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2010/05
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証券税制改革の先に
 今月末から、金融庁において金融税制研究会が開催されるが、平成23年度税制改正要望(例年は金融庁関係分は7~8月公表)に向けて一ヶ月程度で金融税制のあり方について取り纏める予定だ。証券税制については、キャピタルゲインの軽減税率(10%)の適用期限の終了(平成23年末)や日本版ISAの導入(平成24年以降)が予定されているほか、平成22年度税制改正大綱において、「金融商品間の損益通算の範囲の拡充に向け、平成23年度税制改正において、公社債の利子及び譲渡所得に対する課税方式を申告分離課税とする方向で見直すことを検討」することが記載されていることが決まっている。この事から、
・軽減税率
・債券税制
・投資信託税制
・損失の繰越控除 
・配当の二重課税調整 等 
金融所得一体課税に向けての取組みが研究会で議論される。

 ここで触れておきたいのは、証券業界はそろそろキャピタルゲインの軽減税率継続要望(昨年の証券業協会より出されていた)を続けることから脱却し、金融所得一体課税に向けての制度整備と業界での対応を準備するべきではないかということだ。今までは市況環境が悪化すると、業界はこの要望を繰り返していた感が否めないが、本当に軽減税率維持が市況に影響しているか、業界関係者でも疑問に感じているのではないだろうか。勿論、税率は低い方が良いが、しかし、債券や預金、FX取引やその他のデリバティブなどの他の金融商品と課税が一体化した方が、貯蓄から投資への流れは促進され、結果として証券業界の業容も拡大していく可能性がある。

 またキャピタルゲインの軽減税率が廃止される前提で、日本版ISAの制度整備や確定拠出年金(DC)の拡大されることは、業界に新しいビジネスの可能性をもたらす。少額(?)ではあるが毎月継続して投資され、それが非課税で長期間運用される。今までの証券会社なら、不得手なビジネスモデルかも知れないが、金融商品販売中心の業容から、個人の金融資産形成に係る資産形成ビジネスも含んだ資産運用業へ変貌する機会として、業界は前向きに取組むべきだ。その前提での税制改正要望であって欲しい。

なお、現行の証券税制については、以下の様な概要となっている。

【譲渡益課税について】
平成13年11月の臨時国会において、金融商品間で均一の税率(20%:所得税15%、住民税5%)を課す方向から、証券税制は申告分離課税に一本化されたが、時限的に軽減税率10%(所得税7%、住民税3%)が続いている。
〈平成15年1月1日~平成23年12月31日まで〉10%の申告分離
(※平成20年度税制改革において、平成21年より原則の20%税率に戻り、特例措置として500万以下の譲渡益は10%とされていたが、平成21年度税制改革で軽減税制10%の平成23年末までの延長が決定された。)
〈平成24年1月1日~〉20%申告分離に戻る。

【対象となる有価証券=上場株式等】
上場株式・上場新株予約権証券・上場新株予約権付社債・カントリーファンド・日銀出資証券・外国市場で売買されている株式(ADRや会社型投信を含む)や新株予約権付社債・上場優先出資証券・公募株式投信の受益証券(ETFを含む)・買取請求の上場会社株式の単元未満株・J-REIT・上場ベンチャーファンド

【配当課税】
平成15年度税制改正により、上場株式等の配当・公募株式投信の収益分配金については、申告不要制度が導入され、総合課税(配当控除の適用)か源泉徴収を選択することが可能となっている。
〈平成16年1月1日~平成23年12月31日まで〉10%の源泉徴収
(※平成20年度税制改革において、平成21年より原則の20%税率に戻り、特例措置として100万以下の配当は10%とされていたが、平成21年度税制改革で軽減税制10%の平成23年末までの延長が決定された。)
〈平成24年1月1日~〉20%源泉徴収または申告分離に戻る。

【損益通算】
 平成20年度の税制改正により、それまでは不可であった上場株式等の譲渡損と配当との損益通算の仕組みを導入。平成21年は、確定申告による対応となるが、平成22年からは特定口座の源泉徴収口座内において対応を可能にする。金融所得一体課税へ一歩近づいた措置。
 なお、平成17年1月からスタートした上場株式等の譲渡損失の繰越控除制度(恒久措置)は、年間で発生した譲渡損を、翌年から3年間繰り越して、譲渡益から控除できるが、この配当との損益通算制度により、3年間の配当も控除対象となっている。

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インターネット取引模様
 デジタルデバイドという言葉は、もう死語になりつつあるのかもしれない。あまり変わり映えのしない日本証券業協会の“インターネット取引に関する調査”を改めて眺めながら、そう感じた。(調査ご担当の方には申し訳ありませんが、半年1度の調査なので、最近は変化していないと言う意味です。)
 同調査によると、この3月末のインターネット取引口座数は1574万口座(うち残高ありは、1101万口座)というが、口座の半数は50才代以上で特に70才以上は全体の11%174万口座ある。この数字は、30才未満の倍の数値になる。インターネットでの株式の取引状況をみると、売買代金ベースでは60才代が全体の27%を占め最も多いし、投信の募集状況をみると60才代が32%・70才以上が20%と合計すると半数以上になっている。(但し、ネットでの投信取引高は、昨年度で6718億円と投信販売全体の中では少ない。)かつてはネットを使って何か新しい取組みを行おうとした時、デジタルデバイド対策を直ぐ求められたが、金融商品に関して言うとインターネット利用は当たり前の事になっている。
 インターネットでの取引は、昨年度で株式売買全体の27.5%を占め、その前の年からは5%程度増加しているが、個人の株式取引はその重心が完全にネット専業証券に移っている。昨年度の個人株式委託売買代金ベース(154兆円)では、ネット専業5社によるシェアが69.4%(106兆円)、個人信用取引においては78%に達している。また、松井証券の推計によると、この個人の売買の45%(70兆円)がデイトレーダーだという。ちなみに、個人の株式保有額(昨年末で64兆円)のストックベースでは、ネット専業証券は各社3割程度残高を増加させていて、他証券からの株式資産の移動が推測される。

 ネット専業各社の昨年度概況は、各社決算説明資料から以下の様になっている。
≪営業収益≫(カッコ内は営業利益と預かり資産に対する営業収益率)
SBI=456億円(124億円、1%程度)
松井=243億円(113億円、1.6%程度)
楽天=230億円(61億円、1.6%弱)
マネックス=224億円(44億円、1%弱)
カブドットコム=150億円(49億円。1.2%程度)
※SBIとマネックスの収益増加要因としては、FX取引増加要因が大きい
≪平均委託手数料率≫※SBIはインターネット部門のみ(カッコ内は前年度)
SBI=3.5べーシス(3.1べーシス)
松井=12.4ーシス(12.4べーシス)
楽天=5.3べーシス(5.31べーシス)
マネックス=―――(10.9べーシス)
カブドットコム=9.3べーシス(8.9べーシス)
※手数料引下げ競争は、終息か?
≪システム関連コストが営業収益に占める割合≫
SBI=32%
松井=24%
楽天=35%
マネックス=26%
カブドットコム=22%
※ネット専業証券にとってシステム投資は生命線だが、上記比率が低い方が今後のシステム投資の糊代があるとも言える。なお比率の高いSBI、楽天、マネックスはシステムに関する行政処分を受けている。

