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2010/04
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ギリシャ格下げに関する投資家への情報伝達について
 もう昔話になりそうだが、米SOX法や内部統制強化の契機になったエンロン事件・ワールドコム事件の日本の個人投資家への影響としては、両社の社債を組み入れたMMF(マネー・マネジメント・ファンド)で、初の元本割れがあった。個人投資家の概ねの理解は、MMFは高格付けの社債で運用されているといったもので、虚偽決算があったとしても、その債券の格付け情報や価格情報がどう扱われているか、その当時は分かり難いものだった。その為、営業現場からは相当の不満があって、商品部門のスタッフが右往左往していたのを思いだした。今回のギリシャ格下げと、その直後の投信の運用会社からの情報提供を見てである。
今回のギリシャ格下げは、S&Pが4月27日公表したものだが、
・長期ソブリン(政府や政府機関が発行する債券の総称)は、BBB+からBB+へ
・短期ソブリンは、A-からBへ
・アウトルックは、ネガティブへ
となっており、格付けの3段階の引き下げと、投資不適格と言われる格付水準になったことに、多少の衝撃が市場にはしった。ギリシャ危機は昨年の10月から表面化していたが、S&Pは3月16日に同国の格付けに対し“引下げの方向で見直し”を解除していた(アウトルックは、ネガティブ)。今回の格下げで、4月27日のギリシャ国債利回りは9.67%(ドイツ国債とのスプレッドは6.75%)に急上昇しているが、国内の主要投信会社は、28日にギリシャ格下げに対する金融レポートを公表している。

以下に、今後の見通しなど各社レポートの特徴を簡単に紹介しておく。
【国際投信】
格下げ内容と、国債市場や外為市場への影響、ギリシャ危機の推移を記載。
・格下げの原因:欧州各国の足並みの乱れ
・今後の注目点:欧州版IMF創設の動き、EU加盟各国の財政悪化への踏み込んだ対応策
【大和住銀投信】
格下げ内容と、国債市場や外為市場への影響、ギリシャ支援の動向とその背景を記載。
・格下げの原因:ドイツの消極的な姿勢
・今後の注目点:ドイツの支援に関するEU各国との合意。ドイツ地方選挙の影響(5月9日)と5月10日前後といわれるEU首脳会議
【野村アセット】
格下げ内容と、国債市場や外為市場への影響、ギリシャ危機の背景を記載。
・今後の注目点:ギリシャ国内景気の悪化、財政緊縮策実施への困難さから、危機の収束には時間がかかる見通し。
【日興アセット】
格下げ内容と、国債市場や外為市場への影響、問題各国のGDP比財政赤字の状況、S&Pレポートの簡単な内容を記載。
・今後の注目点:債務不履行やEUからの脱退の可能性は極めて低いとの見通し。但し、EU各国の財政再建計画が、短期的には景気回復・拡大の制約になる可能性なり。
【大和投信】
ギリシャ国債の利回り推移、本年2月以降の格付け各社の動向、
・今後の注目点:市場の関心は、ギリシャの短期的な資金繰りから長期的な債務残高水準に移行。当面は混乱が続く可能性。但し、IMFやEUによる支援策が強化される可能性は高い。

 以上のレポートのベースになっているS&Pの格下げ情報に関しては、28日17時過ぎに日本語での格下げ情報を公表している。(原文は27日マドリッドから発信されたもの。)主なポイントは以下。
●経済成長の見通しが弱まっていることから、政府の選択肢は限られている。政府が既に財政再建策を打ち出しているにもかかわらず、高水準の公的債務負担に起因する財政リスクは強まっている。
●ギリシャの財政再建策は政府次第だが、労組等の抵抗が予想される。4月に税制改革法案を可決し、5月に年金改革法案が提出される予定。
●ギリシャの一般政府債務のGDP比は2010年124%、2011年131%に達する見通し
●S&Pの予想では、実質成長率が2009年~2016年までほぼ横ばい、名目GDPも2017年まで2008年水準に回復しない。
等など。

 日本でも格付機関規制が4月から実施され、格付情報の公表には相当配慮されていると思う。ただし、8年前のエンロン事件当時と比較し判断するのは、投資家自身による。

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ジャンル : ビジネス

日本の資本市場;東証の姿
 本稿では盛んに資本市場のテーマを取り上げているが、日本の資本市場の中核とも言うべき東京証券取引所の現状は如何なのか。先ずは4月27日に公表された東証の決算発表から、その背景となっている市場の環境を見直してみたい。
東証の平成22年度3月期の営業収益606億円の内訳は以下の様になっている。
・全体の36%:取引参加料217億円(前期比17%減)
取引参加料の約8割を占める取引料(上場有価証券の売買によるもの)が約20%減少したことが大きいが、1日当たりの売買代金及び取引高は次の様になっている。
    株式売買代金 1.55兆円 (前期比23.5%減)
    TOPIX先物取引高 6.1万 (前期比15.0%減)
    長期国債先物取引高  2.9万 (前期比18.2%減)
・全体の22%:上場関係収入132億円(前期比64%増)
上場企業のファイナンス増加の影響で、新規・追加上場料が78億円と2.5倍に急増した影響が負う大きい。
年間上場料は、上場企業数の減少で54億円と7%減。
  上場企業の資金調達額 7.46兆円 (前期比2.4倍 公募・第三者割当・CB及び新株予約権の権利行使などの合計)
    上場企業数(東証1部、2部、マザーズ合計) 2313社 (前期比 57社減)
    ETF  86 銘柄 (前期比 28増)
    REIT 37 銘柄 (前期比 3減)
・全体の18%:主に情報ベンダーからの情報関係収入107億円(前期比3.7%減)
・全体の12%:証券決済関係収入72億円(前期比31.7%減)
・全体の13%:主にシステム関係からの収入で、その他営業収益77億円(前期比30.5%減)
この様な営業収益の状況に対して、営業費用は抑えられたことから、経常利益は174億円と前期比7.2%の増加となっている。但し、ジェイコム株式誤発注問題での訴訟によるみずほ証券への132億円の支払いが特損となり、当期純利益は2期連続マイナス36億円となる。このことは、早期上場を目指す東証自身の上場問題に、影を落としている。(経常利益が黒字で増益なので、形式的な上場基準はクリアしている)

 一方、東証が今後取組むべき課題として、以下のことを取り上げている。
①デリバティブ市場の拡大
・新たな商品分野の検討、市場利用者のニーズに対応した上場商品の拡充
・個人投資者のアクセス手段の拡充や海外投資者の投資ニーズの取組みなど利便性向上
②現物市場の厚みの増大
・多様なETFの上場や国内外の企業の上場推進
・適切かつ柔軟なディスクロージャーの推進や上場会社に対するサービスの改善に努めるとともに、取引所外取引への対応や排出量取引市場の創設に向けた検討
③安全で高性能な取引システムの提供
・Tdex+及びarrowheadの安定稼働、先物取引のプラットフォームの強化
④新規ビジネスの推進
・店頭デリバティブ取引等に係る清算・決済サービスの提供や指数ビジネス及び情報ビジネスの拡充、コロケーションサービスの拡大や外部へのシステム提供など
⑤株主・投資者の権利・利益の保護
・上場会社のコーポレート・ガバナンス向上のための環境整備
⑥東証市場の公正性・信頼性の向上
・「未然防止型」上場管理の推進や、arrowhead稼働後の売買状況に即した売買審査業務の高度化・効率化
・「東証Rコンプライアンス研修センター(東証COMLEC)」等を通じて市場参加者のコンプライアンスに対する支援
⑦企業効率・顧客満足度の向上
・社内システムの活用により業務プロセスを改善、戦略的なマーケティングを実践
⑧金融リテラシーの向上を通じた個人投資者層の拡大
・「東証アカデミー」を通じて金融経済知識の普及と基礎的理解の向上

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日本の金融・資本市場は何を目指すのか
米金融規制法案の成行きを思い、また昨年7月まで金融庁長官だった佐藤氏の“グローバル金融危機と規制の再構築”(日本経済研究所編)という講演会録を読んでいたら、この国の金融・資本市場は何を目指すのか、再び考えさせられてしまった。規制の再構築というのであれば、一般的な捉え方として、規制は厳しくなると思われる。確かに今回の金融危機でグローバルな金融規制改革の流れがある。グローバルな金融当局者の集まりである金融安定化フォームで決定され、G20の金融サミットで報告されたことが、日本でも実行を求められる。しかし、日本には今回の金融危機で問題になった金融機関の高レバレッジ経営や証券化商品の乱造、大量のCDS等店頭デリバティブなどがあった訳ではない。勿論、日本の金融機関に関しては高額報酬など無関係だ。むしろ、証券化商品やCDS等デリバティブの金融商品、金融サービスが欧米に比べて周回遅れとされ、これを追いかける為に、2007年12月に“金融・資本市場競争力強化プラン”が公表されていたはずだ。この政策の遂行で、
○上場ETFは、年内にも100銘柄を超えそうだし、
○昨年6月には、プロ向け市場TOKYO AIM が創設され、
○同一金融グループ内の銀行・証券間のファイアーウォール規制が緩和されて、法人情報の共有と共に、役社員の銀・証の兼業が可能となっている。
但し、これらの改革が実効性のある金融・資本市場の競争力強化になっているかというと、ETF全体の取引量は減少傾向だし、AIMはそのプロ投資家向けの機能が期待され、様々な議論はされるものの未だ上場はゼロ、ファイアーウォール規制緩和では最近の金融行政の風を金融機関等が読んでソロリと対応を始めるに留まる。

