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2012/02
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PTSの機能を今一度考える
 2月2日の東証のシステムトラブルで、日本証券業協会がPTS(Proprietary Trading System=私設取引システム)の取引を止めたと言う記事が、24日の日経に載っています。協会がシステムトラブルで売買停止の対象となった241銘柄について、協会規則にある“取引所が上場株の売買を停止した場合、取引所外での売買も停止出来る“という条項を根拠に、PTSを含む取引所外取引の停止を証券会社に要請したので、PTSまで止まったということです。PTSは、行政の認可を受けた証券会社が運営していますが、この件で改めてPTSの代替市場としての機能を考えさせられました。

日本の資本市場の中核となる取引所の方は、高速化や多様な金融商品の上場によってその機能を強化していますが、PTSはその何を代替しているのか。主に次のようなことが上げられます。

○取引所での取引時間以外での売買を執行することが可能です。
例えば、取引所が取引を開始する前、昼休みの間、そして海外市場が取引を行っている夜間などに日本株を取引きすることが可能です。但し、取引は完全な売買注文のマッチングなので、寄付きや大引けの様にオークション方式で値付けされることはありません。

○取引所での値幅以外にも、細分化された価格で取引することが可能です。
例えば、株価100円台の株式の取引所での最少値幅は1円ですが、これだと概ね株価の1%に相当します。PTSの方は、0.1円刻みのですので、投資家は売買コストを低下させることが出来ます。

○投資家は、取引所での売買株価とPTSのそれを比較して、最良の売買取引を選択することも出来ます。
例えば、東証と大証に両方上場されている銘柄などは、両取引所の取引値段を比較して、売買注文を出すということがあったかも知れません。現在のPTSでは、取引所に上場されている銘柄が殆ど取引できますが(一部、地方取引所の単独上場銘柄は取り扱われていません)、投資家が取引所とPTSの取引値段を比べて、最良の値段で取引を行うのが理想です。取引所の方もPTSの方も取引がミリ秒単位と高速化されているので、人の目で値段を追う事は無理かもしれません。それで、システムで取引所・PTSどちらが投資家の注文にとって有利なのか自動的に選択するサービスを提供している証券会社もあります。

○新たな価格発見機能の提供をしている可能性もあります。
上記に挙げたように、取引所が取引しない時間帯での取引、取引所が取引しない値幅での取引をPTSが行いますので、取引所にはない価格発見機能を提供しているとも言えます。

欧米での代替市場(名称は欧州MTS=Multilateral Trading Facilities、米国ATS=Alternative Trading Systems)が取引全体に占める割合は3~4割と言われとおり、日本ではようやく5%(1月末、5.7%)に達したところです。日本のPTSは、一時8社の証券会社で行われていましたが、昨年は撤退が相次ぎ今は3社で、その内2社に9割程度の取引が集中しています。また、PTSへの取次ぎを行える証券会社も20社程度で、個人投資家が利用できるのは10社に届きません。PTSは、取引の決済の仕組みは取引所取引と同じになっており、インフラ面では取引所取引と遜色ありませんが、ビジネスモデルとしては未だ確立期といった状況のようです。

ただし、PTSと同じ様なことが、嘗ての証券会社内のダークプールや海外の取引システムで行われていたことを思えば、国内で取引の透明性も高く、個人も参加できるPTSの代替機能には、大いに期待したいところです。

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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

大震災後、個人投資家は何か変わったか
あれからもう少しで1年。大きな被害とたくさんの悲劇を東日本にもたらした大震災は、日本の社会を大きく変えていく契機となりました。個人にとっては、生きることの意味と、リスク、そして何が出来るか自ら問われる方々も多かったと思います。企業もまた、被災地の復興に向けて多くの取組みを行っていますが、それまで言われていたCSR( Corporate Social Responsibility)とは少しイメージが違い、現場にニーズに密着した持続的な取組みをみていると、日本企業もやるなとの思いを強くします。

 個人投資家にとっても、それまでの投資観を大きく変える出来事でした。安定的な投資対象と思われていた電力会社の株式は、原発停止問題から大きなリスクを抱え、反対に新たな復興需要を見込んで、建設関連の企業に大きな期待が集まりました。業種にたいするイメージが、それまでと全く異なります。

