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FX取引の成立ちを易しく考える=その2
2回目の今回は、FX取引の基本的な構成要素について易しく考えてみる。

その為には、FX取引のベースとなる外国為替取引の仕組みからみてみるが、実際のインターバンクの外為市場では、取引参加者が取引額の上限を定めて、売値と買値を同時に取引の場(概ねウェブ上の専用画面)に提供する。例えば、ある銀行は1ドル=81円00銭-81円01銭と提示するが、これを見た他の銀行が1000万ドルを81円00銭で買うことが出来る。この取引は、2営業日後に決済することを前提としていて、スポット価格と言われていて、現在のドル円レートが幾らと言った場合は、この価格を指している。しかし、実際に買ったドルが必要なのが一ヵ月後だとすると、このスポットで買ったドルの決済日を延長しなければならない。

作業としては次の様な手順(考え方)となる。
・取引をした2営業日後にドルを一旦受取る。(スポット取引の決済)
・受け取ったドルを同値で売って、一ヵ月後に新たに買い戻す新たな取引を行う。(スワップ取引の決定)
・このスワップ取引は、概ねドルと円の金利差に影響されるが、もしドルの金利が高ければその分だけ一ヵ月先のドルは安くなる。例えば上記の例でスッポと取引で買ったドルが81円00銭なら、1ヵ月後のドルは80円90銭というふうに金利差分だけ安くドルを購入することが出来る。

この様な取引は、スポットの取引を行った時点で、同時に決めてしまう事も出来るし、決済日までの間にスワップ取引部分を新たに決めることも可能となっている。
もし、一ヵ月後にドルを使う予定が半年先に延びた場合には、その時点でドル円の半年間のスワップ取引を行う、その結果、更に半年先のドルは80円30銭まで価格が引き下げられる。

 一方、個人投資家相手のFX取引の方は、以下の様に外国為替取引とは異なる
・例えば、ドルを買ったとしても、必ずドルを売る(反対売買を行う)。
・その反対売買は、取引を受けるFX業者にとってもいつ行われるか分からない。(場合によっては、個人投資家自身にも分からない場合がある)

この為、FX取引を行う個人投資家は、反対売買しない取引を、スワップ取引を使って毎日延長する必要があったが、この事を何万人もいる投資家とFX業者の間で行っていくのは不可能だ。その為、FX業者は、個人投資家が反対売買していない取引を、自動的に延長する契約にしておく。個人投資家からすると、スワップ取引が自動的に繰り返えされて、決済が無期限に延長される。無期限自動スワップ取引とも呼べるだろうか、この仕組みがあって、個人のFX取引が可能になった。今では、決済するまで毎日行う取引延長の為のスワップ取引相当分を、“スワップポイント”として個人投資家の保有するFX取引ポジションの価格から差し引いたり加えたりする。

以上の様な契約上や決済上の工夫が、個人向けデリバティブ取引としてFX取引を可能にしている。またこの事が、もっと取引を大きくしたいというニーズを生じ、個人が行うレバレッジ取引の拡大に繋がり、更にレバレッジ取引における個人のリスクを管理する必要性の高まりから、ロスカット取引の徹底を浸透させている。この一連の流れは、個人の金融取引におけるイノベーションとも言ってよく、既存の金融業界は、この変化には今後も注目していく必要がある。
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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

FX取引の成立ちを易しく考える=その1
 物事は単純化した方が見えやすくなる。そう思って、FX取引の仕組みについて易しく考えてみたい。
先ず、FX取引と外国為替取引は異なる。FX取引は外為証拠金取引で、外国為替取引(Foreign eXchange Market)の方は、外国通貨を銀行間において相対で取引する(相対といっても殆ど電子取引)インターバンク・マーケット=所謂外為市場である。マスコミなどで流される、現在のドル・円相場という場合はこちらの外為市場の取引値段を示している。企業や個人が為替の取引をする場合、この外為市場の参加である銀行と相対で取引を行う。少し諄くて申し訳ないが、企業や個人が外為市場で直接取引することは出来ない。
しかし、次の様な手順で、外為市場で取引されている値段をベースにして、あたかも直接参加しているように取引するのがFX取引である。

・取引1=個人投資家とFX業者の相対の外国為替取引
・取引2=FX業者と取引をカバーする業者(外為市場に直接参加することが出来る金融機関)の相対の外国為替取引
・取引3=カバー業者がインターバンク市場で他の市場参加者と行う相対の外国為替取引
※上記のFX業者を輸出入業者、カバー業者を銀行に置きかえると、通常の輸出入に伴う外国為替取引(実需取引)となる。

なお、通常のインターバンク市場における取引単位は、通常100万通貨単位(ドル取引なら100万ドル)なので、上記の取引3に於いてある程度の規模の取引規模が必要となってくる。その為、カバー業者は少ない担保(証拠金)でもFX業者からの取引を受ける。この取引はレバレッジ(元の資産である証拠金に対して)の掛かった取引となるが、相対取引なのでカバー業者がFX業者に対してレバレッジ分の信用を供与することになる。FX業者は、このカバー業者とのレバレッジ取引を利用して、個人投資家にレバレッジを掛けた取引を提供する。

ただしこの部分は、FX業者が個人投資家に対して彼らの求める(現行では証拠金の50倍まで、8月より25倍に規制強化)レバレッジ分を信用供与することになるので、取引する個人投資家の損益管理=ロスカット・ルールの徹底が必要になってくる。
FX業者としては、基本的には個人投資家の損失を預かった証拠金以内に収めようと強制的なロスカット・ルールを定め、投資家にもそれ以前の水準でロスカットの注文を入れるよう誘導する。

 また、取引1~3までがイコールとなるわけではない。つまり、取引2に於いてはFX業者、取引3においてはカバー業者が、それぞれの取引をカバー業者や外為市場に取り次がない場合がある。例えば、
・1ドル81円00銭のドル売りと、81円01銭のドル買いが同時に個人投資家から入った場合、FX業者はこの取引を相殺してしまい、1銭部分が収益となる。
・上記ほど単純でなくても、ある一定範囲での売りと買い注文があれば、相殺して顧客注文だけを成立させカバー取引を行わない場合がある。(一部、FX業者が自己で向かうようなケースもある。)

これ等の対応は、マリーと呼ばれFX業者及びカバー業者の大きな収益源となっているが、取引所取引ではなく相対取引なので、実際に個人投資家のFX取引が外為市場に流れる必要がない。つまり、FX取引は、インターバンクの外為市場の値動きを指数と見立て、FX業者とその指数を取引する差金取引という事も出来る。この仕組みは、CFD取引と全く同じになる。

現在、日本の外為市場におけるFX取引関係分(つまり取引3の部分)は2割に達することもあると言われているが、これは株式市場における個人投資家の売買シェアと同程度の割合となっている