 各社の決算説明資料から、筆者が感じた各社の戦略を1行で表すなら以下の様にいえるのではないか。
(必ずしも実態を現わしている訳ではない。)
SBI=インターネット活用して金融インフラ基盤整備による顧客の囲い込み
松井=顧客収益重視
楽天=口座数増加戦略とグループシナジーの活用強化
マネックス=費用削減重視によるコストパフォーマンスの改善、投資教育への注力
カブドットコム=顧客収支改善重視、仲介業を通した銀行とネット証券の協働

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ギャップを埋める投資教育を
 金融教育に関して過去何度か取り上げたが、金融商品取引法によって認定協会・公益協会・認定団体は、金融知識の普及と啓発が義務化されている。取引所は東証アカデミーで、日本証券業協会は証券教育広報センターで、其々投資教育をとうして金融教育に尽力している。またNPO団体や大手金融機関(含む大手証券)などもCSRの一環として投資教育に取り組んでいる。但し、一般に目立つ投資教育は、学校での金融教育に対する支援や、企業のIR活動支援的なものだ。学校での投資教育は、将来の投資家層を育てる目的で社会的に意義のあることだろうが、今現在投資教育が必要な人達へ取組みはどうなっているのだろうか。最近感じた2つのギャップから、その必要性について考えてみたい。

 一つ目は、今本当に必要としている人達に、投資教育が提供されているのかということだ。アドバイザーやコンサルタントが足繁く通う富裕層ではなく、ネットを駆使する個人投資家でもないが、株式や投信を保有したり若しくは保有しようと検討している人達。但し、投資経験や知識が余りないので、市場の前で立ち止まっていたり、対応に悩み始めている。例えば、持株会やESOPでの自社株保有、昨日紹介した確定拠出年金制度(DC)の参加者などがそうだが、今回の金融危機の様に市場が急変した時、どの様に対応してすべきか参考となるような投資教育があっても良いのではないだろうか。彼らは、普段は証券会社などの投資アドバイザーと接点がないが、会社の制度の中で投資資産を保有している。市場の急変の様な時に、自らが投資家であることが強く意識されるが、その機会に提供する投資教育は彼らを真の投資家に育てる良いチャンスではないだろうか。この様な投資教育を、持株会やDCの運営管理機関に頼っても、現状だと機能的に無理がありそうだ。学校教育で将来の投資家を育てることも大事だが、実際の投資現場である企業内の活動を支援する協会等の投資教育活動が望まれる。

 二つ目は、この業界の拠り所である市場というものに関する世間一般(特にマスコミ)とのギャップだ。最近は、ドイツのユーロ圏国債CDSやドイツ金融株への空売り規制措置もあって、投機的売買に対する風当たりが厳しい。財政削減措置に対するギリシャ国民のデモと、ギリシャ国債をCDSで空売りするヘッジファンドなど投機的動きをダブらせ、あたかも投機的売買がギリシャ国民の困窮の原因の様なニュースキャスターのコメントが目立っている。ヘッジファンドを含め、投機的売買に対する風当たりが強いが、市場に携わるものとしては非常に残念に思う。
確かに、今回の金融危機が実体経済に大きな影響を及ぼしたので、世間の金融取引に対する見方は厳しいだろうが、金融危機の原因は、投機的売買ではなく、欧米金融機関の信用レバレッジのバブルというのが一般的な見方だ。逆に市場にとって、投機は必要な機能で、画一的な投資ニーズだけ集めても市場は成り立たない。健全な市場では、売買ニーズの多様性があることが重要で、その中で投機の必要性について、この業界は、マスコミを含めた世間に、キチンと伝えていく必要がある。マスコミへの投資教育というと、キャスターの方が怒るだろうが、業界として投機の必要性をアピールしてこそ、市場の機能がキチンと認識される。

 ちなみに投機とは、広辞苑によると以下の様に説明されている。
○禅宗で、師家シケと弟子のはたらき(機)が一つになること。悟りを開くこと。
○(speculation)損失の危険を冒しながら大きな利益をねらってする行為。やま。
○ 市価の変動を予想して、その差益を得るために行う売買取引。
市場でいう投機とは、この3つ全てを含めた意味と解すると、その機能も理解できるのではないか。

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DC(確定拠出年金制度)の悩み
 証券や金融機関などの業界からみて、個人口座に毎月一定金額が積み立てられ、それが投信などの金融商品に投資され、かつ非課税で何十年も運用することが可能で、更に企業毎纏まってその口座を獲得する事が出来る。確定拠出年金制度は、この様に金融機関にとって期待の高いものであったが、既に制度が導入されて8年を経過し、この2月末で350万人(企業型339万人、個人型11万人)が加入している。また、今国会には年金改善法案が提出されていて、この確定拠出型年金に関しても以下の改革が行われる。
・企業の拠出限度額の枠内(2万5500円、他の企業年金がない場合5万1000円)で、 従業員拠出(マッチング拠出)を可能とし所得控除の対象とする。
・ 事業主による従業員に対する継続的投資教育の実施義務を明文化する。
・ 加入資格年齢の上限を引上げる。(60歳→65歳)【以上3つは、平成24年4月1日から】
・ 住基ネットからの情報取得を可能にする。(他の企業年金制度も同様。)【平成23年4月1日まで整備】
年金制度そのもののあり方や、この数字が多いか少ないかという議論とは別に、現在、この確定拠出年金制度に参加する者は、其々の立場で悩みを抱えている。

≪導入した企業の悩み≫
 企業型の確定拠出年金制度を導入した企業数は、この3月末で12902社と更生労働省の公表に依るが、制度導入企業に対する調査では、制度の運営・管理の状況に関して約55%が不満をもっている。また、その不満の要因となる制度運営上の課題や悩みにつき、次の項目は半数以上の企業が上げている。((社)企業福祉・共済総合研究所による企業型確定拠出年金の制度運営に関する調査より)
・社員間で制度や資産運用に対する理解・関心のバラツキが大きい
・社員の確定拠出年金制度に対する理解・関心が低い
・投資、資産運用に対する理解・関心が低い

≪制度加入者の悩み≫
 制度加入者の平均的な資産運用配分は、57%が元本確保型商品、43%が投信等とする企業年金連合会の調査もあるが、加入者側の情報提供に対する不満も多くあるようだ。別の調査によると、提供される商品や制度などの説明資料や説明会対応に関する不満、運用アドバイスに関する不満など、利用者側の制度説明や投資情報利用に関する不満は大きいが、同様の項目を制度提供者の企業側が、利用者の理解・関心不足としていることから、従業員側・企業側の認識ギャップは大きい。
 また加入者側に十分な資産運用に関する関心や理解があったとしても、この制度の実際の実務を行う運営管理機関に対して、以下の様な不満がある。
・運用商品メンテナンス (少なくとも、投信の品揃えは殆どが不十分で限定され、現状では投資ニーズに合致し難い)
・商品乗換えの不便 (商品間の売却・購入が時差なく執行されておらず、またその説明情報も不十分)
・運用商品に関する情報不足(投信の目論見書や運用報告書の整備が不十分、パフォーマンス情報を偏重し、その解説が不十分)
・運用管理機関機能の機能不足 (コールセンターのキャパ不足や、制度や商品説明者の不足、ネット機能の勝手の悪さ)

