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2010/06
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先行する総合取引所戦略:シンガポール
 市場の方は2番底懸念から、薄暗いムードの中、下値を切り下げているが、多くの市場関係者が前日の海外市場をチェックして自宅を出て、朝、会社において本日の東京市場の行方を見守るとき、先ず目にするのは、シンガポール市場での日経225指数の取引価格である。シンガポール金融派生取引所(旧SIMEX、現SGX-DT)での日本株指数は、8時45分(現地時間7時45分)に取引がスタートする。
 シンガポール市場での日経225指数取引で思い出される1995年に発覚したベアリングス事件(ベアリングス銀行破綻の原因となった)が、ふた昔前の話になってしまったが、取引が開始されたのは1986年と大証の1988年より古い。この取引所である旧SIMEXは、1999年12月にシンガポール証券取引所(旧SEX)と統合されてシンガポール取引所(SGX)として再編されており、再編後のSGXは2008年にはシンガポール商品取引所も取り込み、株式・金融デリバティブ・商品先物をカバーする総合取引所として、日本の新成長戦略である総合取引所構想の1歩先を行く。

 そもそもシンガポール市場は、アジア近隣諸国などの企業や指数など重複上場させることで、アジア市場におけるゲートウェイ機能を目指しており、SGX-DTでは、取引量全体(2009年)の約40%が日本平均先物関係(日経225指数、日経225指数ミニ、米ドル建て日経225指数、MSCI日本指数を含む)、約23%がMSCI台湾指数、約11%がCNX nifty(インド)、と他のアジア諸国の株価指数がベスト3を占める。

 日本の総合取引所構想も、アジアのメイン・マーケットとしての日本市場の実現を目指す成長戦略であるが、シンガポール市場は、そのゲートウェイとして先行している様にも見える。デリバティブ市場の状況は前述したが、現物の株式市場において海外企業は301社と全体(新興市場カタリストを含めた)の約40%を占め、その内半数は中国企業である。また、シンガポール取引所の直近の収入構造(2009年度5億93百万シンガポールドル)をみると、
・国内証券に係るもの・・・収入全体の47%
・海外市場のデリバティブに係るもの・・・収入全体の27%
・アジア諸国など海外企業の証券に係るもの・・・収入全体の20%
・国内市場のデリバティブに係るもの・・・収入全体の6%
と、海外関連が半数近くに迫っている

なお、シンガポールの行政当局であるMSA(シンガポール通貨監督庁)は、取引所戦略において次のことを示している。
○オープンで活気に満ちた市場参加を促進することで、シンガポール拠点の取引及び清算のインフラの機能を図ること。現物市場と先物市場との間で、流動性の向上等の相乗効果を生み出すこと。
○取引および決済に関する統合アクセス・ツールの開発に取組み、時間帯や地域によって細分化されてきた流動性をリンクさせるための共通のゲートウェイの構築すること
○取引所に関連する処理サービスと取り込むことで、取引所のビジネスを多様化させる機会につながること。

 総合取引所構想とは、上記の様な取引所戦略に基づく具体的な戦術があって、初めて実現されていくものと思われる。日本では、取引所の取引速度が世界最速に機能アップしても、それを海外投資家がアルゴリズム取引等で使いこなすコロケーションサービスで、報道されているようなPEリスク(海外投資家が日本で法人課税される)が明確でなければ、海外投資家の取引を呼び込むグルーバルな競争には勝てない。
 総合取引所はあくまでもインフラだが、そのインフラを使いこなすソフトの対応は、官民ともアジアの競争の中にいることを自覚すべき時期ではないだろうか。

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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

懐かしいファイナンス規制
 まだ若かりし引受マンの時、大蔵省企業財務課の薄暗い廊下に並べられていた椅子に、徹夜で仕上げた審査資料を抱えて座っていたことを思い出した。その時代は、バブル時の大量エクイティ・ファイナンスの弊害を規制する名目で、公開企業のファイナンスに対する行政指導が規制として残っていた。利益計画から増益予想の実現性・資金使途の現実性・増資後の株主還元策等、一通り財務官に説明し納得してもらわなければ、その後の有価証券届出書が受け取ってもらえず、結果としてエクイティ・ファイナンスが出来なくなる。そんな時代だったが、1990年代半ばにはファイナンスに関する規制は殆ど無くなってしまって、現在に至る。

 2000年代に入ると旧商法や会社法で、資本政策に関して柔軟な取組みが可能となり、取締役会決議で対応できる範囲も拡大した。その事の弊害として、大規模なファイナス・買収防衛策・MBOなどコーポレート・ガバナンス強化の命題になっていることも多い。昨年は、公募増資が5兆円を超えバブルピーク時の水準に近づいた。発行済み株数が一度に3分の1以上増加するファイナンスも多かったが、問題は大規模な第三者割当でも顕在化している。例えば、TOB規制なら3分の1以上取得する場合は、TOBに依らなければならないが、第三者割当だけなら株主に諮ることなく突然拒否権を保有する新株主ができることになる。又、大規模な第三者割当に絡んで、増資の取消や未払込みも発生し、株価操縦的行為と見られることも多発した。

 市場からみて規制は無い方が良いが、しかし時として市場の暴走や偏向は起こり得るので、出来れば自主的な規制(協会ルールや取引所規則)が望ましい。それでも不十分な時や緊急時は、行政に頼るしかないのは金融危機で証明されてしまった。そんな流れなのだろうか、ファイナンス規制がまた復活しそうだ。今回の規制は、ファイナンスに関する株主や投資家の誤解を排除する目的で、企業内容等開示ガイドライン【企業内容等の開示に関する留意事項】が改正され、6月4日提出分の有価証券届出書等から適用される。
この中で、「株券等の発行に係る第三者割当」の記載に関する取扱いガイドラインが新設され第三者割当に関して、有価証券届出書の提出先である各財務局において、以下の審査が行われる。(審査に対応する為には、第三者割当の為に有価証券届出書のドラフトを決議日の2週間程度前に持ち込むということになる)

【審査対象】
上場会社が提出する大規模なもの(25%以上の希薄化や支配株主が生じる)や、割当先の実態に周知性がないもの等に該当する第三者割当増資を審査対象とする。また、短期間で容易に普通株が交付される蓋然性が高い種類株券については届出書の提出を求める。

【 審査要領】
① 手取金の使途
実態に即した詳細な表示、使途の合理性等を審査。
② 割当予定先の状況
割当予定先の実在性、払込資金の実在性、特定団体等の確認内容等を審査。
③ 発行条件に関する記載
有利発行に該当しないと判断した場合、その理由等について審査。
④ 大規模な第三者割当の必要性
既存株主のメリット・デメリット等について審査。

 なお、この規制は、先に行われた開示府令の改正(2009年12月施行)を受けた形で、第三者割当増資に係る開示府令の改正の実効性を、第三者割当に関する有価証券届出書現場で持たせようとした形がとられている。やはり、ファイナンス規制の復活だろう。(大規模な公募増資には、何らかの行政上の規制がかかることは、当面無いとみられる。)

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東証の更なる高速化:指数高速配信と東証Prox
 フラッシュ・オーダーやフラッシュ・クラッシュなど、最近の米国では、超高速取引に関する批判や問題点が指摘されることが多くなってきたが、これも金融規制改革を背景にした米国民の感情が背景にあるのかもしれない。確かに超高速の取引に対応する為には、専用のシステムとソフトが必要になり、その開発に相当のコストを掛けた投資銀行からみると、アルゴリズム取引は、大量の売買注文を出す機関投資家向け利用専用で、個人がミリ秒単位のアルゴリズムを使うことは、ほぼ想定外だろう。フラッシュ・~と超高速取引が米マスコミで取り上げられ時には、個人が利用できない仕組みで、金融機関同士が、何か特別なことをしているのではないかという疑念の雰囲気が漂う。
 しかし、超高速取引が機関投資家などのアルゴリズム取引を呼び込み、市場全体の流動性向上に役立っているのは事実だ。日本でも、この1月からミリ秒単位の売買システム“arrowhead”が稼働しており、アルゴリズム取引による売買高増加で流動性が増すことが期待されている。ただし、現状は欧州危機懸念からのグローバルな市場停滞が強く、市場の出来高は日々1兆円半ばと低迷している。また、実際のアルゴリズム取引を開始する為には、数カ月間の市場取引データが必要のようで、期待されていたアルゴリズム取引も、準備もしくは試行期間という業界の見方が多いようだ。今後のアルゴリズム取引の本格化が望まれている。