 一方、今国会に提出されている改正金融商品取引法では、
●CDS等の店頭デリバティブ取引での、清算機関の利用義務付け(当面は、取引量が多いものに限定)
●店頭デリバティブ取引に関する取引情報の保存・報告義務の導入
●大規模な証券会社に対して、主要株主や親会社に対する行政命令を可能にする連結規制の導入
など、グローバルな金融規制に対応したものが上げられて、これだけなら米国規制の様に市場や取引縮小を懸念する必要もないが、証券業界が受けている印象は、金融危機を潮目に規制強化の方向へ、行政が舵を切ったのではないかという懸念だ。
 実際に金融庁から本年出されているガイドラインや検査マニュアル、TOBや大量保有報告のQ&Aなどでは、報告や提出義務要件が厳格化されているようにも思える。金融行政の厳格化は、時代の流れで、避けられないのかも知れないが、一方でこの国の金融・資本市場の問題も認識した行政を期待したい。

 それは、これから欧米金融機関の機能を追いかける証券化やデリバティブ取引だけではなく、既存の資本市場機能も、この国のシステムが一部制度疲労を起こしているように思うからだ。
●IPO市場の再構築は、業者間では議論されたものの、何か改革は進む気配もなく、アジア他国の新興市場の方が魅力的に見える現状。
●グリーンシート市場がIPO市場の裾野拡大に繋がらず、取扱証券も限定されている現状。
●社債市場は、一部の高格付けの発行体と、大手金融・機関投資家の市場に限定されている状況。
●時価発行増資や社債発行など発行市場は隆盛に見えるが、その恩恵は大手企業と大手金融に限られている現状。
●ベンチャー投資を始め、リスク取る投資を避ける適格機関投資家のあり方
等など
 中国・シンガポールそして韓国の取組みに比べ、この国が、アジアの金融センターとしての地位さえ危うくなると考えるのは、10年先の杞憂だろうか。(勿論、直接の責任は証券・金融にある。)

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米金融規制改法案(デリバティブ規制)の影響
米金融規制改革が大詰めを迎えている。金融危機後、グローバルな金融取引を行う金融機関への規制は、誰しもが避けられないと思っているだろうが、実際に市場が規制を受けることについては、市場関係者なら本能的に嫌うことも事実だ。米金融規制改革法案は、昨年12月に下院を可決され、今月内にも上院通過、成立を目指すが、ゴールドマンへの訴追、オバマ大統領の法案成立への決意表明など、改革断行への政治的圧力が強まっている。特に、オバマ演説で、金融業界の上院でのロビー活動に対して、改革案に抵抗するのを止めるよう牽制しているのは、多少驚くが、金融制度改革への強い意志を示しているのだろう。
 米金融規制改革はその内容が、銀行のリスクを抑える“ボルガー・ルール”や役員報酬制限、投資家保護策の向上など多岐に渡るが、市場の最も注目するところは、デリバティブに関する規制だろう。
 もともとデリバティブは、金融機関同士が相対(店頭取引)で取引していたもので、取引内容は契約書によって定められ、その履行は取引当事者間行われることが前提であった。大量に取引されるものは、その契約内容が標準化(ISDA基本契約書)され、取引を照合する為のシステムもあった。そして、決済及び契約の履行は、双方が相対で執行することが前提だった。
この取引で、何故改革が必要とされているのだろうか。
機能の面からは、簡単にいうと2つあって、一つはデリバティブ決済の為に清算機関を使うことを義務化しようということと、もう一つは取引されるデリバティブの価格情報を取引参加者間で共有させようということだ。

一つ目の清算機関利用の義務化は、デリバティブに限らず、グローバルな金融取引全てに求められる方向のようだが、主な目的は当局による取引実態の把握と主要取引金融機関間の決済・履行に伴う取引リスク(カウンターパティー・リスク)の低減を目指している。今回の金融危機の主犯と言われるCDS取引だが、元々は社債やローンを保証するものだったものが、そのCDSを証券化するCDO(CDSを合成した証券化商品)を組成していくうち、レバレッジ(CDSとしての利回り)を上げる為に何度も同じ対象のCDSを繰り返した。その結果、もしCDSの対象とする先が破綻(例えばGMなど)した場合、CDOを組成する金融機関であっても、即座にその影響を把握し難い事態になった。金融当局や、元々のCDSの引受手である保険会社(AIU)の経営陣も同様であった。更に、CDS契約が複数の金融機関間で多岐に渡る為、一つの決済不履行が他の多く取引の決済不履行に波及する為、金融機関間の連鎖破綻のリスクを増大させていた。
この様なことを回避する目的で、CDSやスワップ取引などデリバティブ取引で標準化されたものは、清算機関の利用を義務付け、また取引所かPTSの様な取引システム(Alternative swap facility)を利用すべきとしているのが、今回の米金融改革法案デリバティブ規制案になる。但し、ガイトナー米財務相もコメントしているように、この規制はあくまで積極的に売買したり証券化する様な標準化されたデリバティブが対象であって、顧客ニーズに合わせた特別なデリバティブ取引(カスタマイズ)に関して対象としないようだ。

 もう一つは、デリバティブの価格情報の公表もしくは取引参加者間の共有に関して規制法案で定めされているが、こちらの方は更にデリバティブの主要仲介者である金融機関の反対は強そうだ。実際どの様に価格公表を行うか細部は未定だが、現行案では、清算機関を利用する標準化されたデリバティブ(例えば今注目のギリシャCDSなど)は、取引の成立と同時ないしその直後に価格や出来高を報告することを清算機関に義務付けるもののようだ。金融業界としては、デリバティブ取引の縮小懸念から流動性が低下するとして反対しているが、このことはデリバティブ取引の仲介者(ブローカー)として、価格情報の非対称性が使えなくなるということで、ブローカーマージンの低下が予想されるので、ブローカーとしての反対は当然だろう。
ただし先例があって、米社債市場改革では2002年に社債取引情報を15分以内に報告し公表もしはく共有する仕組みTraceが導入されている。米金融界は、透明性向上でトレーダーが以前ほど大きなポジションを取りたがらなくなったため、社債市場の流動性が低下したと訴えるが、学会の調査では流動性低下は証明されていないし、米社債市場の縮小も起きていない。ただし、社債取引においてブローカーマージンが低下したのは事実だろう。

 米デリバティブ規制は、当然日本のデリバティブ取引にも影響するだろうが、現国会に提出されている金融商品取引法改正案では、このデリバティブ取引の清算機関整備に関する条項もあり、日本における制度整備も注目される。

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知られざるブローカー=短資会社
 連日のブローカー・ネタになるが、ブローカー・オブ・ブローカーズというべき短資会社の実像は余りしられていない。知られていない理由は、関係者が限られ、かつ未公開企業だからだが、短資会社の役割は、市場に於いて非常に重要な機能を果たしている。そもそも短資会社とは何か。
短資とは短期金融市場のことだが、この市場に参加するのは、金融機関・外資系金融機関・証券会社など日本の金融市場の主要メンバーに限られる。この短期金融市場で、取引参加者間の仲介をするのが短資会社で、主要金融機関間のブローカーとして機能している。勿論この短期金融市場は、日銀による金融政策実行(オペレーション)の場なので、日銀との関係も強い。

 短資会社は現在3社あるが、いずれも民間の株式会社で、その沿革を遡れば、其々が100年企業である。
・東京短資(資本金 50億円、従業員125名 ←創業は1909年、柳田ビル・ブローカー)
・セントラル短資(資本金 100億円、従業員167名←創業は1909年、山根ビル・ブローカー)
・上田・八木短資(資本金 50億円、従業員141名←創業は1918年、上田商店)
※各社HPより
 
 収益基盤は、当然金融機関間による短期金融取引の仲介となるが、この短期金融市場での参加者の資金のやりとりの増減がブローカーとしての手数料に大きく影響するので、現在のような“ゼロ金利政策”の継続では、その資金取引量が減少し、主要な売上げである手数料収入も減少する。日銀のオペレーションは別にして、殆ど金利が付かない様な状況下では、資金取引も減少するのは当たり前のことだが、前回の金融危機でも“ゼロ金利政策”(1999年~2006年) “量的緩和策”(2001年~2006年)により短資会社にとってのメイン・マーケットであるコール市場が大幅に縮小し、金利が殆ど付かないことで手数料のマージン率も低下した。

