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2011/04
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自己株取得に係る時限措置についても考える
前回は、金融危機後2年半に渡り9度延長されている空売り規制について触れたが、自社株取得に関する緩和措置も同様に延長されている。今回はこの事に関して、現状におけるその意義や問題等を考えてみたい。
先ず、自社株取得の緩和措置は次のようなものだ。

(1)1日の買付数量の上限について、直近4週間の1日当たり平均売買高の25%とする規制を、停止して100%取得しても良い事とする。
(2)上場企業自体の買付が終値に影響するのを避ける為、買付時間に関する制限として、取引終了時刻の直前30分は禁止していたが、これを適用しない。

つまり、上場企業の自社株式買付け行為が、日々の市場価格に余り大きな影響を与えない為の措置だったが、自社株取得が解禁された時の議論としては、企業は自らの重要事実を握っているのだから、相場操縦的行為の疑義に繋がるような行為は極力排除する必要があり、その為、買付行為には一定の制約を設けるべきとされていた。金融危機後、この措置が停止されているには、上場企業による自社株取得を促すことが、買付行為そのものが市場に影響を与えることを押えることより優先しているからに他ならない。では、実際の自社株取得状況(金額ベース)は、どうなっているのだろうか。
(東証:自己株式の取得及び処理状況3月末発表ベースより)
2007年 541社 4兆4942億円
2008年 800社 4兆8376億円
2009年 401社   8376億円
2010年 367社   9120億円
残念ながら、社数も金額ベースも金融危機以前の水準には遠く及ばない。

上場企業による自社株取得は、配当とともに株主への利益還元策として定着してきたと思うが、大企業の高水準の内部留保が伝えられる中、PBR(Price Bookvalue Ratio;株価純資産倍率)が1倍を大きく割り込んでいて、キャシュ・リッチな企業は、もっと市場からの自社株取得を積極化させるべきだろう。その為に、元々の市場買付規制そのものを見直す必要があるのではないだろうか。

一方、自社株の市場買付規制の背景にあったものは、企業そのものが自社の株価に大きな影響を及ぼす重要事実を常に抱えている可能性があるということだ。その為、企業が自社株取得を行う場合は、重要事実を公表してからという手順になるが、証券会社や金融機関の様な厳格なチャイニーズ・ウォールを企業に求めることは難しいので、通常は、買付を行う企業は、信託銀行や証券会社にある一定期間の買付を行う契約をし、もし社内で重要事実が発生した場合、その買付契約も停止する。上場会社であれば、重要事実の情報管理の厳格さが求められるが、これは自社株買付け時だけに限るものではない。

結局、企業も市場においては1買付者であって、他の市場参加者と同様に不正行為(相場操縦やインサイダー取引)は取り締まる対象となる。自社株買付けのみならず、M&Aや他社へのTOBなど、企業の行為や関係する役社員の情報管理など、資本市場のルールの遵守は、株主への最低限の責任とも言える。

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空売り規制に係る時限措置の継続について、今一度考える
2008年の金融危機の際、緊急の市場対応策として導入された空売り規制・自己株式取得に係る時限措置について、今一度その意味を考えてみたい。

 この措置は、簡単に言えば空売りしてはいけないと言う措置ではない。空売りするならば、ちゃんと株式を借りて、従来のルール(売り下がらないというアップティック・ルール)を守って売り、一定規模以上を空売りした場合は、証券会社を通じて取引所に報告し、取引所はこれを公表するという緊急対応の措置だった。金融危機対応の緊急措置としては、欧州の一部では銀行株などの空売りを一時的に禁止したところもあったが、空売りして良いのだ。このルールは2008年10月末から施行され、当初5ヵ月間だったが、その後3ヵ月毎に延長されている。今回の延長は9度目だが、大震災対応ということもあり、6ヵ月間10月末まで延長される。今の時期は別にして、この間日本の株式市場は緊急の時限措置を必要するような異常な状況だったのだろうか。もし、そうでなければ、日本市場の空売り規制そのものか、日本市場での空売りの仕方のどちらかが問題があったと言わざるを得ない。

【旧来の空売り規制そのものの問題】
日本の証券取引法(現:金融商品取引法)は、大恐慌後に規制された米国の証券取引ルールをベースにしていることが知られているが、この空売りにおけるアップティック・ルール(直近で約定した価格よりも低い価格で空売りすることを禁じる規制)も同じ出自である。しかし、本家の米国では、「市場の流動性を低下させる」、「相場操縦を抑制する効果が見られない」などの調査結果を基に2007年7月に廃止されている。空売り規制のこの部分は、東証や一部の外国証券が不満とする流動性上の問題となる箇所でもある。

【空売りの仕方の問題】
時限措置として新たに加わったルールに、売付けの際に株の手当てがなされていない空売り(Naked Short Selling)の禁止というのがあるが、ヘッジファンドなどとの取引に通じていないとこの内容は余りイメージ出来ないかもしれない。Naked Short Sellingとは、株式を売却する時点ではその株はなく、決済日までの間に株式を借りてくるか、若し株式が借りなければフェイルといって、金利相当分のペナルティーを支払って決済そのもの延長する。ファンドなど証券会社、証券会社同士の相互の信頼関係のもとに成り立つ仕組みだが、一部証券会社はファンドなどが空売りする際、株式の調達を前提に売却注文を受けることがある(ブライムブローカーレッジ・サービス)ので、問題を複雑にしている様に思う。株式の出し手は、日本株長期保有の機関投資家などだが、個人が利用できる貸借取引とは異なった貸株市場があり、その規模は貸借取引の3~5倍程度とも言われているが、空売りの問題は、ちゃんと株式を借りて売ればよく、借りられなければ空売りしないという個人投資家にも理解できる仕組みの方が良い。金融危機を契機のこのNaked Short Sellingが禁止されたが、このルールは市場の正常化後も継続すべきと考える。その事が、空売りでは貸借取引(信用取引)しか利用できない個人投資家を守ることになる。ただし、このルールと事項の空売りポジション報告はリンクしている。