 一方、東証では更なる市場の高速化対応として、次の3つの施策を行うことを6月22日の東証社長会見において公表している。

【株価指数の配信間隔の短縮化】
・対象指数:TOPIX、TOPIX Core30、TOPIX500、TOPIX1000
・現在15秒間隔の配信を1秒間隔で配信
・本年9月13日(月)より変更
・配信方法は、相場報道システムのFLEX Standard、FLEX Lightによる

【指数高速配信サービスの導入】
・高速指数:TOPIX、TOPIX Core30、TOPIX500について、ミリ秒レベルのスピードで算出、各指数の構成銘柄の約定値段も算出・配信
・高速指数(最良売り気配):TOPIX、TOPIX Core30、TOPIX500について、新たに各指数の構成銘柄の“最良売り気配”を採用し、算出・配信
・高速指数(最良買い気配):TOPIX、TOPIX Core30、TOPIX500について、新たに各指数の構成銘柄の“最良買い気配”を採用し、算出・配信
・配信方法は、相場報道システムのFLEX Standard(マルチキャスト方式)
・サービス開始時期は、平成23年2月頃

【プロキシミティサービス“東証Prox(プロックス)”というサービスを提供】
東証の基幹ネットワークである arrownetのアクセスポイントにおいて、コロケーションサービス同様、ラック単位での場所貸しを行い、売買用や相場情報の受信用の機器などを設置するサービス。東証社長の説明によると、東証と他の市場(アジアか)の市場間裁定取引での高速化に対応できるとし、アジア・マーケットのハブとしての内外証券会社等の利用を期待しているようだ。また、このサービスは取引参加者以外の利用も認められ、情報ベンダーの活用も想定されている。

 このように、市場インフラは欧米市場をキャッチアップしており、機能だけみると既にアジアのメインマーケットとして充分なように思われるが、問題はインフラよりは直接・間接に市場に誘導する機能(証券・金融機関・機関投資家)の不足かもしれない。

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市場競争力強化プランのその後と新成長戦略=その2
前回取り上げた以外に、市場の構築関係では次のものが取り組まれている。

・日本における外国株式の取引拡大の為、JDR(日本版預託証券)の流通制度整備
[2008年2月に、東証での上場、証券保管振替機構での決済・保管の為の規則改正を実施。当初はインド企業のJDR東証上場が噂されたが、その後の金融危機の影響もあって実現していない。減り続ける東証外国部の対策として期待されているが、プロ向け市場TOKYO AIMとのすみ分けや、スポンサーとしてJDRをメンテナンスする証券・信託などの市場誘導機能の拡充など、市場構築の課題は多いに思う。ただし、日本の個人投資家が、外国株を、円と日本語(基本的は、スポンサー等により、ある程度の日本語開示される)で投資できることで、アジア成長企業など外国株式投資が身近になることは、大いに期待したい。]

・J-REITでの海外不動産の組入れ解禁
[国土交通省において、海外不動産鑑定評価ガイドラインの制定や東証の上場規則改定を実施している。J-REITもグルーバル化対応ということで意味はありのだろうが、海外REITやそれを組み入れた投信の方がどうも分かり易く感じるのは、この分野での筆者の知見の無さかもしれない。]

・EDINET(金融商品取引法上の開示書類の公表システム)におけるXBRLの導入
[2008年3月から新EDINETが稼働し、企業等はXBRL対応を求められている。この目的は、ネット上で企業内容等を比較しやすくするという投資家の要望に沿ったものだが、東証開示書類も含めて作成サイドのXBRL化は進んでいる。しかし、利用サイドからみると、開示書類のXBRL利用の為には専用のソフトが必要で、かつこのソフトが個人のパソコン環境では重いのが現状だ。今後、個人投資家の利用環境が整うことと、IFRS導入と影響を整理する必要があるのではないだろうか]

※・ 英文開示の対象の拡大
[外国会社が日本において発行する全ての有価証券に拡大する為、2008年6月に開示府令を改正している。新成長戦略においても、引き続き英文開示の範囲拡大するとしており、取引所開示での英文対応も可能になるか。]

※・コーポレート・ガバナンスの強化で、内部統制の整備と上場会社等のコーポレート・ガバナンス強化への取組み
[2008年4月から始まっている内部統制報告書制度だが、その負担感の重さから、今後は四半期開示の簡素化とともに中堅・中小企業の実態に応じた見直しが行われる模様。また、本年から東証で始まった独立役員制度だが、ガバナンス強化の為の社外取締役制度推進やその機能充実の為の会社法の見直し(公開会社法?)が新成長戦略でも重点目標となっている。]

・決済システムの整備・強化
[2009年1月よりの株券完全電子化によって一旦完了したが、国債の決済期間短縮は現在検討されている。また流通可能な有価証券は、株式・債券・投信とペーパレス化され、決済・保管が証券保管振替機構(ホフリ)に集中しているが、今後期待されるのは、海外の集中決済機関が行っているような決済・保管の集中から派生する附帯サービス(例えば、取引情報の利用等)ではないだろうか。なお、金融危機後、清算機関に取引を集中させようというグローバルな動きはあり日本でも取り組まれているが、市場機能強化の為の新成長戦略としては取り上げられていない。]

市場強化プランの2年半後の姿をみていただいたが、その間、金融危機や市場環境の大きな変化もあって実効的な動きも当然変化してくるだろう。市場強化プランそのもののイメージを一言でいうなら、欧米市場と欧米金融機関へのキャッチアップであったが、今度の新成長戦略における金融戦略はアジアのメインマーケットとしての日本を強く意識したものだ。その意味で、新成長戦略の重点項目にもなっている“金融資本市場及び金融産業の活性化のためにアクションプラン策定”について、参議院選挙後、本格的に取組まれることに大いに期待したい。

テーマ : 証券・金融関連業務
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市場競争力強化プランのその後と新成長戦略=その1
金融審議会での議論を経て、2007年12月21日に金融庁より公表された“金融・資本市場競争力強化プラン”(通称:市場競争力強化プラン)は、既に2年半立ったが、そこの示されていた各具体策が、その後どう取り組まれているか見てみたい。そしてその中で、先週発表された新成長戦略においても取り上げられているものについても、今後の期待について考えてみたい。

 そもそもの市場競争力プランは、その必要性について、次のことを示していた。
① 我が国金融・資本市場において、家計部門の金融資産に適切な投資機会を提供するとともに、内外の企業等に成長資金の供給を適切に行っていくことが求めている。
② 我が国市場の競争力を強化し、その魅力を向上させていくことが喫緊の課題となっている。
③ 我が国の金融サービス業が高い付加価値を生み出し、経済の持続的成長に貢献していくことも期待される。
更に、上記に応えるために以下の目標と具合策を上げていた。([カッコ内]は、現在までの取組みとそれに関するコメント、又今回の新成長戦略に継承されているものは※印)

【信頼と活力のある市場の構築】

・株、債券や金融デリバティブから商品デリバティブまで幅広い投資を可能にするETF(上場投資信託)の多様化
[これは東証や運用会社の努力で相当進んだ。現在、東証88銘柄・大証11銘柄(5月末現在)に増加しているが、ETFの取引量は全体では減少傾向にあり、特に日本株業種別ものが一部の銘柄を除き、極端に取引量が少ない。]

※・金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れ
[前回紹介した新成長戦略における21番目の国家戦略プロジェクトとして、2013年までに総合取引所の創設を目標にしている。最近は、一部国内商品取引所の廃業や統合なども表面化している。]

※・プロ向け市場の枠組みの整備
[2009年6月に、東証とロンドン取引所の合弁事業としてプロ向け取引所TOKYO AIMが開設されたが、未だ上場商品はない。しかし、新成長戦略で取り上げられた
・プロ向け社債発行市場・流通市場の整備
は、このTOKYO AIMでの対応を前提にしているようだ。本年度中に、何らかの動意がある可能性もある。]