一方、投資リスクに考え方については全体としてそれ程変化が無いようです。時々引用させていただく投信協会の投資信託に関するアンケート調査報告書-2011年(平成23年8月実施)で、東日本大震災後の資産運用やリスクについての考え方の変化を尋ねたところ、76.5%の方々が特に変化ないとしています。つまり、投資はもともとリスクなので、リスクを感じる対象は変わったとしても、リスクそのものへの考え方は大きくは変わらなかったということでしょうか。

ただし、個人投資家であっても投資の意味については、少し変化があったかも知れません。それは、投資の第一の目的は、自分の将来の為に利益を上げることですが、投資を通じて被災者や被災企業を支援したいという考えをもつ投資家層が増えてきているように思います。

個人が投資を通じて被災地支援を行うものとしては、以下の様なものがあります。
○国債・地方債のほか震災復興に寄与すると考えられる企業の社債に投資し、信託報酬の一部を義援金として寄付する仕組み=東日本復興支援債券ファンド1105(単位型の投信で、昨年5月に515億円設定)
○新規設定の投資信託の手数料の一部を被災地に寄附する=ニッポン応援ファンドVOL3フェニックス(昨年6月末設定)など
○個人向け復興応援国債=現行の変動10年の個人向け国債をベースに、東日本大震災からの復興を応援する観点から、当初の3年間は低い金利(0.05%)でその後変動金利。3年間保有者に対して、金貨(1000万円保有毎)銀貨(100万円保有毎)を贈呈。

過去何度か取り上げていますが、被災地の中小企業を直接支援する仕組みとして事業ファンドと寄附を組み合わせた復興支援ファンドがあります。これは、支援する企業とその事業内容が、一般の個人にもインターネットでの情報提供を通じて分かるということで、今までの金融にない役割を果たしてします。
普通の金融商品に比べて、1ファンド当たり集めるお金が少額なことからマイクロインベストメント(投資)とも言われていますが、インターネットを使って販売コストを掛けない事・寄附に加えて支援する中小企業の事業に出資者が何らかのかたちで参加(消費者や利用者・見学者=対象企業は食品関連が多い)出来ることがその特徴となっています。

このファンドはよくマスコミの注目を集めます。個人投資家の行動の変化とまで言うのは早計かもしれませんが、大震災を機にした個人の行動の変化であることは事実です。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

大規模ファイナンスの予兆について
株式市場の重要な機能には、株式の流通の場の提供とともに、企業へのリスクマネーの供給があります。簡単に言いますと、日頃投資家が接している流通市場がちゃんとしていないと、企業はリスクマネーが調達できませんし、やみくもに企業の公募などのファイナンス(市場への株式の供給)が行われると流通市場が大きなダメージを受けます。

ファイナンスを行う企業と投資家・株主との間には以下の様な暗黙の合意があるというのでなければ、継続した市場として成り立ちません。
○ファイナンス資金は、企業の成長に利用される。【資金使途】
○ファイナンス後、企業は大きな成長を遂げる。【業績の向上】
○ファイナンスによって、株主もメリットを受ける。【ファイナンス後の株価上昇、配当等の増加、成長による資本持分の増加】

これらは、企業が決定していくことではありますが、そのお手伝いをするのが引受の主幹事証券会社ということになります。公募のファイナンスは、経営者が思い立ったら直ぐ実行できるという訳ではありませんので、その準備には少なくとも3カ月、普通は半年程度の準備・事前作業期間があります。この間、企業と主幹事を務める証券会社の関係者(ファイナンスはインサイダー情報なので少数に限られます)にとっては、上記3つのポイントについて相当負担の重い確認作業となります。
また、上記に加えてどの様なファイナンスの形態で行うのが、流通市場や株主にとって最適かアドバイスするは主幹事証券の重要な機能です。

本稿の目的は、個別企業を評価することではありませんが、株主や投資家の視点から問題が多いファイナンス事例として、昨年公募増資を実行したA社を上げたいと思います。

A社は、昨年8月月初払込で公募増資(新株の約29%)と新株予約権付社債(潜在株として約17%新株増加)のファイナンスを実行しました。合わせて希薄化率(既存株主の資本持分が薄まる)46%というのも既存株主にとっては問題ですが、ファイナンスの払込1週間後に行われた第一四半期(昨年4月から6月)で、業務の先行きの成長性に対して見通し(売上げ・利益などの予想はもともと公表していません)を引き下げたのは少し悲しいサプライズでした。これでは、新株に払い込んだ投資家は勿論、急激な株価下落に耐えた株主の立つ瀬がありません。