 この時期に、短資会社は、金融機関間の短資資金のやり取り(主にコール市場)で稼ぐビジネスモデルへの変更圧力から、業務の多様化と企業間の統合を模索・実行している。それまで6社あった短資会社は、2001年に現在の3社に統合され、その前後に業務の多様化を図る為に、子会社設立が相次いだ。
元々の顧客層は、大手の金融機関を中心にしていたので、短資会社はその大手金融機関が取引を行う外国為替取引の仲介は、早くは戦前から遅くとも戦後の早い時期から行っていた。その関係で、個人のFX取引を仲介する所謂FX業者として子会社の設立を、この短資冬の時代に行なっている。この部分が、短資会社と個人(リテール)の現状での唯一の接点になっている。その他に、子会社の整備としては、排出量取引や電力取引の仲介を行うもの、国債売買や店頭デリバティブの仲介を機関投資家相手におこなうもの、金利スワップやCDSなどの取引媒介、投資助言業務、債券取引のPTSなど、金融機関間の資金取引とそれに派生するビジネスに留まらず証券市場分野への進出を強めている。

 自らのビジネスモデル存続の危機に、これだけの多様化が図れたのは、長年の蓄積により企業規模に比べて自己資本が厚かったからで、現存する3社の自己資本は、400億円から900億円規模と見られる。決算期がマチマチで、財務数値も非公開なので係数的なものはコメントできないが、短資会社各社の状況は、直近の格付け資料から、以下の様な状況になっている。(格付けは、各社ともA-安定的、R&I:4月15日公表文より)

【東京短資】
リスク管理(金利リスク・与信リスク)を重視した業務運営体制の構築に注力している。与信先の経営状況を審査するため、営業審査部を設置し、収益低迷局面でも厳格なリスク管理方針を維持していく方向。2008年にFX取引事業会社を売却。
【セントラル短資】
規模は最大で、40~45%のシェア(コール市場短資会社経由)を確保している。リスク管理(金利リスク・与信リスク)を重視した業務運営体制の構築に注力している。与信管理を厳しくし、株レポ取引(資金のやり取りを前提にした株の貸借取引)では、取引先の選別を厳格化している。FX取引の子会社は、業界での上位グループに位置する。
【上田八木短資】
リスク管理態勢整備に注力しつつ経営体力に相応しいリスクを取る方針で、オープン市場(主要銀行主体のインターバンク市場ではない)での収益機会を積極的に捉える。子会社のFX取引事業では、2010年に三菱商事フューチャーズからFX事業を買収し規模の拡大を図っている。

 短資会社の本業そのものは、コール市場の縮小・マージン低下で厳しい状況かもしれないが、プロの大手金融機関を相手にしているブローカーだけあって、業務拡大の方向性は金融イノベーションの流れに沿っている。最近は、証券ビジネスと重なる部分も増えてきているが、このブローカーの業務多様化への取組みは証券業界も見習うべきところが多いのではないだろうか。

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ブローカーって何
 前回は、米SECによるゴールドマン訴追の事を取り上げたが、そもそもCDO(今回問題になったサブプライムローンを証券化したもの)であろうが、それをヘッジする目的のCDS(債券やローンの下落を、ヘッジする目的のデリバティブ)であろうが、普通の上場株式であろうが、売り手と買い手がいて、その仲介をするのがブローカーになる。
 「exBuzzwords」用語解説によると、“ブローカーとは、有価証券などの取引において、売り手と買い手の間に立ち、売買の成立を支援する仲立人のことをいう。委託を受けて取引を行う点で、自己の資金とリスク負担で、取引を行うディーラーとは異なる。”とある。

 金融・資本市場に関係する証券や金融機関の方々には、分かり切ったことを書いてしまったが、本当にこのブローカーの定義を理解しているのか、若しくは世間一般の理解と、金融機関側の理解に隔たりがあるのかが今米国で問われ、そして今後日本でも問われる可能性がある。今回のゴールドマン訴追の件から、ブローカー業務のことを再考したい。
 商行為において、そもそも情報の非対称はあって当然で、金融商品の取引においても、売り手と買い手の情報の非対称性が大きいこと(つまり、売り手の多く持っている情報の一部しか買い手には伝えられない)は、取引当事者も世間も同様に認識しているだろう。しかし、ブローカーの立場はどうであろう。ブローカーは、その取引ルールに従って、売り手・買い手を公正に取り扱っている。その前提でブローカー業務が成り立つ。その為には、ブローカーの持つ情報を何処まで伝えたら良いのか。この事が、今回ゴールドマンのケースで問われていると考えた方が、金融界は理解しやすい。
 今回の訴追の件について、金融界の概ねの意見は、プロ同士の取引であり、法規制上もブローカー(取引仲介者)としても問題無かったはずだが、金融危機の影響で、世間の大手金融機関を見る目が厳しく、政治的ファーマンス上の動きであって、他のブローカー業務にも波及すると問題だ。というところではないだろうか。
 しかし、この様に米SECの動きを斜めに見るよりは、そもそものブローカーとしての情報の取扱いに一定のルールを示した方が、金融危機後の大きな流れの中で、金融業界が主要産業として立ち直っていく契機になるのではないだろうか。
 勿論、ブローカーは売り手に関して何でも知っている情報を、買い手に伝えれば良いのではなく、買い手の投資判断に影響すると思われる情報を伝えるべきだが、この影響すると思われる情報というところが、今後争点になるだろう。販売する商品に関する情報のみならず、その投資家の投資判断に影響する情報は、見方によっては広範囲に及び、仲介者のコストを上げるが、プロ同士を取り次ぐブローカーもプロのブローカーであるのだから、投資判断に影響があると思われる情報を、買い手側に伝えるというプロの技が、必要になる。

 買い手にとって、ブローカーから情報を伝えられないのも困るが、一方的若しくは偏って伝えられることにも困難が伴う。その一つに、セルサイド(ブローカーという意味)アナリスト情報問題がある。ブローカーとアナリストは直接関係ない。しかし同一の金融機関(ブローカー)のアナリスト情報は、ブローカー部門によって投資家に伝えられるし、そのアナリスト部門のコストの多くはブローカー部門が負担する構造になっている。つまり販売する為、若しくは売買を誘導するためのアナリスト情報をブローカーとしてサービスで提供するのか、投資判断に役立てる為に提供するのか、だが、コストをブローカー部門が見ていたり、アナリスト情報を一部の投資家にしか提供しなければ、それは前者ということになる。その判断を明確化する為、最近投資家の中には、アナリスト情報の対価を別途支払う動きも出始めている。

 本来、ブローカーとは売買を仲介し、それを執行する能力が問われるべきで、仲介者たるブローカーが保有する情報は、投資判断に影響すると思われる限り、取引参加者全員に行き渡ることが求められている。それがプロ中のプロ同士の取引でもあっても、プロのブローカーの責任という時代に入ろうとしている。この事を、市場や取引縮小を前提にして避けることは出来ない。この理解が金融業界には必要だ。

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業界が問われているビジネスモデル
 問題視されていることは昨年から伝わっていたが、まさか証券詐欺の疑いで訴追を受けるとは思わなかったのがこの業界の共通認識だったろう。米SECによる訴追は、ゴールドマンがサブプライムローンを証券化した商品の販売時に、その商品を組成したファンドが、その商品に関係したデリバティブを大量に空売りして事実を知っていながら、販売先の投資家に伝えなかった事を問題とした。重要な事実を投資家に伝えず、金融商品の販売をしたという理由だ。この場合の投資家は、個人投資家ではなく大手金融機関や機関投資家である。
 恐れずに書けば、一昔前(金融危機前)なら何が問題なのかというのが業界の感覚だろう。プロ同士の取引において、“情報の非対称性”があったとしても、それはプロとしての能力の範囲で、それを認識した上で、プロ同士の取引に参加しているはずだという業界の意見だったろう。実際、ゴールドマンは、この取引が金融のプロ同士のものであり、販売時に、この商品が下落するかどうかは分からなかったと反論している。
 確かに、商品を組成したファンドが、別にその商品を空売りしても、その事を規制するものはない。ファンドであっても運用成績を上げる為、デリバティブを使い、空売りすることもあるだろうし、たまたま運用対象が同じ証券化商品を、プロの投資家に販売することもあるだろう。
 ここで問題となっているのは、プロ同士の取引における情報の非対称性ではない。この証券化商品をファンドからプロの投資家に取次いだ仲介者としてのゴールドマンが、同時にファンドの大量空売り情報をもっていたと言う事だ。何故、ファンドの空売りを知っていたかというと、この空売りの相手(カウンターパティー)だったからで、ゴールドマンは2役を演じていたことになる。つまり証券化商品の販売の仲介者と、同様の商品のデリバティブの取引者という役回りだ。この事が問題なのだろうか。
この業界に古くからあるブローカー業務とトレーディング業務の利益相反問題に似ている構造のように思われるが、米SECが問うているのは、ゴールドマンがこのブローカー業務行うにあたり、トレーディング部門(ディリバティブの)から同一商品の空売り情報を得ていたにも係らず、他のプロ投資家に販売したブローカーとしての姿勢だ。利益相反(若しくはその可能性)があるのに、ブローカーとして情報の非対称性を使ってはならないという結論になるのだろうか。
 ゴールドマンに対しては、このサブフライム証券化商品のCDO販売問題以外でも、CDSの取引に関するものや、他の金融機関のM&A取引などで、欧米当局が問題視するものが目立ってきている。法規制は勿論遵守していても、プロ同士の大きな取引において、ブローカーとして、利益相反の可能性がある仕組みの中で、情報の非対称性が許される範囲は、厳しく制限していく。そういう行政の方向性が強まると、投資銀行にとっては難しい。