・「貯蓄から投資へ」の流れを強化するための証券税制
[5月から金融庁において平成23年度税制改正要望を取りまとめる為に“金融税制研究会”が開催されている。譲渡益の軽減税率・配当の2重課税・金融所得一体課税への取組みなど業界としては重いテーマになっている。日本版ISAなどの非課税制度を含め、貯蓄から投資を促進する為の制度設計を含めた議論に期待したい]

・金融商品取引法上の課徴金制度の見直し
[2008年の金商法改正において、課徴金の水準の引き上げ、TOBや大量保有報告などの虚偽記載・相場操縦行為など対象の拡大、課徴金の加算・減算制度の導入、審判手続きの見直し等をおこなっている。]

・証券取引等監視委員会等の市場監視部門の体制強化
[証券取引等監視委員会の市場監視要員の増員もあるが、証券業協会など自主規制を使った隙間ない対応や、市場監視の透明性に配慮した検査マニュアルの詳細化もあった。]

※以下、次回へ

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新成長戦略の中での、“新金融立国”への期待
週末のG20サミットを前に、先週末の6月18日に公表された政府の“新成長戦略~元気な日本復活のシナリオ~”は、業界から見ると少し頼もしくも思える。サミットというと、欧州危機が多少薄らいでいる現状だが、金融機関及び金融取引規制強化の話題が再び増加することが予想される中、日本政府は金融分野についても次の目標(2020年まで)を設定して、“新金融立国”を目指して2010年中から速やかに具体的アクションを起こすということを、この新成長戦略の中で宣言している。
① 官民総動員による成長マネーの共有
② 企業のグローバルなプレゼンス向上
③ アジアのメインマーケット・メインプレーヤーとしての地位の確立
④ 国民が豊かさを享受できるような国民金融資産の運用拡大
 
リーマン・ショック以降、久しぶりに金融立国という言葉を聞いたように思うが、金融戦略として、長期的な視点で企業などのイノベーション重視の経営をサポートできるように“金融システムの進化”を目指すとしている。また、その為に金融市場と金融産業の国際競争力を高める。その具体策の国家戦略プロジェクトとして、全体からみると21番目の案件で、総合的な取引所(証券・金融・商品)の創設を推進することが取り上げられていて、この事がマスコミなどで総合取引所創設へという記事になっている。
 このプロジェクトは、2013年度までに、証券・金融・商品の各取引所間の行政上の垣根を取り払い、総合的な取引所創設(可能な限り早期実施)により、アジアの資金を集め、アジアに投資するアジアの一大金融センターとして新金融立国を目指すとしている。

 これ以外にも、既に行政や業界等で改革・改善の検討が行われている事も、当該新成長戦略の中の金融戦略行程表において、2010年度に実施する事項として取り込まれているが、資本市場に関連したものは以下のことがある。(※は、優先度が高い事項、又、<>内は筆者のコメント)

【成長企業等への多様な資金調達が可能な金融市場の実現】
※・プロ向け社債発行・流通市場の整備(法制面の整備が必要であれば、2013年までに実施)
<社債流通市場の活性化議論は、業界において1年以上しているが、プロ向け社債発行市場の業界内での具体化議論の動きはない。但し、学界の一部からTOKYO AIMの活用が指摘されている。>
・新興市場等の信頼性回復・活性化策の検討(具体的施策を、2013年までに実施)
・英文開示の範囲拡大、業績予想開示のあり方<この件での早期実施の必要性について?>、四半期開示の大幅簡素化、上場企業の中で中堅・中小企業での内部統制報告書等の見直し

【企業の戦略的な事業再編の促進】
※・グローバル市場にも配慮した企業結合規制で、審査手続及び審査基準等の検証と見直し
※・事業再編に伴う労働移動の円滑化のための施策パッケージの策定
※・M&A等の組織再編手続の簡素化・多様化のための措置の在り方の検討
※・コーポレート・ガバナンスの強化の検討(会社法改正など)

【アジアのメイン・マーケットたる日本市場の実現】
※・金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプランの策定
<現市場強化プランを発展させ、業界の活性化策に期待したい>
※・前述の総合取引所創設

【我が国金融機関のアジア域内での活動拡大】
・アジア諸国における金融・資本市場や金融業の一層の開放に向けた政策協調の推進
<アジア諸国には、資本規制が残っているところが多い。>

【国民の資産を有効に活用できる資産運用へ】
・保険会社における資産運用比率規制の撤廃検討
・プロ投資家を顧客とする投資運用業の規制緩和
<日本におけるプロ運用者の育成は資本市場の需要なテーマ。取組みに期待したい>
・投資信託商品の多様化等に対応した投資信託・投資法人法制の見直しの検討(2011年度まで検討し、2013年度に制度整備を実施)
 
以上、金融戦略に関する29の早期実施事項のうち、16事項分(一部纏め)

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税制改正要望から見える業界の問題意識
 平成23年度の税制改正に関する業界の要望が、6月15日に証券業協会・投信協会・全国取引所の公表されている。個人の金融所得のあり方から、証券会社の事務作業軽減に関するものまで、要望されている範囲は相当広いが、その中で、“貯蓄から投資”という10年来の業界テーマに関するものについて2点取り上げ、その内容と背景となる問題意識について考えてみたい。

 Ⅰ.経済を活性化し国民生活を豊かにするための簡素な投資税制措置
①現行の上場株式等の譲渡益、配当金等に対する軽減措置(10%)を維持すること
②非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得・譲渡所得等の非課税措置(日本版ISA)の制度については、投資者の利便性及び金融商品取引業者等の実務に配慮した簡素なものとすること

[この2つの要望は、最終的に税制改正を決定する財務省の考えからすると共には成り立たない。平成24年から②の日本版ISAの導入は決まっているが、それは①の軽減措置の終了を前提にしている。勿論、業界としては、軽減措置が続いた方が良いが、①か②の選択は、どちらが優先されるのだろうか。旧来の富裕層を顧客とする証券業であれは、①の方だろうが、貯蓄から投資へというテーマであれば、②を捨てることは出来ない。しかし、現在財務省から示されている日本版ISAについて、当初案の5年5口座(一口座100万円限度)案から、試験的取組みということで3年3口座へ縮小されている。もし、英国の様に、この日本版ISAが投資と通じて個人資産を作っていくのに役立てようとするものなら、英国制度同様に、10年10口座で、かつ口座内で一旦売却しても再投資を可能とする制度を、業界として要望していくべきだろう。但し、この制度のシステムインフラは相当掛かる懸念もあり、業界としては手続きの簡素化要望とともに、制度の定着(政策的な)を見極めたいのが現状だ。]


 Ⅱ.金融所得に関する課税の一体化を促進するための税制措置
①幅広く金融商品間の損益通算の範囲を拡大し、通算後における損失の翌年以降への繰越控除を認めること
②特定口座において上記に係る損益通算の対象の拡大措置を認めること
※①、②は実務面に配慮し充分な準備期間を設けること。
③上場株式等及び公募株式投資信託の配当金等について、二重課税の調整を図る措置を講じること
④上場株式等及び公募株式投資信託の譲渡損失の繰越控除について、繰越控除期間を3年間から7年程度に延長すること
※現在行われていない債券等の譲渡益課税も、一体化で課税されることになるが、その場合の激変緩和措置・経過措置を講じること。また私募債や仕組債も損益通算の対象とすること。
※納税者の利便性向上や事務の負担を考慮して、何らかの番号の活用について検討されることが望ましい。

[金融所得一体課税については、平成15年6月の政府税調中間答申において、「金融商品間の中立性を確保し、金融資産所得を出来る限り一本化する方向を目指すべき」とされ、具体的には次の様な考えが示されている。
・金融所得を、勤労所得などと分離して課税する。
・金融商品の種類や所得分類にかかわらず同一の方式で課税する。
・金融商品から生じた収入の総計から、要した費用、生じた損失を控除することで金融所得を算出し、その金融取得に対して比例税率で課税する。
・全体の損失があれば翌年以降に繰り越し、金融所得のみと相殺する。
この前提において、順次取り組まれてきたが、当然Ⅰ.①の譲渡益の軽減措置要望とは相容れない。金融所得一体課税に関して、業界としても引き続き取り組まなければならないが、上記の番号付きの要望より、※印が業界全体の本音に近い様に思われる。]

