*All archives* |  *Admin*

2011/10
<<  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  >>
新たに始まる空売り規制とその背景
上期決算発表も本格化しているが、証券会社の決算発表は予想通り厳しい内容となっている。投信販売は、毎月分配型を中心に順調なものの、株式関係の収益環境悪化が続いている。特に、公募増資が大きく減少しているので、トレーディング収益の悪化とともに投資銀行関連部門の縮小は避けられそうにない。

 一方、12月1日より新たな公募増資に関連する規則が施行される。
これは、上場企業の公募増資時に、一時的に空売りしたものに公募増資での新株を割り当てないというもので、次の様な措置となる。(金融商品取引法施行令第26条の6)

1.何人も、増資公表後、新株等の発行価格決定までの間に空売りを行った場合には、当該増資に応じて取得した新株等により空売りに係る借入れポジションの解消を行ってはならないこととする。
2.証券会社に対し、新株等の割当て前に、上記1の規制の内容等を周知するための書面交付を義務付けることとする。

この措置の背景は、金融危機後に日本の大企業による大規模な公募増資(発行済株式総数の3割以上)が相次ぎ、公募増資そのもののあり方や、公募増資銘柄の大幅な下落に対して、海外機関投資家が問題視するようになったことがある。公募増資によるリスクマネーの市場からの調達は、企業にとって重要な発行市場の機能だろうが、株主からみると何の断りもなく自分の持分が3割も4割も希薄化するのは大きなダメージだ。だから、公募増資は売り材料となる。この日本企業の大規模な公募増資に対して、株主の承認を得る方法に変えるか(会社法や取引所規則の改定で)、株主にとってダメージが少ないと言われるライツ・イシューの制度及び態勢整備が待たれる。

一方、この大規模な公募増資よる株価下落も、既存株主・発行企業双方にとって大きな負担となる。株価が下がって嬉しいのは、公募増資による新株を購入しようとする投資家と、新株の販売がし易くなる証券会社だが、株価の下落に関しては2つの問題がある。

・公募増資公表前の(関係者)想定外の株価下落=これについては、大規模な公募増資で行われるグローバル・オファーリング(国内外同時募集)において、海外投資家に公表前に事前に投資ニーズをヒアリングする慣行が引受主幹事にあり、ここから情報が事前に漏れ、海外ファンドなどが空売りを仕掛けるのではないかとの疑惑があるが、若しあればインサイダー取引となるので、当局は徹底的した調査が必要かもしれない。
・公募増資公表後から値決め日までの株価下落=基本的には株主や投資家が公募増資の資金使途をどう考えるによるが、現状では株価が下落することが多い。今回の規制では、この時期に空売りしたものに対する公募株の割り当てを禁じたが、空売りや売って買う裁定取引を行うことが悪いという訳ではない。

公募株の値決めに重要なこの時期に、公募株を受け取ることを前提に空売り(信用取引を含む)するなということだが、一般には少し分かり難い。
例えば、以下の様なケースは、今回のルールに抵触しないとされ、公募株の割当てを受けることが出来る。
(パブリックコメントの当局回答から、筆者が抜粋)
○上記の期間中、空売りして買い戻していれば、公募株の割当てを受けることが出来る。
○トータル・レート・オブ・リターン・スワップ(証券会社との差金決済取引)やその他のエクイティ・スワップ、CFDなどで売却していても、公募株の割当てを受けることが出来る。
○この規定は公募増資のみに適用され、売出しや新株予約権付社債(CB)の場合の空売りには適用されない。
○PTSやダークプールでの空売りには適用されない。

今回の規制は、かなり技術的な問題(公募値決め)だと思われるが、本質的な日本の公募増資のあり方に関して、この機会に業界及びその関係者でキチットと整理しておくべきだろう。
ちなみに、この上半期(4月~9月)の公募増資は約4000億円で、前半期に比べ3分の1以下に減少している。発行額の少ない今こそ、本質的な議論をするときではないだろうか。

スポンサーサイト

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

再び注目されるコーポレートガバナンス
 大王製紙やオリンパスの件で、再びコーポレートガナバンスの在り方が注目されている。両社とも事件と呼ぶような事態になりそうだが、詳細な解明とその説明が待たれる。
誰が、株主や投資家、そして取引先や従業員などのステークホルダーに説明していくかというと、当然両社の経営者=取締役ということになるが、今回の件に関して両社の取締役会の監督機能や監査役会のチェック機能が正常に働いていたのか検証される必要があるだろう。自ら検証できなければ、外部の識者による第三者委員会の調査ということになるのは、過去の上場会社の不祥事で辿ったことだ。
 コーポレートガバナンス改革はもう十年来のことだが、個人も企業も完全に不祥事がなくなるということはなく、企業においては、どうチェックしていくかという態勢整備に注力されていて、その情報公開が内部統制報告書(金商法)やコーポレートガバナンス報告書(取引所)となっている。
ちなみに、両社のガバナンス強化の上場は次のようなものだ。

【大王製紙】
・オーナー型企業と言われるが、支配株主はいない。
・取締役会は13名の取締役で構成あれているが、社外取締役はいない。
・監査役会は5名で構成され、うち3名が社外監査役だが、このうち2名は会社と顧問契約や何らかの利害関係がある弁護士であり、当社が規定する独立役員に準じるものは1名のみとなっている。

【オリンパス】
・支配株主はいなく、筆頭株主は日本生命の8.2%保有。
・取締役会は15名で構成されており、うち3名が社外取締役。
・その3名は、医学博士や日経グループの経営者・投資コンサルタントで、いずれも会社との利害関係があるので独立役員ではない。
・監査役会は4名で構成され、うち2名が社外監査役。そのうち1名が独立役員となっている。
・社外取締役や社外監査役へのサポート体制は、取締役会の事前の資料配布および説明としている。

