*All archives* |  *Admin*

2012/04
<< 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  >>
投資銀行ビジネスモデルは何処へいくのか
金融危機までは投資銀行(代表的なものはゴールドマン・ザックス)は、日本の金融業界にとって憧れの的であり目指すべきものでもあった。大手証券も外資系証券を横目でみながら機能整備をしていったし、金融機関の中には投資銀行宣言をするところまであった。別に大手金融機関を揶揄する為に書いたのではなく、それは各々の戦略として正しかったと思う。しかし、今世紀に入ってからの投資銀行は、それまでの投資銀行モデルとは少し実態が異なっていた。

 投資銀行とは何かということを、ウィキペディアでは次の様に記載している。

【投資銀行(investment bank)とは、顧客企業の有価証券発行による資本市場からの資金調達をサポートし、合併や買収などの財務戦略でのアドバイスを行う金融機関である。】
つまり企業のファイナンスやM&Aのビジネスを行うことが投資銀行の中核であることは、今も昔も変わらない。
ただし、ここ10年来は次の事が加わっていた。

①証券化(不動産やローンなど実体経済に関わりの深いものを、証券化して市場で流通しやすくする。若しくは市場からのファイナンスを行う。)
②自己投資(自ら纏まった案件などに出資するのだが、さすがに他の投資家を擁する営業部門との利益相反を考えて、子会社した。)
③ファンドとの関係強化(プライマリー・ブローカーレッジビジネスなど、ファンドに対するサービス強化(売買・決済機能の提供)でヘッジファンドなどへの与信行為も含まれる。)
④それぞれ異なるニーズを、両者の問題解決を計ろうと仕組む行為。証券化やデリバティブ活用など所謂金融工学を利用することもあるし、M&Aやファンドを活用する場合もある。

これらのことは、今でも投資銀行にとって重要だ。いや、経済全体に対しても大切な機能を果たしている。
日本の金融機関に関しては、②の自己投資こそ相応の規模で行ったが、それ以外は欧米の投資銀行に比べ完全に周回遅れだった。それで、欧米の主要な投資銀行のキャッチ・アップを行おうとしていた。

 金融危機の引き金を引いたのは米国のサブプライム・ローンだが、主犯格は信用リスクのデリバティブ(CDS)を証券化した合成証券CDOだ。しかし、背景にあるのは上記の4つの機能をバブル的にやり過ぎたことがあるのではないだろうか。それ故、欧米の金融規制改革法案(米ドットフランク法など)では上記の4つの機能に関する規制や報告体制を強化する方向で、現在法案の成立から実行段階に移るところだ。

 日本もG20の合意としてこの欧米の金融規制改革の流れに沿うことが求められるが、本来ならこの機会に遅れていた上記の4つの機能を強化することを先行するべきだろう。その意味では、評判は悪いが野村のやろうとしている投資銀行強化は、グローバルな金融機関として生き残る為には正しいと考える。
但し、評判の悪さは事業モデルとして投資銀行部門の収益構造を説明できていない事と、投資銀行にありがちな投資家との利益相反に対する対応が、少なくとも外部(顧客)から分かり難いことだろう。特に顧客との利益相反は投資銀行全ての問題だが、増資インサイダー問題なども情報管理だけではなく顧客との利益相反問題として見直す必要があるのではないだろうか。

そうでなければ伝統的投資銀行業務であるファイナンスも失うことになる。

スポンサーサイト

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

個人の外貨取引について
3月28日に日銀の資金循環統計速報(昨年12月末)での個人金融資産の状況を紹介しましたが、それによると外貨建て資産の比率は1.9%で、比率も金額(全体の1,483兆円に対して28.7兆円)も減少しています。
 外貨建て投信が減少して、外債が増加しているようですが、確かに外債については、家族からも聞かれるし、証券会社のセールスの方からも勧誘の電話が掛かってきます。ただし、こちらの方は投資家のニーズに合った品揃えが充分な証券会社は限られていると思います。
 (※実際の外債販売状況については、今週末の上場証券会社の決算状況を分析したものを、来月に公表しますので、お待ちください。)
一方、個人の外貨取引であるFX取引に関しては、再び取引が増加し始めているようです。2度にわたるレバレッジ規制や、昨年後半のリスクオフの流れを乗り切って、今年に入ってからは、取引金額をみると毎月前月比2ケタ増加が続いています。少し前の状況ですが、店頭FX取引の3月末の状況を以下の様に纏めてみました。(データは金融先物取引業協会が、主要業者から集計したもの)

