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2011/07
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モノの値段=国際商品指数への投資について
もう随分長い間、モノの値段が上がるという実感を多くの国民は持っていない。原油価格の上昇からガソリンや灯油が上がったり、小麦粉の上昇からパンなどが値上げされたが、全体としてモノが値上がりしているという感覚は円高デフレ化の日本で感じることが少ない。しかし、今世界中でモノの値段が確実にかつ急激に上昇している事は、投資家のみならず多くの国民が知っている。このモノの値段とは何を指すのか。代表的なものの値段=国際商品指数にCRB指数(ロイター/ジェフリーズCRB指数)があるが、この指数は、米国と英国の各商品取引所で取引されている先物取引価格から算出されている。現在、以下の19種が構成要素となっている。

・エネルギー関連=WTI Crude Oil(原油)、Heating Oil(暖房油)、Unleaded Gas(無鉛ガソリン)、Natural Gas(天然ガス)、
・農作物関連=Corn(トウモロコシ)、Soybeans(大豆)、Live Cattle(生牛)、Sugar(砂糖)、Cotton(綿)、Cocoa(ココア)、Coffee(コーヒー)、Wheat(小麦)、Lean Hogs(豚赤身肉)、Orange Juice(オレンジジュース)、
・非鉄金属=Gold(金)、Aluminum(アルミニウム)、Copper(銅)、Nickel(ニッケル)、Silver(銀)

このモノの値段は、昨年の後半以降上昇が著しく、特に農作物関連の価格の上昇が金融危機以前の水準を超え、新興国の物価上昇に大きな影響を与えていることが問題となっている。時期的にはQE2(米国の量的緩和第二弾)が始まった時と、モノの上昇時期が重なるので、物価上昇に悩む新興国からは先進国の金融政策を非難する声も多く聞かれる。
国際商品価格上昇の分析は、専門家の手に委ねるとして、この上昇の背景を説明するいくつかのキーワードがあると思うので、紹介しておきたい。

【新興国の成長】中国やインドなどの経済成長で、原油や鉄鋼石などの需給が逼迫していることはよく知られているが、農産物の価格上昇の根底にあるものも、この新興国の需要増加と結びつけられる。実際、2000年代後半から世界の穀物消費における新興国のシェアは上昇を強め、2009年時点で75%近くまでになっている(OECD)。なお新興国の家計支出に占める食料品の割合も3割以上(先進国は2割未満:日銀資料による)となっており、物価上場に対する新興国国民の不満は大きなものとなっている。

【コモディティの金融商品化】よく商品価格の急上昇をヘッジファンド等の投機的動きと説明されることもあるが、これは少し短絡的過ぎる。背景には、長期投資を行う機関投資家が、株式や債券だけでは物価上昇をカバーする収益率が期待できなくなったと考え、代替(オルタナティブ)投資を増加させたが、その受け皿として商品先物市場があった。勿論、商品市場側でも指数(インデックス)や電子取引プラットフォームの整備などが2000年代半ばに行われ、ETFなどファンドの投資を受け易くなりコモディティの金融商品化が進んでいる。

【天候変動、地政学リスク】豪雨や干ばつに対する農産物価格への影響、中東情勢の原油価格に対する影響など、通常は影響が数か月単位の短期的変動要因だろうが、モノの値段の上昇にバイアスがかかる要因なので、最近は影響も長引いているように思われる。日本の大震災の影響によるものも、この地政学的リスクなのかも知れないが、ストレステストや脱原発宣言など日本の政治が地政学的リスクにカウントされないよう祈りたい。

【金融緩和の影響】緩和策による過剰流動性の影響を指摘したいのかもしれないが、この部分は専門的な分析を頼りたい。日銀による以下のワーキング・ペーパーがあるので、ここに紹介しておきたいが、結論としては、金融緩和策がもたらす商品価格上昇への影響は大きいとしている。
国際商品市況変動の要因分解と市場間連動の背景

【株価と商品市況の共変動】金融危機後、株価と商品先物価格の連動性が強まっているが、コモティティの金融商品化が進んだ結果、株も債券をそして商品も同じリスク資産と見られるようになって、市場全体がリスク資産を増やすか減らすかという流れの中で、株価も商品先物価格も動いているのが現状と見られている。
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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

期待に応えられない市場:グリーンシートの場合
新興市場の活性化の議論の時、必ず出てくるものにグリーンシートがあるが、一般の投資家には余り馴染みがないので、少し説明しておきたい。

 グリーンシート制度は、未公開株の売買で唯一証券会社が投資家に勧誘することが出来る制度である
(※勧誘できないものは、証券会社は実質的に取り扱わない)。別に未公開株でも売買することは可能だが、証券会社が勧誘できる根拠は、日本証券業協会の“グリーンシート銘柄及びフェニックス銘柄に関する規則”による。この制度は,1997年7月から始まっているが、一定のディスクロージャーが行える企業で、かつ証券会社が売買の気配値を継続的に出すことで、一般の投資家も売買することが出来る制度となっている。現在、56銘柄が取り扱われているが、新興市場議論の際には、新興市場への株式公開(IPO)銘柄予備軍として期待されている。実際、過去には11銘柄が新興市場への上場を果たしていて、新興市場でのIPO増加の裾野拡大の為、このグリーンシートを活用できないだろうかというのが、金融庁のアクションプラン(2010年12月)にも載っている。

 しかし、グリーンシートそのものには、現在多くの問題がある。

●制度に参加する証券会社が極端に少ない。
 どんな金融商品を取り扱うかは証券会社の自由だが、多くの証券会社が新興市場株を含めた上場企業の株式を取り扱っているのに対して、このグリーンシート銘柄を取り扱う証券会社数は、僅か9社に限られている。その証券会社も、全てのグリーンシート銘柄を取り扱える訳ではなく、銘柄毎に取扱い可能な証券会社が限られる。なお、ネット証券及びネット取引で対応可能な証券会社は、現在のところ無い。

