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2011/05
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ネットで投信を売る立場、買う立場、其々の期待
今や対面リテール証券の収益の中心となっている投資信託だが、同じ様な投信をネットで買えるかというと、殆ど買い揃えることが出来そうだ。主要なネット証券4社(松井は取り扱わず)の投信取扱い銘柄数は、5月末時点で次の様になっている。

SBI証券=1088銘柄(平成22年度の投信関収益34億円、純営業収益の4.3%)
楽天証券=1061銘柄(同投信関収益8億円、純営業収益の1.9%)
マネックス証券=461銘柄(同投信関収益18億円、純営業収益の2.6%)
カブドットコム証券=450銘柄(同投信関収益5億円、純営業収益の1.1%)

これだけの銘柄数を、投資家はネット画面から選択することになるが、ネット証券は投資家が投信銘柄を選択する為の情報として、主に次の方法を使う。
○売れ筋や高配当などの何らかのランキングの提示
○投資家が投資目的を確認しながら銘柄を絞り込む為にQ&A式選択画面の提供
○投資戦略(自社のハウス・オピニオン)を提供した上で、自社の薦める投信を薦める

これで、投信銘柄を選択した投資家は、選択した投信の過去のパフォーマンスや投資に係るコストを調べる為に目論見書や運用報告書の内容を更に検討する。同じオンライン取引での株やFX取引とは異なり、利用する投資家も投信購入決断まではネット上で相当の労力を費やすことになり、ネット証券はそれに対応する為、上記3つの選択方法に対して、相当の情報の整理や分析を行う必要がある。つまり、ネット証券の投信販売に関しては、販売時に係る投資家の負担から対面リテール証券の様な販売手数料は望わりには投資家に提供する投信情報整理のコストが掛かる。

 ネット証券は収益の7~9割を株式取引(信用取引を含む)に頼っているが、投信販売に対しては上記カッコ内に示したようにまだまだ収益寄与度が小さい。但し、残高が積み上がってきており、販売手数料(投信のネット販売では、当初の手数料を取らないノーロードも増加している為)の数倍ある投信残高に対する報酬は、安定的な収益に見える。その為、コストを抑え投信残高を増加する目的で、投信共同販売の為の試行的プロジェクト“資産倍増プロジェクト”を始めているが、共同のウェブサイトを立ち上げ、投信による資産運用の普及啓蒙活動を行いながら共同の販売プロモーションも行い、5月には3本の専用ファンドを選定している。

 一方、ネット上で投信を買う意味を投資家の立場で考えてみると、投信に関する情報については投信目論見書の簡素化や、QUICK・モーニングスターなど情報ベンダーが提供する投信関連情報で、ネット上での投信選択が容易になってきているので、投資家の投信に関するコストを下げるというのが重要な関心事になっている。ネット上での投信販売は今後も増加していくだろうが、この事が進んでいくと、少し言い方が雑だが、同じ様な投信なら、ネット証券であろうが、ネット銀行であろうが、運用会社の直販であろうがコストの安いところが良いという、需要サイドに重心の移っていくように思える。

 ネット証券での投信販売が、ネット銀行や直販より競争優位を保たなければ事業戦略として投信販売に本気で取り組む意味がないと考えるが、投資家がネット証券で投信を購入したことで生じる付加的なサービス、例えば投信を保証金・証拠金に活用できるとか、保有する投信に関連した情報がツイッターやメールなどで自動的提供されるなど、ネット証券独自のサービスが期待される。

なお加えて、ネット上ではネット証券だけが扱えるETFが投信(残高に応じて預かっている残高に応じて報酬が支払われる)であることも、ネット証券・投資家双方に思い出していただきと思う。

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復興ファンドの現状について
大震災に対して、今何が出来るが、個人も企業や団体も其々の立場で考えさせられる現状ですが、被災地の復旧や復興の為に義援金や保証金とは異なる仕組み=“支援と投資”として、復興ファンドは期待されています。市場が出来ること、その一つが復興ファンドに取り組むことでしょうが、それは今までと異なる投資の意味が必要かも知れません。また、復興地が必要とするお金の内容・ファンドへ出資される方々のそれぞれが取れるリスクも異なりますが、その“復興ファンド”の5月末時点の現状について、どの様な取組みがなされているかを見てみます。

 復興ファンドの目的は、復興地に必要な資金が回ることだが、国策の様な大きな構想から、現場の事業主の早急な資金ニーズに応えようとするものまで、“ファンド”の定義と同じ様に、多様な取組みがなされ始めている。

 大きな構想の代表的なものは、復興資金を官民ファンドで賄うというものだが、米政府から4月に提案された日米企業が出資する復興ファンド構想は、米側のシンクタンクや主要企業で立ち上げた復興支援プロジェクトに、日米政府や経団連も参加し、復興事業に対する日米協力のあり方を検討しながら、被災地の復興資金ニーズに応えるものだ。
 また、従来の政策・施策(政策金融)の延長線上で取り組まれる復興ファンドとしては、次のものがある。
・被災した中小自動車部品メーカーの復興を支援するため、日本政策投資銀行が最大500億円規模のファンドを6月に設立する。ファンドへの出資は大手銀行も参加する予定だが、必要とする資金を一旦大手部品メーカーに融資し、その大手部品メーカーから中小メーカーへ出資・融資が実行される“ドミノ方式”が取られる予定だ。この方式で、被災地企業への迅速な資金提供が可能になるとしている。
・みずほ銀行は、大震災により直接的(事業用資産)または間接的(原材料調達難・風評など)に被害を被った企業に対して、特別融資を行う“事業復興アシストファンド”を5月中旬に2000億円創設し、9月末まで申し込みを受ける。

 次に、投資というカタチを取りながら、被災地若しくは被災企業支援を試みるものとしては、次のものがある。

・5月17日に野村証券などで募集を終了した「東日本復興支援債券ファンド1105」は、518億円の資金を集めた。この投信は、被災地に資金が回るように関係する公共体や企業の債券に投資するもので、期間5年、募集手数料はなく信託報酬の0.2%が被災地に寄付される。約4万名の投資家が同投信を購入し、5億円の購入した紀陽銀行も被災地支援策として表明している。

・また日本株に投資する「ダイワ・ニッポン応援ファンドVol.3 -フェニックスジャパン-」(追加型投信)も、信託報酬の半分にあたる0.36%を寄付するとしているが、こちらは大和証券などが募集を行い27日時点で273億円(5月26日設定)の資金を集めている。

・伊藤忠は中小企業基盤整備機構・みずほコーポレート銀行などと共同出資で、先端技術を使って日本の震災復興を支援するベンチャー向け投資ファンドを設立した。同ファンドは、総額70億円を運用し、防災や復旧に役立つロボット技術や、次世代型の電力管理システムといった先進分野に重点投資する。運用期間は2020年までの10年間で、40社程度に投資する計画だ。

