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2011/03
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ETFへの期待と不安
ETF(Exchange Traded Funds=上場されている何らかの指数に基づいて運用される投資信託。同様の金融商品としてはETNがあるが、本稿で指摘する問題点は重なる部分がある)への期待は大きい。

3月24日に上場されたSPDR® S&P®500 ETF(1557:NYSEアーカ取引所及びシンガポール取引所との重複上場)で東証に上場しているETFは101銘柄になり、ここ1年間で15銘柄の増加となっている。1年間に増加したETFの内容は、海外株指数やコモディティ指数に連動したものが殆どだが、投資家にとっては株式だけではなく、債券・コモディティ・海外株と、投資の尺度となる指数さえ整備されていれば、投資することが出来るので、投資の利便性はETFによって向上している。同じように何らかの指数に連動した投資ということではCFD(Contract for Difference)取引があるが、CFDはレバレッジ投資の為に利用されるのに比べ、ETFは現物への転換も可能で、長期的な投資や小口分散投資に向いているとされている。

 この様に、取引所にとっても投資家にとっても期待の大きなETFではあるが、東証でのETF売買は、銘柄数の急増ほど拡大しているわけではなく、銘柄によっては殆ど取引されていない。つまり、極端に流動性のない銘柄もあり、投資家にとっては売買の際に不安を感じる可能性がある。ETFは上場投信とも呼ばれているが、同様の内容の投資信託があってその売買(投信の場合は、募集・解約)を比較するなら、買い(募集時)のコストは株式並みに安いものの、売り(解約時)は本当に売りたい時に売却可能なのか不安となる出来高の銘柄が多くある。つまり投信なら本来に気にしなくてよい流動性の問題がある。加えて、本当に対象とする指数に連動しているかという不安も投資家にはある。例えば、指数の方は上場しているのに、ETFの方が下落していていれば連動するという仕組みへの個人投資家の不信感は避けられない。実際、A(仮名)というETFは、先週指数が上場していたにも係らず、若干の下落をした結果、指数からみた理論価格(NAV)とETFの価格差は4%以上乖離していた。

 このETFの流動性と指数連動との乖離の2つ問題の解消策として、“裁定取引”の仕組みがある。つまり、もしETFの価格がNAVより割安に乖離してしまえば、機関投資家や金融機関などがETFを買って、対象とする指数の方を売却(先物や指数を構成する株式で)するという連動スキームだ。しかし、日本のETFについて言えば、この裁定取引は取引所から強制的に求められるマーケート・メーカーではなく、機関投資家の自発的行動に委ねられている。

☆裁定取引の活性化=流動性の確保+連動性の確保(理論価格との乖離の縮小)→ETF取引の活発化⇒市場全体の活性化

 投資家のETFに対する不安の解消は、証券会社や機関投資家などの裁定取引を、如何に廉価にかつリアルタイムで行わせるかと言う事に集約されると考える。その為、大証は、2010年10月より実行している“ETF流動性向上プログラム”でETFの売買代金の上位5社の証券会社に対して、売買代金に応じた報奨金を与える制度を創設している。

また個人投資家にとって、ETFに関するリアルタイムな理論価格などの情報格差を未だ大きい。その為、東証は次のような施策を行っている。
○3月28日より、全銘柄に関するウィークリーレポートの公表(レポート作成者株式会社マルコポーロXTF Japan)=投信としての基本的な情報の他、理論価格との乖離状況なども。
○4月11日より、日本株もののETF(対象34銘柄)について一口あたり推定純資産額(インディカティブNAV)のリアルタイム(15秒間隔)での算出・配信を行う予定。
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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

図説:注目材料
大震災後、2週間以上が経ち、現時点で証券会社が行っている震災への対応や、個人投資家が注目することを図説します。

前2回分のコメントを中心に、3月30日時点


証券会社の対応と個人投資家の注目

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大震災後、個人投資家が注目すること
大震災後の投資家の動向として、海外投資家の日本株大幅買い越し(東証25日発表:3月14日~18日9678億円で過去2番目の買い越し額)が伝えられているが、個人投資家は同期間1998億円の売り越しとなっている。震災後の復興需要に対する期待がある一方で、未だ予断を許さない福島原発の動向が市場心理を冷やしているが、その中で個人投資家は何に注目しているのだろうか。主な株式SNSと投信ブログから、その注目していることを取り上げてみたい。

【株式SNSより】
個別銘柄の株価予想を中心とした株式SNS“みんなの株式”では、売り予想(株価下落予想)が増えている。普段なら予想の9割が買い予想で、売り予想は1割程度しかないが、現時点(3月29日10時)では売り予想が3割強(28日18時では4割)に増加している。
予想のもっとも多い銘柄は、売り買いとも福島原発と計画停電で揺れる東京電力(9501)を予想したものだか(一ヵ月以内)、その内の59%が売り、41%が買いとなっている。売り材料は言うまでもないが、買い材料はチャート上の反発狙いやインフラ企業としての信頼感によるようだ。買い予想の2位は住金(5404)だが、こちらは震災で被害にあった高炉の再開や同社の火力発電による電力供給を材料にしている。以下買い予想の上位にあるものは、業績急回復・太陽光発電・建設の復興需要などを材料にしている。
一方売り予想の方は、上場廃止予想を材料にしたリンク・ワン(2403)が2位で、大震災で営業を停止しているアミューズメント・復興需要を先取りして買われすぎ銘柄・原発メーカーなどが上位売り予想に取り上げられている。
また、株価予想とは別に個人投資家が日記形式で自分の意見を公表しているが、アクセス数が多い方々が最近注目している材料は、次の様なことがある。
・米国株式市場の堅調さ
・3月期末の配当の増配・減配動向
・自己株式取得枠の公表
・為替や商品市場の動向

【投信ブログより】
 現在の投信ブログには、其々のブロガーの意見や情報を交換する為の“インデックス投資”というキーワードがある。また、そもそも投信による投資は、分散・長期・継続など投資手法を使う為に、株主の投資家とは投資スタンスが異なっているが、震災後2週間で投信全体の91%が運用マイナスとなって残高もその間3%減少していることが伝えられている。(日経)大震災以降、投信ブロガー達は次の様なテーマで情報を発信している。
・日本見直し(但し、日本株への投資は少数派に思われる。元々インデックス投資は、グローバルな株価や債券ごくたまに商品への投資が中心)=どちらかと言うと、投資よりは復興応援的なもの。
・リバランス=この局面では、日本株投信のロスカットのことを指すと思われるが、投信なのでじっと待つのではなく、損切ルールも意識されている。
・手数料下げ=このテーマは、投資コストを抑えるため、常にある。
・改めて分散投資の大切さ
・独立系投信の見直し=投信ブロガー達の独立系投信の運用スタンスに対する期待は大きいようだ。(※多少イメージや投資家への対応スタンスを評価している面が強いが・・)

個人投資家の動向が、市場の声の一部をなしていることも、改めて思い返される。

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大震災後の証券会社等の動向
大震災発生から2週間以上が経過しました。被災地の方々にとっては、1日1日がとても長く、大変な思いで生活されておられることと思いますが、心よりお見舞い申し上げます。また、一日も早く、生活が落ち着かれることを祈っております。

 大震災後、資本市場の仲介者である証券会社等の動きに関して、少し紹介しておきたい。

【復興支援ファンド】
野村証券が「震災復興関連ファンド」(仮称)を4月から販売と報じられている(3月26日)。その内容は、被災地域の自治体が発行する「復興債」や、震災で工場に被害を負った企業の社債などを中心に野村アセットが運用する投資信託。広く個人からの募集を可能とするために、販売最少単位を1万円とし、販売手数料を無料とするほか、野村側が受け取る信託報酬の半分程度を被災地などへの寄付金に充てると報道されている。

【政策提言】
20兆円を超えると予想される復興資金について、大和総研は下記の様ない政策提言を行っている。(3月18日)
○「東日本大震災復興基金(仮称)」(別紙概要図参照)を創設し、大震災からの復興事業という使途に限って被災地自治体、被災事業者及び被災個人への投融資を行うことを提言
○東西ドイツの統一の際に統一費用を連帯付加税で調達した例を参考に、国民全体が連帯した格好で負担する「復興連帯税(仮称)」を臨時に創設することを提案
~“未曾有の大震災からの復興へ「復興基金」と「復興連帯税」の創設を提言する”より