☆最近のFX取引動向(3月末時点)

なお、店頭FX取引の規模の1割程度になりますが、取引所FX取引について、東京金融取引所が通貨別の取組み状況を毎日公表(前日の残高ベース)しています。主要な通貨の取組みは以下の様な状況です。
4月23日の状況
・ドル円=売り建玉数量:買い建玉の比率=1:3.6
・ユーロ円=同、=1:1.02
・豪ドル円=同、=1:3.2
・ユーロドル=同、=1:0.22
詳しくは、同取引所のホームページへ

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

金融商品取引法からみる証券会社の役割
 もう5年程昔になるが、それまでの証券取引法が現在の金融商品取引法に替わる時、証券会社は金融商品取引業となった。その際、金融商品取引法は他の投資顧問業法や金融先物取引法も完全に吸収し、加えて投資信託法の投信委託業の規制も取り込んだ為、投資顧問会社や投資信託業者(運用会社)なども同法では金融商品取引業者として扱われることとなった。
その金融商品取引業者は、次の4つに分かれる。(説明に使用した語彙は、一般の投資家が理解しやすいよう平易な文言で記載。数字は本年3月末の数字。)

【第一種金融商品取引業】(証券会社やFX業者など315社)
○株式や債券・公募の投信などを販売したり売買を取り次ぐ業務。
○上場若しくは店頭デリバティブの売買等。
○株式や債券を発行企業から引き受けて販売する業務。=この業務は資本金基準があり、主幹事になる為には30億円以上の資本金、一般の引受業務では5億円以上。
○保護預りなど投資家から預かった有価証券を管理する業務。
※上記の業務は、資本金が5000万円以上という基準を満たし必要な登録要件を備えていれば、原則登録される。だが、その後一定以上の自己資本比率を維持する必要がある。また、金融庁による認可が必要な業務としてPTSを営む業務があるが、最低資本金基準は5億円。

【第二種金融商品取引業】(ファンド業者など1,294社)
○私募ファンドなどの販売(なお、有価証券に50%以上出資するファンドが、500名未満の所有が前提。有価証券の開示制度が適用除外となるワインや農水産物ファンドのような事業ファンドも扱えるが、投資家には所定の事項を記載した書面を交付する必要がある。)
※上記の業務は、資本金が1000万円以上という基準を満たし必要な登録要件を備えていれば、原則登録される。(但し、資本金5000万円以上でなければ一部業務は制限ざれる)

【助言・代理業】(投資顧問業者など1,108社)
○投資家との間で締結した契約に基づいて、有価証券など金融商品への投資判断について助言を行う。
○投資家と投資運用業者との投資一任契約または投資助言業者との助言契約の締結の代理・媒介
※上記の業務のみを行うものは、営業保証金500万円以上という基準を満たし必要な登録要件を備えていれば、原則登録される。個人も可能。

【投資運用業】(運用会社など321社)
○投資一任契約に基づき、投資者から投資判断や投資に必要な権限を委任され投資を行う。
○ベンチャー企業の育成や事業会社の再生等を目的として組成されたファンド・不動産私募ファンドの運用を行う。
○公募の投資信託やJ-REITの運用を行う。(この部分は、投資家に金融商品を販売する証券会社などは兼業できない)
※上記の業務は、資本金及び純財産額が5000万円以上となり必要な登録要件を備えていれば、原則登録される。

なお、証券会社という名称は旧法(証券取引法)で証券会社以外のものが利用することを禁止していたが、現法(金商法)では、第一種金融商品取引業の登録を受けていれば利用可能とされている。ただし、実際に証券会社として一般投資家に金融商品を販売して行く為には、自主規制と金融ADR機能のある日本証券業協会に加入する必要がある。
 長々と業法を述べたが、証券会社(第一種金融商品取引業)として何を兼業しているかは、次の様な状況となっている。

