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2016/08
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資本市場からみた商品市場
 本年7月25日より東京商品取引所(以下、東商取)において金現物取引が始まっています。英国のEU離脱問題や中国経済の先行きなどへの不安から、今後金に対する個人の需要が高まることを期待して、商品先物取引が中心の東商取が100グラムと1キロの2種の金現物を取り扱うものです。個人が金現物を持ち込んで売ることは出来ませんが、同取引所が指定した倉庫で金現物を受け取ることも出来ます。

 一方、金先物価格に連動するETN・ETFは、現在東証に5銘柄上場(内、海外ETF1銘柄)されていて、2銘柄はロンドンの価格、残り2銘柄が国内での東商取の価格に連動しており、そのうち1銘柄は個人でも1キロ~5キロまで(現在)は金現物に転換することが出来ます(※金ETFの現物への転換は、現在消費税や改鋳費用などが掛かり、取り扱える証券会社が限定されています。)。商品関係のETFは、2009年~2010年にかけて、東証に数多く上場されており、その数は国内ETF11銘柄、海外ETF19銘柄に達していますが、その内、東商取の商品先物指数に連動するものは6銘柄に限られています。ETFは指数連動商品で商品市場の代替機能を果たしており、ETFの取引が増えれば裁定取引などで原市場の取引が増加しますが、現状では国内の商品取引市場に影響を与えるものは限られています。

 国家戦略として日本市場をアジアのコアマーケットにしようとする戦略は、アベノミクスでも表明されていますが、これは前民主党政権時から議論されていた総合取引所構想がベースになっています。その構想については、日本の経済力や金融・資本市場の大きさに比べ、商品市場やデリバティブ市場が小さかったことや、世界の取引所グループが総合取引所化を進めていたことがありました。当時の成長戦略の一環として、金融庁・農林水産省・経済産業省が中心となって2010年10月から総合取引所構想が検討され、2012年2月にその検討結果が取りまとめられており、その関係法令(金商法関連)は2014年3月に施行されています。その骨子は次の様なものです

・金融商品取引所での「金融商品」定義に、コメ等以外の商品先物取引法上の商品を加える。
・総合取引所については金融庁が一元的な監督を行う。
・総合取引所は、商品デリバティブ取引に関して金融商品取引業以外の者に取引参加資格を与えることが出来る。
・清算機関については、最低資本金に係る免許要件を設定。
・第一種金融商品取引業者の業務に、取引所における商品デリバティブ取引に係る業務を追加し、商品先物取引法における行為規制等に関しては、金融商品取引法の規制を原則として適用した。但し、商品デリバティブ取引のみを行う業者の財務基準は、商品先物取引法に基づく規制と同様とした。
・取引所における商品デリバティブ取引も、金融商品取引法上の不公正取引に関する規制を適用する。  等

 現在、総合取引所の実現に向けた検討は新たな進展はありませんし、今年6月に公表された日本再興戦略2016においても特別な目標設定はされていません。総合取引所の為の関係法令はある程度整備したので、投資家や市場関係者などの取組みを待つということなのでしょうが、日本取引所グループが3月に公表した新中期経営計画(2016~2018)では、“投資者の多様な投資ニーズを充たすとともに、 中長期的な資産形成を活性化する ”重点項目の一つとして、デリバティブ商品の多様化の中で、コモディティ分野への進出など総合取引所化の可能性の継続検討を行うことが示されています。但し、取引所としてはデリバティブ取引の代替機能を持つETFの多様化の中で実質的に同様の効果を上げることも出来ます。
日本取引所グループが、敢えて総合取引所化を目指すのであれば、市場全体の効率化とは別にシステム・清算機関・取引参加者への対応など新たなコストが想定されます。それを踏まえて総合取引所化を推進するのであれば、商品取引所機能を強化するという国策と、それに賛同して取引を行う主要な投資家が必要なのではないでしょうか。

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株主コミュニティとTOKYO PRO Marketのブリッジについて~地方における資本市場機能充実策その2
資本市場の裾野拡大を分かり易く言うと、IPOに至るまでのルートの多様化ですが、郵政3社やLINEの様に相当の事業規模になっているものは別にして、これから成長が望める企業が資本市場の機能を利用しようとした場合、現状ではそのルートは限られています。
前回紹介したような新しい制度の利用は、まだ規模の小さい成長企業が利用するには適していますが、問題は、それぞれの制度の機能を使ってその市場に企業や投資家を誘導する証券会社などの存在です。通常のIPOは、大手証券5社を中心に主幹事業務は実質的な寡占体制となっていますが、残念ながら彼等に新しい制度利用のインセンティブは働かないようです。その最大の理由は、大手証券などの大きな組織や社内インフラを使うのに、新しい制度はそのビジネス規模に達していないとゆうことです。
規模の小さい企業をそれぞれの市場に誘導するには、実際に企業の傍にいて地域社会の中でその事業を見ている地方証券会社や地域金融機関が適していると思います。問題は、それらの地方証券会社等が、その市場及び他の資本市場を使い慣れていないということで、外部の専門家の利用や他の市場機能との連携があれば、新しい制度の利用は進む可能性があります。
その為の一つの市場間の提携事例として、以下のスキームを考えてみましたので、紹介しておきます。