【平成23年3月期末の配当その他の権利落ちに対する特例措置の可能性】(3月25日東証・大証による注意喚起文)
東北地方太平洋沖地震の影響を踏まえ、法務省から、「会社法第296条第1項は、株式会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないものと規定していますが、会社法上、事業年度の終了後3か月以内に必ず定時株主総会を招集しなければならないものとされているわけではありません。東北地方太平洋沖地震の影響により、当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じている場合には、そのような状況が解消され、開催が可能となった時点で定時株主総会を開催することとすれば、上記規定に違反することにはならないと考えられます。」と示されております。
仮に3月期決算の上場会社が今期事業年度終了後3か月以内に定時株主総会を開催できないこととなり、配当金その他の権利の基準日を事業年度末日から変更することとなった場合、3月29日以降変更後の権利付最終日までの間において当該銘柄を売却した場合は、配当その他の権利が付与されないこととなります。
投資者の皆様におかれましては、上場会社の定時株主総会の開催日程等によっては、そうした事象が生じる可能性がありますので御留意いただきますようお願い申し上げます。

【大証:先物・オプションSPAN証拠金の大幅引上げ】
3月28日夕場取引より、大証SPAN証拠金が大幅に引き上げられる。(27→99万円※miniは10分1)これにより、評価損益は発生していなくとも追加保証金が発生する場合がある。その為、ネット証券各社は必要証拠金額を抑える為、SPAN証拠金に対する掛目を一斉に引き下げて100%としている。

【先物・オプション取引等の相場急変による一時的損失公表】
・カブドットコム証券=▲39億円(公表日3月18日)
・マネックス証券=▲13億円(公表日3月18日)
・松井証券=▲35円(公表日3月17日)

証券業界も今までにないような対応を迫られているところもあるが、市場仲介者としては、今こそ機敏に市場に対応して、個人投資家に良質の情報や提案を行うことが求められている。

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図説:ライツ・イシューの現状
昨日に引き続きライツ・イシューの現状を図説するが、その内容は下記。

ライツ・イシューの現状

また、次の様なことを補足しておきたい。
【企業が目標する資金を調達する為に】
ライツ=新株予約権を株主や投資家が権利行使しなければ、その分企業が予定していた調達額に達しない。その為、株主や投資家が権利放棄した分を一旦証券会社が買い取って、その分を売り出すコミットメント型ライツ・イシューがある。このことが主要な証券会社等で議論され、これを円滑に執り行う為、金商法の改正が予定されている。この事自体は、ライツ・イシューを促進する為に良い事だろうが、私見として、あまりコミットメント型ライツ・イシューに拘る必要もないと考える。その理由は、以下。
○権利行使を促進する為、行使勧誘を証券会社が行うインセンティブ=手数料を設けて、株主に権利行使を促すことも考えられる。
○100%行使することに拘らない方が良い。そもそも、市場に押し込もうとする金額に無理があると考え、不足なら時期を見てまたライツ・イシューを実行すればよい。今までの公募増資の様に、企業が決めた金額をキッチリ調達しなければならないというような既成概念を捨て、市場や投資家に合わせた柔軟なファイナンスと考える方が、ライツ・イシューの拡大に繋がるように思う。

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今、改めてライツ・イシュー推進への取組みを
大震災による企業の被害状況が確認され、復興にむけた取組みが今後活発化することを1市場関係者として祈っております。その為、資本市場は多くの上場企業に対して、リスクマネーを提供することが肝要だと考えますが、同時に既存株主に配慮したファイナンス手法の確立が一刻も早く求められています。上場企業が、大規模にリスクマネーを調達しやすい仕組みとして、ライツ・イシューの対応が早期に準備される必要があります。

 昨年12月24日に金融庁より公表された“金融資本市場及び金融産業の活性化等の為のアクションプラン”では、機動的な資金供給の促進する為の施策として「ライツ・オファリング(本稿ではライツ・イシュー)が円滑に行われるための開示制度等の整備」があげられているが、ライツ・イシューの現状について簡単にまとめてみたい。

【必要とされる現状】
●大規模(発行済株式総数の2割程度を超えるもの)な第三者割当増資や公募増資によって、当該銘柄が大きく下落。昨年夏以降、海外投資家からの批判も高まった。
●公募増資を行おうとした場合、引受ける証券会社の審査を受ける必要があるが、資金調達後の企業価値か増加すること(早期の増益や業容拡大)を示す必要がある。簡単に言うと、株価が上がる見込みのないものは証券会社が引受けられないということだが、この引受審査対応が2ヵ月以上かかる。
●大規模な第三者割当増資では、一部に引き受けるファンド側によるインサイダー取引等の違反行為や裁定行為もみられ企業価値をかえって損なう場合があったため、発行済みの25%以上を割り当てる場合の法制度上の対応が厳格になっている。

【ライツ・イシューの概要】(※事例説明を簡略化)
・例えば、時価総額100億円の企業が、ライツ・イシューで30億円調達したいケース
・1株を保有している株主に対し、0.3株分の新株を買うことが出来る新株予約権(ライツ)を割り当てる。
・この新株予約権は、東証に上場されるため、新株予約権を不要とする株主(つまり新株を買わない)は取引所でその新株予約権を売却することが出来る。
・新株を買う株主は払込日に新株の代金を払い込むが、株主でないもので新株を新たに買おうとするものは、取引所で売買されている新株予約権を買付け、払込日に払い込む。新株予約権が割当てられてから新株の払込日までは、現状では2ヵ月程度。

【現在の課題】
・企業が望んだ資金額がちゃんと調達できるか=つまり株主や投資家が払込日に新株へ資金を払い込んでくれるか⇒昨年実施されたライツ・イシュー第1号のタカラレーベン(8897)は新株予約権の行使率95.7%
・一旦新株予約権を株主に割り当てた後、払込日まで届出書提出や株主への目論見書発送など時間的制約があり、現状では2ヵ月程度時間がかかる。その間、市場の変動リスクにさらされるので、極力この期間を短縮すべきとの多数意見がある。
・投資家が口座をもつ証券会社の事務作業がライツ・イシューに慣れておらず、またオペレーションが確立していない為、取り扱わない証券会社が多数ある。昨年のタカラレーベンの案件では、ネット証券や大手証券の一部しか取り扱っていなかった。

【規制の緩和等】
○〈東証の新株予約権上場ルールの緩和:2009年12月〉ライツ=新株予約権を株主へ付与しやすくする為、それまでは新株予約権1つについて1株以上のものしかライツとして上場できなかったが、この規制を撤廃した。つまり1新株予約権に対して0.3株のように、企業が必要とする資金に合わせて株式付与割合を設定できるようになった。
○〈開示府令の改正による期間短縮:2010年4月施行〉株主割当増資として、新株予約権を割り当てる基準日の25日前まで有価証券届出書の提出が必要だったが、これを15日前に事前手続きが短縮されている。
○〈金融商品取引法改正予定による利便性の向上:2011年度中目途〉目論見書の交付を不要とすることがメインだが、その為の条件として有価証券届出書をEDINET(金融庁の開示システム)に掲載し、アドレスを新聞で告知することで代替できるようにする。これにより、目論見書の事務・コスト負担がなくなり、資金調達の期間も1─2週間程度短縮できる。その他には、株主が権利放棄した分の新株予約権を証券会社が買い取って売り出すコミットメン型ライツ・イシューへの対策や、米国株主への対応が整備される予定である。

【証券ビジネスとしての期待と課題】
○大型の公募増資は、大手証券か投資銀行のほぼ独占になっていたが、ライツ・イシューだとコミットメント型であっても引受リスクは限られるので、中堅証券以下の取扱い拡大が期待される。少なくとも、公募増資よりは、多くの証券会社がライツを取扱い、企業のファイナンス活動に参加することが出来る。
●ライツとしての新株予約権の売買に対応していなかったり、権利行使の実務が確立していない証券会社が未だ相当数あるように思うが、日本株を扱う証券会社であれば、早急にライツ・イシューの態勢整備を行うべきだろう。