【報告の仕方及び公表の仕方の問題】
 元々、証券会社は空売りであるか否かの別の明示(取引所に対して)・確認する義務を負うが、金融危機後、一定規模(発行済株式総数の原則0.25%)以上の空売りポジションの保有者に対する、証券会社を通じた取引所への報告の義務付け及び、取引所による当該情報の公表を命じている。この措置の目的は、空売りしている証券会社やファンドでの嫌がらせではなく、日本株の流動性に大きく影響する貸株市場を利用した空売りの実態情報を、ある程度まで市場全体で共有する仕組みとして有効だと考える。現状の貸株市場での株式の貸し借りは、主に海外市場での相対取引が中心で、その状況は個人投資家レベルでは把握できない。個人投資家を含めた市場参加者の仮需要に関す情報の非対称性を解消する為にも、この報告・公表措置の恒久化を求めたい。(但し、現状では取引日と報告日にバラつきがあったり、公表が保有者ごとで銘柄毎になっていないので、個人投資家はこの情報を利用しにくい。また、0.25%と言う数字が良いかどうかは、少し業界の議論も必要だと思われる。)

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ディスクロージャーに関する現状の問題=先ず投資家にとって重要なこと
ディスクロージャー(上場企業による情報開示)の問題は、その目的に関しては誰しも異論がないが、どの情報を何処までという事に関しては、其々の立場で異なることがある。勿論、ディスクロージャーを行うのは企業側なのだから、コストを負ってまで行うディスクロージャーの効果については、厳格に考えたくなるのは理解できる。しかし、永年上場企業のディスクロージャーに関して相談を受けていた者として、はっきり言えば、企業の内容が悪化し始めると、大体ディスロージャーに関する取組みも劣化する。
以下、ディスクロージャーに関する問題の現状について、以下のように投資家目線で纏めてみた。

【業績予想について】
最低限これだけは、ちゃんとお願いしたい。大震災の影響や電力問題で、確かに3.11以前とは事業計画の大幅な変更を余儀なくされている企業は多いだろう。しかし、決算発表時に間に合わなくとも、企業は常に事業計画を追い続けるはずだし、利益計画は随時修正しながら事業を営んでいるはずなのだから、企業が今期の業績予想を行うのは当然のことだ。問題は、それを株主や投資家に向けて公表することだ。
株主や投資家にとって、最も興味があることは、その企業の将来価値であり、その判断に業績予想は欠かせない。アナリストや四季報の記者が予想するのも、確かに業績予想だろうが、アナリストがカバーする銘柄数は多く見積もって5~600銘柄と全上場銘柄の2割にも満たないし、四季報は予想数字の根拠まで教えてくれない。上場企業が、自らの業績予想を公表することは市場に対する最低減の義務なのだが、市況の変動などを理由に、業績予想を公表しない証券関連業務の上場会社があること自体が残念だ。
 
なお、年間の業績予想は通常前期の決算発表時(取引所の開示制度である決算短信)に行われるが、今回の様に大震災の影響が時期的に確定しなかったり、主要な取引先と交渉中などの場合は、その後の適時開示でも次善の対応となる。ちなみに昨年度の新日鉄は、前期決算発表時には需要家との間で主原料価格の大幅上昇等を踏まえた鋼材の価格改定につき交渉中であること、また今年度以降の主原料価格、値決め方法等につき各サプライヤーと交渉中であること等から、前期決算発表時に業績予想を公表していなかったが、その後の第一四半期の決算発表時に、改めて市況環境を説明した上で、当事業年度の業績予想を公表している。

【事業戦略に関して】
業績予想と同じく将来の企業価値を推し量る為に重要なのが企業の事業戦略だが、会社説明会などで経営者が中期経営計画を語るのが一般的だろう。勿論、社内で使われる中期経営計画と株主・投資家向けの資料が異なっても構わないが、経営者が何を目指していて、それがどこまで実行されているか一般の株主や投資家が知るためIR(インベスター・リレーションズ)として、各上場企業が取り組む必要があると考える。

繰り返しになるが、株主や投資家にとって最も重要なことは企業の将来価値であり、その判断が投資行動に繋がるのだから、上記の2つは投資家にとって最も重要なディスクロージャー要素となっている。
しかし、業績予想は取引所の適時開示ルールの中で、罰則のない開示項目だし、事業戦略は企業の自発的なIR活動に頼らざるを得ない。一般の投資家にとって、企業の将来価値を専門家であるアナリストが分析してくれるのは好ましいいことだが、アナリスト・カバーは相当にコストがかかる話で、現状2割未満のものを10割近くまでもっていくのは不可能だ。それより、取引所ルールなどで企業からの情報提供を促す方が、投資家にとっての実効性のあるディスクロージャーとして現実味がある。

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証券仲介業の現状
☆証券仲介業の現状について~改訂版~

証券仲介業(金融商品仲介業)については、販売チャネルの拡大や異業種との協働など業界からの期待感は強かったが、制度が始まってまもなく7年が経過しようとしている。現状は、この3月末で621業者(個人172人を含む)と、平成22年度は127業者増加しているが、証券仲介業への証券会社の取組みについては各社で相当な温度差があるようだ。

そのことと証券仲介業の今後の発展性について考えてみたいが、先ずは証券仲介業の概要を簡単に確認しておくと次の様なものだ。

①証券仲介業は、証券会社の専属代理店ではない。つまり、証券仲介業者は複数の証券会社の代理店(金融商品の販売を仲介すること)となることが出来る。
-複数の証券会社の代理店となっているケースは、証券仲介業者全体の43%(269業者)

②しかし、投資家の口座は仲介する先の証券会社に開設するので、複数の証券会社の投資家口座を管理する必要がある場合は、証券仲介業者自らが行う必要がある。
-複数の仲介を行う業者側の実態は、金融商品によって証券会社を使い分けているケースが多い。

③また、金融商品を販売(法的には仲介)した際の販売責任は証券仲介業者(金融商品を販売する為の外務員資格が必要)が負うが、その管理責任は金融商品を卸す証券会社側にある。つまり卸元の証券会社が証券仲介業者のコンプライアンス管理を行うことになる。なお、金融機関が証券仲介業者となる場合は、証券会社側のコンプライアンス管理は必要ない。
-複数の証券会社の代理店となっているケースは、主たる証券会社がコンプライアンス管理を行う。

つまり、制度的には証券仲介業は独立性の強い販売者だが、実務的には金融商品や金融サービスを提供する証券会社側の負担(バック・ミドルオフィスのコスト)が重いものになっている。この為、大手証券で証券仲介業に取り組んでいるのは、実質的には日興と三菱UFJの2社のみで、三菱UFJの方は基本的には自社専属の証券仲介業契約を求めているようだ。なお、複数の大手証券を仲介するような証券仲介業者はいない。大手証券の販売チャネル拡大としては、IFA(Independent Financial Advisor)と呼ばれる社内の歩合制外務員を拡大していくことが主な戦略になっているし、銀行系の証券会社に関しては、銀行などとの相互代理店方式による証券仲介業がチャネル拡大戦略の中心になっている。