≪制度のインフラ提供者の悩み≫
 350万人の制度加入者の口座を管理する運営管理機関は197社あるが、相当部分が年金資産を運営する金融機関と重なっている。この運営管理機関のうち6社ほどが、レコードキーパーとして他の運営管理機関の実務作業を殆ど代行して行っている。先に制度加入者の悩みの欄で上げた運用管理機関への不満は、このレコードキーパー機能の不足によるものだ。レコードキーパーは、金融機関間の合弁で設立されているが、民間企業なので加入者の利便性を高めるためのシステム投資に現状では限界があるのかもしれない。しかし、ネット証券での何百という投信の品揃えがされている現状を思うと、せめて金融商品の品揃えへの努力は悩まないで実施して欲しい。

 以上、確定拠出年金制度への期待とは裏腹に、各制度参加者の悩みは尽きないが、加入者が一ケタ増えれば問題は解消するかも知れない。従業員への制度・投資教育を率先して行う金融機関は増加し、加入者への情報もインターネットを利用して多彩なサービスが提供され、そして運用管理機関も収益性のあるビジネスに変貌していく。それは、年金制度改革に期待するべきことなのだろうか。

テーマ : 証券・金融関連業務
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コーポレート・ガバナンスは今何が問題か
 コーポレート・ガバナンスは、会社は誰のものかといった議論から始まり、その目的が企業価値向上を目指すということで纏まっていると思うが、そのガバナンス強化を具体的にどう行っていくべきか、議論は続いている。折しもこの4月以降、東証の独立役員制度(独立性の強い社外取締役若しくは社外監査役の1名以上の任命)は始まっているし、役員の報酬開示強化や株主総会での議決権行使状況の開示制度もスタートする。一方、この4月下旬より法制審議会で、“会社が社会的,経済的に重要な役割を果たしていることに照らして会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点から,企業統治の在り方や親子会社に関する規律等を見直す必要がある”として会社法の見直しに関して、公開会社法制定を視野に入れながらの検討が始まっている。
 この動きを受けて、金融庁でも関係者間の意見交換を目的に「コーポレート・ガバナンス連絡会議」が開催され、コーポレート・ガバナンスを巡る問題について議論されている。幅広い関係者の意見表明の場になっているので、その主な内容を筆者の判断で項目別に仕分けさせていただいた。

【コーポレート・ガバナンス強化の必要性】
・大規模や第三者割当・MBO・買収防衛策など既存株主と利益相反を起こす可能性のある経営判断への監視機能強化
・国際的基準からみて、日本のガバナンス強化への遅れが、日本企業の企業価値向上への障害要因となっている可能性
・企業と株式市場のパフォーマンスを向上させるためには、企業と市場のガバナンス改革が不可欠。

【コーポレート・ガバナンス強化の法規制】
・内部統制や四半期開示など、開示制度の整備が短期間に進展していて、企業規模によっては相当企業側の負担が重い。
・会社法改正はミニマム・スタンダードの要請に止め、取引所ルールの様なソフトローの充実で対応すべき。
・第三者割当やMBOなど外部の識者による特別委員会の判断を参考にする事例が増えているが、法制化すべき。

【独立取締役】
・監査役機能の強化という考えもあるようだが、海外からみて分かり難い。
・独立した取締役による経営監視機能は国際的にも求められている。
・独立取締役の任期が1年だと、安定性が確保されず、その機能の実効性を担保するため任期を長くすべき。

【従業員代表の経営参加】
・制度化しているドイツにおいては当初の目的からかけ離れてきているとの指摘もある。現状をよく検証すべき。

【受託者責任と利益相反】
・年金基金の議決権行使に係る責任について明確化する必要がある。
・機関投資家は、議決権行使について受託者責任を果たす必要があるが、自らのビジネスとの利益相反問題もある。保険会社の保険商品販売の重視、メインバンクの貸し手としての立場、投資運用会社の親金融機関への配慮など、受益者としての利益相反問題に対して、金融庁が適切に対応していく必要がある。

 以上、会議の議事要旨からコーポレート・ガバナンス強化に関係があると思われる部分を抜粋したが、会議参加者の中には、コーポレート・ガバナンス強化は韓国の方が積極的に取組んでいるので、日本としてはガバナンス面でもアジアのリーダーを目指すべきという意見もあった。

 市場の立場でいうと、直接企業行動を制限することは出来ないので、開示=ディスクロージャー充実で企業にガバナンス強化を求めていくのだが、企業側からは開示負担が年々重くなっている負担感とともに、投資家が求める業績予想開示への疑義も示されていた。この事に市場関係者は留意するとともに、機関投資家側の利益相反問題への対応を示すことが必要ではないかと感じた。

面白みはないが、圧倒的なリテール力
 当然野村のことだが、本稿は投資判断を提供するものではないので、詳細な分析は証券業界のアナリストを頼りたい。ここでは開示されている決算説明資料を基に、現場でのリテール戦略を考えてみたいと思うが、先に競合する大手証券A社を取り上げた。(5月10日“証券リテールの現場で”)このA社が、リテール現場で最も販売していたものは外債であったが、野村の場合はやはり投信の販売量が半数近く占める。この野村の投信販売力が圧倒的なのだ。
 野村のリテール現場での販売力は、昨年度月間ベースで平均1.13兆円の金融商品を販売しており、そのうち5000億円(月間)近くが投信だ。この投信販売額は、野村の資料によると国内の新規設定投信募集額シェアの50%を占め、他社を寄せ付けない。(投信販売量2位のB社は15%、A社9%、C社6%、その他は20%)

 標題のように面白みのないといったのは、リテール戦略についてだが、これだけ圧倒的なシェアを確保してしまっては、取るべき戦略の自ずと限られてくるのだろう。今期のリテール部門での施策は、富裕層相手のコンサルディングでは、
・継続したセグメントの徹底と本社サポート機能との協働による解決策の提供
・お客様ニーズの把握とビジネスを創造・実行できる人材育成と体制整備
といった、ソリューション営業とそれを支える態勢整備。富裕層以外の一般投資家への対応は、コールセンターとネット活用を強化して、
・非対面のお客様のコンサルティング・ニーズ発掘と営業店の連携強化
・ネット機能拡充による顧客拡大と一層のコンサルティング営業の充実
を進める。そして、当然のコストカットについても、
・IT基盤のより効率性を目指した体制整備
・バック業務の集約化に依る「コスト削減
を上げている。読んでいただいた方には恐縮だが、この様に特に新鮮味もなく、このまま他社のリテール戦略としても十分通じる。

しかし、圧倒的なシェア以外にも注視すれば、他社と異なる対応も見えてくる。野村の顧客基盤は、この3月末で488万口座(残高あり)と預かり資産73.5兆円だが、月間べースの資産純増額は、約1400億円で、金融商品販売額の8分の1に過ぎない。つまり、投信や公募株を購入しては、次の金融商品に乗り換わる顧客資産の動きが見えてくる。一歩間違えば、金融商品の回転販売と批判されかねないが、これを営業現場で支えるのは、顧客への資産運用に対するコンサルティング営業と豊富な商品供給力ということになる。