業態が多様化している為、広く業界の要望を取り入れると、各要望間の平仄が合わないが、その為には、証券税制に関する業界内の議論の積み上げが必要ではないだろうか。

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環境問題から期待される市場
金融危機以降、金融機関を見る目は世界的に厳しくなっているが、日本では株価以外はそれ程でもないようだ。未だ欧米に比べて機能的に劣る金融・資本市場に対する改善期待はあるようで、最近政府によって示された成長戦略の中で、総合取引所構想もその一つなのだろう。また、6月15日に環境省の中央環境審議会から、“環境と金融のあり方について~低炭素社会に向けた金融の新たな役割~”という報告書が公表され、環境問題からの金融に対する期待が示されている。その中から、投資や市場機能に関するものを取り上げてみる。

【問題認識】
環境に配慮した投資として次の2つが重要。
○社会的責任投資(SRI):この3月末で、公募SRI投資信託は、88ファンド・約6000億円の運用金額で増加傾向にあるものの、米国の約30分の1・英国の約20分の1と規模が非常に小さい。なお、欧米のSRI投資は、主に機関投資家による。
○環境ベンチャー:環境ビジネスのベンチャー企業は、ベンチャーキャピタルに有望な分野として注目されている。しかし、ベンチャーとしては巨額な設備投資資金を要することやIPOまでの期間が長いことなどから、潜在的資金需要に応えていない可能性がある。

【具体的な政策提言】(投資及び市場関連のものについて)
・個人金融資産を呼び込む為の施策として、環境事業や投資に対する税制優遇(米、仏、蘭などが実施)
・環境ベンチャーへの投資促進策の検討
・年金基金による環境配慮投資の促進の為に、年金に対し、投資の際の環境配慮の方針の開示を求めること(英、独等の事例を参考に)。また、公的年金基金において、その投資判断の際、率先した環境投資への配慮を求めること。
・企業の環境関連除法の開示や提供を促進する為、有価証券報告書を通じた環境関連情報の開示(事業上のリスク等において)や環境報告書による開示の促進。また、情報ベンダー等による環境情報の提供サービスの促進。[ブルームバークによるESG(環境、社会、ガバナンス)レシオの提供(2009)、QUICK環境株価指数、FTSE環境オポチュニティ日本株指数等]
・金融機関などが、環境金融への取組の輪を広げていく仕組みとして、“日本版環境金融行動原則の策定”を行い、環境金融を広げるプラットフォームとして取り組む。(事例としては、1992年に世界の主要な金融機関が国連環境計画と策定した“環境と持続的な発展に関する金融機関声明”があり、現在日本の金融機関18社が署名)

 以上の内容となっているが、率直に言って難しく感じる。それは、上記のSRI投資や環境ベンチャーなど環境金融に対する投資を、企業の行動原則の視点で捉えようとするので、具体的な環境投資増加へのプロセスを想像し難くしている。勿論、金融機関としての行動原則は重要なことだが、これでは目標とする日本の個人資産を環境投資へ向ける行程が見えない。

 環境問題から、本来市場が求められるのは、環境に関する諸々の事象に対する価格発見機能であり、市場取引を通じて、事象や制度の歪みを見直す事ではないだろうか。市場の側から提供できることは、市場の合理性を活用する事だ。例えば排出量取引所構想において、国の制度概要が固まるのを待つのではなく、この4月から始まった東京都の排出量取引制度への積極的関与で、排出量の取引所取引整備を早急に行う、というような具体策が、市場及びその関係者である金融機関が、先ず行うべきことのように思う。

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資本市場における情報提供のあり方
 結論は明らかである。“適時、簡単、明瞭”これが資本市場での情報提供のあり方の全てである。ちなみに、情報提供は誰の事を想定しているかというと、金融機関の審査部の方でも、会計士などでもなく、市場の一般の参加者を想定したもの、つまり公表ベースのことである。

 しかし、実際の資本市場における情報提供は、そうでないことが多いので、改善を求められたり、情報提供のあり方を再検討することも最近多くなっていると思う。市場関係者としては、自らの文章においても、上記原則の簡単・明瞭は肝に銘じなければならないが、これに反するような文章は、MBOに関するものに多い。特に失敗と言われるようなMBOでは、まるで悪文の見本のようなものがある。この悪文は、会社側(経営者でMBOの主体者、もともと一般株主とは利益相反する)の言いたいことに、弁護士が法的リスクを避けようと手直しした結果だと思われるが、普通の株主は、多分会社側の言いたい事の半分も理解できないのではないだろうか。

 反対に簡単すぎて問題なのは、銀行グループのファイナンスでの資金使途の記載だ。子会社銀行の増資資金にするというのは、確かに簡単明瞭だ。しかし、3~4割も希薄化をする増資で、株主が知りたいのは、それも押してまで増資する資金の前向きな使われ方であり、株式を保有し続ける明るい材料だ。その期待に結果応えられるかどうかは確かに分からないが、株主の鼻を木でくくるような記載はいただけない。

 また、資本市場に関する数字のあり方も、いろいろと使う立場で問題がありそうだ。例えば、公募増資の場合、当初1000億円の増資だと公表されるが、値決めまで1割株価が下落してしまい、かつ5%デスカウントなので、850億円の増資になったかと思いきや、この中で50億円分は引受証券会社が手数料としてとるので、会社側は800億円の増資ということになる。(投資家からは、850億円集めている)
結局、1000億円増資を計画していたが、800億円の増資で終わったということになるが、実際の増資統計では、更に以下の様に複雑になる。
 800億円のうち、600億円が普通の公募、200億円が所謂グリーン・シュー・オプション(主幹事証券に、第三者割当増資の形で割り当てる新株の追加発行請求権)であれば、本来は株主や市場からみて800億円の公募増資のはずが、統計上は600億円の公募、200億円の第三者割当ということになる。更に、国内と海外で同時に募集を行うグローバル・オファーリングの場合、この事例で、国内・海外がそれぞれ半数の時は、最終的に増資統計上は次の様に集計される。
国内公募増資:300億円、海外公募増資:300億円、国内第三者割当100億円、海外第三者割当100億円(合計は確かに800億円の増資だが、850億円支払った投資家からみると随分細分化された統計になる。※実際は、これほど乖離するケースはない。)

 上記のケースは、増資の実態と統計方法のミスマッチに見えるが、増資方法が進化しているのに、統計方法が昔ながらだと、この様な実態を現わさない統計数字が出来てしまう。

 この様な資本市場に関する統計数字の問題は、実は業界では古くから指摘されており、証券や金融機関の商品部門や企画部門は、自ら人手をかけ集計し直すか、データー集計会社の統計を活用していた。しかし、協会等が公表する統計数字は、一般投資家が無料で入手できる唯一ものだ。せっかくある資本市場の統計を個人を含む投資家が活用できるよう、その見直しが始まった。6月2日、日本証券業協会より“金融・資本市場統計の整備に向けた具体的な課題・取組について(中間整理)”が公表されているが、来年の10月を目途に、統計方法の見直しと提供するポータルサイドの整備を行う。実効性にある取組みを期待したい。

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フラッシュ・クラッシュ
 5月6日に米国株式市場で起きたフラッシュ・クラッシュ=瞬時の急落は、金融危機からの立ち直りに取組む市場関係者の肝を充分に冷やものだった。この日の株式市場は、ギリシャ危機の影響で欧州から下落していたが、米国でもじり安となり14時40分までに400ドルを超す下げになっていた。問題はその後の20分に起きた株価の急落と急反発だが、14時47分には1000ドル近い下落、その直後の500ドル以上の反発で、16時の取引終了時間には348ドルまで回復した。この日の株式市場の動きを指して、フラッシュ・クラッシュという言い方が定着しているが、急落過程で株価1セントというような最低価格での取引が多数成立していた事に対して、ナスダックは14時40分の価格から60%以上乖離していた価格で成立していた取引を取り消す事を公表した。この原因に関して、当初は主要銘柄で個別に急落したP&Gや3Mの取引への誤発注、株価指数先物でのシステム売買でのストップ・ロス取引、果てはサイバーテロ説までその原因説が出ていたが、5月18日に米SECとCFTC(商品先物取引委員会)の中間報告書が公表され、以下の様な取引状況と原因の検討が示されている。
●上場銘柄7878の内、問題の14時40分から10%以上下落して取引された銘柄が、全体の14%に及び、更に約200銘柄は100%近い下落(つまり最小取引1セントに近い)
●問題の20分間の取引で、取引件数ベースではこの間の取引量約713万件のうち70%の501万件が下落しているが、30%の212万件分は上昇している。株価が100%近く動いたものは、下落で11510件、上昇で1205件。
●原因の特定には至っていないが、次の影響を上げている。
・株価指数先物やETFの下落に対して、個別株式への売り注文が同時もしくはやや遅れて出されているが、両者が連動している可能性。
・著しい低価格での取引は、電子的取引でのマーケット・メーカーの機能停止、ストップ・ロス取引注文など成行き売り注文による。(流動性のミスマッチ)
・取引市場間の取引慣行が異なる影響が、流動性のミスマッチを悪化させた可能性。(例えば、一方にサーキットブレーカーがあって、その他注文を転送される取引所にない場合。注文執行や価格表示の反応スピードが異なるケース等)
・マーケット・メーカーが売りと買いの気配を同時に提示する必要から、下落時に極端にその幅が拡大した気配値を提示するSTUB QUOTEの利用。
・成行注文、ストップ・ロス取引のアルゴリズム的連鎖が市場の不安定化に影響した可能性。
・ETF取引では、著しい取引取消が発生していたこと。