標題を上げたのは、最近の株価上昇で、2009年や2010年の様な大規模(発行済み株式総数の3割以上)な公募増資が、再び増加していく可能性を杞憂したからです。勿論、市場機能として企業がリスクマネーを調達するのは正常な行為ですが、株主にとって負担が大きい(株価下落リスク)大規模な公募増資は、相当の検討と覚悟をもって実行して欲しいと思います。可能なことなら、株主の負担が軽く選択肢が多くなるライツ・オファーリングは4月以降制度整備されて使いやすくなりますので、筆者としては大規模なファイナンスは、こちらを薦めます。

予兆と書きましたので、最近公表されたB社の大規模公募増資について、ファイナンス期間中ではありますが少し触れておきます。

B社の公募増資は、株式を約68%増加させる大規模な公募増資であります。また、このファイナンスの発表に先立ち、新しい中期経営計画は示され、調達する資金が何に使われどの様な効果を生むか、株主や投資家が考えやすいように配慮されています。それでも、ファイナンス関係者として筆者は以下の様な疑問を感じています。
・何故、今の時期なのか (今期の業績が確定した来期以降ではいけないのか)
・何故、公募増資でなくてはいけないのか (新株予約権付社債や第三者割当増資という手法もあるが
・・・)
・何故、劣後ローンの公表が一緒なのか (早急な資本の増強が必要なのか、若しくは格付けとの関係があるのか)
勿論、これらを判断するのは投資家であり株主ですが、せっかく世界に誇る技術がある企業なのですから、市場対応の方も頑張っていただくことを期待しています。

(※本稿はA社、B社の投資判断に資するものはありませんし、その目的をもったものではありません。)

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投資家は何を望んでいるか
どんなビジネスでも、利用者が何を望んでいるか知るのは基本中の基本ですが、証券会社や金融機関などは、よく顧客満足度調査を行います。その結果に基づき、顧客=投資家戦略を立てるのが普通です。
今回は、個人投資家が何を求めているかということをテーマに、次の3つのアンケート調査から、その結果を取り上げてみました。

○「証券投資についてのアンケート」(日本証券業協会 平成22年11月実施)サンプル数35,176
当然のことですが、ネットと対面では投資家が求めているものが違います。ネットは、投資家が負うコストと取引機能が重視されますが、対面では営業部員に求められることの1位が誠実さであり、2番目がアフターケアとなっています。“誠実さ”とは定義が曖昧な言葉ですが、おそらく自分のお金を信頼できる人に託したいとの投資家の思いではないでしょうか。証券会社や金融機関の人間が、個人的にはそれぞれ誠実であるとは思いますが、組織として投資家の求める“誠実さ”に応えていくか、少し難しい問題かもしれません。どの様な方法を用いるにしても、投資家と営業部員のコミュニケーションを強化することをサポートする以外に、この“誠実さ”への対応はないのではないでしょうか。

○投資信託に関するアンケート調査報告書-2011年(投信協会 平成23年8月実施)サンプル数1,509
個人がどの様な手段で投資情報を取得するか見てみると、新聞なテレビなどの身近なマスコミからニュースとして流されるものを参考とすることが多いようです。ただし、この比率は年々低下しているようで、替わりにインターネットから情報収集する割合が増加しています。テレビの経済番組では70代の女性が、パソコンでSkypeを利用してニューヨークの娘さんと連絡を取りあっている様子は報じられていましたが、今やシニア層のデジタルディバイドの意味は少し違っているのかもしれません。スマートフォンやタブレット端末は、更にシニアの投資家層とインターネットの距離を縮めています。

○「個人投資家株式市場活性化アンケート」(楽天・マネックス・カブドットコム共同実施 平成24年1月実施)回答4,234 名
これは、インターネットを利用する個人の株式投資家というふうに対象が限定されますが、日本の株式市場に対する要望は概ね3つに分かれるようです。
・取引の決済を短縮して欲しい=即日決済は無理でも、現行の4日目決済を短縮して欲しいとの要望ですが、FX取引やCFD取引などは即日決済ですし、株式取引でも機関投資家や海外投資家が証券会社などと相対で行う取引の決済では、今でも取引日の翌日に決済することも可能です。しかし、取引所やホフリ(証券保管決済機構)の仕組み変更するのは業界を上げた大仕事(相当のコストが掛かる)になりそうです。
・取引監視を強化して欲しい=公募増資に関わるインサイダー取引疑惑や“見せ板”問題に関する問題を指摘する向きも多いですが、これは公募の際の海外投資家へのソフトヒアリング問題やアルゴリズム取引での裁定取引など海外業者の投資銀行行為に対する不信感があるようです。
・デリバティブ取引との損益通算を認めて欲しい=これは金融所得一体課税の問題となりますが、順次進めて欲しいとのことでしょう。
以上は、行政などへの制度改正要望が中心になりますが、設問には少しネット証券サイドのバイアスがかかっているかも知れません。