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

ファイナンスと自社株取得:資本市場の入りと出るについて
資本市場の機能は、
【流通市場】株式や債券などの売買の場を広く投資家に提供すること=有価証券の流動性の確保
【発行市場】企業の資本(資金)調達を可能とする場の提供
に分けられるが、今回の金融危機以降、出来高の細る流通市場に比べて、発行市場の方は調達金額ベースでは高水準だった。特に株式の公募増資は、バブル期以来の水準となっているが、企業数は少なく、結果として業界を代表するような企業の大型のファイナンスが相次ぎ、短期的には市場の需給関係に大きな影響を与えた。今後も、震災需要対応などで、高水準のファイナンスが予想される。
 一方、上場企業の自社株取得は、金融危機以降大きく縮小していたが、上場企業の手元資金は増大しているので、今後の増加が期待される。
 この市場全体の入りと出、即ちファイナンスで供給される新株式と自社株で吸収される株式それぞれの動向が注視される。

☆ファイナンスと自社株取得の状況

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

ネットで投信を売るということ、買うということ
投資信託を販売することで、リテール対面の証券会社は投信を含む金融商品の販売業へ変わっていったが、嘗ての本業だった株式の売買について、個人投資家の取引の8割以上(ネット大手5社利用分では2010年の売買代金ベースで71.5%)がネット利用となっている。一方、投信のネット販売の方は、2010年の設定額ベースでネット大手4社(松井は投信販売を行わない)分1.6%(3713億円)となっていて、ネット証券側からすると、もっとネットで投信は売れるはずだということで、投信販売の為の共同プロジェクトが3月から始まっている。リテール対面の証券会社の立場は、投信の販売は個人のある程度まとまったお金を、投資信託という難しい商品に投資してもらうので、しっかり説明しなければということで、営業員が1時間近くかけ内容とリスクの説明を行う。その代り、3%程度の販売手数料を投資家からいただく。ネットで投信を売るという事は、このリテール対面営業で行っているプロセスを、投資家自らが行うように仕向けるという事だ。その為に、販売手数料は課せられない。(投資家が自ら選ぶので当然だが)

 難しい金融商品(株式や債券に比べて)と言われる投信は、その内容を説明する目論見書が100ページを超えるものもあり、これを本当に投資家がネット上で読んで理解し投資判断を行うことが可能なのかというのが対面営業側(証券・金融機関)の言い分となっている。

しかし、以下の様な販売環境の変化は、投信のネット販売を促進する可能性がある。
○昨年の7月から投信目論見書(交付目論見書)が簡素化され、記載内容も平易化が試みられている。
○ウェブ技術の発達で、営業員が今まで対面で行っていた投信内容の説明は、ウェブ画面上の動画を使って、運用会社自らが行うことが可能となっている。(但し、投資家がクリックする必要がある)

 ただ、これらは個人投資家がネット上で投信を選んでからの話で、実際に選ぶまでのプロセスが必要だ。このネット上での投信の選択については、情報ベンダー・ネット証券其々が工夫を凝らして対応しようとしており、投資目的や売れ筋、投資テーマ別に選択させ、目的の投信に辿り着く。そこで初めて目論見書を見て説明を聞こうかという事になるが、このネット上での投信選択の仕組みは、まだ目論見書等がネット上で全て開示されていないので、選択から実際の購入行動へ繋がる部分が未だ試行的に思える。

 また対面営業では、投資家や営業員自身が投信を選択して売るという事が少ないが、これは投資テーマを決めて、このファンドを新規設定し、一定期間に集中して販売活動を行うという方法が日本では定着している。

 この為、投信のネット上での販売で、どの様にマーケッティングを行っていくのかが課題となっていたが、ネット大手4社の共同プロジェクトでは次の様な試みがなされている。
・4社で共同の投信販売マーケティング活動を行う為に、共同ウェブ画面を立ち上げ、イベントや書籍出版・広告記載などを共同で行う。
・共同販売の投資信託を新たに設定し販売する為に、運用会社を集め新投信のコンテストを行う。
・このコンテストを行う過程で、各社の注力される運用テーマ明確化され、それに沿ったプレゼン資料も作成される。
・選択された運用会社によって、Web上での投信の運用方針が明らかにされ、その投信の内容等について詳細な説明の動画・資料(目論見書等)が提供される。また販売開始に当たり、関係各社共同の宣伝広告を行う。

 注目しているのは、このコンテストから投信共同販売広告までの動きがイベント化されて、個人投資家に対するプレマーケティング活動となっていることだ。ネットでの投信販売も、個人投資家の選択に頼らなければならないが、今まで主要な証券会社と運用会社の間で行われたいたような事を、イベント化しその選択過程を明らかにすることで、個人投資家の注目を集めていく販売手法に期待している。

但し、投信のネット販売で最もメリットを受けるのは、ネット証券ではなく、このネット販売に対応する運用会社の方ではないだろうか。
金融審議会再開への期待=日本の証券業は生き残れるか
金融危機以降、3年近くが経過しようとしていますが、この間証券や金融機関の株価は歴史的低水準にあります。つまり、日本の産業として証券や金融が、市場から評価されていないという事ですが、この間、市場そのものは大きく変わっています。

・株式の完全ペーパレス化
・取引の高速化対応
・商品など投資対象の多様化
・デリバティブ取引の拡大・進化 など

つまり、市場インフラや手法は進んでいるのに、それを使いこなすプレーヤーの不在で、日本の投資家が本当にメリットを受けるような仕組みに、日本の資本市場が進んでいるのかどうかといった疑念があります。

6月24日から始まった金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」では、日本の金融業が産業として成長戦略を描くことが出来るかどうかとの視点で議論されるようです。(日経)

中堅・中小及びネット証券が、生き残って行く為には自らの努力が必要なことは当然ですが、証券業が規制業種であることも事実です。
その意味で、証券行政の行方は各社にとって重要なことでしょうが、金融審議会での議論に、業者としての生き残り戦略を見つけて行かれる事を願っています。

【参考資料】我が国金融業を取り巻く内外の経済社会環境の変化
【参考資料】我が国金融業の中長期的な在り方についての検討

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大規模ファイナンスとしてのライツ・イシュー事例:タカラレーベンの場合
最近、日本語の定義が曖昧になっていて、“新体制”というのは、普通ならトップを替えて新しい体制を作る事を言うが、トップ以外を替えて行うことも含むようだ。普通の個人の感覚からすると、トップが替わらなければ、体制は新しいと言えないと思うが、この様な曖昧さは子供の教育に良くない。

