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2014/04
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リスクマネーの供給と環境変化への対応~平成26年度金融商品取引法改正案の概要より
 2年前に米国でJOBS法が成立した時には、日本の発行市場でも多少いい意味のショックがあったように思います。開示規制の厳しい米国で、企業へのリスクマネー供給を増加させる為に、売上高10億ドル未満の企業を対象に思い切った規制緩和策が取られることと、インターネットを利用して創業や事業拡大の為の資金を集めるクラウドファンディングを金融機能として認めるといった内容が中心でした。実際は投資家保護などの仕組みに関して、米国議会や金融当局での議論やルール作りに時間がかかり、これからの制度運用となります。
 成長の為の企業へのリスクマネー供給増加は、成長戦略を推進する日本にとっても課題です。
IPO希望企業の負担を減じたり、日本でも投資の為のクラウドファンディングを認める金融商品取引法改正案が、今国会に提出され成立が見込まれています。その概要が、次の様なものです。

【投資型クラウドファンディングの利用促進】
 現在の日本では、投資を目的にしたクラウドファンディグは未だ実施されていませんが、インターネットを通じてベンチャー企業への投資を可能とする目的で、制度整備されます。このクラウドファンディグを利用してネット上で勧誘する業者は、株式なら第一種、ファンドなら第二種の金融商品取引業への登録が必要ですが、新規参入を促す為に最低資本金規制を第一種なら5000万円から1000万円へ、第二種なら1000万円から500万円へ引き下げています。また、クラウドファンディング業者は、ネットを使った詐欺行為に悪用されることながないよう、対象となる企業情報(事業計画等)に関してネットを通じて適切に提供することや、対象企業の事業内容チェックを義務付けます。

【新たな非上場株式の取引制度】
 現在のグリーンシート市場は、上場企業ほどの開示負担はないものの、継続開示義務に準じた企業情報を公開している為、監査法人への負担が発生しています。しかし、同市場に参加する証券会社が少なく、流動性が十分でないのでファイナンスなどの市場機能をグルーンシート銘柄が十分利用できません。一方、証券会社においては、自主規制からその他未公開株を証券会社が勧誘することが原則禁止されています。
 新制度は、証券会社が限られた投資家の間(投資グループ=役社員や取引先、財・サービスの提供を受けている者など)で取引するなら、投資勧誘することを認めるものです。開示負担も、現行のグリーンシート市場より一層軽減されます。

【新規上場に伴う負担軽減】
 規模の小さい企業にとって負担が重いとされる内部統制報告書について、上場後3年間は監査免除を選択することが出来るようになります。(資本金100億円以上若しくは負債総額1,000億円以上の企業は免除の対象外です。)

一方、最近問題となった事件(AIJやMRI事件)や金融市場機能(LIBOR操作問題)に関しては、次の様な規制の見直しが行われます。
●現在でも、ファンドの販売者は分別管理されていないファンドの勧誘が禁止されていますが、ファンドの出資金を目的以外に流用されていることを知りながら募集することを禁止へ。
●海外ファンドの販売であっても、国内拠点及び国内における代表者の設置を義務付けること。
●ファンド販売者の協会(自主規制)への加入促進を図ること。
●金融取引の基礎として広範に利用されている特定の金融指標について、その算出者を指定し、行政上の検査・監督を行うこと。

また、開示制度などについては現状の取引や社会環境の変化を受けて、以下の見直しを行います。
【開示制度上の変更に関して】
○大量保有報告書の適用対象から自己株式を除外
○大量保有報告書の提出者の負担を軽減する為、変更報告書の同時提出義務廃止や、発行企業への送付義務免除などを行うこと
○発行登録書において、有価証券報告書等の提出による訂正発行登録書を不要とすること

【その他】
○虚偽開示書類を提出した会社の損害賠償責任を、流通市場では無過失責任から過失責任へ見直すこと
(但し、企業側に無過失の拳証責任を負わせ、請求者に取得者だけではなく処分者も加える)
○外国証券会社などの負担軽減を想定し、現行3月決算に限定されている事業年度を、規制なしに見直すこと
○電子化された株券等の没収手続の整備(ペーパレス化された株式が、不公正取引において現行法では没収不可の無体財産となっていた為)
○金融商品取引業者の登録拒否要件として、「登録取消処分前に廃止等の届出をした者について、5年を経過しないこと」を追加
○金融取引主体に世界共通の方式で付番する国際的な取組みが進展していることを鑑み、金融商品取引所の業務として付番業務を追加すること