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取引所と金融行政への期待
最初に感想から述べると、取引所はどんどん進化していくのに、直接の取引参加者である証券会社の方がその進化に追い付けず、結果として個人投資家までにそのメリットが届いていないように思うことも多い。もともと証券取引所は取引参加者(東証会員)と言われる証券会社が集まって出来たものだが、証券取引のグローバル化と投資対象の多様化で、取引所の機能がどんどん変化していくのに、その取引所の主要な構成要素である証券会社の変化が遅れているかも知れない。その証券会社の変化を促すためにも、東証等取引所機能の更なる進化と、金融行政による変化への支援を期待したい。

先ず取引所の方だが、東証は3月22日に新たな中期経営計画(2011年度~2013年度)を発表した。注目されている大証との経営統合問題に関するものは無かったが、重点テーマとして以下の6つのプランが示された。

【東証経営計画の重点戦略の柱として】
○リスクマネー供給機能の発揮としてのIPOの拡大〈プラン1〉
・IPO拡大に向けた環境の整備
・国内外の投資魅力ある企業の上場促進
・上場企業向けサービスの拡充
以上の戦略の目標として、2013年以降60社以上が継続的に新規上場することも目指す。

○ワンストップマーケットとしての機能発揮としてデリバティブ・ETF市場の拡大〈プラン2〉
・成長商品であるデリバティブ商品やETF等の流動性向上・利用者の裾野拡大
・上場商品の更なる多様化
以上の戦略の目標として、デリバティブ市場では2013年度の目標として取扱高が2010年度比で倍増すること、ETF市場では同目標として売買代金が株式売買代金比で5%へ拡大すること、それぞれを目指す。

【戦略実現の基盤として】
○本年4月に営業本部を創設し、各重点テーマ(上記の2つのプラン)に応じた営業活動を推進・強化する。〈プラン3〉

○変化に即した自主機能の発揮〈プラン4〉
多様化する取引スタイル・商品・企業特性等に即した適切な自主機能の発揮、市場参加者(証券会社)に対するコンプライアンス支援強化など。

○政策提言・情報発信の強化〈プラン5〉
・本年5月に調査グループを新設し、調査・セミナー・レポート・国際会議等を通じて提言を行う。
・対外情報発信の完全英語化、IR支援、SNS等の利用を通じた多様な情報発信

○清算決済ビジネスや情報サービス・取引システムの改善を通じて、マーケットインフラの拡大・機能強化〈プラン6〉

 一方、金融庁の方では1年半余り中断されていた金融審議会が開催されたが、次の3つのテーマが検討されることになっている。(3月8日開催分)

○ 我が国金融業の中長期的な在り方についての検討
我が国金融機関の国際競争力の強化、地域経済における金融機能の向上、更には両者があいまって我が国経済・金融業の一層の発展を図るための中長期的な課題等について検討。

○ 保険会社のグループ経営に関する規制の在り方等についての検討
保険会社による外国保険会社の買収等に係る子会社の業務範囲規制の見直しを含む保険会社のグループ経営の向上に資するような規制の在り方等について検討。

○ インサイダー取引規制における純粋持株会社の取扱い等についての検討
インサイダー取引規制に係る合併等の重要事実に係る軽微基準及び決算情報変更に係る重要事実について、上場会社等が純粋持株会社である場合には連結ベースの決算値を基準とするような特例を設けること等について検討。

今後の検討において、資本市場から震災復興に役立つような斬新な取組みへの議論も期待したい。

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今こそ、タイムリー・ディスクロージャーの徹底をお願いします
被災地の様子を報道する写真やビデオを目にするたびに、心が痛む思いですが、現地の方々のご健康と一日も早い復興への取組みが始まることを祈っております。また、被災された企業の方々に対しましても、心よりお悔みを申し上げます。

 東日本大震災の影響は、今後様々なかたちで企業活動に現れてくると思うが、金融庁は1995年の阪神大震災時の対応策をもとに上場企業のディスクロージャー(開示)に対して、被災して決算を作成できない場合の救済策を示したと伝えられている。その内容は次の様なものだ。
●有価証券報告書の提出期限(決算末より3ヵ月以内)の弾力運用
●損失額を確定できない場合は、分かる範囲でリスク情報の注記を加えるなどの対策

これを受けて、東証は、
・決算発表は内容が固まるまで延期できる。
・決められた期日までに有報を財務局へ提出しなくても上場廃止にしない。
・決算書をチェックする会計監査で「適正意見」が得られなくても上場廃止にしない。
という方針を固めたと報道されている。

ディスクロージャー=上場企業による情報開示は、もともと2通りあって、証券会社の担当者が上場希望企業などに説明する際、法定開示(金融商品取引法による開示義務=有報などの提出)と取引所開示(上場規則による適時開示=投資判断に影響のある発生事実や決定事項を速やかに開示する義務)とに分けてその内容を示すようにしている。そのディスクロージャーは、投資家にとっては企業価値や投資リスクを判断する上で、最も重要なもので、最近までその充実の為の取組みが強化されていたが、次の様な問題も明らかにになっていた。
●法定開示で充実された四半期開示や内部統制報告書作成において、新興企業などの財務スタッフが手薄な上場企業では、負担感が重くなっていた。
●上場企業のごくわずかの一部に、売上げや利益に関する虚偽記載があった。
○投資家からみた企業価値を分かりやすくする為、時価会計への取組みが行われていて、可能な範囲でIRFS(国際財務基準)へ会計基準を近づける作業が行われている。(最終的に上場企業に対して、IFRSを採用するかどうかは、2012年央に金融庁が決定予定)

以上は法定開示についてだが、取引所開示はタイムリー・ディスクロージャーと呼ばれる適時開示が中心になっており、今回の大震災の影響については、このタイムリー・ディスクロージャーが重要になっていると考える。震災後の14日、15日に、大震災での被害状況に関して、被災された上場企業の殆どが被害の内容について公表を行っている。これは、内部統制制度の導入により、現場の把握が徹底され影響もあると信じたい。

 今後重要になってくるディスクロージャーは、震災の業績や資本政策への影響の開示であるが、上場企業におかれてはこの部分のタイムリー・ディスクロージャーの徹底をお願いしたい。
 取引所開示における適時開示での業績予想に関しては、一部企業が業界環境の不透明さから公表していないが、震災前には、この様な状況を改善する議論も取引所ではあったように聞いている。せっかく海外投資家からは日本経済の自力再生を信頼する声が多く寄せられているのだから、上場企業が市場におけるタイムリー・ディスクロージャーの意義を十分に理解され、その為に努力されることも信じている。

タイムリー・ディスクロージャーを徹底される企業へのサポートは、取引所と証券会社の重要な仕事になっている。

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空売りポジション報告と日銀のリスク資産買入
 金融危機後の空売り規制において、発行済株式総数の原則0.25%以上の空売りポジションの保有者の報告義務を東証が公表(日次)している各報告書を集計したものです。作成に当たっては、可能な範囲での注意をしていますが、各報告書の提出の遅れや誤りがある可能性もあります。また、銘柄名が英文の箇所が多数ありますが、集計作業の簡略化の為、そのままであることをご了承ください。
市場の大幅な変動につきまして、空売りポジションの簡易集計表を当面公開します。

(当面、週間ベース)

日本銀行によるリスク資産買取りのオペレーション実績を示します。 (3月17日)

市場の大変動が及ぼす取引への影響
大震災の影響で市場が大きく変動することで、投資家が大きな損失を抱える事態が発生しているが、その為、取引を市場へ取り次ぐ証券会社の対応にも影響が出ている。18日10時時点で、その状況は次のようなものだ。(各社ホームページより)

【SBI証券】
同社グループが運営する株式取引のPTS(私設取引所)=ジャパンネクストPTS(運営:SBIジャパンネクスト証券株式会社)のナイトタイム・セッション(19:00~23:59、 24:30~26:00)が3月14日より当面の間、停止される。
また、3月16日より先物・オプション取引における必要委託証拠金の掛け目を次の様に4割増しに変更した。
・必要委託証拠金= 当社SPAN 証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN 証拠金)×140%(通常は100%)-ネット・オプション価値の総額

【楽天証券】
3月15日夕場取引より、先物・オプション取引における必要委託証拠金の掛け目を1.1から1.5へ増加させた。
・SPAN証拠金額×1.5(通常は1.1)-ネット・オプション価値総額+先物両建て証拠金(最低証拠金は0円)