 大規模ファイナンスの“大規模”についてはもう少し質の良い曖昧さだろう。この大規模ファイナンスとは、大企業の何千億円を超す公募増資を指すだけではなく、大規模なダイリューション(既存株主の持分の希薄化)を引き起こす公募増資や第三者割当増資を指す。日立やメガバンクが数千億円調達することを指すだけではなく、時価総額90億円程度の会社が50億円程調達(希薄化率約36%)するような場合も含む。この後の方の資本調達を公募増資で行えば、普通の大規模ファイナンスだったが、タカラレーベンの場合、大規模なダイリューションを起こさないで、大規模な割合で発行株数を増加させるような大規模ファイナンスを昨年3月~5月に実行した。所謂、日本最初のライツ・イシューである。
(更に日本語を曖昧に使い、読まれている方々には申し訳ありません)

このタカラレーベンのライツ・イシュー事例を、今一度見直してみたい。

☆ライツ・イシュー事例:タカラレーベン
 
・昨年3月5日、株価559円の時に、株主全員に1株につき1ライツ(1株300円で新株を購入する権利=新株予約権)を付与した。
・そのライツは東証に上場し、昨年4月1日から5月23日まで33日間売買された。
・同年5月末までに、95.7%のライツが行使され47.5億円が調達された。
・失権(未行使)となったライツは71万ライツで、全体の4.3%。
事実としてはこれだけで、初めてのライツ・イシューは大規模ファイナンスとしては成功したと言えるが、株主にとっては希薄化を起こさずに選択肢が広がった意義が大きかった。

【通常の大規模な公募増資の場合の株主の選択】
A:保有株式を一旦売却(値決めにかけて下落する場合が多いので)
B:そのまま保有し続ける
A´:Aの後、値決め後、買い戻す。(若しくは公募株を購入。但し、公募が人気化した場合には購入できないリスクもある。また、新株を販売している証券会社に口座がなければ、申込みが間に合わない場合も。)
※A、A´、Bの何れの場合も、大規模な希薄化は起きる。

【ライツ・イシューの場合の株主の選択】
A、A´(ライツ・イシューの場合、値決めがないので権利落ち後の買戻し)、Bの各選択は可能だが、加えて、
C:割当られたライツを、時期を見て、市場で売却
D:ライツを保有し、権利を行使して新株を購入
※希薄化は原則的には起きない。


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大規模なファイナンスが成功するには
日本の企業は会社法(2005年:商法→)によって成り立っているが、この会社法では企業の資本政策に関して、定款にある程度のことを記載しておくと、取締役会でかなりの事が出来るようになっている。例えば、発行済み株式総数の4倍まで可能な授権株数の範囲であれば、新株を発行することや、反対に自社株取得枠の設定を任せること、種類株の概要を定めておけば具体的な発行が決定できることなど、取締役会に授権された資本政策上の権限は大きい。だから企業が大規模なファイナンスを行うことは、法制度的には何の問題もないのが現状だが、さすがに株主の権限や価値を大きく損なうようなものは、実務的に制限すべき(禁止するということではない)という考え方が主流になっている。
例えば、大規模な第三者割当で支配株主が変わるようなものは、本当に株主の了解が無くて良いのかとの問題から、取引所ルールにおいて一昨年の8月から、25%以上希薄化する場合は、独立した機関の意見書か株主総会決議が必要としている。一方、同じ大規模なファイナンスでも公募増資はどうかというと、これを実務的にも規制するものはなく、全てを市場の評価に委ねるということのようだ。

 この事自体は正しいと思うが、既存株主が持分の希薄化と共に、株式の下落(株主としては、一時的であって欲しいが)を受け入れなければならない。この株主が受けるデメリット対して、企業がどの様なメッセージを発信していくかが非常に重要な事だ。その結果が、大規模な公募増資の成功か否かのキーになっている。

○日立製作所(6501)は、2009年12月に希薄化率34%以上となる大規模なファイナンス(公募増資と新株予約権付社債(CB)の発行を実施。公募価格(230円)
【資金調達の目的】(記者発表文より)
・社会イノベーション事業の中心となる情報通信システム事業および社会インフラ事業ならびにこれらを支える高機能材料事業等において、様々な施策を実施することにより、収益を安定的に増加させていきます。
・撤退・売却を含めた事業の再編を通じて安定的な高収益構造の確立を図っています。
・グループ会社間の連携を強化するとともに、より緊密な資本関係を構築し、事業戦略およびその他の方針の速やかな実施を可能にすることで競争力および収益性の向上を図ります。具体的には、現在、社会イノベーション事業の中核となる上場子会社5社を完全子会社とすべく必要な手続を進めています。
以上が、ファイナンス時点での資金使途に関するディスクロージャーだが、その後の日立の株主や投資家に対するディスクロージャーは徹底されており、大震災の影響は大きいものの業績予想などにも対応している。

●野村ホールディングス(8604)は、2009年に以下の2回の大規模な公募増資を実施。
・3月公募:38%の希薄化、公募価格417円【資金調達の目的】(記者発表文より)
日本を含むアジア及び欧州におけるビジネス基盤の強化のため、全額をそれぞれの地域における当社の連結子会社への出資及び貸付けに充当
・10月公募:28%の希薄化、公募価格568円【資金調達の目的】(記者発表文より)
従来から強化を進めている日本を含むアジア及び欧州に加え、米国におけるビジネス基盤の強化のため、全額をそれぞれの地域における当社の連結子会社への出資及び貸付に充当
その後、野村のディスクロージャーに関して内容・頻度とも低下していて、慣行とは言え業績予想も開示されていない。

大規模な公募増資の事例を2つ上げたのは、大規模なファイナンスを実施する企業は、先ず資金使途をちゃんと株主に説明する必要があるし、その後の情報発信も重要となることを指摘しておきたかった。
ディスクロージャーを充実していく事を、企業に、特に大規模なファイナンスを実行する企業に対して、お願いしたい。

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空売りはいけない行為なのか
 株式を保有しないで売却する“空売り”は、するべきではない行為なのか。もし、“空売り”がするべき行為でないとすると、買い付ける資金もないのに行う“空買い”は問題ある行為なのか。どちらも、仮需用を創出し、市場に流動性を与えるが、ルールは如何にあるのか。

 結論は、金融商品取引法第162条第一項には、有価証券を有しない場合や借り入れて売り行為を“空売り”として、この行為を禁止しているが、内閣府令(有価証券の取引等の規制に関する内閣府令)ではこの条項を適用しない取引を定めてあって、結果的には普通の投資家が利用できるようなものは、殆どこの禁止規定を適用しない。つまり、空売りは原則禁止なのだが、市場の流動性向上に為に必要だと思われる範囲で行うことが可能となっているという、普通の投資家には解り難い論理構成となっている。
 空売り禁止の適用除外となるのは、信用取引や貸借取引、有価証券先物取引や債券関係取引など内閣府令第九条の3には、全部で36項目も定められている。
 一方、“空買い”に関する規制は何もなく、空買いを実行する投資家は、証券会社か銀行が購入相当資金を貸してくれる範囲で買い付けることが可能だ。

