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毎月分配型ファンドのトレンド
 日本だけでの特徴と言われる毎月分配型ファンドの拡大は、2003年から続いており、現在、販売される投信の8割以上を占めていて、同型ファンドは最早日本におけるスタンダードな投信となっている。同型ファンドに対する批判としては、長期投資を目的にしたものなら、毎月分配せずに累積投資をして運用パフォーマンスを向上させるべきだとか、本来運用残高とする部分をタコ配しているのではないか等の批判はあるが、同型ファンドがシニア層の預金等から資金をシフトさせたように、従来の投資家層から、投信の購入者層を拡大した功績は大きい。最近の状況をみても、1年以内に複数回定期的に分配を行うファンドは、9月末で984本・運用残高が35.9兆円あるが、そのうち毎月分配型は711本・運用残高は32.2兆円と9割を占めていて、日本の投資家の毎月分配型への志向は衰える気配がない。

その毎月分配型ファンドでも、いくつか流行るトレンドがあるようだ。
最近のキーワードは、“高配当”“新興国”“海外REIT”“通貨選択”など上げられる。
国内で設定されている投信への資金流入順位(1月~9月:モーニングスター調べ)をファンド分類で見てみると、次のようになっている。
・純流入額1位:国際債券エマージング型(新興国債券投資:為替ヘッジなし=通貨選択型等)資金純流入額1兆5548億円
・純流入額2位:国際株式REIT型(海外REIT投資:為替ヘッジなし=通貨選択型等)資金純流入額9548億円
・純流入額3位:国際債券オセアニア型(豪ドル債など投資:為替ヘッジなし=通貨選択型等)資金純流入額6218億円
・純流入額4位:国際債券低格付型(海外ハイイールド債投資:為替ヘッジなし=通貨選択型等)資金純流入額4897億円
・純流入額5位:国際債券短期型(豪ドルなど高金利短期債投資:為替ヘッジなし=通貨選択型等)資金純流入額4417億円

一方、同期間の資金流出が大きかったファンド分類は、
・純流出額1位:国際債券グローバル型(グロソブなど欧米の債券投資を中心にしたもの:為替ヘッジなし=但し通貨選択型ではない)資金純流出額1兆2005億円
・純流出額2位:国際ハイブリット型(株式や債券、REITに分散投資したもの:為替ヘッジなし=但し通貨選択型ではない)資金純流出額9348億円
となっていて、新興国や資源国の債券投資に投資資金が向かったことが分かる。

 また最近の状況みると、新規に設定された毎月分配型ファンドにおいて、実際に分配が始まった状況を投資家が見極めながら、更に資金流入が拡大していくような高分配金ファンドへの集中化傾向がみられる。9月資金流入額1位で約1182億円資金流入のあった“野村グローバル・ハイ・イールド債券投信”(2009年1月設定)のブラジルレアルコースは、6月から分配金を200円から250円に引き上げ、また同2位で約1056億円資金流入のあった“日興アシュモア新興国財産3分法ファンド”(2010年2月設定) のブラジルレアルコースも、7月から190円を分配開始、それぞれ年率ベースで2割を超えるような分配金のファンドへの資金流入が、最近のトレンドとなっている。

 但し、投資家も販売者も、この高収益の分配金原資が新興国債券投資リスクと新興国通貨リスクをとることで成り立っていることを十分に認識していると信じたい。
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インドネシアの株式市場
最近は、個人の株式投資もアジア株投資が流行りのようで、ある中堅証券ではリテール部店からの株式発注の半数が海外株だという。その中で中国・インドに次ぐ成長を続けるインドネシアへの投資は、投資家の注目を集めているようだ。特にインドネシア取引所のジャカルタ総合指数は、金融危機以前の高値を更新し続けており、現在(10月27日)も3,624ポイントと高値圏にある。
市場規模をみると、9月末現在でインドネシア取引所の時価総額が、US$ベースで3271億ドルと東証の10分の1程度の規模になる。アジアの主要な16の取引所でみると12番目の規模になるが、ここ1年間の時価総額の増加率(US$ベース)は62.6%と大幅な上昇を記録している。ちなみに、1年間(2009年9月末~2010年9月末)の株式市場時価総額5割以上の増加は、アジア新興国市場の特徴になっているが、コロンボ(スリランカ)の151%、深圳の73%、フィリピンの65%に次ぐものだ。

 インドネシアにおける株式取引はオランダ統治時代からあるものの、取引所の歴史は比較的浅く、1952年に開設されたジャカルタ取引所が実質的に最初のものになる。但し、1960年にオランダ企業の株式取引が全面的に禁止されてからは休眠状態が続き、1977年に24社の外国籍企業を強制的に上場させることで再開されているが、10年ほどは市場の低迷が続いていた。その後、資本市場監督庁による国内企業の上場推進策や海外投資資金の誘導策など資本市場規制の緩和を実施することで株式市場は活発化し始め、1993年の証券決済機関の設立、1995年の資本市場法の制定などで株式市場のインフラが整備され、2007年にはジャカルタ取引所と債券や先物取引中心のスラバヤ取引所が合併して、インドネシア証券取引所が発足している。
 取引所に上場されてきる企業数は、9月末で409社になるが、アストラ・インターナショナル(自動車)やインドネシア・テレコム(通信)など上記10社で時価総額及び売買高の約50%を占めている。また、上場企業を業種別でみると、本年8月時点の時価総額ベースの割合では、金融が27%、インフラや公益事業関連が17%、鉱業が13%、消費財が12%、製造業が10%と続いており、直近の上昇は其々に年初から4割前後上昇している消費財や製造業のセクターが、史上最高値を更新する相場を牽引している。

 取引所の概要については、固定資産が1000億ルピア(約9億円)以上の企業が上場するメイン・ボードと、50億ルピア(0.46億円)以上あればよい新興企業向けデロップメント・ボードに分かれ、取引区分もT(取引日)+3日で決済する通常の取引手法と、午前中だけ取引して当日決済可能とする手法(キャッシュ・マーケット)に分かれる。

 投資家動向に関して言えば、また市場規模が世界的にみて小さい割には海外投資家の関与が大きいことが指摘されていて、少し前になるが2006年世銀の調査では、時価総額ベースで株式保有の74%が海外の機関投資家、21%が国内の機関投資家となってあり、国内の個人投資家の割合は5%程度に留まっている。台湾や韓国・中国など国内個人投資家比率が高い他のアジア市場とは対照的だが、その分、国際的金融情勢の影響も受け易く、金融危機の際には40%以上の大幅な下落と2日間以上の取引停止を経験している。

なお株式市場とは直接関係ないが、インドネシア中央銀行は、為替の乱高下を防ぐ目的で、6月に次の資本規制を実施している。
・中央銀行の発行した短期債券(SBI)を購入した場合、最低1ヵ月の保有義務
・最長6ヵ月だったSBIは、8月から9ヵ月、9月から12ヵ月
・政策金利の日々のオペレーションの上下幅を0.5%から1.0%に拡大

