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取引所が関与する投資家への情報発信2題
 取引所が上場商品に関する情報や取引情報を投資家に伝えることは当たり前の様に思うが、実は結構難しい問題もある。どこまでの情報を、誰に、どの様に伝えるかということだが、一番の難問は誰にというとろだ。昔は直接の取引参加者(証券会社)がその主な対象で、投資家はその取引参加者を通じて情報を入手する前提でもよかったが、貯蓄から投資への流れで、取引所が個人までも含めた投資家へ情報発信しなければならないことが増えている。また、基本的な情報である売買価格や取引量など取引情報すらダークプール(証券会社内の売買付合せシステム等)やPTS(私設取引システム)で行われたものは、個人投資家は勿論、取引所でさえ補足できない。

 そのような中で、東証と大証のそれぞれ情報に関する考えや取組みを紹介したい。

先ず東証の方だが、斉藤社長の8月24日の定例記者会見において、最良執行義務との関係で、ダークプールやPTSでの取引情報に関して、“市場間(取引所とダークプールやPTSという意味)で情報開示レベルや基本的な売買ルールを整合的に整理し、同じルールでやるべき”としている。これは、先月日本に参入した欧州最大手のPTSチャイエックスに対する牽制の意味もあるだろうか、最近の米SECやCESR(欧州証券規制当局委員会)での取引の透明性向上への取組み提案が出ていることが背景となっている。簡単に言うなら、A銘柄の買い注文を取引所に出すか、PTSに発注するか、社内もしくはグループ内での反対の売り注文と相殺するか、注文を出した投資家が分かり易いように其々の市場の取引情報が公表されるべきということになる。ただし、日本ではまだ最良執行義務が厳格でないので、ここまで進むには時間がかかりそうだ。

2つ目は大証のJASDAQアナリストレポート・プラットフォーム(JQ-ARP)についてだが、8月20日に同制度の導入が公表されており、以下の概要になっている。
【目的】10月12日にスタートする新JASDAQ市場の情報発信機能強化の一環として、アナリスト・カバレッジの向上を目指す。
【枠組み】
・新市場に上場する企業はJQ-ARP利用の申込みを行う。
・大証は大証が既に選定しているアナリストレポート作成業務の提携会社(AR供給者)から1社を割当て、アナリストレポート作成を依頼。
・この費用については、大証と上場会社が負担。
・レポートは、会社を網羅的に紹介した“ベーシックレポート”(申込み後90日以内)と決算にフォーカスした“アップデートレポート”が基本だが、大きな変化がある場合はAR供給者のアナリストの判断で“リサーチノート”が発行される。
・レポート内容は、業績予想や分析・評価コメントを付けるが、目標株価やレーティングは記載しない。
・レポートは無料で閲覧できる仕組みを予定し、大証ウェブサイトにも掲載。
アナリストレポート作成を行うAR供給者は、大証と1年契約になるが、その選定基準の概要は次のようになる。
【AR供給者選定基準】
・レポートの審査や情報の管理、アナリストの独立性の確保やコンプライアンスなどの社内管理体制の整備。
・レポートの社内審査を行う審査担当者がいること。
・会社に関する重要情報及びレポート内容など、情報管理を徹底すること。
・アナリスト意見の独立性の確保。
・アナリストによる対象企業株式の売買禁止と社内関係者の売買自粛。
・投資家の質問・クレーム・意見等に対応できる社内体制整備。

 筆者の個人的な見解だが、取引所がアナリストレポートの費用を負担してまで情報発信態勢を整備していくというのは画期的な取組みだと思うので、是非このJQ-ARPという制度導入を大証は頑張って実施してもらいたい。ただし、AR供給者の選定基準は金融関連のアナリストとしての自主性に任せるべきで、余り厳格なものは必要ない。また、AR供給者が投資家に直接対応することも不要だ。その方が現実的にAR供給者の範囲を広げ、結果として制度を下支えするインフラが構築できると考える。
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業績予想について
至極当然のことで恐縮だが、公開企業に関する情報で、最も投資家が分かり易く、かつ注目するのは業績予想に関する情報である。アナリストがレポーティングすることもあれば、企業が公表することもある。どちらが注目されるかというと一般的には企業の公表だが、一部アナリストの業績予想情報が注目されることもあり、できれば双方の予想情報が投資家に使い分けされているような状況が望ましい。しかし、アナリストがカバーするのは公開企業の2割弱であるのに対し、公開企業の業績予想公表は96.8%(昨年の東証調査による)が対応しており、個人投資家の多くは企業のディスクロージャーに頼るしかない。

 その企業による業績予想は必ず公表せねばならぬルールかというと、若干微妙な位置つけになっている。
開示規則=ディスクロージャー・ルールには、金融商品取引法で定められた法定開示と、取引所ルールによる適時開示(タイムリー・ディスクロージャー)があるが、法的開示では事実や決定されたことを公表していく構成になっているので、企業の業績予想は適時開示に含まれる。取引所の決算短信雛形で示される業績予想の記載内容は、売上高・経常利益・営業利益・当期純利益だが、もしこれらの公表を行わなければ適時開示の上場規則違反で上場廃止になるかというと、そんな事はない。実際、業績予想を一切記載しない公開企業の中には日本の代表するような企業も含まれていて、業績予想を適時に自ら公表しないだけで上場廃止には出来ない。また、業績予想を公表しない側には、以下のような企業側の理由が東証の調査により示されている。

①業績が市況等に左右される部分が大きく、業績予想の算出が困難である。
②ビジネスモデルが大幅に転換することから、本年に関しては開示しなかった。
③大幅な環境の変化があったことから、四半期ベースの業績予想を未定とした。

 確かに企業の業態によっては市況が大きく影響するものもあるだろう。しかし実際は企業としての事業計画もあって業務が遂行されているのだから、業績予想が困難というのは理由として良く解らない。業績予想はしても、業績予想が困難と企業が思い込んでいるのは、投資家をミスリードする懸念を指摘する大企業がいるが、これもかなりおかしな理由だ。企業の公表した業績予想を投資家がどう判断するかは投資家の問題であって、企業の問題ではない。業績予想を公表しない企業側の理由の背景には、一旦公表した予想を修正していく煩わしさを避けたい企業心理が、大きく影響しているように思う。業務遂行上、業績予想は適時=リアルに実施しているのが企業なのだから、投資家からすると実際の業績結果よりも、今後どうなるか企業が予想として考えていることを知るのは重要な投資情報だ。

ちなみに業績予想については、適時開示ルール上は通期予想が出来ない場合は、次の四半期予想でも良いことになっている。投資家も企業の多様性は認めているのだから、別に一律の数値予想でなくともいいので、数字が予想困難な場合は、その理由につき公表していくことも業績予想の一つと考えられる。四半期開示や内部統制報告よりは、企業にとっての負担感は本来軽いはずなので、市況変動の大きさを理由に業績予想を公表していない大企業は、是非何らかの業績予想公表に向けた取り組みを実行してほしいと思う。

 なお、公開企業の業績予想を個人投資家が利用する場合は、企業公表とアナリストの分析を併用することが望ましいが、個人にとってアナリスト情報が入手しにくかったり、そもそもアナリストカバーが約8割近い銘柄でない現状では、業績予想の分析情報がないケースも多い。その解消の一策として、四季報の業績予想など情報ベンダーの予想数値とその根拠の公表を、取引所若しくは協会でコスト負担して、個人投資家に提供するシステムを作っては如何だろうか。