 この報告書の公表と共に米SECは、全米の取引を対象とする新たなサーキットブレーカー制度の導入を公表している。その内容は、S&P総合500種指数を構成する銘柄を対象にしており、ある銘柄の価格が5分間に10%以上下落した場合に、取引を5分間停止するものだ。制度の導入は、12月10日まで試験ベースで行われ、市場全体に関するサーキットブレーカーも「再調整」が検討される。
 問題の背景には、超高速取引に対する米国での政治的反感もあるようだが、全米に約40ある取引所や私設の電子取引システムが一つの巨大な取引ネットワークを形成し、株式の流動性付与に貢献しているのは米国資本市場インフラの強みであることも事実だ。その姿を追う日本でも、本年の東証arrowheadが開始され、今後の超高速取引本格化が期待されるが、アルゴリズム取引やコローケーション・サービスによる取引と通常の取引ルールの同一性を確保していく工夫や、取引の透明性の確保が必要なのだろう。但し、角を矯めて牛を殺すことないように願いたい。(金融イノベーションの遅れている日本では、規制より、先ず取組みが先行して欲しい)

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経済界からみた日本の金融・資本市場の課題
日本版金融ビックバンから13年も経過したが、証券会社というものの中身も随分変化した。それ以前は、大手も中堅も中小も、証券会社であれば同様のビジネスモデルの上にあり、どこでも似た様な営業スタイルで通用(このモデルのピークは20年前のバブル絶頂期)したが、手数料自由化、ネット取引、投信販売の拡大、投信窓販、デリバティブ、証券化商品、外債投資、FX取引など多様化し、そして一部は特化し、更に金融商品取引法により、金融商品取引業者となった。
 この金融商品取引業者の変化は、日本の金融・資本市場の変化そのものだが、今後はどの様変わり方をするのだろうか。そのヒントを市場利用者の立場にある経済界の要望(市場に対する提言)から考えてみたい。

 経済同友会は、6月8日に“わが国の金融・資本市場の活性化の課題”副題:アジア成長取り込みを自己変革の契機に、という提言を公表している。この中で、課題として以下の4点を上げている。
●市場整備と活性化の取組み。(2007年12月に、金融・資本市場競争力強化プランが金融庁より打ち出され、様々な提言がなされたが、その後の金融危機で、その進捗が遅れていないか。その間、香港やシンガポールでの国際金融センター化に向けた取組みが進んでいるが、社債市場の活性化対応など日本での市場整備が進んでいないものも相当ある。)
●市場のプレーヤーである投資家・企業・金融機関それぞれの課題な残り、対処療法的な対応だけでは改善が期待できない。
●上記プレーヤーそれぞれがアジアの成長を活かして、投資機会の増加、経常収支の改善、国際競争力強化を通じて自己変革の契機にするべき。
●国際的な規制再構築の中で、金融イノベーション(日本は、まだ十分に利用していない)を阻害する規制に反対し、規制に関わらず競争力の向上が必要。

 また、具体的な施策として以下の様な提言をしている。
○コーポレート・ガバナンス強化による市場の信頼確保の為の社外取締役活用。
○市場における国際的な公正性確保の為に、一般市場でも英語による情報開示を可能とする。
○国際的な動きにあわせて、デリバティブなど取引の透明性確保への取組み。
○機関投資家の運用能力を強化するため、プロのファンド・マネージャーの育成や、小規模な私的年金基金の合同運用化への取組み。
○個人の確定拠出年金の拠出枠拡大・マッチング拠出の容認。
○株式譲渡益・配当など軽減税率の延長を、納税者番号制の導入まで継続。
○アジアを意識したグルーバル経営として、
・海外人材の登用など雇用の多様化への対応
・スピード経営の実践
・英語を社内コミュニケーション言語化
○金融における政府と民間の健全な関係の構築の為の、情報の共有・コミュニケーション・海外インフラでの官民連携・郵政民営化の実施

 以上から、金融商品取引業者となった証券会社が、現在経済界から求められていることは、ビジネスの視点をアジアに向けることのともに、企業としてグルーバル化に対応できる組織と陣容を整えるという、大手証券が現在取っている戦略に纏まる。また、施策の中には、今後更に専門化していくそれぞれの金融商品取引業者が取り組むべきものもある。
(※経済同友会の提言そのものは、行政に向けたもだが、市場仲介者としての証券業界からも、社債市場や新興市場の活性化など、具体策とその優先順位を示して、日本の金融・資本市場強化へ取組むべきなのは当然なことだ。)
 

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株式持ち合い解消への動きと、その受け皿
 ここ十数年来の株式市場を巡る当局の政策や取引所の施策の背景の一つに、株式持ち合い解消に向けた流れがある。上場会社株式の持合状況は、20年前の1991年度に金額ベースで全上場株数の28%もあった銀行・事業会社間の株式待ち合いが、2008年度には8.2%(内、銀行が保有する持ち合い株分は3.2%)まで減少している。(※数字は大和総研調べ。株式持ち合い構造の変化の詳細については、同社“解消に向かうのか、日本企業の株式持ち合い”2009.11をご参照ください。)

 この間、海外投資家や窓販解禁で拡大した投信などが持ち合い解消の受け皿になったが、旧商法で解禁された自己株式取得でも、相当数吸収している。
銀行・事業会社間の株式持ち合いは、敵対的買収行為の表面化や株式市況の回復で2005年度から2007年度にかけて一時的に増加していたが、
○リーマン・ショックによる市場リスクの認識
○金融商品会計見直し・IFRS導入など会計制度上の圧力
○持ち合い株式に対するディスクロージャー強化
などの影響から、再び持ち合い解消への動きが強まっている。
この動きは市場への圧迫要因と見られるが、自社株取得は主要な受け皿として機能しており、買付け数量も企業業績の回復と共に復調の兆しが出始めている。

 株式持ち合いやその解消に対する行政等の動きとしては、開示強化と受け皿対応がある。
金融庁が2月に公表したコーポレート・ガバナンス強化の為のディスクロージャー対応として、本年3月期の有価証券報告書分より【株式保有の状況】で、上場企業に対し、より詳細な保有株式の記載を求める。具体的には、純投資以外で保有する目的の株式で、貸借対照表計上額の上位30銘柄に該当する場合若しくは、資本金の1%以上について、銘柄、株式数、保有目的、貸借対照表計上額 を示す必要があり、この措置により企業間の株式保有は、その保有する目的の明確化が求められる。
また会計制度においては、金融商品会計の見直しにおいて持ち合い株式は時価評価の対象となり、更に現在2011年3月期導入を目指している包括利益計算書では、その持ち合い株式の含み損益も包括利益として把握される為、益出しに利用する意味は薄れる。