○第二種金融商品取引業との兼業=315社中133社で、証券会社の全体の42%が、私募ファンドの販売を行うことが出来る。
○助言・代理業との兼業=315社中57社で、証券会社の全体の16.5%が、投資助言契約の締結や、運用会社が提供するSMA(セパレートリー・マネージド・アカウント)やラップ口座の契約締結を仲介している。
○投資運用業との兼業=315社中33社で、証券会社の全体の10.4%が投資家との投資一任契約の締結を可能している。

ちなみに、他の3つの業務を全て兼業している証券会社数は、19社。

また、全ての業務が出来るからといって、それが有機的に機能し、業務面で効果を上げているかというと、証券会社に関してはそこまで進化していないように思われる。証券会社の収益は、投信や外債の販売が中心であり助言や運用業の取組みは、富裕層ビジネスの課題としてあるという状況だ。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

東証と東京都
 標題の様に並べて書くと違和感があるかも知れない。しかし、最近の両者の動きをみていると、どちらも資本市場の問題・日本の問題で大きな課題に取り組もうと発信している。政治的なことは専門家の方々にお任せするとして、本来は国や経済界・業界全体の問題に対して、取引所として何らかの対応をしようとする姿勢は、やはりトップのマネージメントに依るのだろう。例え、外部から要請があるにしても。

 少し例をあげれば、コーポレートガバナンスの強化の為に、独立役員制度という仕組みをつくって対応しようとするのは、本来の会社法の問題のように思うが、日本企業に対する投資家の信頼回復の為に取引所の上場ルールを改定した。また、最近では本来証券会社が行うべき投資家層の拡大(個別投資家へのプロモーション活動)に関して、本年度の取引所事業計画として次の様なアクションプランを公表している。(3月27日日本経済応援プロジェクトより)
アクションプラン1=機関投資家への日本株キャラバン
 ・海外機関投資家への個別プロモーション活動(海外金融センターに年2回以上のトップ営業)
 ・国内機関投資家へ、ETF利用法を個別提案
アクションプラン2=新たな個人投資家層の裾野拡大
 ・セミナーやSNSなどを通じて100万人以上の方々に日本株の魅力を発信など

ところで取引所を取り巻く環境について触れておきたい。

 取引所の一番重要な部分は、市場のインフラとしての取引機能だ。この部分は、超高速化対応が進み世界的に見ても遜色ないほどになっている。また、上場商品としてのETFを通じて、投資のグローバル化・多様化・多機能化にも対応していて、一般の投資家が利用可能な投資方法は増えた。
だから、日本の取引所自体は随分と進化している。
しかし、一般的に日本市場が世界の先端を走っているイメージはない。それは、国内の投資家が充分に取引所機能を使いこなしていないからだろう。取引所はあくまでも市場インフラであって、実際にそのインフラを利用して取引サービスを提供するのは証券会社になる。

取引所は顧客の売買注文を取り次いだり、自ら売買を行う証券会社で成り立っている。その事を考えれば、直接取引所では売買に参加する証券会社側が、取引所の変化に附いていっていないのではないだろうか。確かに、証券会社は対面営業でもオンラインでも金融危機後の厳しい環境の中で新しいビジネスモデルも模索している。
例えば、オンライン証券は、FXなどデリバティブ取引や投信・外債のネット販売に注力しているし、対面営業では今や収益の中心は投信と外債販売の募集物中心になっている。証券会社が取引所と接する面が個人営業の部分では少なくなっているのではなだろうか。
せっかく多機能化した取引所。それを部分的にでも専業で利用し、投資家にサービスを提供する専門家した証券会社の出現が待たれる。その為には、現在の証券会社が得意分野に特化しながら、取引所機能を使いこなす新しいビジネスモデルの出現に期待している。