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今考える新興市場改善策
 前回触れたIPO市場再構築に関して、業界は何もしていない訳ではない。一昨年の10月に新興市場のあり方を考える委員会を立ち上げ、半年かけて議論した結果、昨年5月に報告書を公表している。また市場再構築の為として、次の様な提言をしている。(※報告書原文通り)

① 上場機会の拡充、上場廃止の厳格化
新興市場の信頼回復を図り、わが国経済の活性化を図ることが現下の緊急課題である。このため、市場の活力増加のために数多くの新興企業に上場の機会を拡充するとともに、市場の活力の低下を防止し、上場会社の質を向上させる観点から上場廃止基準の見直しやその適用の厳格化を行う必要がある。
② 上場後のサポート態勢の拡充
上場後の上場会社にとって、適切な法令遵守、適時開示、IR活動が実施できるよう、取引所、引受証券会社等が上場会社をサポートする態勢を一層充実させることが必要である。
③ 機関投資家の投資参加
市場の安定的かつ継続的な発展のためには、市場の流動性の維持・向上や価格発見機能に重要な役割を果たす内外の機関投資家にとって、市場参加しやすい環境整備を行うことが重要である。
④ 市場区分の検討
上場機会の拡充の結果、多種多様な、そしてあらゆる規模の会社が上場されつつあることを踏まえ、市場の位置付けが外部から分かりにくくなるおそれがある。このため、投資家が理解しやすいような市場区分を設け、投資家に周知することについても検討が必要である。
⑤ 市場の再編
新興市場のあるべき姿と取引所経営のあり方は区別して考えるべきであるが、新興市場としての特徴をより明確化するとともに、経営の規模の経済性の観点も踏まえ、必要であれば、新興市場の統合に向けた取引所間の再編を行うことも選択肢として検討されるべきである。

まったくその通りだと筆者も思う。そして、この提言から1年強経った現在、上記の内、一部改善か実現しているものもある。②の上場会社サポートとして、大証は新ジャスダック銘柄を対象にした分析リポートの作成支援の為、一部費用を負担し、大証HP上で一般投資家にレポート公表を12月から行うことを明らかにしている。また、大証とジャスダックの市場統合で④と⑤の一部も実行される。しかし、これだけで本当にアジアの中で競争力のある新興市場が再構築されるのだろうか。上記の5つの提言は、あくまで日本の新興市場における過去数年の問題点解決策にあって、それが日本の新興市場の活性化策に繋がるのだろうか。

同報告書は、投資家・企業双方の資本市場への誘導者である証券会社の取り組むべきこととして次のものと取り上げている。(※概略)
○魅力的な企業の発掘・投資=各地域での発掘・育成の為の社内体制の強化・確立。ベンチャーキャピタルの新興企業投資ファンド組成。
○投資家への情報提供=企業の成長力や魅力に対する情報発信力を高める。
○上場会社サポート=上場主幹事証券は、上場後の一定期間、ディスクロージャーや経営アドバイスに対するサポートを行う。
○販売手法の多様化=新興企業を対象にしたETF組成や、累積投資・確定拠出年金の対象に取り組む。

以上の事も当然必要な取り組みだが、これ等は連携して行われなければ効果が薄い。その為には、それぞれをサポートする専門家を繋げる新興企業サポートネットワークが必要だ。そのネットワークのハブは、協会なのだろうか、取引所なのだろうか。その事について、今改めて検討して欲しい。

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日本のIPO市場再構築を
昨年後半から、韓国・台湾・シンガポールなどアジア市場の日本でのIPOセミナーが目立っていた。日本のIPOの現状と、日本の10社以上のベンチャー企業が、コスダック(韓国)やカタリスト(シンガポール)に相次いで上場を準備していることが報じられたことを合わせて考えると、日本の資本市場機能は、その入り口のところで障害を起こし始めているのでは、との思いにとらわれる。

 7月までの本年の我が国のIPO企業数は、東証(マザーズ等)が6社、大証(ジャスダック等)が9社になり、昨年のIPO数19社よりは増加しそうだが、同時期(1~7月まで)のアジア市場のIPO数は以下の様になっている。
上海取引所:187社
ボンベイ取引所:66社
韓国取引所:45社(うち海外企業5社)
香港取引所:36社(うち海外企業2社)
シンガポール取引所:17社(うち海外企業6社)
 以上のような状況の中、業界及び行政ともこのIPOの絶対数の減少およびアジア内における相対的IPO市場の機能低下に対してあまり危機感を持っていないように思われる。昨年新設したプロ向け市場TOKYO AIMは、アジアの新興企業の取込みを主題の一つにしていたが、未だ上場がないのは取引所だけの問題ではない。取引所に企業を誘導する機能が、証券業界の中で著しく低下しているからだ。

 最近証券各社は、産業界の後を追うようにアジアシフトを強化すると公表しているが、何故、肝心の新興企業の資本市場への誘導することが機能していないのだろうか。一説には、取引所の上場基準の内、利益や資産規模などの数値基準をクリアーしていて、かつ上場の意欲を持つ企業は、3000社とも5000社とも言われているが、実際に上場するための市場誘導機能の単純化して考えてみると次の様になる。

A:上場する為の上場規則、金融商品取引法の基本的理解=上場するためには何が必要で、かつ上場したら何をしなければならないか
これは各市場が上場の手引きを発行しているので、上場希望会社自ら理解していくことも可能だが、金商法の理解で不安な部分は弁護士に確認することで済む。

B:上場の為のディスクロージャー準備支援
・上場の為には、原則2年の監査証明が必要なので公認会計士若しくは監査法人の選任が必要になる。
・これとは別に、IPOの為の金融商品取引法上の内部統制報告書などのディスクロージャー準備も必要で、この社内態勢を整備するために、会計系コンサルを公開準備コンサルタントとして招聘することもある。

C:上場審査の実質審査対応準備
上場計画が具体化した段階から、上記Bをベースに上場審査市場の作成準備に入らなければならないが、取引所での実質審査に対応するために、主幹事を行う証券会社は、その対応を上場希望会社に助言し、かつそのために必要な社内整備(社内規則・組織準備・問題点になりそうな部分の修正等)を準備させる。

D:資本政策策定
 上場時の資本調達や売出し等の資本政策について策定しなければならないが、市場価格の見積もり等企業価値に関する考え方は、やはりIPO市場の動向を熟知している証券会社でなければ適切なアドバイスは難しい。勿論、実際のIPO価格は公開時のブックビルディングという需要予測で決定されるが、その適正なプライシングに考え方を、上場希望会社やその大株主と主幹事証券が共有していく必要がある。

 以上の4つのプロセスの中で、上場希望会社は其々の専門家とIPO準備を進めていくが、最近の日本市場のIPOでは、専門家の各支援機能が分断されている(同じ証券会社内の機能であっても)のではないかという懸念がある。日本で行っているアジア市場のIPOセミナーで、行政も証券も会計事務所も弁護士も一体になって進めている姿をみてそう感じた。

