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2010/07
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FX規制は誰の為か
 この8月よりFX取引のレバレッジ規制が始まる。先ずは証拠金の50倍まで、来年8月からは25倍以内に売買する外貨の金額を制限する。このレバレッジ規制は、個人投資家を中心に反対が強かったが、FX取引の健全性を重視する金融庁により、結局実施される。このFX取引という個人中心の外国通貨取引は、本番の外為市場での取引全体の2割近くになることもあって、市場のプレーヤーとしての存在感も増えており、証拠金総額で6000億円、口座数推計で250万口座を超えているようだ。過去5年間で証拠金が2倍、口座数で5倍の急成長になる。

 FX取引は証拠金をベースにした為替のデリバティブ取引だから、当然金融商品取引業者になるが、本来この業の中心であった証券会社のネット化や銀行窓販への対応など業態転換への取り組みを横目に見ながら、FX取引業者は金融取引業者として唯一急成長する事業領域であった。

 先ずレバレッジ規制そのものについて考えてみたい。
 一昨年の金融危機以来、金融に関係する分野での規制強化はグローバルな流れになっているように思うが、このFX取引のレバレッジに関しても英国では過度なレバレッジを掛けられないよう当局が業者を監視しているし、米国でもこの1月には商品先物取引委員会(デリバティブ関連の規制当局)が、従来100倍までとしていたものを引き下げる案を公表している。日本のレバレッジ規制もこの流れに沿っているようにも見えるが、本当にそうなのだろうか。

FX取引に関しては、日本は殆ど個人中心で、ファンドや機関投資家が主体の欧米とは異なっていることがよく指摘されている。個人からお金を預かるファンドや機関投資家が1億円で100倍のレバレッジを掛け外国通貨を100億円売買するのと、個人が1万円で100万円売買することを同列で考えるのはおかしい。また、同じ個人でも1万円と1億円の証拠金のレバレッジを同等に扱うのも何か違う。本来、レバレッジとはFX業者が投資家に与える与信枠なのだから、FX業者が投資家の経験や資産状況・取引の大小を見て決めるべき事ではなかったのだろうか。

 次に外為規制のうちで、この2月から先行して始まっているものがあるが、これはFX取引の投資家に対する規制ではなく、FX取引業者への規制になる。一つ目は証拠金の管理方法が、信託銀行等への金銭信託に一本化された。今まではFX業者は顧客の証拠金を、銀行の預金口やカバー取引先への差し入れしていた。二つ目は全ての業者に対して、ロスカット・ルールの整備し、遵守することが義務付けられたことだ。今までも多くのFX業者は投資家に対して、ロスカット取引の設定を求めていたが、これを徹底することで、投資家の予想外の損失を防ぎ、業者の取引の健全性を守ろうとする。一つ目は資金負担の増加、二つ目はロスカット取引に合わせたシステム投資の増加、といずれもFX取引業者の負担増加を強いるものだ。

 最初にあげたレバレッジ規制だが、レバレッジが高ければ、それだけカバー先との与信リスクが増えるか、FX取引業者自らのレバレッジ増加分の資金負担が増える。つまり高レバレッジは、本来はFX取引業者自らのコストを増加させる。それを敢えて行うのは、実質的な売買手数料であるスプレッドもレバレッジがかかり、また投資家がポジションを延長するスワップ(株の信用取引における金利負担に相当)もレバレッジがかかって、収益が増加する。レバレッジ規制は、結局FX取引業者の収益を減少させる要因になる。

 以上、FX規制全体を考えてみると、FX取引業者にとって収益が減少し、コストが増加することから、FX取引業全体は、今までの高成長から、個別の業者がその体力と戦略を試される選別の時代に入った。こう考えてみると、レバレッジを規制される投資家にとって、より健全で安全性の高いFX取引サービスを受けられる可能性が高まるので、期待できる部分もあるかも知れない。しかし、これは本来FX取引業者そのものの問題であると筆者は考える。

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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

インサイダー取引とTOB
パナソニックによる三洋電機とパナソニック電工の完全子会社化の報道がなされ、両社に対するTOB期待も一気に高まったが、TOBに関する情報は市場参加者なら誰しも知りたい情報だ。市場参加者でなくとも未公開のTOB情報を知ったなら、市場に参加したくなるのが人の常かも知れない。但し、普通の市場参加者なら、TOBに限らす、公表されていない重要事実を知って株式を売買することがインサイダー取引という犯罪行為に繋がる事を知っている。金融商品取引法に違反する犯罪行為として裁かれる事に加えて、課徴金というペナルティーも課せられる。TOBは、通常なら2~3割、MOBなどのケースでは5割前後のプレミアムがつくこともあって、対象株式が買いだと分かり易いが、昨年のJALの救済の可能性を巡る情報の錯綜の様に、時には分かり難い事もインサイダー取引の対象になる可能性もある。

 そのインサイダー取引に対する証券取引等監視委員会(SESC)の課徴金勧告は、平成21年度は38件と前年度に比べ倍増している。特にTOBに関しては前年度の3件から13件に、民事再生・会社更生に関するものも過去殆ど無かったが8件に増えている。
 インサイダー取引の勧告が増えているのは、SESCの体制が強化されていることもあるが、M&Aやそれに伴うTOB件数の増加が背景にある。また、M&Aビジネスの特性として時間がかかる(少なくとも関係者による取組みが始まってから3ヵ月、長ければ1年以上)ので、その進行時間の経過とともに関係する人が増えていくこともTOBに係るインサイダー取引のリスクを増加させる要因となっている。

 この様なTOBとインサイダー取引の関係について、SESC事務局が分かりやくす取り纏めた下記の資料があるので、金融機関のM&A関係者は一読すべきだ。
“株式公開買付等に係る実務とインサイダー取引のリスク”

TOBに係る実務者毎にインサイダー取引のリスクの高低を示しているのは興味深いが、要は関係者間においてM&A及びTOBに関する情報をキッチリ管理するということだ。M&Aのプロなら当然とも思われるが、そのM&Aのプロ中のプロである証券会社のM&A部門の専門家でも、5社のインサイダー取引に関与していたことは、業界にショックを与えた。TOBの実行者(公開買付代理人)、M&Aのアドバイザー、企業へのコンサルティングという情報の機密性の高い業務を顧客企業の為に行っていたはずだが、それでも個人のインサイダー取引を防げなかった。
どの様なプロでも関与しうるインサイダー取引だが、SESCは事前阻止する為の対応策として、次の事を示している。
① FA(M&Aのファイナンシャル・アドバイザー)の注意喚起等の役割
 FAはM&Aにおいては当初から案件に深く関与する。証券会社のFAは、他に利益相反する部門があったり、市場取引部門を持つので、本来は案件の情報管理が最も厳格だ。そのFAは、案件の各段階における情報管理の為の注意喚起の役割を徹底すべきとしている。

② 情報伝達範囲・内容の限定
証券会社がFAの場合、TOBが近づいてくるとリテール部門で一部内容を伝達し始めるが、個別名を明かさない工夫や、銀行・株主・取引先などへの伝達内容・範囲の限定が必要としている。

③ 情報管理態勢の強化
必要に応じて関係者に情報を伝達する場合、業種ごとに情報管理態勢が異なることを認識して情報伝達先の情報管理徹底を図る。例えば、TOBの目論見書を事前に印刷する業者が第三者に業務委託するような場合。

④ 守秘義務契約締結の奨励
守秘義務契約を出来る限り提携していくことが有益。

⑤ 経緯報告書の内容の充実
案件に関与するものの関与内容を明確にする経緯報告書の記載の充実は、関係者の情報管理の徹底の為にも有効で、インサイダー取引の未然防止効果もある。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