上場会社においては、その経営は業務執行の権限と監督責任が形式的には分離されるようになってきているが、特に監督機能を有する取締役会には外部の視点でチェックが必要とされ、その為、企業活動や経営陣とは直接利害関係を持たない独立性の強い社外取締役が望まれている。現在の会社法に定める社外取締役や社外監査役の規定では、社外という名称のイメージに反して企業との利害関係がある場合が多く、外部チェックという機能を果たしているかどうかが疑問視されていた。
これに対して東証が上場規則(企業行動規範)で、独立役員(取締役でも監査役でも可)を1名以上採用すべきとして2年近く経過したが、本年7月末時点では東証上場の2271社中で、独立役員未採用会社は3社のみで、99.9%の採用率となっている。但し、その内7割は監査役のみで、取締役での独立役員の採用は3割に過ぎない。

独立性の高い取締役を採用しない主な俗説としては、会社の業務が分かっていないとか適切な人材不足を上げるケースが多いが、むしろ自社の内部統制システムなどの利用で、外部からのチェックに対する支援が必要なのではないだろうか。日本の株式市場再生の為にも、今回の2社の事件を機に、再びコーポレートガバナンス強化への取組みが行われることを期待したい。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

仲介者としての証券業の現状の課題
一般の方々には余り興味がないかも知れませんが、証券会社は株式や債券などの資本市場において市場仲介者として機能しています。何を仲介しているか、やさしく言い切ると、資金調達したい企業や発行者と投資家のニーズ、買いたい投資家と売りたい投資家のニーズを仲介している、という中学校の公民の教科書のような答えで、読まれている方には恐縮ですが、しかし、これが基本です。
この証券業界にとって、リーマンショック後の金融危機はまだ終わっていません。証券だけではなく、銀行や保険もそうかもしれませんが、資本市場に関係している業者といわれる企業の、市場での評価(株価)水準は歴史的に低いままです。
 今、市場で問題となっていることの幾つかのテーマは、金融危機及びその後の市場対策で問題視され、G20などでグローバルの規制や監視を実施していこうとしていますが、各国で目的は共有されているものの、具体的施策など欧米ではこれからとなります。
・国際的に影響力の強い格付機関の監視
・市場に影響力の強いヘッジファンドに対する規制の検討
・市場取引の増加期待と他の市場参加者への悪影響懸念の両方が対立するアルゴリズムを利用したHFT(超高速取引)
つまりグローバルに見ての金融危機後処理は、まだ終わっていないという事でしょうが、この事と日本の金融特に証券業は余り関係ありません。しかし、日本の証券業は未だ金融危機が継続しているような株価水準となっています。筆者は、証券株が割安だからという事を言いたいのではなく、それなりの問題があるので現在の市場評価になっているのだから、問題点を解消していきましょうという立場です(業務コンサルタントとして)。

 添付したファイルでは、現在、証券業界をとりまく環境を4つに切り分けて、現時点で日本の証券業界が注力もしくは注目していると思われることをイメージ図化してみました。

・1枚目で取り上げた項目は、最近、業界関係者(行政・協会・各証券及びアナリスト)が発信している情報や、業界関係者からのヒアリングにより、注力されていると思われるテーマを筆者が選択しました。(これ以外にも、市場や業界の検討テーマはありますが、現時点では差し迫って問題解決の為に、真摯な議論が行われているように見えません)

・2枚目は、問題解決に向けた理想ですが、4つの環境がリンケージしていることが重要だと考えます。特に、この業界は規制業種なので、市場環境の変化を受けて行政等が問題解決の起点になることが望まれます。

・その為には、証券会社自らの行政等への提言力が必要になってきますが、証券会社は仲介者なので提言の背景には投資家の潜在的なニーズが必要だと考えます。なによりも、証券会社が仲介者として、市場や投資家との会話力を回復することが必要でしょうというのが、話のオチになります。

☆現時点での証券業界の課題等

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

市場対策としての“空売り規制等”を考える
 本稿では、もう何度か取り上げている本邦の“空売り規制等”が10月末で期限となるが、予想通り来年4月末まで6ヵ月延長される。この規制は2008年のリーマンショックの直後から市場対策として取り入れられ、6ヵ月若しくは3ヵ月毎に延長され、今回で10回目の延長となる。規制の内容は以下の3つ。

①売付けの際に株の手当てがなされていない空売り(Naked Short Selling)の禁止
②一定規模(発行済株式総数の原則0.25%)以上の空売りポジションの保有者に対する、証券会社を通じた取引所への報告の義務付け。取引所による当該情報の公表。
③自社株の市場買付ルール(1日の買付額は、全体の25%以下、引け前30分の買付を行わない)の停止。(つまり→現在は、他の市場参加者と同様、買付数量や時間に制限がない状況)