☆投資家は何を望んでいるか

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投資信託の販売環境の変化について
個人にとって最も身近な投資の為の金融商品が、投資信託であることは間違いない。何しろ販売チャネルが多様だ。証券会社は勿論、銀行や信金でも、郵便局でも、そしてインターネットでの金融サービスにおいても、投資信託を購入することが出来る。お金の運用方針を決めてしまえば、投資対象を選択して、実際の運用を運用会社に委ねてしまえば良いので、直接株式や債券を購入するより個人投資家の利便性は高いはずだ。だから、金融ビックバン後の“貯蓄から投資”の流れの中で、投資信託はその中心にある。
(この投資信託の中には、海外で組成されている外国籍投資信託やETFを含む)
日本の投資信託のあり方に関しては、業界の内外から様々な議論があるが、商品として毎月分配型でも通貨選択型でも、個人投資家サイドにそれなりのニーズがあったので、残高が相応に増加したはずだ。もし販売時点での問題があるとすると、その個人の投資目的と商品の内容が合わなかったり、商品のリスクが理解されてないことだ。

この件に関して、金融庁は2月15日より通貨選択型投信を念頭において、証券会社などの投資信託販売態勢の強化する監督指針の適用を開始した。主なことは、顧客カードに個人投資家の投資目的を記載して、それを投資家と販売者が共有(つまり書かれている自分の投資目的を、投資家が確認する)する。リスク説明に関しては、既に金融商品取引法施行時に厳格化されているが、デリバティブが組み入れられているような投信(主に海外ファンド)については、昨年4月より想定損失額の説明まで含めたリスク説明を行うこととなっている。

一方、投資信託の内容を分かり易く説明するのは販売者として当然のことだ。対面営業では、個々の販売員の説明の巧拙があるかも知れないが、話す内容は目論見書に限られるし、インターネットでは投資家自らが目論見書を理解しなければならない。つまり、目論見書を易しくし投資家に使いやすくすることが重要だが、その為に法規制の改正は3年前に行われており、一昨年の夏頃から投資信託の目論見書の平易化・簡素化が運用会社サイドでは取り組まれている。

以上の2点を考えた時、投資信託の販売現場において2つの変化が起きる可能性を指摘しておきたい。(現在は、それ程大きな変化とはなっていないが・・・)

一つ目は、投資信託販売でのインターネット利用が促進すること。投信協会の昨年度の調査によると、投資信託の購入者の約7%(人数ベース:金額ベースでは割合は低下)がインターネットから購入しているというが、単純にネット利用が増加するだけではなく、インターネットとコールセンターの併用、又はインターネット利用した対面営業の推進が取り組まれていくだろう。

二つ目は、今や証券会社の対面営業の中心は投信販売になっているが、この店頭での営業プロセス管理は、CRMなどと共に強化されていく可能性が高い。

ただし、投資はデジタルだけでは割り切れない。対面営業のアナログ対応を必要とする投資家も多くいる。

☆投資信託販売環境の変化(2012年2月時点)
正しい未公開株投資
今、証券会社の店頭やホームページには、未公開株詐欺に関する注意を呼びかけるポスターや注意喚起文が並ぶ。証券会社名や金融商品仲介業者名を名乗っての高齢者などを狙った詐欺行為が増加していることもあり、行政・業界あげて個人に注意を呼び掛けている。
不正行為や詐欺行為を市場や業界から排除する為に、多くの関係者の方々が尽力されていると思う。
ただ、個人の未公開株についての関心がそれ程高いのであれば、正しい未公開株投資の情報が、もっと体系的に、かつ分かり易く提供されても良いのではないだろうか。証券会社(含む金融商品仲介業者)が個人投資家に対して取扱い可能な未公開株投資は、以下の方法がある。