【マネックス証券】
3月16日夕場取引より、先物・オプション取引における必要委託証拠金の掛け目を1.1から1.4へ増加させた。
・必要証拠金掛目=1.4(取引約款による上限1.4)、最低維持証拠金=1.0(取引約款による上限1.2)

【松井証券】
3月17日夕場取引より、先物・オプション口座における日経225先物取引、および日経225miniの建玉の上限を次の通り変更
・新規取引の停止(通常の上限は、225が100枚、225 miniが1000枚)
・ロスカット取引における制限=225が100枚、225 miniが1000枚(通常の上限は、500枚と5000枚)
※発表時点以前の注文は執行される。
また、3月17日同社は先物・オプション取引顧客につき、決済損に対する不足金が35億円発生したことも公表している。

【カブドットコム証券】
先物・オプション取引に関する変更はないが、店頭FX取引のスプレッドを通常の2倍程度に引き上げている。

なお、上記の大手ネット証券では、大震災の株式市場や外為市場での影響に関する投信の運用会社による緊急レポートを提供している。

また、大手証券での個人投資家に対する取引制限は現在のところ無いようだが、ネット取引主体のひまわり証券では、株式市場の大幅な変動の影響で顧客に多額の損失が発生し預り資産が大きく減少したため、3月17日の取締役で急遽、株価指数・オプションなど証券事業の廃止を決定した。その他のネット主体の証券会社でも、先物・オプション取引に対する取引制限を実施しているところがある。

普段はあまり認識されていない顧客との取引リスクだが、信用取引、先物・オプション取引、CFD取引などレバレッジ取引は、市場仲介者である証券会社が、投資家に信用を供与している場合もあり、其々の取引リスク管理と今回の影響が注目されている。

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試される市場
多分、戦後では最大の災害となる事象が起きていて、それもまだ状況が把握できなかったり、終息の行方が分からなかったり、多くの国民がそれぞれ不安を抱えて生活しています。そして多くの方々が、それぞれが不安の対策を考えながらも、何が出来て何をすべきか考えられている事は、復興への期待です。

 日本の金融・資本市場が試されている。国内にいて多くの情報に接していても、福島原発の推移や続く余震は不安に思うのだから、海外からみて、日本に同情しつつも不安感が高まるのは当然だろう。日本の市場は、海外の不安に対して、情報を整理して発信していくことが求められている。
例えば、17日早朝からの急激な円高の原因は、保険会社が震災への支払いに備えて海外資産を売却して国内に資金を戻すリパトリエーションを行うのではないかとの観測を材料に円買いが進んだ。この状況の中、情報ベンダーのロイターは、東京市場が本格的に開始される以前の午前8時18分には、6名の外為専門家からのコメントを公表している。

【FX取引】
 外為市場では、一時76円台前半の史上最高値(過去最高は、1995年4月79円75銭)を付けたことが伝えられ、その値は一部マスコミでは76円25銭と伝えられている。外為市場は、取引所とは異なりブローカーや金融機関間の相対取引が中心になるが、個人が参加する外為取引のFX取引は、実質的にはカバー先と言われる金融機関と個人投資家の店頭取引をFX業者が取り次ぐのが基本になる。(形式的には、金融機関とFX業者との相対取引⇒FX業者と個人投資家の相対取引(店頭取引))ここで、問題となるのは、リーブ・オーダーやストップロス・オダーなどの執行だが、金融機関によって最高値表示が異なるケースもあり、例えばもし76円台のオーダーが入っていれば、その執行も異なる。FX業者は、個人投資家へのしっかりとした説明や迅速な情報提供が求められている。
一方、取引所でのFX取引は、直接外為市場に参加する金融機関が、取引所での外為証拠金取引のマーケットメークを行い、外為市場の動きと連動させるが、17日の様な急激な動きにも連動するように、取引所はマーケットメーカーの行動をサポートしながらも監視していく必要がある。個人が取引の主体である取引所FX取引は、多くの個人投資家が外為市場での情報をベースに投資判断をすることを認識する必要がある。

【株式市場】
 取引所はもともと売り手と買い手の情報判断の非対称性があって成り立つが、それはあくまでも判断の非対称性であって、情報の非対称性は可能な限り無くする努力が求められる。つまり売り手と買い手が同じ情報を持つ必要があるので、ディスクロージャーの徹底が求められるのだが、現状のように震災被害や福島原発の状況に関する情報では、海外投資家への情報提供が限られるのだから、取引所はその配慮をすることが必要ではないだろうか。海外投資家の保有比率が多い銘柄では、英文による適時開示を要請するのもその方法だろし、重要な情報が開示されていないと思われる企業は、取引所の判断で、情報が確認されるまで取引を個別に停止することも必要かもしれない。一部の報道では、外資系金融機関が東証への市場閉鎖を打診したことが伝えられているが、流動性の確保も重要だが、投資家の為のディスクロージャーの徹底も重要だ。

【政府対策】
今、最も試されているのは政府による市場対策かもしれない。日銀による、外為市場での円売り介入が最も注目度が高いが、14日には日銀による市場からのリスク資産の購入が倍増されたことが公表され、また15日に、日本株指数連動ETFを159億円(累計1658億円)、J-REITは18億円(累計136億円)、実際に買付けたことも発表している。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

今、証券会社に出来ること
震災状況の把握や福島原発の事態の推移が注視される中、テレビやラジオで伝えられる個人の方々の“今、自分たちは何が出来るのか”との思いに胸が熱くなります。日本人の非常時の国民性は、海外からも評価されていますが、それが組織的な力になることを祈っています。

 混乱の続く市場の中で、資本市場の仲介者である証券会社が、今、何が出来るか、直近の状況を踏まえ敢えて考えてみたい。

【政策要望】
 政策は緊急対策に加えて復興対策があった方は良い。緊急対策としては次のものが既に公表されている。
・日銀14日公表=追加でのリスク資産購入5000億円(日本株指数ETF、J-REIT対象)、
・金融庁13日金融担当相談話=証券取引等監視委員会や証券取引所等の 関係者と連携して、売付けの際に株の手当てのない空売り規制(Naked Short Selling の禁止)等の厳正な執行を含め、相場操縦等の不正行為に係る監視を徹底し、違反行為には厳正に対処。
 金融庁の緊急対策の方は、証券会社のオペレーションも関与するので、その対応が求められているが、ファンドなどへの与信行為や貸し株業務の管理、個別投資家の売買チェックなどでの取引所への協力が必要だ。

復興対策としては、次の様な対策の考え方もある。
・金融危機後、J-REITへの資金供給の対策として官民ファンドや、政府資金により金融機関の保有する株式を取得する基金が設立されたが、今回の大震災対応として、同様の措置が取られるかどうか注視される。
・復興へのリスクマネー供給の為、個人資金の市場誘導を目的としたキャピタルゲイン課税の一時的免除措置などの税制措置が望まれる。
以上の復興措置は、政府への要望を早急に行う必要があるが、証券会社各社の緊急対策への対応や復興対策への考え方を纏めるため、日本証券業協会は即時に検討会を開催すべきと考える。

【ディスクロージャーの徹底要望】
 原発情報でも苛立ちを感じるように、震災の影響に関する適時・適確な情報は市場において最も重要なものだ。幸い上場企業は、内部統制やBCP(Business Continuity Plan)の徹底で、自社の情報を把握する仕組みが出来ている。東証で公表された上場企業の情報開示は、震災直前の100~200件が14日1031件、15日748件と通常の5倍以上の数値となっているが、その8割方以上が震災の影響に関する情報公開となっている。上場企業の幹事証券となっている証券会社は、普段以上に適時開示の徹底と震災の影響予想に関する情報の公開を求めるべきだろう。

【情報の整理と分析】
 ディスクローズされた企業の膨大な量の震災関係情報を整理し分析して、投資家に伝えるのは証券会社の仕事だ。個別企業のアナリストは当然だが、多少不明部分があっても仮説や分析を早急に伝えるべきだろう。またマクロの分析も、予想では注目する点や逐次入ってくる情報を整理しておく必要がある。直近の事例として、みずほ証券リサーチ&コンサルティングは、次の事を論点整理として示している。(15日時点)
〈震災の経済への影響〉
①工場の操業停止など生産活動への影響
②インフラの破損による物流の停滞
③企業・家計のマインドへの影響
④電力供給の停滞による経済活動への影響
〈震災の金融市場への影響で、市場が混乱から正常化した後〉
①海外経済の回復が続いていること
②政府・日銀の政策対応