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未公開株投資とエンジェル税制について
昨年あたりから国民生活センターへの相談件数が急増している未公開株詐欺について、業界での対応も本格化しているが、これは未公開株投資を詐欺に使ったというよりは、IPOに対する関心を利用して振り込み詐欺的行為を行った手口が多いようで、公的機関や金融機関を装うものもあるようだ。この詐欺行為のお題目は、事故の示談金でも株の購入代金でも高額な商品でも何でもよく、そのお題目によって仮装する関係者名も変わる。金融機関でも、これらの未公開株詐欺対策を進めようということだが、本来の未公開株投資は証券会社等の営業現場で、どう扱われるのだろうか。

 証券会社が勧誘を行うことができるものは、“店頭取扱有価証券”として日本証券業協会の自主規制ルールに定められており、金商法上の有価証券報告書が提出されているか、何らかの監査が行われていることが最低条件になる。これを証券業協会で制度化したものが、グリーンシート市場だが、前述の開示対応に加え会社内容説明書の作成と、複数の証券会社が、価格を一定期間内に提示すること(マーケットメーカーとは異なるので約定義務はない。あくまでも投資家への参考価格提示)などが条件になる。

 では実際、証券会社の販売現場で未公開株の勧誘が行われているかというと、殆ど行われていないのが実態だ。理由は簡単で、勧誘行為にコンプライアンス上の制約が多く現場の手間がかかるということもあるが、未公開株に対する情報が伝えられてない。会社情報・価格の根拠・税制などもそうだし、セールスするにもそのポイントが分かりにくい。つまり分かりにくいものは売れない。勧誘可能な制度上の未公開株である“店頭取扱有価証券”及びグリーンシート銘柄さえ、この様な状況なのでベンチャー企業への投資に関与することも殆どないのが実情だ。

 確かにベンチャー企業への投資は、証券会社が関与する投資とは、その趣きが異なる。ベンチャー企業への創業時からの投資を行う中小企業投資育成3社(東京・名古屋・大阪)によると、投資した4336社のうち、この3月末の状況で、4%の192社は上場したものの、6%の262社は倒産している。個人がベンチャー企業への投資を行うには、リスクは通常の投資の何倍も大きなものになる。しかし、ベンチャーファンドの様に数十社に分けて分散投資したり、経営者のビションに共鳴して出資することがあってもいい。その個人の資金を、ベンチャー企業へ誘導する目的でエンジェル税制がある。

 エンジェル税制は、創業期のベンチャー企業への個人投資家による資金供給を促進する目的で1997年に制度創設され、一定の要件を満たすベンチャー企業に対して投資した場合に減税措置を受けるものだ。その実績は、2010年3月末までに、239社に対し、約60.8億円の投資が行われているが、減税措置は次の様になる。

【ベンチャー企業へ投資した年】
○ベンチャー企業への投資額全額を、その年の株式譲渡益から控除
若しくは、平成20年4月以降は、次の減税措置を受けることも可能である。
○(ベンチャー企業への投資額―2000円※)を、その年の総所得額から控除。但し、控除額の上限は総所得の4割か1000万円の低い方[※平成22年4月から、5000円から2000円に変更]

【ベンチャー企業株を売却した年】
○その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)できるだけでなく、その年に通算(相殺)しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって、順次株式譲渡益と通算(相殺)。倒産した場合も同様の措置。

 次にベンチャー投資対象となる投資は、次の方法による。
①グリーンシート市場のエマージング銘柄への投資(現在、20銘柄。その他のグリーンシート市場の銘柄はオーディナリーと呼ばれ現在41社ある。)
②経済産業省が認定したベンチャーファンドへの投資(現在13ファンド[投資認定投資事業有限責任組合])
③ベンチャー企業への直接投資。但し、経済産業省に認めてもらう必要がある。(なお、事前確認制度があり、現在対象となっている企業は20社あるが、この中には話題になった鎌倉投信やグリーンシート銘柄専門のキャタリスト証券がある。事後の確認も含めて認定された企業数は、平成20年度87社、平成21年度54社ある。)
 このエンジェル税制の投資家側利用数は、平成21年度にはのべ684人となっている。

いずれにせよ証券会社が業として未公開株詐欺防止の為に行えることは、未公開株投資に関して投資家に正しく方法を伝えることではないだろうか。その中に、当然エンジェル税制が含まれる。

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誰が株主なのか?エンプティ・ボーディングの問題
技術が進めば、新しく生み出されるメリットと共に、それまで考えられなかったような障害が起きる。エンプティ・ボーディング(経済的持分なしに議決権を行使する空議決権行使や、経済的持分を持ちながら議決権のない持分の隠蔽状態であること)はまさに金融イノベーションの進展の中で発生した障害になり得る問題かもしれない。
 そのエンプティ・ボーディングの原因になる経済的持分と議決権の分離とはどの様な状況を指すかというと、主に次の様なエクイティ・ディリバティブを実行していく過程の中で起きる。

○手法=トータル・リターン・スワップ
 X金融機関とYファンドなどの間で、A株式100万株に関する以下のようなスワップ契約を結ぶ。
・期間半年で、A株式の配当金相当分と期間中のA株式の値上がり分は、X金融機関からYファンドに支払われる。
・反対に、A株式100万株分の資産価値の金利相当分と手数料、もし期間中にA株か下落した場合のその下落相当分の金額は、YファンドからX金融機関に支払われる。
 ここまでは、スワップ契約(資産をベースにしたキャッシュ・フローの交換)を使ったエクイティ・ディリバティブだが、問題は通常X金融機関がリスクヘッジの為、A株式を手当てすることで起きる。この場合、X金融機関が議決権(共益権)、Yファンドが経済的利益(含む実質的自益権)を分離して持つことになる。この分離が何故問題かというと、議決権を行使するX金融機関にとって、A株式が下落した方が経済的メリットを受けるが、A株式の企業価値を上げるような議案へ賛成していくインセンティブがないことだ。つまりX金融機関は普通の株主と利益相反することになる。

 このことはコーポレート・ガバナンスの観点から好ましくないとされ、現在法制審議会で行われている会社法制の見直しにおいて、金融庁から問題ある論点として示されている。

 一方、このエンプティ・ボーディングは、会社法的問題だけではなく、資本市場のルールである金融商品取引法上の規制を逸脱してしまう可能性があることも指摘されている。上記のトータル・リターン・スワップの場合、Yファンドが、A株式の損益を清算せずに、X金融機関が保有するA株式の持分を現引いてしまう場合がある。通常のスワップ契約には、この様な現引く条項は含まれていないが、Yファンドの依頼によりX金融機関が保有するA株式を引き渡す事例があるといわれている。このことが、実質的議決権の隠蔽問題になる。
大量保有報告書規制や公開買付(TOB)規制を逃れる目的で、これらの手法が使われる可能性もあり、もし敵対的な買収行為にこの手法が使われるなら、企業及び他の株主が不利益を被る可能性もある。事例としては米国になるが、Jパワー株の買い増しで話題となった英ヘッジファンドTCIがこの手法を使い米鉄道大手CSXに経営参加を求めた。この間、大量保有報告が提出されていなかったので、CSX側は「TCIがデリバティブを使って実質的な株式持ち高を隠した」と提訴した。(2008年8月)欧州では、この実質的議決権の隠蔽になるような大量保有報告書規制や公開買付規制の実質的違反に対して、議決権の行使を制限する規制があるようだが、日本においては会社法制見直しの論点の一つになっている。