東京都を支えるものは勿論都民だが、東証を支えるものはやはり証券会社だ。


テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

市場の裾野拡大の為に~グリーンシート市場の場合
グリーンシート市場は一般の投資家に馴染みがない。1997年に制度が開始された時は、成長期待のある未公開株や地方企業の株式を証券会社の店頭でも売買できる仕組みとして期待されていた。しかし、一般の投資家が知らないのは、取り扱う証券会社が少ないためだ。

 この制度は、日本証券業協会が定める自主ルールによるが、現在協会においてこの見直しの議論が行われている。何故、証券会社が取扱わないかは、経済的メリットが少ないことに加え、取り扱う為の手間がかかるからだ。その為、通常の株式市場のような流通の場とは明らかに異なるし、取り扱う証券会社数が少ないということは、取引に参加する投資家が少ないということであり、この市場に参加した企業の資金調達にも余り役立っていない。
 ただし、協会規則では一般の投資家に流通することを前提としているので、有価証券報告書の記載内容に準じたものを発行会社が作成しなければならない。その為、参加する企業は公認会計士の監査を受ける必要があり相応のコストが掛かっている。

以上の様な問題点が協会での議論で指摘されているが、簡単に言い切るならこの市場は手間とコストが掛かる割に、企業も証券会社もメリットが少ないということになり、制度としては失敗だったのではないかというのが結論のようだ。

ではグリーンシート市場の様な未公開株の流通市場が不要かというと、次の様なケースでは日本の資本市場全体の裾野拡大に役立つだろうという事も関係者間で認識されている。

①ベンチャー企業が新興市場に上場(IPO)を目指す前に、リスクマネーを調達したり、当該株式を売買したりする市場はあった方が良い。
②未公開の地方有力企業(例えば、地方鉄道やバズ会社、地域の放送局など)の株式を売買したいとのニーズには証券会社として対応すべきではないか。

現在のグリーンシートの制度は、証券会社が参加銘柄を勧誘しても良いことを前提とし、開示制度や売買ルールが決められているが、一部の企業のファイナンス時を除き、殆ど証券会社が売買を勧誘することはないようだ。であるなら、ディスクロージャーも簡素化し、売買ルールも①と②の様なケースで投資対象者を分けて整備しなおした方が良いのではないだろうか。

①については、プロ向け市場との関係も整理した方が良いと考えるが、個人投資家がベンチャー企業投資を積極化する必要が本当にあるのだろうか。例えば、通商産業省がエンジェル税制対象企業リストを公開しているが、これらの企業に個人が投資する場合を想定してインフラを整備した方が、個人のリスクマネーを新興企業のファンナンスに繋げるということ目的に沿っている。この場合の証券会社の取扱いルールを簡素化するべきだ。

②については、個人株主の売却ニーズや交通機関なの株主優待券狙いの購入ニーズがあるようだが、証券会社が関与する場合の役割を明確にして、その役割に沿った取扱いルールで良いのではないだろうか。例えば、単純に売買の決済を行うだけの場合と、買い手・売り手を探す場合などでは証券会社の負担(逆に言えば収益)が異なるのでルールは違っても良いだろう。なお、取り扱う企業は地元における一定規模以上の企業なのだから、財務データの開示は当然として、過去の取引価格や株価算定情報は必要だと考える。

いずれにしても、証券会社が未公開株式をちゃんと取り扱うということが必要だと思う。その事が、結果として未公開株詐欺などを防いでいくことにも繋がっていく。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

投資信託の販売で何が問題なのか
 金融業は行政による規制の影響が大きなビジネスですが、その規制も時代の変化によって緩められたり強化されたりしています。その方向性は、金融商品に関わる業者にとっても、投資家にとっても、影響が大きいものですが、現状では金融審議会の議論を経て決定されることが多く、また議論の為の資料や議事録が公開されているので、政策決定のプロセスの透明性が高いと思います。議事録の記載内容についても、誰がどの様な趣旨の発言をしたか示されているので、審議会に参加していなくとも問題点などが把握しやすくなっています。つまり、問題点とそれに対する議論の文脈が外部からも分かり易くなっているので、ここで日本の資本市場に関する重要な問題が取り上げられることを期待しています。