 次にネット証券の取組みだが、証券仲介業が対面営業を前提にしていることから、SBIや楽天の様に旧来のネット証券ビジネスモデルから対面ビジネスへの拡大を前提にしていなければ取り組む意味はない。現在、SBIは137業者、楽天は15業者だか、両社とも豊富な金融商品やサービス提供でファイナンシャル・プランナーのコンサル会社や他社で証券仲介業を営んでいる既存業者を取り込んでいるようだ。

 その他に実質的に証券仲介業制度に取り組んでいる中堅中小・専業証券会社は19社あるが、ここで仲介業を使う投資家の立場から考えてみたい。オンライン投資家が、対面営業である証券仲介業者を使うことはない。また、一般の投資家が敢えて証券仲介業者に助言を求めることも考えにくい。そうすると、証券仲介業が成り立つ為には、顧客である投資家に対して金融商品提供以外の付加サービスが提供されなければならない。その不可サービスとは、ファイナンシャル・プランナーのような投資助言業だったり、税理士のように資産家の資産管理に助言を行うものだったりするが、いずれも投資家との関係が強くなければ成り立たない。米国で成功していると言われる証券仲介業のビジネスモデルは、大手証券からセールスが顧客を連れて仲介業者として独立するものが中心だが、その為には証券仲介業者に対して十分な商品供給と高いマージン率が必要だろうし、何よりも資産管理型の営業が浸透し、顧客との関係が強いセールスがいることが前提になる。成熟した投資社会が必要なのだが、日本で本格化する為には今一つハードルが高いように思える。

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CFD取引の現状=その2
 前回に続きCFDを取り上げるが、CFDは金融商品というよりは取引手法として捉えた方が良いと考える。個人のデリバティブ取引で、FX取引がなぜこれ程までに拡大したか、既存の金融・証券は分析しているだろが、取引の仕組みは全く同じだ。金融サービスとしてCFD取引を投資家に提供する側からみた場合のポイントは次の様なものだ。

【収益性=投資家のコスト】
CFD取引を提供する業者の収益の源泉は以下の順になる。
・ファンディング(資金を貸す)=つまり投資家がレバレッジを掛けた分、その資金を貸したことになるのでファンディング・コスト(金利収入分)は重要な収益となる。その為、投資家がポジションを継続して保有してくれた方が収益性は高まるが、このことを一般的にはキャリーと言う。
・スプレッド(売値・買値の差)=CFD取引はFX取引と同様に売値・買値を同時に提供するが、この差が大きければ、実際の市場に取り次ぐ場合やマリー(以下で説明)する際の収益源となる。
・マリー(売買注文の相殺)=投資家の売買注文を相殺させること。その為、この分は市場には取り次がないが、売買相殺することでスプレッドやファンディング・コストが効率的に収益化される。なお、売買の値段が異なってもマリーは可能。
・トレーディング・フィー(売買手数料)=商品指数や株価指数などでは、一部手数料を取らないところがあるが、個別株売買では一般的にフィーを別途課す。
以上、スプレッド以外は株式の信用取引の収益構造に似ている。つまり、投資家の売買量が増えかつポジションを継続して保有する方が収益性は高まる。
※なお、CFD取引を提供する会社が取引所から株価情報等に関するコストを要求される場合には、別途投資家から情報料として徴収する場合もある。

【コスト対応とリスク管理】
上記の4つの収益性を効率良く追及する為には、先ず顧客売買注文やポジションの管理を効果的に行うシステムが必要になる。また、実際の売買注文を市場に取り次ぐためのカバー先の確保も求められる。この必要なシステムとカバー先をセットで証券会社などに提供するCFD専業者が海外から日本に参入していて、証券会社などに対しホワイトラベル戦略としてシステム等を供給している(4社程度)。但し、この場合のサービス提供を受ける証券サイドの収益性は、一部で限られることになる。
一方リスク管理の方は、レバレッジ投資なので利用する個人投資家のロスカット対応の厳格化が求められるが、今年1月から証券業協会による自主規制ルールとして、この顧客管理におけるロスカット・ルール遵守の厳格化が証券会社等に課せられている。その為、顧客ポジションをリアルタイムで値洗いすることが必要で、かつ以下の様な強制ロスカット対応を取らなければならない。(以下の強制ロスカット・ルールはA社)
・含み損失が証拠金の25%に達した段階で、強制反対売買
・1日以上継続して保有する売買ポジションについて、値洗いした後の証拠金の合計額が、必要な証拠金額の100%以上を維持していなければ、保有ポジションの強制反対売買
証券会社がCFD取引を拡大していく場合には、このロスカット・ルールの厳格化対応が投資家を守るし、結果証券会社自身も守ることになる。

【取引拡大への取組み】
一部株価指数の取引所CFDはあるものの、基本的には店頭CFD=店頭デリバティブだ。よって、4月から実行されている店頭デリバティブ販売規制をうけ不招請勧誘禁止の対象ともなっている。これはFX取引と同様だが、ロスカット・ルールでの値洗いの問題もあるので、取引の方法はオンライン取引に限られる。今後CFD取引が拡大する顧客ターゲット層としては、現在のFX取引顧客(顧客数約300万人)・オンライン証券取引顧客(大手5社の延べ数で600万人)などが考えられる。

【既存ビジネスとの利益相反】
貴金属や原油など商品指数取引に関して、余り既存金融商品(投信など)と投資家層が重ならない。レバレッジ取引の性格上、CFD取引は短期投資が中心になると思われるが、上場株価指数先物・オプション取引や信用取引とは投資家層が同じと予想され、証券会社の営業戦略上の使い分けが必要だろう。ちなみに、日本株の信用取引がビジネスモデルの基盤となっているネット証券においては、日本株のCFD取引は取り扱っていない。

最後に、CFD取引は個人のデリバティブ取引拡大の為の大きな核になると期待しているが、現状では証券会社のビジネスとして、まだまだハードルは高いようだ。

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CFD取引の現状=その1
CFD(Contract for Difference=差金決済取引)は、ETFと共に投資対象の多様化に対応する投資手段として期待されている。取引の対象は有価証券にとどまらず貴金属や原油・穀物などにも及んでいるが、その仕組みは、FX取引と同様に証拠金を証券会社などに差し入れ、取引の対象とする指数を売買する。
現在、このCFD取引(店頭CFD)を取扱う証券会社数は20社、取引対象を商品指数のみに絞って取引を行う商品先物系の会社が4社となっているが、約300万口座まで成長したFX取引と比べると、その規模は未だ10分1以下と推測される。日本株など株価指数を投資対象とした上場CFD取引(現在4銘柄)も昨年11月から東京金融取引所で始まっており、オンライン証券など7社が取り次ぎを行っていて、3月の取引量は約20万単位と前月比倍増している。