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機に乗じて敏に・・・社債市場改革への期待
せっかくのチャンスなのだから、このタイミングでもう少しスピディーに動けないかと期待を込めて書いている。社債市場の改革は業界の永年のテーマであり、誰しもが必要だと思うものの、実際はなかなか進まない。特に流通市場の方の改革は、社債の投資家層を拡大していく上で重要だ。
 チャンスというのは、次の様な社債市場改革の為の好環境が現在揃いつつあるからだ。
・発行市場は昨年(2009年度発行総額10.3兆円)程ではないが、高水準を維持している。
・日銀の追加緩和策の影響で、投資家の資金は、国債以外にも外債や社債に向かっており、格付けの低い銘柄(BBB格以下)にも買い需要は高まっている。
・10月21日に公表された政府の行政刷新会議の重点課題(規制・制度改革に関する分科会が当面検討すべき規制緩和策や整備すべき制度に挙げた約40項目)で、“社債市場の活性化および国際化の推進”が挙げられている。
つまり社債に関する市況環境が良く、市場改革の為の政策支援を望める今の時期こそ、資本市場の懸案の1つであった社債市場特に流通市場部分の改革を一気に進める好機と考える。但し、業界における社債市場改革への動きは、証券業協会での検討が2年目も半ばに入るのに、なかなか慎重だ。

 ここで社債市場改革は何故必要か、もう一度簡単に復習しておくと、欧米が先行しているというだけではなく、日本の社債市場の規模が経済規模に比べて小さく、凡そ米国の6分の1以下の規模しかない。また個人の社債保有が、直接・間接(投信を通じて)合わせても極端に少ない状況にある。個人投資家は、海外のハイイールド債は買っても、日本のハイイールド債は買えないのだ。また平成22年度の税制改正で社債の利子に対する非課税措置はとられているものの、海外投資家の保有も低水準に滞っている。その為、個人や海外の投資家の保有・売買を増加させながら、既存の社債投資家(現在は半数近くが銀行保有)の売買を活発化して、市場全体の規模の拡大を図るためにはどれをどう優先して実行すべきか具体化の検討を進めるべきだ。

 現在、日本証券業協会の“社債市場の活性化に関する懇談会”では、下記の4つの部会に分けて改善対応の具体化検討が進められている。
・第一部会“証券会社の引受審査の見直し等”→発行市場の拡大や発行体への利便性の向上に繋がるもの
・第二部会“コベナンツの付与及び情報開示等”→投資家拡大の為に、発行体の借入れと社債の条件相違の明確化を求めるもの、又はその情報共有について
・第三部会“社債管理の在り方等”→社債の保有者が不利にならないような社債管理の仕組み・考え方の見直し
・第四部会“社債の価格情報インフラの整備等”→流通市場活性化の為に最も重要な社債価格情報の“情報非対称性”を解消し、市場価格の透明性を向上させる情報共有インフラの具体化

この中で前の3つは技術的な問題だが、4つ目の価格情報インフラ整備は最も重要だ。つまり価格情報が分かりにくければ、参加者が限られ市場の拡大が望めないことは明白だ。但し次の事に留意しておかなければならない。
流通市場のブローカーである証券会社にとって、ある程度の情報の非対称性がなければ、ブローキング業務で利益も上げ難し、売買する為のポジションも取り難い。また次の様な意識がブローカーとしての証券会社には根強い。
[社債の発行総額は現在8月末時点で60.3兆円あって、9月の売買高は2.3兆円。これを年ベースの回転率でみると0.46回転になる。これを平均的な発行額200億円で、一般的な売買単位5億円でみると、年18回の売買ということになる。この取引価格を毎日公表することに意味はあるか]
取引情報を多くで共有して、この年18回の取引を数倍に増加させれば良いのでというのが一般的な感覚だが、現在の18回の売買とその収益性を守ろうとするブローカーの同意は難しい。
しかし、社債市場活性化の為には、店頭取引の社債市場においてその中心的機能を果たす社債ブローカーの協力が必要なことも事実なので、ブローカーの証券には高所の判断を求めるよう、経営陣へのアプローチも必要だと思われる。

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来年4月から変わる証券市場ルール
せっかくの世界的な過剰流動性相場なのに、日本だけ取り残されているようで寂しい思いをするが、先の国会で成立した平成22年度金商法改正(5月成立)に伴う施行内容が下記の様に明らかになり、来年4月1日から施行される。本年度の改正内容の主な部分は、金融危機対応のグローバルな金融規制強化の流れに沿ったものだが、投資家保護の為の調整的なルール変更も追加されている。

【グローバルな金融規制強化の流れに沿ったもの】
●店頭デリバティブ取引(金利スワップとCDSを想定)等の決済の安定性と透明性の向上の為の清算機関の整備
 金融危機の主因になったCDS取引について、当局による取引実態の把握と危機対応の為、欧米とも清算機関利用の義務付けや報告強化に取り組んでいる。CDS取引実態の少ない日本でも、日本企業の関与するCDSに関しては、清算機関を通じて、当局が取引実態を把握すべきとされ、東証・東京金融取引所それぞれが設立を準備している。ただし、取引量の限られたCDS取引だけでは清算機関として現状では成り立たないとみられ、金融機関間の取引の多い金利スワップも合わせて清算機能を提供しようとしているが、国際間の金利スワップ取引では、既に標準的に利用されている海外の清算機関が存在している。このような事情は、金融機関の取引・決済担当者でなければ分かりにくいが、日本でもCDS清算機関整備を準備するプロセスと見たい。内閣府令では、次のことが決まっている。
・国内の清算機関は、最低資本金 10億円
・清算業務を3年以上行っている海外の清算機関は、国内の清算機関を通じて日本の金融機関の取引の清算業務を行うこと(リンク参入)が出来る
・取引の照合業務や記録業務などを海外の清算機関等が行う場合等、日本の資本市場への直接的影響が軽微とみられるものは、当規制の適用除外
●巨大な金融グループの規制・監督強化
 国際金融・資本市場に影響力をもつ巨大金融グループへの監視体制強化は各国とも行っているが、日本での実施要領が明かになった。
・証券会社の総資産1兆円以上を主要株主規制・川上、川下の連結規制の対象として、グループに対するモニタリング体制を強化し、親会社や子会社への行政処分権限を導入する。
 ただしメガバンク・グループなどバーゼルⅡでの規制対象となるグループは、他の当局により規制を受けるグループとして当規制の対象外となることが出来る。結果、当規制の対象となるのは、野村・大和の両グループになると見られている。
●ヘッジファンド規制
 欧米当局の様に、ヘッジファンドを新たに登録制にしたり、報告強化や銀行の出資規制をすることはない。日本でもヘッジファンドは育ちつつあるが、欧米に比べファンド規模が小さいので、市場への影響力や行為が問題視されることもない。一応、ヘッジファンドは金商法では投資運用者として登録制の対象になっているが、今回、以下の件が追加されている。
・外国投資信託の形式で、国内から直接設定・指図する運用形態は今まで投資運用業の対象でなかったが、これを登録制の対象に加える。