 一方、受け皿対応としては、昨年の国会で成立した“資本市場危機への対応のための臨時特別措置法案”
があり、以下の内容となっている。
・銀行等保有株式取得機構の金融機関からの株の買取りは、平成24年3月末まで延長
・銀行等保有株式取得機構の存続期限を平成34年3月末まで延長
・銀行と株式持合いをする会社(子会社分まで含めて)から、銀行株を買取る制度を新たに新設。これも平成24年3月末まで。
・上記の場合、相手の銀行が保有する当該持合いの会社株式について、その銀行が6カ月以内に申し込めば、取得機構はこの会社株式を買取ることができる。
なお、取得機構による株式の取得累計は5月末まで4046億円、取得は10月末まで継続される予定となっている。
また、日銀による金融機関保有株式の買取りも昨年2月から1兆円の枠で再実施されており、この措置は4月末をもって終了している。取得された株式の累計は、3878億円となっている。
上場企業の自己株取得に関する規制も、空売り規制とセットで一時的に緩和されており、
・1日の買付数量の上限について、直近4週間の1日平均売買高の25%を上限として自己株式の買付けを行うこととされているが、これを100%に引き上げる。
・買付時間は、取引所の取引終了時刻の直前30分間以外の時間に自己株式の買付けを行うこととされているが、これを適用しない。
この措置は、7月末までの時限措置となっている。

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今日的買収防衛策の意味は
会社は誰のものかという議論を、もう10年来している。確かに上場会社であっても会社は株主のものだけで無いことは世間の一致するところだが、株主としての最低限の利益が守られなければ、資本市場は成り立たない。その株主や投資家の利益を守る仕組みが、コーポレート・ガバナンスの強化で、それを対外的にキッチリ示すのが、ディスクロージャーの充実ということになる。
 そのコーポレート・ガバナンスの目的の一つに、買収防衛策への対応があるが、もう真近に迫ってきた6月下旬の株主総会で注目される議案だ。この6月総会以降、株主総会での議決権の行使状況を原則開示(臨時報告書で)しなければならないが、株主の投票結果の公表を前提にした企業側の買収防衛策への対策が注目される。

 そもそもの買収防衛策は、敵対的買収に対するライツ・プランの発動を前提にしたものだが、このライツ・プランは、ライツ・イシュー(株主割当増資)と同じく新株予約権を株主に付与する。違いは、企業が敵対的買収者と認定したものは、このライツが行使出ず、結果4割買付けたと思った株数が保有比率だけ2割や1割まで低下させてしまう。
買収防衛策は、2005年から企業に本格的に導入され始め、2007年には年間導入企業数が234社とピークとなり、昨年末時点で567社(レコフ調べ)が導入しているが、これらの買収防衛策は、有効期限を3年間としているものが多く、今年は株主総会で再提案時期に当たる。注目されるのは買収防衛の再提案内容と、それに対する機関投資家などの投票動向だ。上場会社の15%近くも導入している買収防衛策だが、TOBルールの改正などによって、目的も分からず突然3分1以上保有されるリスクが減じたことから、最近は廃止する企業も目立っている。

買収防衛策の内容については、いくつかのパターンに分けられるが、株主側からみたポイント概要は以下の様になる。
●敵対的買収者として認定するプロセス
●ライツ・プラン(株主への新株の付与)発動の条件
●敵対的買収者への対応(金銭での買い戻し条件等)
1番目は、誰にとって敵対的かということを明確にするプロセスであるが、誰が敵対的買収者として判断するかということが重要になる。2番目は、ライツ=新株予約権の仕組みとその実際の付与は、他の株主にも負担を強いることになるが、その理由付けとその理由に沿った新株予約権の設計が出来ているか。3番目は、防衛することで会社の金銭的資産が流出して、企業価値を減じる可能性があることに、どう配慮されているか。

 買収防衛策の導入に当たって、企業側の指針としては、2008年6月に企業価値研究会に纏められた“近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方【案】”があるが、買収防衛策の目的は、企業価値、ひいては株主共同の利益を守る為とし、経営者による買収防衛策の運用について、以下の行動のあり方を示している。

①株主共同の利益の確保・向上に適わないにもかかわらず、株主以外の利害関係者の利益に言及することで、買収防衛策によって保護しようとする利益を不明確としたり、自らの保身を目的として発動要件を幅広く解釈してはならない。

②被買収者の資産を買収者の債務の担保とすることや、被買収者の資産を処分し、その処分利益をもって一時的な高配当をさせることが予定されているなど、それのみでは当該買収が株主共同の利益を侵害するとまでは言い難い理由のみをもって、買収防衛策の発動が必要であるとの判断を行ってはならない。

③買収提案の検討期間をいたずらに長期なものとしたり、意図 的に繰り返し延長することによって、株主が買収の是非を判断する機会を奪ってはならない。

④買収提案が株主共同の利益を向上させるものか否かという観点から、買収条件、買収が株主共同の利益に与える影響等の買収提案の内容や、買収者の属性・資力等について、真摯な検討を行わなければならない。

⑤買収条件の改善により当該買収提案が株主共同の利益に資するものとなる可能性がある場合には、買収条件の改善に向けて、買収者との交渉を真摯に行わなければならない。

⑥株主共同の利益を最大化させる買収提案であると判断した場合には、株主総会で株主の意思を問うまでもなく、直ちに買収防衛策の不発動を決議しなければならない。

⑦株主が買収の是非を判断できるよう、買収提案に対する取締役会の評価等について、事実に基づいて、株主に対する説明責任を果たさなければならない。

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日本の資本市場の問題:東証社長の講演録より
 日本悲観論にもう10年来慣れているはずだが、一人当たりのGNP23位(2008年)だと数字を突き付けられると、長年経済大国日本に育ってきた身としてはガッカリしてしまう。
 金融・資本市場において、世界に誇る1500兆円の個人資産を背景に、貯蓄から投資へのビジョンを語っても、足元の日本の資本市場の現状も見直してみると、この分野の国際競争力が確実に低下していることが分かる。日本の資本市場はどうしたのか。昨年は、バブル期以来の5兆円を超す公募増資や社債の発行増加など発行市場は堅調だったが、その発行市場の恩恵は一部の市場参加者(証券を含む金融機関)だけで、流通市場・IPO市場・国債以外の債券市場機能の問題点は指摘されながらも、改善への具体的取組みが一向に始まらない現状。その日本の資本市場に問題に関して、東証社長が「資本市場を考える会」での講演で指摘しているポイントを紹介しておきたい。

【東証の時価総額】
 売買高では上海取引所に抜かれたりしていることがマスコミで時々話題になるが、時価総額ベースではまだ東証の方が大きい。ただし、上海と深センを合わせると東証とほぼ同規模、3月末時点でそれぞれ3.5兆ドル。ちなみに取引所単独では、東証はニューヨーク取引所12.4兆ドルに次いで現在世界2位、3位のナスダックは東証とほぼ同規模の時価総額。

【IPO数】
 東証は9社で資金調達額2.4億ドル、ニューヨーク取引所は35社で157.8億ドル、香港取引所は66社で320.2億ドル

【主要取引所収益等の比較】
・東証:営業収益670億円、営業利益141億円、時価総額(関係者の推計では3000億円程度か)
・大証:営業収益200億円、営業利益77億円、時価総額1320億円(3月末)
・シンガポール取引所:営業収益393億円、営業利益150億円、時価総額5462億円(3月末)
・香港取引所:営業収益761億円、営業利益657億円、時価総額1兆6788億円(3月末)
・ドイツ取引所:営業収益3063億円、営業利益841億円、時価総額1兆3466億円(3月末)

【PERの国際比較】(3月末時点9
日本:17.7倍(TOPIX;赤字企業を除く)、米国:17.4倍(赤字企業を除く)、イギリス12.2倍、ドイツ:18.8倍、香港16.4倍、中国:15.7倍(銀行は13倍程度と低いが、事業会社は40~50倍とみられる)

【30年間の主要企業の移り変わり日米比較】
30年間、時価総額30位以内ランキングで入れ替わりは日本が13社、米国は21社。その内、ベンチャー企業からのランキング入りは、日本はソフトバンク1社、米国は7社。

【プロ向け市場の状況】
 昨年6月に東証とロンドン取引所の合弁取引所として開設されたTOKYO AIMは未だ上場なしというのは報じられているが、同様の仕組みで昨年10月末にスタートした中国版新興市場の“創業板”は70社を超えていて、待機企業数が150~160社あると言われている。