 CFD取引の基本構造がFX取引と同様なので、例えば現在のFX取引投資家が、CFD取引を通じて、株式や債券の有価証券投資、貴金属や原油などの商品投資に進出してくることも期待される。最近主要なCFD業者から発表された3月にCFD取引量が多かったものは次の様になっている。

【A社】
1位:日本株指数取引
2位:米国原油指数取引
3位:米国株指数取引

【B社】
1位:米国原油指数取引(前月比2.5倍)
2位:日本株指数取引
3位:金価格指数取引

日本においてCFD取引が話題になったのは、金融危機直後の原油価格急騰時だったが、個人には直接投資が難しいと言われていたWTIなど原油先物投資での成功例が伝えられていた。但し、その時点でのCFD取引は僅か数万口座程度と見られていが、現在は30万口座程度とみられる。
また、昨年一部の取引業者によるFX取引のレバレッジの高さが問題になり、行政によるレバレッジ規制が実施された際、CFD取引も同様のレバレッジ規制とロスカット・ルールの徹底(この部分は日本証券業協会による自主規制)が証券会社に義務付けられ、本年1月より実施されている。

【投資対象毎のレバレッジ規制 】
・個別株CFD 最大5倍
・株価指数CFD 最大10倍
・債券CFD 最大50倍
・その他CFD(ETF CFDを含む) 5倍
・商品CFD 20倍

現在、再び原油などエネルギー資源や金価格の上昇で注目を集めるCFD取引だが、現状のCFD取引(店頭CFD)に関するいくつかの側面を考えてみたい。

【投資家にとってのメリット=主に取引手法としての利便性】
・FX取引と同様にオンライン取引のみで、取引画面ではオファー・ビットが提示され、どちらかをクリックすれば取引が成立する。その為、FX取引投資家にとって、株式や商品などに投資対象を拡大しても、同じ取引のプラットフォームや取引手法が使える。
・株価指数などが投資対象のCFDと上場先物を比較すると、今回の大震災直後の取引では、CFDは取引所の時間外であっても取引を継続させていたので、原発問題などの状況に即して反応することがより可能だった。上場先物のレバレッジが大きく縮小し、その為追加証拠金が発生する場合があったが、CFD取引の方のレバレッジは同じだった。
・個別株のCFDに関して、その取引対象銘柄を売却から入っても、空売り規制の対象とはならないので、個人投資家にとって、空売りする場合の利便性は信用取引に比べて高い。

☆CFD取引の基本構造
※次回へ続く


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金融教育から投資教育への行程
個人(家計)の立場で金融教育というものを考えた時、大きく取り纏めてみると、それはお金を使う事とお金を貯めることの知恵と知識を、金融リテラシーとして身につけていくことになる。特に、お金を貯めることは、一般的には貯蓄することであるが、低成長期の日本に於いては、“お金を貯める事=貯蓄+投資”でなければ、お金を貯めるという目標は達成しにくくなっており、証券を始めとする金融業界は、投資教育という側面で、金融教育の現場を支えている。

一方、国際的にも金融教育の必要性は高まっていて、OECD(経済協力開発機構)では、各国での調査をもとに、何故必要かとの背景として①老後生活における糧②クレジット・カードの過剰な使用と自己破産の増加③貧困層対策などがあるとしている。(2006年7月“金融教育の重要性”より)

日本における金融教育に関する行政面をみていくと、金融庁の“証券市場の構造改革プログラム”(2001年8月)から、『貯蓄から投資へ』の促進を目的に、金融教育への取組みが本格化し、“金融改革プログラム”(2004年12月)では、更に、家計のライフサイクルに応じた金融経済教育の拡充を求めている。また、金融商品取引法においても、認定協会・公益協会・認定団体は、金融知識の普及と啓発が義務化されている。

☆投資教育の概要図

現在、日本証券業協会の“証券市場の新たな発展に向けた懇談会”では、証券市場のさらなる信頼性向上と新たな発展を目指すための検討が行われており、その中でも金融教育活動の推進が取り上げられている。その議事概要が公開されているが、少し議論が学校教育への取組みに偏っているように思うのでコメントしたい。

勿論、金融リテラシーを国民が高めていく中で、学校での投資教育は必要なのだが、投資の前にお金との付き合い方、働く理由など、教育を実践される学校の先生方が先ず議論されるべきことを、業者間でその事を検討してみても投資教育自体が盛り上がっていく訳ではない。投資教育においても、大切なことは適時・適確な情報を、適切に伝えるというこの業界の基本的な考え方に立ち返るべきではないだろうか。つまり、投資教育も必要とされる方々への取組みを重点として、学校教育への対応は業界からの投資教育に関するコンテンツを充実することで割り切り、結果は現場の先生方にお任せするべきだろう。子供たちをバーチャル株式投資ゲームに参加させるのも良いが、では債券投資ゲームはあるのだろうか。寧ろ、業界が教育界から求められているのは、体系化された投資教育のコンテンツだろう。

では投資教育を必要とされ方々とは誰なのか。それは、投資をしなければならない方々、実際に投資を行っているにも係らず投資との意識が無い方々、彼等にこそ投資の実践に繋がるための投資教育は必要だ。具体的には、次の2つのカテゴリーを上げたい。

①日本版401K(確定拠出年金)制度加入者・・・約370万人
企業適格年金の廃止や確定給付型の年金制度縮小から、個人自らが年金資産を運用する日本版401Kの今後の加入者増加が予想される。しかし、現状は401Kに関する投資情報提供さえも不十分で、企業型の加入者は相当の割合が投資という意識が希薄なように思われる。
②上場会社の持株会参加者・・・約200万人(東証上場の約2000社460万人の従業員の45%)
高度成長期の右肩上がりの市場なら、上場会社の持株会は広く従業員の資産形成に役立ったが、価格変動の大きな自社持株会に参加している従業員に対して、企業側は十分な投資教育に配慮すべきだろう。

つまり、現役の従業員世代それも投資を通じて資産形成を行う層にこそ、投資に繋がる投資教育が必要だということを言っておきたい。

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大震災後一ヵ月:証券会社の営業環境
 未だ先行きの見えない原発問題は残念なことですが、復興に向けて個人も企業もそれぞれが出来ることから取組み始めており、その事が復興を一日でも早める原動力になると信じています。被災地の方々へも、その想いが届きますよう。