【投資家保護の為の調整的なルール変更】
●個人向け店頭デリバティブ取引に対する不招請勧誘等の販売勧誘規制の強化
 主にCFD取引を対象にすることが既に報じられているが、FX取引や商品先物取引などの勧誘規制と平仄を合わせている。
・不招請勧誘の禁止、再勧誘の禁止、勧誘受託意志確認義務などの対象とする。
●不動産デリバティブ取引に対する規制の導入
 今まで業界であまり議論されていなかったので、多少違和感があるが、不動産価格のヘッジ手段として不動産デリバティブ取引が拡大しつつあるという。(国土交通省マター?)
・不動産インデックス、不動産価格等を参照指標とするデリバティブを業規制・行為規制の対象とする。
●事業型ファンドに対する管理の徹底の為の開示事項充実
本稿でも扱ったが、私募の事業型ファンドで出資金の流用等が証券取引等監視委員会の検査により明らかになったケースが相当数あり、監視委員会から建議を受けていたもの。
・販売時の契約締結前交付書面の記載事項に、具体的分別管理先やその実施状況を追加。

※その他、国内の金融機関やプロ投資家が発注する外国市場デリバティブ取引を、外国業者が受ける場合、規制対象外であることを明確化するとあるが、筆者はこの目的や背景がよく分からない。

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期待されるファンドの問題行為
ファンドは、過度に銀行などの間接金融に過度に依存した日本の金融システムの構造を転換させるものとして、“経済成長に向けたファンドの役割と発展に関する研究会報告書”(経済産業省2005年12月)では次の様に期待されている。
「多様な主体から資金を集め、新しいリスクの担い手として様々なノウハウを駆使する、ファンドの展開がめざましい。ファンドは、最先端の技術を有するベンチャー企業に対してリスクマネーを供給し、あるいは資金調達が困難であった高リスクの事業分野での資金調達を支え、さらに事業再生のメインプレーヤーとして活躍する等、従来の金融主体が十分に担うことのできなかった重要な役割を果たしている。」

 このファンドへの資金の流れを明確化しかつ拡大させる為に、2007年の金商法ではビークル(契約形態)に係らず包括的みなし有価証券として集団投資スキーム=ファンドが定義(金商法2条2項5号、6号)され、このファンドを販売するものは第二種金融商品取引業として定義されている(登録制)。また、このファンドをプロ(適格機関投資家)や49人未満の一般投資家に販売することは私募として定義され、その私募ファンドの運用業務とともに適格機関投資家等特例業務として届出するだけでよい。
この第二種金融商品取引業者は、9月末で1,318社、適格機関投資家等特例業務の方は3,700社以上ある。ファンドの投資対象は、株や債券は勿論、不動産や馬・ワインなど何でも良いが、出資金の半数以上を有価証券に投資するものは投資型ファンド、それ以外は事業型ファンドとして区分している。

 この事業型ファンドの販売者(第二種金融商品取引業者)に対して、証券取引等監視委員会は、投資者保護の一層の徹底を図るため、
・出資金の分別管理の徹底
・事業型ファンド販売の契約締結前交付書面における分別管理に関する記載事項を拡充すること
を金融庁に10月19日に建議している。
 
同建議の背景になっているのは、ここ1年で35社に行ったファンドを販売する第二種金融商品取引業者への証券取引等監視委員会による検査結果から、約7割が法令違反の事実があり、そのうち6割の違反行為が重大なものだった。主な問題事例は以下の様なものだ。

●事業型ファンドに多数あったこととして、出資金の分別管理が確保されておらず、販売者が出資金を自らの借入金の返済に充当した事例、ファンドの運用も行うファンド販売業者に関し、出資金を自社の運転資金等に流用した事例及び多額の出資金の使途が不明となっていた事例等、顧客の出資金がファンドの運用以外の使途に費消されている。

●顧客に対する虚偽の説明・告知や誤解を生ぜしめる表示として、ファンド持分を保有していないにもかかわらず、これを保有しているように装って販売契約を締結して資金を集めた事例及び出資対象事業の運用実績の裏付けがないにもかかわらず自社のホームページに虚偽の利回りを表示した事例等があった。

●ファンド販売業者が、自社の名義で無登録の者に対してファンドの販売を行わせたり、無登録の者に販売をさせている。

●投資助言・代理業者が第二種金融商品取引業の登録を受ける前にファンドの販売を行ったり、業務範囲が限定されている適格機関投資家等特例業務届出者が、同特例業務の要件を満たさず、登録が必要となるファンドの販売や運用を行ったりした。

●未公開株式を、既存株主から高値で取得してファンドに組み入れ、譲渡代金の一部を、当該株主から自社に還流させる等、ファンドに不要な負担をさせることにより自社が利益を得ている。

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投資情報の伝え方
 今はどうか分からないが、証券マンとして新人教育の時には、悪い情報の時ほどお客様(投資家)に真っ先に伝えなければならないと教えられた。当たり前の事かもしれないが、お客様の不安感を解消するために、きちんと情報を伝えるということは業界の基本だ。お伝えする情報は、証券会社の営業支援部門が、調査部門からの情報分析を、顧客向け・営業部門向けに提供していたように思うが、最近は投信の供給元である運用会社から何か悪いイベントがあった際、一斉に情報提供されている。このことは、一度8月18日の本稿で取り上げたが、今月2度目になるブラジルの金融取引税の引き上げに関する事例も取り上げてみたい。

【19日朝のロイター記事のポイント】
・ブラジル当局はレアル上昇を阻止するため一段の強い措置に踏み切った。
・10月4日にレアル高抑制策として、国内の債券市場に投資する海外投資家に対する金融取引税を2%から4%に引き上げていたが、18日には6%に再び引き上げた。
・短期的な投機行動の抑制を狙い、海外投資家に対する通貨デリバティブ取引の税率を0.38%から6%に引き上げた。
・ブラジルの債券市場には高利回りを追求する資金が大量に流入しており、レアルは6月末以降、対米ドルで約8%上昇している。