【企業への働きかけ】
 ディスクロージャーの徹底以外に、緊急対応としての自社株取得を証券会社は企業に働きかけるべきだろう。15日は、久光製薬など3社が自社株取得枠の新たな設定を公表したが、この動きが拡がることを期待したい。また、手元資金を不安視する企業がいれば、2月にヤマト・ホールディングスが実施したリキャップCBの発行を提案していくべきだ。

【投資家との会話の徹底】
 営業現場で投資家とのコミュニケーションを深めるのは当然だろうが、その為にも投資関連情報を整理して伝えることが重要だ。また、情報をスピーディーに伝えて行く為には、証券会社ではまだ試行的にしか行われていないツイッターなどの利用が有効かもしれない。

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東日本大震災に対する情報対応について
 状況が不透明では、投資家のリスク回避心理は高まるのは当然で、それが個別企業でも、被災地の状況でも、原子力発電所の事態の推移でも、そして行政の対策であっても、大きな下落は避けられない。一つ一つの状況が明らかになり、早期に投資家心理が平常に戻ることを願いたい。
 先ず14日に決定された日銀による追加資産購入5兆円について触れたいが、昨年10月の追加的緩和策と同規模の市場対策が取られることとなった。内容は、新たな取得枠として、日本株指数連動ETFが4500億円、J-REITが500億円、2012年6月末まで取得(前回分は、本年12月を目途に取得予定)を行うとしている。合わせると、市場からのリスク資産の1兆円の買付けになる。金額が充分かどうかは現状では判断できないが、早急な市場対策は評価される。

 次に、状況が正直分からない中で、投信運用会社が昨日(14日)に公表した東日本大震災の株式市場への影響は、概ね、目先の下落は避けられないものの、中期的には世界的な景気回復基調の中で、回復を予想するものだった。各社の今後の予想ポイントは次の様なものだ。

〈野村アセット〉
・円の急騰がなければ、日本株のバリュエーションは割安水準にあることと、企業の資金余剰が歴史的水準にあることなどが、市場を下支え。
〈大和投信〉
・BPS(1株当たり純資産)の減少という形等で、株価水準を引き下げる要因。フロー面でも、経済活動の停滞により全体的には当面の収益見通しが下方修正されると見込まれるため、株価のマイナス要因。
・海外での企業活動も継続されるため、震災の影響のみで株価下落が中長期的に続く可能性は低い。
〈日興アセット〉
・景気に下押し圧力だが、中長期的に復興需要が見込まれることや世界景気の回復基調がサポートする材料。
〈ゴールドマン・アセット〉
・直接的な人的被害や建物・インフラの破壊に加え、経済活動の停滞の評価が難しく、原子力発電所の動向など不透明要素も残っているため、日本の株式市場は被害の全容が見えるまで、短期的な下落リスク。一旦こうした影響を織り込んだ後に、株式市場は落ち着きを取り戻す可能性。

 一方、市場の動きと関連情報を個人投資家向けにネット上で提供している情報ベンダーにおいては、震災関連の情報(アナリストやファンド・マネージャーの予想)は多いものの、取り纏めや市場予想に関する特別な情報提供では目立ったものはない。

 また個人投資家が株価予想を通じて交流しあう代表的な株式SNSである“みんなの株式”では、通常は24時間以内に出される予想の9割以上が個別銘柄の買いだが、さすがに15日午後時点では3割が売り予想になっている。大震災に続き、原発事故の拡大で株式市場が暴落している現状で、株価予想の意味があるかどうか分からないが、会員(約24万人)の公開する日記では、個人投資家が何を考えているかリアルタイムで表示される。その直近の内容をみれば、基本的には未曽有の市場環境に驚きながらも、買える銘柄とその理由を探そうとしている姿勢が多い。
日本の個人投資家は、まだメルトダウンしていない。

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【緊急対策】今、日本の資本市場が出来る事
先ず、未曽有の被害を東北・関東地方にもたらした東日本大震災の被災者の方々に、深く哀悼の意を表します。一刻も早い救援と、復興への取組みが始まることを願っています。
また、この様な状況の中、市場の取引開始を決断された東証の判断に敬意を表します。

ただ個人的には、各企業の被害状況がある程度確認できるまで、個別銘柄の取引を停止しても良かったのではないかと思う点もある。取引開示を決断した東証の斉藤社長は、次の様なコメントを公表している。
「株式等の取引が国境を越えて頻繁におこなわれている現状も踏まえれば日本株のマザーマーケットとして多くの投資家の需給を反映した適正な株価の形成が早期に可能となるようできる限り売買の機会を提供することが我々に求められる責務である」(日経QUICKニュースより)
 一方、この後、日本の資本市場がどうあるべきか、一つは上場企業の復興活動をどう支えるか、もう一つはリスクマネーを供給している投資家に対してどの様に対応すべきか、という視線から考えてみた。

【市場対策】
公的な資金による買付けは、市場規律を歪めるという批判もあるが、危機的な状況と判断された時は、過去何度か市場での買付けが実施されてきた。また、金融危機の際には、各国による個別銘柄への空売り規制が強化・実施されている。
・昨年10月に公表された日銀による追加的緩和策の一環で、上場ETF4500億円、上場REIT500億円の市場からの買取り枠が公表され、昨年12月から始まった実際の買付けは、2月まで上場ETF429億円、上場REIT46億円となっている。本年12月まで予定される買付枠の残高は、まだ相当に余裕があるが、この買付枠の大幅な拡大を望みたい。
・次に官民ファンドの創設で、今回の大震災での影響が大きいと思われる企業(例えば震災の被害や影響が売上高の2割超)を個別に指定し、一定以上の財務基盤があることを前提に、復興銘柄として買い上げる。これにより、対象企業が株価急落により資金繰りに支障をきたすことを防ぐ措置があればよい。
・上記で指定する復興銘柄に対して、信用取引を含め個別銘柄の空売りを一時的に禁止する措置が加われば、投資家心理の安定までに必要な時間は確保できると考える。
なお、これらの市場対策は、当然に一時的・限定的対応であるべきだろう。

【企業対策】
上記の市場対策を有効にするため、上場企業のディスクロージャーは徹底されなければならない。特に、復興銘柄となる上場企業の、取引所ルールによる適時開示の徹底は重要だ。大震災による被害の状況・その影響は、初期段階ではその把握さえ難しいかもしれないが、適時状況の変化を投資家が知ることが重要になる。その為に、企業側の適時開示体制をサポートする取引所側の配慮も必要になるだろう。取引所開示システムは、一時的に原則24時間対応可能とし、企業・投資家の24時間対応や英文開示対応に備えることも求められる。
少し落ち着いた段階になると、復興企業側の再建の為のリスクマネー需要が高まることが予想されるが、その為に格付け基準に拘らない株主割当のCB発行(CB版ライツ・イシュー)制度を整備していくことは、証券会社に出来る数少ない直接の復興支援になるだろう。

【投資家対策】
 日本の個人投資家が、復興支援の為に復興企業にリスクマネーを供給する政治的判断が求められるかも知れない。例えば、復興銘柄への投資に関する本年度取得分に対する譲渡益を課税対象から免ずる措置などが考えられる。ここは、政治家の知恵の出し方に期待したいが、日本国民の資金が、企業の復興支援のリスクマネーとなるのが理想的であることを、政府も行政も認識しているだろう。

以上は、資本市場の仲介者として証券会社で何が出来るがということと表裏一体のことと思うが、個々の市場仲介者として行うことというより、業界全体での政治的要望や提言が必要ではないだろうか。
市場が傍観者であってはならない。

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投資家にとって、取引所の統合で何が変わるか
 企業が他社と経営統合する場合は、業界内での厳しい競争環境を勝ち抜く為に、経営基盤を強化する目的で行うのが一般的だが、本日報道された東証と大証の経営統合は投資家に何をもたらすのだろうか。既に、ロンドン証券所とナスダック、ニューユーク証券取引所(NYSEユーロネクスト)等とドイツ証券取引所、それにシンガポール取引所とオーストラリア証券取引所など国を超えた統合への動きが伝えられているが、両取引所の統合の影響で投資の何が具体的に変わっていくのだろうか。