 いずれにせよ、実質的株主の認定がデリバティブの発達によって複雑化している現実があるが、議決権の行使若しくは行使への影響力を持つものを株主若しくは実質的株主としてルールを見直す必要がありそうだ。

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投信会社の情報発信について
 保有する株式や投信が大きく変動したとき、どうなっているかつい誰かに問うてみたくなる。特に投信が下落している時は、もともと運用を投信会社(投資信託委託会社)に任せているので、投資家の心配度は高まり、問い合わせは多くなる。投資家は誰に問うかというと、販売した証券や金融機関の営業現場が答えるのが一般的だ。投信を販売した証券や金融機関の販売員は、個別の投信に関する情報なら投信会社からの情報を投資家に伝えるが、一般的な市況の変化や突発的な出来事の説明は営業現場に任されていた。
 最近の投信会社の情報発信態勢を見ていると、この今まで証券等の営業現場で対応していた突発的な市場の出来事に対する情報発信について、大手の国内投信会社では自ら行うことが一般化してきたようだ。5月のギリシャ危機の時もそうだったが、今回の15年振りの円高と年初来の株価の安値について、先週後半に大手投信は一斉に緊急レポートを公表している。その主な内容は次の様なものだ。(順番は運用資産残高順)

【野村アセット】世界の株式市場および為替市場の変動について
・11日の日米市場がともに2%以上下落したこと
・日米、英国、中国の経済指標等及び日米の金融政策に対するコメント
・主要国、新興国、ギリシャの年初来からの株価下落の比較図(日本の下落は8%強だが、中国とギリシャが2割以上)及び為替レートの対円下落比較図(ユーロや東欧通貨の下落が2割近い)

【大和アセット】最近の為替市場における円高傾向について
・円高の契機になったFOMCの解説
・今後の為替相場の見通し=米ドルや、ユーロなどに対する円高圧力は、今後も時折強まる可能性は否定できないが、資源国通貨や、新興国通貨は相対的に堅調に推移する傾向は維持されるとの見方
・昨年からのドルとユーロの対円レートのグラフ

【日興アセット】世界経済と円相場について
・FOMC後の日米の金融政策についてコメント
・主要国経済は2番底をつけるに至らないものの鈍化を様相。2011年の米国GDPは前年比+1.5~2%を予想
・当面は円高傾向を予想
・1995年からの円相場と日米金利差のグラフ

【国際投信】海外市場での円高について
・直近の為替変動の解説
・円高が進みやすい環境だが、政府や日銀の政策に期待
・3年間のドル円レートの推移グラフと直近2日間の主要国通貨レート表

【三菱UFJ投信】昨今の円上昇について
・米国および中国の直近の経済指標に対するコメントと為替市場の解説
・今後の動向としては、米国景気の回復基調は変わらず、日本では円高をけん制
・円の上昇圧力は徐々に緩和を予想
・米国2年国債利回りとドル円相場の1年間のグラフ

【大和住銀投信】足元の円高ドル安について
・為替市場に対するコメント
・今後の予想は、米景気の回復基調は保たれ、円は年末に向けて下落を予想。
・2008年からのドル円推移のグラフ

 以上は8月12日に一斉に公表されているが、これらは日本の証券系といわれる投信会社の動きに限られているのが投信会社の情報発信の特徴になっている。

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市場の流動性向上にPTSは役立つか
 日本で7番目のPTS(私設取引システム)チャイエックス・ジャパンが先月29日にスタートした。当初、取り扱う日本株現物の銘柄数は5銘柄から始まり、5日には234銘柄に拡大、9月中には東証1部時価総額の9割以上をカバーする7~800銘柄の取扱いを目指すという。このチャイエックス・ジャパンのPTSの概要は以下の様になっている。

【取引時間】
8:00~16:00 (証券会社や機関投資家層の取引を想定しているので、個人相手のネット証券系PTSのようなイブニングセッション・ナイトセッションはない。)
【受渡日】
通常通りにT(約定日)+3営業日
【注文方法】
指値のみ(ペグ注文やアイスバーグ注文など自動発注機能あり。※自動発注機能があるのはここだけ)
【呼び値】
5000円以下の株価=0.1円刻み(取引所取引:3000円超5000円以下5円)
5000円超100000円以下=1円(取引所取引:30,000円超50,000円以下50円)
100000円超=10円(取引所取引:300,000円超500,000円以下500円)
※取引所の呼び値以下を基準にするのは他にkabu.comPTSとジャパンネクストPTSのみ
【約定方法】
指値相対による継続的付合せ(価格優先、時間優先)
【決済のルール】
日本証券クリアリング機構の現物清算参加者もしくはその取次ぎ委託者が、日本証券クリアリング機構との間で行う。(他のPTSは運営する証券会社との相対決済が基本だったが、ジャパンネクストPTSは7月より同様の決済方法に変更)
【取引参加者】
現在の野村とインスティネット証券のほか、ドイツ証券、クレディ・スイス証券、モルガン・スタンレーMUFG証券。8月中には10社を超える予定。(現在、3社以上参加するのは、ジャパンネクストPTSの10社、kabu.comPTSの8社)

現在、取引所外取引に占めるPTS取引の割合は金額ベースで10%台半ばまで増加してきているが、全取引に占める割合は未だ1%に満たない。欧米市場においては、このPTSは、その取引量が市場全体の2~3割を占めるようになっており、既存の取引所と競争しながらも市場全般の流動性に寄与しているとの評価が一般的になってきている。チャイエックスの参入で、日本でもその流動性向上の効果が期待され、日本市場へのPTSと通して新たな投資家・取引需要の創出が望まれているが、その為には次の2点が必要ではないだろか。

○取引所およびPTS間の価格情報を比較できるシステム
米国でのPTS成功の市場インフラ基盤として全米市場システム(NWS)の存在が欠かせない。これは全米の取引所・PTS間の気配情報や取引情報を結合して、最良気配を出している市場に注文を転送する自動転送機能を持つ。日本では取引ルールが異なるが、PTS間や取引所間の注文情報を比較できるシステム(情報伝達もミリ秒単位なので、情報を処理する為の自動発注システムも含まれる)が望まれる。

○最良執行義務への取り組みの進化
 同じ取引を実行するなら、一番いい値段の取引を行おうとするのが当たり前だ。例えば1万株を500円で買おうとした時、他のPTSでは499円90銭で買えるなら、PTSに注文を出すべきだ。この様なケースを想定して、一部PTSでは呼び値を取引所より細分化している。つまり一番いい値段で売買が執行できる=最良執行値段になるケースが多くなる。欧州でPTS(欧州での呼称はMTF=Multilateral. Trading Facility)が全市場取引の3割程度と普及した理由は、2007年でのMiFID(金融商品市場指令)で最良執行義務の導入が一因だと言われている。日本でも最良執行義務は2005年から施行されているが、今まではPTSの未発達もあって、PTS接続証券会社においてもPTSを含めて最良執行方針を定めているのはごく一部に限られていた。今後、PTSを含めての最良執行義務が標準化されていけば、PTSの取引増加が期待できる。

