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2017/08
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業界が問われているビジネスモデル
 問題視されていることは昨年から伝わっていたが、まさか証券詐欺の疑いで訴追を受けるとは思わなかったのがこの業界の共通認識だったろう。米SECによる訴追は、ゴールドマンがサブプライムローンを証券化した商品の販売時に、その商品を組成したファンドが、その商品に関係したデリバティブを大量に空売りして事実を知っていながら、販売先の投資家に伝えなかった事を問題とした。重要な事実を投資家に伝えず、金融商品の販売をしたという理由だ。この場合の投資家は、個人投資家ではなく大手金融機関や機関投資家である。
 恐れずに書けば、一昔前(金融危機前)なら何が問題なのかというのが業界の感覚だろう。プロ同士の取引において、“情報の非対称性”があったとしても、それはプロとしての能力の範囲で、それを認識した上で、プロ同士の取引に参加しているはずだという業界の意見だったろう。実際、ゴールドマンは、この取引が金融のプロ同士のものであり、販売時に、この商品が下落するかどうかは分からなかったと反論している。
 確かに、商品を組成したファンドが、別にその商品を空売りしても、その事を規制するものはない。ファンドであっても運用成績を上げる為、デリバティブを使い、空売りすることもあるだろうし、たまたま運用対象が同じ証券化商品を、プロの投資家に販売することもあるだろう。
 ここで問題となっているのは、プロ同士の取引における情報の非対称性ではない。この証券化商品をファンドからプロの投資家に取次いだ仲介者としてのゴールドマンが、同時にファンドの大量空売り情報をもっていたと言う事だ。何故、ファンドの空売りを知っていたかというと、この空売りの相手(カウンターパティー)だったからで、ゴールドマンは2役を演じていたことになる。つまり証券化商品の販売の仲介者と、同様の商品のデリバティブの取引者という役回りだ。この事が問題なのだろうか。
この業界に古くからあるブローカー業務とトレーディング業務の利益相反問題に似ている構造のように思われるが、米SECが問うているのは、ゴールドマンがこのブローカー業務行うにあたり、トレーディング部門(ディリバティブの)から同一商品の空売り情報を得ていたにも係らず、他のプロ投資家に販売したブローカーとしての姿勢だ。利益相反(若しくはその可能性)があるのに、ブローカーとして情報の非対称性を使ってはならないという結論になるのだろうか。
 ゴールドマンに対しては、このサブフライム証券化商品のCDO販売問題以外でも、CDSの取引に関するものや、他の金融機関のM&A取引などで、欧米当局が問題視するものが目立ってきている。法規制は勿論遵守していても、プロ同士の大きな取引において、ブローカーとして、利益相反の可能性がある仕組みの中で、情報の非対称性が許される範囲は、厳しく制限していく。そういう行政の方向性が強まると、投資銀行にとっては難しい。

 翻って日本においては如何か。
残念ながら、ゴールドマンの様に、大きな仕組みの中で情報の非対称性を使いこなす投資銀行は未だないが、商品を扱うブローカーとして、利益相反する部門(自社内及びグループ内)から、投資判断に影響を及ぼす可能性のある情報の取得はある。もし、これがブローカーとして問題になっていくのなら、この情報を対象商品の投資家全てに伝える措置をするか、問題情報が伝わらないよう情報隔離する必要がある。
利益相反体制の確立と法人顧客情報の共有ということでは、昨年からファイアーウォール規制の緩和も行われているが、ブローカー部門を抱える証券の対応は、日本でも難しくなる可能性もある。いっそ、ブローカー部門を分離独立させてしまうというのは乱暴かもしれないが、少なくとも取引参加者間の情報の共有問題は、業界に突きつけられている長年の宿題だと思う。

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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

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