☆TOKYO PRO Market と株主コミュニティ制度のブリッジ利用例

これは、新規成長企業に対して、IPOまでに至る過程の中で、成長段階に合わせて新しい制度を利用してく試みで、

・証券会社で株主コミュニティを組成
・株主コミュニティ内で、投資ニーズを掘り起こし、成長の為に必要なファイナンスを実施
・プロ向け市場に上場して、社内体制を整えると共に、特定投資家ニーズの発掘と企業価値の顕在化
・IPOに向けての助走期間を、上記のプロセスを経ることで有効に使う

などの利用が進めば、株主コミュニティ制度・プロ向け市場での相乗効果が期待できます。

IPO以前の状況について~地方における資本市場機能充実策その1
 資本市場の裾野拡大については、市場関係者なら誰しも否定しませんが、一般的な興味はIPO(新規株式公開)への関心までで、業界内ではそこからその裾野拡大に向けた取組みについて目立った動きには至っていません。しかし、アベノミクスでは、新規・成長企業へのリスクマネー供給として、投資型クラウドファンディングと株主コミュニティ制度が整備され、証券会社(第一種金商業者)やファンド業者(第二種金商業者)がそれぞれの制度を使って企業と投資家を結びつけることは可能です。両制度は、昨年の6月から関係法令や業界内の自主規制が施行されていますが、その概要は次の様なものです。

◇投資型クラウドファンディング=株式を取り扱うもの〈株式型〉は日本証券業協会、ファンドで取り扱うもの〈ファンド型〉は第二種金融商品取引業協会、それぞれの自主規制に従います。
・株式型:取扱い業者 0、取扱い実績 0、(本年7月まで)
・ファンド型:取扱い業者 3社、本年6月末 運用残高 5億円(88ファンド)

◇株主コミュニティ制度=日本証券協会のルールで証券会社は原則未公開株式を扱えませんが、例外としてグリーン市場がありました。この制度が殆ど機能しないので平成30年3月末で廃止されますが、新たに証券会社が個々の銘柄の株主やその銘柄に興味のある投資家のコミュニティを運営する制度が昨年8月から始まっています。(以下、本年7月末時点)
・今村証券:コミュイティ数 11社 参加投資家累計数201
・島大証券:コミュイティ数 5社 参加投資家累計数100
・みらい証券:コミュイティ数 1社 参加投資家累計数0

 一方、平成21年6月にTOKYO AIMとして開設され、2012年7月からTOKYO PRO Marketとして稼働していますプロ投資家(特定投資家)向け市場があります。これは、金商法で定められる特定投資家のみが直接株式売買に参加できる市場で、この債券版としてはTOKYO PRO-BOND Marketがあります。

◇TOKYO PRO Market
・J-Adviser(同市場への上場を支援する会社):大手証券会社5社以外に、フィリップ証券、リーディング証券、そして証券会社ではありませんが同市場への上場支援専門会社としてOKINAWA J-Adviserがあります。(実施的に稼働しているのは、これら大手証券以外の3社に限られています。)
・上場企業数 16社
 投資型クラウドファンディングと株主コミュニティ制度はまだ始まって1年程度、TOKYO PRO Marketは4年ですが、これらが我が国の資本市場の裾野として機能していく為には、各市場で取り扱われる企業数の増加は勿論、それぞれの市場を利用していく証券会社などの取組みが増えていく必要があります。
その為には次の様なことが必要ではないかと考えます。
◎各市場の投資家にとって魅力ある企業の取扱い。
◎企業にとって魅力ある市場機構。
◎各市場利用の活性化として、資金調達やM&Aに有利な利用がされること。
上記は至極当然のことなのですが、問題はこれらの市場の先にIPO(マザーズやJASDAQなどへの新規上場)があり、これらの市場がIPOやそれらに興味を持つ投資家に繋がっていく必要がありますが、その役割はやはり証券会社の役割です。


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