○グリーンシート市場銘柄(現在、46銘柄。成長力が期待されるエマージング銘柄は15銘柄)
制度としては、個人投資家に一番距離が近いはずだが、取り扱いが特定の証券会社に限られているので、この市場に関する情報が個人レベルまでなかなか行きわたらない。有価証券報告書に準じて作成される会社内容説明書で、上場する企業の内容を知ることが出来るし、決算情報なども決算短信など適時開示に準じて公表されている。企業側は、それなりのディスクロージャー負担を負う訳だが、それに対して市場機能を使ったファイナンスなどは殆ど出来ていない。つまり、上場企業にとって負担が大きい割に、現実的なメリットが少ない。
何か一番問題なのかは、おそらくこの市場では価格発見機能が充分機能していない、もしくはそう見做されていることだろう。当初、グリーンシート市場の上場するときの株価算定の信頼性や、流通価格に関する情報がもっと個人の目に触れる仕組みが必要なのではないだろうか。エマージング銘柄に関しては、エンジェル税制も利用できるのだが、これらは一般には余り知られていなのが惜しい。

○プロ向け市場(但し、個人投資家の参加は金融資産3億円以上で、証券会社での口座開設が1年以上)
個人などの特定投資家(所謂プロ投資家)の基準が下がっている。相応の資産家で自ら望むなら個人もプロとして一般の個人投資家が投資しにくいような金融商品も利用できる。未公開株投資に関して、プロ投資家ならTOKYO-AIMで売買することが出来るが、現在1銘柄の上場に留まる。正確に言えば、この市場は、英国のプロ向け市場であるAIMを真似て、東証とロンドン取引所が共同で運営する取引所なので、未公開株とは厳密には言えない。但し、この市場に上場する企業が、成長していけば将来東証などの取引所に上場を目指すのだろうから、個人にとっては上場予備群の未公開企業に投資するに等しい。
この市場の仕組みは良いのだけれども、上場企業をサポートするJ-Nomad(TOKYO-AIMが指定するアドバイザー)の基準が高く、組織的な負荷も重い。そのコストは上場企業が負担することになる。よって、相当の企業規模でなければ上場しにくいし、この市場での資金調達の目途が無ければ、直接の取引所上場を目指した方が良い。現状では、企業・プロ投資家・それらを仲介する証券会社がそれぞれこの市場に慣れていないように思われ、本格的な稼働までには時間や新たな仕組み(緩和策)が必要なのではないだろうか。

○ベンチャーファンドでの投資
個人もベンチャーファンド組成に参加することは可能だろうが、これも一般の個人にまでよく情報が行きわたっていない。現在、大証に2銘柄ファンドが上場されているが、売買量も少なく純資産価値の四分の一程度まで低下している。個別の未公開株に投資するのではないが、投資先リストも公開されていて一般の個人が未公開株投資する方法としては、比較的手軽なはずだ。

以上、3つ並べて書いてみたが、現状ではこの3つの関連は殆どない。但し、関連ないことが問題ではないだろうかと指摘したい。IPOに至る前の未公開株の個人が売買できる仕組みは、今それぞれあるはずなのだが、それがIPOも含めて各々繋がっていなので、有機的に機能せずに全体としてのIPOへ至る道を狭め、個人投資家が参加しにくくしている。
今一度、其々の制度を見直すことも必要かも知れないが、個人に対して、以上の3つとIPOに至るプロセスの情報を体系的に提供していくことから始めてはどうだろうか。正しい未公開株投資として。

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ソーシャルビジネスと資本市場
本文は、“ソーシャルビジネスと証券市場”(日本証券経済研究所発行“証研レポート2月号”松尾氏)を読んでの感想から始まる。先ず、ソーシャルビジネスと聞いて真っ先に思い出すのが、有名なグラミン銀行などのマイクロ・ファイナンス、そして最近は、音楽ファンドなどの事業ファンドを手掛けていたミュージック・セキュリテーズが取り纏めた被災地応援ファンドがある。この2つは、マスコミや学会・金融審議会などでも取り上げられるが、現在の日本の資本市場とは相当な距離があるように思っていた。