・音楽事業などの事業ファンドを手掛けるミュージックセキュリティーズ株式会社(第二種金融商品取引業者)は、事業ファンドスキームを使って被災地企業の事業再開を支援する“被災地応援ファンド”を創設した。4月から対象企業・投資家とも募集を始めていて、現在は8企業に対して支援を行う。ファンドの支援スキームは、5千円の出資金と5千円の寄付金・ファンド運営会社への手数料500円の計1万500円を1口として個人が口出資するものだ。

また東証は、震災復興に向けた資金調達に寄与する金融商品の上場を促進するとして、以下の施策を4月に表明している。
・被災したインフラの復興などに貢献する上場企業を構成銘柄とする株価指数に連動するETFなどの組成を働きかけ、上場を支援
・被災者向け賃貸住宅等を組み入れた不動産投資法人など復興関連REITの組成を働きかけ、上場を支援
・復興事業や被災企業の資金調達を支援する事業型ファンドのための制度整備を進めるなど、復興事業等への中長期の資金調達に寄与する上場商品の開発を支援。

 今後も復興ファンドに向けた様々な取組みが出てくると予想されるが、支援と投資の両立という投資手法が、日本においても定着し、広く個人投資家が参加できる市場になるよう期待されている。

投信販売に対する期待―対面リテール証券会社の場合
 証券会社の業務の中心は、株式の取扱いということは今でも変わらない。しかし収益面でみると、投資信託に支えられている部分が大きくなっている。主要リテール証券20社の平成22年度決算(リテール部門若しくは単体)における純営業収益の42.5%が投信に係るもので、その4分の3が投信販売の手数料、残りの4分の1が投信残高に対する運用会社からの報酬になる。
 市況に大きく影響される証券会社の収益にとって、安定収益の確保は悲願とも言えるが、ここ10年来証券会社の安定収益作りへの取組みは、投信の残高を増やすことだった。今月公表された大和証券グループの経営戦略においても、投信の残高を4.1兆円から6兆円まで増加させることリテール営業の戦略の中心としている。オーソドックスな安定収益源だが、具体的増加策としては次の取組みを上げている。

①毎月分配型ファンドへの注力
②特徴のあるテーマ型ファンドの投入
③個人向け国債償還への対応
・個人向け国債、郵貯の大量償還・満期に対する運用提案の強化
・日本国債ファンド等を活用した、低リスク運用ニーズに対する対応
④社内評価制度の改定
・投信残高拡大をより評価する体系への変更

これを一覧しての率直な感想は、リテール証券における投信販売態勢はあまり変わっていないように思われる。別に大和のリテール営業戦略を古いといって批判する目的ではないが、他社のリテール営業戦略(対面営業)もほぼ同様のものなので、変わらない理由を考えてみたい。

 先ず高配当の実績のある毎月分配型投信は安定的に売れている。例えば、東海東京が昨年度販売した投信の72%が毎月分配型だったが、これは前の年度の54%から大きく割合が伸びている(同社決算説明資料より)。高配当の毎月分配型投信に対する様々な批判はあるものの、売れ筋商品に注力することは販売戦略の基本だろう。2番目のテーマ型ファンドは、証券会社としてこれからは○○だという投資戦略がなければならない。少し意地悪な言い方をすると、個人投資家の買いたい投信ではなくて、証券会社(若しくは投信運用会社)の売りたい投信ということになるが、営業現場で○○テーマを販売イベントとして実行していきやすい。以上の2つについては、どの投信を個人投資家に薦めるかという問題を、営業現場での営業員の説明・コミュニケーション能力に委ねることになる。

 3つ目については、問題となるような投信の短期的な乗換えよりは、貯蓄などから新規資金で投資を促すことがリテール営業現場での基本になる。大量の国債や郵貯の償還・満期はそのチャンスとして需要な時期なのだが、実はこの部分の資金はあまり投信には流入していなようだ。“貯蓄から投資へ”の政策が取られて久しいし、投信の販売チャネルも随分増加したが、日本の投信の世帯普及率は7.9%で、米国の43.9%とは大きな差があるし、個人金融資産に占める割合も3.5%と先進国では低いままだ。反対にリスクを嫌う預貯金の割合が増加しているのが現状だ。

 4つ目の営業員の評価制度変更への取組みも10年来のテーマだが、今でもリテール営業の戦略として上がっていることは、営業現場において、投信販売・投信乗換え・新規資金導入による販売のバランスある投信販売態勢が確立していないようにも思われる。結果、リテール証券としては、投信販売に期待する部分が大きいものの、残高増加への戦略的手法が未だ整っていないのではないだろうか。

アルゴリズム取引への期待と不安について
標題について易しく考えると、アルゴリズム取引に対する期待は、市場での取引量が増し、各銘柄の流動性が向上すること。不安の方は、アルゴリズムの価格形成に対する影響が良く分からないと思うこと。前者の期待は、主に取引システムを高速化した取引所や大量の株式売買を行う海外・機関投資家などで、後者の方は、アルゴリズム取引を行わない市場参加者及び世間一般ということになるだろう。
そもそも、アルゴリズム取引とは何かという事から考えるのに、先ず次の二つを上げたい。

【その定義】(野村証券による)
アルゴリズム取引とは、コンピューターシステムが株価や出来高などに応じて、自動的に株式売買注文のタイミングや数量を決めて注文を繰り返す取引のこと。具体的には、自らの取引によって株価が乱高下しないように売買注文を分散したり、また株価が割安と判断したタイミングで自動的に買い注文を出したりする。利用については、投資家が発注時に証券会社が提供する複数の執行ストラテジー(アルゴリズム)から、自分に合うものを選択する方法が一般的である。

【個人投資家による事件】
 今年1月25日、証券取引等監視委員会はアルゴリズム取引を逆手にとって相場操縦を行ったとして、個人投資家を摘発した。摘発の対象となる取引は平成22年6月14、15日の北越紀州製紙株の売買において、取引を誘引する目的で約定させる意思のない発注を繰り返し、自己に有利な売買をしたとされている。
※詳細は、→北越紀州製紙株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について

 次にアルゴリズム取引は、コンピューターが取引を自動的に執行する所謂システム取引の一種だが、システム取引≒アルゴリズム取引ではないのは、その取引の目的が売買執行コストを下げるということに限定される為だ。つまり大量の株式の売買を執行しようとする時、
・価格が大きく変動してしますリスク
・同じ様な価格で取引しようとした時に時間がかかってしまうリスク
・取引しようとした時、その価格で希望する取引量が出来ないリスク
・取引そのものが執行されないリスク(発注先に情報だけ流れてしまう)
などがあって、取引を希望していた価格から実際の取引された価格が乖離してしまう事を売買執行コストと言うが、アルゴリズム取引はこのコストを下げる為の仕組みとして利用されている。結果、大量の売買注文を執行する為に必要な取引手法として、欧米では定着しているし、日本でも機関投資家の利用が進んでいる。(2009年の野村総研の調査では、運用会社の半数が週一回以上利用)