 以上の2つが整った段階でPTSは市場全体の流動性向上に役立つと思われるが、今しばらく時間が必要かもしれない。

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MBO増加の可能性を易しく考える
上場会社のMBO(マネージメント・バイアウト)は昨年度11件あったが、12日はJSTと日清医療食品の2件のMBOが発表された。両社とも事業領域の市場が縮小しており、抜本的な事業再構築が必要となったことから、MBOを行うという。そのMBO要件の基本的なことについて考えてみたい。

【MBOの形態】
言葉のとおり経営陣による企業買収になるが、その経営者が旧か現もしくは新かの違いはMBO資金の出所による。通常MBOは、市場価格に対して3~5割程度のプレミアムをつけTOB(公開買付)するので、経営陣は纏まった資金が必要になる。このMBO資金については、嘗てはプライベート・エクイティ・ファンドなどの出資を中心にしたものが殆どだったが、ファンド出資だと投資収益率が問題になるので、比較的短期間の再上場を目指すことになり経営者へ圧力が強まりがちだった。
これに対してオーナー一族がある程度の比率株式を保有し、かつローンの調達力がある場合、オーナー一族の100%出資という形態も出ている。この場合、企業のガバナンスが効きづらくなるという欠点があるが、ファイナンスコストも安く、再上場の圧力もない。
ちなみにMBO資金はローンで賄えるならそれに越したことはないが、企業価値をベースにそのローン金額を制限されることがある。(業種や企業内容によって異なるが、EBITDA倍率等を用いた企業価値の半分程度とされるのが一般的)経営陣が用意する出資資金が不足した場合、ファンドの出資を受けなければ、主要な取引先の出資や、議決権がない代わりに高配当を約束する優先株でのメザニン対応などのケースも増えていきている。

【MBOの条件】
MBOの必要十分条件は2つあるが、一つ目は株価が安いことだろう。企業が買収リスクに晒されているとの経営者の危機感強まるということもあるかも知れないが、大幅なプレミアムを払ってまでも企業価値はあると思わなければ、経営者はMBOに動かない。今の日本の株式市場の環境なら、MBO増加の余地が大きい可能性がある。
もう一つは、経営者が上場のメリット<上場のデメリットと判断することだ。上場の最大のメリットは、資本調達が容易になることだが、エクイティファイナンスが出来ない、もしく必要なければ、上場メリットは大きく縮小する。それでも株式の流動性があるとか、株式市場から求めるガバナンス態勢により経営規律が働くとか、信用力が保たれたり、従業員のモチベーションが維持できるといった副次的メリットはある。しかし最近は内部統制報告制度や四半期開示などもあって上場維持のコストも上がっているし、何よりも低株価のまま市場で放置されていることで、敵対的買収リスクも高まっている。またIRやIFRSに向けた態勢整備をしていく中で、更なるコスト増加も見込まれる。上場のデメリットを感じる企業が増える傾向にある。

【MBOの本源的意味】
 上記に上げた2つの必要十分条件は、あくまでも条件であって目的ではない。株価が安いので買い戻すだけが目的なら、自社株買いで安いときに買っておいて、再び成長するときに市場から資本調達すればいい。また、上場コストが高負担になるような銘柄は本来退場すべきとの投資家サイドの考え方もある。しかし、企業が再生しようとする時、株価や情報開示という圧力から一旦切り離されなければ思い切った手が打てない場合があるのも事実だ。その際、ステークホルダー間で利益相反することも起きるのでMBOは難しいといわれるが、唯一ステークホルダー間の収斂された目標があるとすると、それは企業価値の向上ということになる。MBOは、その企業価値向上の為に非上場化という処置をステークホルダー間で受け入れる環境にあるか経営者が判断することから始まる。

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ネット証券の点景=その2
ネット証券は証券業とIT産業の合いの子であり続けて欲しいというのが筆者の願いだ。勿論、ネット証券といえども金融証券取引業なので、業法に則り登録し、また一部は認可(PTS業務)を受けなければならない。しかしIT企業としての特色を失えば、なんとなく縮小傾向ぎみの業界の中に埋没しかねない。証券業界も最近は少し減って300社(7月末現在)になってしまったが、日本株取引減少が続く中、多くの証券会社が新たな業務展開を模索している。その中にあって、野村のまねは出来なくとも、ネット証券の取り組みで参考になることもある。ネット証券は業界の先導者であって欲しいのだ。
 ネット証券の最近の戦略テーマとして、前回に続き、残りの3社を以下に紹介する。

【マネックスの“知のインフラ”の構築と提供】
 金融とITをベースとした新しい情報インフラとして“知のインフラ”の構築を目指している。この戦略は5年後を睨んだ中期戦略として位置づけられており、投資アドバイス機能の提供による資産獲得で現在4分の3程度の取引手数料の比率を半分程度まで引き下げようとするものだ。
具体的にはアナリストを使った投資情報の提供や投資教育を行うことで、個人投資家へ投資に関する情報を分かり易く提供しつつ、最先端の金融工学を駆使した投資アドバイスツールを提供していく。このツールは、売買タイミングを分析するものと資産設計アドバイスをネット上で行うものだが、どちらもベータ版開発の段階にある。情報の分析をちゃんと行い、潜在顧客層には投資教育を行うっていくというのは、証券業界に長くいる筆者には、正論過ぎて少し照れくさいが、その業界で行うべき当たり前のことを、ネット上で堂々と行っていこうというので、今後の取り組みが注目される。

【楽天の口座数を拡大する戦略】
 この会社の戦略は、証券戦略というよりグループ全体の戦略の中での位置づけになる。その為、グループとの相乗効果を目指すという目標は不変で、口座数拡大を戦略の中心におく路線は続いている。実際、今第1四半期の新規口座開設数は、首位のSBIと変わらない。(口座数は、6月末でSBIが209万口座、楽天が99万口座)また新規口座のうち約4割が他の楽天グループから経由したものだ。ネット証券は、インターネットを使うというのでこの呼称になるが、この会社もSBIも顧客をネットワーク化していき、証券だけではなく、他の金融サービスや物販などでもそのネットワークを活用しようとする戦略が基本だ。その中で、インターネット上の顧客ネットワークに留まらず、証券仲介業の制度を活用して両社とも対面の証券サービス網を整備しようと試みていることも注目される。

【SBIのプラットフォーム戦略】
 どうもこの会社は個性の強い経営者や業界での先行した取り組みを行うことで、野村と多少イメージが重なってしまう。現在の野村の戦略のコアの一つに、業界における仕組み作りに関与していくというのがあるが、SBIの目指すビジネスもネットワーク化や業界の基盤となるプラットフォームを強く意識したものだ。近年、ネット証券だけではなく証券業界全体が、拡大するFX取引への対応を目先の最優先課題として取り組みつつあるが、SBIは、店頭FX取引においてFX取引業者と取引カバー先の金融機関を仲介するSBI Liquidity Marketを、2008年7月に設立している。店頭FX取引における業者間のPTS(取引所的機能を持つ私設取引システム)のイメージが近いだろう。日興コーディアルをはじめ他の証券会社もFX取引業者として参加し、カバー先の金融機関も20社になる。このFX店頭取引仲介会社の前期の営業収益100億円、営業利益30億円は、たいしたものだ。