●企業の株価水準が分かり難い。
 投資家にとって最も重要なのが価格情報だが、いくらが適正な株価か、非常に分かり難い。銘柄をカバーするアナリストがいないのはしょうがない事かもしれないが、全体的には売買が成立するのは稀で、市場の実勢価格が分からない。制度としては、取り扱う証券会社が気配値を提示しているが、売りか買いどちらか一方の値段なので、その気配値の背景や根拠などが、一般の投資家に分かり難い。

●売買のインフラが不十分である。
 前日の気配値は協会のホームページ知ることが出来るが、今日現在の値段を知るインフラが無い。(昨年5月まで専用のPTS=取引システムがあったが、現在は稼働していない)。また、上場株式と異なり株券が電子化されていないので、現物での決済となるが、このことが取り扱う証券会社の負担を重くしており、投資家のコスト増にも影響している。

●制度に参加する企業のファイナンスには余り役立たない。
 取り扱う証券会社の募集能力にもよるのだろうが、“拡大縁故募集”といって制度に参加する企業自らが増資の引受先を探し、新株の払込をお願いしながら公開されるケースが多かった。その為、グリーンシートに参加した後の公募増資が出来ない場合もあり、参加企業の最大の不満は、資本市場として企業の資本調達に余り役立っていないことだった。

●ディスクロージャーの仕組みはあるものの、企業には負担が重く、投資家には不十分となっている。
 一般の未公開会社は、株主数が500名以上とならなければ、法律上の開示義務(有価証券報告書などの提出義務)を負わない。しかし、グリーンシート制度参加企業は、有価証券報告書の様式に準じて作成される会社内容説明書を作成しなければならない。この作成は年1度なので、企業活動に変化があった場合の情報開示は、企業の自主的な取組みに委ねられる。一応、TDnet(取引所の情報開示システム)は使えるが、取引所の適時開示ルールが適用される訳ではないので、企業自らの情報開示に株主や投資家は頼ることになる。

以上のような問題も含めて、グリーンシートの抜本的見直しは、来年3月を目途に行われる。こちらの方は、期待して良いのかも知れない。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

働く人の為の投資教育と実践の場について
広辞苑によると、教育とは教え育てることとあるが、教育を必要とするものの立場から言えば、学び育つことともいえる。その中で、学ぶべきことは人生のそれぞれのステージで異なるだろうが、学んだ事を使いながら実践していくことで、教育は生きた知識となる。投資教育においては、その実践段階の取組みが少し不足している。投資教育も教える人が必要だが、小学校から大学までの児童・学生が対象だと、教師がいて彼らを投資教育面でサポートする仕組みも整いつつある。しかし、社会人になってからの投資教育は、実は著しく不足しているのではないだろうか。

“英国における金融教育の最新事情”(大場義明氏:日本証券経済研究所)を読んで、この事を一層強く感じた。同レポートによると、英国の金融教育は、教育と情報の提供から、助言と行動を重視するアプローチに軸足をかえているという。今年4月、無料で公平なマネーアドバイスを、オンライン、電話及び対面を通じた英国全土に提供する機関としてMAS(The Money Advice Service)が設立されている。また教育を行う対象も、学生だけには留まらず、従業員や消費者、新しく親になる人々、所得の低い公営住宅の賃貸人、社会的弱者であるニートや学習障害者などまで、国民全体に教育サービスが行きわたることを目論んでいる。

 翻って、日本において働く人々への投資教育は、誰が行うのだろうか。以前紹介したように、日本の金融教育は、日銀が主体となる金融広報中央委員会を中心に行われており、これに証券業協会(証券広報センター)や取引所(東証アカデミー)などが投資教育面で協力する形となっているが、学校教育用のコンテンツ提供か情報発信がその主な活動となっている。働く人=社会人の為の投資教育は、今の段階では組織立って行われている訳ではないし、またその様な事を推進する政策もない。

 しかし、投資の目的は働く人ほど明確なのではないだろうか。結婚資金・家の購入・教育資金・老後資金など、まとまった資金を貯める為に、継続的な投資を行うことは、低金利の日本においては重要になっている。勿論、投資リスクを負わないで貯蓄で必要資金を貯めると言う考え方でも良いのだが、問題はまとまった資金を必要とする働く人たちが、その選択をちゃんと行える情報の整理と助言態勢が整っているかということだ。働く人が富裕層であれば、証券会社や金融機関が助言してくれるだろうが、普通の人たちが住宅の購入資金を毎月の投資で行う為の助言は、現在誰がしてくれるのだろうか。

 日本は良くも悪くも企業中心の社会なので、税金や社会保険・年金も会社が代行してくれるし、ライフサイクルで必要とするまとまった資金の為に継続投資制度も提供してくれる。その会社が給与から天引きして投資する制度は、現在3つある。
・財形貯蓄制度(勤労者財産形成促進制度)=貯蓄の奨励と持家促進を目的にした制度で、元利金550万円まで非課税。別に年金の財形制度もあるが、一部投信の購入も可能(株式は不可)。
・従業員持株会制度=企業が従業員の資産形成を促進する為、奨励金をつけることも多い。
・確定拠出年金制度(日本版401K)=年金制度が企業単位なので、結果投資対象となる金融商品リストは企業が選択。従業員はその中から投資対象を選択、もしくは投資していた金融商品の売却を指示する。

 このように企業を通じた働く人の継続投資のインフラは、不十分とはいえあるが、インフラを活かすソフト型サービスとしての投資教育は殆ど行われていない。よって、投資教育実践の場として、企業を通じた取組みに期待したい。教えるのは誰であろうか。

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新興市場の基本的問題をやさしく考える
 私達は大震災と福島原発事故を経験して、断片的に情報が出されること、情報の基準が一定しないこと、そしてその情報に誰が責任を持つかはっきりしないこと、それらが聞く人を不安にさせるという事を経験しています。

ここ何年間も業界内で議論されている新興市場の問題も、多くのことは、この情報が投資家に対して持続的に提供されない事、情報の基準が不安定なこと、情報提供の責任が曖昧なことにあります。勿論、この情報の中心にいるのは新興企業そのもののディスクロージャー(情報開示)ですが、情報の中には価格に関するものもあります。