其々に関して、市場対策としての意味を改めて考えてみたい。

一般論としては、市場対策で空売りを禁止してしまうこともある。今夏の欧州債務危機においても、欧州の一部の国が、銀行株を一時的に空売り禁止にした事例もある。しかし、空売りそのものは市場の流動性を確保する上で必要というのが、市場関係者の一般的な見識になっている。リーマンショック後3年以上も続いている日本の空売り規制も、空売りそのものを禁止するものではない。空売りしても良いが、ちゃんと株式を借りてから売り注文を出してという事になっているが、個人投資家が利用する信用取引での空売りは、日証金や証券会社から株式を借りて売る。海外のファンドなどの投資家は、外国証券が信託銀行などを通じて日本の機関投資家など大株主から借りた株式を売却する。
ここで問題となるのは、市場の取引シェア約2割の個人投資家の3倍の取引規模になる海外投資家の空売りにおける株式を借りる時期のことだ。個人投資家にとっては、日証金か証券会社から株式を借りて売るのは、信用取引の当たり前のルールだが、海外投資家にとって借りる予定で株式を売るということがある。例えば、売却してから決済は4日目なので、3日目までの株式を借りて4日目の決済に間に合わせる。場合によっては、株式を借りるのが間に合わない場合は、フェイルといって手数料を払って決済そのものを延長してしまう事もあった。この様なことを禁止したのが①のルールとなっている。

次の報告義務に関して、もともと注文を取り続ぐ証券会社は、投資家の売りが空売りかどうか確認して、取引所に報告する義務がある。②は、一定量の空売りをした投資家自らが報告義務を負うのだが、この報告内容が取引所で公衆縦覧される。実際の報告書を見てみると、外国証券や海外の裁定ファンドなどの報告が多い。報告義務があるから、不要不急の空売りが減少し、相場が安定するわけではない。しかし、個人投資家にとって、自分達の3倍以上の取引量を持つ海外投資家の空売り動向を推測そうことが出来る数少ない情報の一つとなっている。

三番目の自社株市場買付けルールの停止は、最後の買い手としての上場企業自らの市場からの自社株取得を促すものであることは間違いない。

一方、日本の空売り規制で元々ある売り下がりを禁じたアップティック・ルールは、国際的にみてローカル・ルール化(米国でも2007年に廃止)しているので、超高速化したアルゴリズム取引の時代に合わないとの市場関係者の意見は強い。筆者もそう考えるが、①と②は明かに個人投資家と海外投資家の情報格差是正に繋がるので、流動性低下の心配や若干の報告コスト増を懸念する外国証券を説得してでも、何等かの恒久化は検討すべきと考える。

なお、参考までに注目されている銘柄の空売りポジション(個々に0.25%以上の報告の合算、10月21日公表分)と、直近の信用残高(ネット証券Aの投資家向け情報、10月24日情報提供分)を比較してみる。
(以下の数字は、あくまでも空売り規制の意味を考える目的で集計したもので、集計には最善を尽くしていますが、報告数字の正確性や適時性には責任は負いません。よって、投資判断や投資助言には利用しないで下さい)

●オリンパス=大口空売りポジション、1183.2万株:信用売り残高216.1万株
●東京電力=大口空売りポジション、1235.8万株:信用売り残高6230万株
●JUKI=大口空売りポジション、717万株:信用売り残高717万株

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

世界の中の日本市場
欧州債務問題と米中景気動向に揺れる株式市場ですが、たまには日本市場を少し離して見てみては如何でしょうか。
 世界取引所連盟(WFE: World Federation of Exchanges)では、毎月各取引所から報告されるデータに基づいて様々な統計データを公表していますが、今年に入ってからのドルベースの世界の取引所の売買金額データに基づき、日本市場の位置を纏めてみました。
・今年1月から9月までの世界の株式市場の出来高は、ドルベースで49.67兆ドルとなり、前年比で5.6%増加。
・この期間の増加率が最も高いのは、意外(?)にも東証の14%です。
・増加率が前年同期比でマイナスなのは、ナスダック(-1.5%)と深圳(-0.2%)です。
・ドルベースの売買金額で東京と上海が抜きつ抜かれつでしたが、最近の上海の売買高減少が気になります。
・月次の売買金額ベースでは、世界市場の合計が通常は5兆ドルベースでしたが、日本の大震災が起きた3月と、欧州不安が再燃した8月には大きく増加しています。

別紙に、イメージ図を作成しましたので、ご参考までに。

☆世界の中の日本株式流通市場

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

証券会社の役割について考える-幻冬舎MBO問題より
証券会社の機能とは何なのか、改めて考えさせられる案件でした。
少し前になりますが、今年2月の幻冬舎の臨時株主総会でT証券の議決権の行使が問題となりました。総会での議案は、MBOの絡んだスクーズアウト(少数株主の排除←役員などにより設立された会社への完全子会社化が目的)での定款の変更でしたが、T証券が保有する株の議決権が全体の35.4%を占め、T証券の投票如何で定款変更に必要な特別決議(総会出席の3分の2以上必要)が成立しなくなる可能性がありました。つまり、幻冬舎の見城社長が目論んだMBOが成立しなくなるかもしれなかったので、この事はマスコミでも取り上げられ、世間の注目を集めました。

 経営者でも、発行企業であっても、そして証券会社でも、株が安いので買い集めるというのは、それぞれの立場で市場ルールに沿って行うことが可能です。しかし、経営者や発行会社は自社のインサーダー情報を有しているので、それを公表してからでないと買う事が出来ない。証券会社は、市場仲介者であると伴に自社のポジションで安く買って高く売るという自己売買取引など行うことが出来ますが、通常は議決権に影響の出そうな株数までは買わない、つまり市場仲介者(取引所へ売買を取り次く者)として他の投資家に大きな影響を与えるような自己ポジションの裁定取引は行うべきではないとの不文律がありました。

何故、T証券が3分の1以上の幻冬舎株を保有(市場買付なのでTOBでなくとも良い)したかというと、当初は顧客の信用取引分ということでしたが、この問題は信用取引の議決権の行使問題というと一般の個人投資家には解り難いので、この件の推移を整理して、その内容を見た上で、何が問題としてあるのか考えるできだと思います。