証券会社で何が出来るかというと、現状では相当限られている。むしろ、原発問題や電力供給問題の先行きの不透明さが、リスク回避という投資家心理に傾いているようだ。また、両問題の企業業績への影響も見通し難くアナリストは復興期待の予想などが出せる状況にはない。それでも、復興地や被災企業に関係した債券への投資を行う投資信託の募集が始まり、復興需要に期待するようなファンドの設定も計画され始めたようだ。
 その証券会社の営業環境の現状は次の図のようなものだ。

☆大震災後一ヵ月:証券会社の営業環境

証券会社そのもののビジネスモデルは、ネット証券を含めても転換期にあるように思われる。しかし、リスクマネーを仲介する機能や、個人金融資産を貯蓄から投資へ誘導する機能が、日本社会から求められている事に変わりはない。大震災を機に、金融業の一形態として再び成長戦略が描けるかどうかが、各社に問われているのではないか。



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上場会社には、何故社外取締役が必要なのか
投資家にとって、上場企業のコーポレート・ガバナンス強化は、ディスクロージャーの徹底とともに最低限求めたいことだ。安心して投資する為には、会社から発信される情報に信頼性があり、かつ株主としての権利が守られている。そう信じなければ投資のリスクは取ることが出来ない。希薄化を招く大規模な第三者割当や公募増資、MBO、合併や企業統合。それ自体は、企業が生き残りをかけて取る戦略の為に必要なことで、結果としては企業価値を高める目的で行われる。しかし、支配権を持たない一般の株主(少数株主)にとって、一時的であっても株価下落に晒されるリスクや、上場廃止で半ば強制的に株主としての退場を求められることもあり、その際に上場企業側や支配株主(親会社や大株主など、実質的に会社を支配しているもの)とは、利益相反することになる。この普通の株主としての立場を誰が守るか。その仕組みが、明確に市場に向かって示されていなければ、上場会社としては成り立たない。

 上場会社の意思決定機関である取締役会や、監査機能をもつ監査役会において、外部(社外)のチェックをどう入れるか。東証は、独立性の高い社外取締役や社外監査役を独立役員と定義して、上場会社に対してその導入を昨年4月以降、求めている。一方、法制審議会による会社法見直しでは、社外取締役の機能について、次のように整理されている。

① 経営効率の向上のための助言を行う機能(助言機能)
② 経営全般の監督機能
(a) 取締役会における重要事項の決定に関して議決権を行使することなどを通じて経営全般を監督する機能
(b) 経営全般の評価に基づき,取締役会における経営者の選定・解職の決定に関して議決権を行使することなどを通じて経営者を監督する機能(経営評価機能)
③ 利益相反の監督機能
(a) 会社と経営者との間の利益相反を監督する機能
(b) 会社と経営者以外の利害関係者との間の利益相反を監督する機能

 この社外取締役について、東証上場会社2294社の48.7%(2010年)が導入していて若干の増加傾向にあるものの、半数以上が導入を見送っている。その主な理由は次のようなものだ。

【社外取締役を選任しない理由】
・社外監査役を中心とした監査役(会)や取締役相互の牽制が働いている
・執行役員制度の導入による監督と執行の分離をおこなっている
・アドバイザリー・ボード等による助言機能が十分に機能している
・取締役の任期を1年に短縮したことで株主によるチェックが機能する考え方
・任期が4年である監査役のほうが短期的視点に左右されない大局的な観点からの助言・問題提起が有効
など
一方、社外取締役を導入している企業についてその属性が次の様になっている。
・他の会社の出身者---68.1%
・弁護士---11.1%
・学者---8.4%
・公認会計士・税理士---8.4%

問題となるのは、他の会社の出身者だが、この内の3分の1以上が親会社や関係会社若しくは大株主となっており、少数株主の為に利益相反などのチェックが出来る立場にあるかどうかだ。この部分に関して東証が求めたのは、企業からの独立性の保てる社外取締役だが、同様の独立性の社外監査役でも良い(両方を総称して独立役員)としたことで、企業の最高意思決定機関である取締役会に外部の目が入るべきという本来の社外取締役制度の目的が薄れているようにも思われる。上場ルールで、企業の在り方を縛ろうとすることに限界があるのかも知れないが、現在法制審議会では社外という言葉の定義や、社外取締役を義務付けるかどうかの議論が行われている。日本企業の復興の為には、上場企業のコーポレート・ガバナンス強化の取組みも、国内外の投資家や株主から期待されることである。

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投信運用会社の最近の情報提供について
 大震災後すでに一ヵ月が経過したが、日本市場は原発問題や電力不足が重石となってムードは余り明るくない。その様な中で、投信の運用会社は投資家に対して何を発信しているか、その内容を取り上げてみると、殆どが海外の金融政策や為替動向に関したもので、海外金利の引き上げ・新興国の格上げなどが主な内容となっている。

☆投信運用会社の最近の情報提供について

最近の内容に関しては、次の様なものを取り上げている。
○欧州中央銀行の利上げ(4月7日)(3月3日ECB理事会で総裁が示唆済み)
・3年振りに政策金利引き上げ:1.0%→1.25%
○ポルトガルの金融支援要請(4月6日)
・ギリシャ、アイルランドに続いてEUへ金融支援要請
○ブラジルレアル高抑制措置(4月6日)
・国外の借入、債券発行にかかる税率6%の対象期間を360日→720日に拡大
○ポルトガル格下げ(4月5日)
・ポルトガル国債の格付けを、「A3」から「Baa1」へ1 段階引き下げ
○中国の政策金利の引き上げ(4月5日)
中国人民銀行による政策金利引き上げ
・貸出金利:6.06%→6.31%
・預金金利:3.0%→3.25%
○ブラジル格上げ(4月4日)
・フィッチがブラジル国債等の格付けをBBB-からBBBへ一段階引上げ