以上、主要ネット証券の5社の最近の注力していることを1つ選んで取り上げてみた。

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ネット証券の点景=その1
ネット証券は、ここ10年以上証券業界の中にあって、常に先進的であったし又革新的でもあった。はっきり言って、ネット証券のやることは面白い。この業界は、資本市場という国の基盤に携わるだけあって、実はなかなか格式張ってもいるし、保守的な対応をすることが多い。その中にあって、ネット証券は常にネット取引で投資家が求めることを想定し、イノベーティブであった。勿論、全て成功している訳ではなく、だいたい大手証券の模倣をしようとしたものについては、概ね失敗しているように思う。このネット証券の最近の戦略について、筆者の私見で面白いとおもったものや、成る程と感心させられたものを簡単に紹介したい。以下、主要5社の直近第一四半期の決算説明資料より各社1つの戦略テーマを選び紹介する。※順番は、筆者の個人的判断による。

【カブドットコムの取引高速化対応】
 本年1月から東証の新株式売買システムarrowheadが稼働してミリ秒単位の取引処理が可能になった。この最大の目的は、機関投資家などの“アリゴリズム取引”を呼び込み、出来高を増加させることで個別銘柄の流動性の向上を図ろうとすることだ。しかし,アルゴリズムを処理する独自のサーバーや回線を持たない個人投資家の直接のメリットは分かりにくく、逆に高速化で目を使い板情報の変化を読むことが不可能になったので、旧来のデイトレーダーからはネガティブな反応が一時的にあった。此れに対応し、今までの10分の1以下の注文処理時間をめざし、この情報を投資家に開示。その結果、もし注文処理まで1秒以上かかた時は手数料を返還するという。また、来年の3月まで導入される大証の先物・オプション新取引システムに対しても、コロケーション対応(自社の取引処理サーバーを大証新システムの近くに置き、高速化対応回線で処理)し、又先物証拠金の計算も高速化して全体の処理スピードを上げる。それでも機関投資家向けアルゴリズム取引などで処理するスピードの数十倍だが、他のネット証券やリテール証券の対応に比べれば、処理速度は数倍になる。この事にどれ位意味はあるか、筆者は正確には判断できない。しかし、取引所のインフラ整備としての高速化に、個人が何らかの対応をすることを可能にする仕組みとして評価したい。

【松井の“時間限定少額証拠金口座”】
 CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のCME日経225先物取引において、取引開始から取引終了の15分前までで取引しかつ決済する(デイトレードの専用口座)と、必要な証拠金(1枚あたり約70万円)を通常の4分の1にすることが可能なサービスを4月から始めている。つまりCMEで日経225先物をデイトレードする前提だと4倍取引できることになる。またこれに合わせてPCからの注文以外で、モバイルからの同取引の注文も可能にした。これらの対応について、FX取引規制レバレッジ規制が8月から強化された中、取引時間を限定すればレバレッジの増加をコントロールできるという事を示していて、評価できる取り組みだ。
また、CMEのGLOBEX(24時間取引可能なオンライン取引システム)で取引されている銘柄のリアルタイムなチャート情報も、7月から24時間アクセス可能にしている。24時間チャートを使った新しい売買手法が生まれるだろうか。

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機関投資家の不動産投資
自分たちの親の時代は多くの個人が不動産価格上昇の恩恵を受けたが、日本のバブル崩壊の20年近く間、一般論ではそんな話は無かったように思う。稀にかかってくる不動産投資の勧誘も、自分で住んでいる住宅のローンが残っているのに、新たに借金までして不動産に投資するなど思いもよらない。そういう感覚が普通のサラリーマンのものだったのではないだろうか。但し、不動産の持ち分を細分化することを可能にした証券化商品やJリートが出来てからは、低金利が続く貯蓄商品と比較して、値上がり益というよりは利回りで不動産関連投資を見直し易くなり、個人にとっても比較的少額から不動産関連投資をすることが可能になっていた。

 では資金量が豊富なプロの投資家の不動産関連投資の現状はどうなのだろうか。8月6日に(社)不動産証券化協会が公表した“機関投資家の不動産投資に関するアンケート調査”集計結果から見てみたい。
(ここでは、生損保や金融機関などの一般機関投資家について取り上げる。)
先ず平成22年度の全体の資産配分状況については、
○債券=54.3%、貸付=28.3%、株式=6.5%、現金及び短期金融資産=5.3%、不動産=1.4%と不動産投資は意外に少ない。前年に比べ株式が2.7%減少し、貸付が6.7%増加している。
(投資家によっては、証券化商品での不動産投資を株式やその他投資に分類しているところもあるようだ。)
 次に、実際の不動産投資について次の様に分けているが、

(A)実物不動産若しくは不動産信託受益権への直接投資
主な投資目的:安定的キャッシュフローの獲得、投資期間:5年以上若しくは年限を定めないが100%
平成22年度期待投資収益率:5.0%

(B)Jリートへの投資
主な投資目的:安定的キャッシュフローの獲得、投資期間:5年以内と5年以上が半々、平成22年度期待投資収益率:5.8%

(C)海外リートへの投資
主な投資目的:ポートフォリオのリスク分散、投資期間:5年以内が3分の1、平成22年度期待投資収益率:9.3%

(D)不動産私募ファンド等への出資
主な投資目的:収益性向上、投資期間:5年以内が3分の2、平成22年度期待投資収益率:9.1%

(E)不動産または不動産担保ローンを裏付けとする債券型不動産証券化商品への投資
主な投資目的:安定的キャッシュフローの獲得と収益性向上、投資期間:5年以内が7割、平成22年度期待投資収益率:2.5%

いずれかの投資を行っている比率は、82%となっている。

また、不動産投資を行うために必要なこととして、次の理由が上位にあげられている。
・市場規模の拡大(銘柄増加を含む)
・不動産評価の信頼性の向上
・不動産に精通した運用担当者の育成
今後の一般機関投資家の市場見通しについては、株価や長期金利の上昇は見込むものの、地価・オフイス賃料・不動産の期待利回り等について低下を予想する向きが多い。Jリートの分配利回りと長期金利の現状のスプレッドについては、一般機関投資家の約半数が大きすぎるとしている(Jリートが割安)。

不動産投資への一般機関投資家の姿勢で多少余計なことを申し上げるが、
・市場が大きくなければ、投資しても不安だから
・ファエバリュー(公正価値)がわからないから
・専門の技術者がいないから
と、もし日本の企業が海外投資や新規投資に手を拱いていれば、日本の経済は成り立たないし、一般の企業社会ではありえない。機関投資家がもし個人から資金を預かり運用する専門家であるなら、そろそろこの投資しない理由から抜け出し、運用の専門家として自立する時期に来ているのではないだろうか。

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投信の乗換えについて
 日本株は余り見込みがないから売って中国株を買う。中国株は少し調整しそうだから、これを売ってインド株を買う。これを個人が行おうとすると、各国株の指数に連動して運用される投信の乗換えを行うということになる。しかし、一般的には投信は販売時の手数料が高く、投信の乗換えは投信の売却・販売を行う証券会社の手数料稼ぎと見做されかねないので、証券会社が投信乗換えを薦める場合には、ちゃんと投資家に説明して、証拠をきちんと残しておかなければならない。また、社内のチェックがちゃんと働くように態勢を整備しておく事も求められる。