【幻冬舎のMBOに関する推移】
・2010年10月29日、幻冬舎は見城社長の持株会社によるMBOを公表。買付価格22万円(直前株価14万円台)
・2010年11月1日、TOB(公開買付)開始
・2010年11月12日、イザベル(今回のT証券の信用取引顧客)設立
・2010年11月24日、TOB期間中にもかかわらず、イザベルが幻冬舎株の買付けを開始。合計31回(日数ベース、最終買付日は2011年1月13日)10,198株(発行済株式総数の28.58%=自社株保有もあるので、議決権ベースでは35.4%)を取得
・2010年12月13日、MBOのTOBが目標に達せず、TOB価格を24万8300円に引き上げ。
・2011年1月7日、臨時株主総会の基準日。イザベルが取得した株式は信用取引によるものなので、基準日までT証券にイザベルから相当資金が払い込まれなかった為、T証券が議決権を保有と幻冬舎が公表(2月7日)
・2011年2月15日、臨時株主総会当日、T証券の議決権の行使がMBOの可否にかかわる為、注目されたが、T証券は総会を欠席、議決権も未行使で、MBOが実質的に成立。幻冬舎株は、3月に上場廃止へ

【当該信用取引の内容について】
・提出された大量保有報告書(訂正報告書)によると、取得資金は、23億8562万円なので、平均取得単価は23万3930円となります。但し、信用取引とされている内容をみると、イザベルの自己資金は6560.4万円とされ、36.3倍のレバレッジが掛かっていて、個人投資家が利用するような信用取引ではありません。

日本証券業協会では、この問題を信用取引で担保にした株式の議決権の問題として検討し、報告書を公表(10月11日)しましたが、むしろ問題は、証券会社としての情報の発信の仕方ではないでしょうか。

証券会社と言えども、MBOのTOB価格が割安だと考えれば、自ら投資しても企業を取得しても構いません。また、割安を前提に別の買い手を探して自己ポジションで裁定取引を行うことも可能です。しかし、問題は、自己の取得でもなく顧客(イザベルという新設の投資会社)の信用取引としたところに、ブローカー(市場へ取引を取り次ぐ者)としての分かり難さがあります。
今、証券会社に求められていることは、ブローカーとして最善の行為をすること、自己のディーラーと利益を求めること、それぞれが重要なのですから、問題点を明確にして市場への情報発信を明確にする努力ではないでしょうか。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

自社株取得の出口戦略
 投資家なら、誰しも安く買って高く売る事を前提に売買を行おうとする。アナリストのレポートを読んだり、チャート分析に頼ってみたりするのだが、なかなか儘ならぬ結果となる事が多いのは当然の事だろう。しかし、安く買って高く売るのに最も近い立場にいるのが上場企業だろう。昔の商法では、資本充実の原則から、一旦株主や投資家から集めた資本を減少させるような自社株取得は出来なかったが、バブル崩壊後の金融機関の持ち合い解消に対応することと、資本そのものを欧米企業のように経営戦略として出し入れが出来る資本政策の柔軟化などから、自社株を上場企業自ら買い戻すことが可能になって10年以上が経過した。
誤解ないよう言いたいが、上場企業も自らの株式を安く買って高く売って良いのだ。そして、自らの業績は自らがもっとも良く知っているのだからアナリスト要らずで、チャートなどに頼る必要もない。
但し、投資家とは異なる売買ルールがある。それは、買うときも売る時も株主や投資家に公表してから売買を行う。前回は、買う方法について触れたので、今回は売り方についてコメントしてみたい。

 実際、上場会社が自社株を市場の立会時間内の取引で売ることは、持株会の参加者が脱会する以外には用いられることはない。しかし、自社株取得で買い取った株=金庫株を以下の方法で他者に売り渡すことが出来る。少しくどくて申し訳ないが、自社株取得の時のように市場(立会時間内)で自由に売却することは出来ないが、自社株を高く売っても良い。但し、この場合は利益には計上できず、儲かった(?)部分は資本準備金に別途計上される。(仮に自社株を取得価格以下で売却した場合は、この資本準備金のこの勘定科目にマイナスがたつ)

主な金庫株の処分方法は、以下のようなものがある。

①金庫株の売出し
自社株取得した金庫株は、資本勘定から差し引かれる(マイナス要因として計上)が、取得した株を売り出すときはこの資本勘定のマイナスが解消され資本が復活することになる。この金庫株の売出しは、結果としては増資するのと同じことになる。手続きは他の株主が売り出す時と同じだが、当然自らが抱えるインサイダー情報には配慮する必要があるので、インサイダー情報公表後に行わなければならない。

②M&Aの対価として利用
つまりお金の代わりに、相手に企業の株主に対して金庫株を交付する。この方法は、商法から会社法に変わった時、対価の柔軟化で認められた方法だ。安く自社株を買っておいて、株価が回復した時にM&Aの買収対価として利用すれば、結果として資本準備金も厚くなり、株主にもメリットが生じることになる。
但し、この方法は現在①の方法と同様にインサイダー情報に配慮しなければならない。もし対象となるM&Aが株価に影響を及ぼす様なM&Aであれば、公表までいくらの金庫株を渡すか決定できないことになる。その為、この方法は使い難いとされていて、現在金融審議会ではM&Aで金庫株を渡す場合に、インサイダー取引の対象となる売買の定義から除外する検討がされている。

③自社株を消却する
将来の資本調達とは別にして、一旦自社株を消却してしまうことは、株主にとって一株当たりの利益を高めるので、機関投資家などから好ましい処置と考えられている。企業財務の原則論としては、その通りかもしれないが、企業側に選択肢を多く与えることで自社株取得と促進させるべきと筆者は考える為、あまり消却に拘る必要もないと思う。