【東証の高速化対応:機関投資家】
 投資家側への取引高速化対応サービスとして、東証はコロケーションサービス(取引サーバーを東証システムと同じ場所に設置することで、更に取引注文を高速化させる)を提供している。この申込みは予定の倍(20社程度?)があるが、日本の機関投資家はいない。

 斉藤社長の講演は、日本の資本市場をどうやって復活させていくか、様々な示唆に富む内容で話されているが、上記は、講演内容から日本の資本市場に関して直接指摘しているものを抜粋した。
(詳細の講演内容は、日本証券経済研究所:証券レビュー5月号“資本市場の実態と再生に向けて”をご覧ください。)

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はじめてのライツ・イシュー=結果は?
 日本における最初のライツ・イシュー“タカラレーベン第1回新株予約権”の払込みが先月末で終了し、46億円の資本を調達した。この資本調達方法は、新株への払込みの権利=新株予約権を、株主全てに付与し、新株への払込みを株主へ促する事で資本を調達するもので、株主割当増資(嘗て銀行などが行った中間時価発行増資もこの方法の一つ)のことだ。今までの株主増資と異なるのは、この新株への払込みの権利を新株予約権として上場することで、株主や投資家側の売買や権利行使の選択肢が拡がり、その結果、資本調達をスムーズに行う方法として期待されていた。この3月末の株主に割当てられたタカラレーベンの新株予約権は、95.7%が行使され、冒頭の資本調達となった。調達した資金は、本年度の新築分譲マンション事業・中古再販事業・買取再販事業の為の物件取得資金に充てられる。
資金調達面では、発行会社としてまずまずの成功で、この様な新しい取組みに尽力された関係者の方々に敬意を払いたい。(取引所に新しい商品を上場させること、また新しい商品を証券会社等が取り扱うのは相当に大変な労力とコストを伴う)

 この初めてのライツ・イシューに関する推移は次の様になる。(以下の株価は終値ベース)
・3月5日、3月末の株主に対して日本で初めてのライツ・イシューを実施することを公表(株価:457円)ライツとして発行される新株予約権の行使価格は300円。1株に対して1株の払込みの権利。この新株予約権は、東証に4月1日から5月24日まで上場され、権利行使期日が5月31日まで。株主の疑問に対しては、Q&A方式で回答を公表。
・3月16日、Q&A方式の追加を公表。
・3月18日、新株予約権の上場日程の公表と、権利行使の手続きを5月28日まで証券会社等で行う必要について公表。
・4月1日、注目のライツ=新株予約権が上場され、初値は70円、100円まであって、安値は69円、終値は80円、出来高は20万500株分。(同日の株価:404円←行使価格との差額は104円)
以後、新株予約権は5月24日まで上場され、高値は4月27日の215円(同日の株価:520円←行使価格との差額は220円)、安値は5月24日の3円(同日の株価:323円←行使価格との差額は23円)、取引された総数は360万8100株分で発行数の20.5%となった。
・4月20日、2010年3月期末の業績の上方修正で、利益関係を約1割アップ。
・4月26日、「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載(決算短信ベース)を解消することを公表

 以上の様な結果に終わったが、既存株主に優しい増資方法として期待されるライツ・イシューだけに、顕わになった問題点についても指摘しておきたい。

【ディスクロージャーと時期】
 ライツを付与され、取引所で売買する時期に、重要事実の公表が相次いだ。ライツの上場と行使の時期が決算発表時期と重なり、その間にライツの売買・行使に関して株主や投資家は判断しなければならない。せっかく付与日翌日から売買可能でも、結局決算発表なの重要事実が出切らなければ、既存株主は売買し難いという事が認識された。また、発行会社側の対応としてQ&Aが公表されているのはライツ・イシューに慣れない株主にとって好ましい事だが、経営者であり筆頭株主の権利行使に関する記載を敢えて行った意図がよく分からない。(公表によると既存保有株を売却して、新株予約権の一部または全部の払込みに応じるとしている)

【証券会社での扱い】
 正確には数えていないが、このライツ・イシューの取扱い証券会社は概ね全体の3~4割程度ではないだろうか。この株式は東証1部上場で、証券会社ならどこでも取り扱えるが、東証での新株予約権市場への証券会社としてのアクセスを準備していなかったり、新株予約権の権利行使の手順などを整備していない証券会社が多くあった。この事は、証券会社サイドがライツの取引の為の新たなシステム負担を嫌った面があるのと、権利行使の為のコスト対価(株主分)をどうするか発行会社サイドで決定していない為と想定される。権利行使のコストに関して、結局、証券会社毎に株主からコスト負担を求める方式だった。今後、ライツ・イシューの拡大に為には、権利行使コスト負担は、発行会社が1~2%程度でも決定して、証券会社へ支払う方が良いのではないだろうか。

【流動性確保の為の努力】
 ライツ・イシューを成功させる為には、付与を受けた株主や投資家が行う様々な投資判断に対応できるように準備すべきで、その為にはライツ=新株予約権の流動性の確保は必要最低条件だ。今回のライツ上場期間中に、信用取引での売却は実質的に行えない状況が続いていたが、ライツそのものの流動性を高める為には、新株予約権と貸株の裁定取引を活発に行えるよう、貸株への対応は十分配慮すべきだったのではないだろうか。

 以上の3点は、今後のライツ・イシューの拡大に期待したい筆者の小言である。

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IFRSへの誤解
今、本屋さんへ行くとビジネス・コーナーではIFRS(国際財務報告基準)関連の目立って増えていて、なかには大きなスペースを取って特設エリアを設けているところさえあり、世間の関心の高さが伺えしえ知れる。確かに、今、日本の会計制度は、IFRSとの2012年までのコンバージェンス(共通化)過程にあり、IFRSの影響は何らか受ける。また、公開会社では連結ベースでの任意適用が始まっていて、これに2012年までに強制的に適用するかどうかを決めると言われると、会計基準であるだけに企業側が焦る気持ちも分かる。特に上場企業にとっては、内部統制報告にようやく対応したと思ったら、その以上の影響があるとマスコミや会計コンサルに言われると、対策室でも設置したくなるのは当然だ。この様なブームの観さえあるIFRS対策に対して、誤解があると思われる事例を集め、Q&A方式で正解(=現状)を示している。その誤解については、以下の様なものがあるが、共通化による日本の会計基準の変更や見直しが進む現状では、単純に誤解といって笑えない背景もある。

(※以下の件は、全て現状では否定される。)
・上場会社は直ちにIFRSが適用される。
(任意適用は、連結ベースのみ2012年から、強制適用をするかどうかは2012年に決定、ただしその場合も2015年以降の適用。なお、IFRSを連結ベースで適用している国は多いが、個別ベースまで適用するのは欧州の一部なので、日本でどうするかは今後世界各国の動向を見定めながら決定)
・非上場会社(中小企業など)にもIFRSが適用される。
(企業財務を国際標準に近づけるというIFRS適用の目的からすると全く予定されていない。ただしコンバージェンスの影響は受けるので、非上場会社向けの会計基準を新たに作ることも検討中。)
・全面的なITシステム・業務プロセス全般の見直しが必要か
(これは良く分からない。会計コンサルと相談すべき個々の問題か)
・IFRSは原則主義(プリンシプル・ベース)なので、必ずコンサルタントに依頼しなければならない。
(上記と同様。金融庁の回答は否定)
・IFRSは原則主義なので、監査人の言うとおりにしなければ監査意見をもらえなくなる。
(上記と同じように原則主義では何が必要か理解されていないようだ。原則といってもIFRSは相当原則が細かく決められているが、その原則決定の判断は経営者が行い注記することになる。)
※以下、英語に関するものが3つ(答えは全て必要ない)
・財務諸表は英語でも作成する必要があるのか
・英語版IFRSを参照する必要があるのか
・監査は国際監査基準で行う必要があるのか
次は、内部統制報告で相当苦労した結果の影響だろうか。
・監査は大手監査法人でないと出来ない。
(現状でIFRSを適用しようとすると、その通りだと肯定したくなる。コンバージェンスへの対応や、金融商品会計やヘッジ会計のように、IFRSそのものも現在見直しているところがあるので、これらの情報や対応を行える会計コンサルは、今だと限定されていると思う。但し、日本公認会計士協会が会計士への研修や情報提供を支援するという。)
・これまでとは全く異なる内部統制を新たに整備しなければならないのか
(これは企業側の内部統制報告に関する苦い経験からの不安だと思うが、内部統制は内部統制、IFRSは財務報告基準)
・業務管理や内部管理の資料もIFRSで作成しなければならないか
(上記と同じ。)