しかし、“空売り”にしろ“空買い”にしろ、“空”の部分は株式か資金を誰かから借りてきて、決済日には株式と資金の受け渡しを実行しなければならない。この“空”取引に関する法規制も、分かり易く言い切ってしまえば、ちゃんと受渡し決済できるなら、市場の取引が増加したり、流動性が向上するはずなので、行ってよいという事になる。ここまで読んでいた方々には、“空売り”の言葉遊びの様な説明で申し訳なく思うが、問題としたい“空売り”は次の様な場合だ。

①発行済み株式総数の2~3割以上となる大規模な公募増資を公表前に知り、対象となる企業の株式を空売りする。
②同様に大規模な公表後に知り、対象となる企業の株式を空売りする。

どちらも同じ空売りだが、①は当然公募増資という重要事実を事前に知って行うインサイダー取引になるので犯罪行為だが、②は決済できる方法で行うなら、適用除外で認められた“空売り”ということになる。

 しかし、日経によると金融庁は②の方の一部決済方法について規制を今秋から導入する方針だという。その規制内容は、公募増資公表後に空売りした投資家に公募株を与えてはいけないというルールだ。正直に書きたいが、このルールの目的が良く分からない。
若し、②の空売りそのものが問題なら、これを禁止すべきだが、この行為はOKで、但し空売りした投資家には公募株を割り当ててはならないという。②で空売りした投資家は買い戻す以外にないということを言いたいのかも知れないが、逆に公募を割り当てない理由は何なのだろうか。②の行為が正当な取引行為とした場合、その理由が見当たらない。

 唯一、理由として想定できることは、企業の公募増資の値段を引き下げる圧力を少しでも取り除きたいということかも知れないが、増資の規模や目的で売りも買うのも投資判断なので、認められた空売りの方法を一時的に停止することは、むしろ市場取引ルールの一貫性から問題だ。本当に問題なのは、投資家や株主に評価されないような公募増資を行う企業側かも知れない。これらは、市場取引の中で判断されるべきではないだろうか。

 昨年夏以降、欧米の機関投資家が問題としたのは、むしろ①に対する疑義で、その背景となったのは大規模なファイナンスを行う際に、欧米の一部投資家にその株の需要を公募増資公表前にヒアリングする引受慣行(ソフトヒアリング)の方で、こちらの方を証券検査等で厳格に行うべきことが市場を守るということだろう。

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ファイナンスの季節を迎えるにあたり
もうすぐ6月も終わると、公募増資などファイナンスの集中しやすい7月を迎える。これは、3月期決算会社の株主総会が終わり、新年度の資本政策を実行しやすくなる時期ということだが、引き受ける証券会社の方でも、前期決算が確定後その内容を確認する引受審査を2ヵ月程度は実施する必要があるので、7月は新年度でのファイナンス公表が集中しやすい。

 このファイナンス機能は、上場会社が市場からリスクマネーを調達する重要な機能だが、株主にとっては多少の痛み(時としては大きな痛み)を伴うのが最近の日本市場の特徴になっている。まだ日本全体が成長期にあったバブル期以前なら、企業の積極的な事業戦略を支える公募増資など資金調達手段は、それ自体が市場から好材料視されたが、今は殆どその様な事もなくなった。一旦の売り材料若しくは空売り材料というのが、今の一般の日本企業ファイナンスに対する投資家の評価だろう。

 少し最近のファイナンス(公募増資+第三者割当)の状況を見てみると、以下の様になっている。
【金融危機後の公募増資の状況】
・2009年度:55社 5兆7296億円 (1社平均:1041億円)
・2010年度:49社 2兆7756億円 (1社平均:566億円)
※日本証券業協会資料より

ちなみに、過去最高額は東証要覧によるとバブル期の1989年227社5兆8302億円(1社平均:256億円)となっている。しかし、この時は株価平均が現在の4倍であること、1社平均の調達額が最近の半額から4分の1程度だったことを考えれば、今の株主が負う希薄化や株価下落リスクの数分の1程度だった。

今回の金融危機以降、日本の発行市場では大型の公募増資が増え、企業が戦略的に変わろうとする時に必要とするリスクマネーを、大量に一部大企業に供給している。これ自体は日本の資本市場にとって重要なことで、その機能を果たしていると言える。しかし、それを受けるとめる流通市場の方が数分の一に縮小していて、結局既存株主の犠牲の上に増資するケースも見られるし、大型の公募増資なので、一時的には同業他社の株価にも影響を与える。
だから公募増資するという情報に対して、今だと殆どの投資家が売り材料として扱う様になっている。昨年夏、欧州の機関投資家が問題としたのは、この公募増資の情報が企業の公表前に流れる様な日本のファイナンスの仕組みに、問題があるということだった。

誤解無き様に言いたいが、大量に公募増資する企業が問題だとか、公募の情報を聞いて空売りする投資家が問題という訳ではない。企業が生き残りを掛けたファイナンスであれば市場は其れに応えるべきだし、公募増資を空売り材料とする投資判断は、投資家自身のもので市場はこのニーズにも機能を提供するべきだ。問題なのは、発行規模のニーズと流通市場の機能のバランスの悪さで、流通市場のキャパシティを超えて公募株の流通を試みたり、空売りの為に公募増資の材料を探したりすることで、この責任は企業や投資家にあるのではなく、大きな意味の市場運営(発行市場と流通市場及びそのリンク)の問題だと考える。

では、具体的にどの様な対応が可能かは次回以降に。

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平成23年度金融商品取引法改正その2=証券関連部分
 本年度の金融商品取引法改正で、ライツ・イシュー=ライツ・オファリングについては既に前回解説したが、その他証券業務に関連する部分についても、その期待される効果を投資家の視点から見てみたい。

≪個人投資家にも関連する部分≫
【発行登録における発行条件決定時の発行登録追補目論見書交付義務の免除】
 これは、社債などの発行の際、次の3段階において資料を投資家に配布する必要がある。
・発行する債券などの上限額を決めておく→発行登録書
・実際の年限や発行額を決め、発行条件を利率1~1.5%と幅をもたせて、事前の募集活動を行う→訂正発行登録書→訂正発行登録目論見書として投資家への配布
・発行条件を正式に決定、例えば利率1.3%。正式な募集活動となる→発行登録追補書類→発行登録追補目論見書として投資家へ配布
 この後ろ2つの目論見書の記載内容の違いは、利率が確定して記載される部分だけだ。つまり、現状では社債などの発行の際、証券会社は目論見書を2度配布する必要があるが、個人向け社債などの場合、配布数が数万単位になることもあって、発行者・証券会社ともコストが掛かっていた。
 これを、事前の募集活動を行う時、社債を発行する企業がホームページ上で発行条件として利率を公表すれば、後ろの方の発行登録追補目論見書の配布が不要となるよう改正された。(来年の5月まで施行)