④金庫株としてそのまま保有する
①から③までを選択するまでのあいだ、取りあえずそのまま保有するケースが多いが、別途次の様な使い道の為に、保有し続けておく場合もある。
・新株予約権を株主や投資家に付与した場合、その行使に備える。
・役社員等に付与したストックオプションの行使に備える。
・発行した新株予約権付社債(CB=転換社債)の株式への転換に備える。
要は何らかの形で発行した新株予約権の行使に備えるという事だ。

最後のCB利用の特別なスキームとして、次の様なものがある。
自社株取得の資金調達を目的にCBを発行し、その資金で自社株を取得、その後の株価上昇でCBの転換が進めば、買い付けた自社株(金庫株)を転換の際に渡す、文字どうり安く買って高く売り仕組みを、リキャップCBと呼んでいる。例え手元資金が無くとも、自社株取得は可能なのだ。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

アルゴリズム取引の概要
東証のarrowheadの導入前に、高速売買のデモを見た時は少し驚いた。どんなに動体視力が良い人でも、目にも止まらぬスピード。ミリ秒なのだから当たり前だが、その高速性を実感できた少しの感動があった。

最近、高速化に対応しているというネット証券のある銘柄の板(売買値段の注文状況)を見てみた。アルゴリズム取引が入るような代表的な銘柄だから、板の変化も激しい。高速で値段が付いていくのが分かるが、時として1%ぐらい値段が飛んでいるように感じる動きもあれば、瞬時に板の状況が大きく変化する時もある。これだと、目で板を追うような売買は無理だろうと思った。

 新しい技術に対応する時には、それにあった手法が生まれるものだろう。アルゴリズムに対抗するにはアルゴリズムもあるだろうし、まったく別の売買手法は派生しても良い。アルゴリズム行うで株式売買を肯定するも否定するも良いのだが、アルゴリズムの使われ方や効果などを理解せずに議論するのも問題だろう。

現時点でのアルゴリズム取引に関する概要を纏めてみた。

・アルゴリズム取引の現状と目的

・アルゴリズムを構成する情報とその処理

・基本的なアルゴリズムの戦略

・アルゴリズム取引に対する期待と不安



☆アルゴリズム取引の概要

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

今こそ期待したい自社株買い増加
世界経済の先行きも不透明なので、手元資金を手厚くしておきたい。個人として気持ちは分からないでもないが、上場企業の財務戦略としては如何なものだろか。

日経によると、この3月期末時点で上場会社の手元資金(現預金+短期の有価証券)は過去最高額となったようで、連続比較ができる1076社(金融、新興市場企業は除く)を対象に集計した手元資金は、51兆7474億円と前年度末より4%増えている。

一方、2011年度上半期(4月~9月)の自社株取得は、6725億円と前年同期比8割増加したようだが、この水準でも金融危機前の自社株取得の3分の1にも満たない。ちなみに、2008年の上場会社の自社株取得額は4兆302億円、その前の年は4兆4942億円と今とは全く水準が違う。
潤沢な手元資金、前年より増えているとは言えまだ低水準の自社株取得。せめて、手元資金の1割でも自社株買いが行われば、欧州不安や世界経済の減速にもっと抵抗力のある日本市場になるのではと淡く期待してしまう。BPR(株価純資産倍率)が1倍を大きく割り込んでいる企業の経営者は、真っ先に自社株買いという投資案件を優先していただきたい。

 その自社株買いの具体的な方法と処理について、簡単に触れておきたい。
先ず上場企業の自社株取得についていうと、3つの方法がある。ただし、自らの株式を売買する上場企業であっても市場の1参加者として取引ルールに従わなければならない。

①TOB(公開買付)による自社株取得
これは、主に大株主などから纏まった買い取り要請がある時に利用される。自社株を一度に大量に取得しようとする時に適していると言われるが、20営業日以上の期間に同一価格で取得することになるし、株主への周知も必要なことから、手間やコストが他の方法よりもかかる。それでも、売却を予定している大株主以外の他の株主へもTOB応募の参加機会を与えているので、株主平等原則から優れた方法と言われている。なお、MOBの場合のように買取価格に大幅なプレミアムがつくことはなく、あっても数%である。主に発行済み株式数の5~10%以上を自社株取得しようとする場合に使われる。
(※自社株といえども、市場外取引で株式を5%以上取得する場合は、TOBによらなければならない。以下の2つの方法は、一応市場(取引所)取引なので、このTOB規制はかからない。)

②取引所での立会時間外取引による自社株取得
金融機関からの買取りや持合い解消など場合に利用される。方法としては、前日の取引時間終了後に、翌日の実施を公表、買取価格は前日の終値で行う。周知としては1日しかないので、売り手との合意が事前に必要になるが、東証のToSTNeT-3や大証のJ-NeTを使うことで、立会時間外だけれども市場取引となる。以前は、注文時間優先だったが、本来自社株として取得すべき上場企業に先んじて業者などの鞘取り行為もあったために、委託注文の案分方式に変更されている。主に、売り手が決まっている場合の発行済み数%までの自社株取得に利用されている。