 現在、昨年12月に金融庁から示されたアクション・プランでは、新興市場等の信頼性回復・活性化策の内容の具体化に向け、6月下旬工程表が公表されており、以下の様な新興市場の情報に関する問題が指摘されています。

①新興企業の発信する情報は、十分でかつ信頼できるものなのか。
新興企業に限らず、有報など開示書類の虚偽記載が問題となりましたが、本来開示資料をちゃんとチェックすべき監査人(公認会計士)に関して、上場会社の監査人としての専門性強化を求めています(上場会社監査事務所制度)。また、監査人が主幹事証券や取引所との情報共有を促す仕組みも、9月までに検討を始めるとしています。
 新興企業自身が発信する情報も、もっと充実させるべきとして、取引所が新興企業のリスク情報の類型化に必要な基礎データの整理を行い、公表することで、企業からの情報発信量を増やすべきとしています。

②もし、新興企業が発信する情報が、投資家にとって十分でない場合、サポート体制は整っているのか。
 新興企業が自社の情報開示を積極的に行うのが最も好ましいのですが、市場ルールに慣れていない為、情報開示が充分でない場合、どの様にサポートしていくかが問題です。IPO(新規上場)の際の主幹事証券会社が一定期間支援するべきとしていますが、IR活動を通して開示することを徹底して指導すべきとの事のようです。また、アナリスト・レポート作成・公表活動を取引所が支援していく策も検討されています。

③新興企業上場数拡大の為には、何が必要なのか
 概ね3つに分けられます。一つはIPOの裾野拡大、二つめは現在の新規上場時の障害の撤廃、三つ目は新規上場後のメリットの明確化です。
 一つ目の裾野拡大については、グリーンシート市場の活用促進と、ベンチャーキャピタルなどが出資しているリストの共有化が検討されていますが、正直に言って、アクション・プランやその工程表では、この部分が最も心もとなく思えます。二つめについては、上場時の審査プロセスが企業側にも分かり難いので、これを分かり易くするということのようです。
 3つ目は、アクション・プランにはありませんが、新興企業が資本市場の機能を使う最大の目的は資本調達ですから、上場時及び上場後のファイナンスということになります。この問題に関しては、特に公開時の価格設定が重要な問題となってきます。

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ライツ・イシューは証券会社のビジネスも増やす
☆ライツ・イシューのメリット

 資本市場は、流通市場と発行市場が両輪です。といっても、一般の投資家は頭では理解していても、実感として余り感じないかもしれない。いや、一部を除き多くの証券会社も、実は同様かもしれない。
 それは、発行市場=上場企業のファイナンスが一部の大手証券と外国証券に機能集約されていて、その他多くの証券会社がファイナンスには殆ど関与しないからだ。本来、流通市場と発行市場を両輪として、市場の利用者である投資家と企業に、その市場機能を提供していくべき実行者の証券会社そのものが偏っている。その事が、日本の市場全体の歪みとなっているかも知れない。ファイナンスと聞けば空売りを仕掛けたり、市場の流通量を考えない公募増資が強行されたり、ファイナンスの情報管理が甘かったり、証券会社そのものが、どちらかの機能に著しく偏っている弊害が出始めているようにも思う。
 もっとファイナンス業務に携わる証券会社が増えるべきだと考えるが、ライツ・イシューはそのファイナンス・ビジネスそのものの増加を証券会社にもたらす。
 但し、現時点では残念ながら証券会社のライツ・イシューへの取組みや態勢整備は、余り整っていない。

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ジャンル : ビジネス

ライツ・イシューは株主の選択肢を増やす
 大震災からの復興の為、前向きなファイナンスが今後増加すると思われるが、大規模な公募増資やCB(新株予約権付社債)の発行は、既存株主にとっては短期的にはダメージである。ファイナンス公表後の株価下落に耐えなければならない事を指すが、その背景には、企業の増資の目的が、投資家や株主に理解され積極的に評価されるのに時間が掛かる場合が多いこと、また企業によるファイナンス公表時の資金使途の説明が、充分でないことも理由として上げられる。

 勿論、既存株主であっても一旦株式を売却して、安くなった公募株を購入するという選択も可能だ。公募株は市場の時価より数%デスカウントして発行されるので、この方法を使えば株主は保有単価を引き下げる事が出来るかもしれない。事実、銀行株の公募増資ではこの様な既存株主によるオペレーションが相当数行われていた。しかし、これは何かおかしい。(実際はないが)もし全ての株主がこの様な行動をとったと仮定したら、既存株主の持分は増えず、市場では既存株主が売却した株式が潜在的な余剰株式として長期の売り圧力になってしまう。また、必ずしも公募株を株主が、売った分だけ公募株を入手できるか保証されていない。

 よって多くの既存株主は、公募で調達された資金が事業拡大や再構築に使われて、将来企業価値が増大することを期待しつつ、短期的な株価下落に耐えるという選択肢をとる。(選択肢というより、我慢かもしれない)

以上を簡単にまとめると、公募増資などの際、株主が取り得る行動は、
A=そのまま保有し続ける。
B=売却する。
C=公募株取得する。
以上の3つの単独か、若しくは組み合わせとなる。

 一方、ライツ・イシュー(ライツ・オファリング=新株予約権の株主割当)は、上記の3つの選択が次の様に変わる。
A”=そのまま保有し続けで、ライツ(新株予約権)を受け取る。
B”‐1=ライツを受け取る前に売却する。
B”‐2=ライツを受け取るとった後、ライツのみ売却する。
B”‐3=ライツを受け取るとった後、ライツと株式を売却する。
C”‐1=受け取ったライツを行使して、新株を取得する。
C”‐2=市場から買ったライツを行使して、新株を取得する。
以上の6つの単独か、組み合わせの対応となり、公募増資等に比べ格段に選択肢が増加する。

2割以上新株や潜在株式が増加して既存株主の希薄化が問題となる公募増資でも、ライツ・イシューでも、新株を市場に流通させるということでは同じ行為だが、ライツ・イシューの場合、既存株主は少なくとも自らの選択で、保有する株数相当分の新株を手に入れることが出来る。公募増資の場合は、自ら選択ではなく、引受証券会社の新株配分の裁量に頼らなければならない。