その基本的な枠組みは、
●市場に影響するニュースや経済・金融統計の情報を取り込んで、売買タイミングを探る。
●市場の取引テータ(売買情報・注文情報)を取り込んで、売買タイミングを探る。
●上記の情報をシステム上で解析し、決められたストーリー(アルゴリズム)によって、自動的に注文の受発注、更には注文の取消しを行う。このアルゴリズムの中には、情報を解析することで他のアルゴリズム取引を感知して、注文を受発注するものもある。
このアルゴリズムを優位に稼働させようと思えば、人より早く情報を集約し分析して発注を行うという事は分かり易い戦略だが、その為には取引所の高速化・取引参加者の高速化競争が激化している。

一方、アルゴリズム取引に参加しない市場参加者は、急激が取引の増加や価格変動において、何処位この取引の影響があるか分からないので、アルゴリズム取引に対する不安と不満があるようだ。その為、昨年5月の米国のフラッシュ・クラシュの様に、急激な価格変動の犯人扱いという事態(実際は異なる)になりがちだ。但し、良く考えてみるとアルゴリズム取引の主な目的は、価格変動を避けることにもあるので、ロジカルな説明とは言えないし、幾分アルゴリズム取引の実態が分からない事への不満に思える。この状況は、せっかく高速化・グローバル対応している日本の市場にとっても好ましい状況ではないので、取引所はアルゴリズム取引に関する情報公表の徹底を行い、アルゴリズム取引の透明性を高めることで改善を図って欲しい。
 
改正産活法で期待したい、大型M&Aの増加と自社株取得
株式市場の方はグローバルに調整色が強まっているが、18日に国会で成立した改正産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律)に期待したい。早ければ7月上旬にも施行を予定されているこの法案の主な目的は2つあって、一つは日本の産業再編を更に進めるM&A促進の為の施策、もう一つはベンチャー・地域中小企業支援の為の施策だが、M&A促進策を取り上げたい。その概要は、以下も様に3つに分かれる。

【事業統合の迅速化の施策=公取委関連】
合併などの企業結合の審査は、独禁法による公正取引委員会の審査が必要だが、企業が事業所管大臣に再編計画を提出することで、所管大臣が産業政策として、海外事業者の投資動向・異業種からの参入状況や可能性・代替製品の技術開発状況などを公取委に情報提供し、その企業結合の必要性を迅速に判断する為に、事業所管大臣に対して公取委との協議を義務付けた。これにより、グローバル競争の激化に対応した、大型のM&Aが実行しやすくなり迅速な産業再編が円滑化されることが期待されている。

【自社株対価のTOBの促進、完全子会社化手続の円滑化の為の施策=会社法関連】
措置は2つあるが、

・一つ目の措置は、自社株を使ったTOBを行う場合、株式の交換比率を決議するだけで済むようになる。会社法上は、今でも自社株を利用したTOBを行うことは可能だが、企業買収なので相手企業をプレミアムを付けて買うことになる。つまり、自社株は反対に相手企業の株主に対して市場価格より安く渡すこと(相手企業株主に対して、有利に発行)になる為、株主総会での特別決議が必要とされている。また、法律論としては、TOBに渡した株式が、もし払込日までの間に値下がりした場合、買い手側企業には現物出資規制上の価格補填責任があるのではないかとの意見もあり、自社株を利用したTOBは会社法制定以来殆ど利用されなかった。これが、今回の改正産活法によりTOB開始段階で、交換比率を決めておけば良い事になる。

・二つ目の措置は、完全子会社手続の簡素化だが、これは今まで買収企業を完全子会社化する為には、TOBを実施して株式を三分の二以上取得し、この後に残った少数株主をスクーズアウトする為、株主総会で普通株式を全部取得条項付種類株(企業が定められた価格で株式を買い取ることが可能な株式)に替え、その後完全子会社化を実施するという手続きが取られていた。これを、TOB実施時点で90%以上の株主が応募した場合、株主総会を開かなくても、応募しなかった株主から株式を買い取れるようにする。
以上の2つの措置によって、企業再編が多様化、迅速化し、積極的な再編が活発化することが期待されている。

【長期資金の調達支援の為のTwo-step-loan(二段階融資)の創設】
 企業の事業再編においては、コア事業の前向き投資と、ノンコア事業の事業転換も併せて行うので、一時的には大規模な資金需要が発生するが、再編企業向けに財政投融資資金1000億円を使って、日本政策金融金庫が金融機関を介して(2段階)長期資金を融資する制度を創設する。

以上によって、上場企業のM&Aが活発化し自社株取得が本格化することで、最近は日本の取引参加者の閉塞感が強い株式市場に対して、好影響がでることを期待している。日本企業の再生は、日本の資本市場の再生にも繋がると、日本の市場参加者が信じるべき時ではないだろうか。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

投資信託の課題とリテール証券会社
 最近の証券会社の収益は、投資信託(以下投信)によって支えられている部分が多い。グループ化して、参加の投信の運用会社を持つところは、その収益がグループ全体に寄与する部分が大きくなっているし、本体の証券会社の純営業収益でも、投信の販売手数料と残高に対する報酬部分は全体の4割(主要リテール証券会社20社平成22年度)を占めるまでになっている。投信自体も、大震災後の直近2ヵ月こそ資金が流出しているものの、その成長は続いていて、証券業界の収益の柱となっている。

 一方、投信そのもの有り様はどうかというと、来月で日本において60年を迎える投信について、日本証券経済研究所杉田氏によるレポート(発足から満60周年を迎える日本の投資信託~その軌跡・現状と今後の課題~)が先週公表されていて、業界の人間として時に懐かしくもあり、また考えさせられる内容でもあった。
先ず、投信の実態として改めて認識させられたのは、失われた20年の影響である。同レポートによると、日本の投信の世帯普及率は、1988年の16.7%をピークに2009年の7.9%と半減しているのに、米国はその間に倍増し2010年では43.9%の世帯が投信を保有するようになった。この間、米国株式市場が堅調だったこともあるが、401Kなどの退職準備貯蓄制度整備による影響が大きく影響している。日本のリテール証券会社の収益を支える投信は、まだまだ拡大していく余地が大きいのだが、杉田氏は、今後の投信の課題として以下の点をあげている。
①運用パフォーマンスを更にレベルアップするため、グローバル投資の推進とともに機関投資家として日本企業の株式価値の向上に貢献すること
②投資家利回り向上のために積立て投資を促進すること
③確定拠出年金の拡充を推進し、その市場で地位を確立すること
④投資家の商品理解を徹底するとともに分かり易い商品へ脱皮すること
⑤新商品開発だけではなく既存商品の育成に注力すること