そもそもソーシャルビジネスとは何かについて、確認しておきたい。
昨年3月に公表されたソーシャルビジネス推進研究会報告書(経済産業省:ソーシャルビジネス/コミュニティビジネス連携強化事業)によると、ソーシャルビジネスとは次の様に定義されている。
○様々な社会的課題(高齢化問題、環境問題、子育て・教育問題など)を市場として捉え、その解決を目的とする事業。「社会性」「事業性」「革新性」の3つを要件とする。
○推進の結果として、経済の活性化や新しい雇用の創出に寄与する効果が期待される。
言葉は易しいが、実際に関わったことがなければ普通の投資家がイメージするのは少し難しいかもしれない。行政や学者の方々がソーシャルビジネス/コミュニティビジネス(略してSBやCBと表記することもある)をそれぞれ定義されているとは思うが、筆者の受けた印象は、これらのビジネスと資本市場の関わりは、現状では概ね事業ファンドに集約されるのではないだろうか。

 この事業ファンドは、投資家が扱いなれている投資ファンドとは基本的な仕組みは同じ事が多い。所謂、匿名組合方式を使うのだが、金融商品取引法上の集団投資スキーム(金商法2条2項5号=みなし有価証券)として定義されており、これを扱うものは第2種金融商品取引業として登録する必要がある。その出資金の50%以上を株式や債券などの金融商品に充てられるなら、投資ファンドとして規制を受ける。つまり500名以上なら、特定のものからお金を集めるのではなく、そのファンドを公募しているのだから有価証券としての開示を求めるという考え方だ。一方、音楽CDの製作やワイン・お酒の醸造、農業法人などへの出資は事業ファンドと見做され、投資ファンドの様な開示規制を受けることはない。
投資ファンドと事業ファンドは、どちらも同じ様なスキームを使うが、投資(出資)対象が異なるのは勿論、その投資目的が違う。事業ファンドの方は、投資以外にその事業に何らかの形で参加するという目的が加わる。例えば、音楽ファンドならCDを購入したり、食品関連なら消費者として利用したりする。

 時々マスコミで取り上げられている復興支援ファンドに関しては、この事業ファンドの特性に加え、被災企業を支援する目的の寄付が加わる。つまり投資家的視点でみるなら、投資(出資)+事業参加+支援(寄付)の3つのパーツから、このファンドは成り立っている。

復興支援ファンドの概要は、次の様になっている。 
・投資(出資)目的=被災地企業の応援
・1社あたりのファンド募集額=700万~1億円
・ファンドスキーム=匿名組合方式
・投資単位=1口1万円、ただし5000円は寄付、残りの5000円が出資金
・投資期間=6年~10年
・募集方法=インターネットでの情報提供と募集申込み
・投資家の報酬対価=応援事業が食品関係である場合は、その食品などと利益が出た場合の分配金。事業によっては、現地見学会などを行い、出資部分に対する4~5%程度の金利相当部分を支払うケースもある。

なお、この復興支援ファンドの副次的な効果として、地元金融機関などがこのファンド出資部分を被災企業の資本と見做す事が出来る為、融資を行い易くする行政措置が取られているようだ。(ミュージック・セキュリテーズの金融審議会資料より:金融検査マニュアルの改訂(平成23年11月22日)『十分な資本的性質が認められる借入金」(「資本性借入金」の扱い)

現在、ファンドの募集状況は約9億円の募集総額に対して、17,231人より5.7億円が集まっているようだ。(ミュージック・セキュリテーズのホームページより)

企画者のミュージック・セキュリテーズは、このファンドも含めて自社の事業ファンドをマイクロ投資と呼んでいるが、グラミン銀行の様なマイクロ・ファイナンスがそれまでの金融とは全く違く機能を見せてくれたように、マイクロ投資がソーシャルビジネスと資本市場の新しい架け橋になることを期待している。

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最近の投資信託動向について、2月上旬時点
1月の投資信託動向では、また個人投資家のリスク・オフの流れが止まっていないようです。
既存のファンドでは、REITやグローバル債券投資ものを中心に2,362億円の資金流出とのことです。これで5ヵ月連続の資金流失超になります。
一方、新規設定のファンドは1,782億円となり前月よりは増加しています。アジア債券投資ものに対して資金が集まったようです。
詳しくは、三菱アセット・ブレインが公表している下記資料をご参考ください。

☆投信マーケット概況1月号

 また、投信の運用会社が個人投資家向けに発信する情報(レポート)に関して、引き続き欧州債務問題が中心ですが、米国を中心にマクロ経済の先行きを予想する月次のレポートが増加傾向です。また、新しい動きとして、市況をディリーで情報発信する運用会社がでましたが、情報頻度を上げプレゼンスを高めるということでしょうか。個人的には、ファンド運用会社が毎日市況を語る必然性は良く分かりませんが、販売会社サイド=証券会社等のニーズがあるのでしょうか。しかし、本来は販売サイドで投資家への市場解説を行うのが筋だと思うのですが・・・