 翻って日本においては如何か。
残念ながら、ゴールドマンの様に、大きな仕組みの中で情報の非対称性を使いこなす投資銀行は未だないが、商品を扱うブローカーとして、利益相反する部門(自社内及びグループ内)から、投資判断に影響を及ぼす可能性のある情報の取得はある。もし、これがブローカーとして問題になっていくのなら、この情報を対象商品の投資家全てに伝える措置をするか、問題情報が伝わらないよう情報隔離する必要がある。
利益相反体制の確立と法人顧客情報の共有ということでは、昨年からファイアーウォール規制の緩和も行われているが、ブローカー部門を抱える証券の対応は、日本でも難しくなる可能性もある。いっそ、ブローカー部門を分離独立させてしまうというのは乱暴かもしれないが、少なくとも取引参加者間の情報の共有問題は、業界に突きつけられている長年の宿題だと思う。

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上場企業の増資に求められるディスクロージャー
これから3月決算期会社の決算発表が始まり、6月下旬の株主総会に向けて企業の準備が本格化するので、この時期はファイナンス案件が減少する。昨年度は、年度ベースでみて上場企業の増資が6兆円を超え、バブル期以来21年振りの水準となったが、本年も7月に入ったら昨年同様に公募増資ラッシュの可能性もあり、市場関係者にとっては、この時期はつかの間の安堵かも知れない。
 最近、大量の第3者割当に対する金融庁の実質規制強化策(拙稿、4月12日“最近の規制強化2点”で概要を紹介)が公表されたが、株主にとっては、公募増資であっても大量の増資は大幅な希薄化を招き、ダメージを受ける。しかし、保有し続けるのは増資資金が企業の事業戦略上必要で、将来の企業価値の向上に役立つ、と信じるからだ。その株主の信頼の為には、企業側は増資資金の資金使途を明確にし、事業戦略との関係性を示す必要がある。増資の際のディスクロージャーでは、資金使途に関して定型的な文言の2~3行で済ませてはならない。

この事に関して、内閣府は“増資におけるコミットメントの有無と株価投資収益率”というレポートを今月5日に公表している。昨年1月から11月末まで公募増資を公表した企業54社を対象に、TOPIXをベンチマークに収益率を算出していて、概要は以下の通り。
●増資公表から120日後で、オーバーパフォームしている企業は16社。アンダーパフォームしている企業は38社。
●増資で得た資金使途に関して、具体的な戦略を示した企業は、増資公表後60日後を境に収益率が改善に転じたが。戦略的記載を行わなかった企業の収益率は低迷を続けた。
●業種別には、オーバーパフォーマンスだった電気・精密には戦略明示型が多く含まれていた。

 一方、投資家側の立場から、生保協会が毎年実施している“株式価値向上に向けた取組みについて”が3月19日公表されている。その中で、平成21年度の増資に関する投資家側(機関投資家168社)の意識として、以下に様な調査結果となっている。
●増資に関する企業側の説明は、一定程度されているとする53.9%に対して、あまり説明されていないとするのが42.7%。十分に説明されているとする者はいない。
●企業の説明に不足がある部分としては、
・資金使途の内容=7.9%
・増資に見合った今後の収益向上策=76.4%
・希薄化率や発行価格等の発行条件の妥当性=10.1%
●増資の結果、将来的な株主還元が求められるが、企業の資本コストとして意識されているかという点については、約3分の2が満足出来ないとしている。
 この資本コストに対する企業側の把握は、53%の企業(調査対象1132社)が把握していない現状だが、把握している企業の加重平均資本コストの平均値は約5.8%になっている

増資を実施したら、いつどの様に使い、既存株主にはどう還元していくのか、ということは公募増資を引き受ける証券会社の引受審査でしっかり行っていると思うが、定型的な開示内容で済ますのではなく、株主や投資家に、調達企業の戦略がしっかり伝わる様に助言をしていくのも、市場仲介者としての引受証券の大事な仕事ではないだろうか。

ちなみに、生保協会は上場企業の経営目標の設定・公表に関して以下の提言をしている。
①具体的な中期経営計画の策定・公表及び説明の充実
②目標とする経営指標の設定・公表
③経営計画に沿った適切な資本政策・株主還元の実施

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2つのCDS
一般の投資家にはあまり関係ない事と思われていたことも、実は環境やタイミング次第で、その影響が大きいということが認識され始めている。特に、金融危機後のマーケットがそうだ。CDS(Credit default swap)もその一つで、最近の注目されていたギリシャの財政危機問題では、ギリシャ危機を煽ったのはギリシャ国債などを対象とするソブリンCDSに対するネーキッド・ショート(国債などを保有せずに、CDSだけ買う)が原因で、これを規制すべきだといった意見がEU内で強まっている。本来は国債などの保有リスクのヘッジの為に、保有するソブリンCDSだが、先行きの財政悪化→債券価格下落→金利上昇→国債の保証料相当であるソブリンCDS価格の上場を見込んで、ヘッジファンドや投資銀行などが先行したCDS買いを仕掛ける。このソブリンCDSに関して、4月14日日銀は “ソブリンCDS:市場現状と変動要因について”を公表している。

その概要は一部、日経などで報道されているが、ソブリンCDS市場はこの1年で30%以上の拡大して約2.2兆ドル規模に成長している。日本のソブリンCDSも時々話題にはなるが、米国や英国などと同様に市場全体の1%程度で取引量は限られている。取引量残高が多いのは、イタリア(約10%)トルコ(約8%)、ブラジル(約6%)、ロシア・メキシコ・スペイン(各々約5%)となっていて、取引は債務残高の多さには比例していない。また、この市場は想定する元本が大きく(例えば、5年債・5億円をソブリン債を想定)参加者も限られていることから、CDS価格の上昇や下落が急激に起き、又他の国にも波及する可能性があることをレポートは指摘している。
一方、毎月分配型の公募ファンドや直接のソブリン債投資により、個人投資家の外債投資が進んでおり、対象としては、上記ソブリンCDS残高上位の国への投資が多い。ソブリンCDSの急激な変動が、個人の外債投資に影響する可能性も考えなければならないが、ソブリン債の価格情報と共にソブリンCDSの動向を個人投資家に伝える必要も出てくる。但し、この取引は現在限られた取引参加者間の相対取引で、決済は相対になるので、実際の情報共有は限られる。(※取引照合は、米国の決済機関DTCCの子会社で殆ど行っている)

 もう一つのCDSは、当然企業の社債やローンを対象にしたものだが、東京金融取引所では、以下の様な概要で日本企業のCDS価格参考値公表している。
・123社の日本企業と、日本企業指数(50社分を指数化)
・想定元本5億円、5年物
・クレジットイベント(債務を代替する理由)は、倒産、支払不履行、リストラクチャリングの3つ
・主要な証券や金融機関22社が、店頭取引をベースに参考値を提供。午後5時半を目途に公表
日本企業のCDSも、2月のギリシャ危機懸念では全体的に上場したが最近は右肩下がりになっている。実際の代表指数Markit iTraxx Japanシリーズ 13の動きは、2月に150BPS以上あったものが、4月14日には、85.43BPSに急落している。
個別企業のCDSでは、昨年事業ADRに手続きに入ったアイフルのCDSが注目されていたが、これは3月25日に取引参加者による入札が実施され、元本の33.875%で清算されることが決まった。
これらのCDS取引は、確かに主要金融機関や大手投資家間の限定された取引だが、CDSの対象とする社債を個人が保有する場合もあるし、個別企業CDSの急激な変動が、その企業の株価に影響を及ぼす事例も出始めている。またCDSを企業の信用リスク情報としてインサイダー取引や相場操縦行為に悪用するリスクも欧米では指摘されている。

 確かに現CDS市場は参加者が限定されている市場だが、金融危機でなくともその影響は広く市場に及ぶので、資本市場全体での情報共有が進むことが望ましい。そのインフラとして、日本でもCDS清算機関が年度内に設立されるようだが、一般投資家も活用できる様な取引情報の活用が望まれる。