 筆者も全く同感に思うが、このことと投信を収益の柱にする販売者の証券会社の立場から見てみると、次の様なことも感じる。
・投信の販売者として、証券会社は運用者を選ぶことは出来るが、全ての投信を扱うことが出来ないので、投資家に提供しようとする投信が限られる場合がある。
・対面リテール証券では、収益予算があるため、営業イベントとしてある投信に集中して販売活動を行いがち。
・結果として、ある投信を他の投信と比べて販売するという事は余りなされず、特定の運用会社の主張する運用方針に対して、投資家の賛同を得ようとするスタイルの販売活動が中心となる。
・一方、ネットでの取引で投信を販売することについて、昨年の7月から投信目論見書の簡素化が実質的に始まっているものの、その内容について、一般の投資家が充分に理解できると多くのリテール証券は考えていない。また、ネットでの投信販売では、投信間の商品比較が必要だが、現時点ではその様な仕組みは整備されていない。

 つまり、投信を米国並みに個人投資家に浸透させて行く為には、ネットでも対面でも今のリテール証券で行っている投信の販売方法とは異なる取組みが求められるのではないかと思われる。その為に、日本ではまだ試行的に行われている確定拠出年金制度(日本版401K)や、今後導入が予定される日本版ISA(少額投資非課税口座)、ファイナンシャル・アドバイザーなどの投資助言業務などに対応していくことが、リテール証券にとって必要な変化になると考える。

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レポート”個人投資家と投資情報~個人が情報を有効に使うためには”を公表します。 
【サマリー】
○投資と情報のあり方
投資情報は、個人にとっても安価にかつ大量に入手することが可能になりましたが、それぞれにとって有効な投資情報とは何でしょうか
※現状を図説
○投資情報の提供者とその特徴
情報ベンダー、投信の運用会社、SNS、企業のIRは今個人投資家に向かってどの様な情報発信をしているでしょうか
※投資情報提供の目的を図説
○個人投資家が発信する情報
個人が発信する情報も、十分な投資情報となりますが、その現状は。
※個人投資家の発信する情報の現状を図説
○市場仲介者としての投資情報提供
市場仲介者である証券会社の、個人投資家への情報発信はどうあるべきか。
※そのプロセスに関して図説

☆個人投資家と投資情報~個人が情報を有効に使うためには

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日本の株式市場に関する問題
現時点での日本の株式市場に関する問題について、その全体像を俯瞰したシートを公表します。

☆日本の株式市場に関する問題の全体像

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日本の株式市場を分断化させない為に
東証によると4月の株式取引では金額ベースで67.4%が海外投資家ということだ。この統計は、東証・大証・名証で直接売買注文の発注を行う資本金30億円以上の証券会社58社からの報告を集計したものだが、海外投資家の売買シェアが7割近い状況は、5月に入っても続いているようだ。海外から日本の株式市場が注目され、売買量が増加するのは日本の資本市場にとって好ましいことだが、海外投資家は日本株取引を日本の取引所だけで売買している訳ではない。海外のPTS(私設取引所)やダークプールと言われる海外証券会社内の取引システムで、日本株が取引きされることもあれば、海外証券会社等と相対で売買する海外ファンドなども多く、実際の海外投資家の日本株取引量は、取引所に報告されているものの数倍に達すると推測される。また、日本株を海外の金融機関に預託し、その持分を細部化して現地通貨で売買可能とする預託証券(DR=Depositary Receipt)方式の日本株売買も、海外の個人投資家中心に利用されていて、米国ニューヨーク取引所やナスダックでも取引されている日本株のADR取引がその代表的なものだ。海外投資家による日本株の取引が増加すれば、これら海外での日本株売買も当然増えていくが、そのことによって日本の株式市場が分断されるリスクを感じる。

つまり、日本の取引所で取引されるトヨタ株、米国のADRで取引されるトヨタ株、欧州において相対で取引されるトヨタ株、それぞれは同じトヨタの株式であることは当然だが、それぞれの取引情報が投資家間で共有されなければ、トヨタ株全体の取引の状況を把握することが出来ない。もし、海外でのトヨタ株の取引がマザーマーケットの日本市場より多く、その情報を日本の取引参加者が知らなければ、日本の取引インフラのみを利用する投資家には不利益が生じる可能性もある。

また、18日からシンガポール取引所では、トヨタなど日本株5銘柄のADR取引が開始されたが、最近では個人投資家が利用できる海外証券取引所へのアクセスも良くなっていることもあり、益々日本市場の空洞化への懸念が生じる。

 冒頭の東証統計によると、個人投資家の日本株売買シェアは21%、投信などの国内機関投資家のシェアが9.7%で合わせても日本の投資家取引は3割を占めるに過ぎない。これだけ自国内の投資家の売買シェアが低いのは一部の新興国しかないが、先進国でしかも世界2位の資本主義国なのに海外投資家の売買高が過半数以上を長い間占めるというのは、国内取引に何らかの構造的欠陥があるのではないだろうか。
例えば、個人投資家の6割弱を占める信用取引は仮需要を創出する重要な仕組みだが、機関投資家や海外投資家は、この仕組みを使わないで別途海外証券会社などからファンディングや貸し株などのサービスを受ける。最早、信用取引だけ見ていたら、日本の株式市場での仮需要全体を把握することが出来ない。

日本の投資家に対して、日本市場のみならず海外での貸株も含めた日本株取引に関する情報を、適時的確に伝えることで、日本株取引の全体像を投資家自らが把握しやすいように努める事こそ、日本の株式市場を分断させないために必要な事ではないだろうか。


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ほふり”の可能性について=たまにはバックヤードの覗いてみよう
日本の資本市場が紙の有価証券から完全に解放されて、もう2年以上が経つ。CPなどの短期社債、社債、投信が順次電子化され、そして2009年1月の株式をもって、日本で流通する有価証券の完全なペーパレス化が終了するが、これらは電子データとして取り扱え、その事自体に大きな意義がある。この事が、今日本の資本市場が抱えている問題にどう役立つか、その可能性について易しく考えたい。先ず、ポイントは次の様なものだ。

○日本で流通する有価証券の情報が、全て証券保管振替機能(ほふり)に集中される。
○投資家情報を集約することも可能で、特に株式・上場ETF・上場REITに関しては、100%投資家情報を把握される。
○決済、移動、残高等の情報については、リアルタイムで把握することが可能である。
この僅か3つの事が、例えば株式については、どの様に影響しているのだろうか。
(※以下の数字は、証券保管振替機構公表の4月末業務状況グラフより)

・日本の上場企業の株主数は、この4月末で1648万人となっており、この半年間は余り変動がない。よく報道などでは、日本の株主数が4479万人(各取引所より集計した分で、平成21年度分)という数字が言われるが、これは延べ株主数であり、“ほふり”の方は投資家毎に名寄せした数字なので実数に近い。つまり、この数字から1投資家当たり2.7銘柄を平均で保有していることも分かる。

・上場される企業数はこの4月末で3630銘柄となっているが、上場廃止やM&Aなどの影響で、株式完全ペーパレス化がスタートした2009年1月初めの時点より241社の減少している。この間の株数は、546億株増加して4133億株と、1社当たりにすると2割以上増え(1社当りの平均発行株数が0.926億株→1.138億株)、分割や大型ファイナンスの影響が見られる。