【無登録業者による未公開株等の取引に関する対応】
 この部分は、未公開株詐欺対策になる。詐欺的行為は、対象が未公開株であれ、健康器具であれ、起きうる行為なので、金商法との関係が一般には分かり難いところだが、逆に金商法の枠(無登録業者が未公開株を売った場合、その契約は無効=民事ルールの創設、)を被せることにより、以下の効果があると金融庁はコメントしている。
国民生活センター等による、無登録業者に対する代金返還交渉の仲介が容易にする
裁判での被害者の立証責任が軽減される
裁判所による無登録業者の資産の散逸を防ぐための保全命令の迅速な発出が可能なる 等
また、この部分の罰則が引き上げられ(この部分だけ5月20日から)、違反行為があった地の地方裁判所でも申立てができるように裁判管轄が拡大されている。(以上は、本年の11月まで施行)

【投資助言・代理業の登録拒否事由への人的構成要件の追加】
 この部分は金商法が制定される時、独立したプロの投資アドバァイザーを米国の様に育成しようと目論んで、参入基準を緩和した部分だが、この4月末時点で投資助言・代理業者は個人も含めて1118社ある。最近の財務局の検査では法令の遵守態勢に問題もあるところが出できたのと、暴力団などとの関係を排除する目的で、投資助言・代理として登録する際、法令等の知識や証券業務に関する経験等のある役職員を必要するように改正した。(来年の5月まで施行)

≪プロや海外投資家に関連する部分≫
【プロ等に限定した投資運用業の規制緩和】
 ファンドを運用するのは投資運用業だが、それを自分で売る場合、原則第一種金融商品取引業の登録も必要となり、このことが投資運用業の立ち上げの制約となっていた。この部分について、販売する投資家をプロの投資家に限定した場合に限り、登録要件を緩和する新制度が創設された。(来年の5月まで施行)
・資本金基準5000万円→1000万円
・取締役1名以上と監査役1名以上の監査役設置会社の形態でも良い
・第二種金融商品取引業とみなし、自ら運用を行うファンド持分の販売勧誘が行えるように特例を整備

【資産流動化スキームに係る規制の弾力化】
 現行の資産流動化法の仕組みは、資産流動化計画の変更手続等が煩雑で、規制が過剰との指摘があったが、この資産流動化計画の変更届出義務・手続を緩和し、資産の取得に係る規制を見直した。また流動化応用スキームとして、特定目的信託の仕組みを利用したイスラム債の発行を促進するための制度整備を行った、

【英文開示の範囲拡大】
 海外企業の日本市場での上場を後押しする為、発行者に関する情報に関して、海外で既に英文で開示されている情報があれば、敢えて日本語にしなくともその部分を有価証券届出書で利用できるように改正した。(来年の5月まで施行)

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証券会社の今=危機感なき転換点
 証券会社のリテールビジネス環境はそれほど悪くない。投信もある程度売れるし、外債の販売環境も日本の低金利継続で良好だ。この部分はネット証券以外では、収益の半分以上を占めるようになっているので、別に日本の市場が低迷していても、金融商品の販売者としては成り立っている。しかし、これだけでは、世間一般が期待する証券会社としての役割を果たしているとは言えない。主要なリテール証券の前期決算資料を取り纏めていて、以下のような事を感じたのでコメントしておきたい。(以下は筆者の個人的視点なので、投資判断には役立ちません。また投資及び助言に利用しないでください。)

【ポイント1:証券会社が今、歴史的な転換点にあるのではないか】
 何も株価が安いのは証券会社だけではないが、以下のチャートの様に証券会社にとって大きなビジネスモデルの転換点になった前回の金融危機の株価水準を割り込んでいる。
●野村の1984年からの長期株価チャート
・バブル前の安値:533円(1984年7月)
・前回の金融危機時の安値:803円(1998年10月)山一証券等の破綻時期
(他の上場証券はこの時期に歴史的安値を付けている)
・今回の金融危機後の安値:403円(1998年10月)

【ポイント2:ホールセールのビジネスモデルが分かりにくい】
ホールセール部門が何で稼いでいくのか、戦略が明確化されていない。
・ファイナンスの関連する部門は、リーグテーブルという業界内順位を競うものが開示されている戦略だが、それがどの様に収益化されたり、企業や投資家にメリットがあるか説明されていない。
・M&A業務は成長しているが、この部分は金融機関など他の競争者との競争が厳しくなっている。
・全体としてトレーディング部門の戦略が見えない。野村は、リーマンのアジア・欧州地域部門を買収してこの分野を強化したとされる。野村の資料によると、東証での売買高シェアは、買収前の2008年4月の5.9%から直近の2011年4月では13.9%に倍増させている。しかし、それがどの様な収益上の効果を及ぼすのか、分かり難い。

【ポイント3:相対的にディスクロージャーが悪化しているのではないか】
業界の人間として非常に残念だが、証券会社も上場会社であれば、自らのディスクロージャーの徹底をお願いしたい。多くの株主がいるのに、業績予想さえ出せない事は問題だと認識してほしい。また、担当されている方々には申し訳ないが、大手3社の決算説明では次の点が投資家を失望させている。
・野村(リテールに収益を頼りながら、その拡大戦略が見えてこない)
・大和(安定収益とコストカットという当たり前の戦略すぎて、新規性が見えない)
・日興(銀行との協働成果の誇示以外、戦略性が見えない)
※以上はあくまでもディスクロージャー資料から受けた印象

今回の金融危機後、業界としては余り強い痛みを感じないうちに、証券会社は歴史的な転換点に追い込まれているように思えるが、日本の復活が日本の資本市場から始まることを期待した。

☆リテール証券の現状

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個人投資家とは=それぞれの立場の定義
市場は多様な参加者によって成り立っている。また市場そのものも、取引に参加する投資家の多様性を確保する努力がされないと、バブルやクラッシュのリスクが増す。例えば今回の金融危機の主因となるCDS市場の実質的な崩壊は、その取引が一部の金融機関やファンドに限られていた為、ある分岐点で投資行動が一方的に偏ったからだ。かたや今回の大震災で日本市場が崩れていないのは、ロスカットしなければならない機関投資家に対して、押し目買いをする海外投資家や個人投資家がいた事に依る。その市場の多様性を支える個人投資家の内容も、また多様なものだ。ここで、個人投資家を無理に定義付けするつもりもないが、現状どう使われているか商品ごとに見てみたい。

【株式】個人投資家は約1600万人いるが、次のように取得方法は異なる。
・持株会やストックオプションなどでの自社株保有者
・長期投資の投資家(この層は資産デフレの対象)
・信用取引を利用するアクティブな投資家層(個人投資家層の1~1.5割程度か)
・所謂デイトレーダー(アクティブな投資家層の更に1~2割か)