 この事について証券取引等監視委員会(SESC=証券会社に対する業務検査も行う)は、最近の証券検査における指摘事項に係る留意点として、投信の乗換勧誘に際し重要な事項について証券会社が投資家への説明を行っていない状況があるとして、次の事を上げている。
○毎月分配型から他の投信への乗換勧誘に際し、売却する投信の大幅な分配金引上げの事実のように、顧客の投資判断に影響を及ぼす重要な事項について、投資家に十分説明する必要がある。
○証券会社の内部管理部門において、営業員による勧誘状況のモニタリング態勢を整備し、不適切な勧誘行為に対する牽制機能を発揮することが求められる。
 勿論、投資家自身が乗換えを求めている場合は、証券会社が勧誘していないという証拠や記録残せば、SESCが留意事項で求める対応は必要ない。

 具体的事例としては、今年3月に処分勧告されたコスモ証券の事案があるが、これは営業本部長による投信販売の営業推進において、ブルベア型の投信販売を推進するにあたり、それ以前に販売注力していた毎月分配型4投信からの乗換え勧誘を組織的に行った時に、次の法令違反行為があった。
・同社では、6か月未満の乗換え提案禁止(投資家が自ら依頼する場合は、乗換えは問題ない)や高齢者に対する勧誘制限があったが、これに対して非勧誘を偽装していた。
・乗換え勧誘に際して、証券会社は投資家に重要な事項を説明しなければならないが、これを実行していない取引が多数あった。
・業務監査部のモニタリング制度はあったが、これが機能していなかった。
この件で同社は行政より業務改善命令を受けるとともに、証券業協会への過怠金の支払い、不当な投信の乗換えで得た手数料の投資家への返還や利益の社会還元措置の実行を求められた。

 ここで再度繰り返すが、証券会社が投資家に対して投信の乗換えを勧誘することが問題な訳ではない。要は、社内ルールに則り、ちゃんと大事なことは説明すれば、問題ないのだ。そのちゃんと説明することが出来ていないとSESCが問題視するケースが本当に増えているのだろうか。

 ちゃんと説明することは、日本証券業協会が証券会社に対して通知した“投信信託等の乗換え勧誘時の説明義務に関するガイドライン”があるので、それを順守していれば問題ないはずだ。証券会社が投資家に説明すべき重要な事項は概ね次のようなものがある。
・売る投信と買う投信のファンドの性格
・時価や分配金などの売却する投信の状況
・手数料や課税関係など、実際売買した場合の投資家の経済的利益に関係するもの 等
又、当然だが、乗換えを勧誘したか、していないかの記録は残す必要がある。

 これらのルールがあるのに、SESCから問題視されるのは、証券会社サイドで乗換えを勧誘する目的に間違いがあったり、乗換えそのものに対する何らかの後ろめたさがあって、ちゃんとした乗換えの手順を順守されていないのではないか、と筆者は懸念する。投資には難しい時代なのだから、投信の売却若しくは乗換え勧誘は、当然あって言いと考えるが、証券会社は堂々と正規の手順を踏んで、投信の乗換え勧誘をすべき時代ではないだろうか。

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第二のFX取引を探せ
 今月からレバレッジ規制が始まったFX取引だが、この規制による外為市場への影響が懸念されるほどFX取引の存在感は強まっている。FX取引の口座数250万は、ネット証券大手や中堅証券会社の口座数を上回るし、取引の為の証拠金6000億円以上といわれるが、レバレッジが10倍で6兆円≒700億ドルの外為取引ができるので、2009年度の貿易収支5兆2332億円の黒字額(つまり余剰の外貨)を超えてしまう。これだけ個人の実質的な外為取引であるFX取引が盛んになったのは日本独特の現象のようだが、先ずこの原因について、投資家の視点から考えてみたい。

【FX取引は、分かりやすい】
 この分かりやすいというのは、FX取引自体が通貨を売買するという単純な行為になる。多少慣れなければならないのは、通貨間の金利差であるスワップで保有するポジションが調整されていくという事だろう。もう一つの分かりやすさの要因は、いつでも情報が比較的容易に入手できることだ。20年以上の前の為替取引なら、専用のロイター端末を叩かなければ外為情報の入手は難しかったが、今ならドルやユーロの対円レートならニュースで提供されるし、インターネットでは殆どの通貨のリアルなレートが入手できる。

【FX取引は、いつでも自分の都合に合わせて出来る】
 これも要因は2つあると思うが、一つ目はインターネットや携帯の発達で、FX取引を仲介するFX業者へのアクセスも24時間可能になったこと。二つ目は、指値は勿論、逆指値、Aの指値が出来た場合のBの注文執行、一定比率決めたレートから下落したら買うといったような個人も使えるシステム売買が可能になったこと。この2つの要因から、自分の都合のいい時間に、自分の投資のストラテジーを決め、そして注文することが出来る。

【FX取引は、面白い】
 FX取引に影響を与えるのは、主に各国の金利差や経常収支などマクロ経済の要因になる。つまりFX取引の判断を行うことは、何らかのマクロ経済的指標について自らの判断を行うということになる。米国の失業率低下の予想してドルを買ってもいいし、ブラジルの利上げを予想してレアル買い持ちポジションを増加させてもいい。自らがマクロ経済に関与しているという意識は、個人の知的満足を刺激する。

【通常はプロしかできないことが出来る】
大口の取引しかできない外為市場にあって、FX取引は、レバレッジを掛けることで個人も間接的に参加する道を開いた。この事は個人投資家にとって重要だ。先ず通常の取引で、レバレッジを掛けたので個人投資家も参加可能となり、そして個人投資家の取引が増加すると、取引を細分化しようとする。日経225先物と日経225先物miniの事例もある。

以上4点を満たせば、第二のFX取引が生まれることになる。
では何かという事を考える前に、取引の形態についてコメントすると、結局4番目のプロにしか出来ないことの制約は取引サイズの制限があるものだ。それを埋めるには、証拠金を基にレバレッジをかけるか、オプション取引しかない。つまり結局、個人のデリバティブ取引への対応は外せないという事になる。
 取引の仲介者にとってオプションの方は多少取扱い難いので、CFD取引の様な取引形態が有望ということになる。仕組みはFX取引とほぼ同じだ。問題は何を取引するかということだが、前述の4点を満たす必要がある。取引対象として有望なのは、日本国債指数・その他各国の国債や債券指数・原油先物指数・金先物指数・各国のソブリンCDS指数あたりだろうか。選択するのは個人投資家になるが、対象となる取引情報が身近にあることが第二のFX取引の前提だろう。