東証の現状と取引時間延長の論点
 東証の第一四半期決算発表が26日に行われたが、4月からの欧州ソブリンリスクの顕在化から、世界的なリスク回避の動きの強まった影響もあって、東証も売買高が低迷しており、営業収益では前年同期比4.6%減の143億円に留まる。低水準の取引の影響もあって全般的には収益面が減少傾向にあるが、その中でもいくつかの変化が起きていて、東証という取引所の今後の在り方を考えさせられるものもある。
 例えば、情報関係収益は前年同期比2.7%増の27億円に増加しているが、これは情報ベンダーや証券会社へのリアルタイム個別情報端末が増え相場情報料が増加したことによる。また、昨年から開始されているコロケーション・サービス(取引所のシステムエリアに、利用者の取引サーバーを設置するもの)の利用料が増加したことで、その他営業収益も前年同期比19%増の18億円になっている。この様に、取引所は単なる取引機能の提供だけではなく、取引関連情報の収益化やシステムや機能の一部を利用者に貸すことで収益化を目指している。

 一方、決算発表の度に問われるのは東証自身の上場問題であるが、現状でも上場規則上は何の問題もない。営業収益は、市況環境に大きく影響されるとは言え、経常的に黒字化する体力を備えている。又、みずほ証券とのジェイコム誤発注に関わる係争も、既に昨年12月の東京地裁の判決をもとに損害賠償等を決算上処理している。ただし、取引所は株式会社化したとは言え、許認可業務なので、自らの上場には当局の許諾が必要になる。

 4半期決算発表と同時に、取引所としての取引時間の延長に関する検討を行うことが公表されているが、上期中に関係者等の意見を集約し、年度内の変更を目指す。各検討事項と、その論点は次の様になっている。

【現在、午前11時から午後0時30分までの昼休みの撤廃又は短縮】
・アジア市場の一部を除き、昼休みが無い方がグローバル・スタンダート
・前引けと後場寄りの板寄せを撤廃した場合の影響
・現物のバスケット取引や指数先物のEFP取引への影響
・VWAP(出来高加重平均価格)利用への影響
・大証と取引時間が異なった場合、NT倍率取引が困難になるか

【現物市場における夜間取引の導入】
・主要国では現物市場での夜間取引は見受けられない
・それでも、デリバティブと同じ様にイブニング・セッションや夜間取引を行うべきかどうか
・単なる取引時間の延長ではどうなのか

【デリバティブ市場におけるイブニング・セッションの取引時間拡大】
・欧米主要国の指数先物・オプション取引では、相当程度シームレスな取引が可能になっている。
・一方、TOPIX先物取引は本年10月にNYSE Liffeに上場予定だが、この事と時間延長の関係は

【開始時間の前倒し】
・主要な取引所の取引開始時間は概ね当地時間午前9時だが、敢えて前倒しをする理由はあるのか。
・現物市場とデリバティブ市場の開始時間は、合わせるべきではないか。
・取引時間の延長に伴い、立会外取引であるToSNetの扱いをどうするか

※以上をどの部分実行していこうが、取引時間の延長と変更に伴うシステム対応や事務処理コストが取引所及び参加者の負担増となって跳ね返ってくる。この為、費用対効果の、どの位メリットが増加するのか効果の方の議論をきちっと行う必要があると筆者は考える。

 また、取引時間の変更を時代や参加者に合わせて行うことも重要だが、新興市場問題・プロ向け市場の開始など、現在の取引システムにおいても改善する事は多い。その為、取引所としての優先順位を決めて実効性のある取引所改革を実行していってもらいたい。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

地銀投資銀行業務の現状
 どんな大企業も最初は中小企業であり地域企業だったのだから、地域の企業と密接な関係をもつ地域金融機関は、企業社会とそれに連なる資本市場の入口において重要な役割を果たす。成長企業のIPO(株式公開)など、市場誘導業務として資本市場側からも地域金融機関に期待したいことだ。

 地域金融機関にとっても地域密着型金融機関(リレーショナル・シップ・バンク)として、地元企業の成長段階に合わせた金融サービスを提供していくことが金融行政面から求められており、また収益面からは、手数料ビジネスの多様化として、M&Aなど企業を相手にした投資銀行業務に注力している。その現状について、昨年度(平成21年度)の地域密着型金融の取組み状況として7月23日に、金融庁より次の様に公表されている。(投資銀行業務に関係する部分の抜粋、地銀106行、信金272金庫、信用組合159)

・ライフサイクルに応じた取引先企業の支援の一層の強化

①創業・新事業支援
○創業・新事業支援融資:15,004件(前年比8.1%増)、1,703億円((前年比2.4%増)※通常型の融資も含む
●企業育成ファンドへの出資額:51億円(前年実績200億円)
●同ファンドの企業育成支援額:65億円(前年実績90億円)

②経営改善支援
○ビジネスマッチングの成約件数:32,988件(前年比11.7%増)

③事業再生支援
○中小企業再生支援協議会との連携による再生計画策定:479件(前年比45.5%増)、3,817億円(前年比71.0%増)
○独自の支援による再生計画策定:19,083件(前年比30.3%増)、60,186億円(前年比21.7%増)
●整理回収機構の支援決定先:16件(前年比20.0%減)、501億円(前年比7.4%減)
○DDS(通常ローンの劣後ローンへの変更等のデット・デット・スワップ):100件(前年比104.0%増)、298億円(前年比25.2%増)
○DES(ローンの株式化等のデット・エクイティ・スワップ、一部債権放棄を伴う):37件(前年比76.1%増)、158億円(前年比22.2%減)
●企業再生ファンドへの出資額:75億円(前年比2.6%減)
●同ファンドの支援額:121億円(前年比39.5%減)

④事業承継支援
●M&Aによる事業承継支援:142件(前年比9.0%減)
※その他のM&Aは、129件

 一方、地域金融機関の実務者へのアンケート調査結果において、利用者である企業のニーズに応えて居るか否かに関して、経営改善には87%以上が応えているとし、逆に事業承継支援については半数近くが自ら応えていないとしている。

 また利用者側での調査においても、事業再生や事業承継への地域金融機関側の取組みへの評価で、消極的評価が積極的評価を上回っており、この分野(ファンド投資やM&A等の投資銀行関連業務)における専門的人材の不足感が強いようだ。

 地銀等はリレバン対応において、上記の様な投資銀行的取組みにも注力しているが、同分野の専門的人材の育成や外部機関との協力体制の構築が課題となっている。通常、投資銀行業務において案件の事をディールというが、一つ一つは小粒なディールをカバーしていくのは、地域金融機関しかいない。そしてこの機能が働かなければ、投資銀行業務の裾野は拡大していかないし、結果、日本の金融・資本市場の拡大にも繋がっていかない。金融機能の成長戦略の中にも、このこと(地域金融機関の機能充実の為の施策)を望みたい。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

世界の中の日本の投信
投資信託関連の手数料が、証券会社の主要な収益源になって、もう4~5年経つが、今後もやはり主力の商品としてありつづけるのだろうか。そして、今の投信販売の在り方はどの様に変わっていくのだろうか。

