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2012/05
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再び増資インサイダー問題について
証券取引等監視委員会による過去の公募増資に絡んだインサイダー取引の摘発が相次いでいます。
(※日付は、新聞などの報道日)

●3月21日、国際石油開発帝石(現JXホールディングス:5020)が2010年に実施した公募増資で、主幹事の法人セールスから公表前に増資情報が中央三井アセットのファンドマネージャーに流れ、事前に同銘柄を空売りしたことに対して、同行のインサイダー取引として課徴金勧告
●4月13日、対象銘柄は明らかにされていないが、SMBC日興が2009年度と2010年度に主幹事を務めた公募増資で、増資発表前に営業部店に対象銘柄の販売活動を指示した件に対し、金商法違反(インサイダー情報=法人関係情報の管理)で行政処分を勧告
●5月26日、みずほFG(5411)が2010年に実施した公募増資で、主幹事の法人セールスから公表前に増資情報が中央三井アセットのファンドマネージャーに流れ、増資により想定される損失を防ぐ目的で事前に保有していた同銘柄を売却したことに対して、同行のインサイダー取引として課徴金勧告
●5月29日、日本板硝子(5202)が2010年に実施した公募増資で、主幹事などから情報を入手して、増資公表前に同銘柄を空売りしたことに対して、同社のインサイダー取引として課徴金勧告

上記の件は、いずれも主幹事の証券会社内で本来は限定された関係者以外に知り得ないファイナンス情報(インサイダー情報)が、営業部門を通じて顧客のファンドや機関投資家に伝わり、公表前に空売りなどの当該銘柄の売却を行ったインサイダー取引に繋がっています。
≪上記の件に関係した主幹事証券は、報道では野村・日興・JPモルガン(海外販売分の主幹事)と言われています。≫

【引受主幹事証券の公募増資情報の流れ】
この公募増資に係るインサイダー取引問題の背景を、少し整理しておく必要があるのではと考えましたの、再び本稿で取り上げました。主幹事証券内における公募増資情報の扱いは、概ね以下の様になっています。
(※日程は、公募増資の公表日から遡ったもの)
○3ヵ月程度前:発行企業から、公募増資と調達金額の希望を伝えられ、引き受けるか如何か検討。
・調達金額が200億円以上であれば、海外でも募集を行う方法を取ることが多いので、別途海外での主幹事証券(主にロンドンの証券会社)を想定しておきます。
○2~3ヵ月程度前:主幹事証券が引き受ける為には、社内の審査(引受審査)を行いますが、発行企業や監査法人とのやり取りに2ヵ月程度かかります。また、スキームが複雑だったり、海外で募集を行う為に必要な書類の準備にも入りますので、英国法などに詳しい専門の弁護士とのやり取りも始まります。

以上は、発行企業と引受関連の専門家たちの公募増資準備なので、増資情報は厳格に管理されています。

問題となるのは、発行企業が希望する金額が、実際販売できるかどうか主幹事証券内で判断しなければなりませんが、金融危機後の公募増資の様に金額が大きかったり、発行済株式総数に対して新株の発行が大きな割合の場合、主幹事証券内でその判断を下す新株の販売責任者の検討は難しいものになります。

 その為、新株の販売責任者は当該新株に対する投資家の需要を考える根拠を欲します。海外の機関投資家などから批判が強かったソフトヒアリングと称して、一部の海外投資家に対してその需要を公募増資の公表日の1ヵ月程度前から聞くことは、この為に行われましたが、現在はインサイダー情報管理強化の中でさすがに実施しなくなったようです。しかし、発行企業に対して最終的に引受可能金額を提示する時に、自社内の販売力を想定しなければならないので、ここで実際に新株の販売を行う営業部門との接触が始まります。時期的には、公募の公表日の1~2週間前ですが、同時期に他の幹事証券に対して引受額の打診が始まります。ですから、この時期に公募増資のインサイダー情報を持つ関係者は、一気に多くなります。

この情報は、証券会社の情報管理ルールで定められた範囲に納まって、例え社内と言えども部外者(特に営業担当者)に漏れなければ問題はないのですが、最近SESCに摘発された件は、いずれも営業担当者からファンドの運用者に伝えられています。

 度重なるファイナンスに関する過去の不祥事から、証券会社の引受審査のプロセスとその内容は非常に厳格に運用されていますが、問題は新株の販売額を決定する段階で、営業体へファイナンス情報が拡散し易くなっているという証券会社の構造的な問題があります。この問題は、一定額以上を引き受ける他の証券会社も同じです。