この1年余りで東証も大証も、高速化対応を中心に取引システムの能力を大幅に向上させている。また、ETF上場促進を通じて、投資のグローバル化や多様化にもある程度対応してきた。しかし、世界的取引所統合への動き進む中で、この対応スピードが遅いとの危機感が当事者間にあったのかも知れない。
現在の取引所の機能は、取引の場の提供と、公正な取引を行う為に取引ルールなどを定めそれを監視する自主規制機能に分けられるが、今の取引所間競争の主な部分は、“取引の場の提供”の高速化対応が中心になっている。これは、ファンドの増加によって国境を越えグローバルに投資を行う機関投資家が増加していることと、これ等の投資家が取引を効果的に行う為にアルゴリズム取引を利用していることによる。東証の取引の6割が、海外投資家からの注文と言われているが、アルゴリズム取引には受注状況と注文発注・取消しの高速化対応が必要になるので、取引所は海外投資家の取引を獲得するために、取引システムの更なる高速化を目指す傾向が強まる。また、その高速化の為に、取引手法やルールそのものも変更されていく。

一方、グローバル化は投資家だけではなく、取引対象にも及ぶが、海外企業の上場誘導(TOKYO AIM)や海外で上場されているETFやETNなのどの東証上場の促進、アジアの諸国や金融機関などが発行する債券取引の国内誘導など、既に関係者によるアプローチは始まっている。

この様に取引所のグローバル化対応は既に始まっているが、東証と大証の経営統合によりシステム強化への財務基盤が強まり、くわえて海外取引所との資本提携が進めやすくなれば、この対応スピードを更に早める可能性が強い。この変化に投資家はついていく事ができるだろうか。

よく考えてみると、取引所がいくら機能を強化したとしても、1部の投資家を除いて(実質的に取引所システムに直接アクセスできるコロケーション・サービスを使ったダイレクト・マーケティング・アクセス)、投資家は取引所で直接取引出来ない。つまり、市場仲介者として取引所取引に直接参加する証券会社が、取引所の取引システムの進化に合わせた売買システムを提供しなければ、投資家はその向上した機能は利用できない。

 結局、取引所の統合が目指しているものの投資家への影響を考えた時、取引所に直接取引参加している証券会社が、市場仲介者としてどの様なサービスを提供していくかが問題になる。つまり、取引所の進化のスピード合わせて、証券会社もグローバル化や投資対象の多様化で進化していくという当たり前の結論になるが、その為、300社余りある証券会社の証券サービスの専門化や経営統合まで視野に入れた合従連衡が進むことが予想される。投資家にとっては、多分良い事だろう。

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信用取引とCFDによる個別株取引をやさしく比較してみる
個人の日本株取引の6割は信用取引だが、一昔前までは信用取引というとリスクが高く一般的には少し怖い(リスクが高い)という印象だった。確かに、最大で3.3倍まで投資資金のレバレッジが掛けられるので、損失も大きくなる可能性があるが、ネット取引により自己責任原則が徹底されたことで、デイトレードやロスカットを厭わない新しい投資家層も出現して、信用取引のイメージが変わりつつある。また、CFD(差金決済取引)の利用が個人でも始まっているが、個別の日本株も取引対象とし始めているので、個別株のレバレッジ取引は選択肢が出来た。この信用取引とCFDについて、個別株の取引手法として、投資家目線から比較してみたい。

【日本株の取引対象】
 先ず信用取引の取引対象となる銘柄数は、制度信用では2月時点で669銘柄あるが、この分に関しては、証券金融会社から規制されない限り、基本的には売りも買いも可能である。一般信用と呼ばれものは、取引所が指定する貸借銘柄(1637銘柄)の中からそれぞれの証券会社が選択して取引することが可能だが、証券会社は投資家が買う為に資金を貸すか、売るために株を貸すかしなければならないので、通常は買いだけ対応する銘柄数が多く、売りが可能なものは制限されている。この一般信用は、制度信用の取引期限6ヵ月に対して、無期限とすることも可能で、大手証券A社の取扱銘柄数は現在846銘柄ということだ。
 一方、CFDでの個別株取引については、大手ネット証券では主力となる信用取引との類似性もあって、まだ取扱いを始めていないが(株価指数や商品指数には対応)、大手証券A社では271銘柄を取引対象としているし、CFD取引で先行する外資系金融機関では、約800銘柄の日本株を取引対象としているところもある。

【売買手法】
 個別株を売買することは同じだが、その取引様式は若干異なる。信用取引は、現物株と同様の注文方法で、取引所に売買注文が取り次がれるが、CFDの方は投資家と注文を受ける証券会社等との相対取引(店頭取引)になり、実際のネットでの取引画面はFX取引と同じ様に売値と買値が提示され、どちらかを選択すれば約定が成立する。また、信用取引の売買最少単位は、当然現物取引と同様に各銘柄毎に定められた単元株数だが、CFDの方は1株(例え単元数が100株であっても)での取引きが可能である。(ただし、証券会社によって取引単位は異なる場合もある)

【保証金若しくは証拠金とレバレッジ】
 信用取引は、最低30万円の現金か相当額の流動性のある有価証券(掛目は市場価格の80%以下)が保証金として必要で、取引のレバレッジは最大3.3倍まで可能である。つまり、30万円の保証金で100万円の取引が可能だが、これに対してCFDの個別株取引は、20万円の証拠金で100万円の取引が出来るので、レバレッジは最大5倍までとなる。

【強制ロスカット】
 どちらの取引も証券会社が投資家に信用を供与していつので、投資家の損益管理は証券会社にとって重要だ。その為、強制的に終了するロスカット・ルールがあるが、代表的なものは次の様なものだ。
・B社信用取引=30万円の保証金で100万円の取引を行った場合、損失が5万円になると追加で5万円以上の保証金が投資家に請求され(保証金率25%以下でマージンコール)、更に損失部分が10万円(保証金率20%未満で強制ロスカット)、に達すると強制的に反対売買される。
・C社CFD取引=20万円の証拠金で100万円の取引を行った場合、日中の損失が5万円(証拠金維持率75%)に達すると、強制的に反対売買される。また、日を超えてポジションを保有する場合、含み損失を除いた証拠金額を20万円以上にすることが投資家に求められる。
(実際、どの程度其々のルールが厳格に運用されているか筆者は分からないが、CFD取引では、ロスカット・ルールの厳格運用が、日本証券業協会より求められている。)

 一概に信用取引とCFD取引のどちらが個人投資家にとって優位なのか言えないが、最近信用取引での規制緩和の動きがあるは、CFD取引での投資家の利便性に対抗する為とも考えられる。

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個人投資家は、今、何に注目するか
野村證券が毎月実施している個人投資家サーベイの3月公表分(2月中旬に調査実施)によると、今後3ヵ月程度で市場に影響を与える要因として最も関心の高かったのは国際情勢で、前月比6.6%アップの38.2%となっていた。現時点でも、リビヤ情勢などが最も関心の高いことだろうが、この北アフリカ・中東情勢の緊迫が、原油価格の高騰をもたらしていて、今後原油価格の上昇が回復基調の世界経済に与える悪影響も懸念され始めている。一方では、安全資産としての再び金が史上最高値を付けており、原油・金以外にも個別の食料品や金属価格など商品価格に対する個人投資家の注目度も上昇している。

この商品価格の上昇が、新興国でのインフレ懸念の主因となり、一部の国からはこの主犯探しのように米国のQE2(Quantitative Easing 2=量的緩和第二弾)等を批判する声も聞かれ始めているが、現在の日米の株式市場が金融当局による量的緩和に支えられていることも投資家にとっては周知のことだ。その市場環境に関する連環関係は次の様なものだ。