 このことを考えるに、(財)日本証券経済研究所杉田氏による“世界の投信信託の潮流”は、ここ10年間の世界の投信の動向を俯瞰的かつ簡潔に纏めてあり、参考になったので、その概要を紹介しておきたい。
 まず、昨年末の世界の投信残高は22.8兆ドルとなっているが、ここ10年間で11・1兆ドル増加しており1.9倍に成長している。増加分のうち、資金純増分が7.2兆ドル、値上がり分などが3・9兆ドルとなっているが、国別残高では、米国が1位で11.1兆ドルのシェア48%、2位はオフショーのファンド集積地であるルクセンブルグで2・3兆ドルのシャア10%、3位フランスの1.8兆ドル、4位オーストラリアの1.2兆ドルと続き、日本は8位の6600億ドルでシェア2.9%にとどまる。
日本の投信は、金融機関の窓販で約半数が販売されるようになっており、証券会社もそれに対抗して投信販売を積極化しているが、残高でみると10年間で31%しか増加していない。逆に言うと、まだまだ成長余力があると言えるかもしれない。

 次に10年間で起きた変化をみると、次の5項目が上げられている。

①ETFが大きく伸びた
 ETFは10年間で26倍に急伸しており、そのうち7割が米国で組成されているが、増加した内容は、業種別・規模別・投資テーマ別の指数や、新興国など外国株指数、債券関連指数、最近はアクティブ運用型のファンドをETFとして上場する動きもある。

②10年間で5倍に拡大した新興国投資
 何といっても、最大のトレンドは新興国投資だが、国別にみると10年間の投資残高増加額では中国が61倍、ポーランドが33倍、ハンガリーが11倍、インドが10倍と新興国が急拡大している。

③確定拠出年金(DC)からの資金流入が顕著:米国の株式投信
 米国株式投信の10年間の資金純増額の99%は、DC(企業型・個人型の合計)からで約9000億ドル。日本のDC専用ファンドの残高は、昨年末で1兆3600億円。

④日本の投信においても、投資先のグルーバル化が進展
 日本の投信の運用先として、ここ10年間一貫して海外投資が増加している。2000年では海外投資比率が10%程度だったが、昨年末には57%に達しており、6割前後の米英の投信海外投資比率に近づいている。

⑤ディスクロージャー関連の改革が進む
 3つあって、一つ目は目論見書の簡素化、二つ目は投信保有株の議決権行使の明確化、三つ目は投信販売会社の投資家との利益相反問題の開示だが、この内目論見書改革は投資家が呼んで理解出来る、若しくは比較できるという目的で行われていて、米国は昨年、日本でも今年7月から取り組まれている。

 一番目のETFは、世界の投信における大きな潮流になっているが、日本では東証上場物が93銘柄と増加しているものの、ETF売買高は逆に減少している。世界的にみると、過去10年間、ETF投資が新興国投資や商品投資を促してきが、日本ではそれが新規設定の公募投信になる。また、海外ETFに関しては、売買を取り次ぐインフラ整備が証券・金融機関サイドで遅れているようにも思う。また、3番目のDCの拡大の恩恵を投信市場が米英の様に受けているかというと、国会審議の関係でマッチング拠出もなかなか進まない日本では、DC制度そのものの拡大への政策(自助努力による老後資金確保として)が待たれる状況だ。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

証券会社自らの情報提供
資本市場にとってディスクロージャーは重要で、上場されている株式にせよ、公募の社債にせよ、取引参加者間の情報の非対称性を埋める為、売買を仲介する証券会社は、発行会社に対して常にディスクロージャーの充実を求めている。四半期報告や内部統制報告など、上場企業にとっては負担感の重い物もあるし、役員の報酬金額や株主総会での議案の投票結果の開示など、直接業務内容に結びつかないものも、今年からディスクロージャーを求められている。

 市場仲介者としての証券会社は、投資家の為に常にディスクロージャーの充実を発行会社に求めている。
その証券会社=第1種金融商品取引業者は、利用者である投資家に為に、自らをどうディスクロージャーしているのだろうか。一応、金融商品取引法46条の4【説明資料の縦覧】では、
=金融商品取引業者は、事業年度ごとに、業務及び財産の状況に関する事項を説明した書類を作成し、期末から4カ月以内から1年間、これをすべての営業所又は事務所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならない=
と、されている。つまり、過去1年間の業務内容や会社の財務内容が分かる様な資料を作成して、投資家の目に触れるところに置いておく必要があるというのが、法律本来の主旨だ。

 こう書いてきたのは、300社以上ある証券会社で、上記の様に法律で定められた自らのディスクロージャーに関して、相当数が実質的に行っていないのではと思われるので、敢えて取り上げている。
 この証券会社を説明する資料を、決算短信と呼ぼうが、業務及び財産状況に関する説明書と呼ぼうが、その他の名称だろうが、公衆の縦覧が目的なのだから、証券会社を訪れる投資家の目につく処になければならない。例えば、ホームページ画面で探しても、分かりやすいところに配置されているとか、店頭において来訪者に目立つところに置いておくとかの配慮が本来はあるべきだ。これが、ホームページには載せていないとか、店頭にはなく総務課長の引出しの中にあるとかでは、本来証券会社を利用する投資家に自らの説明資料を縦覧していることにはならない。

 証券会社といっても、最近は株式を取り扱わない会社もあるし、デリバティブ利用の方法が異なるものもある。顧客を全く持たないトレーディングとファンド組成のみを行うような証券会社もある。また呼称が変更されて沿革や企業グループが分かり難いものもある。投資家の資産は分別管理されているといっても、店頭デリバティブは証券会社が顧客注文に向かうかけだから、自己資本規制比率信用格付けも気になる。
 本来、この様に利用者の投資家にとって重要な証券会社情報は、証券業協会員リストの横に添付しておいて、いつでも利用者が引き出せるようにすべきではないだろうか。現状は、証券業協会の広報室(証券会館2F)に40社弱の縦覧すべき説明資料がストックされているが、各社の自発性開示ということのようだ。この法的根拠の前の条項に、証券会社は事業報告書を作成し、当局に提出することが義務付けられているが、同様の内容を投資家への説明書類としているとこともある。EDINETでの証券各社の事業報告書の開示ということでも、同様の効果があるかもしれない。

 いずれにせよ、投資家目線で証券会社自らのディスクロージャーはキッチリ行うべきで、資本市場全体のディスクロージャー対応改善の為には、市場仲介者として自ら身を律すべき時期が来ている。

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公募というものの問題点
 株式の公募について、投資家目線で考えてみたい。
公募というと公けに募集することだから、誰しもが買う事ができるかというと、実際はそうでもないことに気付く。(以下、公募に関する事例として上げたものなので、本文は投資勧誘若しくは投資判断に影響することを目的としていない。)
 
 例えば、直近価格が決定して、やれやれといった感じのみずほファイナンシャルグループの130円公募株(発行者が受け取るのは、125.27円)は、誰でも買えることが出来るのかというと、みずほの公募株を販売している引受証券会社に取引口座がなければ購入することが出来ない。1株当たりの純資産が191.5円で、予想配当も6円であれは、公募株は割安で配当利回りも4%以上ありそうで筆者も購入したくなった。そこで、取引先の証券会社に問い合わせてみたが、この公募株の引受証券会社ではないようなので、購入することは出来ない。発行者の記者発表によると、日系大手2社・外証2社が引受証券のようだが、その他の引受証券会社は目論見書を見なければ分からない。目論見書は、引受証券でなければ投資家に配布出来ないが、なんだかどうどう巡りで笑い話のようだ。そう言えば、目論見書と同様の内容は有価証券届出書として開示されているはずなので、金融庁のEDⅠNETで調べると、国内における引受証券は5社だった。残念ながら口座が無い。そうしている内に、引受証券の内の1社の証券外務員から電話がかかってきた。1万株までならOKだとう言う。しかし、新たな口座開設も面倒になり、また何だか疲労感もあって、結局は断ってしまったというオチになる。