 現在、その金融審議会において「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」が3月から始まっていますが、公募投信やJ-REITなどの今後のあり方に関する問題が取り上げられています。その会議上で以下の投資信託に関する資料が公開されていますので、ご参考下さい。問題点の全体像を把握するのに良いと思います。

「金融自由化以降の投信マーケットの状況と今後の課題」(野村総研)
「ウェルスマネジメント事業の現状」(ドイツ証券)
「投資家目線でみた投資信託の現状と課題」(LIFE MAP LLC)

それで、標題の件に絞って少し考えてみたいと思います。
上記の3つの資料からは、投信販売上の問題として主に次のことが指摘されています。

先ず大きな命題として、
○投資信託は、個人の金融資産形成に大きく寄与しているか
ということがありますが、銀行など金融機関での販売解禁から10年以上しましたので、それなりに残高は増加しています。但し、個人の金融資産に占める割合が昨年末で2.6%と、米国(11.5%)やユーロ圏(6.7%)に及びません。
投信の窓販解禁以降、販売チャネルは大きく増えているし、昔から投資信託を販売している証券会社においては、今や収入の主要な部分を投資信託に頼るようになっているのに何故か。
2つのことが日本の投信販売の事情として考えられますが、一つ目は資産運用として投信の購入する主な年代層が高齢化しているのではないかということです。毎月分配型が投信販売の主流になっていることと、また、それらの投資家層は出来るだけ高い分配金を毎月受け取りたいというニーズが強いこと。その為、投資効果を上げる為の資産運用というより、月々の資金の確保が優先される年代層が投信販売の主要な顧客となっています。
もう一つは、本来は米国の401Kの様に、資産形成層に大きく利用されるべき投資信託ですが、日本における確定拠出年金制度(DC)は利用者が400万人を超えたとはいえ、まだ制度的に改善余地が大きく、また他の日本版ISAなど少額継続投資制度(税制優遇のある)が未整備です。さらにDCに関しては、対応するファンドが総合運用型などに限定されていて、投信信託としての魅力ある商品ラインナップが揃っているとは言い難い状況です。
以上を、投信の商品供給面から纏めてみると、個人投資家の特定の層の資産運用(というより実相はキャッシュ・マネージメントに近い場合もありです)に応えてはいるものの、資産形成の為に販売サイドが注力することがあまりなかった姿が浮かび上がります。

 次に2つ目の命題として、
○個人投資家にとって、利用しやすい投信販売の仕組みになっているか
ということがあげられます。確かに、ここ2年で投信目論見書の平易化・標準化が進みましたし、一部ではインターネットで選択して購入できる投信も増えています。投信内容の分かり易さと投資家の支払うコストの低減する仕組みという意味では、進んでいるようにも思います。しかし、多くの個人投資家が求めているのは分かり易さとコストの安さだけなのでしょうか。
投資するということは、自分の耐え得るリスクも考えること、コストを証券や銀行などに支払うということは、それに見合ったサービスを受けること。このことを個人投資家が判断できるように、他の金融商品は勿論、他の投信との比較が容易となることが重要だと考えます。その為には、外国投信まで含めて日本語で書かれた目論見書の言語使用を共通化していくことが必要です。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

増資インサイダーの構造と現段階での対策について
 4月13日付の日経によると、SMBC日興が公表前の公募増資の情報を利用して、個人投資家に事前の勧誘活動をしていた事に対し、証券取引等監視委員会(SESC)が処分勧告をする方針を固めたことが報じられている。所謂増資インサイダー取引である。先月明らかになった大型公募に対する中央三井アセット銀行(4月以降は三井住友信託銀行に統合)の空売りインサイダー取引は、主幹事の野村の営業部員から情報が伝えられたとされているが、増資に関わるインサイダー情報漏洩の構造は全く同じだ。また昨年、海外機関投資家から指摘された2010年の大型公募増資に関わる海外ファンドなどの事前の空売り問題も、同じように主幹事証券からインサイダー情報が投資家に伝えられたことに因る。