先に紹介した月間の1.13兆円の金融商品販売のうち、約4000億円は株式の公募売出しだが、昨年度の高水準の公募増資と野村の高いシェアによる数字で、この部分では同業他社はなかなか追いつけそうにない。しかし、主要な金融商品である投信販売においては、何も野村だけが商品調達力に優れているわけではない。(野村アセットの昨年度業界シェアは20%程度、つまり野村で販売する投信の6割程度が他社系列の運用会社ということになる。)これだけ野村の投信販売シェアが高いのは、タイムリーなテーマを決めて現場で一気に販売を進める営業推進態勢だけではなく、投信の乗り換えも顧客の意向に沿って問題無く行える営業管理体制が整備されていることがある。その為には、顧客への資産運用コンサルティングが投信販売においても必要ということになるが、詰めて言うと顧客に一旦販売したものも、利喰えるとことはちゃんとアドバイスでき、それがコンプライアンス管理されていることだ。

 野村の圧倒的投信販売シェアを許している同業他社も、単に投信残高増加を指向するだけではなく、顧客ニーズを把握しながら販売方法に関して工夫していく必要があることを実感して欲しいリテールの現場である。

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総合取引所構想への期待と問題
 シリーズの3回目になるが、そもそも総合取引所構想は何を期待されているのだろうか。この事について、関係者別に考えてみたい。
 先ず取引所は何により構成されているか、簡単に括ると以下の様になる。
○上場商品
○取引システム(売買に必要な情報システムを含む)
○取引ルール(上場ルールを含む自主規制機能)
○取引清算機能
○取引参加者
 これらは相互に深く繋がっていて、上場商品が新たに増加すれば、取引システムの増強が必要になり、取引ルールも見直さなければならないし、清算機能の提供やルールも決めていかなければならない。そして、そのコストは、結果として取引参加者が負担する。つまり、上記の5つの要素が上手く繋がってこそ、取引所としての機能は発揮される。投資家の注目する上場商品があっても、それを取引する為の他の要素に支障があれば、その取引は拡大していかない。原油や貴金属を上場する商品取引所が国内にあったのに、それを金融サイドの運用者が素通りしていたのは、この事の証左だろう。

 ただし、国際的な競争力をもつ国のインフラとしての総合取引所構想は、誰しも望むものだ。上記5つの要素のうち取引ルール=法制度においては、証券・金融と商品の間の共通化を目指す動きが進み始めた部分もある。昨年10月から段階的に施行されている商品先物取引法(商品取引所法と海外先物法の一体化)は、証券取引所との相互乗り入れを7月から可能にし、相場操縦行為への監視や投資家への不招請勧誘など金商法との共通部分も増えている。また、取引システムについては、東京工業品取引所(以下、東工取)が昨年5月からナスダック・OMXグループの新システムを稼働させているが、大証が本年度内に予定するデリバティブの新売買システムも、OMX製が予定されていて、東工取・大証の提携強化の可能性も出ている。
取引清算機能の充実は取引拡大には欠かせないが、東工取を含めた4つの国内商品取引所における清算能力の小ささは、経済産業書の審議会報告においても問題視されている。この清算機能の問題は、金融・証券側でも、金利スワップやCDS取引の為の店頭デリバティブ清算機関設立準備においても課題になっている。既に国内に金融・証券関係で5つ、商品で1つの合計6つの清算機関があるわけだが、それぞれの取引参加者が別であっても、大量の取引決済に対応可能なように何らかの形で清算基金を各取引所が共有できないか法案整備への期待も一部にはあるようだ。
 一方、投資家側から見た期待は少し分かり難い。オルタナティブ投資と難しく考えなくとも、個人にも新興国成長に支えられた資源高から、商品先物への投資意欲は強まっている。ただし、東証の商品関連のETF19銘柄は、いずれも海外の取引所の商品・商品先物指数に連動したものだし、最近増加しているCFD取引における商品指数も、海外取引所を対象としている。つまり、証券市場と商品市場を繋ぐETFやCFD取引において、国内の商品取引所でなくとも済む構造になっている。

 冒頭に、取引所構成の為の必要な要素を5つ上げたが、総合取引所構想が打ち出された3年間のここまでの対応は、取引システム・取引ルールの総合取引所へのインフラ整備が中心となっていて、清算機能整備はこれから、上場商品の拡充は随時といったところではないだろうか。但し、最も重要な事は、取引所の直接の取引者であり投資家を取引所に誘導する取引参加者をどう拡大していくか。その為に、取引所の戦略と政策の後押しが必要だと考える。異なる投資ニーズや取引規模の市場誘導の為には、商品取引所でも、TOKYO AIMでも、多様な取引参加者が望まれていて、その為には市場誘導者としてのバーは低い方が良い。それが、ヘッジファンドでも、CFD取引業者でも、取引所として取引参加者のキャパシティが深い方が、その成長の可能性も大きくなるだろう。

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再考:総合取引所構想=現状
 前回は3年前に提言された総合取引所構想の背景を語ったが、その後3年経過した現在、何が実現されていて、何かまだなのか、この事に関して振り返ってみたい。
 総合取引所構想を含む市場強化プランの中には、今思えば多少行き過ぎではないかと思われるものも含まれていたように思う。例えば、ロンドンのシティやニューヨークのウォール街の様に、世界各国から金融の専門家が集める事を目的として、彼らの生活が支障ないよう金融機関の集積しているエリア(丸の内・大手町・赤坂・六本木など)から近い場所に、英語で生活可能な居住空間を整備しようとする“東京金融特区構想”。また、ファイナンスやM&Aでの金融・資本市場の専門家として、上場会社のCFOまで想定して、金融の専門的スキルを習得させる資格制度“金融士”(弁護士や会計士の金融・資本市場版に近いイメージ)などがあった。勿論、これらは広い意味での市場インフラなので、整備された方が良いとは思うが、肝心の市場インフラそのものへの取組みは、現在まで以下の様なものがある。
① 証券取引所と商品取引所の相互乗入れ(子会社化)が可能なような法整備
② 東証とロンドン取引所合弁によるプロ向け新取引所TOKYO AIMの設立(2009年6月)
③ 商品関連ETFの上場
④ 排出量取引所設立準備会社を東京証券取引所と東京工業品取引所の合弁で設立(2010年4月)
⑤ 店頭デリバティブ清算機関設立に向けた検討
⑥ ジャスダック市場とヘラクレス市場の統合(2010年10月)を控えた大阪証券取引所の“総合取引所”構想への取組み

 ①については取引所は元々許認可業務なので、証券は金融商品取引法、商品は商品取引所法によるが、それぞれ議決権の20%以上保有制限(国の認可が必要)と50%以上の保有禁止条項があった。これを国が認めた場合、取引所間で相互に乗り入れが可能なように両方の法改正を行い、本年7月より一方の親会社になることが可能になる。

 また②のTOKYO AIMの設立は、海外取引所との合弁でプロ投資家(特定投資家)向けの取引所を開設した画期的なものであったが、残念ながらまだ取引が開始されていない。しかし、IFRSを使った英文開示だけでも済むということから、海外企業・発行体の取り込みなども、取引所の戦略目標としている。マスコミには、アジア向けインフラファンドの上場などが取り上げられたが、その他にもアジア企業のJDR(Japan Depositary Receipt:日本での海外企業株式の預託証券=円ベースで海外株式が取引可能) 、東南アジアでの合弁企業の資金調達、未公開企業の子会社株式やトラッキング・ストックなどの上場、私募ファンドの取引など、一般の投資家には扱い難い商品の上場も検討されているようだ。