※「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」に係る説明資料(金融庁)
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アコーディア・ゴルフの資本政策について~斬新な経営革新か、究極の買収防衛策か
ちょうどアベノミクス相場が始まる直前の一昨年11月に、PGMホールディング(2466)による50%以上もプレミアムを付けた買付価格のアコーディア・ゴルフ(2131)株式に対するTOBが発表されました。アコーディア側は反対意向を表明し、途中で株式会社レノ(投資会社)などが大量(共同保有者を含む)にアコーディア株式を買い付けたことで、それぞれの動向が注目されていましたが、結果はPGM側が最低目標にしていた発行済み株式総数の20%に達しなかった為(17%)、このTOBは不成立となりました。
 アコーディア側が、連結配当性向を90%とすることを表明し、株主還元策を強めましたが、同時にホワイトナイトと見られた株式会社レノなどの出口戦略も関係者などの関心を集めました。

 そのアコーディアが、主要な資産であるゴルフ場を三分の二以上切り離す思い切った資本政策を3月28日に公表しています。勿論、上場企業の内容が大きく変わる為、株主総会での特別決議による承認を前提にしています。
その内容は、以下の3つに分かれます。
A) 主要資産を切り離し、事業ファンド化して、シンガポール市場に上場して、資金回収を図る
B) 約450億円以上の自社株取得を実施する
C) 新株予約権付ローンで200億円調達する

 全体像が少し分かり難いので、簡略化(図式化)してみました。

☆ アコーディア・ゴルフの資本政策について

 この様な資本政策は、筆者の私見では非常に斬新だと思います。特に、事業ファンドをシンガポール市場に上場することに関しては、特筆されるべきスキームです。しかし、一方では、過去の経緯からみて究極の買収防衛策(クラウン・ジュエル=買収者の欲する資産を切り離す)にも見えます。

斬新な経営革新なのか、究極の買収防衛策なのか、そのことを決めるのは5万人以上もいらっしゃる株主だと思います。

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私募ファンドについて
 投資家から資金を集め、目的を持って投資するのはファンドですが、金融商品取引法(2007年施行)では集団投資スキームとして整備されました。比較的少人数から資金を集めるファンドは、私募ファンドとして2つに分けて整備され、

A=50%以上を有価証券やデリバティブで運用するファンドは、一人以上のプロ(適格機関投資家)かいれば49名の一般投資家から資金を集めることが可能

B=事業や商品・不動産に投資するものは、499名以下の一般投資家から資金を集めることが可能
とされていました。

(※A,Bの標記が、筆者による)

Aは私募のヘッジファンドやレバレッジが大きくかかったデリバティブ投資ファンドなど、Bは震災復興企業支援ファンドや地域インフラファンド・商品ファンドなどに利用されています。

これら、私募ファンドは有価証券届出書の提出や継続開示義務を負わない為にファンドの運用コストが安く済みますので、比較的少額(数億円から数十億円)のファンド組成に利用されてきました。
また、Aに関しては適格機関特例業務者により組成される事例が多くみられていましたが、財務局や証券取引等監視委員会による検査では、次の様な問題事例が明らかになっています。

•顧客に対する虚偽の告知
•適格機関投資家等特例業務の要件を満たさずに行った登録が必要となるファンドの販売・投資運用
•出資金の流用・使途不明 等

この為、情報量の少ない個人などの一般投資家の被害を防ぐ目的で、私募ファンドAに関する投資家の要件を厳格化(個人の場合は、プロ投資家要件となる金融資産3億円以上)する建議が証券取引等監視委員会から金融庁に行われました。(4月18日)

☆私募ファンドと証券取引等監視委員会の建議について

 集団投資スキームという考え方は、勿論個人投資家も含まれますが、私募ファンドの利便性を守る為に、取扱業者の自律的行動が望まれているのかも知れません。

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重要な企業情報は、どう伝えられるか
 取引所では、上場している企業の決算関係情報、決定情報(M&Aやファイナンスなど)、発生情報(事故や事業環境などの突然の変化)について、投資家の投資判断に大きな影響を及ぼすものは、直ぐに公表して下さいという適時開示ルールがあります。また、実際の情報公開を支える適時開示情報伝達システム(TDネット)では、公開されている全ての企業(グリーンシートやプロ向け市場まで含む)の公表した情報について、インターネット上で誰でも過去1ヵ月分まで無料で見ることが出来ます。(過去5年分までは有料で閲覧可能です。)
 問題は、企業が公表していないけれども、M&Aや新株発行などのファイナンス・上場廃止となる可能性のある事情などが、マスコミで報じられたり市場で大きな噂となったような場合です。これに関して、東証は投資家全体に注意喚起を行う制度をこの5月より強化します。
 具体的には、“注意喚起”銘柄に指定し、企業側からの情報開示などで事実関係が明らかになるまで、信用取引残高を日々公表したりして投資家の注意喚起により実効性を持たせます。