 本来は、公表前は外部に漏れることのない公募増資の情報は、証券会社の組織内だと主に引受部門で管理されている。ただし上記の3つのケースは、何れもここから営業部門を通じて投資家に伝わったようだ。
個々のケースは別にして、主幹事会社内の構造的な問題として次のようなことが考えられる。(内容は簡略化して記載)

○発行会社から公募増資を依頼された証券会社は、引受ける為に公表日の約2カ月前に引受審査資料を受け取る。この時点では、公募情報は発行会社の担当役社員・引受主幹事の担当者達・企業の公認会計士などに発行関係者に限られ、情報が外部に漏れることはありえない。
○ただし、公募増資公表日(新株発行の為の取締役会決議)が近づくにつれ、どの様に新株を販売していくか問題になる。公募情報をもつ引受部門の担当者は、実際の投資ニーズにはタッチしないので、商品部門を通じて営業部隊が担当する投資家の意向を推量する。
大型のファイナンスなどは、海外でも募集することが多いので、どの位海外投資家に需要があるか、特定の投資家を選んで実際に聞いてみる慣行がソフトヒアリングだ。これは、公表の1週間から1ヵ月近く前に行うので、海外の機関投資家協会から批判されていた。
一方、国内の営業部門への伝達は、正式には公表後だが、どの位新株を販売しなければならないか、少なくとも営業部門の責任者には事前に伝えなければならないのは証券会社内の組織的なルールだ。

勿論、公表前に公募増資情報に関与した証券会社内部の人間・一部海外投資家が其々インサーダー情報として管理している。しかし、今回のSESCの摘発は、引受会社内におえる公募増資に関する情報の管理態勢を、一層厳格化させることとなると思われる。

 当局による規制や監督強化とは別に、現段階では以下の方法が増資インサイダーを防ぐ方法として有効と思われる。
【公募増資のあり方を発行企業側から替える】
・発行登録の利用=情報を秘さなければならないので増資インサイダーの問題が発生するが、いっそいくら調達したいという意向をオープンにして、そこから主幹事の選定などの作業に入れば良いのではないだろか。発行登録は1年若しくは2年間の発行枠の申請なので、市場の反応が芳しくなければ、時期をみることも可能だ。
・ライツ・イシューの利用=取りあえず新株を株主に割当て、不要な株主は他の投資家に権利(ライツ)を売却できるこの方法は、増資インサイダーを防ぐ方法として有効だ。権利行使されない部分を証券会社に引受けさせるコミットメント型でなければ、主幹事証券会社の選定や引受審査作業も不要になる。

市場の機能として、リスクマネーを企業が調達する機能は非常に重要だが、流通市場の健全性を守る為にもインサイダー取引など不公正取引への監視は常に強化されなければならない。発行市場・流通市場それぞれの仲介を行う証券会社の情報管理や引受のあり方が、再び問い直されている。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

最近の投資信託動向について、4月上旬時点
3月は新規設定・追加募集とも投資信託への資金流入超過となっています。
既存ファンドの方は7カ月ぶりに233億円の資金流入超ですが、ソブリンものや国内株式ものから資金流出して米国REIT投資や海外株式もの資金が入りました。
また新規設定は1,541億円で、日本株投資ものや海外株式投資ものが中心となって資金を集めました。

詳しくは、三菱アセット・ブレインが公表している下記資料をご参考ください。

☆投信マーケット概況3月号(4月5日公表分)

 また、投信の運用会社が個人投資家向けに発信する情報(レポート)に関して、REIT関連やオーストラリアに関する情報発信が増加しています。

 今後、投信の運用会社が何に注目しているかは、4月の新規設定ファンドの投資テーマから推測できますが、日本株投資に関しては前月に続き、期間や利益の上限を限定するファンド設定が一つの流れとなっています。また海外REITを中心にオルタナティブ投資というのも一つの流れです。

☆最近の投信運用会社の情報提供の傾向と運用テーマ(2月上旬時点)

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

大震災後の1年間、投資からみた風景
 先ず東日本大震災で、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方が一刻も早く“日常”を取り戻されることを願っています。