 ③に関しては、東証は現在88銘柄のETFを上場しいているが、そのうち19銘柄が商品ETFとなっていて、商品現物若しくは商品先物指数に連動する。ETFで期待されることは、投資ニーズの多様化に応えるとともに、原市場がETF取引のカバー取引増加によって活性化することだ。その意味で、商品ETFは証券市場と商品市場のリンケージとして期待されている。但し東証の商品ETFは、海外商品市場の指数に連動する。一方、大証の商品ETFでは、東京工業品取引所の金と白金指数に連動するETFが上場されているが、経済産業省のアセット会社への働きかけなどがマスコミに報じられている。

 ④に関しては、国内での排出量取引制度の枠組みが定まらなければ、取引所システム構築は現実的でないというのが一般的な意見だろうが、東京都の排出量制度が4月から始まったことや国際的な排出量取引である京都ユニットの取引仲介を目指して双日子会社が取引所開設(5月からか)を公表している。欧米での排出量取引実態を見ると、石炭や天然ガスなどの鉱物資源、電力などのエネルギー取引などと関連しているので、日本での取引においても、同様の視点が必要だし、その取引を支えるインフラ(法制度も含めて)整備が期待される。

 ⑤の清算機関設立は、グローバルな金融危機対策に応じたものだが、金利スワップ・CDSの国内での清算機関整備は、同時に店頭デリバティブ取引の取引所化対応を進める可能性がある。つまり、通常とは逆に、先に清算システムが整備されてしまえば、後は取引をマッチングするような電子取引システムを、PTSや取引所として作るが容易になる。

 ⑥は、直接には新興市場統合なのだが、大証トップの考えとしては、取引時間延長やシステム強化などを行うデリバティブ取引機能強化と併せて、総合取引所構想へ向けた一歩としての意向が、年初伝えられている。
 
この様に部分的に資本市場の最近の動向をみるなら、現状、総合取引所構想が何らかの形で進んでいるとも言える。

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再考:総合取引所構想=背景
 総合取引所という言葉が、行政及び経済マスコミで使われ始めたのは、2007年4月経済財政諮問会議において、その創設が提言された時からだ。当時は、欧米で国境を超えた取引所間のグローバルな統合の動きが活発で、その中では証券とデリバティブ及び商品先物などの取引所の集約やグループ化の動きが強まっていた。一方、日本でも金融ビックバン後10年近く経っており、諮問会議は、個人金融資産1500兆円を日本の成長力強化に役立てるためには、ロンドンやニューヨークに比肩する市場を構築する必要があるとし、証券取引所・金融先物取引所・商品取引所などタテ割りになっている形態を転換し“総合取引所”の実現を目指すべきとしたものだ。これを受けて、金融審議会での議論を経て、2007年12月末に金融庁は金融・資本市場競争力強化プラン(市場強化プラン)を公表し、取引所間の相互乗入れが可能な法改正を実施、現在に至っている。

 この間、世界的な金融危機があり、グローバルな取引所再編も一段落しているようにも見える。また、日本でも政権交代があって、この総合取引所構想及びその背景になっている日本の金融・資本市場の競争力強化については、一時的にトーンダウンしている感があった。しかし、旧政権の経済財政諮問会議的役割は、現政権の国家戦略室が主幹する成長戦略策定会議が担い、6月まで新成長戦略として取り纏める中に、再び総合取引所構想が、金融分野の総合特区構想として入る可能性があるし、東京の国際金融センターとしての地位の再獲得を重点事項にしようという金融庁の考え方も示されている。
 この総合取引所構想の背景にあるものは、主に以下の3点が上げられる。
① 国際間の取引所グループ化の進展の中での日本の取引所の位置付け
② 東京市場の地位低下
③ 投資ニーズの変化への対応

取引所間の国境を跨いだグループ化の進展は、2006年から2007年にかけて進んだが、その結果、米国と欧州の取引所間の経営統合により、同一の取引所グループ内で、多様な投資商品を取り扱っている。
・NYSE・ユーロネクストグループの場合、有価証券(現物)を取扱うニューヨーク証券取引所(NYSE、米国)、有価証券(現物)と金融・証券先物を取扱うユーロネクスト・パリ(フランス)、金融・証券先物と商品先物を取扱うユーロネクスト・ライフ(英国)
・ドイツのドイツ取引所グループの場合、有価証券(現物)を取扱うフランクフルト証券取引所、金融・証券先物を取扱うユーレックス、商品先物を取扱うヨーロピアン・エネルギー取引所
・韓国取引所は、有価証券(現物)、金融・証券先物(外国為替、株価指数など)、商品先物(金)

 現在の主要な取引所グループは、上記のNYSE・ユーロネクストグループ、ドイツ取引所グループの他に、ナスダック・OMXグループ、ロンドン取引所グループ、デリバティブ・商品中心のシカゴ商品取引所(CBOT)グループとなっているが、日本の東証・大証は其々海外取引所と提携契約は多く結んでいるものの、経営基盤やインフラを共有するようなグループ化の流れの中にはいない。唯一、東証とロンドン取引所の合弁でプロ向け市場TOKYO AIMが昨年6月にスタートしているが、本格的が協働というより、プロ向け市場創成に関する試験的取組みのように見える。

 東京市場の地位低下に関しては、既に商品先物取引において顕著だが、最近5年間で世界の商品先物取引が5倍に増加する中、日本では再勧誘の禁止などを定めた改正商品取引所法(2004年)の影響もあって5分の1に縮小している。また、デリバティブ取引においても、大証の先物・オプション取引は拡大しているものの、その取引規模は10番後半(2008年度15位)で、中期経営計画でも10位内を目指すとしている。株式市場においても、取引量において東証が上海取引所に抜かれたのは時々報道されているが、市場全体の時価総額において、上海と深センを合わせると、東証の時価総額(3月末、3.5兆ドル)に追いついてきた。この様に、商品・デリバティブ・証券其々の市場動向でみても東京市場の地位低下傾向が明らかな中、韓国やシンガポールがいち早く総合取引所を実現したり、中国・香港・台湾の各証券取引所を繋ぐ共通金融プラットフォーム構想を台湾取引所が公表(2009年4月)しており、アジアにおける金融センターとしての機能維持にも懸念が生じ始めている。

 今、再び成長戦略の中で総合取引所構想が語られてきたのは、この様な日本の金融・資本市場の地位低下に対する危機感だと信じたい。

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しっかり投票しよう議決権
 上場企業の総務部は、今6月下旬の株主総会準備に向けて大わらわ時期だが、この3月期決算会社からディスクロージャー・ルール(企業内容の開示に関する内閣府令)改正により、株主総会での議決権行使結果の開示を、上場会社は行わなければならない。
 この議決権行使結果の開示は、欧米でも進められており、米国では昨年末のSEC規則改正により、株主総会終了の4日営業日以内の報告が求められ、英国やEUでも賛成・反対・棄権の票数まで含めてインターネット上で開示することが法制化されている。

 日本での議決権行使結果の開示は、臨時報告書の提出によって行われるが、決議事項ごとに賛成・反対・棄権の数を議案の可決要件とともに開示するか、若しくは株主総会出席者の議決権を参入しなかった場合は、その理由を開示する必要があるという構成になっている。実際の集計作業は、株主総会前日までの議決権行使結果は株主名簿管理人が行い、株主総会当日の集計に関しては、厳密な投票の集計を行っていない会社が殆どとみられ、この6月総会より株主総会会場での投票集計対応が求められる。企業の総務担当者にとっては相当の負担増になりそうだが、敢えてこの票数の開示まで求める背景は、昨年6月に公表された金融審議会スタティグループ報告“上場企業等のコーポレート・ガナバンスの強化に向けて”にある。この報告によると、“株主に対する説明責任を果たすという観点から、上場会社等においては、各議案の議決結果について、単に可決か否決かだけでなく、賛否の票数まで公表するのが適当であり、法定開示及び取引所ルールにより、ルール化が進められるべきである”とされている。

