。昨年からのオンライン証券再編の動きは以下。

●ジョインベスト証券が、野村証券本体に吸収された。
●ジェット証券がオリックス証券に吸収合併された。
●かざか証券と丸八証券のオンライン口座を、オリックス証券が吸収
●マネックス証券とオリックス証券が統合へ、オリックス証券のオンライン口座はマネックス証券へ。

 主要なオンライン証券5社も、次なる成長を求めて新たなビジネスモデルを模索している様に思うが、直近の決算で、FX取引関係の収益が急拡大したのは、SBIとマネックスの2社である。各社の直近の戦略について、決算説明資料から拾うと以下の様になっている。
【SBI】
・業界最低水準の手数料、豊富な品揃え=楽天との手数料競争は限界だと思うが、実際の手数料率はカブコム以外各社若干上昇している。品揃えは、新たにロシア株式の取扱いを開始。
・地域密着の店舗展開=支店が既に23店舗あり、提携する証券仲介業者と合わせて、年度内150拠点の店舗網を構築する。なお、この証券仲介業者は昨年9月に買収した日本インベスターズ証券のネットワークを継承しており、現在76と仲介業者との提携先数は最大になっている。
・新しい投資スタイルの提案=投資信託の積立金額を1000円に引き下げて、更なるマス顧客層の取り込みを狙う一方で富裕層は仲介業者利用。
・ワンストップでの商品提供「SBIマネープラザ構想」=住宅ローンの取り扱い店舗を、完全子会社化
【松井】
・業界の慣習にとらわれないイノベーティブなサービスの提供
・ブローキング業務に特化し、むやみに多角化は行わない
・ストックでなくフローを拡充するサービスの検討
具体的顧客サービスとしては、
-じぶん銀行との即時資金決済サービスの拡充
-自動ログアウト停止機能導入
-預株の利用可能範囲を特定口座でも可能に
-無期限信用取引「売建」取扱銘柄の拡充
-大証FX口座開設受付開始
【楽天】
・国内株式以外の商品の更なる成長=FX取引、投信販売
・グループシナジーによる新規口座開設が躍進=信用口座2位へ、楽天グループ経由の総合口座伸び率NO1
・積極的な商品力・サービス強化=投信取扱銘柄数592本とオンライン証券1、業界初の投信ミニ株サービス、CFD取引、東証新システムに対応するフル板サービス
【マネックス】
・トレーディング商品の取引拡大=東証新システム対応、米国ETF・米国株追加及びコンテンツの強化、CFD取引
・FX取引での収益拡大=売買注文選択機能の強化(OCO注文)、スプレッドの縮小、子会社のFX取引マーケットメーカー機能の充実
・債券バリエーションの追加と貸株サービスの成長=オンラインの既発債売買システム開発、債券顧客層の拡大、債券償還後の乗換率向上
・オンライン証券トップの投信販売実績=投信積立サービスの利便性向上の為のシステム開発、投資家目線での商品企画、組成でラインナップ強化
・中国拠点強化(駐在員事務所)へ、インドも調査中
【カブコム】
・三菱UFJファイナンシャル・グループとの連携=仲介口座の増加、CME日経先物でモルガン・スタンレーとの提携(夜間取引可能へ)
・FX取引のスプレッド縮小による大幅な取引コスト削減(テコ入れ、顧客層拡大へ)
・1000円積立機能の強化=銀行口座からの自動引き落とし、アナリストによる参考ポートフォリオ開示
・モバイルチャネル取組み=約定比率の18・3%まで増加へ

 以上が各社の直近の戦略的取組みだが、いくつか共通した対応項目もある。それは、本業である株式取引において、東証新システムへの自社対応を如何に上手く見せるか、外国株取次・債券・デリバティブ・投信など商品ラインナップの品揃え強化、仲介業など販売チャネル強化など上げられる。これらは当初はシステムコスト増加に繋がるが、装置産業であるオンライン証券は、成長の対価として、戦略的システムの設備投資をし続けなければならない。