 また引受業務の集約化が進んだ結果、現在、公募増資等企業の大型のファイナンスを実務的に取り扱えるのは、大手5社と主要な外国証券に限られていて、300社弱ある証券会社の殆どが企業のファイナンスにタッチしない。しかし、日本株を取り扱う証券会社であれば、上記にライツの対応に関して既存株主のみならず投資家に助言することも可能で、ライツ・イシューの普及が、ファイナンスに関する証券会社のビジネスの幅を拡げる可能性もある。この事にも期待している。

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海外株主=公募増資の日本仕様を怒る
 公募増資の発表を聞いて、直ぐその銘柄を売る。と言うのが、今の市場のトレンドで、この事に良い悪いはない。その売りが、保有する株式の売却であっても、誰かから借りて売る売却でも(許されている空売り)、公募増資の報を一つの売り材料として売却するのは、其々の投資家による投資判断の結果に過ぎない。デイトレーダーでも、裁定取引を行うヘッジファンドでも、投資家としてのこの行動は守られなければならない。一方、大量の公募増資を行う企業も、それが自社を大きく変える事業目的に沿う資金調達なら、株主から授権されている株主の範囲でファイナンスを行うことが取締役会に任されている。

 流通市場では、どの様な投資家であっても同じルールで扱わなければならないし、発行市場でのリスクマネーの調達機能も阻害してはならないが、問題はこの流通市場と発行市場を繋ぐ部分が、何らかの制度疲労を起こしているのでは思われることだ。勿論、その中心に引受証券会社がいる。

 先月25日、グローバルな投資家の業界団体であるアジア・コーポレート・ガバナンス協会(ACGA;Asian Corporate Governance Association)は、金融庁に対して、日本の上場企業の増資の在り方について要望をおこなった。その中で、ここ数年の日本企業の増資の在り方は、グローバルに長期投資を行う投資家にとって問題があり、増資に絡んだインサーダー取引の排除と既存株主の希薄化対策が、日本の資本市場でも必要だとしている。

 金融庁や取引所の、大規模な第三者割当(希薄化率が25%以上となる)を実質的に規制する対応策や、ライツ・イシュー(ライツ・オファリング)に対する推進策は、一定の評価をしながら、日本での公募増資の在り方については、特に引受証券会社に対して厳しい目を向けている。引受証券の行うソフトヒアリングという海外投資家への事前需要調査を通じて、大型の公募増資に関する情報が、増資の公表前に一部の裁定取引を行うファンドマネージャーに流れて、インサイダー取引を引き起こしている可能性があることや、引受証券にとって大事な顧客である一部の投資家に公募株が重点的に配分され、既存株主が希望する株数を取得できない事などが指摘されているが、その改善策として次のような事が提言されている。

○引受証券会社は、公募株を割当てたリストを増資企業に提出すべき。これによって、企業の目的に沿わない投資家(短期売買を行うファンドなど)への大量配分は制御される。また、このルールは法改正を伴わない証券業協会の自主規制で変えられるとしている。

○発行済株式総数の10~20%を超える公募増資は、株主総会での株主の承認を必要とし、既存株主の権利を守るべき。

○公募の期間を現在の7日~15日から、多くても5営業日以内に短縮して、投機的なファンドが空売りを仕掛けて機会を減少させるべき。

○空売りをした投資家に対して、シートカバーの為の公募株割当を禁じるべき。(この部分は、現在法改正に向けパブリックコメント期間中だが、対象の空売りは公募発表から値決め日までに限られるのが金融庁案)

そういえば、20年以上前になるバブル期にも大量の公募増資やCB発行が問題になり、旧大蔵省による発行規制・協会による引受判断の規制が行われたが、1990年代半ばには全て撤廃された。このような需給調節を目的とする規制は二度と望まないが、せめてグローバルな長期投資に合う発行市場ルールを考え直す時にきているのは事実だろう。怒っている時は、まだ期待している時でもある。

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ファイナンスは買いなのか売りなのか=文脈で考える
先ず、なでしこジャパンが勝てて本当に良かったと思います。なでしこの皆さん、たくさんの感動をありがとうございます。多くの日本国民が受けた感動は、金メダルという結果だけからではありません。試合中は、米国の猛攻に耐えて、そして粘って、先行されても2度追いついたこと。運命のPKで、それぞれが素晴らし仕事をされたこと。監督が、この小さい娘たちががんばったとコメントしていたこと。そして、なでしこの皆さんの笑顔。これらがみんな繋がって、大きな勇気を日本国民に与えてくれました。
 野に咲ける、やまとなでしこ、わが誇らしさ

 日本の企業も、金融危機後、そして大震災後、生き残りをかけて必死に頑張っていますが、その為に必要なリスクマネーをファイナンンスで市場から調達すると言うのは、株主や投資家にとってとても重要な事です。つまり、このファイナンスでこの銘柄は買いなのか、売りなのかの判断を迫られる訳です。

例えば、救済型や事業戦略強化の為のファイナンスは、通常第三者割当増資で行われますが、大規模な増資であれば、既存株主の大幅な希薄化を招きます。しかし、救済や事業戦略によって大きく企業価値の上昇が期待できるのであれば、結果的には自分が保有する分の価値は上昇すると考え、株主や投資家は買い材料と判断します。この判断の背景には、第三割当増資を受ける新たな株主は、事業戦略強化が目的なので、直ぐには株式を売却するはずがないといった株主・投資家の考えがあります。

 一方、公募増資に関する現在の市場の反応は、先ず売り材料として捉えるというのが一般的です。これは公募増資によって株主の希薄化が生じること以上に、公募直後の市場の需給関係が悪化すると投資家が読むからです。公募増資による資金調達で事業戦略が強化されれば、企業価値は向上するかもしれませんが、この将来への期待より、目先の需給関係悪化を売り材料視する背景として、次の様なことが考えられます。

・金融危機後、大規模な(発行済みに対して大きな割合)公募増資が多くあり、その殆どは公募増資前後大きく値を下げる傾向が続いています。つまり、公募増資=売りのトレンドが定着しているということです。
・公募増資が前向きな投資であっても、公募時に記者発表文において、僅か数行で株主や投資家に企業価値向上を説明することに無理があります。企業側が、事前にIRや、事後の企業説明会で、公募増資で調達した資金の利用目的や状況を説明してこそ、企業価値が向上する文脈が理解できるでしょう。

