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2013/09
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ファイナンス評価とディスクロージャー判断
 株式市場に上場する企業が、大きな変化を起こす時、株価も大きく動くのは当たり前ですが、その大きな変化の契機の一つとしてファイナンスがあります。

 新たに資本を調達して、事業の為の投資を行い、企業価値を上げるのですから、本来のファイナンスは買い材料であるはずです。しかし、それぞれの企業には諸々の事情があり、ファイナンスを実施しても投資の効果が分かり難かったり、逆に大幅な希薄化で1株当たりの企業価値を下げる場合もあります。このファイナンスについて、株主や投資家が買い材料なのか売り材料であるかを判断するには、上場企業のディスクロージャー資料に頼る訳ですが、ファイナンス時に注目すべき点を書き出してみました。

【ファイナンスの資金使途】
○基本的には、ファイナンスで調達した資金による投資効果が、分かりやすく記載されるべきです。
●しかし、多少厄介なことはお金に色がついていないため、実質的な借入金返済や優先株式の返済に回される場合もあります。これはこれで企業の財務基盤を強化するのに役立ちますが、ファイナンスによって起こる希薄化以上に効果を上げるかが問題です。
●更に、投資する事業や設備などが企業にとって元々計画されていたもので、株価に既に織り込んでいる場合、わざわざファイナンスの資金使途とすべきかどうかといったケースもあります。
○また、M&Aの資金とした場合、具体的な未公表の買収案件を抱えてファイナンスすることは難しいので、M&Aの実行は将来的な話になります。その為、具体的な効果はファイナンス時には推測しにくいのですが、既に事業計画などが公表されていれば方向性や目標が分かるので投資家・株主が判断しやすくなります。

≪資金使途の効果を投資家が判断しやすいように誰がサポートするか≫

-公募ファイナンスの場合
・引受主幹事証券会社の引受審査の過程で、資金使途について効果を推測する為のチェックが行われます。しかし、そのチェック内容は一般の投資家には公表されませんし、公募株などの販売時にも利用される訳ではありません。よって、一般投資家には○○証券が主幹事で資金使途を審査しているはずだというレピュテーションのみに頼ることになります。

-第三者割当の場合
・引受け手が判断しますが、一般投資家は引受け手のネームなどから推測することになります。事業に絡んだ資本提携ならその効果は推測しやすいのですが、引受け手が投資会社などの場合、資金使途の効果は分かり難いものです。まして、新株予約権を割当てるようなケースが、資金調達の確立性を判断できません。

-その他、ライツ・オファリングなどの場合
・主幹事証券会社も第三者の引受け手もいないので、企業のファイナンス公表時の説明に頼るしかありません。ただし、他のファイナンスに比べ企業が大規模な資金調達を行うことで大きな変化をする可能性が高いと見られますので、資金使途の重要性は増しています。

【ファイナンス時のディスクロージャー制度】
・記者発表文=取引所の適時開示制度で、株価に影響の大きなファイナンスを取締役会決議した時、速やかに公表する制度ですが、資金使途の効果を含む記載内容は基本的に企業の責任において行われます。ただし、実務的には新株式を追加で上場する為、取引所側の事前のチェックが行われています。また、公募ファイナンスの場合、主幹事証券の記載内容に関する助言(指導)が行われます。

・有価証券届出書(目論見書)=法定開示資料なので、決定内容として資金使途までは記載することが可能ですが、その効果は計画であって事実ではないので記載できません。

※幹事証券会社が、投資家に勧誘するのは目論見書の利用のみですが、投資家が資金使途の効果をより知りたいと思った時、利用できそうなのが、適時開示で公表された記者発表文です。ただし、記者発表文は新株式などの勧誘活動には利用できません。

【アナリストの判断について】
 ファイナンスは企業にとっての一大イベントなので、カバーするアナリストとしてはファイナンス評価を行うことは当然です。例えば、機関投資家からこのファイナンスは買いか売りか問われた場合、今までの投資や事業計画からどの位企業価値が向上しそうかコメントすべきです。
 しかし、所属する証券会社がファイナンスの幹事証券の場合、勧誘活動は目論見書のみで行われる為、投資判断に影響するコメントをアナリストは停止しています。