直近決算動向からみるオンライン証券というビジネス-その1
証券会社に所属している時は、資本市場関連のホールセール業務だったので正直余りネット証券には興味はなかった。しかし、リテール分野において、株式委託手数料の収益に占める割合がどんどん縮小していく過程の中で、その代替となったのはネット証券である。既存の証券からみると、ネット証券の手数料は極端に安いので、当然の結果かもしれない。そして、証券会社を離れて、投資家の立場でネット証券に接してみると、この様なこともしているのかと時々感心することもある。
 FX取引やCFDなどデリバティブの豊富な品揃えは当然だが、保険の販売や銀行の代理店業務(○○銀行Aネット証券支店という、独自の決済口座も提供できる。住宅ローンの紹介も)、収益とは余り関係なさそうな投資教育など、リーテール向けメニューは、総合証券(今時、余り使わないが)以上に多彩だと感じる。しかし、収益面はやはり株式のネット売買に頼る部分が大きい。主要ネット証券の昨年4月から12月まで(平成22年度第3四半期通期)営業収益ベースでは、株式売買委託手数料と信用取引の金利収入である金融収益の合計は以下の様になっている。
○SBI証券 255億円(営業収益全体の73%)
○松井    174億円(営業収益全体の92%)
○楽天    143億円(営業収益全体の83%)
○マネックス 126億円(営業収益全体の76%)
○カブコム  102億円(営業収益全体の76%)
この数値は、前年同期比では概ね1割以上の減少となっている。
営業収益のその他の部分をみると、投信(主にMMF・MRF)の信託報酬の一部が残高のなる証券会社にキックバックされる代行手数料が主に占めるその他受入手数料部分が7~14%占めている。そのほかに特徴的な事は、SBIとマネックスが、債券等トレーディング損益で、それぞれ62億円(営業収益全体の18%)・23億円(営業収益全体の14%)と其々前年比の4倍近く急増させたのは、FX取引の取扱いを強化した為である。
 しかし、ネット証券の強みは、なんといっても個人の株式等ネット取引であることに変わりはない。個人の株式委託売買代金ベースでは、ネット証券5社で全体の7割・信用取引ベースでは全体の8割を占めるが、その収益の源泉となる顧客と手数料率の状況は以下の様になっている。(※SBI決算説明資料より)
【口座数】
○SBI証券 200万口座(内信用口座数21万口座)2009年の増加+18万口座
○松井     79万口座(内信用口座数11万口座)2009年の増加+ 2万口座
○楽天     91万口座(内信用口座数11万口座)2009年の増加+10万口座
○マネックス  93万口座(内信用口座数 4万口座)2009年の増加+ 4万口座
○カブコム   69万口座(内信用口座数 7万口座)2009年の増加+ 3万口座
【預かり資産】
○SBI証券  3兆7340億円(前年比26.3%)
○松井     1兆2959億円(前年比14.8%) 
○楽天     1兆2779億円(前年比26.9%)
○マネックス  1兆6706億円(前年比16.7%)
○カブコム   1兆0471億円(前年比18.2%)
【委託手数料の平均料率】※委託売買代金÷委託手数料
○SBI証券  3.6べーシス(前年同期 3.1べーシス)
○松井    12.3べーシス(前年同期12.4べーシス)
○楽天     5.3べーシス(前年同期 5.1べーシス)
○マネックス 11.9べーシス(前年同期10.6べーシス)
○カブコム   9.0べーシス(前年同期 9.2べーシス) 

ネット証券は、個人の株式売買に関して、この10年間で既存証券からそのシェアを奪ってきたが、上記の様な顧客資源を活用して、次の段階はどの様な成長を遂げるのだろうか。
※最近の戦略等については、その2でコメント
日本の排出量取引の現状
 鳩山首相表明の2020年まで1990年比25%削減の前に、日本における温室効果ガスの削減は、京都議定書により1990年比6%マイナスを2008年~2012年の間で達成する必要がある。その為、企業や個人の様々なCO2削減努力でなされているが、不足分は京都メカニズムによる国際間で売買される京都クレジット(排出権)の購入が必要になる。現在の国内における排出量取引は、殆ど京都クレジット中心に行われているが、大きく分けると以下の4つになる。