繰り返すが、この様な誤解は、決して笑えない背景がある訳だが、証券界は資本市場への誘導者として、企業のIFRS対応への協力が必要で、取引所のみに任せるべきではない。
(IFRSの基本になる時価≒公正価値の考え方に関して、特に金融商品会計に関する情報では、発行者である企業側・投資家側双方に、証券会社が充分に提供していく必要があると考える。)

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社債価格情報の共有は、市場活性化に役立つのか。米国事例
プローカーにとって取引価格の情報を顧客の投資家にリアルタイムで知られることは、オフォー・ビットのスプレット幅の縮小に繋がり、社債取引におけるブローカー収益の低下に繋がる。また、取引価格情報を一部の顧客に伝えることがブローカーとしてのサービスという面もあり、社債市場の主要なブローカーの立場では、反対意見が出るのは当然だ。その主要なブローカーから、彼らの反対を押しても、社債市場が活性化して拡大する為にという美名のもの、取引価格情報を出させるというのは相当の強制力が必要で、もし日本でこれを行おうとすると政策的な強制力が必要なことは誰しも思うことだ。社債を取引するブローカー間で、自主的に取引価格情報の公表を行うことの想定には、プローカーの立場からみて無理がある。

しかし、米国では社債の価格情報システムとしてFINRA(米国金融取引業規制機構)が運用するTRACE(The Trade Reporting and Compliance Engine)があり、2002 年7月から運用が開始され、米国の社債市場拡大に役立っていると評価されている。そのTRACE制度の概要は以下の様になっている。
?FINRAの規則に基づき、ブローカーは、社債の取引情報をFINRAに報告。報告された情報はディーラーや機関投資家等の市場参加者には有料のサービスとして、個人投資家へは無料のサービスとしてリアルタイムで提供されている。
? 導入当初は、一部の社債であったが、その後順次拡大され、2005年11月以降、原則、すべての対象証券が取引執行後15 分以内に報告、公表される。
?対象となる証券は、SEC登録を受けた債券又はルール144A(適格機関投資家向け私募)に基づく債券であり、普通社債、ミディアム・ターム・ノート(MTN)、転換社債等。
?報告される情報は、CUSIP(証券識別番号)、取引量、取引価格、売買の別、取引執行時間、コミッション、利回りなど
?対象の証券数は、2009 年12 月末現在、30,378 銘柄(うち投資適格債17,928銘柄、ハイ・イールド債12,450銘柄)となっており、95%の取引が取引執行後5 分以内に報告されている。
?取引の状況は、約3 万銘柄のうち、50%は毎月1 回以上、15〜20%は毎日取引されている。最近の1日平均の取引件数は44,000件で、リーマン破綻後、個人投資家の取引増加により件数ベースで4割以上増えている。

 この制度は、個人投資家への価格情報提供・利益保護が目的だったが、導入時にはブローカーの大多数が社債取引での収益性低下懸念から反対していた。実際、ブローカーの提示するスプレッドが50%縮小したという学術研究もあり、ブローカーの評価はTRASEの必要性を認めながらも、大口取引などでの流動性低下などのコメントもある難しい評価となっている。

一方、機関投資家の評価としては、
・社債の直近の取引水準に関する可視性が高まり、流動性も向上。
・ブローカーの執行コストのモニタリング(簡単にいうと幾ら抜いているか)が容易になった。
・スプレッドが大幅に縮小した。
・投資信託の資産評価のばらつきが少なくなり、時価評価が一貫するようになった。
などが上げられていて、社債市場において取引価格を参加者間で共有することが、市場の透明性向上に役立ち、かつ市場の拡大に寄与していることが裏付けされている。

 但し、このTRACEシステムのコスト負担は、主に主要なブローカーが負っていることに十分留意されなければならない。収益低下の懸念を負っても、制度維持に協力するには、政策的強制力(米国の場合、報告義務違反に対する罰金)や、社債市場の拡大期待が必要だ。

協会で行っている社債市場活性化のワーキングもそろそろ佳境に入っているだが、この様な制度を日本に導入出来るか
については、日本の資本市場の知恵が試されている。

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市場の透明性とは何なのか=社債市場改革に想う
米SECによるゴールドマン訴追は、業界関係者にとってショックでかつブローカー業務として難解な問題(プロ同士の取引であても、ブローカーとして情報の非対称性に配慮した行動を求められるという点)を提示された格好だが、日本の社債市場活性化対策における問題はもっとプリミティブなものだ。
 それは取引者間で、実際に取引された価格情報を共有することの問題だ。
株式市場においては、今なら証券会社に聞かなくとも、ほぼリアルで価格情報を入手することが出来るし、FX取引においても主要通貨なら、マスコミやネットで価格情報を入手することは容易だ。しかし債券市場特に社債市場において、価格情報の共有は、一部銘柄と、一部ブローカー、そしてほんの一部投資家に限られていて、株式やFXとは大きく異なる。社債市場(流通市場)は、個人が殆ど参加しないし、ブローカーも参加する投資家も限られているので、今の流通システムで良いという意見は、大手ブローカーの意見として当然出てくるだろう。また、社債はバイアンドホールドの投資家が多いので、社債の発行量が増えるよう発行市場の機能をもっと整備すべきとの意見も発行企業サイドから聞こえる。しかし、どの様な市場であっても最低限市場参加者間で共有されなければならないのは、取引価格の情報である。ブローカーを含めて市場関係者は、最近よく市場の透明性が重要だというが、その透明性を担保する必要最低条件は誰でも理解している。が、実質的に取引情報の共有が進まないのは、主に以下のブローカー側の理由による。

●社債取引(他の債券の店頭取引も同様)は一旦ブローカーが売買の相手方になって、それから転売するというケースが多いが、その場合、ブローカーにとって売買価格の差=スプレッドが、取引の為のリスク負担やブローカーの利益になる。その為、取引価格情報が共有されると、このスプレッドが売買の相手方を含め投資家に知れてしまうことになる。このことをブローカーは潜在的に嫌う。

●次の話は、外部からみると非常に分かり難いが、敢えて説明を試みる。
社債を含む債券価格情報(取引価格情報ではない)に関しては、既に日本証券業協会が主要ブローカーの協力のもとに「公社債店頭売買参考統計値」として毎日公表している。これには相応の負担をしてブローカーとして協力している現状があるが、問題はこの「公社債店頭売買参考統計値」の作り方だ(取引価格ではなくブローカーからのヒアリングベース)。この価格情報は、機関投資家などの保有債券評価に使われているようだが、当のブローカーからでさえ実勢価格との乖離やタイムラグ等が指摘されている。ブローカー流に簡単に言うなら、使えない情報になっているが、分かり難いと言ったのは、投資家の管理部門(トレーディング部門ではない)が使っていて、社債の情報があるのかとブローカーに問えば、この「公社債店頭売買参考統計値」を示す。但し、取引には使わないという注釈がつくという分かり難さだ。つまり目的が違っていて、この価格情報は管理の為の情報で取引の為のものではないということになり、さらに分かり難さに拍車を掛ける。(勿論、実勢と異なる価格情報を評価に使うべきかという、そもそもの議論もある)

●社債市場の関係者なら、一部の主要ブローカーを除いて、米国のTRACEの様な社債の取引価格の共有システムがあれば良いと誰しもおもうが、問題はこの様な価格情報の共有の為には相当のシステム投資が必要で、結局、情報共有を嫌がっている主要ブローカーのコスト負担の頼ることになる。このこと自体も、政策的な強制力がないと難しい。
 以上から、日本の社債市場の現状は、発行市場に偏重し、かつ一部の主要ブローカーと一部の機関投資家の限られたマーケットになっている。4月末時点での社債市場規模は、公募社債2493銘柄、私募社債55472銘柄、一日あたりの取引件数1685件。社債の流通市場において個人は殆ど参加しない。

 次回は、米国の社債市場において取引情報共有システムTRACE導入後、米国社債市場がどう変化しているか、証券業協会ワーキングチームの海外調査報告をベースに紹介したい。

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