ここまで長々と書きましたが、どの様なファイナンスであっても、その資金使途効果を判断することは重要なので、一般投資家も利用可能な開示内容の充実やファイナンス評価を、そろそろ議論すべき時ではないでしょうか。

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ライツ・オファリングの現状と進化の可能性について
 9月4日に、札幌証券取引所において行いました上場会社向けライツ・オファリングのセミナー資料を公開いたします。内容は、ここ1年間で利用が拡大していますライツ・オファリングに関してですが、通常の公募ファイナスよりは利用可能な企業の範囲は広くなっています。但し、一般の投資家も応募可能なので、やはり公募ファイナンスとして最低限企業側が対応しなければならないこともあります。

また、市場仲介者としての証券会社の役割も、通常のファイナンス以上に大きなものがあります。今後、発行事例を証券業界で検証し、企業・株主・投資家にとって分かり易いファイナンス手段としてライツ・オファリングが定着していくことを期待しています。

☆ライツ・オファリングの現状と進化の可能性について

・ライツ・オファリングも公募ファイナンスの一種です
・ファイナンス市場全体の中のライツ・オファリング(とりあえず、○○の代替手段として始まっていますが、・・)
・最近のライツ・オファリング事例(意外と調達率は高めです)
・株価とライツの取引事例(当然ですが、株式の売買高が増加します)
・大株主の対応事例(大株主がどう対応するかはその他株主・投資家の重要関心事ですが、どこまで開示すべきか、・・)
・ライツ・オファリングのポイント(主に企業が検討すべきこと)
・ライツ・オファリングの効果(出来高増加により、株主数も増加する傾向がありますが、・・・)
・ライツ・オファリングの留意点(企業側が配慮してほしい点)
・証券会社の使い方(証券会社をアドバイザーとして使わなくとも実行できますが、誰が勧誘するのでしょうか)
・証券会社の関与の仕方(市場仲介者として、対応すべきこと、もしくは期待されること)

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個人の金融資産と海外投資の概要
 現在は、証券会社によるNISA口座獲得競争が激しく、久しぶりに業界を挙げての新規顧客開拓が行われています。長い間の課題になっていた“貯蓄から投資”を進める為に、NISAが普及することで大きな効果が期待されています。

 さて、足元の個人の投資家活動はどうなっているかですが、9月19日に公表された日銀資金循環統計速報版では、再び現預金が増加しています。6月末の状況は、本年3月末より12兆円の増加ですが、リスク資産の方は、全体の14.5%で3月末と余り変化はありません。なお、株式は3か月間で5兆円増加し129兆円となっています。これは、1年前に比べ31.4%の増加で株式市場の回復が影響しています。
個人の外貨建資産の方ですが、こちらは3月末に比べ1.1兆円の減少で、特に外貨建投資信託と外債などの利食い売りが出たようです。円安の進行が一服した影響のように思われますが、1年前に比べて大きく円安が進んでいる割には、外貨資産が増加していないのは気になるところです。

一方、投資信託による海外投資の動向について最近の投信協会の統計データから見てみますと、8月末の状況は、3ヵ月前(5月末)に比べて米国株式や米国リート・豪州債券・ブラジル債券などに利食いが入り、それぞれ1割以上の減少となっています。

NISAは、投資による国民資産形成を目指している面もありますので、今後は日本株式のみならず債券・投信のリスク資産が増加し、現在は個人金融資産全体の2.4%しかない外貨建資産も、大きく伸びることが期待されます。

☆個人の金融資産と海外投資動向

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新株予約権の多様性と難しさ
 新株予約権は、会社法では“株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいう。”(法第2条第21号)というように、比較的簡潔に定められています。もっと簡単に言いますと、会社が発行する“株式を収得する権利”です。
ただし、誰に、何の目的で、いくらで、どの位の期間有効か、などを考えると、実に多様な使われ方をしていますので、以下にその利用方法を纏めてみました。しかし、どの様な使われ方をしていても、最終的に株式の発行を目指した資本政策であることに変りありません。

☆新株予約権の多様性と問題点

 つまり、新株式の発行価格(新株予約権の行使価額)が1円であっても時価の2倍でも、他の株主の資本持分に影響する訳ですから、その新株予約権の価値がどの位のものか、投資家に伝える必要があります。