【増資インサイダーに対する対処策について】
・主幹事証券内において
証券会社内におけるファイナンスに関する情報管理を厳格化することは当然です。また、簡単にかつ厳しめに言い切るなら、主幹事証券の販売責任者は自分が売り切れると思う額以上の新株を引受けなければいいのですが、その為には大規模な公募増資に対して、社内の需要予測を行う仕組みや、他社の需要を推測する為にシンジケーションを強化する取組みが必要です。

・ディスクロージャーについて
そもそも、公募増資が売り材料になっていることが問題ですが、調達した資金で発行企業が次の段階の成長が見込めることを投資家にアピール出来れば、増資による市場への供給増加の悪いイメージを払拭できるかも知れません。その為に、現状の目論見書(内容は有価証券届出書ベース)ベースで十分かとの思いをもつ証券会社の営業担当者は多いと思います。
現在、海外投資家などの為に公募公表後にロードショーを海外で開催している場合がありますが、国内の投資家向けにもロードショーを行い、これをインターネットで一般投資家も閲覧できるよう開示規制が緩和されればと思います。

・ファイナンス情報をインサイダー情報としない代替策について
 以前にも触れましたが、大規模な公募増資の代替策としてはライツ・オファーリングが有効です。日本では2年前のタカラレーベンの事例以外ありませんでしたが、このファイナンス方法に対する開示規制が本年4月以降緩和されたり、実務的問題の議論が整理されていますので、この方法による新株発行の増加を期待しています。
 一方、現制度でも発行登録制度を利用して、検討段階の早い時期に投資家に必要資金とその資金使途をアピールしていくと言う方法も考えられますが、現状の発行登録制度は大企業が使うことが前提になっていますので、例えば時価総額100億円以下の企業は使えません。公募増資に関する発行登録に関しては、この様な大企業向け基準を緩和しても良いのではないでしょうか。

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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

最近のFX取引動向について
少し乱暴な言い方だが、外為市場は何でも有りの市場で株式などの資本市場とは大きく異なる。資本市場にあるインサイダー取引や相場操縦などの不公正取引規定は無い。逆に通貨当局による介入はあるし、各国首脳による相場誘導発言もあるぐらいだ。また、投資家だけではなく実態の経済に密接に繋がっているので、市場の参加者も多い。
この市場に、個人がFX取引で参入して一定の影響を及ぼしているが、最近の取引動向に関して言うと、概ねリスクオフの流れから、円やドルを買って新興国通貨など売っても良さそうだ。しかし、個人のFX取引の現状は、どうも市場トレンドの逆張りで外貨買い円売りのポジションが多く、その為損失を抱えた取引が多いようで、全体の取引金額も減少している。
 図表に示したものは、少し古いが金融先物取引業協会が公表している“店頭FX月次速報”の4月末時点の主要通貨のポジションで、円を売って外貨を買うポジションは、4月の円高進行化でも増加している。
つまり個人のFX取引は、外貨を対円で買い下がっているイメージとなるが、5月に入ってからもこの傾向は余り変わらなそうだ。

 一方、FX取引サービスの多様化は進んでいるが、その目的は当然顧客層の拡大だ。
現在、FX取引口座は主要なFX業者14社ベースでも220万口座(3月末時点、矢野経済研究所調べ)あるが、デイトレードやスイングトレードするベビーユーザー向けには、トレーディングシステムの高速化・高度化やスマートフォン対応は勿論、システムトレードのサービスが提供されるようになっている。
また、顧客の裾野拡大目的で、海外旅行向けに現物の外貨を受渡したり、外貨預金口座に送金するサービスも行われている。

また、証拠金に対するレバレッジを1倍・3倍と低く抑えたサービスもあるが、これは通常のFX取引が短期間の為替変動のサヤ抜きを目的にしているのに対し、外貨への投資若しくは外貨資産のヘッジに利用することも出来るので、外債投資の拡大に繋がったりその代替手段となることも考えられ。

株式などの有価証券を証拠金の代わりに担保化するサービスも増え始めているが、株式投資家などをFX取引に誘う目的であれば、ある程度その効果はあるだろう。ただし、現在は担保化出来るのが株式のみなので、外国債券や外貨建投資信託も加われば、個人投資家の外貨建て資産に対するヘッジとして利用が更に拡大する可能性もある。

