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2017/10
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上場会社のファイナンスに係るいくつかの問題
 上場会社である以上、資本市場の機能を使ってファイナンスするというのは当然のことである。しかし、その使い方が悪いと、株主や投資家、そして市場機能にもダメージを与える。エクイティ・ファイナンス(増資)は市場に新たに株式を供給するわけだから、単純に考えると市場の需給関係悪化要因で、株主にとっては好ましくない。しかし、ファイアンスで調達資金の使い道で、企業の成長戦略(場合によっては生き残り戦略)が示されることで、企業の成長期待が高まる。だから、上場会社のファイナンスが成り立つ。
つまり、市場の需給関係悪化に対する株主への配慮と、明確な成長戦略(資金使途)を市場に示すことが為されないエクイティ・ファイナンスはない。

株主への配慮に対する各国の法規制は以下の様になっている。
【日本】
会社法:授権資本(発行済株式数の4倍以内)の枠内であれは、取締役会決議
取引所ルール:特に規定はない。
(市場仲介者である証券会社の自主規制ルールとしては、公募増資の引受規則・MSCBや第3者割当増資の取扱いルール等あるが、企業の行為を規制するものではない。)
【イギリス】
会社法:株主からの授権の範囲内で取締役会決議。ただし、原則的には株主に優先的引受権がある。
取引所ルール:原則として株主に優先的引受権を付与しなければならない。例外として、発行済株数の5%未満なら取引所承認。また特定の事案で、第三者に割り当てる場合は5%以下のディスカウントまで。
【米国】
会社法:授権資本の枠内であれは、取締役会決議
取引所ルール:発行済株数5%以上の関係当事者への割り当て・原則20%以上の発行・支配株主が変わる場合の増資に対しては、株主総会の承認が必要
以上から分かるのは、日本の場合、エクイティ・ファイナンスでの株主に対する配慮が少し弱いように思える。増資の方法としては、公募・第三者割当・株主割当とあるが、それぞれの場合の現状の問題点を見ていきたい。

○公募:明確な成長戦略を市場に示すという意味では、良い方法なのだろう。しかし、公募といっても市場参加者なら誰でも購入できるかというと、そうでないところに問題がある。公募を引き受ける引受証券会社に口座がないと購入できないし、口座があっても買えるとは限らない(一部を抽選する場合もある)。その発行会社の既存株主であっても同様で、株主の立場からみると、公募前後で大きく株価が下落する場合が多く、また新株の発行では、市場価格(つまり株主の保有価値)より数%ディスカウントされて販売される。この分は既存株主の不利益だが、更に新株の販売において販売手数料分数%がディスカウントされて発行会社の新しい資本となる。この部分も新旧株主の資本の持分が減っているので不利益だ。
つまり、公募といっても一部引受証券の顧客だけの募集で終わり、ひろく市場参加者から増資を募る訳ではないことと、増資のコスト負担は新旧株主が負っている。(特に既存株主の実質的負担コストが大きい)

○第三者割当:見せかけ増資や相場操縦行為・インサイダー取引による鞘抜きなどの犯罪行為は言語道断だが、その監視を行うための市場機能は必要で、コーポレート・ガバナンス強化で取引所がある程度のチェック機能を果たし始めている。しかし、特定の第三者が纏めて増資に応じてくれるので10%までのディスカウントが認められているという事で良いのだろうか。増資は商品の大量販売とは異なるし、そもそも増資に応じる者は、企業の成長や再生を見込んでのことなので、目先で数%のディスカウントに拘ることはない。又、発行会社とは一定期間保有の契約を結び、その事も公表していくのが、既存株主への配慮になる。

○株主割当:既存株主に最も配慮された方法だが、日本では使い勝手が悪い。期間や手続きの煩雑さは、株券や新株予約権もペーパレスになったので解消されていくと思うが、現状はまだ改善途中といった感が強い。日本でもライツ・イシューが始まったが、そのライツ=新株予約権も4月から上場されているのに、取扱う証券会社は限られていて、現状は多分3分の1にも至らないだろう。また、その市場価格情報さえ株主や投資家が取得し難いような状況だ。つまり、ライツ・イシューの証券業界のインフラ整備が為されていない。
この事は、発行者や取引所の責任ではなく、この業界の問題だ。

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