 現状では、公募というものが、株主や投資家にとって平等な対応でないことを示したくで上記の事例を上げたが、同じ増資に関して大規模な第3割当ては実質的に規制され始めている。この規制は、近年大規模な第3者割当増資による弊害が大きくなってきた為、実質的に6月から強化されている。引受証券会社が引受責任を負って公けに募集するとする公募増資とは違うので、公募増資に対する規制は当面考えられていないようだ。しかし、株主にとって大規模に公募されるのでも第3者割当されるのでは、大きく持分が希薄化するのは変わらない。

 一方、公募株で最も注目されるのは新規公開時(IPO)の株だろうが、これは投資家ニーズが非常に強い割に供給される公募株が少ないので、ある程度抽選で個人投資家に配分する仕組みになっている。しかし、これも引受証券会社に限られる。
以上、投資家からみて公募株との接点は引受証券会社に限られているのが現状だが、最近はこの引受証券会社が引受責任を果たす為の引受審査等の関係もあって絞られる傾向にある。結果、一般の投資家の公募株へのアクセスポイントは減少するので、投資家の傾向としては大規模な公募があれは、取りあえず売っておくかということになる。

 最近の主体性のない東京市場の原因を全て公募増資のせいにする訳ではないが、資本市場の機能としてはもう少し工夫が必要になっている。例えば、株式を引き受ける証券会社と、その公募株を投資家へ販売する販売会社を分離してみてはどうだろうか。公募を引き受ける証券会社は、販売期間中に販売会社から需要をとり、販売会社へ売りきってしまう。販売会社は、販売機関中に広く投資家からニーズを集め販売する。そんな分業があった方が、引受も、公募株の販売も活性化し、市場全体が活況になるのではないだろうか。

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証券仲介業の今日的意味
保険には昔から代理店があるように、銀行や証券にも代理店業があっても良い。特に、“証券市場の改革促進”の為には、投資家の市場アクセスの拡充が必要で、自ら顧客口座は持たないのだけれども、顧客の証券取引の仲介を行う証券代理店制度があるべき(金融審議会報告2002年12月)として、証券仲介業制度は、2004年5月にスタートした。証券会社が、金融商品取引法の施行により、第一種金融商品取引業者となってからは、金融商品仲介業というが、この5月末で合計577業者(うち個人が150人)となっており、2年前の600業者を超えていた状況からは減少しているものの、この1年では再び1割程度増加している。

 この証券仲介業の基本的仕組みは、次の様になる。
①証券会社と仲介業者(個人でも可能)は、業務委託契約を締結し、証券会社の提供する金融商品やサービスの仲介を行う。その為、仲介業者は証券業に関する現場での個々のライセンス(証券外務員資格)が必要なのと、仲介業者としての金融商品取引法上の登録が必要になる。
②仲介業者は、投資家や顧客に対して金融商品(含むサービス提供)の勧誘や説明を行う。
③顧客が仲介業者に対して、金融商品の申込を行うと、仲介業者はその申込内容を証券会社に取次ぐ。
④仲介された顧客は、証券会社と直接金融商品取引契約を結び、証券会社内に口座を開設、受渡しを実行する。
⑤仲介業者は、この取引で発生した手数料収益の何割かを証券会社から仲介の報酬として受け取る。

 冒頭でも触れたように、証券仲介業は投資家への証券チャネルの拡大が期待されているが、仲介者サイドからみた仲介業の流れは、以下の3つのケースに分かれている。

A:ファイナンシャル・プランナーのような金融のプロが複数若しくは単数で仲介業者となるケース。=当初は税理士や会計士事務所なども期待されたが、金融商品の仲介は片手間では無理なので、何らかの金融の専門家若しくは組織が現実的だった。ただし、今後IPOやM&Aに関わるサービスに対して、仲介した場合の報酬を約束するのなら、弁護士も含めて士業の方々が仲介業となる意味はあるかもしれない。

B:銀行などの金融機関が証券仲介業となるケース。=メガバンクや上位地銀は其々の証券子会社を持つようになっている。その為、これら金融機関が自らの証券子会社の仲介業を行うことが一般化した。一方、証券子会社の方も、銀行の代理店(登録制ではなく認可制)として機能し始めている。今後、証券子会社を持たない金融機関が、どの様な証券仲介業のネットワークに関与していくか注目される。

C:元々証券会社内に存在した歩合セールスが、より独立性を高めIFA(Independent Financial Advisor)として独立するケース。=現状のIFAは、事実上の証券会社内歩合セールスと証券会社から独立した形をとる仲介業者に分かれる。やはりIFAであっても仲介業者として成り立つ為には、相当の証券スキルが要求され、証券営業のキャリアが必要な為、簡単に増加しそうにない。しかし、既存の証券会社の外務員の受け皿としては有効だ。

※仲介業者は、複数の証券会社の仲介をすることが可能。

 つまり、3つの場合とも証券外務員という金融商品のプロが、投資家のニーズを証券会社に仲介することになる。(コンビニにおける端末の利用を仲介業者とした事例もあったが、法的な定義が多少難しい。例えば、ネット証券の仲介業は、他のWeb画面など何かのシステムで代替したりすることで可能かというと、何か屋上屋を重ねるように変な仕組みで、少なくとも投資家の利便性向上にはならない。ネット証券の仲介業者も、他の金融機関か、証券ライセンスを持つ個人ということになる。)

 仲介を依頼する側の証券会社からみた場合、この仲介者=プロのネットワーク化は重要な販売チャンネル戦略となるので、最近はネット証券でも注力している。

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地銀の証券ビジネス
 金融・資本市場と続けて言うように、今では金融機関からみて資本市場との関係は密接になっているが、その資本市場に連なる業務を地銀などが自ら証券ビジネスとして取り込もうとする場合、概ね次の様な形態に分けられる。
①自ら行う=投信窓販・国債や地方債の販売・社債関連ビジネス(自ら発行する劣後債・私募債等)・M&A
②自らは窓口となり、誰か専門組織等に依頼して行う=証券仲介業務・証券子会社等の共同店舗・市場誘導(IPO)業務
③子会社で行う=地域ベンチャーや再生ファンド・証券子会社

地銀における取組みの順番としては、②→①→③という流れになっているが、嘗ては親密な証券会社への紹介、そして投信の窓販等である程度商品販売の実績を積んで、証券ビジネス戦略の強化から証券子会社設立に至るという道筋が多い。その地銀の証券子会社設立若しくは地域証券の子会社化は現在12社になり、今後も有力地銀での設立への動きが予想されるので倍増していく可能性がある。当事者には失礼な物言いで申し訳ないが、古いビジネスモデルの地域証券会社や余剰となっている証券外務員の受け皿にもなっていて、業界全体からみると新規の証券ビジネス参入者・既存の証券会社の再生者として期待されている。

その地銀の証券ビジネスの取組みの中心にはるのは、投信の販売だが、昨年9月末時点の数字では投信の預かり資産額ベースで、地銀108行は10兆5000億円となっていて大手銀行の11兆7000億円に迫る。また個人の預金及び投信残高に占める投信残高の割合は、地銀上位20行では既に5~10%台を占めるようになっており、将に“貯蓄から投資へ”の現場となっている。
ただし、この証券ビジネスの主力である投信販売について、今後証券子会社により販売強化していくか、窓販体制を強化するかについては、上位地銀と中下位行ではその戦略が異なっている。上位行の戦略は明確で、これだけ一般化した投信でもやはり販売現場での専門性が問われるようになっており、また既に販売した投信に関しても、資産管理的ケアが必要なので、メガバングの戦略と同様に証券子会社戦略を取ってくる。地銀の窓口での対応が少し異なるのは、その証券子会社の仲介業者として振舞うのか、銀行自身の投信窓販と並行させて行うのか(例えば、債券系投信は銀行窓販、株式系投信は子会社証券へ誘導)の違いだが、基本的戦略は自行グループ内での金融商品販売と管理だ。一方、中下位の地銀は投信窓販をある程度積み上げていのがベースだろうが、投信のみならず外債などの金融商品の卸元ルートの確保として、大手証券や外証などの仲介業者として証券ビジネスを取り組んでいく可能性が高い。ただし、この場合地銀にとって問題なのは、仲介先に顧客口座を開設するということになるにで、アライアンス戦略が明確でなければ、商品毎の仲介先選択は限界がありそうだ。