③市場(立会時間内)からの買付けによる自社株取得
この方法が、株主や投資家から最も期待されているのは当然だ。しかし、自社株取得においても上場企業は市場の1参加者なので、市場取引ルールは守らなければならない。例えば、企業は自らのインサイダー情報をもっているが、当然公表後でなければ自社株であっても取得することはできない。だから上場企業が市場から自社株を取得できる時期は限られているが、一般的には、総会のある上期より、上期決算発表後の下期の方が可能な期間が長くなる。
もう一つ注意しなければならない市場取引ルールは、不正取引としての相場操縦行為だが、これに配慮して上場企業の自社株取得に対するルールがあった。1日の出来高の25%以下しか買付けないとか、引け前の30分間の買付けを行わないといったものだが、この部分については金融危機後の空売り規制とともに停止され、現在は100%企業の自社株買いであっても良いし、引け間際に自社株を取得することも出来る。

 上場企業が、自らの潤沢な手元資金、市況環境、取得規制の緩和を上手に使うことを期待し、日本市場が強さを回復することを祈りたい。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

最近の投資信託動向について、10月上旬時点
9月も世界的に市場変動が大きく、投信の残高もその影響を受けて、公募投信の残高は41.9兆円と前月比3.9兆円(8.5%)の減少となっています。また、ブラジルレアルや豪ドルの急落によって、今まで順調に資金流入していた通貨選択型でも、一部に資金流出がみられました。
詳しくは、三菱アセット・ブレインが公表している下記資料をご参考ください。

☆投信マーケット概況 9月号

 また、投信の運用会社が発信する情報に関して、市況の動きが激しかったことから市場動向の解説的な情報発信が増加しています。特にブラジルレアルの動向や為替介入に関するものも目立ちます。情報の発信の仕方としては、ウィークリーのレポートの比率が増加しており、運用各社の情報発信体制の強化が窺えます。

 今後、投信の運用会社が何に注目しているかは、新規設定の新しい投信の投資テーマを見れば、ある程度推測することが出来ますが、10月以降の投資では、大きく下げた株式市場の世界的な見直しや高金利通貨選択の継続も、主な投資テーマになっています。

☆最近の投信運用会社の情報提供の傾向と運用テーマ(10月上旬時点)

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

証券業界の概況について、やさしく見てみる
本稿欄では、証券業界に関係ある様々なことに対してコメントしていますが、その業界の概況について、投資家の視点から取り上げてみたいと思います。

【証券会社の定義】証券会社は、法的には第一種金融商品取引業者でありますが、この中には証券会社もあればFX専業者なども含まれます。第一種金融商品取引業者は、個人投資家に対して様々な金融商品や金融サービスを提供してすることが出来ますが、証券会社と言う名称の利用は、第一種金融商品取引業者に限られ、かつ実際に業務を行う為には日本証券業協会への加入が必要になってきます。

【証券会社の業容】
・証券会社数(本年3月末)=293社ありますが、その営業拠点は2219店舗(本支店1856、営業所363)となっており、証券会社数は減少傾向ですが、営業拠点の方は10年間で余り大きな変動はありません。

・証券会社の従業員数(昨年12月末)=9.2万人で0.1万人減。2年連続の減少です。ITバブル崩壊後、2003年末時点の8.5万人を底に2008年まで増加しましたが、金融危機後は再び減少しています。
 証券会社の人間が、実際に営業活動を行う為には外務員登録が必要ですが、この人数は昨年末時点で7.6万人、つまり証券会社の従業員のうち82%が何らかの営業活動に従事していることになります。この人数には、法人の営業や商品部門のセールス、営業部門の支援部隊も含まれますので、実際に個人に向かう営業部員は、この半分強程度とみられます。
なお、証券の外務員登録をしている者の数は、昨年末で53.4万人いますが、証券会社以外では、金融機関で主に投信を販売する方々も含まれ、この人数は36.2万人と証券業界の4.7倍もいます。証券業界に人間としては、少しのショックを感じますが、実際の投信販売額では証券会社と金融機関が同じ程度の販売シェアというのが多少の慰みでしょうか。また、証券仲介業者での登録数も9.6万人と証券会社よりも多い状況となっています。

・証券会社の売上げ(営業収益)=昨年度(2011年3月末)は前年比13.7%減の2兆9188億円ですが、このうち65.1%が株式や投信販売などの手数料収入、9.1%が株式や債券などのトレーディング収益、14.7%が信用取引などの金利収入も含む金融収益となっています。主力の手数料収入に占める株式の割合(特に日本株)は年々低下していますが、その分投信と外債での手数料が補っています。

・証券会社の利益=証券会社の昨年度(2011年3月末)の当期純損益は再びマイナスに転じ、2656の損失となっています。自己資本に対する利益率もマイナス4.2%となり、これも金融危機直後の水準までマイナス幅が拡大していますが、この上期に関しても改善は難しそうです。なお、この利益率を業態別にみれば、以下のような状況です。
大手証券・・・マイナス2.5%(前期3.5%)
外国証券・・・1.5%(前期5.5%)
その他証券・・・マイナス6.6%(前期2.5%)

以上の数字は、証券業協会の2011年FACT BOOKからのものですが、今年下期は改善傾向を信じたい思いです。(証券会社の株価は、ちょっと記憶にない30数年来の安値水準です。)

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

日本からみたヘッジファンド
ヘッジファンドという語感は、業界内にあっては洗練された運用技術、世間一般には何かの怪しさが付きまとっている。この相反するイメージは、ヘッジファンドが主張することが的を得ていること、その割には外部に発信する自らの情報が少ない事のギャップによるのだろうが、もともと特定の投資から資金を集め、それをごく限られた人数で運用し、その運用成果次第でファンドの報酬が決まる仕組みで、投資家以外への外部露出は限定されている。しかし、レバレッジ取引を大きく行うイメージがあり、市場価格が大きく変動した時の理由探しに、よくヘッジファンドが使われたりもする。