 コーポレート・ガバナンス強化も、本年導入される独立役員(東証ルール)、この議決権行使結果の開示と進んできたが、このグローバルな潮流の発端は、米国のエンロン事件だったことを思い出す。米国では、金融危機後の今、再びエンロン事件を見直す動きがあり、ブロードウェイでも取り上げられていることが伝えられている。米国でのコーポレート・ガバナンス強化については、有名なSOX法(サーベンス・オクスリー法)の制定、取締役の独立性要件の強化、監査委員会の機能強化、内部統制の強化と行われてきたが、ミューチアル・ファンドや投資顧問業者に対する議決権行使方針及び行使結果の開示を求めるところまで進んでいる。

 日本においても、投資信託協会は会員の投資信託委託会社に対して議決権行使結果の開示義務付けを求めているが、これは投資家からの受託者責任を果たし、投資対象の上場会社の行動を適切に規律づけることを狙いとしている。また、投信委託会社が金融グループの系列で、企業への営業上の配慮などで白紙委任を行うような行為を防ぐ。ちなみに、昨年度の議決権行使で投信委託会社の反対投票が多かったものは以下のようになっている。(数字は、反対等使比率)
・退職慰労金支給  24%
・新株予約権発行  22%
・監査役選任    20%
・資本政策に係るその他の会社提案  17%

これら機関投資家の議決権行使を促進するものとして、2006年より東証や証券業協会の合弁会社で運営される機関投資家向議決権行使プラットフォームが開始されているが、企業のコスト負担が必要な為、未だ参加企業数は371社と、上場企業の1割にしか過ぎない。一方、企業の電子投票制度は3月末で612社と、これも上場企業の16%に過ぎないことが報じられている。
東証は6月から株主総会の招集通知をネット上で公開するが、議決権行使促進に向けたインフラ整備は整いつつあるように思う。現在の問題は、それに伴う企業側のコスト負担(機関投資家向議決権行使プラットフォーム、電子投票システム)とされているが、今後企業側が株主総会で集計する手間やコストを考えるなら、本当のコスト面での選択肢は決まっている。

 投資家が、企業価値向上の為のコーポレート・ガナバンス強化に協力していくのは、しっかり投票することだ。

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また銀行の公募増資なのか
ギリシャ危機が何とか収まりそうな中、メガンクのファイナンスが伝えられ、再び昨年後半に大量の公募増資の影響で、日本株だけ地合いが悪かったことを思い出すような11日の株式市場だった。5月中旬に差し掛かった現在、6月末の株主総会集中期間が終わると、再びファイナンス・ラッシュの懸念を生じさせるような今回の銀行ファイナンス報道だが、市場のイメージは標題に近いものがある。それは、銀行の公募増資に対して、幾つかの不信感があるからだ。

 一つ目は、公募で調達する資金が本当に必要な資金なのかということだ。金融機関の自己資本比率規制から、資本調達の必要性について、投資家は制度として理解しても、株主としては承服しがたいのは、3割以上の希薄化を生じる公募増資で調達した資金が、まさか低利回りの日本国債を買い続ける資金とならないだろうかという懸念だ。確かにお金に色はないが、銀行の公募増資は、その資金使途をより明確にして、株主や投資家に示す必要があるということを、グループ内に証券会社を持つメガバンクは理解する必要がある。

 二つ目は、公募増資のタイミングの問題だ。これは普通の企業なら一つ目の問題と重なるが、金融市場からの調達が可能な銀行にとって、緊急の資金としての資本調達の意味は無い。そうすると、銀行グループ全体としての資本政策のかじ取りといった難しい話になりそうだが、何故今のタイミングなのかということを株主や投資家に示す必要もある。その際、現在の自社株価に対する銀行の経営者としての判断も求められるべきだろう。通常の公募増資の場合、引受証券はエクイティ・シナリオを求めるため資金調達後の企業の業績予想を精査する審査を行うが、その他に株価審査といって公募増資時点での株価形成が問題無いかチェックする。銀行は、金融・資本市場のメインプレーヤーとして、自らの増資の際には、自らの株価形成に関する考え方を開示すべきではないだろうか。

 三つ目は、銀行のファイナンスに関して、情報の偏在があるのではないかとの疑念だ。確かに、メガバンクなら常に資本増強のニーズはあるのでいつ増資してもおかしくないと考えるのは一般的だろうが、その増資タイミングが2ヵ月先なのか2年先なのか、この事は投資判断に大きく影響する。大企業の大量公募増資の場合、グローバル・オファーリングといって国内・海外同時公募が前提になるが、海外投資家の大口需要を確認したがる引受証券のソフトヒアリング(事前需要調査)によって、公募増資公表の相当前から増資情報が一部海外投資家に伝わっている可能性がある。この情報の偏在を利用して、銀行株を借入れ、増資発表の相当前から売却するようなローテクは、今は行われていないと信じたいが、前回の金融危機後の日本の金融機関の優先株による資本調達の際、普通株への転換条件(下方修正)を巡って、大量に銀行株を売っていた海外ファンドの姿が思い出される。

 以上の不振感を払拭していただく方法として、一つ目は増資に関する開示情報の徹底で、特に資金使途とその前提となる企業価値向上策を可能な限り開示すること。二つ目は普通株による増資が必須なら、その増資方法の工夫が必要だ。
特に増資方法の工夫は、本来なら引受証券が行うべきだが、メガバンクが日本の資本市場機能の主な利用者であること。また、グループ内の主要な証券会社においては、相当の市場仲介機能があることなどから、メガバンク自らのファイナンスにおいて、ライツ・イシュの様な取組みを率先して実行して欲しい。
 既存株主への負担が少ないライツ・イシュは、タカラレーベーン増資で4月から取引が行われているが、取り扱う証券会社数が少なく、また権利行使の条件等(投資家の支払うコストなど)がマチマチで、投資家にとってもまだ使い勝手が良くない。確かに証券会社としては、新たにライツ=東証に上場された新株予約権の取引システムが必要なのと、ライツの権利行使の際の取扱規定の整備が求められ、これに対応していない証券会社が未だ多い。大量に株主を抱えるメガバンクの増資にこのライツ・イッシュが利用されれば、証券会社側の整備も一気に進み、株主に優しい増資方法として日本でも確立するだろう。

 銀行の増資に期待したいのは、日本の資本市場機能改善に役立つ取組みで、自ら大手証券や外証を率先して、日本の金融・資本市場のインフラ整備に貢献していくことだ。その事は、メガバンクが目指す日本型投資銀行のモデルになっていくのではないだろうか。