【19日の投信運用各社の同件に関する情報提供ポイント】(カッコ内は筆者の受けた印象)
≪野村アセット≫
・ブラジルの財務省が22日のG20に出席しない。
・ブラジルの政策金利が10.75%まで引き上げられている。
・2008年からの、レアルの対米ドル・対円のグラフ(このグラフからのイメージだと、対円でのレアル上昇余地はありそうだ)
≪大和投信≫
・株式に係る為替取引については、従来どおり2%に据え置き。
・IOF税(外国人投資家による債券投資にかかるブラジル現地への為替送金時の金融取引税)引き上げの背景。
・ブラジルにおける2008年3月からの金融取引税制に関する経緯。
・来年の再利上げ観測など今後の見通し。
・野村の場合と同じく2008年からのレアルの対円相場グラフ。
≪日興アセット≫
・状況の説明は、ほぼロイター内容と同様。
・今後の予想については、引き続きブラジル投資は中長期的に魅力あるものの、通貨高制御の動きには注意を要する。
・通貨のグラフはレアルの対米ドルでの10月以降の推移。(2週間前の金融取引税引き上げ以降も、レアル高が続いていたのでという注釈はあるが、・・・)
≪大和住銀投信≫
・為替の反応について、0.5%のレアル安が対米ドルで進んでいる。
・今後の見通しでは、今回の税引き上げの影響は一時的にとどまり、基調としてのレアル高は変わらない。ただし追加措置が講じられる懸念もあり、レアル高のスピードは緩やかになる可能性。
・2009年以降のレアルの通貨推移と政策金利動向を合成した、対米ドルと対円其々のグラフ。

ちなみにこの件に関する一般投資家向け情報提供について、主な証券会社のホームページをざっと見てみたが、殆どなかった。SBI証券一社のみが“当社取扱商品に関するブラジル金融取引税について ”ということで、次の様な対応をしている。(FX専業者は調べていない)

・取り扱ったレアル建て債券がユーロ市場で発行された債券なので、海外投資家によるブラジル国内債券購入時の課税(金融取引税)の対象外となる事
・取り扱ったブラジル関連投信の運用会社のレポートを閲覧可能なようにホームページに添付。
・調査部によるコメントの公表
 ✓状況の説明と、オフショア市場の債券が対象外
 ✓今後、追加的な措置には注意を要すること
 ✓国内債券への税率上昇を受けて、オフショア市場に資金が流入しており、オフショア金利の低下が見込まれる

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今、証券業界が期待されていること
 公募増資や社債発行が高水準で、投信もそこそこに売れていて、外債販売も好調だ。確かに日本の株式市場は、世界の中では流動性相場から取り残されていて、出来高も少ないが、業として部分的には前向きに評価出来る動きもある。しかし、証券業界は何か重い閉塞感の様なものに覆われているようだ。業界自身の株価は、日経平均に比べても低迷にしていて、殆どの上場証券がPBR1倍を大きく割り込んでいる。
 そんな中で、日本証券業協会の諮問機関として“証券市場の新たな発展に向けた懇談会”が9月末から開催されており、証券会社等への信頼性の向上とともに市場の活性化の為に“証券仲介者”(証券仲介業ではなく市場の仲介機能を持つもの全体を指す)など3つの分科会で具体的検討がされる。この有識者による懇談会の初回で、市場活性化に関する部分につき、出された意見は下記の様になっている。(斜字部分は、議事概要より、そのまま抜粋)

≪投資家教育について≫
・信頼性の向上という観点について、売買取引の面では、投資家への利便性を提供するという意味でのインフラ面の改善が考えられる。また、リスク等に対する正しい知識の普及や金融経済教育などの金融リテラシーの向上を図る必要があると思う。
・投資家のリテラシーについて、投資家がリスクを理解した上で投資を行うよう、投資教育に穴を作らないようにすることが大事である。
・証券業界あるいは市場のための努力について、普及・啓発活動の成果や認知度と実際の効果の差異があるように見える。この懇談会で少しでもこれらの課題の解消が前進していければと思う。
・投資教育について、投資に社会的な価値があることを知らせていくことも重要であると思う

筆者雑感=今月4日は投資の日で、各地で投資教育に関するイベントもあり、日銀や協会を含めて投資教育は地道に行われている。ただし市場活性化の為に求められているのは、投資増加の即効性のある投資教育で、今後、数百万規模で増加が期待される日本版ISAや日本版401Kなど就労者の対象にした投資教育の充実の方は、投資の裾野拡大の効果はあるのではないだろうか。

≪証券会社・機能のあり方≫
・貯蓄から投資への視点で考えていく際に、仲介者の問題、コーポレート・ガバナンスの問題や市場の流動性の問題など幅広い視点で考えていく必要があると思う。
・日本の国内金融資産だけでなく、アジアの金融資産の取込みといった観点も必要ではないか。
・一般利用者を対象に考えるとのことだが、一体、誰の満足を得るために考えていくのかを、もっと具体的に対象を絞っていかないと議論が拡散してしまうのではないか。
・投資への流れを上手く作り出せなかったことの一つの原因として、これまでは、政治家、行政関係者や業界関係者などの株式投資を行えない同質の者のみで議論を行ってきたことにもその一因があるのではないか。

筆者雑感=証券会社の機能を検討していく時、その提供する金融商品やサービスを使えない人同士(証券会社の人間も含め)の議論だと、どうしても最初にルール有きの議論になってしまって、広く利用者を想定した検討は行い難いというのが現状だ。確かに、証券会社の人間は金商法で自らの投機的取引は行えないが、協会で証券会社役社員の投機的取引を具体的に定義しなおして、議論していく人間自体が、自ら投資家として証券市場を使いこなすというのが、有るべき姿ではないだろか。

≪市場その他の機能≫
・運用ビジネスが産業として自立していないという問題があるのではないか
・証券市場の活性化は、企業の活性化と健全なボラティリティが重要であると思う。マーケット自体の動きや企業業績をどうするかという観点での議論も行っていかないとバランスを欠くのではないか。証券市場はFacilitatorであり、投資家・投機家と企業とを結ぶ存在である。両者をバランスよく見ていく必要がある。

筆者雑感=率直な感想として、ここ2年間日本の資本市場インフラは世界トップレベルまで整ってきたと思う。完全ペーパレス、取引超高速化、ETFなど一般投資家向け商品の多様化、プロ向け市場。そしていま総合取引所構想が国家戦略として取り上げられている。問題なのは市場インフラ的なものより、そのインフラを使いこなす側にあるように思うので、議論は市場=証券仲介者に集中した方が良いのではないだろうか。

何れにせよ、過去検討されたこと、そしてこれから検討されることに優先順位をつけて実効性のある証券業界全体(大手や中小、リテールやホールセール、ブローカーやトレーダーの区別なく)での取組みが必要なのだろ。
株式取引高速化=日本の現状と米国の問題
取引所の高速化の流れは最早止まらないのだろうが、一般投資家の感覚からすると“少し分からない”という部分が残るのだろう。それは理論的にというよりは、少し感情的なものかも知れない。年初の東証arrowhead稼働により、確かに取引に関する注文執行は早くなった。しかし、ミリ秒単位という取引スピードは、人間には実感出来ないので、高速化対応のシステム及びプログラムに任せるしかない。所謂アルゴリズム取引だが、現在は一部機関投資家や海外ファンドなどしか使えないので、使えない側の投資家からは、高速化取引に対する疑問のようなものが残る。デジタル・ディバイドならぬ超高速取引ディバイドかもしれない。但し、取引の高速化が、市場の流動性向上の為に必要なことは知っている。