一方、ホールセール(法人関連)の証券ビジネスとしても、事業承継や事業再生に絡んだM&AやIPOなど市場誘導機能などが地域密着型金融として地銀に期待されることだが、投資銀行としてのM&A機能やIPO機能が直接ある訳ではないので、これらのビジネスを専門家へ繋ぐ仲介者として機能だ。

以上、地銀の証券ビジネスに関して、強化のポイントは “証券仲介業” というキーワードになるが、その仲介機能を発揮する為の証券業務のネットワーク化、若しくは証券子会社の様な専門的組織の構築が重点課題となり、今後の地銀の証券ビジネスの在り方を左右する。

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ライツ・イシューの問題点を考える
 株主に優しい増資方法として期待されているライツ・イシューだが、第一号のタカラレーベンを5月末に終えて、このエクイティ・ファイナンス手段としての問題点が専門家から出されているようだ。この議論は、金融庁が主催するコーポレート・ガバナンス連絡会議でなされているようだが、当会議は現在法制審議会で行われている会社法の見直しに対し、金融・資本市場サイドからの要望を入れる為になされているものだ。会議自体は非公開なので、議事要旨しか公表されていないが、その中でライツ・オファリング(ライツ・イシューと呼ぼうが、株主割当増資と言おうが、株主にファイナンスに応じる権利=新株予約権を割り当てるという行為は同じ)関係として取り上げられている。以下その内容について、考えてみたい。[カッコ内は、筆者の感想と私見]

【プロが指摘した問題点1】
ファイナンス期間が長期になるほど、政治経済イベントの発生や投機的な取引の介入の可能性が増すことから、株価の不安定性が増し、妥当な行使価格の設定が難しくなる。ノンコミットメント型の場合は、発行会社の資金調達の不確実性が増し、コミットメント型の場合は証券会社のマーケットリスクが増すため、コミットしづらくなる。このため、できる限り、ファイナンス期間は短い方が望ましい。

[ここで言うコミットメント型とは、株主が割当てられたライツ(新株予約権)を放棄した場合、その分を証券会社が引き取って販売し直す約束をすることを指す。問題は、米国の法律の様に、自国民が保有する日本株でも、ライツを割当てられて、その権利行使で新株に払い込む行為を、米国内での募集行為と見做す為、発行会社は米国での開示書類対応が必要になる。日本の会社が、日本でライツ・イシューを行うのに、米国での開示対応は不可能なので、結局、米国株主の分のライツは証券会社などが買い取って、他の投資家に転売する必要がある。今回のタカラレーベンはノンコミットメント型なので、米国株主がいれば、この分は権利放棄しただろうが、外人株主比率が高い会社は、コミットメント型が望ましいと言われる。但し、ライツとして一旦割当てられたものが、株主であろうが証券会社であろうが、ライツとして取引所で売買することが可能なので、ファイナンス期間(=権利行使期間)が2週間でいいのか、2ヵ月いるのかは、本来発行会社が決めるべきことで、証券会社のコミットメントリスクとは直接関係無いように思われる。]

【プロが指摘した問題点2】
会社法上、新株予約権の株主割当てについては、権利行使期間開始日の2週間前までに通知が必要とされるが、株式の株主割当てと同様に行使期間の最終日から2週間前の通知にできないか。

[確かに株主へのライツの割当てする通知は、発行会社にとって時間的余裕がある方が良いが、株主からみてライツが権利落ち後、直ぐに売却及び売買可能であれは、事務的手続きの問題で、決済や取次ぎをする証券や金融機関の技術的問題ではないだろうか]

【プロが指摘した問題点3】
新株予約権の無償割当てに際して目論見書をwebで公表した場合は、目論見書の交付を原則として不要とし、個々の株主に求めに応じて目論見書を送付すればよいことにできないか。

[株主にもそうだが、当たらにライツを購入する投資家にも必要な目論見書とされているが、一方でライツが売買されていることを思えば、このライツ部分の売買や行使に必要な開示対応は機動的に行えた方が良い。金商法上の技術的な問題とは言え、筆者もそうあるべきだと考える。]

【プロが指摘した問題点4】
無償割当てにより取得した新株予約権は特定口座への受け入れ不可。一方、上場後に取得した新株予約権は特定口座への受け入れ可能とされているが、税制との関係で、区別なく受け入れ可能とすべき。

[気持ちはわかるが、これはライツ・イシューの問題ではなく、デリバティブ課税(ライツ=新株予約権もデリバテ
ィブ)の問題で、金融所得一体課税の進捗が待たれることではないか]

【プロが指摘した問題点5】
ライツ・オファリングに伴う証券会社の新株予約権・株式の取得について、一定の要件のもと、公開買付規制の対象から除外することが認められないか。

[確かに株主に大きく割り当てるライツ・イシューにおいて、コミットメント型の場合、ライツを大量に外人株主から購入した場合、発行済株数の5%以上になり公開買付規制に抵触する可能性もある。しかし、これも金商法上の技術的問題であって、会社法の本質的問題ではない。]

【プロが指摘した要望事項】
ライツ・オファリングについては会社法の改正を待たずに資本市場の問題として早急に対処してほしい。

[筆者も本当にそう思う。ライツ・シューの多くの問題は、金商法・市場慣行・業者間の対応でクリア出来ると思うが、証券会社に対する金融庁の一押しが必要かも知れない]

 以上になるが、何事もそうであるように、何か新しい対応をしようとするとき、必ず現場(この場合、残念ながら証券の引受サイドの現場と言う意味)から実務的反対論が出てくる。しかし、多くの場合、この論拠は、しない理屈であることが多く、経営者そして利用者が困惑する部分である。証券市場の停滞は、何も市況だけではないのが残念に思うが、せめてライツ・イシューで私見を反証して欲しい。

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投信の情報のあり方について、少し考える
 金融機関で長くスタッフとして働いていた経験からいうと、偉い方々から、この数字調べておいてくれと依頼されても、他の事で忙しいと、身近な代用する数字で答える、また数字の調べ方は過去のやり方とあまり変えない。その様なスタッフとしての習い性の様なことがあり、指示した役員の本当の意図に沿っていなかったのではと、後で冷や汗をかく事もあった。幸い、この証券業界では正確性(適格性?)よりスピードが重視される風潮も強く、指示された方の苦笑いで終わっていた。この事を思い出したのは、投資信託に関する多くの情報と、そのあり方について思いを巡らしたからだ。
 実際、投信に関する情報は非常に多くあり、新聞でも毎日の時価情報から、一面を使った個別商品の広告まで、ネットでも、投信の様々なランキング、金融知識やライフパターンに合わせた選択方法など、金融商品に関する情報の3分の1以上は投信関連ではないだろうか。だから、投信に関する情報はと問われると、こんなに沢山ありますが、ということになる。しかし、これは本当に投資家若しくは投資家に直接対応している販売者の目的に沿ったものなのだろか。
 例えば、国内で公募された投信の時価情報は毎日の新聞欄に載るが、設定時期も違えば運用内容も異なるものを、何故運用会社毎に表示しておく必要があるのだろうか。株式と異なり毎日売買する訳でもなさそうだが、追加の設定(投資家の購入)と解約に備えものだとしても、その投信が購入できる証券会社が限定されている(指定証券会社)。一般の投資家が知りたいと思う投信関連情報に関して、この業界は本当に応えているのだろうか。