顧客層の拡大とは別に、取引量を拡大する目的では、自社のシステムや取引カバー先を他社にも利用させるプラットフォーム化の動きもあり、FX専業者が証券会社などにホワイトラベルとしてFX取引機能を提供することは依然から行われていた。最近は、それに加えて証券会社の自己売買部門や一部の機関投資家などの外貨トレーディングも取り込んでいこうと、レバレッジ100倍の法人向けサービスの提供を始めたところもある。

FX業界も、現状は生き残りをかけた生存競争の段階に入っていると言われているが、顧客層の拡大策とともに証券会社など他社との協働が欠かせなくなっている。

☆最近のFX取引とFX取引サービスの動向
JOBS Act と日本の新興市場改革
 本稿では米国の“JOBS Act”に関して、月初にクラウドファンディングの件で一度取り上げましたが、この法案の米国資本市場における意味について、東証の斉藤社長が定例記者会見で取り上げておられるので、日本の新興市場の問題と比較してその効果(今後の事ですが)考えてみたいと思います。

 この法案は、仕事のjobやアップルの故スディーブン・ジョブス氏のお名前を意識してネーミングされたという事ですが、確かにJOBS=Jumpstart Our Business Startupsとは法律名らしからぬプロジェクト名のような印象を受けます。しかしこの法案は、米国の資本市場を大きく変えるような、もしくは米経済のダイナミズムを加速させる可能性を持っているのでは、といった思いが斉藤社長のコメントから伺えます。

 米国の資本市場関係の法案は、日本の資本市場ルールにも大きな影響を与えますが、過去を振り返ればエンロンやワールドコムの企業不祥事から米SOX法が定められ、日本でも上場企業に対する内部統制ルールが強化されました。また、金融危機によって欧米大手金融機関の投資行動が問題になりましたが、これを規制するようなボルカールールを含む米金融規制改革法が成立しています。SOX法は対上場企業への開示(ディスクロージャー)強化、金融規制改革法は大手金融機関の行動規制など、ここ10年来の米国の資本市場関連法案はどちらかというと規制強化の方向でしたが、“JOBS Act”は新興企業(含むベンチャー企業)の資金調達に関して大きく緩和しています。

 米国と言えば非常に厳格に開示ルールが運用されていて、例えばそれが米国で株式を公開していなくとも一定数以上米国の株主がいれば、日本企業のTOB(公開買付)や資本政策に影響が及ぶこともあります。しかし、この“JOBS Act”により、新興企業(売上げが10億ドル以下)であれば、IPO(株式新規公開)時やIPO後の一定期間、SOX法を含む開示ルールの一部が免除されるということです。これにより、新興企業の上場コストや手間が削減でき、よりIPOへむかう企業の増加が予想されます。

また、同法で注目されているのはクラウドファンディング条項ですが、現在も行われているクラウドファンディングは、あくまでも個人の寄附行為です。しかし、同法によれば創業段階や設立後日の浅いベンチャー企業であっても、クラウドファンディングによって資本を集めることが可能となります。
この“JOBS Act”は、米国の新興企業全体の資金調達に大きな変化をもたらす規制緩和だと思いますが、翻って日本の新興市場は如何でしょうか。

 現在、業界をあげて“新興市場等の信頼性回復・活性化”という取組みを、もう2年近く行っています。これは、虚偽記載など相次いだ新興企業の内容をちゃんと確認するとともに、減少傾向が続く新興市場そのものを活性化する為の検討を、証券業界等の関係者で行っています。関係者の方々には申し訳なく思いますが、新興市場の活性化策に関しては、IPO増加の為に実効性を感じる施策は殆どありませんし、また議論もされていないようです。

 そもそも、資本市場はいくつもの法規制や取引ルールで成り立っていますが、市場の活性化策とはこの法規制・ルールの緩和に他なりません。ですから、新興市場の活性化策とは、新興市場のルールの緩和策ということになり、その為には法規制の緩和など政策的な支援が必要なのではないでしょうか。例えば、米国の様に。ですから、新興市場活性化策の業界での議論は、新興企業がIPOを行い易くする為、どのルールの緩和が必要なのかといった視点が必要です。
また新興企業のIPOを支援したりする業務が、IPOビジネス(市場誘導ビジネス)として活性化していくことも重要だと考えますが、その為にはこの分野の参入障壁を低くする施策にも期待しています。

