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2017/08
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金融危機の主因としてのCDS取引
 リーマン・ショックから1年を過ぎて、今回の金融危機の原因に関する、金融システム論からの分析も、だいぶ出揃ってきた。一時あったような、欧米の金融機関の貪欲さを原因とする情緒論的議論から、だいぶ分析にも冷静さが戻ってきていると思う。当初はサブ・プライムや証券化商品が原因と言われても、日本の金融市場からみて、何故これほどまでに証券化商品を、欧米金融機関が積み上げたか、実感として良く分からなかった。つまり、信用リスクのチキン・レースの如く、自己資本を越えるまで証券化商品を積み上げる行為を、金融工学技術や金融リスク管理に優れた欧米金融機関が、積み上げてしまったのか。
 学術的分析は研究者に譲るとして、資本市場的視点でいうなら、この信用リスクを本来はヘッジする目的のCDS(Credit default swap)取引及びCDSの証券化商品としてのCDO(Collateralized Debt Obligation)に関する需要と供給が大きく歪んでしまったからだと考える。
そもそものCDSは、以下の様な内容になっている。(単純化している)
【CDSの基本構成】
・保有する債権(ローン・社債)の信用リスクを縮小させたい銀行や投資家が、プレミアムを支払い元本の保証を買う。(プロテクションの買い)
・信用リスクに投資したい保険会社やファンドなどが、保証を売る。(プロテクションの売り)
・保証する債権の相手方は、国・政府系組織・企業となる。(参照組織)
・保証することが決まる事象をクレジット・イベントと言い、①倒産②支払不履行③支払条件の変更(リストラクチャリング)の3つを指定するのが一般的で、この事象が対象となる企業で起きた場合、プロテクションの売り手は、買い手に対して、保証した債権の弁済を実行しなければならない。
・弁済の方法は、プロテクションの売り手が、プロテクションの買い手に保証金額を支払い、保証した債券やローンを受け取る現物決済。又は、保証した債権の回収率(参照組織:企業からの)を想定して、それを保証した債権から差し引いた金額を支払う現金決済がある。
・現物決済の場合、企業からのローンや社債の元本回収は、債権を保証したプロテクションの売り手が行うことになる。
 以上の様に、CDS取引は、本来は金融機関にとって、保有するローンや社債の信用リスクヘッジなので、この取引自体だけなら、サブ・プライム・ローンの様な問題商品の破綻の影響はあったとしても、金融危機までにはならなかったはずだ。(日本では、ここまでの機能も未発達である。)
 しかし、CDS取引は急拡大し、かつ仮想CDS取引ともいえるCDSの証券化商品CDOの増加が加速し、ピークといわれる2007年上期にはCDS残高は57兆ドル、その証券化商品であるCDO発行残高は350兆ドルに達した。
 冷静に考えるなら、本来は信用リスクのヘッジに使われるCDS取引が、なんと6つ以上のCDOで使われたことになり、一つのCDSがクレジット・イベントを起こすと、その影響は6倍にも増幅されてしまう。
【CDS取引増幅装置としてのCDOの組成】
・CDOは、個別企業のCDSを購入して、均等割合でポートフォリオを組む。
・優先劣後の構造を使い、格付けの高い順からスーパー・シニア、シニア、メザニン、エクイティと切り分けられ、投資家に販売される。最上級格付けAAAのスーパー・シニアは、CDS全体の半数以上を占めるが、利回りが抑えられる。その為、シニアやメザニンが販売されても、除々にスーパー・シニア部分が売れ残るケースが増加していた。
・売れ残ったスーパー・シニアを集め、再証券化を試みると、同一のCDSが再度使われることになった。これが数度繰り返されたケースも増加。結果として、CDS残高が膨張した。
・CDOの利回りを上げるため、材料であるCDS価格を上げる必要があった。その為、CDSの弁済率は、本来100%なのだが、例えば50%に抑えて、CDSそのものにレバレッジを掛ける仕組みも使った。つまり、同一の債権を保証しているはずなの、CDSその1は100%、CDSその2は50%の弁済なので、実際の回収に対してCDSその2は、2倍の効果を持つ。

 以上の様な基本構造がCDS取引を必要以上に増加させ、一部はその内容を劣化させたが、問題は本来信用リスクをヘッジするべき金融機関が、グループとしてあるいは本体で売れ残ったCDOを保有して、信用リスクを増加させてしまった。また、CDOの商品組成も、自らのグループあるいは本体で行っていたので、結果は売り手、買い手、仲介者の一人3役を演じたケースも多いようだが、信用リスク回避手段のCDS取引が、信用リスクを増幅させたのは、何とも皮肉な結果である。
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