 今後、投信の運用会社が何に注目しているかは、2月の新規設定ファンドの投資テーマから推測できますが、日本株を始めとして株式関連が投資テーマとしては増加しているようです。また、資産そのものは日本の短期債に投資しながら通貨の先物やオプションを利用して、通貨そのものに投資するスキームも出始めたようです。

☆最近の投信運用会社の情報提供の傾向と運用テーマ(2月上旬時点)

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レバレッジETF上場について
変化が起きている時に、その事にいろいろ理屈をつけて対応することを避けるというのは人の常だが、出来ると言われる方々は、先ず変化に対応してから、問題点の方を考える。日本の金融機関も概ね個人の行動パターンと変わらないが、変化への前向きさと言う点では東証の取組みは少しばかり先行している。
 東証は1月末にレバレッジ型・インバース型ETFの上場を可能とする為、ETFの上場規則の変更を公表した。レバレッジ型・インバース型ETFとは、所謂ブル・ベア型のレバレッジが掛かったファンドの上場されたものだが、レバレッジ型は、連動する指数の変化率の2倍、3倍で変化する運用を、インバース型はその逆の変化率となる事を目指すが、その為に先物やオプションをファンド資産として組み込む。
イメージは、レバレッジの効いた指数先物が上場されて取引されるのに近いかも知れない。
現在、ニューヨーク証券取引所には約1300銘柄のETFが上場されているが、このレバレッジETFは、約240本と2割弱を占めている。
この商品は、少し前、ヘッジファンドや投資銀行のトレーダーが行っていた取引手法を、一般の個人投資家も利用出来る上場商品としたことで、金融の技術革新の1つだろう。しかし、その影響の大きさから様々な議論を呼んでいるのも、また事実だ。主な議論は、以下の二つに纏められるのではないだろうか。

●個人投資家が無防備に売買して良いのか。
勿論上場商品であれば個人投資家が売買することは可能なのだが、信用取引や先物取引をするつもりがなくとも投資経験の浅い投資家が参加してしまう事が懸念されている。また、日々の動きの連動するようにファンド資産が調整されてしまうので、長期的な騰落率とは乖離してしまう可能性も指摘されている。
米国SECは、以下の様に投資家に対して注意喚起を呼びかけている。(記載内容は、日本証券業協会HPより)
・レバレッジドおよびインバースETFに関するインベスター・アラート
レバレッジドETFとインバースETFは、日次ベースでリセットされるので、長期間保有した場合に、当該ファンドの投資リターンと、指標となる指数の騰落率の間に著しく差が生じるため、長期的な視野に立つ投資家に適さない可能性があると警告。

●この商品が相場変動を必要以上に大きくしているのではないかとの懸念。
昨年10月の日経ヴェリタスには、以下の様な事例が上げられている。(記載内容を簡略化)
100万ドルのファンド資産、S&P指数2倍に設定、200万ドル分のS&P指数先物を買い建て
・1日目、S&P指数10%上昇。先物が220万ドル分となり、ファンド資産は20万ドル増加(20%増加)
・2日目、S&P指数10%上昇。先物は220万×1.1で242万ドルとなり、ファンド資産は前日より22万ドル増加。しかしこの日のベースとなるのは前日増加したファンド資産120万ドルなので、これに対しては18.3%の増加に留まる。ファンド資産20%増加の為には、不足分を買い増さなければならない。
以上のようなファンド構造を、短期的な投機筋に付け込まれているのではないかとの疑念が上げられている。つまり、このファンドの特性から、上昇した場合、調整的な買い増しが出ることが分かっているので、先回りして投機筋が買う。この事が、引け間際の急激な動きや1日の変動幅が拡大する要因となっているのではないかとの懸念だ。

 いずれの議論にしろ、このレバレッジ型のETFが上場されることによって、その問題点が明確化された。もし、投資家にこの様なファンドへの潜在的な投資ニーズがあるのなら、ヘッジファンドや私募のファンドで利用され上記の様な議論は少し異なったものとなったかも知れない。
東証は、3月上旬にもレバレッジ型ETFの上場を可能とする態勢整備をするとしているが、議論を避けない対応を評価したい。