≪再掲≫
☆クラウドファンディング、マイクロファイナンスとその応用の概略図
≪参考文献≫
東証の斉藤社長のJOBS Actに対するコメント
JOBS Actによる米国証券法等の改正(増島弁護士ブログ)
Jumpstart Our Business Startups Act(英文)
新興市場等の信頼性回復・活性化に向けた工程表

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ジャンル : ビジネス

投資信託へのそれぞれの期待について
仕事柄、証券会社の決算資料や経営計画を読み込むことが多いが、今や営業収益の4割以上(上場証券会社ベース)を占める投資信託関連収益(募集手数料と信託報酬の販売者取り分)は、証券会社の中核ビジネスとなっている。また、金融機関の投信窓販においても、銀行が顧客から受け取る手数料の1割以上(メガバンクベース)が投信関係の手数料だ。どちらも、今後一層のリテール顧客からの収益拡大の中心に、投資信託を位置付けている。

一方、投資信託の運用会社(正確には運用を指図する投資信託委託会社)は、投資家から受け取る信託報酬の約半額分を販売する証券・金融機関に配分している。こう書くと、何か単純に販売上のキックバックのように感じるが、必ずしもそういう訳ではない。それぞれの役割分担というのが実態だ。それは、日本の公募投信の運用会社は、殆ど投資家との接点を持たない(運用会社が直接販売する公募投信は、残高ベースで約3%)からだが、投資家の投信は証券や金融機関の顧客口座において管理されていて、投資家への情報伝達は概ね販売した証券・金融機関から行われる。その部分のコストを負担しているとの考え方も成り立つ。また、主に証券会社の営業現場などから個人投資家の投資ニーズが運用会社に伝えられ、新たな公募投信の設定に繋がることもある。
少し開き直って言うなら、日本の投信ビジネスにおいて証券・金融機関などの販売会社と運用会社の協働関係は成り立っている。

 最も重要なことは、今の投資信託のあり方が、投資家の資産運用や投資目的に沿っているか如何かだが、これもある程度応えてきたと言える。例えば、運用効率といった面では批判されることが多い毎月分配型の投信は、現在残高ベースで全体の7割近くまで増加しているが、長期間続く低金利化にあって、シニア層のニーズが強い商品であることは事実だ。

 以上の様に、現状のままでも投信関連ビジネスは相応に発展していくと思われるが、個人の金融資産全体の中で投資信託の比率は2.6%に留まっていて、米国の11.6%、ユーロ圏の6.8%に遠く及ばない。投資信託に関する最大の問題は、誰しもが個人の投信保有をもっと拡大させるべきだと考えているのに、現実は2007年をピークに残高も比率も減少していることにある。

では、個人の投資信託利用を増やす為に、どの様なことが期待されているかというと、概ね次の様なことが上げられる。

【政策的な支援期待】
◎何らかの資産形成の為の仕組み作り。
・確定拠出年金制度の拡充と対象者の拡大
・日本版ISAなど少額非課税の継続投資を容易にする制度整備による、世代間の資産移転の後押し

【運用会社への期待】
◎運用能力の向上
・既に金融商品取引法によって運用会社の参入規制は緩和されているが、業界全体の運用成績を上げる為には、適正な運用競争が行われる必要がある。(現在、3分の2の公募投信が、海外ファンドを利用した運用を行っているので、その場合はファンドの選択力が重要)
◎ファンドの投資家への“分かり易さ”の向上
・既に投信目論見書の平易化は取り組まれているが、より投資家に分かり易いように運用報告書の表現方式の改善が検討されている。

【販売会社への期待】
◎新規の運用資金の取込み
・当たり前のことを書いて気が引けるが、その為には運用の目的にあった商品提供が必要で、運用会社との協働強化は欠かせない。また現在、投信の保有者比率は1割程度(野村総研調べ)と見られているが、投資家層の裾野は広い。
・資産形成層の取込みの為には、ネット利用での投信販売が重要になってくる。ネット証券の様にファンド数が多ければ選択のしやすさ、逆に確定拠出年金の現状にようにファンドが限られていれば品揃えの充実がポイントだろう。