など

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情報について学んだこと・・・株式市場の仮需給について
今、我々は情報のあり方について改めて学んでいる。大震災の後、被災地の状況や福島原発に関する情報が多く流されているが、それでも情報の不足感を感じるのは何故だろうか。流される情報の迅速さ・正確さは勿論のこと、知りたいと思っている情報に出会えるように情報そのものが体系化(整理)されていなければ、情報供給に対する不足感は募る。それは、海外投資家や外国政府から指摘されるまでもなく、原発や復興対策について不安に思っていくことに応えて欲しいとの日本国民としての強い想いからだ。
 日本の市場についても、情報が整理されていない若しくは整理の仕方が今の時代にあっているのか疑問を感じるものがある。その一つに、株式の仮需給に関するものが上げられる。この事を、少し簡略化して考えてみたい。
日本株の仮需給は、個人投資家などが利用する信用取引や海外投資家などが使う貸株市場(株式レンディングもしくは株式レポ)があり、基本的な構造は、投資家にお金を貸すか、株式を貸すかだが、株式を貸すにはその株式を借りてこなければならないので、証券会社にとってはよりハードルが高い。
通常、証券会社が顧客の信用取引を扱う場合、自ら資金や株券を調達できなければ日本証券金融会社に借り入れを申し込み、この分の借入状況(投資家が買いの場合は融資、売りの場合は貸株)は取引所を通じて週一回公表される。証券会社による仮需給の報告は、毎日取引所にされているが、仮需要によるその銘柄の売買高が急増すると、融資・貸株の状況を毎日公表する措置を取引所がとる。これが信用取引の取組み公表と言われていて、投資家の仮需給を計るものとされている。

 しかし、この部分は市場の仮需給の数分の一にしか過ぎない。少し前のデータになるが、2006年9月に日証金により公表された数字では、信用取引全体の市場規模が1.5兆円に対して、ヘッジファンドなどが使う貸株市場は6.4兆円となっており、信用取引の約4倍以上の仮需給が取引されている。
個人投資家が、若し仮需給の先行きを推計する目的で信用取引の融資・貸株情報を利用しているなら、一部のデータしか見ていないことになる。

 では仮需給の大きい方の貸株市場の状況を知るにはどうした良いか。機関投資家なら日本株の貸株情報を提供する海外情報ベンダーを利用することも出来るが、個人投資家には現在その方法が無い。ただし、多少は代替するものがある。それは、金融危機以降行われている空売りポジション報告だが、個別銘柄で大量(発行済み株数の0.25%以上)に株式を借りて空売りした場合は、証券会社を通じて投資家毎に報告する義務がある。元々は金融危機後の海外での仮需給が適切に運営されているがどうか報告させる目的だったが、仮需給を推計する手段の一つとして、活用しても良いのではないだろうか。少しでも、個人投資家と海外投資家の市場に関する情報のギャップを埋めることが、個人投資家の売買シェア低下に歯止めをかけることになると期待したい。

 なお、空売りが悪い影響を市場に及ぼすといっているのではなく、空売りに使われる株式の貸し借りの情報が、もっと投資家間で共有される必要があるという事を主張したい。株式の仮需給に関する海外投資家と個人投資家の情報の非対称性を改善してこそ、多様な投資家が参加する活力ある市場の維持が可能と考える。

今、出来ること・・・市場から
大震災から日本の経済も生活も、そして市場の環境も大きく変わったが、今、個人も企業も何が出来るか考えさせられるような毎日が続いている。その個人や企業の小さな積み重ねが、大きな復興ビションの礎になること信じている。

 東証は4月6日、システム開発に係るプライマリー・ベンダー選定の入札において、プライマリー・ベンダーが被災地域の企業を外部委託先として活用しているかどうかを評価項目の一つとすることを発表した。全体としては、小さな被災地企業支援の一つかもしれないが、東証が今出来ることの一つかもしれない。そして今、出来ることの目的は、被災地のそして日本の復興に集約される。その復興の為に、市場の関係者が、今、何が出来るかを考えていかなければならないが、その復興ビションの方の現段階の全体的なイメージの方を纏めてみると、次の様になる。

【第一段階:復興ビジョンを立てるため先ず被害状況を把握し、その情報を体系化する必要がある。(科学技術復興機構)】

【第二段階:必要な組織や法律の方は国にお任せするとして、国民や企業が先行きに希望をもてるような復興ビジョンと、それを実行する復興計画が必要だ。(経団連)】
その復興計画の主要テーマを上げると次の5つに纏まる。(経団連、日本総研、野村総研)
※≪≫内は、市場関係者が今の時点で行っていること

○被災者救済
≪業界団体として、企業として、そして個人としても義援金は当然の事だろうが、金融機関として被災された方々への可能な限りの対応は各社取られている。印鑑やカード紛失や早期出金への対応などだが、証券業協会はこれらの証券会社への照会フリーダイヤルを1ヵ月間設置するとしている。今後の社員などのボランティア支援などはこれからかも知れない≫

○被災地の復興支援
≪既に9日付日経の1面広告にもなっているが、東日本復興支援債券ファンドの募集を野村証券が開始した。ファンド資金が何らかの形で被災地の復興に寄与する事を目的に、政府機関・地方公共団体・企業の発行する債券や国債で運用するとしており、ファンドの信託報酬の半分程度が被災地へ寄付される。今後、被災地の復興計画が明確になれば、債券引受や復興地へのファンド等によるリスクマネーの供給スキームが提案されていくことを期待したい≫

○原発対策
≪この問題は市場関係者にとってもっとも難しい問題だろう。それは、原発問題の長期化が市場の重石となっているだけではなく、リスク回避の動きが電力会社全般に波及していて電力会社の市場からの資金調達にも影響している。取りあえずは、海外投資家にも情報を正確に伝えることで電力会社に対する風説の流布を避ける事だろう。≫

○電力対策
≪上場企業が様々な夏の電力削減プランを策定し始めている。市場関係者としては、それがどの程度企業業績に影響し、かつ日本経済への影響がどうなるのか内外の投資家に伝える必要がある。しかし、これだけでは足りないと筆者は考える。現在、復興に関して様々な提案がなされているが、原発問題・電力問題の中心にいるのは東京電力なのだから、アナリスト等を動員して東京電力に対する復興支援プランを早期に示すことが、投資銀行の今、すべきことではないだろうか≫

○防災対策見直し
≪外資系の市場関係者の中には、一部機能を関西や中京地区に移転しようとする動きもあるようだ。今回はみずほ銀行のシステムも重なったことによって、バックアップ体制強化や緊急時対応の問題が改めて強く認識されている。一応、2006年2月には証券業協会が、証券市場に係る機能の継続並びに一時停止した場合の再開・復旧又は代替する体制の整備及び適時適切な情報の集約・還元・提供を図る体制の整備を目標にB C P フォーラムを立ち上げている。≫