☆東証の“注意喚起”制度

 一方、上場企業に関する重要な情報開示で、その情報が投資家間に浸透するまで、当該銘柄の売買を一時的に停止することも行われていますが、以下の様にその停止時間が順次短縮されています。
≪企業が重要な情報を公開した場合≫
・~1998年7月まで=終日売買停止
・~1999年12月=発表後、60分間
・~2004年2月=発表後、30分間
・~2011年2月~今まで=発表後、15分間
(※なお、上場廃止が決定された場合は、当日は終日売買停止⇒その後、監理銘柄として1ヵ月間の整理売買)

最近、米議会などで行われたHFT(高頻度取引)の批判の一つに、会社の重要情報を素早く入手して、一般の投資家が売買する前に売買を発注するようなケースがあるのではないかとの指摘が挙げられています。
確かに、HFTでは超高速で売買する為にアルゴリズム(プログラム)を組み、短期間で裁定取引を行うこともあります。また、企業なの情報公開に反応するイベント反応型の投資戦略も、大量に売買を行うヘッジファンドやプロップ・ハウスの得意とするものです。加えて、公開される企業の重要情報も、TDネットで公表する為にデータ化しやすくなっています。(現状では、決算情報(財務情報)までが超高速で情報を伝達することが可能なXBRL対応しており、その他の企業情報もXBRL化での情報公開を目指しています。)

 超高速で情報が伝達され、プログラムで売買される事は、金融イノベーションの一つでしょうが、その情報が売買や注文情報なの市場情報ではなく、上場企業の重要情報となる場合、その情報が浸透する時間と迅速な売買を可能とすることに関してトータル的な議論が必要ではないでしょうか。
(売買制度改革において、HFTの利点とリスク双方を含んだ市場関係者間の議論を待っています。)


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"貯蓄”の為の“投資”となるか~少額継続投資について
 “貯蓄”から“投資”へという言葉は良く聞きますが、この政策によって郵便局でもファンドが買え、銀行の窓口でも投資の相談を受けることが可能となった訳です。証券会社などの金融機関の立場で言いますと、銀行などでの低金利の貯蓄から、少しリスクを負っていただき将来に備えた投資を行って下さいといった個人へのアピールにも使われました。この政策は、一定の成果を上げていると思いますが、しかし個人の金融資産の内訳をみてみれば、株式や投信・債券などのリスク資産が16%(日銀の資金循環統計:昨年12月末推計)で、欧州の半分・米国の三分の一弱の水準に滞っています。

 一方、個人の立場で言いますと、何の為にリスクを負って投資しなければならないかですが、その目的は大きく分けて2つあると思います。一つは個人の金融資産の運用と、もう一つは金融資産を作る為の投資つまり“貯蓄=蓄財”する為の“投資”です。証券会社などでは、営業活動の効率性を考えて、資産運用への対応に偏りがちですが、本年からのNISA(少額非課税投資制度)開始を機に、貯めるための投資=少額継続投資の見直しが始まっています。その“貯蓄”の為の“投資”に関しては次の様な動きがあります。

◎決まった金額を毎月同じ株式などに投資する累積投資⇒株式への累積投資は、嘗ては最小単位1万円からでしたが、証券会社に於ける作業コストなどからこの投資サービス提供から撤退する業者が目立っていました。しかし、NISAを契機に最小投資単位を1000円まで下げたり、再び株式の累積投資サービスを始める動きが目立っています。

◎投資信託を利用したインターネット利用による毎月定額投資⇒投資信託に関しては、嘗ては分厚い目論見書といったイメージが強く、専門用語の多用で一般の個人には内容が分かり難いとも言われていました。しかし、目論見書の簡略化やファンド比較サイトの充実・商品情報の整理なので、インターネットを利用しての投資信託購入が行いやすくなっています。加えて、累積投資に適した投資家コストが安いファンドも運用会社から提供されるようになってきました。また、毎月10万円までなら銀行口座に残高がない場合でも、投資信託購入資金を貸し付ける制度も定着してきました。これは、銀行や銀行系証券の専売サービスではなく、地方の証券会社も地域の金融機関などと組むことで顧客のサービス利用が可能となっています。