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

株式取引超高速化のメリットを享受する為に
東京証券取引所は、7月中旬より株式売買システム“arrowhead”の取引スピードを現在の2倍以上高速化して1ミリ秒以下に抑える(20日、日経)。この対応で、東証の売買スピードはニューヨーク取引所並になるという。
 一般に取引の超高速化は、流動性の向上をもたらし、市場参加者全体にそのメリットが及ぶとされているが、実際に超高速化対応する為には、直接の市場参加者のシステムの超高速化や取引情報を超高速に処理する為にアルゴリズムを利用する必要がある。所謂高頻度取引High-Frequency Trading(HFT)だが、この取引の目的は、大きく分けて次の2つになる。

○機関投資家やヘッジファンドなどが、注文を細分化したり、売り買い目的とは反対の売買を繰り返し行って、大口注文の取引コストを引き下げる。
○プロップハウスと呼ばれる裁定取引業者や証券会社の自己売買部門が、可能な限り短期間(取引リスクの極小化)で自らの利ザヤを稼ぐために行う。

また、上記の目的に沿ったアルゴリズムは、超高速で市場情報を判断し、超高速で売買注文の発注・取消しを行う必要がある為、東証のシステムに物理的に近い場所で情報処理される。これは東証のコロケーション・サービスにより、取引参加者である証券会社のアルゴリズムを取り込んだシステム設置が“arrowhead”の近くで可能となっており、またその証券会社のシステムの中に投資家のアルゴリズム取引を組み込むことも出来る(Direct Market Access=DMA取引)。

 HFTなど株式取引の超高速化は、IT技術の進歩であり、また人より早く情報を仕入れて、人より早く投資判断したいというのは、人でもシステムでも同じだろう。一体どこまで高速化が進むかという議論は専門家にお任せするとして、取引高速化のメリットが出来るだけ多くの市場参加者に及ばなければ、市場全体の発展には寄与しない。その為には、HFTなどに対抗するような取引・情報を個人投資家など非HFT利用者に提供するサービスが望まれる。

 一方、取引はシステムだけで成り立つのではなく、当然遵守すべき市場取引ルールがあり、大きくは金融商品取引法など法規制、そして取引所ルールから証券業協会ルールまで整備されている。
金商法でみると、市場における以下の行為は禁止されているし、売買注文を取り次ぐ証券会社もチェックしなければならない。
●不正行為の禁止(法第157条)=不正の手段、計画又は技巧の禁止。虚偽の表示若しくは重要な事実の表示を行わないこと。誘引目的での虚偽の相場の利用。
●風説の流布、偽計、暴行又は脅迫の禁止(法第158条)=相場の変動を図る目的をもって、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない。
●相場操縦行為等の禁止(法第159条)=仮装取引、馴合い取引の禁止。取引を誘因する目的を持っての行為、不実表示や見せ玉などの禁止。など

ここで市場取引ルールを敢えてあげたのは、HFT取引が市場全体の6割近くに及ぶ米国や4割近くなっている欧州において、HFTを取り次ぐ証券会社の取引内容チェック強化が行政当局より求め始められている。(詳しくは、日本証券経済研究所、清水氏“高頻度取引をめぐる規制動向”2012年4月)
簡単に言うと、ヘッジファンドであろうがプロップハウスであろうが、その売買注文は取引所の直接参加者の証券会社を通じて発注される形(例えDMAによるHFTのアルゴリズム取引でも)になるので、その軒先を貸している証券会社がちゃんと不公正取引のチェックをしているか如何が問われている。

この不公正取引行為に対するHFTのアルゴリズムチェックも然りだが、一般の投資家がHFTなどに持つ最大の反感は、一部の関係者以外にアルゴリズム取引の実態が良く分からないことにも依る。せっかくの技術革新の結果、進展している超高速取引について、実態の把握と問題点の共有こそが市場参加者全体へのメリットの享受に繋がると考えるが、その為には東証などのこの分野の情報開示が進むことを期待している。

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リテール証券会社の収益構造について
 上場リテール証券(主要な20社分)の決算内容は、連休前に公表されていますが、その収益構造のイメージは以下になります。

☆リテール証券会社の収益構造について(速報版)

