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2017/10
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誰が株主なのか?エンプティ・ボーディングの問題
技術が進めば、新しく生み出されるメリットと共に、それまで考えられなかったような障害が起きる。エンプティ・ボーディング(経済的持分なしに議決権を行使する空議決権行使や、経済的持分を持ちながら議決権のない持分の隠蔽状態であること)はまさに金融イノベーションの進展の中で発生した障害になり得る問題かもしれない。
 そのエンプティ・ボーディングの原因になる経済的持分と議決権の分離とはどの様な状況を指すかというと、主に次の様なエクイティ・ディリバティブを実行していく過程の中で起きる。

○手法=トータル・リターン・スワップ
 X金融機関とYファンドなどの間で、A株式100万株に関する以下のようなスワップ契約を結ぶ。
・期間半年で、A株式の配当金相当分と期間中のA株式の値上がり分は、X金融機関からYファンドに支払われる。
・反対に、A株式100万株分の資産価値の金利相当分と手数料、もし期間中にA株か下落した場合のその下落相当分の金額は、YファンドからX金融機関に支払われる。
 ここまでは、スワップ契約(資産をベースにしたキャッシュ・フローの交換)を使ったエクイティ・ディリバティブだが、問題は通常X金融機関がリスクヘッジの為、A株式を手当てすることで起きる。この場合、X金融機関が議決権(共益権)、Yファンドが経済的利益(含む実質的自益権)を分離して持つことになる。この分離が何故問題かというと、議決権を行使するX金融機関にとって、A株式が下落した方が経済的メリットを受けるが、A株式の企業価値を上げるような議案へ賛成していくインセンティブがないことだ。つまりX金融機関は普通の株主と利益相反することになる。

 このことはコーポレート・ガバナンスの観点から好ましくないとされ、現在法制審議会で行われている会社法制の見直しにおいて、金融庁から問題ある論点として示されている。

 一方、このエンプティ・ボーディングは、会社法的問題だけではなく、資本市場のルールである金融商品取引法上の規制を逸脱してしまう可能性があることも指摘されている。上記のトータル・リターン・スワップの場合、Yファンドが、A株式の損益を清算せずに、X金融機関が保有するA株式の持分を現引いてしまう場合がある。通常のスワップ契約には、この様な現引く条項は含まれていないが、Yファンドの依頼によりX金融機関が保有するA株式を引き渡す事例があるといわれている。このことが、実質的議決権の隠蔽問題になる。
大量保有報告書規制や公開買付(TOB)規制を逃れる目的で、これらの手法が使われる可能性もあり、もし敵対的な買収行為にこの手法が使われるなら、企業及び他の株主が不利益を被る可能性もある。事例としては米国になるが、Jパワー株の買い増しで話題となった英ヘッジファンドTCIがこの手法を使い米鉄道大手CSXに経営参加を求めた。この間、大量保有報告が提出されていなかったので、CSX側は「TCIがデリバティブを使って実質的な株式持ち高を隠した」と提訴した。(2008年8月)欧州では、この実質的議決権の隠蔽になるような大量保有報告書規制や公開買付規制の実質的違反に対して、議決権の行使を制限する規制があるようだが、日本においては会社法制見直しの論点の一つになっている。

 いずれにせよ、実質的株主の認定がデリバティブの発達によって複雑化している現実があるが、議決権の行使若しくは行使への影響力を持つものを株主若しくは実質的株主としてルールを見直す必要がありそうだ。
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