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信用取引と売買単位
信用取引は、利用する投資家に証券会社が資金や株式を貸すのだから、貸す方としては投資家の金融資産の状況などをしっかり把握したうえで信用供与している。証券会社の信用取引は、この様な考え方で制度設計されている。だから、一昔前は金融資産が2~3000万円以上なければ信用取引口座は開設することが出来なかった。しかし、個人投資家のネット取引が進んだことで、信用取引のバー(金融資産の水準)は大きく下がっている。勿論、最大自己資金の3.3倍までレバレッジをかけることが出来るので、厳格なポジション管理(強制ロスカット)が前提となり、投資家の方も相応の投資経験が求められる。しかし、今では概ね金融資産が300万円程度(他社も含めて)あれば、実質100万円程度の資金で信用取引を始めることが出来る証券会社が多い。昔は、信用取引は資産家の売買手法だったが、今はごく一般の投資家が利用することも可能だ。その利用方法も、何もレバレッジ投資ばかりではない。

例えば、時価200円のA銘柄を1万株保有する投資家がいるとする。この投資家は、A銘柄を長期投資で保有しているが、前日の海外市場で市況全般に対する弱い材料が出たので、保有するA銘柄を一旦売却するべきと考えた。現物株を売るのが普通の方法に見えるが、この投資家はキャピタルゲインの問題や売買手数料(現物取引に比べ信用取引の方が相当安い)から信用取引でのA銘柄1万株を寄り付きでの売却を選択した。ところが売ることが出来ない。理由は、A銘柄の取引単位が100株で、成行きで50単位以上売れないという空売り規制に該当してしまたからだ。

 東証を始めとする全国取引所は、1月19日に“売買単位の100 株と1000 株への移行期限の決定について”を公表し、2014年3月末までを期限として、上場会社の売買単位を100株若しくは1000株に集約する為の上場規則の改正を決定した。最終的には100株の売買単位(1単元)を目指すという。この方針は、2007年11月に公表された「売買単位の集約に向けた行動計画」で明らかにされていたが、目安とされていた2012年4月(仮)を昨年の大震災の影響を慮って当面停止としていた。今回、改めて期限を定めたものだ。

ちなみに、全上場会社3,593社の売買単位の現状は以下の様になっている。(1月4日現在)
単元株数       上場会社数      割合
100株       1,661社   46.2%
1000株      1,355社   37.7%←出来るだけ100株に移行を要請
1~2000株      578社   16.1%←期限まで100株に移行

何故、売買単位(単元)を引き下げるかというのは、個人投資家層の市場参加を促すためだが、個人が利用する信用取引(レバレッジ取引に使われるだけではない)に対しても、見直しをお願いしたい。

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リテール証券会社の変化と進化について 
筆者の主な仕事は、証券業務の実務的なことに関するコンサルティングですが、最近感じることは証券会社そのものが、元気がないことです。業界の方々とお話させていただくと、概ね先行きに対する悲観論が多く、中には終末論的なことをお話される方もいらっしゃいますが、本当にそうなのでしょうか。
確かに、上場している証券会社のディスクロージャーは内容や量・タイミング等に余り褒められたものではありませんし、野村や大和の直近の戦略はリストラが主体になっていて、決算説明資料を見てもとても明るい気持ちにはなれません。
 しかし、投資家が減少しているのでしょうか。上場企業の先行きに希望が持てないのでしょうか。
証券会社は、所詮市場の仲介者ですが、その両側は拡大したり発展したりする余地があるのに、仲介者だけが悲観論に浸っているのは少し滑稽かもしれません。
ただし、仲介者としての在り方について、時代の変化で今までのやり方とは違うことも求められてるのも事実です。

リテール証券の機能と抱える問題
個人投資家の姿  
過去取り組まれたリテール・ビジネス深耕のテーマ  
変化と進化への可能性  

☆リテール証券会社の変化と進化について 

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日本の発行市場(資本調達)の問題とライツイシューに関する期待と不安
流通市場の売買システムや手法は、金融イノベーションにより進化していますが、日本の発行市場は制度疲労に陥っている可能性があります。
ライツイシューの様な新しいファイナンス手法が定着することで、今の投資家や企業のニーズに沿った発行市場に変化する契機となることを願っています。

金融危機後の発行市場について
市場機能の問題点について  
上場企業にとっての問題  
ライツイシューの概要と事例  
行政上の配慮
ライツイシューそれぞれのメリットと留意点
投資家からみた資金調達のポイント

☆日本の発行市場(資本調達)の問題とライツイシューに関する期待と不安

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