●購入する時
 普通の商品では、何かを買おうと思った時、その商品と類似するものを比較して購入しようとする行為は当たり前だが、投信という商品は少し違うのかもしれない。6月末で3689銘柄ある国内公募投信は、投資家が選択しやすいように分類されていなければ、選択することは至難の業さだが、その分類も投信協会によると、投資対象資産から投資対象地域・配当回数・為替ヘッジ等などの属性区分があり、組み合わせると2万通り以上もある(投信協会の分類は商品性の確認の為で、投資家の選択目的ではない)。次にある程度絞ったとしても、内容を比較するためには目論見書を読まなければならない。全部で100ページ近い目論見書を類似商品毎に読んで比較するのは個人投資家には出来ないが、投信目論見書に関する開示府令により、交付目論見書ベースの簡素化・標準化(比較検討するための)がこの7月から始まっている。全部で10P以内の目論見書内容になるが、比較しやすいように標準化する努力も行われた。

●保有する時
 投信としては運用報告書が保有者に対する正式な情報提供になるが、この運用報告書以外にも、最近は大きなイベントがあると、その影響について運用会社サイドから適時な情報提供が行われるようになってきた。例えば、ギリシャの格下げ情報など外債組入れのファンドを保有する投資家向けレポートを適時出す努力が運用会社により行われている。

●売却する時
 目標設定型ファンドでなければ、満期までの保有が前提になる。当然かも知れないが、運用者サイドからは投信の売却に参考となる情報提供は投資家には行われない。つまり、個別の投信に関して売り時情報というものは公表されない。しかし、投信というものも市況商品なのだから、満期とは別に売り時にかんする情報は必要だろう。これは、投信を個人投資家から預かる金融機関の投資助言によることなのだろう。

 以上のことを合わせて考えると、投信に関する情報を整理して提供するのは、結局、証券や金融機関の重要な仕事なのかも知れない。ただし、対面の販売者の個々の能力に頼るのだけではなく、ネット証券等インターネットを利用することでも、投資家ニーズに応え易い仕組みが出来るのではないだろうか。最近利用しているネット版日経のお勧め記事の提供サービスを見て思うことである。

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社債市場改革が個人投資家にもたらすもの
 日本の個人投資家にとって、社債市場は遠いところにあるマーケットというのが業界の常識かもしれない。例えば、NTTドコモの社債を買いたいと思っても、それがどの様な価格で、利回りがいくらで、社債してどの様な問題があるか、個人投資家のみならず販売サイドの証券会社などの営業現場でも、すぐには情報が出てこない。だいだい、個人投資家に、この様な低金利の日本での社債投資意欲などあるのかと思っている金融機関が多く、2年で3%の利回りを求める様な個人投資家は、外債投資を薦められるケースが多いのではないだろうか。参考までに示すと、日本証券業協会が示す7月9日の社債の売買参考統計値による日本レジデンシャルの第10回社債2012年9月13日償還の利回りは2.678%(債券価格98.61円、利率1.9%)となっている。
 確かに日本の個人投資家は、社債市場にとって遠い存在かもしれないが、将来、積極的な参加者になる可能性はないのだろうか。現状、個人投資家のニーズとそれに対する問題点について、先ず以下の様に整理してみた。

●買いたい時に買いたい
販売現場における実態は、個人向け社債の発行時に集中して個人に社債を販売するケースが殆どで、既発行の社債は購入しにくい。また、個人投資家側で銘柄を指定して購入しようとしても、1億円以上の現社債市場の流通単位にならなければ、窓口の証券会社に取次いでもらえない。社債券はペーパーレスになったのだから、個人の求める数百万・数千万円サイズの販売も可能になっているはずだか、問題はその様な小口の社債の取引データを、売買を取り継ぐ証券や金融機関間で共有する仕組みがない。その為、結局は手持ちの社債でなければ、個人投資家に販売出来ていない。個人投資家にとっては、社債の流通市場は更に遠い存在だ。

●利回りに高い社債に投資したい
 利回りの高い社債は、日本の社債市場にもある。しかし、格付けが低下していれば、個人投資家が求めても販売現場で確認書の別途徴収が必要だし、その際、現場に信用リスクを説明しなければならない。格付けのある公募債でも、格付けだけで信用リスクが説明できない場合もある。例えば、銀行系消費者金融の発行する社債は、軒並み4~9%台の利回りだが、銀行の借り入れより劣後してし、多額の銀行借入の条件がどう影響するか、その情報は開示されていない。

●自らの判断で、適時・的確に売買したい
 個人投資家にとって、社債を株式と同様に売買することは現状不可能だ。買いたい時は、窓口の証券会社の手持ちリストから選択するしかないし、売りたい時は、買付けた証券会社が示す時価に数十銭の手数を支払い引き取ってもらう。個人投資家の社債売買に向かう証券会社の方でも問題があり、社債売買の際に発生する経過利息の遣り取りに関して、個人売却分から源泉徴収しなければならず、すぐ個人に転売する以外は、課税・非課税の調整を自ら行わなければならない(課税玉・非課税玉問題)。その為、個人投資家から買取る価格は、その分、低くならざるお得ない。

●他の金融資産と一緒に管理し、また有効に活用したい
 株式では当たり前になってきたが、当面売買しなければ有価証券として有効活用する為に誰かに貸すということが投資家にとって望ましい。今後、社債のレポ市場が将来的に整備されていけば、個人投資家保有する社債も、貸株サービス同様にレンディング出来るということも可能かもしれない。一方、保有する社債を担保として活用したいというニーズは早急に実現すべきだ。その為には、市場価格情報とリアルな信用情報が必要で、個人にとって利便性のある情報共有システムの構築が待たれる。

●安全に投資したい
個人にとって、投資する社債を誰が管理しているか問題になる。例えば、公募債の多くは、財務代理人による社債管理を行っている為、投資家に対する社債管理の責任はない。また、社債管理会社が管理する社債であっても、発行企業に多額のローンを貸す金融機関が社債管理会社であれば、社債権者とは利益相反になることもあり、デフォルトした場合の対応が異なるリスクがある。

以上のことは、実は個人投資家だけのことだけではなく、一部の金融機関を除いた社債の潜在的投資家にも当てはまる部分が多くある。これらの問題につき、日本証券業協会が主催する懇談会において、ここ1年間、関係者・識者による議論がされてきたが、その報告書として6月22日“社債市場の活性化に向けて”が公表されている。上記の内容は、その報告書を個人投資家の視線で見直してみたが、その中で筆者が第一優先事項として上げたいのは、価格・信用情報の共有システムの構築を早急に行うことである。

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新システムから半年経過、超高速化の利用状況
 最近は業界関係の方々からお話をお聞きする際、アジア・シフト関連の話題が多いが、東証の売買代金の水準(6月の東証1部売買代金1日平均は、1兆3700億円で、2005年7月以来の低水準)をみていると、株式取引も本当にアジア市場にシフトするのではないかという杞憂が現実味を帯びてくる。
 しかし資本市場としての取引インフラは、年初の東証新売買システムarrowheadの稼働、来年3月までの大証の新デリバティブ・システム稼働などで、世界最高水準になる。インフラは高性能なのに、取引が減少傾向に感じるのは、取引参加者の問題かもしれない。