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期待されるDMAだが、米国で新規制
3月の東証1部出来高の1日当たり平均は約20億株、売買代金ベースは1日当たり平均1兆3918億円。この取引水準は、昨年来余り変化のないもので、むしろ売買代金は若干減少傾向にある。年初からスタートした東証新売買システムarrowheadの影響は、まだ出ていないようだ。
東証の新売買システムは、ミリ秒単位の注文処理スピードを競うもので、確かに約定スピードが上がり、目で追う事は不可能になった。デイトレーダー達の戸惑いなどが伝えられているが、売買手法の変化が求められている。一方、期待されているのが海外投資家や機関投資家などのシステム売買=アルゴリズム取引の増加だ。これは、大量の注文の売買コスト(マーケットへの影響度も含めた)を下げる為、注文をプログラムされた論理(アルゴリズム)に従って細分化し、大量の注文の発注・取消しを繰り返す。その為に、少しでも注文処理スピードが速い方が良いので、東証は自らのシステムの傍に、取引参加者のシステムサーバーを設置することを認めるコ・ロケーションサービスも開始しており、10社以上が参加しているようだ。
外証や大手証券の一部は、これらの機能を機関投資家などが使う発注方法として、顧客自らが取引所へ直接売買注文を発注するダイレクト・マーケット・アクセス(DMA)を、サービス提供し始めている。このDMAは、取引所の出来高増加、銘柄の流動性向上に大いに期待されているが、東証での本格化は6月以降になると推測されている。
 一方、一日の取引のうち、このDMAでの売買発注が半分を占める米国では、顧客のDMAで発注する売買注文を、注文を取次ぐ証券会社が事前にチェックしないネイキッド・アクセスが問題になっている。
事前チェックは、日本の証券会社でいう売買審査機能だが、
○大量の誤発注を未然に防ぐ
○相場操縦行為を発見する
○インサイダー取引を防ぐ
○空売りルール違反(アップティック・ルール)を防ぐ
○特定銘柄の取引停止など取引所の措置に対応する
○顧客との取引リミットを守る 等
の事を、DMAのシステム上で自動的にチェックするフィルターが必要になる。
米国でのネイキッド・アクセスは、上記の事前チェックを行わない為、通常のDMA取引の半分程度の処理時間になると言われており、顧客の注文処理スピードの向上とコスト削減要望から、米国の1日平均取引高の38%を占めると昨年12月にWSJ紙の記事で紹介された。
 これに対して、米SECはネイキッド・アクセスを禁止する方向で、DMAサービスを提供する証券会社等へ新ルールを導入しようとしている。その概要は、
●リスクマネージメンントの為に、自動化された事前チェックの仕組みを確立すること。又、顧客毎の取引内容を保存。
●顧客毎の取引リミットや誤発注をリスク管理システムの自動化を求める。
●取引所の売買停止措置に対応し、通常の取引規則遵守が自動的に確認できるシステムの構築。
●以上のシステム対応が、最良執行義務の為、他の取引所やATSに回送する際にも管理されること。
●このリスク管理システムは、証券会社等が管理・運営し、アウトソースは禁止
●以上のシステムを年一回以上は定期点検
日本のDMAは、以上に対応してくると思われるが、よく考えてみると、DMAの様なシステム売買には、証券会社のシステム対応で自動化した売買審査機能が必要という当たり前のことに落ち着く。

※文中の米国DMA規制に関する部分は、日本証券経済研究所:証研レポート4月号“ダイレクト・マーケット・アクセスに関する新規制”清水葉子氏による

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最近の規制強化2点
 市場は自由な方が良いと誰もが思うが、時々暴走してしまうのもまた事実で、修復する為に政府資金(税金)を使われると、世の中の市場を見る目も厳しくなる。この為、金融危機後は金融機関に対する規制も厳しくなるのは当然の流れなのだろう。また、市場や市場参加者の変化によって、市場自体が歪んでしまう可能性があることもあり、歪んだものを持込み難くするという新たな規制も必要になる。
最近、金融庁が公表した規制強化は2つあり、ひとつは証券会社やファンド運用者などの金融商品取引業者に対するもの。もう一つは、上場企業の第三割当に関するものだ。

 金融商品取引業者への規制強化は、今国会に提出されている証券会社の連結規制や親会社・グループ会社への監督の導入ではなく、昨年まで実行された施策や事件など問題になった事に対するものが、監督指針に新たに加えられ、改正案として4月9日に公表されている。
その監督指針に新設されたものは、金融商品取引業者に新たに生じている事態や問題点に対応したものと見做すことが出来るが、その概要と背景は以下の様なものがある。
●顧客情報の管理態勢に係るもので、態勢整備に関する経営者の理解や、特定の者に集中する権限の分散、外部に情報処理を委託する場合のモニタリング等が新たに上げられている。これは、銀行系証券のシステム担当部署から大量に顧客情報が流失した事件が問題になった。
●個人情報管理に関するものも新たに加わり、所謂センシティブ情報の取扱い(利用しないことを確保する為の措置)など個人情報保護法の対応も求められている。
●クレジットカード情報などの管理についても新たに求められているが、これは少し分かり難いかもしれない。昨年から投信を継続的に購入する契約を結んでおけば、月間10万円まで銀行口座に残高が無くとも貸越で投信を購入し続けることが出来るようになった。証券会社の場合、資金決済口座は無いのでクレジットカードで同様の機能を果たすことが可能という背景がある。
●法人の情報管理についても、インサイダー取引等の不公正取引防止からの対応が新たに求められている。この事は、投資銀行業務を行う証券会社では当たり前のことだが、大手証券のM&A担当部門からの情報漏洩や外資系証券によるファイナンスに絡んだインサイダー取引や相場操縦行為があったのも事実だ。大手証券などは、社内にトレーディング部門やその他の顧客利益と相反する可能性のある部門を抱えるので、より厳格に顧客法人の未公表情報は管理されなければならないが、一方、昨年の6月から銀行系証券はこの未公開法人情報はオプトアウト方式で親銀行と共有することが可能になっている。情報にICタグでも付ける様な法人関連情報の管理が求められているのではないだろうか。

 もう一つの規制強化は上場企業に対するものだが、同じく9日に企業内容等開示ガイドラインの改正案として公表されている。現在の金融商品取引法上の届出書などの利便性を向上させるものもあるが、第三者割当に関するものは、明確に企業に対する規制強化となっている。何故、これが規制強化かというのが少し分かり難いので、解説する。上場企業と言えども、金融当局が彼らの行為に対して直接的に指示することは出来ない。しかし、第三者割当でもファインアスなので有価証券届出書の提出が必要となる。規制強化というのは、以下の事をちゃんと書いていないと金融庁側が判断すれば、有価証券届出書が不備なので受け取らないということになる。有価証券報告書が受理(各財務局で)されなければ、企業は結果第三者割当増資を行うことが出来ないという構成になる。ガイドラインによると、大規模なものや割当先の実態に周知性がないもの等(一般の投資家が知らないファンドなどの割当先という意味だろう)は当局が第三者割当の内容を審査するとして次の審査内容を上げている。
○手取資金の使途について、実態に即した詳細な表示、使途の合理性等
○割当予定先の実在性、払込資金の実在性、特定団体等の確認内容等
○有利発行に該当しないと判断した場合、その理由等
○大規模な第三者割当の場合、既存株主のメリット・デメリット等

 なんだが、当局が証券会社の審査部の様な機能を果たすようにも思う。本来なら市場のゲートキーパーの証券会社が上場会社に対応すべき事項にも思えるが、第三者割当の場合、主幹事という機能は働かないので致し方ない。但し、主幹事機能が働かなくなった経緯は、証券会社として考えておくべきだろう。

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企業におけるインサイダー情報
 証券会社の上場企業担当者は、時々上場会社から頼まれて、インサイダー取引の説明会を行う。自社の売買管理部などのメンバーを同行して、上場会社の役社員向けに行うものだが、企業にとって自社の役社員を、インサイダー取引のリスクから守ることは、重要なコンプライアンス対応になっている。自社株だけではなく、取引先のインサイダー情報に触れるリスクもあり、その際に情報をどう対応するか、役社員自身のインサイダー取引に関する認識も必要だ。
 といっても、何がインサイダー情報なのかというと、法規制やルール面から一般の個人には分かり難い部分もある。

 インサイダー情報の規定は、金融商品取引法の166条第二項に定められる“重要事実”だが、企業が決定するもの、発生したもの、決算情報などに関する未公開情報(子会社分も)で、詳細も定められているが、一方に軽微基準もある。例えば、M&Aに関する情報は基本的には重要事実だが、売上げの10%増減に影響しないようなものは除かれる。最近、話題の不測の社長交代はどうかというと、代表者の交代は取引所の適時開示要件だが、重要事実ではない。ただし、多少やっかいなのは、投資判断に著しい影響を及ぼす事項=バスケット条項がこの“重要事実”に含まれることだ。社長交代そのものは、重要事実でなくとも、その交代の背景に投資判断に影響を及ぼす可能性がある重要な子会社の再編問題があると、こちらの方は“重要事実”になる可能性もある。このバスケット条項は、何か一般の投資家の判断に影響するか、企業が置かれている環境や、市場の状況によっても解釈が難しいので、証券会社はよく問合せを受けるが、最も良い方法は、情報のある程度まで公表してしまうことだ。