・株式の移動(振替)は、件数ベースで3月に比べ4月は2割近く落ち込んでいる。取引所での決済に係る1日当たりの件数(以下4月の数字)は8.9万件だが、証券会社や信託銀行同士で行うものは13.8万件、証券会社内で行う移動(主に証券会社と投資家間)が10.6万件となっている。つまり、この事は、日本株の取引で取引所を介するものが全体の3分の1程度にしか過ぎない事を示しているが、日本株の取引全体を鳥瞰してみる必要がありそうだ。取引所での取引以外には、PTSや相対取引での売買、株式の貸し借り(貸株市場=実際は海外のOTC取引が中心)や株券を担保にする取引などが大きな部分を占めると見られる。日本の株式市場の現状を理解しようとする時、これらの取引所取引以外の取引実態を見て全体像を考える必要がありそうだが、この株式の移動は“ほふり”を必ず経由し、取引データとしてリアルタイムで残っていく。

・例えば証券会社間で、相対で売買取引したり株式を借り現金担保を渡した場合などで、それらの取引の条件までが“ほふり”に蓄積されることがある。つまり、株券を移動させる条件として、その売買代金や担保金が同時に振替えられるDVP(Delivery Versus Payment=資金と証券の引渡しを相互に条件付けた決済方式)機能を、“ほふり”は証券会社等に提供するが、この利用比率は“ほふり”での証券会社間取引の6割(全有価証券)を占める。個々の株式・資金の移動デーダが分かるので、逆算すると取引単価など取引条件を割り出すことも可能である。

 以上、“ほふり”には日本の資本市場の状況を把握するのに有効なデータが蓄積されるが、“ほふり”の本来業務は有価証券の決済機能なので、有効データを情報として投資家に提供する為には、業界全体の議論と合意が必要になる。但し、日本の市場改革への取組みは待ったなしではないだろうか。
投資行動から逆算して考える新興市場問題
 金融危機や大震災がなくとも日本の資本市場は、構造的な問題を抱えていた。日本の投資家の日本株離れと言う問題だ。別に、海外投資家が東証での株式売買金額の7割を占めても良いのだが、日本の個人投資家や機関投資家にとって、投資というリスクを伴う行動に駆り立てるものが日本の市場に残っていると思われているのだろうか。その象徴的な問題が、日本の新興市場問題ではないだろうか。その事について、投資家的視点から単純化して考えてみると、以下の様な問題がある。

①新興市場の企業に、魅力はあるのか。
②財務的なデータは信頼できるのか。
③変化しているビジネス環境や企業の内容は、ちゃんと伝えられているのか。
④普通の上場企業への投資より、投資リスクが大きいのであれば、それに対する政策的支援策が取られているのか。

先ず、当然の事だが投資家にとって最も需要なことは、新興市場のあり方よりは新興企業に魅力があるかどうかであって、新興市場=IPO(株式公開)ではない筈だ。日本の新興市場問題に関して、市場関係者の議論も、一部の個人投資家の興味も、そして新興企業の関心も、余りにもIPOまでの事に集中しすぎて、IPO後には力尽きているのではないかとの懸念がある。確かにIPOは大変な作業を伴うが、投資家にとっては、新興企業のデビューでしかなく、その後の成長に期待できるかどうかで投資判断される普通の仕組みが必要だ。結論を言うと、現在のIPOの仕組みに問題があるという事になる。

・IPOを新興企業・市場関係者にとって最大のイベントとしない仕組みが必要だが、新興企業にとっての最大のIPOメリットは確保されるべきだろう。つまり、IPO時における新興企業のリスクマネー調達を中心に考え、大株主や経営者のIPO時の売出しは新興市場では極力制限すべきだろう。
・機関投資家が積極的に新興市場に参加する為には、新興企業のIPO以前の情報が纏まってあれば有効かも知れない。現在、日本証券業協会では“新興市場等の信頼性回復・活性化策”が議論されているが、経済産業省から出されている案では、新興企業に対して早い段階からリスクマネーを提供するベンチャーキャピタルの投資動向データベース構築事業案が示されている。その内容は、①企業情報②ファンドのパフォーマンス③投資先企業情報等をデータベース化して、VC投資のベンチマークとしてオープンにすることで、機関投資家・海外投資家等からの出資拡大、VCの出口としてのM&Aの拡大、ベンチャーキャピタル業界の競争環境を整備するというものだ。

 二つめの問題については、よく新興市場の信頼性回復と言われるが、このことが架空売上計上など有報等の虚偽記載を指すのであれば、これは新興市場のみならず上場会社全体の問題になり、監査制度の問題ではないかと思う。少なくとも、アジアの新興市場よりは日本の監査制度に対する信頼性は高いはずだが、投資家が信頼できないというのであれば、更なる改善を求めるべきで、内部統制報告やIFRS対応という会計技術的問題とは違うし、上場審査問題とも本質的に異なる。なお、東証はマザーズ改革として、新年度より新興企業上場時の監査は、上場企業を取り扱った経験と知見を持つ会計事務所での監査対応を求めている。

三つ目の問題は、新興企業自身が適時的確に市場に対して情報発信することが重要で、その為に取引所の適時開示ルールは最低限厳守する態勢整備が必要だ。勿論、会社説明会などのIR活動も重要だが、上場時の主幹事証券が義務としてディスクロージャーの指導をある一定期間行うことが望ましい。この仕組みとして、プロ向け市場で上場会社をサポートする専任アドバイザー(TOKYO AIMにおけるJ-Nomad)の様な仕組みが、新興市場にも必要かも知れない。証券会社の情報発信として、アナリスト・カバーの問題があるが、先ずは新興企業自らの情報発信力を高めることが大事なのではないだろうか。

四つ目の問題については、新興市場の銘柄投資に関するキャピタル・ゲインの軽減措置があっても良いのではないだろうか。

以上の問題を考える時、新興市場を改めて定義し直す必要もあり、退出(上場廃止基準)も厳格化されるのは当然と考える。なお、上記の4つの問題は新興市場の問題であるとともに、現在の日本の株式市場の問題であること思い出した。

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ジャンル : ビジネス

市場に足りないもの=リテール証券の決算から見えること(速報版)
業界の方でなければ、証券会社の決算など興味がないだろうが、証券会社は市場と投資家の間をつなぐ重要な市場仲介機能を果たしている。その決算内容から、市場の変化も見えてくる部分がある。

以下の資料は、昨年度の主要なリテール証券の純営業収益と株式の売買に係る株式委託手数料、投資信託に係る収益、投資信託や外債の販売額、顧客からの預り資産を現時点で分かる範囲で記載したものだ。
(数字は、各社の決算短信や決算説明資料から作成、リテール部門若しくは単体を集計。今後一部販売額数値などは変わる可能性もある。)

☆リテール証券主要20社の平成23年3月期決算概要(営業に関する部分:速報版)