 ところで、東証の新システム稼働から半年たったが、超高速化はそれなりの影響をもたらしているようだ。7月5日に公表された“arrowhead稼働後の運転状況について”によると、次のようになっている。
・注文応答時間は大幅に短縮し、2ミリ秒(目標値10ミリ秒)で安定している。
・相場情報配信のデータ量は、新システム稼働前に比べて、3倍以上に増加した。
・全銘柄の平均TICK回数(注文発注数)は、大幅に増加。概ねの平均で200回後半から400回前後へ増加、特に流動性の高い銘柄の急増が目立つ。
・取引所エリア内の証券会社サーバーから機関投資家等が発注するコロケーション・サービスの利用も進んでいるようで、注文発注全体の25%程度まで占めるようになってきた。(シェアの最高値は6月7日の30%、注文件数は5月26日の320万件)
・約定比率は反対に低下しており、稼働前は40%以上だったが、30%程度になっている。(5月以降は更に低下傾向)

 この稼働後半年経過した東証arrowheadは、IT Japan Award 2010のグランプリを受賞したが、その理由は業界へのインパクトとして以下の理由を上げている。(技術面の理由は省略)
①注文受付処理を平均2ミリ秒程度と、従来の約1000分の1程度へ大幅な高速化を行い、注文応答時間の短縮化を行ったこと。
②気配情報の本数を全て気配情報として配信するなど大幅な増大と、平均3ミリ秒程度への大幅な高速化で、相場情報配信時間を短縮したこと。
③コロケーションなど自動売買プログラムによる売買手法の浸透により、マーケットモデルを実現したこと。

 取引システムの高速化対応は、主な目的としては、既にアルゴリズム取引などシステム売買に慣れている海外投資家などの売買を日本の取引市場に取り込むことと、日本の機関投資家などへのシステム売買の浸透にあるが、個人投資家へのメリットも期待できるはずである。
 それは、機関投資家等のシステム売買による流動性の向上などという副次的なテーマではなく、実際の売買取引上のメリットであるべきだが、arrowhead稼働後半年経つ現在、主要ネット証券において、明確に高速化対応を表明しているのは1社だけになっている。確かに、個人がミリ秒単位のアルゴリズム取引を行うことは難しいし、個人のネット取引でミリ秒を可視化することも不可能かもしれない。しかし、発注所要時間を表示したり、個人向け自動売買手段を多く提供しているこの1社の姿勢を評価したい。

 最近、ネット証券の動向に関していうと、商品の品揃えを多くし、投資家の選択肢や、投資選択の為の資料提供など情報量を個人投資家向けに大量に供給しているが、一方、ネット取引等での取引の利便性向上に関して、一服している感がある。この新システムによる高速化対応への個人投資家版の工夫は、ネット証券としてのネット取引そのものに対する試金石かもしれない。

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新規公開前の増資規制騒動の背景にあるもの
日本証券業協会が6月10日に公表した新規公開前の増資規制案(自主規制)に関して、上場前に個人から出資を募るのを禁じる条項が含まれているため、「ベンチャー企業の育成を阻害する」などの反対意見が多数よせられたことが報じられている。その内容をみると以下の様になっている。

・改正予定の自主規制名:有価証券の引受け等に関する規則
・新たに設けられた規制:新規公開時における株券の引受判断
引受会員(IPO時の幹事証券のこと)は、上場発行者以外の発行者(IPO予定の企業のこと)が新規公開前に株式や新株予約権、新株予約権付社債及び社債券について個人投資家に対し募集又は私募を行った場合には、細則に定めるときを除き、新規公開において行う株券の募集や売出しの引受けを行ってはらならい。
・細則に定められた上記規則の例外規定
○株券等の募集の為に、すでに有価証券届出書を提出したとき
○既に有価証券報告書を提出していたとき
○株主や役員・従業員などに対してのみ募集又は私募を行ったとき
○上の3つの例外規定に準じると協会が認めたとき

 つまりIPO予定企業は、実質的には、IPO前に既存株主と会社関係者以外の個人から資本を調達することが出来なくなる。勿論、個人でなければ公開前の増資は可能で、ベンチャーキャピタルやフォンド、他の事業会社からの新規公開前の出資は問題ない。
 新規公開前の個人からの増資規制案を示した証券業協会の目的は、未公開株詐欺の増加に歯止め事あるが、その為に発行会社自身による不適切な勧誘行為を排除する規則改正として、7月20日からの施行を予定していた。しかし、この規制案に関しては、エンジェル投資家や経営者の知人・友人などからの出資を否定する可能性があり、ベンチャー企業育成という我が国の成長戦略にも反するなどの反対意見が多かった為、証券業協会は7月2日に同規則改正の延長を表明している。

 この規制騒動の背景には、未公開株に関するトラブルの急増はあるが、報道によると2009年度に国民生活センターに寄せられた未公開株についての相談件数は5378件、この数字は2006年に4066件に急増した後、一旦2007年度に2611件に減少し、その後の最高数値である。確かに、未公開株詐欺は、個人のIPOへの興味を利用した資本市場にとって憎むべき犯罪ではあるが、そのこととIPOの引受判断をするべき証券会社の自主規制での制限とは関連性があるのだろうか。そもそも詐欺的増資を行うような会社は、証券会社の公開営業部門や引受部門で選別されているはずだが、これらのIPO予定企業の増資行為を実質的に規制(個人からの増資)しようとしたことに無理がある。未公開株詐欺に関わらず、金融商品を使った詐欺的行為は、株でも商品先物でも通貨でも何でも良いので、未公開株詐欺だからといってIPO企業の増資行為を規制すること自体に問題があった。この事を、証券業協会の勇み足とする報道もあるが、協会の問題意識は別のところにもあった様に思われる。

 IPOに関わって、例えば発行会社が「近いうちに上場するから買わないか」という行為は、必ずしも詐欺的行為とは言えないどころか、常にありうる行為で、例えは1年後の上場を目指して売上げを拡大する必要があり、その為、設備投資資金をファンドから調達する。ファンドが個人であっても良いが、その際に出資者に対して、発行者からの上場に関するコメントが出るのが普通だろう。もし、この様な行為が資本市場からみて問題のある行為なら、入口の出資者を絞るのではなく、公開後の出資者の行為を制限する出口規制の方が効果的に行えたかもしれない。但し、これは未公開株詐欺とは別のIPOに関わる問題である。

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M&A等組織再編促進の為の会社法改正案
 現在、法務省法制審議会で行われている会社法の見直しで、6月23日経済産業省より改正案“今後の会社法制の在り方について”が示されているが、その中から“企業の組織再編・M&Aの支援”に関するものをその現状の問題点とともに取り上げてみたい。

【提案1:自社株対価TOBの利用促進】
・現在の会社法でも、自社株を対価として相手企業の株式を取得することは可能だが、現行の手続きだと、相手の株式をプレミアムを付けて買う為、自己株の方は相対的に安くなることから、有利発行の総会特別決議(実際は金庫株を安く渡すことを想定)が必要になる。又、自社株をもって相手企業に出資することにもなる為、現物出資規制により検査役の調査等が必要にもなる。つまり手続きが複雑で、かつ法的リスクも大きいので、ほとんどこの制度は使われていない。
・現在、企業において消却されずにある金庫株は13兆円に達しているが、M&Aに向けた活用が課題になっている。
・そこで、自社株対価TOBの利用を促進する為、次の対策を行う。
① 現状の株式交換と同様に、自社株対価TOBの場合も検査役の調査を必要とせず、買付会社の役員や応募株主は補填責任を負わない。
② 自社株対価TOBの場合の買付価格決定方法として、発行日の時価若しくは算式で足りることとする。