筆者は、市場関係者なので、ファイナンスは企業価値を向上させる買い材料と考えますが、それを投資家や株主が理解できるよう、企業はファイナンスの文脈(=ストーリー)を示す必要があり、またその支援をしていくのが、引受証券会社ではないでしょうか。

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格付及び格付機関への期待
先ず格付の機能について、その役割に対する考え方は、置かれた立場によって微妙に異なるものの、格付情報が投融資にとって非常に重要な役割を果たしていることは、一致している。特に個人投資家にとって、企業に対する信用情報は殆ど持たないので、公表された格付は唯一のものになる。企業の信用リスクに関する情報は、監査法人も接するが、それらは全て公開される訳ではないし、融資を行う金融機関と個人投資家が、企業の信用リスクに対する情報の非対称性があることも事実だ。この信用情報の隔たりを埋める役割として、格付は期待されている。

 企業の信用リスクを判断するような情報に直接触れることのない個人投資家にとって、格付による信用情報は、市場参加者としての情報の非対称性を埋める重要なツールである。勿論、投資判断は、個々の投資判断によって行われるべきだが、市場参加者間の情報の非対称性を少しでも解消する努力をすることが、参加者の多様性を守り、そのことが市場の維持・拡大に繋がる。プロと個人投資家間で情報の非対称性の幅が小さいFX取引が、日本において拡大しているのは、その証の一つだろう。

 今後成長力の限界がある日本の市場にとっては、個人投資家が企業の信用リスクを判断する方法としての格付は、更に重要な投資情報になる可能性もある。格付機関が意見といっても、それが投資判断する為の基準になっている実態もある。例えば、ある個人営業の販売現場では、A格付けの社債投資は無条件で購入出来るが、それ以下の格付水準の社債になると、投資家が確認書を求められる。

 ただし、格付機関が常に投資家とは利益相反する可能性のあるビジネス・モデルであることに留意することも必要だ。格付は確かに投資家の為に提供されるものだが、その費用は発行者が負担する。また、投資家にとって重要な格付後の発行体ウオッチしていく費用も、担当アナリストの労力に比べて十分でない。更に、格付対象の企業のコンサルイティングを行うことと格付作業が併在することは、投資家に対する利益相反行為として見做される。アナリスト等のインサイダー取引へ関与の監視も必要になっている。

 期待されている格付だが、格付機関は単なる金融サービス業ではなく、投資家の信頼を維持する為、より高い職業倫理性が求められているのが現状のように思われる。それを支えるのは、格付機関自らの過去からの企業倫理と、投資家の格付利用の在り方、それぞれを活用する双方努力に依るのではないだろうか。

投信ネット販売の現状
証券会社による株式の大量推奨販売は禁止されたが、投信を新規設定して大量に販売促進しかけることは別にルール違反ではない。別に皮肉を言いたい訳ではなく、投信の一つの売り方(投資家にとっては買い方)に、投資テーマを決め、時期を見定めて集中的に販売するという事があって良い。勿論、多様な投資家の多様なニーズに応えることが前提だろう。
 ところで、投信がもっと投資家にとって分かり易い商品なら、ネットで買っても良い、と今なら誰もが思うだろ。しかし、現実のネット上での投信販売は余り多くない。何故なのか。その理由は、個人にとって投信が、やはり分かり難い商品と思われているからだろう。正確に言うなら、投信に関する情報の提供の在り方が分かり難い。
 確かに情報ベンダーが提供する投信サイトでは、自分が求める投信を選択しやすくなっているが、では選んだ後、どこで買えばいいのだろうか。その前に、もう少し選んだ投信の内容を詳しく知りたいと思っても目論見書がウェブ上で入手出来なかったり、あっても多量の目論見書内容を理解するのに誰かの手助けが必要だったりする場合もある。つまり、投信を選ぶまでは何とかなるが、実際にその投信を買うプロセスに入るところで、ネットはまだ十分なサポート体制が出来ていないように思われる。

☆投信ネット販売の現状

 しかし、このネット時代にあってインターネットを活用しない手はない。例えば最近以下の様な取組みが行われている。
・フィデリティ証券が、今年の4月からネット投信販売サイト“フィデリティ・ダイレクト”を本格的に運用し始めている。
・大手ネット4社(松井を除く)による投信の共同販売プロジェクトで、販売用投信の選択をイベント化して投資家の注目を集め、ファンドの運用会社を使って目論見書内容の説明を動画で配信させている。
・一部の金融機関において投信のネット販売を強化しようとする動きが強まっており、ゆうちょ銀行も、昨年9月からネットでの投信販売を始め、4月以降も強化しており、販売促進の為に手数料ゼロキャンペーンも始めている。

但し、ネットでの投信販売が進んでいくと、現在の投信販売の営業現場も変化していく可能性もある。その事は、しばらく先の話になりそうだ。
(日本版401Kも、ネットでの投信継続投資ではないかと思うが、せめてネット証券並みの機能を整備して欲しいと思うのは、筆者だけだろうか)

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インサイダー取引規制とM&A
どの様な市場ルールでも、参加者や環境の変化とともに、その時代に合わせて修正していく必要があるのは当然だ。特に1600万人の国民が株主となっている日本の株主市場を守る為のルールも、今の経済環境や国際的な取引に適応したものに、変えていく必要がある。その市場を守るルールは、相場操縦的行為を禁止するものと、内部者取引(インサーダー)を規制するもの、2つに大別される。

今、金融審議会で行われている議論は、このインサイダー取引規制が、上場会社のM&Aなどの事業再編や、純粋持株会社の運営に支障がある部分(規定)があるので、変えてはどうかといったものだ。勿論、未公開の重要情報を知っての売買を禁止することは、市場を守る為に変えてはいけない事だが、現行の規定をそのまま適用してしまうと、会社法の制定やその後の改正産活法で容易になったはずの自社株を使った企業買収が利用し難く、純粋持株会社では煩雑なディスクロージャー対応を取らなければならない。少しテクニカルな話かもしれないが、現在のインサイダー取引規制の構造とその問題点を、すこし易しく考えてみたい。