◎日本版401K(確定拠出年金制度)の利用拡大の動き⇒退職後の資金は企業年金の形で会社が面倒を見てくれるといった制度から、従業員自らが運用に責任をもつ制度への移行が進んでいます。日本版401Kへの大企業の制度移行は、昨年から再び大手メーカーや通信などで広がっており、同制度利用者は本年500万人以上となりそうです。但し、同制度利用者で“投資”を利用して老後資金を“貯蓄”しているのは、まだ全体の2~3割程度といったところで投資信託の利用も3兆円程度ですが、長期の投資といった性格から投資の“根雪”のような役割が期待されています。

上記の様な少額継続投資が今後増えていくと予想されていますが、その為にはインターネットを利用した効率的な商品と投資サービスの提供、個人の目的に沿った分かり易い投資情報の提供、企業や団体を通じた個人への効率的なアプローチ(証券会社用語では職域営業)などが証券会社に求められることです。
(一社で行う場合、金融グループで行う場合、地域金融機関などと連携しながら行う場合、それぞれのチャネルでの拡大が期待されています。)

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空売りの課題~海外投資家の場合、個人の場合
 一般の投資家にとって“空売り”のイメージは余り良いものではありません。その理由の一つは、一般投資家が余り利用しない投資手法であることです。また、相場の押し下げ要因としてマスコミなどでもネガティブな行為として取り上げられることが多いからかも知れません。しかし、市場関係者のコメントでは、空売りしてもいずれ買い戻すので市場の流動性が増すことや、市場の動きが一方的になった場合(ITバブルなど)に適正な水準に戻す抑えになるといった機能的擁護論も聞かれます。

 空売りが良いか悪いかという議論は置いておいて、日本市場においては現状どうなっているかを簡単に触れます。

先ず海外のヘッジファンドやプロップハウスなどが行う空売りは、リーマンショック以降売ろうと思っている株式を事前に貸株市場(金融機関などの店頭市場)から借りて売ります。(※株式を借りないで売り、後で決済日までに借りて決済することは、ネーキイド・ショート・セリングといって禁止されています。=日米欧の市場とも)また、このような株式を事前に借りているかどうかのチェックは、海外投資家の注文を日本市場に取り次ぐ証券会社が確認しますが、金融当局による証券会社検査項目の重要ポイントとしてこの確認行為が上げられています。

一方個人の空売りは信用取引に限られます。この信用取引による空売りは昨年大きく変わりました。一つは、昨年1月より信用取引に係る保証金利用が日に何度もできるようになり、同一銘柄で同一の保証金を使って日に何度も売買することが可能となりました。二つ目は、昨年11月から売り下がりを禁じたアップティック・ルールが原則廃止になり、個人が空売りを行いやすくなりました。その結果、個人の中でも短期的な売買を繰り返す個人トレーダー層にとって、空売りが利用しやすくなっていますが、一方では空売りに必要な株式の手当て問題が残っています。つまり、個人であっても空売りする場合、証券金融会社で利用する“制度信用”を利用するか、証券会社自らが空売りする株式を調達する“一般信用”を利用するかの二通りに限られますが、制度信用は空売り出来る株式が限られていること、一般信用の方は証券会社によって空売りに必要な株式の調達力が大きく違うことが問題としてあります。

一般信用で証券会社が空売りに利用する株式を調達する方法は、主に次の2つです。
・自社顧客若しくは自己投資分から株式を借りて、顧客の信用取引売りに貸し出す。
・貸株市場などを通して他の金融機関・発行会社の主要株主などから借りてくる。
何れの方法も証券会社によって調達能力が大きく異なってきます。

 個人トレーダー層を主要顧客とするネット大手の松井証券では、3月下旬から個人トレーダーの空売りに的を絞ったサービスを提供しています。
・制度信用や他社の一般信用では空売り出来ない銘柄で個人の売買が多い銘柄のうち、松井が株式を調達した銘柄をリスト化して、1日限りの信用取引で空売り出来るようにしています。
・但し、1銘柄20単元まで、かつ松井に当該銘柄の在庫がなくなった場合は貸出が終了(新たに空売りできない)します。
・この制度を利用する個人トレーダーは、通常の手数料に貸株料・金利(ここまでは通常の信用取引と同じ)、更にこの制度の利用料(プレミアム空売り料)を加えたものを松井に支払します。
・この制度を利用した場合、日中に買い戻す必要があり、もし翌日に信用売りのポジションを持ち越した場合は、松井によって任意に反対売買されます。