【QE2の好影響】
○QE2⇒過剰流動性⇒株高⇒景気先行きに関するセンチメントの改善⇒実際の景気回復へ
【QE2の現在までの悪影響】
●QE2⇒過剰流動性⇒原油・食料品高⇒インフレ懸念⇒新興国の利上げ⇒新興国の株が軟調へ
※特に中東・北アフリカの政情不安の背景には、穀物価格高があると言われている
【商品価格上昇に対する今後の懸念】
●商品価格上昇⇒インフレ⇒先進国の利上げ⇒先進国の景気悪化懸念
●中東・北アフリカでの政情不安の連鎖懸念⇒世界経済に対するセンチメントの悪化と新興国の減速⇒先進国の景気悪化懸念
以上の連環関係は、により次のような図に纏められている。
≪米国のQE2の影響フローチャート:三井住友銀行FOREX WEEKLY3月4日号より同行山下氏作成≫ いずれも、商品価格上昇がその問題の中心にあるが、日銀はその背景に関してのレポートを3月に公表している。(最近の国際商品市況上昇の背景=世界的に緩和した金融環境とコモティディの金融商品化の影響)その概要は次の様なものだ。

・商品市況の大幅上昇は2008年にもあったが、昨年央よりエネルギー・非鉄金属・農作物が上昇しており、特に農作物の上場幅が大きいのが今回の特徴。
・価格上昇の背景として、中国を始めとする新興国のコモディティの需要拡大がある。特に銅や鉄鋼石の世界需要の4割を中国が占めている。また農作物の価格上昇は、世界的な天候不順の影響もあった。
・しかし、商品市況の上昇は需要以上で、投資対象となっている。年金資産などが分散投資としてオルタナティブ投資対象としたり、ファンドを通じた短期投資資金の流入もある。これは2003~2004年にかけてコモディティ・インデックスやETFなどの商品先物市場のインフラ整備が進んだ影響が大きい。
・インデックス投資家は、一般的にはロングポジションに偏重しがちだが、取次業者であるCTAのモーメンタム戦略(トレンドに乗じる)も加わり、価格上昇を増幅させている。
・見解としては、商品市況の上昇は金融緩和が大きく影響しており、実際の需要増のファンダメンタル要因に加え、投機的要因がその動きを増幅しているとしている。

 なお、商品先物市場のインフラ整備の影響は、個人投資家レベルでもCFDやETFの利用で、商品先物投資が可能になってきている。
ETF利用による投資対象の拡大について

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MBOでの株主とアドバイザーの問題
 今年に入って上場企業のTOB(公開買付)は13件(3月4日現在)公表されているが、そのうち半数以上の7件は、企業の経営陣が実質的に株式を取得し、上場廃止を目指すMBO(management buy-out)である。最近のMBOは、一般的には直前時価に対して大きなプレミアムが付いたTOBを実行することが多く、また少数株主を排除していくスクイーズ・アウトが行われていくので、市場や株主のMBOに対する関心は高い。

【増加の背景】
大きな要因は企業が割安に放置されていることだが、内部統制報告者や四半期開示などの上場企業側のディスクロージャーに関する負担が増加していることも指摘されている。また、経営者からみると、上場廃止によって、思い切った事業の再構築を計り、再び企業価値向上を目指す行動がとり易いとされている。一方、金融危機後の回復で経営陣が金融機関等からMBO資金が調達しやすくなっている。

【MBOの主なプロセス】
①TOBを公表し、経営陣は議決権総数の3分の2以上の株式取得を目指す。(定款変更を可能とする為)
②TOB成立後、株主総会を開催し、普通株を全部所得条項付株式に替える定款変更を行う。この全部所得条項は、大部分を保有する経営陣には議決権のある株式を割り当て、その他の残っている少数株主には企業が現金を支払うなどして株式を株主から所得することが可能な株式を割り当てることが出来る。
③企業側が現金TOBに応募しなかった株主を排除して行く為、全部取得条項を行使し少数株主から株式を取得するが、その結果として経営陣の100%子会社となる。
④その結果、上場は廃止される。

【株主の対応】
TOBに応じるか、TOBに応じなければ全部所得条項株としていずれ現金で企業に取得される。この時の価格はTOB価格が参考にされるのが一般的だ。但し、少数株主の権利として、株主総会決議が必要な事項や企業の形態が大きく変わる場合、企業へ保有する株式の買い取りを請求する権利があって、この買取価格が不満な場合、裁判所に価格決定の申し立てをすることが出来る。初期のMBO案件では、TOB価格などを不満とする一部株主がこの権利を利用したケースがある。

【株主としての問題】
MBO対象企業であっても上場廃止するまでは、株式が売買可能で新たな株主となることが出来る。その様な新たな株主が少数株主権を利用する目的に関しては、法制度上の議論もある。また、最近ではTOB公表後に信用取引で3分の1以上株数を取得したケースがあり、株主総会での議決権行使の動向が注目された。

【MBOのポイントとアドバイザー】
最も市場の関心を引くのはTOBの買付価格だが、買い付ける経営陣はその価格算定の根拠を公表すると共に、買付の対象となる企業側も買付価格やMBOそのものに対して意見表明する必要がある。この企業側の表明は、通常買い付ける経営陣を除いて検討され、第三者機関の設置や外部の意見や算定書を判断の根拠にするケースが多い。アドバイザー業務の目的は、MBOプロセスを滞りなく進める手助けをすることだが、その間の関係者間での下記の様な利益相反や、株主・投資家の反応をどの様に調整していくか、その力量が問われている。

・経営陣と既存株主の間のTOB価格を巡る利益相反(正当な株価に対する検証)
・TOB価格公表後に新たに株主になるものへの対策(市場・株主対策)
・株主総会決議や100%完全子会社化での、少数株主の買取請求権行使への対策(少数株主対策)
・MBOプロセス全体における正当性の確保=経営陣・企業・少数株主それぞれに対して(プロセスの法的正当性)

以上のように案件としては相当複雑な利益相反関係が生じることもあって、アドバイザーはそれぞれの専門性が問われ、かつアドバイザーとしての利益相反にも注意を払わなければならない為、最近のMBOを始めとするM&A案件は、複数のアドバイザーが参加するケースが普通になり、かつ其々の専門性がより高いレベルで求められている。

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戦前の清算取引について
 昨年の個人の日本株取引は、売買代金ベースで東証3市場全体の23.3%で前年(2009年)に3割近くあったものが再び低下したが、その6割が信用取引になる。最近、信用取引に関する規制緩和案が検討され始めたが、楽天証券が1月下旬に実施した信用取引に関する個人投資家向けアンケート調査では、規制緩和により同一の保証金で1日に複数回の売買が可能となれば、信用取引利用者の7割が取引を増やすと回答している。また、同調査では、信用取引と代替手段として先物取引やCFDを上げる投資家もいたが、戦前の株式取引の9割以上を占めていた清算取引は、この先物や差金取引としてのCFDに近い部分もある。その清算取引の概要は、次の様なものだった。

 先ず日本における株式取引所は1878年に、東京と大阪に設立されたが(現在の東証と大証の前身)、取引所での取引は、実物取引と差金決済である清算取引に分かれていた。実際の取引所における取引参加者は仲買人と呼ばれ、業法により行政の認可を必要とし、また各取引所の定員数が定められていた。取引所外の取引においては、現物株式の店頭取引を行う現物商がいたが、清算取引については取引所集中義務があり、この仲買人を通じてしか行うことが出来なかった。仲買人の機能は、顧客からの委託注文の取り次ぎを行うブローキング業務と、自己で売買するディーリング業務に分かれる。

 江戸時代の米先物取引をモデルにしていると言われる清算取引は、レバレッジを掛けた取引なので証拠金を必要とするが、仲買人は投資家の清算取引を取引所に取り次ぐ場合、委託証拠金として売買代金の10%程度を受け取り、取引所へは売買証拠金として5%の資金を差し入れていた。取引所における売買手法は、売買注文を板に全て記載する板寄せと、売り手買い手が継続的に変化する価格で取引を仮約定していくザラバとの折衷方式による単一値段競争売買方式がとられていた。取引の期間については、最長3ヵ月3限制とするのが基本的な取引モデルで、各月末を決済日とするので3つの価格が毎日つくことになる。