金商法上のインサイダー取引規定(会社関係者の禁止行為)については前回説明したが、誰が売買を行うかが同規定の第一の問題となる。つまり法律上の会社関係者とは誰なのか。許認可権限を有する公務員が、この会社関係者に該当することは示したが(電力株に対する国会議員?)、会計士やM&Aのアドバイーザー、公告を引き受ける新聞社や目論見書を請け負う印刷会社なども含まれる。そしてこれらインサイダー取引が摘発された事例も起きている。
(注:会社関係者から情報を得て売買するものも、第一次情報受領者として処罰の対象となる)
今回の金融審議会での問題は、株式を上場している企業自らも含まれると解釈されているところだ。実際に企業自らがインサイダー取引を行ったとの証券取引等監視委員会(SESC)による摘発案件も複数は発生している。最近の事例としては次のものがある。
・大塚家具(8186)は、2006年2月1日~23日の間、市場からの自社株取得を実施
・同月23日、配当の上方修正(株価に影響を及ぼす重要事実に該当)を発表
・配当の上方修正は2月9日には既に決定されていて、自社株取得の責任者である執行役員も知っていた。
・この事実が判明したとして、SESCは2月10日~23日までの自社株取得をインサイダー取引規制違反として、大塚家具に対し課徴金納付を命じた。

第二の問題としては、どの様な行為まで株の売買として見做されるのか。第一の問題では、企業自らも会社関係者に含まれたが、第二の問題では、企業が自社株取得で得た金庫株を、M&Aなどの対価として誰かに渡す場合、現行のルールでは売買として見做されインサイダー取引の対象となるが、新株を発行してしまえば売買にはならない。財務上は、まったく同じ効果なのに、インサイダー規制に抵触するので金庫株が使えないという事になる。

第三の問題は、現行ルールの重要事実では決定したり発生する事を項目で列挙しているが、企業の開示事務の煩雑さを避けるために、軽微基準を設けている。例えば、業績の修正は重要事実だが、売上高の変動の場合、10%未満なら重要事実と見做さないという軽微基準がある。しかし、最近は企業がクループ化し、純粋持株会社が上場会社として存続する場合が増えており、その場合、この軽微基準が使えなくなる。
(純粋持株会社は、実際に事業を行う子会社からの配当のみが売上高に相当するので、実質的に軽微基準が著しく少額になる場合が多い)

何かパズルの様な説明になって、読まれた方々には申し訳なく思うが、現行のインサイダー規制の定義の一部が、事業再編等を行う企業にとって使い難いので修正するといったことが、今回の金融審議会での議論の中心となる。このことは、上場企業にとって使いやすい資本市場を目指す上で重要だが、是非投資家の視点でのインサイダー取引規制問題の議論も、付け加えていただきたい。

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最近のインサイダー取引考
最近インサイダー取引に関する話題が増えてきたように思うが、その定義は次のようになっている。

【金融商品取引法第166条(会社関係者の禁止行為)の規定】
“会社関係者が、上場会社等の業務等に関する重要事実を、職務等に関し知りながら、当該重要事実が公表される前に、当該上場会社等の株券等の売買等を行うこと。”
 簡単に言い切るなら、未公表の株価に影響しそうな情報を知って、株式を売買してはいけないとなっていて、不当な利益を出すことが前提ではなく、売買によって損失がある場合にも対象となり得る。
このインサイダー取引に関する直近の幾つか動きについて、少し市場関係者としての感想を交えながら考えてみたい。

【経済産業省幹部によるエルピーダメモリ(6665)株売買】
新聞報道によると以下の経緯のようだ。
・2007年7月に経産省商務情報政策局担当の審議官に就任。08年末から09年初めにエルピーダが台湾の同業者との連携を進める交渉について報告を受ける立場にあった。
・2009年2月11日、エルピーダと台湾3社の経営統合の動きが一部新聞で報じられた。
・2009年2月13日、妻名義の口座で株式を購入
・2009年3月中旬、当初より値下がりした株式を2回買い増し(合計約1万株)。エルピーダの連携交渉の直接担当となる。
・2009年4月中旬、一部を売却。
・2011年6月、証券取引等監視委員会(SESC)からインサイダー取引容疑で強制調査を受ける。
この事案がインサイダー取引に該当するかどうかは、今後のSESCの判断を待たなければならないが、先ずこの経産省幹部の立場は、金商法に定める会社関係者=上場会社等に対して法令に基づく権限を有する者(許認可権限を有する公務員等)に該当することは間違いない。また、妻名義であっても産業政策上注目される銘柄の株式を売買したことは事実のようだ。しかし、以上のような内容だけでは即インサーダー取引と判断するのは難しいのではないだろうか。台湾メーカーとの連携は、エルピーダにとっての重要事実だろうが、未公表だったかどうかというところ焦点をあてれば、新聞等でみんなが知っていたはずだという主張もある。また、この連携話がいつエルピーダとして事実上決定されたか、その決定に経産省幹部がどの様な影響を及ぼしていたか解明されなければ、市場ルールとしてのインサイダー取引規制違反を立証することは出来ない。
 とは言っても、上記の売買が事実であれば、世間の常識とは相容れない株式売買であることに違いはない。

【大震災後の国会議員による東電及び電力株売買】
 国会議員が、株式を売買することは何の問題もない。しかし、冒頭のインサイダー取引規定に示す処の会社関係者になり得るかどうかが焦点になる。つまりエルピーダの事例であげた経産省幹部と同じ様に、許認可権限を有する公務員等に入れるべきか如何。福島原発の処理、補償問題、ストレステスト、再生可能エネルギー法案など、政治の動向が東電を始めとする電力会社の先行きに大きな影響を与える状況を考えるなら、大震災後、例えインサイダー取引に該当しなくでも、当面国会議員は電力株を売買すべきではないというのが、一般国民の感覚ではないだろうか。
 それでも、国会議員が電力株・再生エネルギー関連株を売買するのは個人資産運用の自由なので、止めるルールは現在なさそうだが、売買されるご自分と経産省幹部の違いを、選挙民に説明する必要がありそうだ。