 インサイダー取引は、未公開の重要事実をもって、株式を売買することなので、役社員に株式の売買を禁止してしまうというのは本末転倒である。それは、証券会社の役社員であっても国会議員であっても同様であるが、未公開の重要事実=インサイダー情報を持たなければ、株式の売買は規制されるべきではない。但し、本人が意図せざるインサイダー情報への関与もあるので、企業は、重要事実情報の管理を徹底するとともに、役社員(家族も含む)の株式売買を捕捉しておく必要がある。この為に、以前、弁護士や会計士やマスコミなど資本市場に関与した業務を行う人々も対象にすべきとして紹介した日本証券業協会のJ-IRISS(ジェイ・アイリス:内部者取引管理システム)の活用が望まれる。

 実際のインサーダー取引の状況がどうなっているかというと、証券取引等監視委員会によるインサイダー取引での課徴金納付命令勧告べースでは、平成21年32件←平成20年20件←平成19年11件と増加している。平成21年の内訳は、公開買付けに関したものが10件(前年は3件)、会社更生・民事再生に関したものが8件となっており、前年10件あった業務提携に関したものは無くなっている。また、インサイダー取引の主体者別でみると、第一次情報受領者(会社関係者から直接情報の伝達を受けた者)は15名と約半数となっており、その企業の役社員が14名と続いている。

 企業の情報管理の甘さから大量のインサイダー取引者を出したケースもある。これは、オリエンタル白石が会社更生法申請をする前日に、事前に準備していた現場での留意事項を周知するメールを、社員数百名に誤送信してしまい、結果社内外で7名のインサイダー取引が起きた。

 M&AやTOBに係る情報は最も注目される情報だが、これらは時間も長期間に及び社外の関係者も増える。加えて、企業側の情報管理態勢整備に関しては、企業経営者の認識も含めてまだ不十分のようにも思われる。ただ未公開情報を厳格に管理すれば良いのではなく、情報の公表態勢や、役社員の株式売買状況の把握(業務上関係する企業の株式の売買は、個人情報の扱いではない)も含めてインサイダー情報の管理が、企業側にも求められている。
新株予約権の使い様
 上場会社の400社以上が導入している買収防衛策は、今年すでに50社以上が廃止を決めている。この買収防衛策は、一時ライツ・プランと呼ばれたが、敵対的買収者が現れた際、新株予約権を使って、買収者の持分を実質的に希薄化させようとするものだ。例えば、敵対的買収者が株式を20%した後、会社側は買収者以外に新株予約権を付与することで、買収者の持分を10%以下に低下させてしまうことが出来る。
この新株予約権は、実に様々な企業行動の局面で使われていて、今までは既存株主にとって余り良いイメージがなかった様に思われるが、最近、株主に優しい増資方法として注目されているライツ・イシューも、株主全てに新株予約権を無償で割り当てるものだ。
新株予約権とは、これ以外にも多彩な使い方があるが、このことを少し整理してみたい。

【新株予約権の定義】
株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいう。(会社法第2条21)

【新株予約権の基本的な構成】
①何株の新株を払い込む権利か
②いくらで新株を受け取ることが出来るか
③いつからいつまで有効か権利か
④この権利そのものは、いくらで発行するのか
基本的構成要件は以上だが、これ以外にも権利が終了した時どうするか、権利の行使する場合の条件等を付けるかなど、新株予約権の設計は相当な自由度がある。つまり、発行者である企業と、引受者間の合意があれば様々な新株予約権発行のバリエーションがあるということになる。このことは、株主には分かり難く、不評の一因にもなっている。特に、②と④の関係で、その発行が有利になっているかどうかは個人株主には一目して分かり難い。

【使い方】
○ファイナンス手段
資金調達の場合、株式と同様に公募と第三者割当があるが、単独で使われるケースは少ない。通常は、公募では社債とセットになる所謂CB(新株予約権付社債)としてか、第三者割当増資とセットとなるケースが多い。公募であっても第三者割当でも、ここで問題になることは②=行使価格が一番多く、④との関係で株主からみて有利発行なら、株主総会決議になる。新株予約権の行使を促す方法として、一定期間後に株価が下落した場合、その時の時価より安く②を下方修正する方法も取られるが、この方法は株主からみて更に有利かどうか分かり難く。時々問題となるMSCB(行使価格を下方修正するムービング・ストラクチャーのCBという通称)は、買付け者の裁定売り(新株予約権を持って、株を空売りすること)が予想されるので、株主には最も不評だ。但し、企業再生過程で使われた場合もある。

○M&Aなどの推進策
 上場企業のM&Aなどにおいて、買い手の意向に沿った事業推進などの状況を見ながら必要資金を供給する場合、この新株予約権が買い手に割当てられ、権利行使が段階的に実施されていくケースがある。また、買収の対価として、欧米では現金以外に自社株式や自社株式を対象とする新株予約権が売り手株主に支払われる場合もあるが、日本ではまだ一般的な使われ方とはなっていない。

○買収防衛策
 敵対的買収者の保有する株式の希薄化を図る為に、新株予約権を株主に割当て、敵対的買収者は権利行使しにくいような行使を制限する条項を付ける。実際に発動されたブルドックのケースでは、敵対的買収者に割当てされた新株予約権部分は、権利行使出来ないが、会社側が現金で買い取るスキームになっていた。この結果、会社が買収から新株予約権を買取り、その分の大量の配当可能利益が社外流出したことに関しては議論を呼んだ。買収防衛策は、敵対的買収者の安易な行動を防ぐ意味はあるが、実際に発動されると、会社法上(買収者も株主の権利がある)の問題も多く、様々なケースでは新たな判例に頼りかねない場合もあるとの見方が一般的に思う。

○ストック・オプション
 上場企業での一時の流行は下火になったが、役社員に新株予約権を与えるのがストックオプションだ。当初は、インセンティブ・プランとして導入が相次いだが、元々はベンチャー企業など報酬の対価に使うのが正しいのだろう。最近は、機関投資家などのチェックも厳しくなり、会社側が役社員へのインセンティブと報酬のあり方、そして付与する新株予約権の価値と行使の条件をキチンと見るようになってきた。

○何らかの対価としての支払い
 役員の退職金積み立てを止め、その分、行使価格を1円にして新株予約権を付与する事も行われるようになっている。また、コンサルタントなどに成功報酬的に付与される場合もある。ただし、この場合も、付与する新株予約権の価値の認識と、支払う対価のバランスをどう会社側が考えるかが問題になる。

 以上の様に、いろいろな使用目的にそって対価として使われている新株予約権であるが、株主に割当てる以外は、対価として使う側の会社経営者が、その新株予約権のバリューを正確・公正に把握し、それを株主に説明する責任がある。

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独立役員とは何か
 独立役員とは取引所規則上での言葉である。その定義するところは、一般株主と利益相反が生じる恐れのない社外取締役又は社外監査役をいう、と取引所規則に記載されていて、本年3月期決算会社から1名以上確保しなければならない。この独立役員の届出を3月まで行なった対象上場会社は2094社あるが、この内187社が未確保になっている。
 一般の投資家には、この事が何を意味しているか、分かり難いと思われるので、この制度とは少し距離を置いて見直してみたい。

 そもそも独立役員が社外監査役でも良いのなら、会社法上の監査役会設置会社は、監査役の半数以上を社外監査役にしなければならないので、社外監査役数では問題ない。しかし、敢えて取引所規則で独立役員とするのは、現状の社外監査役・社外取締役の社外という規定では不十分と取引所が考えるからだ。
何が不十分かというと、“一般株主と利益相反が生じる恐れのない”ということが、現在の会社法上の社外取締役や社外監査役の規定では問題あるということのようだ。
会社法上の社外取締役・社外監査役の定義は、会社法第2条15号と16号に記されていて、現在もしくは過去において会社や子会社で働いていないものとなっているが、親会社・主要な取引先・主要なローンの出し手、またはグループ内の関連会社などからは制限していない。
一方、東証の独立役員定義は、親会社や主要取引先など企業との関係が深いは独立役員として望ましくないが、敢えて指名する場合は、その理由をコーポレート・ガバナンス報告書で公表するということになっている。ちなみに3月まで、東証に独立役員(75%が社外監査役、25%が社外取締役)の届出を行った3595名のうち、主要な取引先関係者は114名となっている。

 何故、上場企業では、通常の会社の業務や取引とは関係が深くなく、経営者から独立した立場の役員が求められるのだろうか。それは、上場企業の経営者と一般株主との間の利害の相違が顕在化する局面が、近年目立ってきたことから、コーポレート・ガバナンス強化の一環として、独立取締役の導入についての検討が経済産業省の研究会でも、金融庁の金融審議会スタディグループにおいても、なされており、取引所ルールでの導入検討という方向性が、出されていた。
事例としてよく上げられるのは以下の3つである。
・MBOの意思決定プロセスにおける経営者の恣意性の排除の為の工夫
・買収防衛策での内部取締役の保身行為の監視
・第三者割当増資で、25%以上の希薄化や支配権の移動する場合の増資の必要性・妥当性判断
これらの決定の際、一般株主の利益に配慮した公平で公正な決定がなされる仕組みとして、企業経営者からの独立性の高い取締役=独立取締役(独立役員ではない)の導入議論がされていた。