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証券リテールの現場で
証券各社の昨年度決算も出揃ったところで、各社決算説明資料より、今証券リテールの現場で何か起きているのか考えてみたい。
今、営業現場にいる嘗ての同僚や後輩からは、投信をどんどん売っていますよ、といういつもの愚痴ともつかぬコメントが聞かれそうだが、実際の個人投資家への商品販売状況は、大手証券A社では以下の様になっている。(2010年1~3月期の販売状況)
①販売した金融商品の40%、外債
②販売した金融商品の18%、債券型投信
③販売した金融商品の17%、株式型投信
④販売した金融商品の13%、エクイティ関連商品
⑤販売した金融商品の7%、個人向け国債を除く国内債券
となっていて、販売した額は前年同期比で倍増している。
①の外債販売は、前年も4割以上を占めていて、株型・債券型合わせて3割超の投信販売を上回る。
②の債券型投信は、毎月分配・ハイイールド債外貨建てが流行った。
③の株式型投信は、言わずと知れた新興国投資のものだ。
④のエクイティ関連商品では、外国株の取扱いが、収益ベース3割を占めるようになっている。海外株式投資の内訳をみると、直近は中国・米国・ブラジル・インドの順だ。
この様に、海外投資関係が既に7割以上を占めている。
⑤の国内債券は、一年前には銀行の劣後債を中心にリテール向け社債がブームになったが、現状は半減している。
以下の金融商品は、4%が年金保険商品で前年と同水準、個人向け貯蓄国債は半減して0.2%程度、この会社が注力するラップ口座獲得は、前年より大幅に増加しているものの、全体の1%程度にしか過ぎない。
 この様に証券の営業現場では海外投資が一般化しているが、この事とFX取引は直接結びつかいない。それは、株式や債券投資と、これらのデリバティブ取引がリテールの現場では繋がらない事と同様だと思われていた。しかし、本当にそうだろうか。
 外債投資と、FX取引は全く別物と考えるのは、商品供給サイドの証券会社の社内事情であって、ブラジル国債に投資するのも、レアルをFX取引で売買するのも、投資材料では共通する事もあるし、ブラジル国債投資をベースに、レアル売買のFX取引を行うヘッジ取引ことだってあってよい。実際、機関投資家の外債投資はヘッジ取引としてデリバティブ取引を頻繁に行う。ペーパレスやネットの普及で、デリバティブを個人投資家が行う環境は整ってきている。
 最近、ネット証券の収益増を支える要因にFX取引の増加があるが、このA社も遅ればせながら4年前から店頭FX取引を取り入れ、昨年後半に取引所FX取引にも参入している。しかし全体で218万口座あるオンライン取引口座に対して、FX口座数は4万口座弱に過ぎない。証券リテールでは、ここ数年外債投資が営業の柱になっていたが、その間、そのデリバティブのFX取引については、FX取引専業者中心に個人の市場が急拡大していった事実がある。最近は証券もFX取引に注力し始め、有価証券を証拠金に使える大証FXも始まっているが、この仕組みはFX専業者より証券会社優位に思える。
 また個人向け店頭デリバティブとしてCFDへの期待は大きいが、これらの個人投資家が使いこなしていく為には、個人の運用資産に対するポートフォリオ管理サービスと、それに連動した取引システムが必要になってきている。A社は今月からCFD約100銘柄の取引を開始するというが、顧客にとっては、外債・外株・日本株・投信・債券・そしてデリバティブとしてのFX取引・CFD取引を、自己の運用資産の中でどう管理していくか。かつてファンドや機関投資家への資産管理サービスが、証券リテールの現場でも求められている。それに応えていくのが、金融商品取引業者となった証券会社ではないだろうか。
 

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ニーズの偏在と融合
7日付けの日経で、ブラジル国債とインドネシア株式・ベトナム株式に投資するファンドの募集広告をみて2つの事を思いだした。ファンドの内容は、6割を高金利の債券(ブラジルレアル建て国債)に投資し、4割をインドネシアかベトナムの株式に投資するというものだ。

 一つ目は、この公募ファンドの作り込みが、交換社債と同じということだ。実際の運用は、ファンドマネージャーがどうされるか知らないが、ファンドの運用期間7年で、先ず同期間の高金利ブラジル国債を買う。このブラジル国債の利金や償還金でインドネシア株式かベトナム株式のコール・オプション(株式の購入権利)を買っていく。この場合、元本はブラジル国債で確保され(但し、レアル建て)株式の上昇があれば利益となるが、基本的には転換社債(今は、新株予約権付社債≒交換社債)と同様の仕組みだ。実際は投資効率を上げる為に、ブラジル国債の利回りを先に割り引いた部分で、株式若しくはそのコールオプションに投資するのだろう。

 2つ目に思いだした事は、連休中に読んだ“巨大投資銀行”(著者:黒木亮)という本で取り上げられていた裁定取引の事だ。本の内容は、バブル発生から20年以上に渡る期間の投資銀行(日本でいう外資系証券)の成長と、そこで働く日本人達の生き様を描いたものだが、ファイナンス・M&A・証券化など、かっての仕事とその時の事件を懐かしく思い出しながら読ませていただいた。その中で、主役の一人に元ソロモン・ブラザーズ(現シティグループ証券)の明神氏をモデルにした人物がおり、様々な裁定取引で米系投資銀行の実質的トップに上りつめていく。当初は、国債の各銘柄間の利回り格差に注目した裁定取引から始まって、国債買い日本株売りの裁定取引、仕組み債の巨額な積み上がりを見越して株式や為替のノックインを目指した裁定取引、などを駆使し、巨額の利益を上げていく。この場合の裁定取引の意味は、単なる金利のさや取り=アビトラージではなく、異なるニーズの偏在に対して、その状況が何れ解消される前提で、人より早く、そして巨額(レバレッジを掛けて)に取引していく自己売買を指す。今だとヘッジファンドでは当たり前の事だが、この裁定取引の考え方は他の投資銀行にも取り入れられ、投資銀行そのものが巨大化していく原動力になる。そして、ヘッジファンドも、この投資銀行の裁定取引部門の人々を中心に組成されてきた。冒頭の公募ファンドも、この裁定取引の考え方を前提に、異なる投資ニーズを融合したものだ。

 投資ニーズの偏在に関して、第一生命経済研究所は最近のレポートで株式と商品(コモディティ)の事を取り上げている。これによると、リーマンショック後2008年末からの市況の上昇率は、
・ロシア RTS指数 +155%
・アルゼンチン メルバル指数 +120%  など新興国が高いが、先進国は、
・日経平均 +27%
・NYダウ +25% と総じて低い。 一方商品市況は、
・銅 +155%
・鉛 +121%
・原油(WTI) +90%
となっていて、新興国の成長に起因する価格上昇と見られている。
(同期間のMSCI世界株指数は、+37%。対するJOC商品指数は+83%)

これに対する投資ニーズも偏在していて、先進国と新興国、株式と商品、とある。其々の偏在したニーズを融合するのは、昔は投資銀行の裁定取引、今はヘッジファンドなのだろうが、最近は個人投資家も活用出来る仕組みが整備されつつある。例えば、冒頭のファンドの様に異なる投資ニーズを融合した公募のファンドも出来てきたし、商品先物指数のETF、CFD取引でレバレッジを掛けて取引することも可能になっている。また、日本国内での商品先物投資に関しては、商品取引法の改正が行われ、本年7月から商品取引所・証券取引所間の相互乗入れが可能となり、総合取引所に向けた動きが出る可能性もある。
 この様に道具建てとインフラは整いつつあるが、これらを投資家に向けて使いこなす市場仲介者=ブローカーの能力の方が、今問われている事かもしれない。
(商品取引法は、来年1月に“商品先物取引法”に改称され、個人投資家に対して不招請勧誘規制が導入される。ブローカーも、商品先物取引業者として認可制になる。)