例えば、株式委託手数料は概ね2ケタの減少になっているが、昨年度全体でみると日本の株式等の市場取引が減少した訳ではない。取引所の決算短信によると、昨年度の日本株取引は以下の様になっている。
・東証の株式売買代金総額=380.62兆円(前年度比0.4%増加)
・大証の日本株指数先物取引金額=360.06兆円(前年度比4.4%増加)
つまり、個人の株式売買が減少していることが、証券会社の手数料減少として現れている。
日本の株式市場の機能については、一昨年初の株券の完全ペーパレス化でより流通・決済機能が向上し、昨年初の東証の取引システムの超高速化対応で売買機能も格段に上昇しているが、この市場インフラの向上メリットが、少なくとも日本の個人投資家に余り利用されていないのかもしれない。また、この株式委託手数料の中には、近年大手やネット証券中心に注力されていた外国株式の売買手数料も含まれるが、これも前期に限っては、大きく伸びているという訳でもないようだ。大和の決算説明資料によると、この株式委託手数料に占める外国株の割合は3割程度だが、ここ1年以上は同様の水準のようだ。結果的に、リテール証券会社にとって、この株式委託手数料は純営業収益全体の2割未満に低下している。
反対にリテール証券で伸びているのが、投資信託関連収益で収益全体の4割以上を占めるまでになっており、販売手数料や残高に応じた報酬は其々6%前年比で増加している。

 現在のリテール証券の営業そのものは、投信や外債の販売が主力になっていて、これら金融商品の販売者という事かも知れない。しかし、投信や外債は証券会社以外の金融機関でも販売することが出来る。証券会社に出来ない事、それは市場と投資家を繋ぐということだが、その機能そのものがリテール証券の営業現場(含むネット証券)では低下しているのかも知れない。証券会社という業態が古くなって、金融商品取引法でいう第1種金融商品取引業者なのだから仕方ない時代の流れと諦めるか、新しい市場仲介者モデルを期待するか、どちらだろうか。

日本の資本市場を守る為にも、市場仲介者としての証券会社の機能向上に関する議論も、協会や金融審議会で行うことが必要だろう。
少し期待外れの“かぶオプ”スタートと、顕在化した問題
2009年10月に、東証のオプション取引の新取引システム「Tdex+システム」が稼働してから暫く経つが、今年の1月末の東証社長会見において、ようやくオンライン証券4社がこのシステムに接続することが公表された。これにより、一般の個人投資家も個別株のオプション取引がネットを通じて可能となり、日本でも個人が日本株のオプション取引に参加することが期待されている。東証の個別株オプション取引は “有価証券オプション”と呼称されているが、個人向けに“かぶオプ”という名称を新たに付け、また個人投資家向けに投資手法や投資戦略を易しく説明する専用サイトも立ち上げている。
 この背景としては、世界的には個別株オプション取引が一日当たり2000万枚(東証は、4000枚程度)と大きく伸びていて、その中でも個人投資家の取引が増加している。特に日本以外のアジアの主要な市場では、個別株取引の半数異様を個人投資家が占めていて、日本でも個人投資家の個別株オプション取引増加が期待されていた。今までは富裕層などとの対面取引において一部証券会社が取り扱うのみで、一般の個人投資家が個別株のオプション取引を行うことは難しかった。これが、オンライン証券において “かぶオプ”が始まることで、日本の個人投資家にも個別株オプション取引が浸透していくことが期待されていた。
 3月には米国のブローカーであるインタラクティブ・ブローカーズ証券が取引を開始しているが、4月末にカブドットコム証券の“かぶオプ”取引が始まったのが、実質的には個人投資家への個別株オプションのネット取引サービスの最初の取組みになる。その提供される取引は、以下の様にかなり制限されたものだ。
●対象銘柄数(“かぶオプ”の対象銘柄は4月末で157銘柄)をTOPIXCore30銘柄に絞っている。
●1対象銘柄当たり、プットとコールの別、最低でも5つの行使価格、6つの限月(取引期間)に分けて取引値段が付くが、このうち限月は直近の4つの取扱いに制限している。
●オプションの買建てのみで、売建てすることは当面出来ない。

当然のことだが、オンライン取引は個人投資家自らが投資判断するが、オプション取引の為には、先ずその価格が自らの投資戦略にとって適正化どうか判断出来なければならない。その為、オンライライン証券側は、そのオプション価格が、割安か割高か投資家が知るための情報をリアルタイムで提供する必要がある。つまり、オプション取引に関する膨大な情報を、個人投資家向けに分かり易く整理して提供する必要がある。カブドットコム証券は、この為にある程度対象銘柄や限月を絞ったとみられる。一つ目の問題としては、オンラインを通じた個人投資家へのオプション関連情報のあり方が問題となる。

 二つ目の制限としてオプションの売り建てを当面禁止しているが、このことは本来のオプション取引の効果や戦略を相当制限することになる。東証が示す“かぶオプ”の投資戦略は、以下のHP上で16の基本的なオプションを利用した基本戦略が示されているが、もし“かぶオプ”の売建てが出来なければ三分の二が使えない事になる。

☆東証:有価証券オプション取引の投資戦略
この事を二つめの問題として指摘しておきたい。

三つ目の問題として上げておきたいのは、“かぶオプ”に関してはまだ流動性に問題があるようで、有価証券オプション取引自体の取引がまだ少ないので、値付きの状況が悪い。この改善の為に、東証は2009年10月からマーケットメイカー制度を導入しているが、現在のマーケットメイカーは、メリルリンチ証券が18対象銘柄、インタラクティブ・ブローカーズ証券が6対象銘柄、ソシエテ ジェネラル証券が1対象銘柄で、日本の証券会社でのマーケットメイカーはいない。本格的な流動性向上の為には、このマーケットメイカーの充実が避けられない。

 最後の問題として指摘しておきたいのは、オンライン取引で個人投資家がオプション取引の売建てを行うのに必要な、ロスカット・ルールの整備だが、2つ目の問題で指摘したように、売建てが出来ないオプション取引は、個人投資家の“かぶオプ”拡大を制限する可能性もある。オンライン取引で売建てを可能とする為には、明確で分かり易いロスカット・ルールが必要で、その整備が待たれる。

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東証住宅価格指数について
東証が4月26日から月1度の頻度で中古マンションの価格水準の動向を表した“東証住宅株価指数”を公表する。取りあえず試験的に指数を算出・配信するということだが、東証社長によると、算出する指数は、国土交通省が中心となって、米「S&P ケース・シラー住宅価格指数」を参考に、1年くらいかけて指数の開発をしてきたということだ。不動産価格に関するものは、現在も国土交通省が年1回公表する「公示価格」や、マンションの募集価格を基に民間機関が算出する指数などがあるが、公表頻度や正確性などから価格動向が把握しにくいという指摘がされていた。この指数の概要は次のようになっている。

