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2017/10
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米金融規制改法案(デリバティブ規制)の影響
米金融規制改革が大詰めを迎えている。金融危機後、グローバルな金融取引を行う金融機関への規制は、誰しもが避けられないと思っているだろうが、実際に市場が規制を受けることについては、市場関係者なら本能的に嫌うことも事実だ。米金融規制改革法案は、昨年12月に下院を可決され、今月内にも上院通過、成立を目指すが、ゴールドマンへの訴追、オバマ大統領の法案成立への決意表明など、改革断行への政治的圧力が強まっている。特に、オバマ演説で、金融業界の上院でのロビー活動に対して、改革案に抵抗するのを止めるよう牽制しているのは、多少驚くが、金融制度改革への強い意志を示しているのだろう。
 米金融規制改革はその内容が、銀行のリスクを抑える“ボルガー・ルール”や役員報酬制限、投資家保護策の向上など多岐に渡るが、市場の最も注目するところは、デリバティブに関する規制だろう。
 もともとデリバティブは、金融機関同士が相対(店頭取引)で取引していたもので、取引内容は契約書によって定められ、その履行は取引当事者間行われることが前提であった。大量に取引されるものは、その契約内容が標準化(ISDA基本契約書)され、取引を照合する為のシステムもあった。そして、決済及び契約の履行は、双方が相対で執行することが前提だった。
この取引で、何故改革が必要とされているのだろうか。
機能の面からは、簡単にいうと2つあって、一つはデリバティブ決済の為に清算機関を使うことを義務化しようということと、もう一つは取引されるデリバティブの価格情報を取引参加者間で共有させようということだ。

一つ目の清算機関利用の義務化は、デリバティブに限らず、グローバルな金融取引全てに求められる方向のようだが、主な目的は当局による取引実態の把握と主要取引金融機関間の決済・履行に伴う取引リスク(カウンターパティー・リスク)の低減を目指している。今回の金融危機の主犯と言われるCDS取引だが、元々は社債やローンを保証するものだったものが、そのCDSを証券化するCDO(CDSを合成した証券化商品)を組成していくうち、レバレッジ(CDSとしての利回り)を上げる為に何度も同じ対象のCDSを繰り返した。その結果、もしCDSの対象とする先が破綻(例えばGMなど)した場合、CDOを組成する金融機関であっても、即座にその影響を把握し難い事態になった。金融当局や、元々のCDSの引受手である保険会社(AIU)の経営陣も同様であった。更に、CDS契約が複数の金融機関間で多岐に渡る為、一つの決済不履行が他の多く取引の決済不履行に波及する為、金融機関間の連鎖破綻のリスクを増大させていた。
この様なことを回避する目的で、CDSやスワップ取引などデリバティブ取引で標準化されたものは、清算機関の利用を義務付け、また取引所かPTSの様な取引システム(Alternative swap facility)を利用すべきとしているのが、今回の米金融改革法案デリバティブ規制案になる。但し、ガイトナー米財務相もコメントしているように、この規制はあくまで積極的に売買したり証券化する様な標準化されたデリバティブが対象であって、顧客ニーズに合わせた特別なデリバティブ取引(カスタマイズ)に関して対象としないようだ。

 もう一つは、デリバティブの価格情報の公表もしくは取引参加者間の共有に関して規制法案で定めされているが、こちらの方は更にデリバティブの主要仲介者である金融機関の反対は強そうだ。実際どの様に価格公表を行うか細部は未定だが、現行案では、清算機関を利用する標準化されたデリバティブ(例えば今注目のギリシャCDSなど)は、取引の成立と同時ないしその直後に価格や出来高を報告することを清算機関に義務付けるもののようだ。金融業界としては、デリバティブ取引の縮小懸念から流動性が低下するとして反対しているが、このことはデリバティブ取引の仲介者(ブローカー)として、価格情報の非対称性が使えなくなるということで、ブローカーマージンの低下が予想されるので、ブローカーとしての反対は当然だろう。
ただし先例があって、米社債市場改革では2002年に社債取引情報を15分以内に報告し公表もしはく共有する仕組みTraceが導入されている。米金融界は、透明性向上でトレーダーが以前ほど大きなポジションを取りたがらなくなったため、社債市場の流動性が低下したと訴えるが、学会の調査では流動性低下は証明されていないし、米社債市場の縮小も起きていない。ただし、社債取引においてブローカーマージンが低下したのは事実だろう。

 米デリバティブ規制は、当然日本のデリバティブ取引にも影響するだろうが、現国会に提出されている金融商品取引法改正案では、このデリバティブ取引の清算機関整備に関する条項もあり、日本における制度整備も注目される。
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