 そのヘッジファンドの日本における概況は次のようなものだ。(金融庁:ファンドモニタリング調査の集計結果について平成23年9月より)
○平成23年3月末で、ファンド数446本、運用資産額合計 3兆0350億円
○平成22年度(昨年度)の販売は、ファンド数239本、運用資産額合計 5387億円(この数字の大半は、公募投信で、私募の部分は96本、517億円)
以上の数字は、日本で運用されているヘッジファンド(つまり運用者が日本の金商法に基づいた業者)で、またこの中にはヘッジファンド的運用を行う公募の投資信託も含まれている。

 ただ、日本の投資家は日本のヘッジファンドだけを買っている訳ではない。少し古いが、経済産業省のヘッジファンド研究会資料(日銀作成)で2006年のヘッジファンドの国別運用資産残高では、米国が60%、英国が22.4%、ユーロ圏が8.3%、日本を除くアジアが5.7%、そして日本は0.5%に過ぎない。つまり、日本の投資家の投資するヘッジファンドのほとんどが、欧米の海外で運用されている。

 このヘッジファンドの特徴と問題点については、主に次の様な点が上げられている。

①レバレッジ運用=このレバレッジの与信を誰が与えているかと言えば、ヘッジファンドから注文を受ける投資銀行(この業務に関してプライム・ブローカーと呼ばれる)が対応。つまりヘッジファンドは、資金や株式などの投資対象資産を貸して、ヘッジファンドからの注文を受ける。ヘッジファンドは、年に1割強が運用失敗から清算になるものがあるが、与信を供給する投資銀行としては、市場変動のリスク管理だけではなく、異変発生時の流動性リスク管理の必要性も指摘されている。

②運用の自由度が高い=空売りを積極的に活用するので、基本は売り買い両方が可能な投資対象を選択。また資産の売買頻度が一般のファンドより格段に高い。投資対象も多岐に渡るが、中には時価評価が困難なものもある。


③ガバナンスの問題(誰がチェックするのか)=ファンドは運用に特化した簡素な組織で、必要な機能で運用関係以外は外部委託する。例えば、運用資産の管理と決済などはカストティ銀行に、リスク管理は発注先の投資銀行に、投資資産の時価評価などはアドミニストレーターに任せる。運用の指図に関してのチェックは、理事や監査役を含めた委員会で行うが、ファンドマネージャーの投資活動を監視するにはガバナンス権限が不十分という指摘もある。

また、金融危機とは直接関係ないとは思われるが、金融危機後のG20ではヘッジファンドに対する監視体制を強めようということで合意がなされており、比較的ファンドビジネスに寛容な米国でも、次のようなヘッジファンドの届出制度が導入されている。(以下、ドットフランク法)
・ファンドの運用資産が1億ドル以上の場合,ファンドはSECへの登録を義務づけられた。
・登録されたファンドは,そのヘッジファンドに関する情報をSECに報告義務あり
更に、投資銀行はボルカールールにより高リスク取引を規制されるため、
・自己のトレーディングやヘッジファンド・PEファンドへの出資などと原則禁止(但し、自己資本Tier1の3%以下の金額に限り許可)
と言うルールが決定しているが、この部分は現在の投資銀行の収益への影響が大きいので、2014年までに実施される予定となっている。

 ヘッジファンドの投資行動に関する制約は今のところないが、日・米・欧州の実態が異なることと行政の温度差があり、ヘッジファンドへの期待と不安が入り交った各国行政の対応となっている。
(日本に関しては、国内のヘッジファンドが育ちつつある状況で、既に投資運用業として登録義務がある。またレバレッジ取引による信用供与で国内の証券や銀行が問題となるような取引水準ではない。先ずは、遅れていたヘッジファンドの国内育成を行うべきと筆者は考える。)

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

個人投資家にとってのPTS
証券取引所を通さずに株式を売買する私設取引システム(PTS=proprietary trading system)の取引が急拡大しているという。現在PTSは7社(9月に松井、10月にカブドットコムが停止へ)あるが、このPTSでの取引額は8月に合計1兆7143億円となり、大証やジャスダックなどの取引量(大証グループ合計1兆4884億円)を上回ったことが報じられている。
 もともとこのPTSは、金融ビックバンにより取引所集中義務がなくなったことから可能となったが、その後制度整備も進み、現在は5億円以上の資本で当局の認可を受ければ証券会社が株式取引システムとして開設することが出来る。昨年の夏ぐらいまでは、市場全体の取引に占める割合は1%未満であることが多かったが、その後取引シェア拡大傾向に入り、8月は4.5%まで上昇、9月以降もこの傾向が続いているようだ。
 PTSは取引所外取引だが、一昔前には取引所外の取引と言えば、証券会社が機関投資家など大口顧客の需要で売買を相対で受けるイメージだった。このPTSによって、個人も取引所以外で取引することが可能となったが、実際に取引所取引とは何が異なるのだろうか。

【呼び値を細分化】
PTSの取引ルールは、勿論当局の認可を受ける必要があるものの、比較的自由に決められる。例えば、取引所であれば1円単位の呼値だが、これを0.1円単位に細分化することが出来る。
500円買いの501円売りの様な売買板の状況の時、500円50銭の売りや買いが入れば、売買成立の可能性が高まる。

【取引時間の自由化】
PTSは取引所の取引時間に縛られることなく、その取引時間を設定することが出来る。今の様に、海外要因で日本の株価の方向性が決まるような状況であれば、海外市場動向が見える夜間に日本株を取引きするということも可能だ。ただし、大震災以降、夜間の取引を制限したり、取り止めているところ多いので、個人のPTS夜間利用は、今後の課題かもしれない。

