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2017/08
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社債市場改革問題を再び思う。何が社債のフェアバリューか
 最近の証券株の動きをみる限り、この業種は構造不況業種に入ってしまったのではと思われる程に活力がないように思う。“貯蓄から投資へ”というのも、この業界では少し色褪せてきたし、新金融立国やアジアのメイン・マーケットを目指した総合取引所構想も、具体的政策待ちで、東証の出来高減少傾向を背景にした沈滞ムードに下押しされている。業界全般で見ると、証券会社の売り上げに占める日本株の割合は減っており、別に日本株の売買で稼がなくとも、投信や外債の販売での利益を上げる収益構造転換が進んでいるはずだが、閉塞感のようなものが業界を覆っている。

 そんな中で、本稿では何度も取り上げてきた社債市場改革(日本証券業協会)に関して、再び取り上げたい。この問題を簡単に言い切ってしまうなら、日本の社債市場は、経済規模に比べて小さい、特に流通市場の未整備が目立っているため、投資家層も広がらないし、発行企業の拡大も見込みにくい。つまり、限られた参加者間での限られた市場という事になる。

この社債市場改革に関して、証券業協会が主催する“社債市場の活性化に関する懇談会”で、昨年の7月以来、1年間議論されてきて問題点別に部会を設け、更に1年近く議論していくという。
①第一部会では、社債発行の機動性を改善する為に、その社債を引き受けうる証券会社の引受審査の見直しを行う。
②第二部会では、社債がローンなどに比べて信用リスク上劣後しているのではという懸念があるので、コベナンツ=財務制限条項(ある一定水準の純資産や利益を維持しなければ、ローンや社債を返済する条件)などの信用リスクに関する情報開示の問題を議論する。
③第三部会では、社債を投資家に代わって管理する社債管理会社の機能について議論し直す。なお現状は、元利払いのみに関与する財務代理人で済ますケースが多く、コストのかかる社債管理会社は、個人向け及び低格付け債に限られている。
④第四部会では、社債流通市場整備の為に、社債の価格情報インフラの整備を議論していく。

本稿ではこの④の流通市場整備の為の価格情報共有の議論を取り上げるが、①~③までは発行市場の問題になり、それもかなり技術的な点も多く、発行市場の専門家でもなければ、その意義は分かり難い。
日本の社債投資家は、よくバイ・アンド・ホールドで新発の社債を買ったら持ち切りだと言われている。それだから流通市場の整備が必要ないのではなく、流通市場が整備されていないからこそ持ち切りになっているという理解を、市場仲介者である証券会社はするべきだ。その為、④では社債の取引価格の共有化システムについて議論される。

 この社債価格の問題を証券業協会で議論することは、実は多少の困難を伴う。それは、社債の価格情報が無いのかと問われれば、協会は有りますと答えざるお得ない。毎日、業者に社債気配値(相当数は実際の取引に関与していないので、業者毎に年限や格付けなどを参考にして出す推計値に近い)を提出させて集計している売買参考統計値がある。しかし、市場参加者なら、この値が社債取引の実勢値(フェアバリュー)をあらわしていないことは知っている。何に使われているかというと、主に機関投資家の資産評価に主に使われている。過去何度もこの統計値の集計方法を改革し、現実に証券会社も協会も相当の手間をかけているが、社債市場改革でいうところの社債の価格情報ではない。しかし、協会で議論するとどうしても、この統計値をどうするかという議論に戻りがちだ。

しかし、そろそろこの統計値を取りやめてでも取引情報を共有する仕組みを構築すべき時期にきていると筆者は考える。また債券価格情報の取扱いについて、よく何がフェアバリューかという議論をしたがる業界の傾向があるが、これも社債の流通市場改革議論では止めた方が良い。
社債の価格情報を無理に揃えることも、取引量の過多・過小でフェアバリュー議論を繰り返すのも、投資家にとっては余り意味ない(その取引価格がフェアバリューかどうか決めるのは、それぞれの投資家)。
それよりも、限られた投資家・限られた発行者・そして限られた仲介者の現状を打破する為、社債流通市場改革の最初の1歩を、業界として踏み出して欲しいと願うばかりである。

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