・指数の対象は、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の首都圏中古マンションの成約価格
・上記のデータは(財)東日本不動産流通機構から提供
・指数の計算方法は、統計的推計を行うリピート・セールス法
<同一の中古マンションが2度売買された時の価格情報に基づいて、それぞれの時点の価格水準を回帰計算によって指数化>
~ご参考:ウィキペディア=ケース・シラー住宅価格指数の算出方法に関する説明
まず調査対象地域の一定期間の住宅売買事例のデータを集めた後、同じ住宅の過去の売買事例を調べる。こうして特定の住宅ごとに「売買事例のペア」を作成して二時点間の取引価格の差を調べ、これらを一つの指数に統合する。「売買事例のペア」を作成するに当たっては、住宅が差し押さえられたケースや家族間での売買など、指数をゆがめる可能性のあるデータは慎重に除外される。また「ペア」ごとの事例間の価格差が大きい場合(大規模な増改築等が行われた可能性がある)や、事例間の時間が長い場合(老朽化等の可能性が高い)などは、指数へのウェイトづけが低くなる。これは本指数が、純粋な住宅相場の変動を表示することを目的とするためである。
・基準日は2000年1月で、その時の価格を100とする。4月26日公表された各指数は、
○東証住宅価格指数(既存マンション・首都圏総合)=83.36
○東証住宅価格指数(既存マンション・東京)=87.59
○東証住宅価格指数(既存マンション・神奈川)=82.37
○東証住宅価格指数(既存マンション・千葉)=73.43
○東証住宅価格指数(既存マンション・埼玉)=71.69
・指数は当面月次対応で、最終火曜日の16:00に公表されるが、算出データは2ヵ月前のものになる。(4月に公表された指数は、2月時点のもの)

 この指数を試験的に公表する東証の目的については、一つは不動産(中古マンション)価格の重要な指標となることを目指すとともに、もう一つは投資家と不動産取引の現場の価格に関する情報の非対称性を縮小することで、投資家がREITを始め不動産証券化市場に向かいやすくするという試みだ。

お手本とした米「S&P ケース・シラー住宅価格指数」は、米国内の住宅価格動向を示す最も一般的な指数で、アメリカ国内の景気指標として重視されている。また、不動産デリバティブとして2006年5月より、シカゴ・マーカンタイル取引所で先物とオプションが取引されてもいる。

 東証のこの様な取組みは、日本の金融・資本市場の機能充実の為にも歓迎したいが、取引所である限り取引参加者(直接に)がいて成り立つ。最近少し感じる懸念としては、この様な新しい金融商品や取組みに対して、一部の参加のみで例えば300社近くある証券会社の大半は、その動きに付いていけないのではないか。というものだ。
勿論、その責任は証券会社側にあるのだが、新しい金融商品や取組みに、より多くの取引参加者(証券会社のみでなく他の金融機関・ファンド等も含む)が参加できることも、取引所として配慮して欲しい。

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投信運用会社の直近の情報発信動向と運用方向
リテール証券会社の決算をみると、既に4割以上が投信に関連した収益になってきている。(但し、ネット証券は、営業収益の1~4%程度)一般の個人投資家にとって、株式や債券に直接投資するより、むしろ投信を通じた投資の方が、普通のカタチなのかも知れない。その為、投信の運用会社からの情報発信は増加していて、単に運用方針や相場観を示すだけではなく、定期的な市況解説、そして突発的な出来事に対しても、即時にコメントや個人投資家向け解説を公表する運用会社が増加している。
前回は、本稿欄において4月12日、大震災後一ヵ月経過した時点の運用会社の情報発信を取り上げたが、今回は、その後の連休までの情報発信動向について取り上げた。

☆投信会社の最近の情報提供と大震災後の投資動向 

この間の適時の情報発信としては、各国の金融政策に関するものが増加しているが、特に多かったのはブラジルの利上げに関するもので、ロシア・中国と続く。日本の連休中には、アジアの新興国の利上げも多かったようだ。為替に関するものは、特定の通貨よりは新興国通貨中心に為替動向全般を解説するものが増えている。また、株式に関するものは相対的に比率が低下しているが、その中で日本株に関すものは2(132件中)となっており、少し寂しい気もする。

 一方、日本の運用会社が毎月新規設定する投信のテーマを、多い順に並べてみたが、大震災後変わった傾向を読むならば、新興国への株・債券投資や円建債券投資と言うテーマが増加している。
5月分は、まだ日も浅いのでこれから新規に設定される投信が増えると思われるが、是非に復興をテーマにした日本株投資が増えることを期待したい。何も、投信に日本株を買えという訳ではないが、投信の運用会社には、復興をテーマに日本企業を見直すことと、その情報発信ぐらいは、日本の運用会社が“今出来る事”としてお願したい。

なお、個人の日本株シェアも2割程度を低下していて、海外投資家の買いだけに頼る現在の市場センチメントも寂しい。市場の仲介者として証券会社の“今出来る事”は、日本企業に関する情報発信力を高めることからではないだろうか。

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何故市場改革が必要なのか~新興市場の場合
先ず最初に言っておきたいことは、市場改革は常に必要だ。時代や環境の変化に対応し、投資家のニーズに応えて行く為に、市場改革議論は常に行われるべきだ。しかし、日本での最近の市場改革議論は、ここ数年毎年同じテーマを繰り返しているようにも思う。社債市場然り、また新興市場改革議論も既に3年以上市場関係者による改革議論が行われている。勿論、真摯な議論をされている改革検討メンバーには敬意を払いたいが、3年以上も同じ問題を議論していること自体、本質的な問題が解消されていないことを証明している。専門家による改革議論が何故進まないか。その事を考えるために、そもそもの新興市場問題について投資家や利用者である企業の視点からやさしく考えてみたい。

【新興市場の本質的問題とそれぞれの背景】
前回取り上げた2006年のライブドア事件以降、新興市場における虚偽決算問題が顕在化してきた。虚偽決算は何も新興企業のみに限ったことではないが、ソフトウェア業界の循環取引やバイオベンチャーの売上げ計上など、新興企業独特のビジネスモデルから発生するような虚偽計上を、監査法人も含めて市場関係者がチェックできる態勢になっていたかが問われた。この問題は、証券会社や取引所の上場審査、公認会計士の新興企業に対する監査能力などの改善努力に向かう。言い方を変えると、“新興市場の信頼性回復”に向けた取組みということになる。

次に問題となったのは、新興上場企業の市場での上場後の取り扱われ方だった。新興上場企業の大半は上場後2~3ヵ月は売買されるが、その後急速に売買取引量が減少し、多くは公開時の株価を大きく割り込んだまま低迷してしまう。企業自身の業績や成長戦略の失敗なら当然の結果だろうが、これが新興企業や市場仲介者である証券会社からの情報発信不足なら問題の解消方法はある。“新興市場での取引活性化”に向けた取組みだが、取引所などによる新興企業のIRやアナリスト・カバーへの支援となる。この問題の本質的なことは、新規公開後の新興企業を、市場仲介者である証券会社が如何に取り上げていくかにあるように思う。特に、新興企業の幹事証券と名乗っている証券会社の責任は重い。