【復興計画実行の仕組み=復興基金の設立とその財源としての課税案(大和総研、日本総研)】
今後、復興財源として様々の課税強化案が議論されていくと思われるが、一時、株式等の譲渡益課税の軽減措置(2013年まで)の撤廃が政府においても取り上げられたようだ。その後、金融相により否定されているものの、復興の日本に必要かどうか市場関係者として議論に耐えられることが求められるだろう。

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復興提案の概況について
東日本大震災からもう3週間以上がたちますが、未だ目途のつかない避難所生活を送られておられる15万人以上の方々に心よりお見舞い申し上げます。また、過酷な条件で被災地において救援活動をされている方々・原発対策に向かい合っておられる方々に対し、深く敬意の念を表します。

 様々な研究・調査機関より大震災後への取組みに関して復興提案の公表が相次いでいるが、現時点での提案内容の概況に関して纏めておきたい。復興提案内容については、先の阪神大震災での対策や反省を前提にしているのも多いが、関東大震災時の対応まで遡るものもある。

 先ず取り上げたいのが、科学技術振興機構(4月5日)の“緊急の被害調査の充実”という緊急提言だが、どの様な復興戦略やビションを立てるにしても、状況の正確な把握と、その情報を行政・国民・企業さらに海外で日本の動向に注目している人々に発信していく事を前提にすべきだろう。その為、同機構は次の2つを緊急提言としている。(以下、原文)
①緊急の被害調査は、個別分野ごとに実施され、全体像が把握しにくい面がある。日本学術会議を中心に、各学会等による緊急の被害調査の体系化、調査結果の統合化が進められることが必要である。
②国際的な活動を含む緊急の被害調査に対するサポートの充実が急がれる。総合科学技術会議、各府省に加えて、科学技術振興機構等の研究資金の配分に関係する機関も、可能な限り、サポートを充実する必要がある。

原発や電力の問題を考えると、早急に状況を正確に把握し、かつ体系化する必然性が良く分かる。

 次に復興ビジョンの全体像について、経団連は3月31日に“震災復興に向けた緊急提言~一日も早い被災地復興と新たな日本の創造に向けて~”を発表しており、スピード感を持って被災者支援、被災地復興、原子力問題の早期収束、そして、日本経済の立て直しに国を挙げて取り組むことが必要とし、政府による早期復興と新しい日本の創造に向けた「基本法」ならびに「基本計画」の策定等を急ぐべきとしている。
 また、日本総研は“-東日本大震災の影響についての論点整理-「復元」でなく「新興」に取り組め”(4月4日)において、地元主導の復興プランを立案し、国の支援により、できるだけ早期に実行に移す必要があるとして、その為に復興基金を早急に創設し、財源として寄付税制の活用、非課税ゼロクーポン債の発行、相続課税の見直しなどを通じた財源調達も検討すべきとしている。加えて、国の危機管理態勢の見直し、首都機能・東京一極集中の見直し、日本パッシングへの対応などの戦略の必要性も示している。

 金融系のシンクタンクとて野村総研は、次の5つの緊急対策を並行して進めるべきとしている。(3月31日)
①生活再建支援やヘルスケアを含めた被災者の支援。
②継続的放射線モニタリングを含めた福島第一原子力発電の事故対策
③官民連携による社会資本整備や、サービスの民営化推進も利用して、新しい発想に基づく地域・産業の再生
④当面の夏場の電力需要ピークに向けた製造業の生産調整・夏季休暇の長期化・総量規制など需要対策の総動員
⑤防災計画の見直しなど今回の大震災を踏まえた防災対策の見直し

また、大和総研は次の2つについて、3月18日早々に提言を行っている。
【東日本大震災復興基金(仮称)】=国の管理の下に創設し、大震災からの復興事業という使途に限って被災地自治体、被災事業者及び被災個人への投融資を行うことを提言
【復興連帯税(仮称)】=東西ドイツの統一の際に統一費用を連帯付加税で調達した例を参考に、復興期間の3~5 年間について消費税を1%引上げることなどの検討

現時点の株式市場は、復興需要や回復などへのプラスの期待と、大震災の当面の悪影響や電力制限などの今後の影響が見通せないとのマイナスの不安の間で揺れているように思うが、原発問題の今後の推移も、電力の安定供給へ向けての取組みも、その中核にいるのは東京電力なのだから、感情的な責任論を唱えるより、今本当に必要なのは、東京電力への支援策と、その為のビジョンの提示ではないだろうか。東電60万人の株主への配慮ではなく、5万人以上の従業員と更に多くの関係会社の人たちが、原発の処理と電力の復旧へ向けた取組みを全力で継続的に行う為、最低限のことのように思う。

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個人投資家にとってのデリバティブ取引について
個人のデリバティブ取引の拡大が期待されているが、足元は少し受難の時期かもしれない。
4月1日から始まったデリバティブ商品販売態勢の整備では、仕組み債や一部の投信も含まれ、適合性の原則等に基づく勧誘の適正化や説明責任の徹底が、証券会社の営業現場で求められている(証券業協会による自主ルール)。また、取引所デリバティブにおいてのリスク説明の徹底を図ることも加えられている。これは、個人のデリバティブ取引を健全化する為に、必要な措置だが、大震災後の市場の大きな変動により、先物・オプションのSPAN証拠金が大幅に引き上げられ、含み益でも追加保証金が発生するという状況もあった。個人投資家のデリバティブ取引や信用取引での損失により、多くの証券会社では立替金損失が発生しており、先物・オプション取引の機能の一部停止を公表しているところも複数ある。
しかし、それでも本市場が拡大していく為には、派生するデリバティブ取引の活性化が必要で、かつその取引市場の健全性を守る為に、個人投資家を含めた投資家の多様性は欠かすことが出来ない。
 個人のデリバティブ取引の拡大を期待して、現状を以下にレポートした。

☆拡大が期待される個人のデリバティブ取引

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個人の社債投資が拡大する為には
金融危機後の2009年5月、孫さんのソフトバンクは格付けBBB期間2年で600億円の個人向け社債を発行した。社債の発行環境がまだ悪かったこともあって、利率が5.1%という高水準で話題になったが、この年は社債発行における個人向けの割合が1割(募集額で1兆円以上)を超えていた。しかし、日本の社債の保有比率で個人が占める割合は、未だ2%に満たない。また、流通市場でも個人の売買は全体の0.03%未満(2月公社債売買高)で、投資家としての存在感はない。であるのに何故標題をつけたかというと、社債市場にとっても、個人の資産運用にとっても、社債投資は今後重要なテーマになってくる可能性がある。