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CDS清算機関への取組み
金融危機の主因の一つとなったCDS(クレジット・ディフォルト・スワップ)は本稿で何度か取り上げているが、このCDSの清算機関を作って、政府がキッチリ監視しようというのがグローバルな金融規制強化の共通した流れになっている。米国でも、欧州でも、そして日本においてもだが、元々このCDS取引は、グローバルな金融機関同士が店頭取引していたものだ。しかし、その取引がどの位積みあがっているか、金融危機前は当局も知らなかったし、決済も相対だったので、もし取引先の金融機関が破綻した場合、膨大に積み上がったCDS取引を介して破綻の連鎖が起きる可能性があった。この為、米国・欧州ともCDS清算機関の設立を(業界に)急がせ、清算機関を通してCDS取引の実態を把握(CDS取引における清算機関利用の義務化)し、取引をネティングすることで金融機関同士の破綻の連鎖を防ごうとしている。

 日本におけるCDS取引は、また欧米の水準には遠く及ばないが、最近はJALの債務やアイフルの民事再生での対応などで、個別銘柄も注目を集める様になってきている。CDSは社債やローンなどの債務を保証するデリバティブなので、CDS取引が活発になれは既発行の社債取引も増加する。そのため、最近は社債・ローンとCDSを合わせてクレジット市場という言い方が一般化してきている。このクレジット市場には、先行して規制強化された格付機関問題も重なってくる。また、一部の金融機関や格付機関しか知りえない信用情報を、クレジット市場の中でどう扱っていくかという相当困難な問題とも向き合わなければならない。

 このCDS清算機関設立について、日本でもようやく具体化の動きが見えてきた。
6月末に日本証券クリアリング機構(株式の取引所取引やPTS取引などの清算機関)は“OTC(店頭)デリバティブ清算業務に係る制度要綱等について”を公表し、先ずCDS取引に関して来年4月から6月を目途に清算業務を始めるとしている。当面は日本物インデックスCDSのiTraxx Japanのみだが、順次取引量の多い個別CDSの清算業務も取り込む予定だ。

 この清算業務の内容は複雑なので、説明は別の機会にするが、CDS取引はISDA(国際的な投資銀行業務を行う業者間の協会)が定めた契約書や確認方法により取引を行い、またその契約期間中の利払いなどの管理も行わなければならないので、その為に契約内容をストックしておく記録機関が必要になる。この記録機関は既にDTCC(米国の清算機関)の子会社でTIWがあり、ここの事実上集約されている。
このTIWでCDSの照合が行われるなら、どうして各国に新たに清算機関が必要かということに戻ってしまうが、TIWでは日本や欧州の当局が取引データを把握できないし、連鎖倒産を防止するための取引のネッティングも行えない。

 日本クリアリング機構が行うCDSの清算業務は、取引照合等はこのTIWの機能を使い、取引データの集約やネッティングを行おうとするものだ。

 日本の清算機関整備には少し厄介な問題もある。今はCDS取引も膨大な量ではないが、将来CDS取引が積み上がっていった際に、清算機関はその清算リスクをどうコントロールしていくかが重要になる。現行案では清算会員の資格は純資産5000億円以上・格付けA格相当以上となっている。もし、格付けがBBB+に低下した場合は、当初証拠金を倍に積み増さなければならない。この純資産規模だと日本の金融機関は限定されるが、将来CDS取引の清算機関利用義務付けが強化された時は、中小金融機関のCDS取引はどこか大手金融機関に委託・仲介を依頼しなければならなくなる可能性もある。その為、制度上の工夫が必要だ。(どんな市場でも、市場参加者に厚みがある市場の方が好ましい。悪しき前例は、証券化証券市場ではないだろうか)

できてもいない清算機関のことを議論するのも少し違和感があるかもしれないが、個別銘柄のCDSこそ社債・株式のファイナンス等とリンケージしてみる必要があると考えるので、日本におけるCDS市場機能の整備は注目している。

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空売り規制と自社株取得緩和
 先月7月末に6度目の空売り規制と自社株取得の緩和の延長がされ、両処置とも10月末まで延長されることが金融庁より示された。2年前の金融危機の時点で、各国の金融当局により、特に市場への影響が大きいと思われる大手金融機関株式などの空売りを禁止する時限措置が取られた。
 日本でも、金商法に定められた空売り規制、
・原則直前の価格以下での空売りを禁止した価格規制(アップティック・ルール)
※個人の信用取引が原則例外(50単元以内)
・売付けが空売りであるか否かの別の明示・確認を取引者等に義務付ける明示・確認義務
に加え、
・各取引所における、全銘柄合計及び業種別の空売り状況の日次公表
が恒久化され、次の時限措置が加えられた。
○売付けの際に株の手当てがなされていない空売り(Naked Short Selling)の禁止。
○一定規模(発行済株式総数の原則0.25%)以上の空売りポジションの保有者に対する、証券会社を通じた取引所への報告の義務付け。取引所による当該情報の公表。

 この後ろ2つの時限措置については、昨年12月に公表された“金融・資本市場に係る制度整備”においては空売り報告制度の整備として恒久化を検討するとされていた。但し、価格規制(アップティック・ルール)については、売り崩し防止策として導入された時より流動性を重視する流れが強く、業界からは撤廃を求める声も強い。実際、米国では2007年7月に撤廃され、金融規制改革法で復活の可能性もあったが、今回は見送られたようだ。英国でも価格規制はない。ここで一般に少し分かり難いのはNaked Short Sellingだが、株を手当てしないで売買するとどうなるかというと、2つの方法に分かれる。一つは、決済日まで売った株を手当てする事、もう一つは決済そのものを延長してもらうこと。一つ目は特に問題ないが、空売りした後に株式を借りてくるか、買い戻してその分の決済を空売りした決済日より速めてもらうことで対応出来る。二つ目は、フェイルと言う方法で対応することも可能で、売却した株を渡せなかった売り手は、後日の株式の引渡しを約束して買い方に担保を入れる。その間、売り手は株を買うなり借りるなりして調達していく。ヘッジファンドなどが使う手法でもあるが、それを相対でうけるのが外資を中心として投資銀行(グルーバルな証券会社)である。そもそも、金商法上では株式が手当てされない空売りは禁止されているはずなので、この部分は普通の投資家には分かり難い。

 但し、一般の投資家にとって通常の信用取引制度や貸借取引制度(制度信用)などと異なった空売りの実数が分かることは、投資判断をする上で重要な情報になる。

 以上を簡単に纏めると、空売り規制で旧来からある価格規制は流動性確保の視点から撤廃を検討し、一定量以上の空売りポジションを報告し公表(銘柄毎)する空売り報告制度は個人投資家の回帰の為にも具体的に進めるべきだ。業界の一部に見られるように、空売り規制強化と一つに束ねて反対するのは、多少大人げが無いように思う。

 一方、自社株取得に対する規制は、上場会社が自社株を取得する場合のガイドラインで規制したものだが、
・1日の買付数量の上限について、直近4週間の1日平均売買高の25%を上限として買付けを行うこと
・金融商品取引所の取引終了時刻の直前30分間以外の時間に自己株券の買付けを行うこと
としたのは、上場会社自らは自社株の価格形成に作為的に関与することを避ける為だ。これも、金融危機の緊急対応として空売り規制強化とともに、2年間その適用を停止しているが、この分は本来の金商法における有価証券の取引等に関する規制の相場操縦規制により、株の発行者である上場会社の行為も縛ることが出来るのではないだろうか。自社株取得も10年以上経ち一般化してきたし、相場操縦の摘発も厳格に行われるようになってきたので、このガイドラインそのものは撤廃する時期にきているのだろ。

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