【個人投資家にとっての最良執行の可能性】
同一株式を、PTSを含めて複数の取引システムで売買する米国では、注文を取り次ぐ証券会社に最良執行義務があるが、日本でも法律では定められているものの、いままでイメージし難かった。しかし、PTS側の取引量が増加してくれば、取引所とPTSどちらが投資家にとって優位か、その選択の余地は個人投資家にも拡がる可能性がある。

【個人が利用できる多様な注文形態】
 現在でもネット証券の一部が提供しているシステム売買的な注文方法も、PTSとして提供することが可能になるが、問題はむしろ注文を取り次ぐ証券会社の方にありそうだ。

最後に、個人の株式取引の6割以上を占める信用取引に関して触れておきたい。
【信用取引対応について】
 現在、信用取引は取引所取引でなければ行うことは出来ない。だから、PTSでは株式のレバレッジ取引を行うことが出来ない。しかし、信用取引制度を利用しないでも、証券会社が投資家に融資を行う与信管理、空売りする株を調達する株式レンディング機能など整備していけば、PTS利用でもレバレッジ取引を行える可能はある。勿論、空売りの通知やアップティックルール遵守などの態勢整備がPTS側にも求められるだろうが、将来の検討テーマとしてあった方が良いと考える。
 それまでは、個別株CFDで信用取引の代替を行うというのが、今の業界関係者のイメージに近いのだろう。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

アルゴリズム取引とHFT
先ずアルゴリズム取引とHFTは、必ずしもイコールではない。HFT(High-Frequency Trading)はアルゴリズムを使った超高速の取引だが、取引の目的はあくまでもトレーディングなので、投資が目的ではなく、短期間で、それも可能な限り短期間で、売買を行い収益を上げることを目的にする。だから、このHFTを利用するのは、証券や投資銀行の自己売買部門やプロップ・ハウスと言われる短期売買を中心としたトレーディング業者に限られる。勿論、機関投資家の大口売買やファンドの裁定取引でも、アルゴリズムを使った超高速の取引が行われるが、これらは投資対象とする株式を買うか売るかの目的が明確で、その目的を効率良く達成する為にアルゴリズムを使った超高速の取引が行われる。だから、HFTの功罪などを議論する時は、アルゴリズム取引とHFTを分けてするべきだと筆者は考える。

諄いようだが、HFTを、現在あえて定義すると以下のように考えるべきというのが業界の大筋だろう。
・超高速のアルゴリズム対応と発注機能
・取引所のコロケーション・サービス利用
・ポジション保有期間が長くて数十分(通常数秒)、翌日までは持たない
・数多い発注と、注文取消し

これに対して、機関投資家のアルゴリズム取引利用目的は、
○取引コストの引き下げ(主に大口売買のマーケットインパクトなどを避けようと考える)
○ベストな価格で取引したい=最良執行(この為、ベンチマークとなる指数や板情報を利用する)
○様々な情報から取引機会を発見する

この為、実際に行う売買では
①注文を細分化
②細分化した注文を、一度に出さず、逐次発注
③市場の変化(価格や板情報など)に応じて注文変更
④更に市場の変化に応じて上記①~③までの戦略変更
以上を超高速で執行するためにアルゴリズムを利用する。

これに対して、HFTの目的は、
○機械的マーケットメイキング
○短期的(数秒から数十分)利鞘取り
に徹しており、日中に必ず反対売買を行う。その為、機関投資家やファンドが利用するアルゴリズムの売買執行における上記②から④までおなじだが、注文発注や変更の頻度はより高いものとなるのと⑤に必ず短時間で反対売買を行うというのが加わる。

以上から、HFTは必ず反対売買を実行するので、マーケットに対してはニュートラル(売買どちらに偏ることもなく)と考えるのが現在の業界内の一般論だろう。

ここまで、長々とわざわざ書いたのは、この事に対して疑念があるからだ。米議会の様な、感情的なHFT悪玉論は別にして、昨年5月の米国株式市場におけるフラッシュ・クラッシュでは、HFTによるアルゴリズムだけの売買になるような時間帯があり、アルゴリズムによる売りが別のアルゴリズムの売りを誘因し連鎖的な売りが加速、その次に反対のアルゴリズムによる買いが連鎖し、短時間で相場が大幅な変動をおこしたことは米SECの報告書にも記載されている。(なお、直接の契機は、ファンドのETF売買の可能性が高いとされている)

東証によると、HFT(東証の定義では、東証のコロケーション・サービスを利用した超高速売買)は市場の3割以上を占めるが、相場への影響はニュートラルだとしている。確かに、HFTについて言えば、短期間で反対売買することが必須なのだから、市場のトレンドに対して中立になるのは当然だろう。しかし、HFTの利用するアルゴリズムが、他のアルゴリズム取引を誘因する目的で、売買注文の発注と取消しを超高速で繰り替えすことの可能性を、市場管理者としてどう売買管理し、未然に防ぐかも重要になってくる。(現在の金商法では、他の取引を誘因する目的の発注やその取消しは相場操縦行為)
アルゴリズムやHFTは、間違いなく市場取引手法のイノベーションなのだから、これらをより良く利用して行く為にも、アルゴリズム取引を使わない市場参加者・個人投資家にも分かる議論と情報の提供が、取引所には改めて求められていると思う。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

最新記事
カテゴリ
最新コメント
プロフィール

ポーラスター

Author:ポーラスター
2009年1月スタート

最新トラックバック
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
RSSリンクの表示
参考文献
QRコード
QRコード