【債券】
・個人向け国債や社債の投資家層
・ごく僅かだが、国債現物・先物を使ってトレーディングする投資家層
・最近増加している外債の購入層
・証券会社に薦められ、仕組み債を購入する層

【投信】
・証券会社や金融機関に薦められて購入する層
・401Kなどで、あまり意識せずに定期的に購入する層
・ETF(国内外の上場投信)を株のようにアクティブに投資する層
・投信ブログなどで情報を共有しあい、インティックス投資や投資コスト低下を個人レベルさげることを目指す投資家層

【FX取引】(これ自体はデリバティブ取引だが、日本では個人の投資手段として個別に確立している)
・チャート主体で基本戦略は逆張り層
・通貨間の金利差で利益を得ようとする層
・他の運用資産(外国株・外国債券)のヘッジとして運用益を目指す層
・トレーディング自体をゲーム感覚で行う層

以上の個人投資家層は現在それぞれ余り重ならずに、各々の個人投資家層として存在している。
何故、この様な分類をしたかというと、次の個人投資家に関する2つのレポートを読んだ事から、其々がいう個人投資家とは誰のことを指すのか、定義してみたくなったからだ。

〈個人投資家の動向について=“証研レポート6月号”二上氏〉
大震災後、個人投資家の各商品別の取引動向に関して記述されているが、特に先物・オプション取引が大幅に減少していることが指摘されている。
〈15年後、個人が投資できる取引は=日経ヴェリタス6月12日号“米バロンスから”〉
この10年~15年で個人が利用できる取引手法はデリバティブ商品中心に多様化してきたが、この先15年ではどうか各識者のコメント。
(※正確な記載内容は記事をお読みください)

15年後の事は正直分からないが、個人投資家が多様性を保ちながら成長して行く為には、上記個人投資家の定義の様に、現在別々に存在している個人投資家の在り方が、複線的に結びつくことでなないかと考える。つまり、あれもこれも出来る投資家が個人にも増加するだろうということだが、そのあれもこれも繋げる道具として、ETFとCDF(デリバティブ)に期待している。

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平成23年度金融商品取引法改正その1=利用が期待されるライツ・イシュー
もう大震災から三ヵ月が経過するが、その間に市場は復興需要に対する期待と電力・原子力発電所問題に対する不安の間で揺れ動いている。改めて政策やそれを決定する政治の重要さを実感している市場参加者が多いと思われるが、その間にも今年度の金融商品取引法改正案が国会では5月17日に成立している。この改正案は、概ね半年から1年以内に施行されるが、このうちライツ・イシュー=ライツ・オファリングに関係した部分について、その目的に沿ってやさしく考えてみたい。

【ライツ・オファリング(新株予約権無償割当てによる増資)に係る制度整備】
これは企業の大規模なファイナンスを実施しやすくするものだが、結果的には既存株主にメリットが大きい。現在の様な株価水準ではどうかと思うが、今後の震災需要を睨んで企業のファイナンス需要は増えると思われる。また、3月期決算会社の株主総会が終了する7月は毎年の様にファイナンスラッシュとなる。その為、日本の株式市場は夏場にかけ需給関係が悪化している。勿論、企業にリスクマネーを供給するのは資本市場の大切な機能だが、大規模なファイナンスでは、それが公募増資であろうが第三者割当であろうが既存株主の持分が希薄化し、株価下落という洗礼を受けさせられる。時としてこのファイナンスが株式の売り材料化して、昨年は欧米の投資家からも問題点を指摘されていた。
この問題への対応策として欧米では一般的なファイナンス手法であるライツ・オファリングが期待されている。その仕組みは、株主に対して無償で新株予約権を割り当て、増資に応じる株主は新株への払込を行うが、株主は増資に応じなくも、割り当てられた新株予約権を市場で売却することで、株価下落の経済的不利益の一部を補うことも可能となる。昨年の3月にタカラレーベンが実施したものが日本での第一号とされるが、次の様な技術的障害も指摘されていた。

A:株主にライツ=新株予約権を無償で割り当てても、その全員に目論見書を配布しなければならないので、企業側のコスト負担が増加することと、目論見書の内容を周知する為の不作為期間が法的に必要な為、ライツを行使するまでに日時が多くかかる。
B:ライツの一部が行使されず、企業が必要とする資金が集まるかどうか確定できない場合も想定される。そのリスクを避ける為に、行使されなかったライツを一旦企業が取得し、その分を証券会社が引受けて売出す方法もある。しかし、これを引き受ける証券会社サイドの実務的対応などが不明とする考えが業界内にあった。
〈証券会社が不明とした点〉
・引き受けるライツの量が多い場合、大量保有報告やTOB規制など発行済(新株予約権を含む)の5%以上の保有を規制するルールに抵触するのかどうか

これらに対して、改正案では次のような措置が可能となる。
○株主全員に対して目論見書を作成して交付する義務を、不要とする。通常、投資家に配布する目論見書は、その内容の大部分は有価証券届出書がベースとなって作成されるが、このライツ・オファリングに関しては、この有価証券届出書が金融庁に開示システムであるEDINETで閲覧できることを日刊紙に広告すれば、目論見書の作成・交付は不要とされる。その為、ライツの行使開始期間を7日程度前倒しすることも可能となるし、株主が数万人以上いる企業にとって億単位の費用が想定される目論見書コストを節約できる。

○投資家が行使しなかったライツを、証券会社が一旦企業から買い取って売り出す行使を引受行為と定義することで、5%ルールに証券会社が抵触することが避けられる。ただし、当該証券会社は通常の引受行為と同様に引受審査が義務付けられる。

これらの技術的な改正が、今でも出来るライツ・オファリングの増加に繋がるかどうか、一般の投資家や株主には分かり難いことだろう。しかしそれは、ファイナンスを提案する立場・ライツの売買を説明する立場・ライツの行使を説明する立場・新株について販売し直す立場・企業への投資判断を助言する立場、それぞれの局面で証券会社が市場仲介者として努めることにかかっている。