 先ず、日本の現状だが、超高速化対応システムの導入を機に、東証は取引ルールを下記の様に変更している。
・付合せ、約定タイミング:3秒に1回⇒即時約定で1秒間に数百回も可能
・呼値刻みの縮小:細分化(例えば、2000円超~3000円以下 5円⇒1円)
・値幅制限の見直し:価格帯により拡大、約15%~20%⇒約20%~25%
・特別気配の更新:気配の更新値幅は、原則として制限値幅の1/10
・連続約定気配の導入:直近値段から更新値幅の2倍を超えて買い上がる場合、その値段に連続約定気配を1分間表示し、板寄せによって付合せ
・合致要件の緩和:一部緩和。喰合いの場合でも直前の約定値段に近い値段で成立。ストップ配分時は最低単位以上の反対売買があれば約定成立
・同時呼値配分ルールの見直し:取引参加者ごとに合算後、1単位ずつ全数を配分

またその影響については、 “arrowheadの稼働後の状況”(東証:10月)によると、次のようなものだ。
○市場全体の注文(TICK数)が倍になっており、特にLargest Cap(Core30)やLarge Cap(Large70)の増加数が顕著
○約定率は低下傾向で、稼働前の40%以上が、現在(9月状況)では30%前後まで低下している。
○ビット・アスク・スプレッドが全体的に2~3割縮小しており、Small Capでも約16%(前年11月と本年8月の比較)縮小
○仲値から50ベーシス・ポイント以内にある注文が増加しており、価格インパクトが低減されている。
特にMid Cap(Mid400)では買い注文が3倍以上、売り注文が2倍以上となっている。(前年11月と本年8月の比較)
○注文の小口化が進んでおり、稼働前に比べて2~3割注文1つ当たりのサイズが低下している。

一方、超高速化取引が半数を占める米国では、5月の“フラッシュ・クラッシュ”の原因が特定されていないため、株式投信からの資金流出が続いているようだ。その為、フラッシュ・クラッシュ時に成立した売買の多くは取り消されたものの、個人の超高速化取引に関する不信感は、取り除かれていないようだ。10月1日にSECとCFTC(商品先物取引委員会)による共同報告書が公表されているが、原因の特定はなかった。但し、主な点につき次の様な報告がなされている。(日本証券経済研究所吉川氏“フラッシュ・クラッシュに関する共同報告書~謎は解けたか~より)
●ETFで著しい数の取引が発生していたことについて、特定のマーケット・メーカーの売買(売りA大手証券、買いB大手マーケット・メーカー)が25%以上あった。また、半数は個人相手の証券会社のもの。
●超高速取引(HFT=ハイ・フリークェンシー・トレーディンング)の大手業者が、フラッシュ・クラシュ時に取引を停止した影響について、全体的に価格操作に当たるような注文の偏りは無かった。また、今まで大量の注文を市場に出してきたHFT業者が、取引を停止したことで、注文数が少なくなり急落を招いたとする説を、証明するものは無かった。
●急落の契機は、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で取引されているEミニS&P500先物指数に、ある特定の機関投資家からの大口の売り注文が継続的に入り、この注文に買い向かった業者のヘッジ取引で、ETFやS&P構成銘柄へ売り注文が出され、それが他の銘柄へも波及したとされる。

 フラッシュ・クラッシュに関して超高速化の影響は認められていないようだが、取引の半数を占めているHFTについて、米国においても、一般投資家には良く理解されていないという状況のようだ。

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敢えて見直す必要はあるのでは?日本の信用取引制度
経済の成長とともに存在感が大きくなっている中国市場だが、信用取引は本年3月から試験的に始まっている。時々話題となる中国版新興企業向市場“創業ボード”(深圳市場)の様に華々しさはないが、資本主義でない国の資本市場において、現物株の実需以外に信用取引で仮需を生み出そうとする野心的試みともいえる。但し、現在までの信用取引に関する取り組みは、中国政府の慎重さから、取扱い証券会社数(中国本土証券会社6社)や対象銘柄数90銘柄(実際の取引は十数銘柄)の限定など試験的な試みの域を出ていない。

 一方、成熟した資本市場機能を持つ日本市場における信用取引は、アメリカのマージン取引(証拠金)をお手本に、仮需用を株式市場に導入する目的で1951年に導入された“制度信用”と、1998年から証券会社に対して認められた“一般信用”の、2制度が併在している。

 制度信用の方は貸借取引とも言われるが、投資家への信用供与に伴う買付代金の貸付けや空売りの為の株券を節約しようとして、証券会社が証券金融会社を通じて、お金や株券を売り手・買い手間で“貸借”する制度だ。この貸借取引の仕組みを簡単に説明すると次の様になる。
・A証券会社は顧客から受けたX株式の信用買いの資金を証券金融から借り、その担保にX株を証券金融に差し入れる。なおA証券は借りた資金の金利相当分を証券金融に支払う。
・B証券会社は顧客から受けたX株式の信用売りの株券を証券金融から借り、借り料を支払うが、X株式の売却代金はX株を借りた分の現金担保として証券金融に差し入れる。なお、担保に差し入れた現金の金利分についてB証券は証券金融から受け取ることが出来るが、X株式の借り料が高くなってしまった場合、“逆日歩”としてB証券は支払超になる。
・X株に関するこの制度での売り買いが同数なら、証券金融はB証券の売却代金をA証券の購入代金に、A証券のX株式をB証券に渡すだけで済み、資金や株券は全く必要ない。しかし、証券金融には、X株の貸し料と、売買代金に関するA証券から受け取る金利分とB証券へ支払う金利分の差額が残ることになる。
・X株に関する買いの仮需用は多い場合、証券金融はコール市場等で必要資金を調達する。反対にX株に関する売りの仮需用が多い場合、X株券を調達する必要がある。その株券調達先は、政策投資名目で株式を持ち合い長期保有していた金融機関が主なものだ。
・この制度における証券金融の役割は、信用取引の清算機関的なもので、取引所取引に大きく影響する為、取引所とともに金融商品取引法の認可業務になっている。取引所取引に付随する業務とみられる為、新ジャスダックの様に取引所の主体が変われば、証券金融が日本証券金融(東証及び旧ジャスダック取引分)から大阪証券金融(大証取引分)に、その制度信用の扱いが変わることもある。