また、内容のポイントは次の通りです。
【平成23年度、リテール証券決算のポイント】
・株式委託手数料は、前年度比約2割減→取引金額減少(▼16%)以上の減少となったのは大口の信用取引手数料競争が激化した影響とみられます。
・投信募集手数料が、前年度比12%減少→野村、日興が外債販売注力した影響で、投信の販売額が全体としては落ち込みました。
・投信残高報酬の増減は各社マチマチですが、全体としては目立った投信(株式投信及び外国投信)残高の増加はない模様です。
・リテール部門のトレーディング関連収益は、主に外債販売と私募債(自己の転売も含む)によるものですが、外債販売に注力した証券のトレーディング収益増加が目立ちます。
・ネット証券は収益の多様化を図る為、FX取引に注力していますが、特に店頭FXの収益寄与が大きいのはSBIとマネックスです。

全体としては、不振の株式取引を補う為に投信と外債の販売頼みの収益構造ですが、証券会社としてのビジネスモデルの変化を余り感じない内容です。今後、その環境や変化の可能性については、随時レポートしていく予定です。

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投資を通じた国民の資産形成について
 日本の金融市場に関する機能整備などの議論で、常に前提となっているのが個人金融資産の有効活用だ。一時、1,600兆円に迫る残高(2006年末:1,573兆円)だったが、日本社会の高齢化や市況環境もあって、昨年末の時点では1,483兆円となっており、そのうち839兆円が現預金で金融資産全体の56.5%と先進国の中では群を抜く比率だ。ちなみに、米国は14.4%、欧州は36.4%となっているが、日本の問題はここ5年間、金融資産全体が減少する中で、むしろ現預金は増加していて、貯蓄から投資というより、国民の安全志向が強まっている。

 高齢化の進む社会では、資産運用の安全志向が強まるのは仕方ないことかも知れず、個人金融資産の6割以上を占める60歳以上の家庭に、リスク投資を増やしましょうというのは、何か政策的なことが必要かも知れない。

 一方、投資による資産形成で最も注目されるのは確定拠出年金制度(日本版401K)で、本年2月末の状況では、確定給付型の年金制度から移行若しくは併用している企業の加入者数は422万人(別に自営業者など個人型は14万人)となっている。これは、会社員数(約3400万人)の12%に当たっているが、企業の年金債務の問題もあり、今後この数字は増加していくことが予想されている。ちなみに、現在の確定給付型年金の資産規模は約70兆円だが、確定拠出年金の方は5.4兆円に留まっている。

 2月から始まった政府(国家戦略室)の成長ファイナンス推進会議では、個人の金融資産を投信(ファンド)を通じて成長マネーの供給源とする施策が検討され始めている。
その為、確定拠出年金制度の拡充として次のことが検討されている。
①拠出規模の拡大=本年1月から、企業型については事業主の拠出額を上限として従業員が別途資金を継続投資できるマッチング拠出が可能となっているが、更なる拠出金限度額拡大を検討。
②同制度への加入対象者の拡大=公務員(400万人)や、会社員の妻の専業主婦(1000万人)への拡大を検討。
③資産運用の改善=継続投資教育に加え、分散投資の推進に向けた施策。(この部分の具体策は良く分からないが、報道によると拠出金の限度額を複数年度で管理し、単年度で余った枠を翌年度以降に繰り越せる制度の検討もあるようだ)

この他に、個人の投資に関する事では次のことも検討されている。
○官民連携によるマイクロ金融プラットフォーム=これは大震災に注目を集めた被災企業支援目的のマイクロファイナンス(数百万~数千万)をイメージしているようだが、コミュニティビジネスや若者・女性の起業支援を目的にして、郵便局や地域金融機関との連携策も検討。(この部分の報告書での表記は、“志あるマネーの呼び起こし”)

○世代間資産移転促進制度(仮称) -教育資金積立-=これは英国のチャイルドファンドをイメージしているようだが、報告書では投資信託を活用した高等教育資金の積立・運用に係る税優遇制度を構築することにより、高齢者から現役世代への金融資産の移転を促進するとされている。

○世代間資産移転促進制度(仮称) -不動産-=詳細は分からないが、高齢者が保有する不動産についても、特に有効活用が可能なものにつき利用可能な制度として検討されるようだ。

 以上のことを国民サイドから纏めると、老後資金や教育資金など纏まった個人金融資産を形成する為、非課税の投資枠拡大と整備を今後政府が行う。また、言い方は悪いかもしれないが、高齢者から若年層に金融資産が移転しやすい仕組みも検討される。ポイントとなる金融商品は投資信託で、上記の目的に沿った商品供給は勿論、販売態勢や情報提供・投資教育など運用会社のみならず取り扱う金融機関の態勢整備も重要になってくる。
 証券・金融業界にとっては、今までの個人資産運用は勿論ビジネスの中核であることに変りはないが、資産形成にどの様に関与を深めていくかも、また社会的に求められることだろう。