【政府調達】
 排出削減目標の1.6%である2000万トンCO2/年程度=2008年~2012年分で合計1億トンの購入を計画して、ほぼ契約額は目標に達している。主な購入先は、
・チェコから4000万トンCO2:住宅部門での省エネ促進、再生可能エネルギー利用推進事業など
・ウクライナから3000万トンCO2:省エネ、燃料転換、炭層メタンの利用、再生可能エネルギー事業など
・中国から208.7万トンCO2:製鉄所の省エネ型発電プロジェクト、風力発電など

【自主行動計画】
 日本経団連に属する各業界団体が、業界内での地球温暖化の防止や廃棄物の削減などの環境保全活動を促進するため、自主的に策定している計画。2012年まで合計3億トンCO2以上の排出量購入を計画している。主なものは、
・電気事業連合会=2.5億トンCO2(業界全体で2012年まで):中国の水力発電、マレーシアのバイオマス発電、カーボンファンドへの出資約240億円
・日本鉄鋼連盟=5600万トンCO2(業界全体で):中国のHFCs破壊プロジェクト、工場廃熱回収システム、カーボンファンドへの出資
・石油連盟=134万トンCO2/年:ベトナムの石油採掘時の随伴ガス回収利用、ブラジルのメタンガス回収事業、カーボンファンドへの出資
・石油鉱業連盟=4000万トンCO2(7年間):中国でのHFCs回収・分解事業

【カーボン・オフセット】
個人や企業が自ら排出量の削減に取組むものとして、カーボン・オフセットがあるが、環境省により以下の指針が示されている。
①自ら温室効果ガスの排出量を認識し
②主体的に削減する努力を行うとともに
③削減困難な部分の排出量を把握し
④他の場所で実現した温室効果ガスの削減枠(クレジット)を購入、又は他の場所での排出削減活動を実施して、③の部分を埋め合わせする
具体的には、国際会議やコンサートなどのイベントで、参加者が排出量の購入費用を負担したり、事務所の排出量分の京都クレジットを企業が負担するケースなどがある。現在は、あくまでもボランタリーベース。

【国内における排出量取引制度】
 国や自治体における試験的な取組みがなされているが、2008年10月より国内クレジット制度が始まり、以下の概要となっている。
・参加主体:事業所・個別企業(トレード主体の金融機関も可能)・鉄鋼及び自動車の業界団体
・取引対象:今までの試行制度で交付された排出枠、京都クレジット、“国内クレジット”
・国内クレジットについて:この制度に参加する企業が自主的に削減目標を設定、不足が予想される部分は、中小企業などの削減プラン(大企業が技術・資金支援=このプランは政府の委員会が承認する必要がある)を国内クレジットとして購入し、削減枠を達成する仕組み。(省エネ法により、削減目標を求められるものは、2010年4月からは、年間のエネルギー使用料1500klの事業者が対象となることが決まっている。)
 一方、東京都は強制性に排出量削減枠を都下の大規模事業所(約1300)に割り当てる温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度の導入を決めている。本年4月から熱及び電気の使用量が原油換算で1,500klの事業所が対象となり、不足分は東京都が認定する中小企業の排出量削減分(クレジット)か、他の事業所の削減枠余裕分から調達しなければならない。

 以上のように、現状の排出量取引は、経団連主体の自主行動計画主体の試行的・自主的取組みが中心であったが、東京都では一部とはいえ強制的な削減枠遵守が義務付けられる排出量取引制度が始まる。また、与党・政府は、鳩山ドクトリン実現の為にも、国内の排出量取引の統一的制度確立に向けた具体的施策が、期待されている。

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