 一方、一般信用の方は証券会社が資金や株式を調達することが出来れば、上記の制度信用における証券金融的役割を、自ら果たすことが出来るが、ここで最も問題になるのは、信用取引の売りに対する株式調達力だ。つまり証券会社が信用売り需要に対応する為には、誰かから株式を借りてくる目途がなければならない。通常は株式レンディング市場や証券金融から借りるが、最近ネット証券の一部では、貸し株サービスという名目で、自らの顧客が保有する株式を、信用取引の売り需要に備える先の一つとして確保しようとする動きがある。

 株式の貸し借りに関する最終的な需要調整は株式レンディング市場という店頭取引で行われるが、株式の出し手は金融機関や機関投資家、取り手はヘッジファンドや内外の証券会社で、この取引量は両信用取引の数倍に達している。つまり信用取引以外の仮需用で売りたいニーズに、株式レンディング市場は応えているということになるが、この取引は全くの業者間相対取引なので、問題は一般投資家がこの実態を知ることは出来ないことだ。
 
株式レンディング市場に関して、政策的には本年度中にその清算機関機能を日本において整備する目途を付けようとの動きもあるが、最近は恒常的か株不足感のある両信用取引制度に関して、株式レンディング市場のあり方とともに見直す時期に来ているのではないだろうか。
  

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ジャンル : ビジネス

試される市場
一時期、北海道庁の方々にお会いすると、渡された名刺にちょっとビックリするロゴが入っていたのを思い出した。名刺の左上の方に北海道のロゴ文字があり、その上に“試される大地”と入っていた。このロゴが名刺に入れられたのは1998年8月からだが、前年に北海道拓殖銀行が破綻しており、前回の日本の金融危機に巻き込まれて、北海道経済が非常に厳しい状況に直面していた時だった。その後、このロゴは、あちらこちらで見かけるようになったが、北海道便の飛行機や、バス・トラックの車体、観光みやげ品の包装紙、スポーツ用品や会社案内まで、北海道庁によると約3000件(北海道庁が使用届出を受けたもの)に達したようだ。このロゴは、経済環境の厳しい北海道の経済対策として、北海道が進むべき方向性を指し示すキャッチフレーズを、全国から公募したものだった。

 現在の日本の株式市場の置かれている状況を考えた時、標題の言葉を思いついたのだが、将に東京市場の現状は、内外の投資家から試される市場になっているのではないだろうか。本稿の目的は、相場解説や経済学的分析ではないので、資本市場の仕組みや機能面で考えてみると次の事が思いつく。

●一部の発行市場が好調さに比べ、流通市場機能が低調に感じるのは、日本の資本市場が制度疲労を起こしているのでないかという恐れ。

 本稿では最近時々触れているが、大型の公募増資が相次いて、このままのいくと昨年並みの5兆円を超えそうだ(ほぼバブル期の水準)。このこと自体は、資本市場のファイナンス機能としては好ましい。しかし、問題は中身だ。
・大量の発行の割には、資金使途の緊急性や必要性が一般に分かりにくい
・公募増資の発表前に、増資予定銘柄が個別に下落するケースがある(海外投資家からの指摘があるようだ)
・そもそもPBR1倍を割り込んでいるのに、何故公募するかという投資家の疑問(企業側の収益予想は当然黒字、赤字だと公募増資を証券会社が引き受けられない)
以上の問題に、公募増資する企業も、そしてそれを引き受ける証券会社サイドも、明確に答えていないという内外の投資家の思いが強まっていて、とても日本株に積極的になれない。そのようなコメントが、最近のマスコミで繰り返されるようになっている。

 同じ増資でも第三者割当増資に関しては、不公正ファイナンス防止の目的で、大規模(発行済み株式25%以上を増加)増資を、本年から実質的に規制(取引所、財務局)している。市場の機能の制度疲労というのは、増資する企業というよりは、公募増資の引き受け方に問題があるかも知れない。
 大型のファイナンスを引き受けられる証券会社(主幹事が出来るという意味)は、現在日系で5社、外資でも同程度しかないが、300社以上ある証券会社のほんの一部だ。つまり証券会社ならば株式の流通市場には参加するが、発行市場に対する問題は大手証券に任せていた。その発行市場の弊害が流通市場に及んだ時、その問題を証券会社全体の組織である協会で議論するのは、余り効果がないかも知れない。 公募増資株を販売しない証券にとっては、発行市場の問題は自分たちの領域ではないと考えるかも知れないが、日本の資本市場の将来を考えた時、多くの立場の参加者を巻き込んで、市場機能のあり方を考えていく場が必要だ。その意味で、金融審議会の再開が望まれる。総合取引所もアジアのコアマーケットも、資本市場の中核となる株式市場の機能修復を避けては実現しない。政治家の方々には、それが現在の市場のサインと考えて欲しい。

 “試される市場”だが、ちなみに本家の“試される大地、北海道”の方のキャッチフレーズの意味について、北海道庁は次のように定義している。
=「試される」は、「誰かが誰かを試す」という決してつらい意味での「試される」ではなく、「自ら問いかける」あるいは「世に問う」というプラス志向を示す言葉であるとともに、前向きな挑戦する気持ち「TRY」の意味が込められています。
 

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日本のヘッジファンド
 運用の専門家でないものがヘッジファンドを語るのは少し面映ゆいが、資本市場からみた視点として捉えてみたい。まず、日本におけるヘッジファンド(ヘッジファンド的運用をしている投信も含む)は、金融庁のファンド調査によると、昨年度、144本のファンドで2945億円が販売されており、本年3月末時点での運用残高はファンド数357本、運用財産額合計3兆3071億円となっている。この数字は国内のヘッジファンド運用者によるものだが、別の金融庁による投資家サイドに行った調査では、投資家が購入するヘッジファンドの半数強は海外籍となっているので、日本の投資家は前述の数字の倍以上の8兆円近くのヘッジファンドを保有している。世界のヘッジファンド数は、ヘッジファンド調査会社によると本年6月時点で約9000本、運用資産1.5兆ドルに達しているので、日本のヘッジファンド産業は世界全体の2%強ということになり、株式時価総額が7.7%(8月末時点)あることを思えば、まだまだ成長余力はありそうだ。また日本における販売状況は、2006年に行われた調査では、金融機関(48%)、信託銀行(10%)、保険会社(9%)、事業法人(6%)、個人(23%)、その他(4%)となっており、個人向け販売の割合が増加しているが、都市部の高額所得者や地方の事業オーナー会社などの富裕層が比較的纏まった金額で購入するようだ。

なお、一般の個人も買えるヘッジファンド的運用をしている公募投信もあるが、最近の日本の株式市況を横目に、日本株下落を運用方針とするものの運用成績は良いようで、4月末から8月末までの僅か4か月間で4割から7割の運用パフォーマンスを上げている。ただし、これらのファンドはレバレッジを2~3倍かけたもので、旧来の投信のイメージよりはデリバティブに近いヘッジファンドである。