 個人トレーダー層の為に工夫されたサービスですが、デイトレーダー向けなので一般の個人投資家が利用する場合、相応の注意を要します。また、同サービスを提供する松井は、デイトレードでの空売りに応じる為、リアルタイムでの貸株状況把握と、そのポジション管理が必要ですが、ネット証券各社においてデイトレーダー向けの手数料・信用取引金利(例え日中の決済であっても、金利の両端計算で1日分の金利負担が生じる)引下げ競争が激しくなっている現状では、ネット証券のデイトレーダー顧客取り込み戦術として評価される事かも知れません。

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銀行と証券が一緒に・・~ファイアーウォール規制と緩和の背景について
 銀行と証券が一緒になったら便利・・・そう感じる個人や法人はいらっしゃるかも知れません。特に、証券会社の顧客で、銀行のサービスが一緒であればと感じる方は多いと思われます。例えば、以下のようなメリットが想定されます。

個人=金融負債と資産を一括で管理し、個人の選択が資産・負債全体からみて効果的に行えるような金融サービスが、銀行・証券一体となった金融グループから提供されること。など

法人=M&Aなどで、証券会社にフィナンシャル・アドバイザーを依頼したとしても、親銀行のネットワークを利用して効果的に相手を選別できたり、M&Aに必要な資金の提供が銀行より受けられること。など

 しかし、お金を貸すということは借り手にとって優先的な地位となることで、それを利用して本来は顧客の望まない有価証券取引などを強いる可能性も出てきます。従って、金融商品取引法では弊害防止措置として以下の行為が制限されています。
【その他業務に関する禁止行為】=金商法44条の2
貸付などを条件に、金融商品販売などを行う行為の禁止
【親法人等又は子法人等が関与する行為の制限】=金商法44条の3
 親法人若しくは子法人との取引を前提に有価証券取引等を行う行為を禁止
上記を遵守するため、銀行・証券間(親子の関係がある)では役職員の兼職規制・非公開情報の授受の禁止などのファイアーウォール規制が導入されています。

☆ファイアーウォール規制と緩和の背景について

元々は、銀行と証券のビジネスは分離されていましたが、次の様に銀行の証券業務参入が認められています。
1993年 子会社方式で国債・社債を取り扱うことが認められる。≪ファイアーウォール規制導入≫
1998年 投信の窓販解禁、持株会社方式で証券会社保有を認める(銀行の兄弟会社)。
1999年 銀行の証券子会社に対して株式取次業務を認める。
2002年 銀行・証券の共同店舗を認める。
2004年 銀行による証券仲介業を解禁。
2009年 ファイアーウォール規制緩和(役職員の兼務・法人情報の共有⇔利益相反管理体制の整備)

このファイアーウォール規制緩和は、銀行・証券・保険などの金融グループが進んだこと、M&Aなどの企業の統合・分離活動が活発になったことなどが背景となっていますが、実質的な銀行・証券の役職員による兼職の状況は、規制緩和直後にリーマンショックもあったことから、現在進行中といったところです。

なお、本年4月から、次の様にファイアーウォール規制が更に緩和されています。

○外国法人が関係するM&Aなどで、親子間で非公開情報を共有するのは相手のメールなどでの承諾があればOK
(※通常は書面による情報共有の同意)
○金融グループ内で、グループ全体のリスク管理や業務チェックなどを目的とする非公開情報の共有は、顧客の同意書が必要でなかった。但し、顧客保護・公正競争維持の前提があった為に利用しにくい面もあったが、次のケースも親子間の情報共有が顧客の同意書なしでOKとされた。
・経営管理に関する業務のために親法人等に提供する場合
・有価証券の売買、デリバティブ取引などの決済に関係した業務のため、親子間で情報を共有する場合

金融サービスの為の利便性向上と、金融機関などの優先的地位の濫用を禁止することは同時に進めなければならないということだと思われます。

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改めてバイナリーオプションとは何か
 元来はある程度の規模の金融資産をリスクヘッジする目的で始まったオプション取引の原型は、”契約”そのものです。但し、取引を効率的に行う為に、その内容を定型化・小口化してより多くの投資家の参加を目指したり、取引所に上場することも行われています。例えば、個別株のオプション取引は、有価証券オプションですが個人向けには“かぶオプ”という愛称が付けられて、個人投資家への浸透が図られています。