上記の2つの問題が顕在化し、新規公開の新興企業数がピーク時の10分の1程度まで大きく減少したことが3つ目の問題になる。“新規上場の活性化”に向けた取組みが必要とされたのは、日本のIPO市場が低迷しているのとは対照的に、中国で新興市場が創設されたり、他のアジア新興市場のIPO誘致強化の取組みが日本でも目立ち始めたことも影響している。資本市場の入り口となるIPO数の減少は、新興企業へのリスクマネー供給の低下に繋がるのだから、この問題の対応策は、日本の資本市場にとって緊急性を要するはずだった。

【付属する問題とポイント】
 新興市場の事に関して議論するのだから、当然如何あるべきか詳細で専門的な検討が必要だろう。しかし、その前に形式的なことも考えるべきで、5+1の新興市場が日本にあることさえ、実は一般には余り知られていない。5は、マザーズ・新ジャスダック・セントレックス・Qボード・アンビシャスだが、+1はグリーンシートという店頭市場になっているものの、全ての新興市場に注文を取り次げる証券会社は、実質的に無いといえる。先ず、この5+1の新興市場を、利用者である投資家と新興企業に分かり易く整理して、説明する必要があるだろう。特に、グリーンシートは300近くある証券会社の中で9社(それも一部の銘柄のみ)しか扱っておらず、プレIPOマーケットとしての機能していない。

少なくとも、主な証券会社であれば必ず取扱いが出来る新興市場及びプレ新興市場という考え方から整理を始めて欲しい。

これらの新興市場議論を顧みて、常に想う事だが、同じメンバーで同じ議論を繰り返しても、本質的な問題の解決策は出ない。議論も市場仲介業務も、新しい参加者を促す仕組みが必要なのではないだろうか。

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ライブドア事件が市場に残したもの
 ライブドア(現LDH)の粉飾決算事件で、最高裁は25日付、被告側の上告を棄却する決定し被告の実刑が確定したことが伝えられている。容疑の対象となるのは、
●2004年9月期の連結決算で、自社株売却益や架空利益を違法に計上し、約3億円の経常赤字を約50億円の黒字に粉飾した有価証券報告書を提出した件
●子会社のライブドアマーケティング買収をめぐり、株式交換比率算定に関する偽計及び架空売上計上に関する風説の流布の疑いの件
以上の虚偽情報を公表したとして、東京地検特捜部が2006年1月に関係者を逮捕・起訴したものだ。事件としての内容は、ウィキペディアに“ライブドア事件”として詳細に記載されているので、事件内容や経緯にご興味のある方はそちらをご覧いただきたいが、同事件が日本の資本市場に残した問題は、起訴事実以上に大きなものがあった。その事について触れたい。

よく市場関係者の間では、ライブドア事件は、日本の新興市場に大きな影響を与えたと言われる。確かに、事件後、新興市場の時価総額や新規上場数(IPO)など減少したが、それだけではない。4月29日の日経・大機小機でも触れられているが、当時の日本の資本市場の歪みや規則の隙間を狙って、本質的なルールを犯していたこと、また当時の業界などの環境がそれを許すものだったことも見逃してはならない。

 本質的なルールとは、市場での取引参加者を守ることで、それは金融商品取引法(当時の証券取引法)において、インサイダー取引・相場操縦・不実表示など不正行為の禁止として定められている。つまり、市場規律と投資家を守ることが第一義なのだが、ライブドアが市場に残した以下の行為の跡は、これらに反するものだった。

●フジテレビと争ったニッポン放送株式の取得に関する問題=企業の支配権に影響を及ぼす株式の取得は、TOBに依らなければならないが、5%以上取得する場合も市場以外から買い付ける時はTOBの対象となる。ライブドアは、割高に買わなければならないTOBを避ける為、当時は市場取引扱いされていた立会外取引で大量の株式を取得。この行為は、そもそものTOBルールの趣旨に反するとされ、その後買付ルールは厳格化された。

●度重なる大量株式分割の問題=当時は会社法の改正で、株式の額面がなくなったり、単元株制度で1株1単元が可能となっており、また東証も一般の上場企業には投資単位の引き下げ要請を行っていた。これを悪用したと言われる株式の100分割などは、目的は株主数の大幅増加を表明しているが、実態は新株の割当日と実際の株券の発行(当時は、ペーパレス化はされていないので現物の株券)の時差を狙って、一時的に極端な株式不足になることを利用した株価操縦的行為として問題になった。本来は株価には直接影響ないはずの分割が、新興企業においては、一時的株価上昇材料として持て囃される状況にもなっていた。

●大量の買収資金を調達するためのMSCB(転換価格の下方修正条項付き転換社債)の発行=元々は再生企業のファイナンス手法として利用されたMSCBだが、新興企業のM&A資金調達に大量に利用したことが間違いだった。間違いの原因の一つはこのMSCBの仕組みだが、転換価格を頻繁に見直し、その時の時価の90%近くまで引き下げる。このMSCBを証券会社などに割り当てるが、これを引き受けた証券会社等は、市場で現物株を売却し転換価格を引き下げるというインセンティブが働く。この間、企業価値が上がる材料が出れば良いが、ただ企業を買うだけでは企業価値は上がらない。つまり、このMSCBによる株価下落圧力と企業価値上昇への取組みのシナリオが描けない中で、大量のファイナンスを行ったことが問題だ。

 以上の3点は、実はライブドアだけの問題ではない。1点目は村上ファンドなどに限られるが、後の2点は、相当数の新興企業が模倣した。また、実際の実行者は新興企業だとしても、売買やファインンスを受け入れた市場や業界側にも問題があったことも、ライブドア事件とともに風化させてはならない。日本の資本市場のプリンシプルを守る責任は、市場と直接の市場参加者にある。

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空売りポジションの集計について
金融危機後、発行済み株式総数の0.25%以上空売りした場合、証券会社を通じて取引所に報告する措置が取られていますが、今回の大震災の影響から10月末まで9度目の措置の延長が決まっています。
これは、あくまでも緊急の市場対策という位置づけでしたが、なぜ2年半以上9度も延長を繰り返すのでしょうか。
また、報告されたものは取引所で公衆縦覧になりますが、あくまで報告者ベースで、銘柄ごとの集計はされません。実際の報告は、1日もしくは2日前で、多少報告日にばらつきがあり、一部未提出と推測されるものもあります。
今一度、この空売り報告の意味を考え、投資家にとってあるべき公表(公衆縦覧の仕方)も考えなおすときではないでしょうか。

以下の簡易集計は、週末時点で提出されているものの銘柄別集計を試みていますが、元々の報告の迅速さ・正確性は提出者にあり、必ずしも空売りの正確な状況を示したものではありませんが、あえて空売りポジション報告の意味を考えるため、公表しています。

投資を勧誘したり、助言する目的のものではありません。

空売りポジション報告の銘柄ごと簡易集計

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