この取引の決済については、次の3つの方法が取られていた。
①仲買人は、期限内に反対売買を行い、プラスの場合は取引所から利益を受け取り、マイナスの場合は取引所へ相当額を差し入れる。
②仲買人は、買いの場合、その買付代金総額相当の現金を、売りの場合、現物の株式を取引所に差し渡す。
③期日の同額の反対売買と新たに取引を行うことで、期日を実質的に繰り延べる。
なお、1924年からは短期清算取引制度も導入され、期限は業法により7日以内とされていたが、決済の基本的な方法は、上記①~③までの方法を1日単位で行う方法に近い。
3つの決済方法のうち、実際の現金や株券が必要な②の方法を取らなければ、実需に関係なく売買を行うことが出来たが、言い換えれば清算取引は取引の仮需用の創出には役立つ仕組みだった反面、投機性の強かったことも否定できない。

 上記の清算取引は、形式的には差金取引なのでCFDやFX取引に似ているが、大きく異なるのは、取引の与信行為に係るリスク管理の徹底、レバレッジ規制、ロスカットルールの徹底に加えて、取引対象の情報の非対称性が、取引参加者間で可能な限り小さくなっていることなどが挙げられる。

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個人投資家にとっての情報ベンダー
情報ベンダーは普段個人投資家にとってあまり意識されない。しかし、少し前までは取引所が個人投資家までは直接市場の情報を伝えてはくれなかったので、金融情報ベンダーに直接若しくは間接的に頼っていた。その代表的な企業として、QUIUKとモーニングスターを取り上げたいが、金融情報ベンダーが個人の投資に果たす役割についても考えてみたい。

 先ず、株式投資家なら誰でも知っているQUICKだが、一昔前の証券会社の店頭には同社製の株価ボードや端末があって懐かしく思い出される業界の方も多いだろうか、その事業の沿革は次の様なものだ。
・1971年:日本経済新聞社を中心に証券、銀行、日立製作所など33社の出資で設立。
・1974年:オンラインリアルタイム証券情報システムのサービス開始
・1984年:金融指標の一覧表示システムのサービス開始
・1986年:総合金融情報システムのサービス開始
・1997年:機関投資家と証券会社を結び、発注・約定業務を支援するービス開始
・1997年:インターネット時代に先駆け、オンライントレード向けサービスなどを開始。資産運用支援サービスを展開。
・2000年:機関投資家の運用ガイドラインチェックやSTPなど定型業務を支援するシステムが本格稼働
・2004年:中国株営業をサポートする「中国情報Web」サービス開始
・2006年:個人向け資産運用コンサルティング営業のトータルソリューションサービス開始
・2007年:マーケット分析とポートフォリオ運用のための資産運用ソリューションサービス開始
・2009年:債券為替トレーディングやデリバティブ・仕組債投資にフォーカスしたサービスをリリース
同社の主要な顧客は証券会社や銀行だが、以上の様な変遷から彼らの顧客である投資家が何を求めていたかが分かる。また金融情報ベンダーとして、金融機関や機関投資家向け情報やその加工が主力ではあるが、個人投資家向けにも金融商品やマーケットニュースなどの情報を提供する資産運用応援サイト「QUICK Money Life」を運営している。そのコンセプトは「個人投資家と運用会社・販売会社を結ぶ」であり、証券会社や銀行、事業会社に提供してきた証券金融情報の中から、個人向けに内容を整理・簡易にして提供している。

 一方、モーニングスターは投信評価から始まった情報ベンダーだが、同社も個人投資家向け投資情報サイトを運営しており、個人投資家が目的に合わせて投信を選択しやすいようファンド中心に投資関連情報を提供している。その直近の収益構造は次の様なものだ。(単体:本年度第3四半期決算説明資料より)
・ファンドの評価やデータなどによる売上げ・・・28%
・株式新聞などの購読(ウェブ版を含む)による売上げ・・・24%
・株式関連のデータ分析やアナリストレポートなどの情報配信による売上げ・・・22%
・投信の運用会社などからのウェブ広告による売上げ・・・10%
・資産運用セミナーなど運用コンサルティング関係による売上げ・・・8%
・その他、新聞広告や確定拠出年金関連・IR説明会などにより売上げ・・・8%
なお、今後の事業展開としては次の様な戦略が示されている。
○個人向け有料サービスのトータルソリューション=本年5月にウェブやスマートフォーンなどで提供開始
○金融機関向けデータ提供サービスの拡充=証券(現在の顧客数16社)や銀行(同19社)、運用会社
○確定拠出年金サービスの更なる推進=現在企業型約360万人、個人型11.8万人の大幅な増加を見込んで
○投資助言サービスの拡大=ファンドオブファンズや投信ラップ口座への助言の拡大や、日本版401Kや日本版ISAへの投資助言需要増加を期待

ICTの発達や個人のウェブ利用拡大によって、金融情報ベンダーの提供するコンテンツを、個人投資家が直接利用できる範囲も広がっており、ネット上に溢れる膨大な投資関連情報を、個人投資家のニーズに沿って整理して提供する機能が期待されている。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

証券会社は投資家のニーズをどう考えるのか
証券会社にとって最も重要な事は、“投資ニーズ”を捉えると言うことだが、リテール証券にとっては個人投資家の投資ニーズをどう引き出し、そして投資行動まで決断させる為にどう支援するか、証券営業の現場では常に悩んでいる。一般の企業なら、顧客とのコミュニケーションは普通のことだが、膨大な投資関連情報と複雑な金融商品を扱う証券会社の営業現場にとって、誰に、何を、何処まで説明するか、法規制や社内ルールに沿って行うと、つい一方的な情報の提供になることもある。投資家からすると、投信の説明を1時間以上聞いても、その説明に不満が残るようなケースが時として指摘されるのは、投資家の真のニーズを踏まえた会話が成り立っていない為とも思われる。

 そのような業界の悩みは、現在日本証券業協会で行われている「証券市場の新たな発展に向けた懇談会」の商品・サービス分科会での議事概要からもうかがい知れる。一応、昨年11月に実施された証券投資についてのアンケート結果を受けて、投資家との接点のあり方について議論されているようだが、主な意見の内容をかいつまんで見ると次の様なものだ。(標題は、筆者の仕分け)
【個人投資家とのコミュニケーションについて】
・相当丁寧に説明しているにもかかわらず、投資家から不満がでることところが問題
・投資の初心者には銀行が前に立って対応すべき
・誰に何を説明していくか、重要であるが、その為に証券や銀行は様々なメッセージを発信していくことが大切
・説明する現場に、リスク説明におけるリスクの実感が無いのではないか
【投資への導入として確定拠出年金(DC)の役割】
・まだDCの制度が固まっていなく、ビジネス規模(制度加入者380万人)としても小さい
・DCを活用して一般の方々の投資に関する意識を向上させるべき
・現状ではコスト高で余り利用も勧誘もされていない個人型DCをもっと活用すべき
【投資教育・社員教育について】
・自己責任原則や説明内容を理解してもらう為の投資教育は必要
・営業現場への販売教育も必要
【その他】
・約2000社で200万人が対象とされる持株会や財形貯蓄も投資家との接点として見直すべき

 以上の議事概要を見て率直に思ったが、証券業界は未だ投資家とのコミュニケーションに組織的に慣れていないように思う。何故だろうか。その大きな原因は、証券会社の社員自らが投資家としての経験が余りないことにあると思う。つまり金融商品や金融サービスを投資家として自ら使ったことが無い、若しくは使えないから、投資家目線に立ったメリット・デメリット(主にリスク)の説明がされず、情報提供が一方的になりがちになる。
確かに証券会社の社員は、法規則で投機的な有価証券の売買が禁止されているが、何か投機的かというのは社内ルールで定めれば良い。又、地場受けの禁止から、自社にない金融商品や金融サービスを他社で受けることも現在は事実上出来ないが、これも利用可能な様に社内ルール整備すれば良い。他の業界では優れた販売者は、最も良い利用者でもあろうとするのが普通である。自ら投資家となってこそ、分かる事も多い。

 その為には、証券や金融機関の販売者が、市場規律を守りながらも投資家としての行動がとり易いガイドラインと監視が必要だが、証券業協会や銀行業協会でのガイドライン作りの議論を行うことと、J-IRISS(Japan-Insider Registration & Identification Support System)を活用して、証券や金融機関の役社員の全金融商品取引を記録する監視システムの強化も提案したい。

テーマ : 証券・金融関連業務
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