 今回の東証での独立役員制度導入に当たり、東証上場制度整備懇談会では、3月31日“独立役員に期待される役割”を公表している。独立役員は、一般株主の利益保護を踏まえた行動をとることが期待されているが、ポイントとしては以下の事を上げている。
○上場会社の業務執行に係る決定等が、その会社の事業目的の遂行及び企業価値の向上という視点からみて合理的であるか。特に一般株主の利益に対する配慮が十分に行われているか。
○業務執行に係る決定等を独立役員として適切に評価するために必要な情報は、あらかじめ十分に提供されているか。
○業務執行に係る決定等の目的、内容及び企業価値に与える影響が、正確、適切の開示されるよう工夫されているか。
以上の独立役員制度の取引所での導入に当たり、投資家からみて実効性のある取組みを取引所には期待したい。これが取引所ルールなら、開示により企業行動を促すだけではなく、対応しない場合のペナルティも必要だろう。また、上記の機能を社外取締役も若しくは社外監査役どちらかが果たせというのは、制度としては無理があるのではないだろうか。(上場会社の精神規定に終わりかねない)

 やはり、出来れば独立役員ではなく、独立取締役導入規定を、取引所ルールで整備すべきではないだろうか。でなければ公開会社法を待つことになるが、組合出身の役員が独立役員でないことは、投資家は知っているし、市場はその様な議論を望んでもいない。

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地域金融機関と資本市場の接点
 上記のテーマだと、この業界の人たちは地銀などの市場誘導業務(地元企業のIPOへの協力)などを思い浮かべる。しかし、第一生命の上場があったものの、肝心の新興市場に於けるIPO企業数の回復が望めない現状だと、地域金融機関の市場誘導業務は拡大が難しい。それよりも、ひろい意味での資本市場機能を使って、顧客である地元企業や産業のニーズに応えることが地域金融機関にも求められている。
地元でのニーズ:新事業支援、事業再生、事業承継、地域再生などに対して、求められる機能:ファンド、M&A、ビジネスマッチング、市場型金融への取組みなどが上げられる。これらの取組みは、地銀・信金などの地域金融機関における地域密着型金融として、金融庁から年1回紹介されていて、平成21年度分は、4月2日に「地域密着型金融に関する取組み事例集」として公表されている。全部で130事例もあるが、やはり支援・コンサルティング強化・ビジネスマッチングといった内容が多い。多くの地域金融機関が注力するビジネスマッチングも、顧客への情報提供や営業支援的な内容から、企業間の提携に発展していく可能性もあり、M&Aビジネス強化への導入部として期待されている。また、事業再生ファンドや地元資金を活用してのファンド投資などのファンド機能を活用したものも出始めている。いくつかの資本市場機能に関係した事例を紹介すると、以下のようなものがある。

【地元応援ファンド】
西京銀行の取組みで、①山口県関連上場企業への投資を行う②信託報酬の一部を県内の研究機関に寄付をするという2つの方法での地元応援スキームで、平成18年12月よりファンドを募集。これまで、山口県の産業振興・人材育成に寄与する事業として5つの地元大学等に寄付を行っている。ちなみにファンド募集の手数料は、山口県を応援する目的から不要となっている。(ノーロード)
【金融教育支援】
広島銀行の取組みで、これまで金融に関する情報に接する機会が少なかったと思われる層に金融知識の普及を図り、地域の活性化につなげる目的で以下のセミナーを実施。
・“ライフプランセミナー”(40~60歳台対象)退職後の生活設計に加え、健康・美術などの情報も盛り込んだ。
・“女性の為の金融講座” (30~40歳台女性対象)生活設計に加え、教育や家計のやり繰りなどを盛り込んだ。
・小学生5、6年生対象に、来行するキッズマネースクール、支店長が訪問する正しいお金の使い方教室を実施。
【M&A専門人材育成】
鳥取銀行の取組みで、行員をM&Aの専門仲介業者へ研修派遣し、M&A業務に必要な企業評価手法及び実践的交渉術等を習得、実際の案件に携わりながらM&Aの現場経験を積んだ。研修後、派遣行員による行内のM&A研修会実施や、顧客企業へのM&Aセミナーを通して、M&Aの提案・実績等も増加させた。
【ECO私募債の推進】
西尾信金の取組みで、ISO14001エコアクション21等認証企業が環境配慮型設備投資を行う債の資金として、保証料等を通常よりも優遇したECO私募債を、信金自らが引き受けた。実際に、太陽光パネルを設置した工場建設の資金として使われている。
【ファンドによる事業承継支援】
西日本シティ銀行の取組みとして紹介されているが、地元ホテルの存続の為、九州の中小企業の事業継続支援を目的に設立された“九州事業継続ブリッジファンド”の出資を軸に、地元ファンド・九州の各地銀・政府系金融機関が連携し、買収スキームを成立させた事案。参加した九州の各地銀にはLBOファイナンスのノウハウ習得に役だったと言われている。
 これらの取組みは、通常の資本市場的視点で捉えるべきではないだろう。しかし、資本市場の裾野拡大には必要な取組みとされ、今後はその為に重要な効果を上げていくと期待されている。

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公募投信という考え方
 公募投信とは、投信協会の定義によると、多数の投資家に取得させることを目的とした投資信託ということになっている。決して、誰でも買えるということではない。しかし、普通の感覚では、公募とは公に募集することで、公けとは投資家なら誰でもと考える方が一般的だ。
 何故、公募投信が誰でも買えないのだろうか。例えば、Aという公募のファンドがあって、そのファンドを運用する会社Bによって、Aファンドを募集したり取り扱ってもいい証券会社や金融機関を決めており、それ以外ではAファンドは取り扱えない。このことを投信の指定証券(販売)会社制度という。
何故この様な制度が出来たかというと、B運用会社の販売方針に沿って販売してもらう為には、B社自らが販売者を指定するというのが運用会社側の答えで、その事自体は理解できる。(指定証券会社制度は、販売会社と運用会社の系列関係を示すものではない。)

 しかし、運用会社が求める販売会社サイドの販売方針とは何だろう。

もっとも重要な問題は、Aファンドの内容をきっちと投資家に説明して販売することだが、証券会社(金融機関)の販売員は、金融商品販売のプロであっても運用のプロではないので、ファンド内容の説明は目論見書に限られる。確かに投信の説明は難しい。また、投資家には目論見書に書かれた内容でしか説明できない。
そうすると、運用会社が販売会社を選択する一の理由は、投信の目論見書内容をきちっと投資家に説明出来る販売員がいる会社ということになるのだろうか。
目論見書は運用会社自ら作成するものだが、その内容の理解・説明に関して、ある水準以上の能力が必要だという事ではないだろう。そもそも、目論見書は投資家が理解できる範囲で書かれるべきものなので、理解に特別な能力を求めてはならない。また、4月からは投信目論見書の簡素化も推進され、投資家に理解し易く投信間で比較も可能なように開示省令が改正されている。(運用会社による実際の対応は、7月からのようだ。)

 では販売会社を選別する理由は、ちゃんと売る事が出来る能力が必要で、その基準をクリアしなければダメということだろうか。投信を含め金融商品を一般の投資家に販売する際、第一種金融商品取引業者として金融商品取引法上の行為規制がかかるが、投信は説明が難しいので、何かそれ以上の制約が必要なのだろうか。本当にそうであれば、公募ではなく私募にするべきとも思うのだが。

 残った理由として考えられるのは、運用会社側の販売戦略の問題で、Cという証券会社やDという金融機関の販売専用のファンドを作って、CやDに対する運用会社としての商品供給を通じた営業支援したということなら企業としての意味はある。しかし、これは投資家には関係ないことだ。

 何故、この様な公募投信の事を長々書いたかというと、公募投信もそろそろ公募である事の意味を考えて、投信販売の改革に繋げる時期に差し掛かっているのではないか、と考えるからだ。
公募投信は、この2月末で3634銘柄あり、残高金額も78.5兆円に達していて順調に増加が続きている。これが、上記の様な運用会社サイドの指定証券会社制度を続ければ、投資家の利便性を著しく損なっていく可能性がある。つまり、投資したい投信を買う為に、自ら口座を持つ証券会社や販売会社が、そのファンドの指定証券会社でなければ、新たな口座開設を求められる。若しくは、証券会社に保有するファンドを別の証券会社に移管することが出来なく、解約せざるお得ない。この様な不便さは公募投信として解決していくべきではないだろうか。この業界は、もともと商品供給側の論理が強いが、そろそろ一般化した投信という商品から、投資家の利便性向上を目指した動きが強まっても良い。