特に、市場での引受者による裁定取引を前提としたMSワラント、新株予約権と貸株契約の複合スキームなどをファイナンスとして利用する場合、他の一般的な個人投資家まで売買取引に参加させることが前提な訳ですから、新株予約権の価値や貸株契約内容に関して、個人レベルまで解り易い明確かディスクロージャーが求められるべきと考えます。

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クラウドファンディングの可能性とリスク管理について
 現在、アベノミクス成長戦略の一環として、首相の諮問機関である金融審議会(金融庁)では、クラウドファンディングに関して制度整備の議論が行われているところですが、先ずその現状と考え方を纏めていただいていますので、以下に紹介します。

☆米国や英国の制度と、投資型クラウドファンディングの論点について(金融審議会資料)

 クラウドファンディングは、インターネットを使って不特定多数から資金を集めるものですが、その中には事業やイベントへの寄附が中心となる寄附型や、製品やソフトなどの開発にあたって購入予定者から前もって資金を集める購入型、そして事業者の株式などに投資する投資型の3つのパターンに分けられています。金融庁資料によると、2012年の世界全体のクラウドファンディングは26.7億ドルで、2013年は51億ドルを超えると推測されています。

 政府は成長戦略において、クラウドファンディングを創業や新興企業のファイナス手段として制度整備していこうとしていますが、投資としての成功の可能性は、株式市場に上場されている新興企業に比べて格段に低く、投資家としては失敗する可能性の非常に高い投資ということになります。従って、投資家のリスクを適正に管理することがクラウドファンディングのシステムにとって重要なポイントとなります。その為、米国では高額所得者でなければ、年収の5%未満の投資に制限されますし、英国においても富裕層以外への勧誘活動は厳格化(リスクに関する注意喚起、仲介者の自主規制など)されています。日本においても、次の要件は課せられるそうです。

◎クラウドファンディングでの個人投資家の投資上限を設け、50万円程度とすること。
(米英の様に収入に応じての投資制限より、一律の基準の方が管理容易)
◎クラウドファンディングで募集する総額は、1億円未満。
(現状の金融商品取引法に沿った募集では、1億円以上では有価証券届出書が必要となる為に、それ未満とすることで、企業側に継続開示義務を負わせない。)

また、次の仕組みも検討されています。
◎目標募集額に達しない場合には資金の提供をしない“目標募集額制度”
(一般的なクラウドファンディングでは取り入れられる場合が多く、詐欺的行為を防ぐとされる)

 クラウドファンディングの良さは、ネットを使って不特定多数の投資家から比較的低コストで資金を集めることですが、公募ファイナンスの1種であります。その為、一般の投資家がその企業の内容や事業計画などを理解できる情報と、その正確さは最低限求められることです。また、不特定多数の投資家から、投資ニーズを集めることが出来ること自体、一つの投資判断材料ともなります。

ただし、クラウドファンディグはあくまでもファイナンスの一手段ですので、ベンチャー投資や事業・資本提携など他のファイナンス手段と有機的に結びつくことが必要で、そうあってこそ新興企業の成長を助けるという本来の機能を果たすことが出来ます。その役割(仲介機能)は、証券や地域金融機関などが、投資家のリスク管理と共に行っていくのが制度定着の為に求められていくこと思います。

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証券関連税制の課題と平成26年度の改正要望
 8月30日に、金融庁より平成26年度税制改正要望が財務省に提出されていますが、この中で証券関連(個人の投資に関連する部分)について、その背景となる課題と要望事項について、簡略化して書いてみました。

☆証券関連税制の課題と平成26年度の改正要望

証券関連税制の課題としては、次のようなことが挙げられます。

○NISAが国民に定着した制度となる為の、利便性の向上
○金融所得一体課税の推進
○特定口座の利便性向上
○ETFの新陳代謝推進
○インサイダー規制強化の為の措置
○J-REITなど不動産証券化市場の機能整備
○地域主導のインフラ・ファンド推進

前半部分は、10年来に渡る“貯蓄から投資へ”の政策推進の具体的実行が求められているように思いますし、後半部分は成長戦略のアベノミクス第4の矢と関係するところかも知れません。
オリンピックも東京に決定し、消費税も実施される中、長年の懸案であったことも大きく進めて欲しいものです。