 ところで、ヘッジファンドの名称の由来は、1949年に米国で立ち上げられたファンドにあると言われている。ファンド設立者 は、ロングとショートを適切に組み合わせれば、市場の下落局面において損失を回避でき、結果的にリターンを向上させることができるという仮説を立て、ロングを中心としつつもショートを積極的に活用した株式運用を行った。所謂、ヘッジファンドの代表的なロングショート戦略だが、何かをヘッジ(回避)しながら、レバレッジをかけて絶対収益を狙うわけだから、対象は通貨でも原油でも農産物でも、デリバティブなど取引のヘッジ手段があれば良い。つまり様々な運用形態があるのだが、金融庁は次の様なことをヘッジファンドとしている。
○オルタナティブ戦略を採用。
○レバレッジの利用。
○大きなリスク・エクスポージャー。
○実績報酬を徴収。

 なお、6月に実施された投資家側の本年度の金融商品への投資に対する意識調査(大和総研)では、金融機関はヘッジファンドや国内外のREITへの投資を減らし、不動産私募ファンドを選ぶ傾向を強めているが、年金基金のうち約4分の1は割安なのでヘッジファンド投資を増額するとしている。年金資産のヘッジファンド投資は年々増加しているが、2008年度末では資産全体の5.7%を占めており、またヘッジファンドへの期待は次の様になっている。
・分散投資効果(年金基金の8割)
・絶対収益の獲得(同、6割)
・市場リスクの制御(同、4割)
・低いリスクによる投資(同、2割)

 一般的にヘッジファンドの投資動向は市場の歪み・場合によっては政策の歪みを是正する方向で動くことが多いでの、通常の市場参加者や行政からの風当たりが強くなることがある。今回の金融危機に際しても、危機問題の本質とは関係ないところでヘッジファンド規制の動きがでたが、ヘッジファンドそのものを規制するのは何か為政者の“ついでに”という感がする。今夏に成立した米金融規制改革法案では、ボルカー・ルールとして、金融機関がヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドに出資することを原則禁止している。(実施するのは詳細を決定してからだが、例外的にファンドの出資金の3%以内かつ銀行のTeir1資本の3%以内なら許容される。)

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格付機関規制、実質的に始まる
 市場である限り、必ず情報の非対称性はある。しかし、市場での取引を拡大しようと思えば、その情報の非対称性を可能な限り埋めなければならない。つまり分かりにくい市場では新たに取引に参加しようという意欲が削がれるが、為替相場の様に分かり易ければ個人での取引も増加する。その分かり易さ=情報の非対称性を埋める機能を、格付けは持つ。それが、株式においてアナリストが提示する投資判断基準であっても、債券に対する格付けであっても、格付けというものに市場参加者が携わる局面は結構多い。まして市場の仲介機能を果たすブローカー(証券会社や金融機関)にとっては、金融商品販売上の重要なツールとなっている。また、最近は欧州のソブリンリスクが注目され、格付機関による国やその関連機関が発行する債券への格下げが、為替や株式市場にまで影響を及ぼしている。

 しかし格付機関とは一体何なのだろうか。このことは、今回の金融危機でもその主因となったCDO (Collateralized Debt Obligation=証券化商品のことで、特に今回の危機では、多くのCDSを集約化したシンセティックCDO)で問題になったが、2001年8月にエンロンが破綻し、格下げの遅さが指摘された時も、また問題になっていた。その問題を簡単に言い切ってしまえば、投資判断として定着している格付けを行うのは民間企業で、誰が監視している訳でもないが、グローバルに市場に影響力を持っていること。そして、信用リスクを分析して格付けをつけるアナリストたちのコストは、多くの場合、格付けされている方が支払っていること。つまり、格付機関というビジネスモデルが、今の金融・資本市場に合わなくなってきているが、既に投資基準として格付けが重要な役割を果たしており抜本的なモデルの組み直しが難しいので、各国で監視していきましょうということになる。

 その格付機関は、昨年度の金商法改正(本年4月施行)で“信用格付業者”として定義され、証券会社等ブローカーが一般的に広く販売する為には、実質的に、登録した信用格付業者の格付けを用いることになる。金商法の参入規制は、届出<登録<認可とその基準が厳しくなるが、登録には登録要件があり、定期的な報告徴収や立入検査・行政処分も行われる。その信用格付業者に、下記の5社が10月1日登録を行った。
•株式会社日本格付研究所
•ムーディーズ・ジャパン株式会社
•ムーディーズSFジャパン株式会社
•スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社
•株式会社格付投資情報センター
主要な格付機関のうち、フィッチは年内に日本法人の体制を整えて登録するようだ。

実質的に始まった日本の格付機関規制に対して、登録を行った信用格付業者としてどう対応しているかは、スタンダード&プアーズが10月1日に公表しているものが詳細で、かつ分かり易いので、その体制整備義務に応じている部分を、掻い摘んで紹介する。
○格付アクションの公表義務
格付方法など一連の格付に関する情報を公表する義務に対して、18項目に対してウェブサイトで公表していく。
○分析過程で利用した情報やデータの品質の確保
 格付の付与の為に用いられる情報に対して、発行者に追加的質問を求めることがある。
○資産証券商品における情報公開協力のお願い
 資産証券化商品の妥当性を評価する為に必要な情報やデータを公表することを、発行者に働きかける。またその働きかけた結果を自ら(S&P)が公表する。
○格付アナリストの配置転換
 同じ発行者の格付けを5年間担当した主格付担当アナリストは、その後2年間は同じ発行体の格付分析チームからは外れる。

 なお、格付機関規制が先行している米国では、この7月に成立した金融規制改革法で更なる格付機関規制強化が目論まれており、
・SEC内に格付機関を監督する信用格付局(Office of Credit Ratings)を新設し、認定された格付機関を検査
・認定された格付機関に対し、格付手法や過去の格付の記録等の開示を義務化
・SECに不適切な格付機関の登録抹消権限を付与
・投資家への責任の明確化(一部の損害賠償対象化へ)
などが挙げられているが、詳細は今後決定される。

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私論、株価対策について
日本の株式市場だけが一人負けしている状況に関して、業界の人間としては危機感を持たざるを得ない。最近は円高と日本株安が連動するような市況なので、いっそのこと円売り介入ではなく株買い介入を行った方が、コストも安く、株にも円にも相乗効果があるのではと、少し乱暴に思ってしまう。本当は政府による株価対策を期待したいが、こちらの方は行政や識者に頼るとして、最近の話題になったことから筆者が可能ではないかと思う処を述べてみたい。(あくまでも株価対策としての可能性であって、実施すべきかどうかではない。)