 その兆しはあって、投信とほぼ同内容のETFが増加している。ETFなら株式と同様にどの証券会社でも基本的に購入することは出来るし、ペーパレスになっているので、他の証券会社への移管も容易だ。東証に上場されるETFは、まだ86銘柄だが、海外取引所に上場されるものは約2000銘柄あり、新興国にセクター別で投資するものもある。この海外ETFは、基本的に外国株の取次ぎと同様の仕組みとなる。最近、投信全般の情報は、情報ベンダーなどを通じて充実してきたが、売れ筋や投資家が選択したファンドと同様の投資効果があるETFの充実(投信の代替投資効果)は、現状の公募投信の仕組みを変えていくかも知れない。

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上場会社のファイナンスに係るいくつかの問題
 上場会社である以上、資本市場の機能を使ってファイナンスするというのは当然のことである。しかし、その使い方が悪いと、株主や投資家、そして市場機能にもダメージを与える。エクイティ・ファイナンス(増資)は市場に新たに株式を供給するわけだから、単純に考えると市場の需給関係悪化要因で、株主にとっては好ましくない。しかし、ファイアンスで調達資金の使い道で、企業の成長戦略(場合によっては生き残り戦略)が示されることで、企業の成長期待が高まる。だから、上場会社のファイナンスが成り立つ。
つまり、市場の需給関係悪化に対する株主への配慮と、明確な成長戦略(資金使途)を市場に示すことが為されないエクイティ・ファイナンスはない。

株主への配慮に対する各国の法規制は以下の様になっている。
【日本】
会社法:授権資本(発行済株式数の4倍以内)の枠内であれは、取締役会決議
取引所ルール:特に規定はない。
(市場仲介者である証券会社の自主規制ルールとしては、公募増資の引受規則・MSCBや第3者割当増資の取扱いルール等あるが、企業の行為を規制するものではない。)
【イギリス】
会社法:株主からの授権の範囲内で取締役会決議。ただし、原則的には株主に優先的引受権がある。
取引所ルール:原則として株主に優先的引受権を付与しなければならない。例外として、発行済株数の5%未満なら取引所承認。また特定の事案で、第三者に割り当てる場合は5%以下のディスカウントまで。
【米国】
会社法:授権資本の枠内であれは、取締役会決議
取引所ルール:発行済株数5%以上の関係当事者への割り当て・原則20%以上の発行・支配株主が変わる場合の増資に対しては、株主総会の承認が必要
以上から分かるのは、日本の場合、エクイティ・ファイナンスでの株主に対する配慮が少し弱いように思える。増資の方法としては、公募・第三者割当・株主割当とあるが、それぞれの場合の現状の問題点を見ていきたい。

○公募:明確な成長戦略を市場に示すという意味では、良い方法なのだろう。しかし、公募といっても市場参加者なら誰でも購入できるかというと、そうでないところに問題がある。公募を引き受ける引受証券会社に口座がないと購入できないし、口座があっても買えるとは限らない(一部を抽選する場合もある)。その発行会社の既存株主であっても同様で、株主の立場からみると、公募前後で大きく株価が下落する場合が多く、また新株の発行では、市場価格(つまり株主の保有価値)より数%ディスカウントされて販売される。この分は既存株主の不利益だが、更に新株の販売において販売手数料分数%がディスカウントされて発行会社の新しい資本となる。この部分も新旧株主の資本の持分が減っているので不利益だ。
つまり、公募といっても一部引受証券の顧客だけの募集で終わり、ひろく市場参加者から増資を募る訳ではないことと、増資のコスト負担は新旧株主が負っている。(特に既存株主の実質的負担コストが大きい)

○第三者割当:見せかけ増資や相場操縦行為・インサイダー取引による鞘抜きなどの犯罪行為は言語道断だが、その監視を行うための市場機能は必要で、コーポレート・ガバナンス強化で取引所がある程度のチェック機能を果たし始めている。しかし、特定の第三者が纏めて増資に応じてくれるので10%までのディスカウントが認められているという事で良いのだろうか。増資は商品の大量販売とは異なるし、そもそも増資に応じる者は、企業の成長や再生を見込んでのことなので、目先で数%のディスカウントに拘ることはない。又、発行会社とは一定期間保有の契約を結び、その事も公表していくのが、既存株主への配慮になる。

○株主割当:既存株主に最も配慮された方法だが、日本では使い勝手が悪い。期間や手続きの煩雑さは、株券や新株予約権もペーパレスになったので解消されていくと思うが、現状はまだ改善途中といった感が強い。日本でもライツ・イシューが始まったが、そのライツ=新株予約権も4月から上場されているのに、取扱う証券会社は限られていて、現状は多分3分の1にも至らないだろう。また、その市場価格情報さえ株主や投資家が取得し難いような状況だ。つまり、ライツ・イシューの証券業界のインフラ整備が為されていない。
この事は、発行者や取引所の責任ではなく、この業界の問題だ。

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4月から始まるIFRSの影響-その2
前日に続き、IFRSの今後の影響を資本市場的に見ていきたい。IFRSは原則主義と言われるが、その原則のコアになるのが、“純資産アプローチ”と言われるもので、企業の期首と期末の純資産の増減を比較し、その増減をもって総じて利益(包括利益)とする。現在の日本基準の売上げからコストを差し引いて利益とする方法(収益費用アプローチ)とは考え方が大きく異なってくる。純資産の増減を正確に知る為には、其々の資産を正確に測定する必要があるので、IFRSは時価会計全面適用のイメージが強い。しかし資産を正確に測定する方法は、時価(IFRSでは公正価値という)だけとは限らない。その資産の内容によっては、時価だけ、時価か経営者の決めた方法のどちらかの選択、経営者の決めた方法での資産価値算定に、分かれる。この会社資産の期首と期末の変化を会社の利益として見るのが、包括利益という考え方だ。

この包括利益(つまり期中に資産が増減した部分)には、事業で上げた利益(純利益)もあれば、事業に直接関係ない資産の増減(その他包括利益)もある。現行の日本基準で、その他包括利益に組み入れられるのは
・その他有価証券評価差額金
・繰延ヘッジ損益
・為替換算調整勘定
・土地再評価差額金
などがある。新たに時価評価して計上するIFRSへの共通化項目として、
・過去勤務費用(退職給付会計など)
・再評価モデルを選択した場合の固定資産の再評価剰余金
なども検討される。業績は純利益でみるが、業績には関係ないが将来の純利益に影響を与える純資産の変動要因はその他包括利益でみて、総じて包括利益とする。

この包括利益の考え方が日本でも取り入れられる。2009年12月25日に企業会計基準委員会(ASBJ)より公開草案“包括利益の表示に関する会計基準(案)”が示されていて、6月までに最終案を固め2010年度第2四半期から基準化を目指すとしている。((案)は連結及び単体でも包括利益表示の導入を2011年3月に目指すとしているが、IFRSは日本では連結での任意適用が先行するので、このこととの整合性を調整中)
この包括利益導入は、保有株式売却での益出しなど経営者の恣意性を排除する為と考えられている。
例えば、現状の持合い株式は、その他有価証券で分類され、期末の評価損益は評価差額金として純資産に直接計上されP/L(損益計算書)には直接反映しない。経営者がこの評価損益をP/Lに反映したと思えは、売却し特別利益のその他有価証券売却益になり、当期純利益に反映する。所謂、益出しである。
包括利益になるというと、P/Lの替わりに包括利益計算書になり、含み益はこの包括利益の中で、その他の包括利益(その他有価証券時価変動分)として利益計上され、当期純利益とは区分される。実際売却した場合どうなるかというと、包括利益計算書において、その他包括利益(その他有価証券時価変動分)がマイナスされ、特別利益でその他有価証券売却益が当期純利益に反映される。このことをリサイクリングというが、価格の変動がなければ、包括利益全体は変わらない。
つまり、投資家も包括利益で会社の利益を見るようになれば、少なくとも投資家にとっての益出し行為そのものの意味はなくなる。

[IFRSとの共通化で、2010年4月以降から適用される分]
・棚卸資産の後入先出法廃止(市場の変動を財務に反映させる為)、なおこれにより増税になる企業に対して、7年間で均等にならす経過措置
・資産除去債務の計上・費用化(将来の建物・施設の撤去費用を反映させる為)
・関連会社も含めて会計方針の統一、企業結合時の持分プーリング法の廃止等などで、M&A会計の明確化が進む。
・セグメント情報開示で、セグメント決定方法が内部数値にもとづくことが求められ、経営者の視点での開示が進む。
※この業界にもっとも関心の高い金融商品会計に関しては、IFRS自体も現在大幅な見直し中であるが、米国会計制度との共通化問題もあって、2011年6月までには確定しなければならない。時価(公正価値)の測定方法やローンなどの貸倒引当金計上問題、ヘッジ会計の動向など最終案提示を見極めた上で、日本の金融商品会計も定まる。

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