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“被災地応援ファンド”に見る事業ファンドの可能性と限界
 “みんなからお金を集め、○○の事業に投資を行う”という非常に広範囲で曖昧なファンドの定義の中には、国家が外貨準備などの運用を行うSWF(Sovereign Wealth Fund)から、町のラーメン屋さんに投資する事業ファンドまで様々なものがあるが、被災地企業の事業再開を支援する“被災地応援ファンド”を見ていて、改めてこの事業ファンドの役割を考えさせられる。証券や金融機関が扱うファンドは投信も含めて何らかの市場に関連するものが殆どだが、この事業ファンドは市場には殆ど関係しない。勿論、ファンドである以上は、投資を行う事業の成功を出資者たちが願うのだが、市場を相手としない以上、投資効率とか収益性がファンド出資者たちの第一の目的ではなく、○○の事業を応援するということに主題がありそうだ。それも限られた資金で行うマイクロファイナンス的ファンドが、事業ファンドの特性の様に思える。冒頭に上げたファンドの定義の中の“みんな”とは、○○事業に賛同した人達となり、この人たちを投資家と呼んでいいか、幾分の疑義が残る。
 例えば、“被災地応援ファンド”は、被災地の海産物店など8社の当面の運用資金を調達するものだが、1口一万円の半分は寄付、半分が出資となるもので、出資分については7~10年の契約期間で途中解約は出来ない。このファンドは、被災地企業支援というところに重点が置かれている。 また、当該ファンドを実質的に運営するミュージックセキュリティーズは、元々音楽ファンドでヒップホップ系の新人歌手を売り出すプロジェクトを行っているが、こちらの方はCDの売上げなどに応じてファンドの分配金が出資者に払い戻される。

 ただし、これらの事業ファンドを取り扱う者は金融商品取引法上で第二種金融取引業となり、地元財務局に登録する必要がある。2007年に金融商品取引法で投資信託以外のファンドを集団投資スキームとして定義し、この中に事業ファンドも含まれることになったが、このファンドの対象や定義が広範囲に及び様々なファンド勧誘行為が行われたので、金融庁や財務局には次の様な相談が寄せられている。
(注:事業ファンドを特定したものではない)

【相談事例】
*元本保証、高利回りとしてファンドに出資したが、返金に応じてもらえない。
*認知症の人に売っている。
*金融庁の認可を受けているがファンドに出資しないかと勧誘された。
*FX取引(外国為替証拠金取引)を使ったファンド。実際は運用せず自転車操業。
*被害者を増やしたくない。
*パンフレットには書けないが元本保証を口頭で約束すると勧誘された。
*母が未公開株の投資事業組合に投資したが5年間は解約できないといわれた。
*紹介者にもメリットがあり出資者も損はしないので乗らないかと誘われた。

 この為、証券取引等監視委員会は2009年以降ファンド業者=第二種金融商品取引業者に対して集中的に検査を行い、次の様な問題ある行為を指摘している。
●ファンドへの出資金の分別管理が不適切な状況(出資金の流用、使途不明等)
●顧客に対する虚偽の説明・告知や誤解を生ぜしめる表示等
●無登録業者に対する名義貸し等
●ファンド販売業者自らが登録業務を逸脱している状況等
●自己の利益を図るためファンド出資者の利益を害する運用を行う行為

 以上のことと、マイクロファイナンス的に出資目的を限定して賛同者を募る事業ファンドは、余り重なる部分がないようにも思われるが、行政上は同じ第二種金融商品取引業であることも事実だ。マイクロファイナンスもそうだが、事業ファンドも今までの金融の概念と異なるところにビジネスモデルがある。その事は、金融やファンイアンスの新しい機能へと繋がるだろうが、今までの投資家保護とは違う概念が規制(自主規制も含めて)には必要になるのではないだろうか。
投信運用会社の直近の情報発信動向(3)
5月の追加型株式投信への資金流入額は、8587億円となり金融危機以降最高額となったとロイターは報じているが、その投信の運用会社による情報発信も増加している。楽天証券が、各運用会社のレポートを集約してネット上で公開しており、それによると5月の連休明け後の直近1ヵ月に公表されたものは219本あり、その前の一ヵ月間より7割以上、情報発信力は増している。為替・金利・株式市場などに関する定期的なレポートが全体の4割を占めるが、残り6割はスポット的なテーマに対して運用会社が情報発信するものだ。国内外で、市場の予想以外に起きた事象などに対して、運用会社として投資家向けに迅速に何らかの解説などを行おうということに努力が払われている。
 この直近の情報発信動向を見てみると、適時の情報発信であっても為替の変動やその理由に関するものが最も多く、次いで金利動向に反映する各国の経済指標の解説が次いでいる。国別に見ると、4月までは新興国関連が多かったが、最近は米国や日本に関するものは増えている。また、5月の連休中に原油などのコモディティ価格が大きく下落したことで、投信の基準価格が大幅に低下したものはあったが、この事を通知しようとする動きも多かった。その状況は、下図の様になっている。

☆投信運用会社の最近の情報提供(3)〈5月6日~6月7日〉

一方、6月はボーナス月とされ、証券・金融機関では投信等の募集ものの営業活動にピッチが掛かるが、6月の設定を予定している投信のテーマに於いては、日本株を見直すものや為替リスクのない円建債券への投資が目につく。また投資の新しいテーマとして、インフラ関連・農業というところもあるようだ。

これだけ、投信の運用会社による情報発信態勢が整ってきたのであれば、次の段階としては、ネットでの投信販売が増加(特にネット専業証券ということではない)してくることが考えられるが、更に進んで投信運用会社のネット利用の投資家への直接販売が進むような状況にでもなれば、投資家にとっては投資コストが下がりメリットを享受することが出来る。ただし、その時証券会社は次の投信販売モデルが必要になる。

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金庫株のもう一つの利用法として期待したいインセンティブ・プラン概要
手元資金が厚くなった企業の自社株取得は大いに期待したいものですが、株主や市場から取得した後は、一般的にその株式は金庫株とも呼ばれます。その企業が取得した金庫株は、時期を見て消却するのが基本ですが、将来のM&Aに纏まって利用するのも理想的な使われ方です。この件については、拙稿5月24日”改正産活法で期待したい、大型M&Aの増加と自社株取得でお伝えしましたが、その金庫株のもう一つの使い方として、インセンティブ・プランでの使い方も期待されています。その概要図を公表します

☆インセンティ・プランと資本政策

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SNSは活用できるのか=証券業界の場合
 SNS(Social Networking Service)初心者の筆者が、標題のテーマを扱うのは少し僭越かもしれない。しかし、慣れないツイッターでも、次の様に利用して、なんとなくメリットを感じてもいる。
大震災以降東京も有感の地震が多くなったが、揺れるたびに福島原発は大丈夫か気になることが多い。
この地震情報は、気象協会がホームページ上で震源地付近の地図と震度とともに、地震発生後数分で公表しているが、最近は揺れた後のアクセスがなかなか出来なくなっている。きっと仕事をしている最中でも同じ様な方々が増えているのかもしてないが、そんな時はツイッターの流されている緊急地震速報を利用させていただいている。震災直後、携帯の通話やメールが利用できなくなった時、インターネットを使ったツイッターなどでの安否確認が機能を発揮していたようだが、このツイッターを始めとするSNSの利用について、日本証券業協会では議論が始まっている。