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MSCBやMSワラントの現状について
 MSCBとはMoving Strike Convertible Bondで、転換価格修正条項付転換社債と約しますが、先ず転換社債は現在だと新株予約権付社債と言い直す場合が多いのと、問題となるMSCBはその新株予約権部分の行使価額を、下方に修正するよう定期的に見直すものなので、下方修正条項付新株予約権付社債とも呼称します。やはり、長くて言い難いので、業界ではMSCBといった方が分かりやすくなっています。

☆MSCB等の現状について

【基本的なスキーム】
・発行時には、一旦その時の時価に近い行使価格を設定しますが、その後定期的(多いケースは発行後、毎月)行使価格を時価に合わせて見直します。
・問題は、行使価額を見直す算式が、直前一定期間(1週間程度)の時価の90%といったように、その時点で取引されている株価より安く設定されることです。
・その為、CBの転換(新株予約権の行使)が進みやすく、資本調達が行いやすいスキームとなっています。

【基本的な問題点】
・MSCBが、業務提携先や資本提携先が保有するなら、一定期間行使されず、行使価格の見直し頻度も目的に沿ったものなので、それ程市流通市場への影響が大きくないかも知れません。
・しかし、実際のMSCBは証券会社や投資会社に割当てられることが多く、また見直しの度に株価が下方方向にバイアスが掛り易くなっています。
・例えば、下方修正の計算期間中に、株式を借りて売却し、行使価格を低く抑えることでより多くの株式を取得しようとする動きも強まりました。行使した株式を借りた株式の返還に充てれば、短期的な裁定取引が可能となり、MSCBの保有者にとってメリットが大きくなります。
・しかし、一般の投資家の立場で言い換えれば、MSCBは市場での裁定取引を前提としたファイナンス手法で、頻繁に行使価額を下修正するスキームは、株主や長期保有の投資家からみると株価下落要因としか捉えようがありませんでした。

【MSCBに関する規制】
・証券会社がMSCBを第三者割当で引き受けるケースは、2007年7月施行の自主規制ルール“会員におけるMSCB等の取扱いに関する規則”で規制されました。
・上記のルールは、“第三者割当増資等の取扱いに関する規則”として2010年2月に変更されています。
・なお、MSCB等の等にはMSワラントも入っていますが、事前の貸株契約と第三者割当増資を組み合わせることでも、同等の経済効果を生じる裁定取引的な対応が可能な為、前段の規則改正で強化されています。このルールは、証券会社が発行企業と別の投資家の間に入ってMSCB等を斡旋する場合もカバーしています。

【最近のMSワラント】
最近、医薬品関連などで再びMSワラントの発行が目立ってきていますが、MSワラントはMSCBと違って発行会社側の直接の資金調達になりません。このことは、市場での裁定取引に全く頼った資金調達スキームなのか、そうではないのか個人の一般投資家にも分かりやすく説明する必要があります。証券会社が裁定取引をして悪いわけではありませんが、一般の個人投資家が売買できる銘柄で行うことは、市場仲介者として、それなりの注意を要します。

 いっそ、プロ向け市場で上場し、プロ投資家間での売買を前提としたMSワラントやMSCBの発行なら問題は少ないかも知れません。


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株式市場の次なる進化への取組み
 株式市場だって、時代の変化に合わせて進化します。
そのことの現状を、ざっと俯瞰していただきたく、以下に纏めました。

☆株式市場の次なる進化への取組み
・インフラ進化とその背景
・取引ルールの変化
・取引所上場の概況
・市場の裾野拡大について

最近の市場進化の特徴としては、HFTなどの超高速取引がありますが、一部の投資家しか利用できない超高速取引を、市場の進化として捉えるためには、HFTを利用しない投資家がその機能と実態を理解する必要があります。また、その為に取引ルールが変わるということもあるでしょう。
一方、新興企業や外国企業の上場増加への取組み以外に、様々な投資対象をETF・ETNで上場させるというのが、取引所の世界的なトレンドになっていますが、デリバティブの様なETFもあり、個人の投資スタイルや個人トレーダー層の在り方も変わりつつあります。

その為、市場仲介者としての証券会社の役割は、より多様で複雑になってきていますというのがオチですが、・・・

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