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日本の資本市場:大証の取組み
 この4月から大阪証券取引所は㈱ジャスダックを吸収合併し、10月にはヘラクレスとジャスダック市場を統合した新・新興市場“JASDAQ”がスタートする。上場数約1000社は、韓国取引所のKOSDAQとほぼ同規模だが、シンガポール(132社)や香港(178社)の新興企業市場と比べて、アジアでは群を抜く存在感になる。最近は、この新市場で、グローバルスタンダードに合わせて昼休みを無くする方向で検討していることが伝えられた。東証もそうだが大証も取引所として様々な取組みを行っていて、日本の資本市場の改革を担っている。既存証券会社はシステム負担増から反対が多そうだが、昼休み廃止問題は、これらの取組みのほんの一つに過ぎない、また大証は、自らも上場会社なので市場の評価を受ける。直近1年の株価は33.1%(昨年4月末比)上昇しており、日経平均の21.9%を大きく上回る。(※本稿は、投資を勧誘するものではない。)

 直近公表された平成22年度決算数値から、収益構造を見てみると、
  ・営業収益 230億円(前期比 14.8%増)
     うち、①取引参加者からの手数料等 128億円[全体の56%]
     うち、②機器・情報提供料      63億円[全体の30%]
     うち、③上場賦課金         30億円[全体の13%]
となっており、①の6割以上が日経平均先物・オプション取引に係るものだ。収益の3分の1以上を占めるので、大証はデリバティブ取引所としても評価される。但し、大証における昨年度の先物・オプション取引の状況は、日経平均先物が1日平均9万単位(前年比29%減)、日経225ミニが同44万単位(前年比11%増)、日経平均オプションが同15万単位(前年比19%増)となっていて、トータルの取引金額ベースでは前年比2割強の減少となっている。日経平均先物の減少はシンガポール取引所(SGX)との競争の影響とみられるが、大証は、本年7月から株価指数先物・オプション取引のイブニング・セッションを20時から23時30分まで延長する予定だ。また、来年早々には、デリバティブ売買システムのリプレースもなされる。
上場FX取引として、東京金融取引所のクリック365の後を追う大証FXは、昨年7月に始まったが、証拠金残高を投資家自らがリアルタイムで確認出来たり、株式・債券が証拠金に代用出来たり、値付け方法をオークション方式とマーケットメーク方式を融合した方式を採用したり、証券会社の顧客にとっては使いやすい工夫がなされている。但し、まだ4社の取扱いに留まるが、5月からはシステムも強化され取引増加が期待されている。

 一方、新JASDAQ市場を抱えることで、大証は新興市場問題にも直面しなければならない。
米田社長は、新市場での取引時間を何らかの形で延長していきたいとしているが、この現物株式の新興市場活性化の問題は、根深いものがある。取引所として、まずIPO銘柄を増加させること、次に取引を活性化させることだが、これは本来市場誘導業務を行う証券会社の問題だ。しかし、1年程前に日本証券業協会において“新興市場の機能と信頼の回復に向けて”という問題点を指摘する報告書が公表されているが、IOP機能の回復に向けた取組み(例えば他のアジアの新興市場と競争するような)で具体的な事は示されていない。その中で、大証はジャスダックの地域フォーラムを組織化して、地域から新興企業を発掘しようと試みる。また、新興市場で問題になるアナリストカバー率の低さ(東証1部55%に対して、ジャスダック15%、ヘラクレス20%)に対して、取引所が援助するか米ナスダックの様に全社対象を義務付けるかの検討を行うとしている。

 以上の様に、資本市場のインフラとしては東証・大証とも、よく頑張っていると思うが、その改革を実効性のあるものにする為には、新しい取引所インフラを使いこなす証券会社の器量が必要だ。

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ルック・コリア、株式市場の場合は
 バンクーバー・オリンピックでの韓国選手の目を見張る活躍は、記憶に新しいし、ゴルフや野球などスポーツの世界でもその強さが目立っている韓国に対して、最近は多少憧憬をもって見たくなる。またスポーツだけではなく、経済においても、韓国企業の戦略を見直す動きが強まっている。気付いてみれば、サムスン電子、ポスコ、現代自動車などのグローバル戦略に於いても日本企業に先行する動きもあり、マスコミでも取り上げられている。ちなみにサムスン電子の時価総額(約9.8兆円)は、キャノン(約5.7兆円)とソニー(約3.5兆円)を足した水準になっているが、日本の投資家は中国やインドを始めとするアジア投資に興味はあっても、韓国資本市場への関心は余り高いとは言えない。アジア経済発展の恩恵を、現状では最も受けているのが韓国企業と言われるが、日本の投資家は新興国には興味があっても、新興国から先進国に成長している韓国への投資意欲は低水準だ。(FTSEでは先進国指数へ韓国株式市場を組み入れることを決定している)
最近では、韓国企業の強さの分析が行われるようになったが、現地顧客のニーズに合わせた商品作りやサービスの提供に加え、英語とITスキルを備えた人材教育が優れていると言われている。その英語とITスキルは、将にグローバル化された資本市場では必須のもので、韓国資本市場の変化を支える要因にもなっている。その韓国株式市場の概要について、少し触れておきたい。

 金融危機後の世界景気回復で、輸出依存度の高い韓国(54.8%:日本は17.4%、2010年2月経済産業省公表)は、その恩恵を受けていて、東証に上場されているKODEX200指数ベースではリーマンショック後の800円割れから、最近では2000円まで急回復している。しかし、日本からの韓国市場への投資は、まだ低水準で、かつ取次ぐ証券会社数も限られている。

 韓国株式市場は、韓国取引所(KRX)によって運営されているが、2004年8月に証券取引所・店頭株市場(KOSDAQ)・先物取引所の3つの機能が統合され、本部・先物市場本部は釜山、それ以外の市場監視部や株式・債券取引本部はソウルにある。株式市場の規模については、直近3月末の上場企業数は1799社でボンベイ・東証・オーストラリアについでアジアでは4番目、上場株の時価総額は8761億ドルでアジアでは8番目となるが、最近に日本のベンチャーがKOSDAQに上場して話題になった。
また市場の特徴としては、個人投資家の存在が日本に比べて大きなことも知られていて、①個人投資家の上場株保有比率では46%を占める。②インターネットのインフラ整備が進み、個人向けネット取引サービスが充実していることから、オンライン・トレードでの売買が半数を超える。③KOSPI(総合株価指数)の先物・オプションの取引の3分の1が個人投資家である。などがあげられる。
一方、海外投資家の株式保有比率は29%となっているが、前回のアジア通貨危機の際、同国はIMFの管理体制下に入り、1998年より市場開放を行ってきた結果、順調に増加している。資本取引の最大の障害となる海外投資家のキャピタルゲイン課税に関しても、租税条約により殆ど減免されている。外国人の売買金額ベースでみると、英国が28%(2009年10月基準)、米国が22%であるが、日本は0.8%と非常に僅かな比率にとどまっている。

 韓国市場は、個人や海外投資家の影響力が大きいため、サムスン電子が売買代金の10%超、主要10銘柄で40%を超えるなど一部の優良銘柄に取引が集中しやすく、またボラティリティが大きいと言われている。アジアへの投資が注目される現在、独特の存在感を強める韓国企業への見直しとともに、韓国市場の再発見が期待されている。(※文中の数字は、主に韓国取引所)

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