【提案2:スクイーズアウト、セルアウト制度の創設】
・現状のMBOや完全子会社化で用いられる少数株主の締出し(スクイーズアウト)は、TOB後に全部取得条項付種類株を使ったものが多い。このことは、最初のTOBに応じなければ、次の全部取得条項付種類株の条件で不利に扱われるかもしれなという株主への圧力になる。一方、この全部取得条項付種類株の買取り条件に関する株主側の不満もあり、裁判事例も多くなっている。
・その為、手続きを簡略化し、法的安定性のある迅速な仕組みとして、次の制度を導入する。
○セルアウト制度:TOBの結果、買付者が例えば3分の2以上取得した場合、応募しなかった株主でも、ある一定期間は、TOB価格以上で買取り請求できる制度。総会決議不要。
○スクイーズアウト制度:TOBの結果、買付者が例えば6分の5以上取得した場合、完全子会社化する為、TOBにもセルアウトにも応募しなかった株主に対し、TOB価格以上で売り渡しの請求できる制度。総会決議不要。

【提案3:株主の持分権に着目した組織再編手続きの合理化】
・M&Aなど組織再編に係ることは、株主の持分権の影響が少ない場合でも、株主総会決議や株式買取請求など厳格な株主保護手続きが要求される。
・一方、大規模な第3者割当など、既存株主に大きな希薄化の影響がある場合、取締役会決議限りで実行が可能で、株主買取制度もない。
・よって、株主の持分権への影響を基準に、次の様な制度の見直しを行う。
※現金株式交換や無対価合併、分社化して完全子会社化する会社分割など、株主持分権に直接的影響が無い場合、株主総会の承認を不要とし、株主買取請求制度の適用除外へ
※一定以上の希薄化が生じ、支配権の異動が生じる場合の第3者割当増資などについて、独立役員が過半数以上の特別委員会での承認手続き、株式買取請求制度の整備で株主を保護へ

【提案4:会社による選択的対価制度の創設】
・現在のTOBや株式交換制度は、対価として現金・株式・現金と株式の組み合わせの中から、同一の方法を買収株主全員に用いなければならないが、海外の制度で異なる場合、手続き面で煩雑になったりコストがかかるケースがある。
・これを、買収会社側が株主の属性による区分に応じて、対価の種類を選択できるようにする。

【提言5:事業譲渡の際の許認可承継】
・現状は会社分割と比べて、事業譲渡による許認可の承継が限定的。
・迅速な組織再編を可能にする為、事業譲渡のうち、相当程度の生産性の向上を図るために行われるなど一定の条件を満たす場合、全部又は一部の許認可の承継を可能とする。

【提言6:株式買取請求権制度の見直し】
・提言6-1株式買取請求権が発生する組織再編類型の見直し=例えば、簡易合併や簡易株式交換では、株主持分権への影響が少ない為、株式買取請求権をなしとする。
・提言6-2株式買取請求の濫用防止=請求者適格の範囲の見直しで、組織再編公告後の株式取得者の買取請求を認めない。また、現状では買取請求手続きの長期化で法定利率が6%と高いが、これを見直し、供託制度を制定する。

【提言7:商事・金融高等裁判所(仮称)の創設】
(この件で、筆者は特にコメントがありませんが、M&Aや金融に係る専門的な判例の集約や整理が行われるのなら、市場関係者としても好ましいいと感じます)

 以上に関する筆者の率直な感想は、企業の組織再編の活動を活発化するのに法制度・手続きを簡素化するのは好ましいことに思えるが、買取請求権は、株主の権利であるとともに、経営への牽制機能も果たしているので、この制度の簡略化は、単純には評価出来ないと感じる。

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投資家目線の証券税制の論点について
6月に実施された矢野経済研究所のFX取引税制に関する投資家調査は、おおよそ次の様な結果を示している。
・取引所取引と店頭取引での課税方法に関する不公平感は約8割の投資家が持っている。:
○FX取引所取引課税=収益に対する20%の申告分離課税(分離雑所得)。損失については分離雑所得内で損益通算可能、又損失の3年間の繰越控除可能。
○FX店頭取引課税=実質20万円以上の収益に関して雑所得として総合課税。損失は雑所得内で通算可能だが繰越控除は出来ない。
・金融所得課税の一体化については、約9割の投資家が、早期導入を必要としている。又、課税一体化は我が国の金融市場に良い影響を与えると考えている投資家が、7割に達している。

 FX取引は、今や証券会社においても成長力のある金融商品だが、上記の課税に関する投資家のニーズは、他の金融商品取引や取引方法の違いによる課税不公平感の解消や、課税方法の明確化・単純化を求めている。以下の様なことも、また個人投資家から見た場合の不公平感や不明さを感じることかもしれない。

・100%公社債で運用している投信であっても、約款において株式で運用することが可能ならば株式投信の扱いになり、現状では譲渡益課税と配当課税は軽減措置(10%←本則20%)を受けることができるが、同様の公社債投信や債券投資は譲渡益非課税で配当は20%の源泉分離課税となる。また、私募の株式投信は、20%の申告分離課税になる。

・特定口座は課税上便利な仕組みではあるが、複数の金融機関で使う場合、管理が複雑になる。また、損益通算する場合は、源泉徴収機能が使えない。

・個人投資家からみて、債券取引は次のような不利益がある。
●デフォルトした場合、他の金融所得と損益通算出来ない。
●既発行の債券を売買する場合、経過利息から20%源泉徴収されるが、売買の相手となる証券会社を含めて金融機関は、経過利息に対しては源泉徴収されない。このことが、課税玉・非課税玉として一時的に分断されることになり、個人投資家が売却する場合は通常の取引価格より低いハンデ価格、購入する場合は、自分が保有していない期間分まで経過利息が源泉される2重課税問題を起こしている。

・個人が受け取る株式の配当は、法人の配当原資に対して一旦法人税が課せられ、配当金を受け取る時にも更に投資家側から源泉徴収が行われる。所謂、配当金の2重課税の問題への対応が、現行の税制では行われていない。

 以上のようなことは、金融商品間の税率や課税方法が同一になって単純化されれば解消されるが、このことは金融所得一体課税の推進の中で行われていくことが期待されている。金融所得一体課税は、金融商品に関する所得(損益)を他の所得と分けて管理する考え方で、既にグローバルでは一般的な考え方になっている。一部の政党が非難するような金持ち優遇でもなんでもない。

 これ等への取組みは、税制改正要望を取りまとめるために金融庁の金融税制研究会でも議論されているが、一方、業界にとって影響が大きいと思われている株式等(含む株式投信など)の譲渡益課税の軽減措置(予定では平成23年に終了)について、業界の識者からは多くの軽減措置延長要望が出されて、その根拠が示されている。筆者も、業界の人間として、軽減措置延長を望みたい。しかし、その論拠とするところで、本当に“貯蓄から投資へ”が進むものなのだろうか、多少の疑問を感じている。
 例えば、金持ち優遇批判に対して、軽減措置期間中に中所得者層の株式や投信の保有が進んだことが、今後も軽減税率を続けることの論拠になるのだろうか。又、特定口座は投資家にとっても利便性が高いとしているが、本当に利便性の高いのは単純な税法ではないのだろうか。軽減措置の延長は、業界にとって重要なテーマかもしれないが、“貯蓄から投資へ”を促進するための税法は、どうあるべきで、その為の方法を提案することに議論の重きを置くべきではないだろうか。例えば、投資による資産形成の為の非課税制度など、欧米諸国は非課税投資制度が整備されているが、401Kでも日本版ISAでも現段階では日本において整備されているとは言い難い。この様な未来の投資家目線に立った税制議論なされることも、業界の一員として望みたい。

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ジャンル : ビジネス

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