○ファイナンス規制
 不公正ファイナンス防止の為に、発行済株式総数の25%以上の大規模な第三者割当に関しては、取引所や金融庁(財務局での届出書対応)で実質的なファイナンス規制が6月以降強化されている。時価発行増資は、公募なので一見関係無いようにも思うが、大規模なファイナンスは希薄化を招くことでは同じだ。
 つまり安易なファイナンスによる希薄化を防止する為に、大規模(例えば希薄化率25%以上)なファイナンスに対し、独立委員会の承認や株主総会での決議などを義務付けるか、ファイナンス直後の株主還元策を義務付けて公表させるファイナンス規制を実施する。但し、この規制は、その企業のファイナンスそのものが市場全体に影響のありそう規模(例えば100億円)以上に限定しておく。
 またファイナンス規制は、それを引き受ける証券会社の引受業務の厳格化も含めるべきだろう。早口の日本語で市場の問題点を明確に指摘するモルガン・スタンレー証券のフェルドマン氏によると、欧米の投資家は日本市場に対して怒っているという。一つは調達目的の必要性がよくわからないファイナンス、もう一つがそのファイナンス銘柄がファイナンス公表の1ヵ月近く前から個別に売られる傾向にあること(10月4日ビジネス・サテライト)。つまりファイナンス銘柄に対する引き受ける判断や情報管理に対して、引受証券に対して投資家が怒っているということだ。

○譲渡益課税の軽減若しくは非課税措置
 今の譲渡益課税の軽減措置を続けても、株価対策としては余り意味がなくなっているように思う。勿論、投資全体の譲渡益課税が軽減されることは、業界として好ましいことだが、こと市場対策として限れば、外国株式や日本株に投資しない投信に税措置が取られても、市場対策としての効果はない。日本株及び半数以上の資産を日本株に投資する株式投信に限った方が、株価対策としては効果が期待できるのではないだろうか。ちなみに金融庁のファンド調査によると、152兆円ある投信の運用財産額のうち、日本株に投資するものは47.8兆円31%になっている。ただし投信の最近の販売状況をみると、日本株への投信からの資金流入は更に比率を下げそうだ。投信については、その資金量や販売窓口が多いだけに、日本株投資へ露骨に誘導する為の非課税措置を期待したい。

○公的資金による買い
 この原稿を書いている最中に日銀の追加緩和策が出され、その中に国債や社債以外にもETFやREITを含めた5兆円規模の“資産買入基金”の創設が打ち出されたが、公的資金による嘗てのPKOを言いたかった訳ではない。最近の相場の弱さは昨年の第4四半期に似ているように思う。その当時も日本株だけが特に弱かったが、その背景にはバブル期以来の5兆円規模の時価発行増資が日本の株式市場の需給関係を悪化させていた。本年も昨年と同規模のファイナンスが行われそうだと観測されているが、一般の投資家からみて増資目的(つまりリスクマネーを調達して成長資金に使うという本来の目的)が理解できない銀行や公的セクターの大量ファイナンスは、ファイナンス時点の時価総額が自己資本を下回っている場合、公的年金基金など公的資金を使っての第三者割当方式で調達するというルールを作る。このことを公的資金による買いと言いたい。

 以上3つのことは、今全く議論されていないが、各項目で上げた状況は、日本株の弱い理由として挙げられているので、業界において検討されることを期待したい。

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所謂、私募ファンドについて
 一口にファンドといっても投資信託から私募ファンドに海外ファンド・ヘッジファンドの類まであるが、実際は複数の人がお金を出し合って投資をするのがファンドと定義すると簡単だ。その運用資産の保有形態も、海外ならファンドと言い切ってしまえるが、国内だと信託受益権や匿名組合形式の契約など分かれていて、投資家からみて少し分かりにくいこともある。勿論一般の公募されている投資信託は信託受益権で、これは追加設定や解約若しくは売買することも可能だ。投信の売買というと少しピンとこないかも知れないが、上場している投信=ETFはこの信託受益権を売買する。一方組合形式の契約だとファンド毎にその内容が異なり、解約にも時間がかかり、また売買もほゞ行われない。
 標題に上げた私募ファンドに関してだが、その形態が信託受益権であろうが組合方式であろうが金融商品取引法上は集団投資スキームとして定義されている(金商法第二条第二項に定義される)。この集団投資スキームは、株式や投信・債券など一般の投資家に広く販売可能な金商法第二条第一項に定義される有価証券(普通の証券会社で取り扱うもの)とは異なるので、みなし有価証券と呼称されることもある。この集団投資スキーム(私募ファンド)の販売は、第二種金融商品取引業として登録が必要だが、必ずしも証券会社(第一種金融商品取引業)である必要はない。更にこの私募ファンドを適格機関投資家というプロにだけ販売するのは、適格機関投資家特例業務として届け出るだけいい。簡単に言ってしまえば、私募ファンドは第二種金融商品業者が販売するが、プロに販売を限定した場合は金融商品取引業者の様に登録要件で参入規制されないで届け出ることで済む。

 その私募ファンドの販売実態調査を、本年度から金融庁が、ファンドの販売業者及び運用業者4,250社(内プロ向けは2,662社)に対して実施、“ファンドモニタリング調査の集計結果”として9月末に公表されている。その調査結果は次のようなものだ。

【私募ファンドの販売状況】
平成21年度・・・販売額合計1兆2,244億円、ファンド延べ数2,285本(このうち1億円未満のファンド数が8割、10億円以上のファンドは219本)。私募ファンドの内容は、52%が不動産ファンド、競馬やワインなどの現物ファンドが7%、事業再生ファンドが4%、バイアウトファンドが4%、メザニンファンドが3%、ファンド・オブ・ファンズが2%、ベンチャーファンドが1%。
なお、販売額の61%がプロ向けの販売(適格機関投資家特例業務者)

【私募ファンドの運用状況】
 平成22年3月末で、運用財産額23兆5,713億円、ファンド数5,189本。10億円未満のファンドが約6割を占めるが、100億円以上のファンドも全体の10%ある。
[運用財産別の状況]
・全体の67%を占める不動産ファンド・・・平均レバレッジ2.9倍、損益率6.9%
・全体の5%を占めるファンド・オブ・ファンズ・・・平均レバレッジ1.0倍、損益率48.4%
・全体の4%を占めるベンチャーファンド・・・平均レバレッジ1.1倍、損益率▼14.7%
・全体の3%を占めるバイアウトファンド・・・平均レバレッジ1.0倍、損益率▼6.2%
・全体の3%を占めるメザニンファンド・・・平均レバレッジ1.0倍、損益率2.4%
・全体の2%を占める事業再生ファンド・・・平均レバレッジ1.0倍、損益率1.4%
・全体の1%を占める現物ファンド・・・平均レバレッジ1.0倍、損益率▼5.1%
 なお運用財産額の53%がプロ向けの運用分(適格機関投資家特例業務者)

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