 特にSNSで問題が起きているとか、SNS利用を促進していこうとかいうことではないが、ATC(ahead of the curve=先手を打ってと言う意味だが、証券市場における諸課題の先取り的な発見と迅速な対応という趣旨)ワーキングでの検討が始まっている。つまり、SNS特にツイッターの利用について、証券会社が今後活用していく時に、何らかのルールが必要かもしれないので、事前にルールを決めておこうということだ。現在は、300社弱ある証券会社のうちでツイッターを公式に利用しているのは14社程度とされるが、アナリストやディーラー等が発信する市況・経済動向等やセミナー等のイベント情報等を“ささやいて”いる。問題となりそうなケースは次のような場合とされている。

・A証券が○○投信の募集開始とツイート(ささやく)する。
・それに応じて、Bさんがリツイートして“買うのに良い商品だね”とコメント、BさんのタイムラインにはA証券が○○投信の募集開始が表示されている。
・BさんのツイッターをフォローするCさんやDさんに、A証券○○投資信託の募集を開始という情報が口コミの様に拡がっていく。

通常の証券会社の広告宣伝には自主規制があるものの、僅か140字以内で表示され、それがネットワークで拡大していくツイッターなどのSNS利用に対して、証券業協会としては想定外だった。何も個人のネットワークであるSNS利用に対して、そこまで心配しなくてもと一般の方々は思われるかも知れないが、A証券からDさんまでが意図的に勧誘目的のリツイートを繰り返し、第三者のフォローワー(ツイッターの情報を参考とする方々)をこの勧誘的ネットワーク作りに巻き込もうというケースはどうだろうか。

米国の自主規制団体(FINRA=金融取引業規制機構)では、次の様なガイダンスを2010年1月に公表している。(概略のみ)
●SNSを通じて行う業務は、記録保存義務の対象。
●SNSを通じて行う有価証券の勧誘行為も、適合性に関する規則の適用対象。
●ブログへの投稿は、規則上の「広告」と見做し、内部管理責任者の事前承認が必要。
●ブログによるリアルタイムでのコミュニケーションは、事前承認を要しないが、規則に基づく監督が必要。
●営業目的でSNSに参加する自社の従業員に対する監督義務あり。

証券会社などがSNSを利用するとき、情報の流しぱなしではなく、どの様に流れていくか情報発信元としてある程度見定めていくべきとの考え方のようだ。

 今回のSNSの検討についは、CFD取引に関する自主規制に続き、ATCワーキングとしては第二弾になるが、角を矯めて牛を殺すことがないよう、くれぐれもSNS利用を証券業界も積極的に利用していくという前提を崩されないよう願っている。

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リテール証券会社の状況
上場されている証券会社の株価は、今世紀になる前の日本の金融危機の時より安くなっている。あの時は、まだネット証券もなかったしFX取引業者もいなかったが、証券を含めた金融機関全体には、危機感があったが、現在は(業界の)危機感もそれ程強くないのに、リテール証券各社の株価は最低水準だ。

 この10年以上の間に、証券会社もいろいろ変化してきたが、低迷する日本株式市場に頼らないリテールの営業体質に変えつつあるはずだったが、この株価水準は何を意味しているのだろうか。

 市場が常に正しいは限らないが、何かのサインを投資家・株主に出しているはずだ。

主要なリテール証券各社の前期を決算関係資料を見ていて、取り扱い商品の多様化や海外投資の増加にはあり程度対応していることが分かる。(レポートは、来週後半以降公表予定)

しかし、何か市場が求めているものがあるはずだ。



先ず、本年度のリテール営業上に影響を及ぼしている要因と課題について、その概略図を公表したい。



☆公表シート


※証券株について投資を勧誘したり、分析するものではありません
デリバティブは難しい商品なのか?中小企業への販売の場合
 5月末に金融庁のホームページ上で公表された中小企業向けパンフレット“デリバティブ商品の契約をするときのポイント”には以下の様にデリバティブの定義について平易な文章で説明されている。

○デリバティブ商品とは、為替相場や金利などの将来の変動リスクを管理するために、外貨や金利等を一定の価格等で取引する権利や義務を、あらかじめ契約しておく商品です。
○為替相場や金利の変動などにより、お客さまに損失が生じることがあります。
○原則解約できない商品です。お客さまのご都合などで中途解約する際に解約清算金が必要になることがあります。

 中小企業の円高倒産リスクなどで昨年から問題となっているデリバティブ商品に対して、中小企業の注意を促すものだが、デリバティブ商品の説明は以上の3点に尽きる。詳しい条件等はデリバティブ契約書に記載されることなので、基本的にはよくその中身を確認して下さいということになるが、販売者である銀行は、次の事項について説明しなければならない。

・最悪のシナリオを想定した損失額や、想定シナリオが異なる場合の損失拡大の可能性など、商品内容やリスクに関する十分な説明
・原則解約出来ない事や、解約の際に解約清算金が発生することとその内容に関する十分な説明
・企業のリスク管理の為に購入した場合、売上げや取引量に見合っているかの確認とその十分な説明
つまり、販売する銀行はデリバティブ契約書の内容を相手の中小企業に合わせて十分に説明する必要がある。また、次の行為は禁止される。

①虚偽のことを告げる行為
②不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げて勧誘する行為
③銀行やグループ会社と取引を行うことを条件として、融資する行為
④銀行としての取引上の優越的地位を不当に利用して、取引の条件または実施について不利益を与える行為

①と②は普通の商行為では、当たり前に禁止されている行為なので、問題となるのは③や④の銀行の優先的地位の利用がデリバティブ商品販売時には禁止されていることを、中小企業側が理解しているかどうかだろう。この事を証明するのは難しい。

 次にデリバティブ商品の契約後、銀行は時価情報などのフォローアップや苦情や相談に対してきめ細かく対応していて、相談しても不利益を被らないとしている。これは、銀行ではなく金融庁のパンフレットなのだが、それ程この問題での銀行サイドの対応が難しいということだろうか。

以上の背景には、下記の様な中小企業向け為替デリバティブ取引状況(米ドル/円)に関する金融庁の調査(昨年9月末時点での銀行に対する聞き取り調査、公表は本年1月)がある。
・販売契約数をみると、平成16~19年度までは毎年度約12,000件前後で推移し、合計では約6万強の契約が販売されていた。
・平成22年9月末現在で契約を保有する企業数は、約1万9千社である。
・リーマンショック以降の急激が円高で、大きな損失を被った契約が多いとされるが、平成22年1月以降に銀行へ寄せられた苦情件数は約300件、金融庁へは195件、銀行協会へは200件以上となっている。
・昨年9月時点で残存する契約数は約2.5万件、1契約当たりの損失額は600万円となっている。

 これらの事で、真に難しいことはデリバティブの契約内容ではなく、銀行が優先的地位を利用しないで金融商品を取引先企業に売るということかも知れない。
 

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