 しかし、個人投資家にとってオプションは扱い難いものでもあります。それは、取引までの至る選択肢が非常に多いことと、個人のデリバティブ取引ルールであるロスカット・ルールの対象になることです。

 バイナリーオプションは、個人にとっての極端に簡素化したオプション取引で、その名称の通り利用する個人は買か売りのどちらかを選択すれば良い仕組みとなっています。但し、取引開始してからその終了までの時間が極端に短く、場合によっては10分程度といったものまでありました。その為、次の様な批判が出ていました。

(以下は、日本証券業協会ワーキング資料より)
●次の様な商品性から、顧客に過度の投機的取引が行われる恐れがあること
 ・二者択一の予想
 ・短時間で結果が出ること(5分、10分もあった)
 ・中には権利行使価格が決定していない商品があった
 ・途中で反対売買できない商品もあった
●複雑な理論根拠に基づく商品であるにもかかわらず、一見単純な商品であると誤解を招きやすい

 この為、次の様な自主規制ルールが昨年12月より施行されています。
○取引期間は、2時間以上
○取引終了時間まで、顧客の反対売買に応じること
○オプションの売値・買値を同時に顧客へ提示、また全ての顧客が損失を被る可能性があるような条件を付けてはならない
○権利行使価格は、取引開始まで提示しなければならない  等

また、取引開始に当たっては次のことが証券会社に求められています。
(※実際の自主規制は複雑なので、個人投資家に求められとことの視点で筆者が纏め直しました。)
○取引に関する説明書が交付され、個人から商品内容とリスクを理解した旨の確認書が徴求されますが、もともと個人のデリバティブは不招請勧誘でネット取引主体なので、実際に取引を申し込むと、バイナリーオプションの商品性とリスクを確認するための20問ほどのテストが実施されます。
(※筆者も試みましたが、専門用語が多く相当高度な知識を求められるように感じました。金融先物取引業協会では、事前に模擬テストが用意されており、各社が事前にこれを試みることを薦めているようです。)
○事前に、取引者個人の損失可能額を証券会社へ申告する必要があること

現在、このバイナリーオプションを扱う証券会社は6社で、外国為替の取引が主体ですが中の1社は株価指数での取引も行っています。その概況は、各社ごとに毎月公表することが自主ルールで決められていますが、2月の概況は次の様になっています。
・売買されたオプションの総金額420億円(口座数264,984、稼働口座数11,892)
・同取引は、顧客の売買に対して証券会社サイドが受けるという形をとるオプション取引の一種ですが、売買する顧客と受け手の証券会社の損益比率は顧客損益率で表わせられます。この比率は各社によって違いますが、90~105%の範囲です。(100%を超えた場合、顧客全体の損益が証券会社に買ったということ。100%未満は顧客の負け)
・実際の損失を出した顧客の比率は損失顧客率ですが、これは69~83%の範囲に各社の数値が収まっています。

昔、オプション取引が金融機関などに解禁される時にも、賭博禁止規定に関する法整備上の解釈議論がありましたが、個人の短期的なオプション取引は何をもたらすか、個人のトレーディング的行為は、オプション取引しいては原資産の取引にどのような影響を及ぼすのか、賛否のバイナリーではなく、市場発展を目的とした深みのある議論を期待したい思いです。
 

テーマ : 会計・税務 / 税理士
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株式取引における日本市場の課題
 日本市場が成長戦略のとおりアジアの中核市場になるかどうかは別にして、日々市場は変化し、そして進化を遂げようとしています。取引のスピートは、ミリ秒単位からマイクロ秒単位になると言われていますし、HFT(高頻度取引)を支えるアルゴリズムは、常に効率的な目的の達成=取引を目指して改善されています。それを支える投資戦略の改善も市場に携わるプロ達の仕事です。

 さて、それらインフラを支えるソフト面では取引ルールが重要ですが、取引ルールはもともと取引参加者間で決めるものでした。取引に参加する全ての者にとって分かり易く、また参加する誰もが遵守するものです。しかし、一方では市場の進化によって参加者ことの取引手法に大きな差が出るのも事実です。その事実を踏まえ、多様な投資家たちが参加できる新しい時代にあった取引ルールは、どう議論していくべきなのでしょうか。

先ずは、日本市場の進化の方向性と課題について見直してみたいと思います。

☆株式取引における日本市場の課題
・投資家の動向とその変化の兆候
・取引機能整備の方向性
・取引ルールと行政の流れ
・残された課題と優先すべきことは何か

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