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最近の投資信託動向について、5月上旬時点
4月の投資信託の新規設定は、海外REITやアジア株・日本株などに投資するファンド中心に資金を集め、久々に5,353億円と2010年4月以来の大規模な設定金額水準となっています。また、既存ファンドへの資金流入額も、米国や新興国へ投資するファンドに資金が集まり、3,948億円の資金流入超過で、これは昨年の8月以来の水準です。

詳しくは、三菱アセット・ブレインが公表している下記資料をご参考ください。

☆投信マーケット概況4月号(5月8日公表分)

 また、投信の運用会社が個人投資家向けに発信する情報(レポート)に関して、米国経済動向やマクロ経済動向に関するレポートが増加、原油や金など商品投資に関するものも増えています。
レポートの公表形式としては、トピックス的な話題をコラム形式で適時に公表するものが増えていますが、これは投資家向けというよりは、証券会社や金融機関など販売会社の営業向けに運用会社としてのプレゼンスを強める為でしょうか。(運用会社としてのハウスオピニオンは必要ですが、市況解説的なことは本来販売会社が投資家に説明するべきことではないでしょうか)

 今後、投信の運用会社が何に注目しているかは、5月の新規設定ファンドの投資テーマから推測できますが、日本株投資に関しては前月・前々月に続き投資対象として関心が高い状況ですが、テーマが絞られてきているようです。
また、米国への投資はハイイールド債やREITに加えて、米国株式への関心も高まっているようです。

☆最近の投信運用会社の情報提供の傾向と運用テーマ(5月上旬時点)

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インサイダー取引規制について
 本音を言えば、インサイダー取引規制の問題は難しいと考えます。勿論、健全な市場である為には不公正な取引を最大限の努力をもって排除していかなければなりませんが、余りルールを細かく定めてしまうと、実際の企業活動を阻害するケースもあります。また、インサーダー取引を補足する為には関係者の多大な努力が必要です。
 しかし、インサーダー取引を排除していく努力を常に行っていくことは、アジアの中心市場となること以上に、日本の資本市場の機能を守っていく為にも必要です。
投資家から直接注文を受ける業界にあっては、インサイダー取引に対して、やはり細心の注意と最大限の努力をもってこれを防ぐべきですし、そういった姿勢を投資家にアピールしていくことも必要です。
以下、インサイダー取引規制の現状について纏めました。

☆インサイダー取引規制について
・増資インサイダー取引について
・インサイダー取引規制の沿革と監視体制について
・インサイダー取引規制に関わる問題
・市場の健全性の為に取組むべき対応

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クラウドファンディング、マイクロファイナンスとその応用の概略図
前回触れたクラウドファンディングの概要と、マイクロファイナンスへの展開、そしてそれらの応用としてベンチャー企業の資金調達への関与に関するイメージ図を作成しましたので、ご参考までに。

"☆クラウドファンディング、マイクロファイナンスとその応用の概略図

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資本市場からみたクラウドファンディング
最近テレビ(TV東京)でもとり上げられたクラウドファンディグは、ちょっとした事業やプロジェクトの資金調達を行う方法として注目されている。ネットで事業内容を示し、賛同する人たちから資金を集めるが、資金の性格は寄附又はファンド(匿名組合)の出資金・若しくはその組み合わせとなっているので、一人当たりの出すお金は概ね数万円程度に留まる。寄附形式の場合は事業での成果物(例えば、スマフォのアプリやプロジェクトの記念品など)がお金の出し手に渡される場合が多いので、コミニティ・ビジネスへの参加・協力といったイメージが強い。また、出資金を集める場合は、事業ファンド(匿名組合方式)の出資分となり、事業立ち上げ後の一定期間後に、利益等の配分を約束するものある。こちらの方は、大震災で被災された地域企業の再建資金や、ベンチャービジネスの立ち上げ資金などの資金集めに利用されている。
どちらも、インターネット上で事業やプロジェクトの情報を流し、広く賛同者を募って資金を集めるということになるが、企業の株式や債券の募集でないので直接的には金融商品取引法の対象外だ。つまり、現在のところ資本市場との関わりあいはない。