個人が預金とは異なる確定利回り商品を求めていると仮定すると、その為に社債は最も適切な金融商品なのだが、いくつかの乗り越えなければならない壁もある。

【流通の壁】
一つ目の壁は、証券や金融機関の販売現場にある。社債も含めて債券投資は、元々1億円券面が主流で、個人向けに限って100万円券面とするが、発行時の募集も、既発行債の販売も、販売現場での取扱いは10年来変わらないように思われる。社債も2008年よりペーパレスになっているのだから、もっと細分化した販売や、ITC技術の利用で商品部や販売員に負担をかけない販売方法が待たれる。

【情報の壁】
二つ目の壁は、社債に関する情報の壁だが、これは次の3つほどある。

・その社債の利率と価格は適正なのか=価格情報だが、米国などのように個人も利用可能な流通価格情報を共有する仕組みが待たれる。現在、日本証券業協会において社債市場の活性化に関する懇談会第4部会“社債の価格情報インフラの整備等”として検討が進められているが、実現の為に価格情報を共有する仕組みのコスト負担を誰がどのように行うか議論することが必要と思われる。

・その社債はどの様に安全か=社債は発行会社が元本を保証するもだが、その発行会社がどの様な状況になった時、期間前に償還されたりするか社債要項に記載されている。投資家の債権者としてのリスクを守るための投資家と発行会社の契約だが、この内容を判断するための会社の財務情報がちゃんと公表されているかどうか。また、投資家の為に社債を管理しているものは誰で、投資家と利益相反がないかどうかなども問題となっている。つまり、本来は投資家の為に発行会社を注意深く見守っている立場の社債管理人が、その会社に融資をしている銀行なら、発行会社の財務内容が悪化した時、本当に投資家の為に社債の権利を守る行動がとれるかどうかという問題だが、このことは前記と同様に協会の第2部会(コベナンツの付与及び情報開示等)・第3部会(社債管理のあり方等)において在るべき姿が議論されている。

・その社債の信用リスクはどうなのか=信用リスクを個人が判断するツールとして格付けは分かり易い。しかし、以前から格付けについては格下げ時(つまり信用リスク増大→価格下落)の遅行性が問題になっていた。企業の信用リスクの変化を個人レベルで判断することが出来ないので、この問題は民間企業である格付機関に頼るしかないが、金商法の改正により格付機関も信用格付業者として登録制へ移行し、また格付けの定期的ウォッチやその公表を求められている。また個別企業の信用リスクのデリバティブとしてCDSがあるが、こちらの方の価格情報は東京金融取引所が取引業者からの報告もとに参考値を公表している。この活用が日本でも拡がっていくことに期待している。

【供給の壁】
現在、社債の供給に関しては発行市場に偏っていて、個人に提供する金融機関も限られている。つまり供給サイドの壁が有る。もし、将来日本の個人資産の1割でも社債で運用されるようになれば、米国並みに個人が社債を保有(米国は直接保有14%、社債ファンドでの保有11%)することが期待されるが、その為には、個人投資家が望む運用期間の社債を、望む時に、望む量だけ提供できることが必要で、その為にも社債の流通市場の整備が待たれる。

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空売りポジション簡易集計表と日銀のETF買入れ
空売り規制による発行済株式総数の0.25%以上の報告を簡易集計したものを更新します。

空売りポジション簡易集計表(4月1日報告分)

また、日銀はリスク資産の買入れとして3月29日に市場より日本株指数ETF192億円を買い入れています。

リスク資産の買入集計表

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個人にとっての債券投資:個人向け国債から債券投資へ
もう5~6年以上も前になるだろうか。大手証券が個人向け国債を競うように販売したのは。個人向け国債(10年物、変動金利)は2003年から発行が始まり、翌2004年には、年間販売額が6兆円を超えた。更に、2006年からは5年物の固定金利の個人向け国債が発行され、この分の大量償還が今年から始まっているが、本年分だけでも4兆円以上あると言われている。来年の4月まで続くゆうちょ銀行の定額貯蓄(10年物)の大量満期と併せて、その受け皿の金融商品が期待されている。

 償還されている個人向け国債(5年債)は、債券というよりは以下の貯蓄的な性格が強い。
・購入単位は1万円
・金利は固定
・中途換金時の換金金額=額面金額+経過利子相当額―4回分の各利子相当額×0.8【国の買取り】
※2年経過後から、中途換金可能。ただし、上記の換金式によって金利水準の上下による債券としての価格の変動はなく、いつでも元本以上が確保できる仕組みとなっている。
つまり個人向け国債は、債券投資としての金利低下局面におけるメリットもない代わりに、金利上昇時のリスクもないという債券らしくない金融商品であった。個人の金融資産を貯金から国債に移行させる手段として考えられたものだったが、これは発行者である国の方に買い取る際の金利変動リスク(リファイナンスの)が負わされることになる。この為、2008年から新型窓口販売方式として通常の国債も販売されるようなってきており、こちらの方は市場価格でいつでも売却することが出来る。

 個人の債券投資が拡大する環境が整いつつあるが、実際には個人投資家側からみると次の様な問題点もある。

●個人にとっての債券投資のメリットが広く理解されていない。つまり個人に対する債券投資に関する投資教育がされていないので、多くの人が債券に関する知識が不足している。これを補う為には、債券を販売する側の投資家への提案能力が必要だ。例えば定期預金よりも債券で運用した方が良い結果になるというような次のレポートがニッセイ基礎研究所より公表されている。
☆老後生活資金の債券運用

●現状の債券市場は、発行市場も流通市場も個人投資家への態勢整備が遅れている。これは国債でも社債でも債券を1億円の券面中心に扱っていた時代の名残りだが、債券は大口の投資家である機関投資家中心の販売会社側の態勢になっていて、個人が扱うような金額では、発行元から個人向けという指定が無い限り販売のインセンティブが起きにくい。しかし、国債も社債も券面がなくなっているので、小口販売の為のコストは著しく低下しているはずなので、販売者側の工夫と努力が求められる。個人向け国債については、大和証券が専用のPTSを開設し、売買ニーズのマッチングに取り組んでいるが、これもまだ試行段階に思える。

●債券市場は、株のような取引所取引ではなく相対取引なので市場価格が分かり難い。また社債の方は流通市場が整備されているとは言えず、実勢価格が更に分かり難い。米国においては、社債の売買された価格の情報がほぼリアルタイムで個人にも提供されたことで、個人投資家の社債投資が増加した結果が出でいる。日本でも、社債市場改革で売買実勢価格が広く投資家間で共有されることで、社債の流通市場が整備されていくことが期待されている。

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