 最後に、ただでさえ日本の市場での個人投資家の売買が少なくなっているので、例へ国会議員であってもキャリア官僚でも大いに株式は売買してもらいたい。間違っても株式売買全面禁止など求めていないが、日本証券業協会が運営するインサイダー取引監視システムJ―IRISS(ジェイ・アイリス:Japan-Insider Registration & Identification Support System)に参加していただくのが、取りあえずの応急対策ではないだろうか。

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投信の運用と販売の状況
投資信託の運用会社による情報発信は、すっかり定着してきた。今までは、何か突発的な出来事や特定のイベントがあるとスポットで情報発信することが多かったが、最近は週次・月次の定期的レポート発信が多くなっている。特に新興国に関するものや為替動向は週次ベースのものが充実している。最近1ヵ月間の情報発信と新規設定投信の投資テーマは下図の様になっている。

☆最近一ヵ月の情報発信動向と7月設定テーマの状況

 情報発信の動向については、最近は中国関連の経済指標そのものに注目するものや、オーストラリアの金融政策に関連したものが増加している。またブラジルやインドなどは相変わらず人気がある。反対に不人気でも注目されるのは、ギリシャ・ポルトガルというところで、これも余り変わらない傾向となっている。
 一方、7月の投信新規設定状況は、翌月のボーナス販売を控えて多少控え気味にも思えるが、外債投資や高配当株・海外小型株投資といったテーマが復活しているようだ。なお、新規設定投信では募集手数料や信託報酬の一部を被災地に寄付するスキームのものが増えている。

 実際の6月投信の販売状況については、三菱アセット・ブレインズ の下記の資料がある。

☆2011年6月号投信マーケット概況

同レポートによると、6月の投信新規設定は1220億円で、既存投信への資金流入額は6268億円となっている。海外REITや外債もので毎月分配型の高配当が期待されるものへの投資が続いている。(詳細は同レポートへ)

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市場のラビリンス
大震災から4ヵ月近く経とうとしていますが、心が痛むようなニュースが未だに多いように思います。
一定の目途がついたら若い方に任せたいと言われた方は、いつ辞めるのか聞かれると、辞めるなんて言っていないと強弁するのは、周りからみて分からなくても、ご本人が心のラビリンス(迷宮)で出口を探されておられるのかもしれません。しかし、原発の安全宣言とストレステスト問題は、関係される方々だけではなく、節電に励んでいる企業や国民全体をラビリンスに追い込むような事で、とても心が痛い問題です。
 本稿欄は、資本市場に関係した問題について解説などを試みる目的を持っていますので、なかなか解決しそうにない市場のラビリンスについて、触れておきたいと思います。

 一つ目は、高速化というラビリンスです。
勿論、取引の高速化は市場にとって良い事なのですが、むしろ取引情報の高速化とそれを利用したアルゴリズム取引の問題があります。ここでいうアルゴリズムとは、株式の売買を執行する為、コンピューターにプログラミングする処理手順の事を指しますが、代表的なものの中に売買注文の状況を読み取り、自らの売買注文を増加させたり取り消したりするものがあります。もしAさんとBさんが、このアルゴリズムを同じように使おうとしたら、少しでも早くこの売買情報を取り入れ、少しでも早く自らの売買注文を変更した方が有利になります。このように高速化は、ミリ秒単位からマイクロ秒単位まで進んでいきます。このこと自体はラビリンスではなく、同じような人たち(ファンドなど機関投資家や投資銀行の自己売買部門)の競争です。しかし、市場には彼らだけではなくアルゴリズムを使わない個人投資家なども参加しています。もし、コンピューターによる高速化されたアルゴリズムを使わない個人投資家が、市場の注文状況を見て、自らの売買注文を頻繁に変えていったらどうでしょうか。法律の禁止する相場操縦の禁止の中に、約定する意思のない注文を“見せ玉”として禁止していますが、プログラムで自動的に行うこと、人が行うこと、この違いを市場参加者全員に分かりやく説明する必要があります。実際に、個人投資家がアルゴリズムでの発注を誘因する目的で、“見せ玉”を利用した件が相場操縦行為として摘発されていますが、アルゴリズムに他の取引を誘因する目的のものが無いかどうも検証する必要があり、そのことを個人投資家に公表すべきではないでしょうか。

 二つ目は、空売りというラビリンスです。
空売りに関する法的な問題については、本欄“空売りはいけない行為なのか”(6月21日)で取り上げましたが、どの様な目的の空売りが良くて、どの様ものなら問題があるのかという事がラビリンスの入り口です。空売りは、誰かから株式を借りて売却し、その後買い戻す行為ですが、今度の金商法改正では、公募増資公表後、空売りした投資家には公募株を割り当ててはならないというルールが導入されます。しかし海外の投資家は、公募公表以前から公募情報が洩れている疑義を指摘しています。この指摘に沿うなら、公募公表前からの空売りにも公募株を割り当てるべきではないという事になりますが、公募情報を利用したものかどうか判別できないという事でしょうか。いずれにしても空売りがいけないのではなく、公募増資の仕方が問題だと思います。

 以上2つの市場のラビリンスから抜け出る為には、何の目的か明確にして、それに沿った議論を行い、その内容を市場参加者で共有する努力をすることではないでしょうか。それは、永田町のラビリンスも同じかもしれません。

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日本の金融機関にとって投資銀行業務とは=M&Aの場合
今はあまり言わなくなったが、ある程度の規模の金融機関なら、そのほとんどが投資銀行業務を強化しますと言っていた時期がある。中には米国の投資銀行をモデルとした投資銀行宣言を行っていた銀行もあった。ある時期とは、金融危機以前ということだが、リーマン破綻を契機に米国型投資銀行に対する不信が強まった。そしてそれは今でも解消されていないので、米国では投資銀行マンが余剰となるような投資銀行不況が続いているようだ。日本でも、証券や金融機関の投資銀行業務は冴えない。