では、これらのクラウドファンディングを業として行う場合はどうなのか。

ネット上では、既にクラウドファンディング用の複数のサイトが立ち上がっていて、これら小規模な事業やプロジェクトの資金集めを仲介しているが、寄附集めの仲介に留まる限り、現在の金融規制とは関係ない。但し、ファンドの出資分のファイナンスを仲介しようとすると、一般の投資家からファンド募集を行う第二種金融商品取引業に該当すると考えるのが順当だ。

 スマートフォンの普及により、インターネット利用層が拡大し、SNSなどでコミュニティを利用して情報を拡散・共有していく仕組みが出来つつある現状を考えると、それがベンチャー企業のファイナンスに利用されても良いのかも知れない。例えば、クラウドファンディングで一定規模の出資者を集めたベンチャー企業に対して、ベンチャーファンドが出資する基準を持てば、クラウドファンディングと資本市場の距離は近づく。また、ベンチャー企業に対する直接の出資(事業ファンドの出資金ではなく、株式への投資)は、エンジェル税制があるものの個人投資家にとっては難しいとされてきたが、クラウドファンディング的手法で、事業内容が公開され、それに対する評価情報などが得れれば、ベンチャー企業投資は分かり易くなる。

 このクラウドファンディングが注目されたもう一つの理由としては、4月に米国で成立したJumpstart Our Business Startups Act(JOBS Act)に、“クラウドファンディング条項”があったことだ。同法の目的は、新興企業の資金調達に関する規制を緩和するとともに、すべての企業を対象に株式公開の方法や時期について柔軟性を高めることとされているが、一般投資家からの募集行為に対してはSECへの届出などが厳格な米国では、新興企業のファイナンスに対して大きな変化をもたらす可能性がある。
特に“クラウドファンディング条項”では、1年内に100万ドルまでの資金調達ならSECの登録義務が免除される。ただし、個人への販売は投資上限額が制限されたり、一定額以上の収入・資産規模が求められる。

 なお、日本の金融商品取引法では、一般投資家からファイナンス(株式又は社債)の募集を行う場合、有価証券届出書が必要だが、募集する金額が1億円以内なら記載内容が簡易な有価証券通知書、さらに1000万円以下ならその通知書も不要となっている。クラウドファンディング的な新興企業のファイナンスは、制度的には今でも可能だが、問題はそのファイナンスを投資家に仲介する証券会社(第一種金融商品取引業)の業規制(自主規制も含む)の方が厳格となっているので、新興企業の小規模公募ファイナンスに資本市場が関与するのが難しい。

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投資銀行のイメージ図
 前回、投資銀行のビジネスモデル概要について触れましたが、投資銀行の比較的新しい4つの機能が金融危機の原因となりました。4つの機能は経済にとって重要な機能ではありましたが、欧米投資銀行は収益性が高いビジネスとして人材を多く投入し、同時にその組織の予算を積み上げたので、業務全体がバブルを生み、信用バブルへと繋がりました。

 日本では、まだ機能のキャッチ・アップをしている時期でしたので、金融危機は日本の投資銀行にとっては欧米の投資銀行一部リーグに追い付く好機と感じたとしても不思議ではありませんでした。しかし、金融危機の要因となったことが広く世間にも知られるようになってからは、4つの投資銀行機能のバブル制御をターゲットにした金融規制改革法が欧米で整備され、また海外の世論も反金融(反投資銀行)に大きく傾いています。

 しかし、日本経済が本当にテイク・オフする為には、やはり金融において投資銀行機能の充実を行っていくべきと考えます。その視点で見ると、先週末に出揃った大手・銀行系証券の決算発表は、投資銀行部門=対企業や機関投資家に対するビジネスをどう強化していくかの戦略が全く見えないのが残念です。

元々、投資銀行部門はビジネスのリードタイムが長いので、恒常的な組織立てが重要ですが、決算発表で示されたことは、この部門の大規模なリストラの敢行が中心で、投資銀行業務の戦略的な展開が語られなくなっています。別にリストラの事を残念に思っている訳ではなく、余計な人員は整理して当然ですが、企業や投資家の信頼を回復する為、投資銀行業務をこう展開していくという戦略を見たかったと思います。
(M&Aの様に、外部の専門家を活用すれば、スリムな組織でも投資銀行機能を充実させていく事は可能だと考えます。)

☆投資銀行とは何か

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