 もう1年も経ってしまったというのが実感です。地震・津波の大きな被害に加え、原発事故とそれに伴う電力問題は、日本は戦後最大の危機と言われましたが、それにどの様に対応し、また乗り切ろうとしているのか。国は勿論、企業も国民一人一人も問われた一年でした。
このことについて、投資という視点から今までの動きを纏めてみました。

☆大震災後の1年間、投資からみた風景

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

空売り規制について~その機能面の問題
一般の方には、株式の空売りなど所詮買い戻すことが前提なのだから、大きなトレンドとはならないと考える方々もおられるだろう。確かに、長期の需給関係では平準化されることもある。ただし機関投資家などはロスカットルールを持って運用しているので、大きな下落は運用対象から外す理由となることもある。空売りは、市場に流動性を供給するだろうが、全く規制がない状況での空売りは大きな下落を伴って他の投資家のロスカット取引を誘引することもある。
だから金融危機時にはパニック的な投げ売りと急激な下落を避ける為、各国の金融当局は非常事態として金融株などの空売りを一時的に禁止した。日本では前回紹介したような空売り規制があるので、特別な空売り禁止措置ではなく、以下の様な措置(当初は時限措置だったが、現在まで継続)が取られ現在にいたっている。
1.株式を調達しないで売るネーキッドショートの禁止
2.大口(発行済みの0.25%)の空売りの日々の報告

1.については少し分かり難いかも知れない。もともと金融商品取引法では、株式を借りてこないで売る行為を禁止しているが、海外ファンドなどが空売りしてから株式を調達する場合があり、この行為に対して日本の法規制がどこまで及ぶのかとの議論もあった。例えば、他の国では空売りしてから株式を調達して決済できるのに、何故日本ではダメなのか・・・とは海外ファンドは言わないまでも、投資行動として一時的なネーキッドショートはあった。金融危機以降、米国を始め欧州諸国の一部では、このネーキッドシート禁止を取り入れているが、日本の金融当局が敢えてこのルールを明示したのは、海外の投資家の注文を取り次ぐ証券会社に対して、売りの場合株式の調達を確認する義務が生じるということになる。

2.については、株式を借りて大量に空売りする場合を牽制する目的ではないと思うが、毎日報告義務があり取引所で公衆縦覧されれば、他の投資家も知るところとなる。但し、前回も触れたようにこの報告は一般投資家には非常に使いづらい。(銘柄毎・取引日別の集計がされていない)

 日本の空売り規制の中で評判が悪いのは、アップティック・ルールと言われる売り下がりを禁じたものだが、このルールは米国では2007年7月に撤廃されている。しかし、日本では未だ維持されているが、少し取引の実情に合わなくなっているとの指摘(取引所など)がある。

例えば信用取引において、株式が借りられる場合でも51単位以上の成り行き売りなど出来ないが、取引などの投資単位の引き下げ要請で、1000株から100株に単元を引き下げているようなケースでは、5100株の信用売りの成り行き注文は出せない。株価が100円であれば僅か51万円である。この様な少額の取引を規制する意味は何処にあるのだろうか。

またアルゴリズム取引は、利用するファンドなどの注文を最適価格で処理する為に売り買い両方の注文を細分化して発注・取消しを処理するが、このアルゴリズム内で空売り(一応株式を調達した場合)規制の遵守はどう処理されているか一般の投資家には解らない。多分借りてきた株式以上の売りを行うだろし、売り下がる方向の制御を掛けているとは想像できない。

さらに店頭デリバティブ(例えばCFD)において、投資家と証券会社の相対取引となる部分は、アップティック・ルールを適用すること自体困難と思われる。

信用取引もアルゴリズム取引もCFDなどでも、これらを利用して空売りを行うことは市場の流動性強化の為にも必要と認められるなら、このアップティック・ルールそのものの運用について、空売り規制本来の目的に沿って見直すべき時にきている。そう感じる市場参加者は多いのではないだろうか。


テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

空売り規制について~その情報のあり方
空売り規制は一般的には少し分かり難いかもしれない。

もともとは相場操縦的な行為を防ぐ目的で、株式がないのに下落させることを目的に売ることを禁じたものだ(金融商品取引法162条)。危機や何かのパニックの時、取りあえず売っておいて株式を後で調達するような行為を防止する為だった。
旧来のルールは株式を借りて売る信用取引などは対象外だったが、前世紀末の日本に金融危機の時に、このルールは強化されて、株券を借りて売った場合は注文を受けた証券会社を通じて取引所に報告することや、直前の価格から下での売り下がりを禁じた(個人の信用取引のうち50単位以下の取引は除かれる)。

 また、今世紀の米国発の金融危機では、各国で金融株の空売りを一時的に禁止したし、直近の欧州債務危機においても、一部の欧州諸国では自国の銀行株の空売りを一時的に禁止する措置をとった。
 逆に言えば、株券を借りて行う空売りについては、流動性の向上や価格形成の為に良いとされているのが業界の認識となっている。但し、現在の日本市場における空売り(信用取引や他者から株式を借りて行う)について、以下の様な情報のバラツキの問題があるのではないかと考える。

・証券会社が信用取引を取り次いだ場合、取引所に報告しなければならないが、取引所が銘柄毎に週末の状況を集計して翌週の火曜日に公表している。これを証券各社は信用取組みとして投資家に提供しているが、売り残高が信用取引を利用した空売りとなる。ただし、この信用取引における空売りは主に個人投資家が利用しているが、個人取引の取引全体に占める割合は2割程度なので、市場全体の空売りを示している訳ではない。

・証券会社では保有する株式や他の金融機関から借りた株式を、顧客の信用取引での売りに提供したり、更に別の証券会社や金融機関に貸すことがある。この数値は国内の証券会社であれば、証券業協会に週末の状況を報告しなければならず、協会は翌週の木曜日に銘柄別の貸借残高を公表している。この数字は、必ずしも全て空売りに利用している訳ではないが、リスクのある株を借りるのは概ね金融機関などの売りの為とも考えて良い。但し、国内の証券会社や金融機関などの売買は市場全体の3割程度となるので、この数字も空売り全体の数字ではない。

・空売りの数値の全体像を把握することは困難だ。例えば、海外のファンドが他の海外投資家から借りて空売りした部分は、当事者以外正確には分からない。
リーマンショック以降、大口の空売りを把握しようと、その企業の発行済みの0.25%以上を空売りした場合は、海外の投資家であっても注文を受けた証券会社を通じて取引所に報告しなければならないルールとなっている。取引所はこの報告書を毎日公衆縦覧しているが、空売り状況を知りたい投資家にとってはハッキリいって使いにくい。取引の日付はバラつきがあり、かつ銘柄ことに集計されていないで、例えば同じ運用会社であっても複数のファンドは複数の報告書を提出する。

現在、このルールの恒久化を含めて金融庁で見直しが行われるところだか、今や海外投資家は市場での取引の半数を占めるのだから、個人や他の国内投資家にとって使いやすい空売り情報として改善されるよう期待したい。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

インサイダー取引規制に関する問題の概要
国内の運用機関のファンドマネージャーが、公募増資情報をもとに対象のファインアス銘柄を空売りした件は永年発行市場の仕事に携わるものとして本当にがっかりしました。
そもそも主幹事証券においては二重のウォールにより情報管理されているはずですが、実際の情報管理における問題点は、今後の証券会社サイドの調査と公表が待たれます。

 ただし、インサイダー取引規制に関しては、
○企業や業務を委託された外部業者の情報管理のあり方
○自社株取得や組織再編スキーム上での対応のし難さ
○誰が情報を何処まで聞いて判断したか
など、実務的に完璧な対応が困難なことも、また事実です。

ですから、常時市場への監視をしていくことと、インサイダー取引が一般の投資家の市場への信頼を失墜させる非常に重い犯罪であるということを社会的に啓蒙していくことも、重要なことだと思います。

☆インサイダー取引規制に関する問題の概要

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

最新記事
カテゴリ
最新コメント
プロフィール

ポーラスター

Author:ポーラスター
2009年1月スタート

最新トラックバック
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
RSSリンクの表示
参考文献
QRコード
QRコード