 投資銀行業務の中核となるM&Aや上場企業のファイナンスは比較的高水準で、今後ともグローバル対応の強化や復興の為に資本増強需要で先行きは拡大が予想され、先行きは明るいはずだが、少なくとも証券会社の投資銀行部門の収益予想は厳しそうだ。それが何故なのかは、投資銀行業務の本質を考えなければならない。

 投資銀行部門が自らのM&A業務の状況を示すのに、よくリーグテーブルというものを使うが、これはM&A助言を行った案件をカウントする時、対象企業の時価総額を足し、その合計額でM&Aアドバイザーとしてのランキングを競う。これはM&Aで買収金額に合わせて、アドバイザーの成功報酬部分が決まることをベースにしている。しかし、大企業のM&Aほど日本では当事者間で基本的なことを決めてしまう場合が多く、例えば最近では新日鉄(時価総額1.6兆円)と住金(同7900億円)や東証(上場されていないが2~3000億円)と大証(970億円)などがそうだ。これらのケースは各社が複数のM&Aアドバイザーを指名しているが、アドバイザーへの報酬は多くても1千万程度ではないかと言われている。この収益性では、とても複数の人員を半年から1年以上は配置させるような案件ではないが、一旦案件が成立してしまえば、時価総額をアドバイザーのリーグテーブルに加算する。

 ビジネスは売上高ではなく収益性が重要という市場の原則から考えれば、一見リーグテーブルでM&Aを競うのは余り意味のない事の様に思える。しかし、このリーグテーブルを重視することは、アドバイザーとしての宣伝効果以外に、他の部門や他社との協働ビジネスへの波及効果を考えると別の側面が見えてくる。

 例えば、M&A案件の大きさ(時価総額)に係らず、当事者間で基本的なことが決められている案件で、実際の実務的な助言に対する報酬が少ない場合でも、
・M&Aで急遽必要になった資金の調達先を紹介する(他社との協働)
・案件の後で、必要な資本調達に関与する(自社内の他部門への波及)
・M&A後、不要な部門を売却したり、反対に強化する為に買収先を探したりする次のM&Aに関与(M&Aビジネス関与を持続させる)
などビジネスが拡がる可能性が高い。故に、投資銀行部門がリーグテーブルに拘ることの一理はある。

 つまりM&Aにおける投資銀行業務とは、助言を行うことだけの収益性は低くとも、その案件に関連するビジネスを取り込むことで、高収益性を維持できる仕事と言える。その為に、一見繋がらないような事や波及する事を案件に関連付け、全体をマネージメントする必要がある。また企業との持続的関係を維持する努力も必要だ。

 最近の日本の投資銀行業務が冴えないのは、この複数のビジネスを仕組む事について、障害のとなる事があったり(例えば、部門間及び顧客との利益相反問題が整理されていない)、助言活動中心となるバンカーそのものの能力不足(例えば、法規制の強化で以前ほど簡単に仕組めない)のように思える。

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IFRS導入議論にみる震災後日本の縮図
6月下旬に、日本の資本市場にとって非常に重要な議論が2つの審議会で始まっている。一つは、日本の金融業の中長期的な成長戦略を議論するワーキング・グループのスタート。もう一つは、2012年に導入(強制適用)するかどうか判断するとしていたIFRS(国際会計基準)の導入判断に関する検討を行う企業会計審議会での議論のスタート。どちらも日本市場に大きな影響を与えることが予想されるが、ここではIFRS導入に関する関係者の主張について、その発言意図を考えながら、簡単に見てみたい。
(以下、企業会計審議会資料の導入議論に関する部分を筆者が要約)

【金融担当大臣】
IFRSは、2010年3月期から任意適用が始まっているが、最近の米国の動向や大震災の影響などを考えると、仮に2012年に強制適用を決めるとしても、準備期間は今まで予定していた3年間ではなく、5~7年間の十分な設定準備期間を設ける。

【米国の動向】
・IFRSと米国会計基準の定める機構同士で共通化(コンバージェンス)の作業を行っていたが、ことし4月に、共通化を6月まで完了するとしていた“金融商品会計”“収益認識”“リース”について年末まで共通化作業期限を延長している。
・米SECは、5月にIFRSを米国基準に5~7年かけて取り込んでいくという考え方を示したスタッフペーバー(SECの正式決定ではない)を公表している。

【産業界要望】(5月25日)
・上場企業の連結財務諸表へのIFRSの適用について、上場会社の適用する範囲や単体決算の日本基準の在り方など早急に議論を開始すべきで、その際に米国やインド・中国などの導入状況も勘案していく必要がある。
・適用時には2年に遡って財務諸表を作成し直す必要があるので、企業側に不要な事務コストを発生させないためにも5年以上の十分な準備期間(米国基準を利用している企業には猶予期間)が必要。

【2012年 連合の重点政策】
労働者など多様な関係者の利益に資する会計基準の実現の為に、IFRSを強制適用することを当面見送る方針を早期に明確にする。

【経団連のIFESの適用に関する早期検討要望】(6月29日)
 IFRSの導入の判断をする2012年に向け、早急に議論を始めることと、その議論を踏まえ、IFRSを定める機構(IASB)に関して会計関係者が一丸となった意見発信を行っていく必要がある。

 ここで少し冷静に考えてみたいが、そもそもIFRS導入は何の為だったのだろうか。
2009年2月に公表された企業会計審議会「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)(案)」においては、各国投資者や企業の行動がグローバル化する中で、投資者保護、効率的な金融資本市場の形成、企業の資金調達のために比較可能性が重要で、その為の共通会計ルールとしてIFRSを強制適用するかどうか検討しましょうということだった。

 つまり、グローバルな企業活動を助けたり、内外投資家の信頼を得る金融・資本市場にする為にこそ必要だったはずだが、その議論も復活することを一投資家として望みたい。確かに、IFRSの本拠たる欧州の金融システムは未だ債務問題の動揺が収まらないし、震災対応で企業が大変な状況にあることも分かるが、市場機能と市場の会計ルールを強化してこそ、日本の企業活動を円滑に支援しうる金融・資本市場たることを、関係者の皆様が思い出して欲しい。

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