*All archives* |  *Admin*

2017/06
<<  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  >>
見直される公募増資の問題点
日本の大手企業の大型の公募増資(発行済み株式の3割以上)に対して、欧州の年金基金など長期投資を旨とする海外投資家が怒っているという。また、取引所や証券取引等監視委員会などが、大型公募に関わる株価動向に注視し、調査を行うことが一部報道され始めている。最近の日本企業の大型公募増資はいったい何が問題なのか、投資家目線で考えてみたい。

【問題その1=情報管理】
 大規模な公募増資は、殆どがグローバル・オフォーリングといって国内・海外同時募集で行う方法をとる。企業側は必要な調達金額があって、その販売を引き受ける証券会社サイドは、公募増資に対する投資家需要を勘案して、その可否を発行会社側にアドバイスしていくが、ここで問題になるのは証券会社による投資家需要の勘案の仕方だ。つまり数百億円規模の増資を行うA企業の公募株は、どれ位売れそうか引き受ける証券会社が判断する時、国内販売分は自らの顧客動向を見極めて判断するが、海外分は“プレ・ヒアリング”という事前の投資家聞取りを行う。勿論、公募増資に関する情報はインサイダー情報なので、証券会社内では法人関係情報として情報管理を厳格に行うし、自己売買や推奨なども行わないように監視される。しかし、公募増資公表の一か月以上前から行われることもある“プレ・ヒアリング”の相手先である海外投資家は、彼ら自身の情報管理態勢に委ねざる得ない。つまり、大型の公募増資を引き受ける証券会社は、増資公表前の“プレ・ヒアリング”を行う際、その情報を使って空売りを仕掛ける様な相手には聞かないということが前提になる。しかし、この事を日本の当局が検査する為には、海外当局による協力が必要だし、インサイダー情報(公募増資情報)の2次・3次利用を補足するのは、困難さを伴う。このあたりの事情は、11月7日発行の日経ヴェリタスの放電塔欄に書かれている。

【問題その2=発行企業の問題】
 ファイナンスは常に既存株主の希薄化(ダイリューション)を伴う。会社法上は、発行済株式総数の数倍ある授権株数の範囲内であれば、企業は取締役会決議だけで新株を発行することが可能だが、そのファイナンスにより、企業価値を上げるかどうか判断できないような増資は、株主にとっては希薄化によるダメージだけが大きくなる。そんなこともあって、開示書類対応や取引所ルールでは、発行済株数の25%を超えるような第三者割当増資に対して、第三者機関による合意を得るか株主総会で決議するかの実質的規制が昨年から始まっている。公募増資であっても、既存株主に対するダメージは同様なので、どう平仄をとるか実務的な知恵が必要になっている。
 また公募増資に関する企業側の問題として、現在公募増資では一般化している次の発行方法も株主や投資家にとって問題がある。それは、公募増資の際に投資家が払い込む金額と企業側が資本として計上する金額が4~5%異なることだ。この差異は販売する証券会社の手数料になるが、企業側の資本調達コストではないので、公募増資の判断を容易にしている面がある。既存株主は、公募増資の際の4~5%のディスカウント発行とこの手数料分で、自動的に1割近く減価する可能性があるし、新規の株主も本来発行企業が支払うべき資本調達コストを支払っている。

【問題その3=公募そのものの問題】
 公募増資(パブリック・オファーリング)というと、発行する企業の方は何か公正なファイナンス方法に思うようだが、その実態は少し異なっている。つまり公募株は誰でも買うことが出来るかという問いに対して、現状は否と答えざる得ない。公募株は、その引受証券会社でなければ買えないということは投資家なら誰でも知っていることだが、公募増資の引受株は主幹事証券に集中し、引受シ団も絞られる傾向にあり、多くの証券会社とその顧客は関係がない。個人の株式取引の7割以上、保有の16%を占めるネット証券への公募株の割当ても殆どない。公募株の販売の在り方は業界で考えるべきことだろう。

 勿論、一つ一つの公募増資は、発行企業自身の問題だが、大型の大規模な公募増資によって、内外の投資家の信頼を失うような市場にならぬよう、公募増資の在り方を再考する時期にきているのではないだろか。
スポンサーサイト

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

Secret
(非公開コメント受付中)

最新記事
カテゴリ
最新コメント
プロフィール

ポーラスター

Author:ポーラスター
2009年1月スタート

最新トラックバック
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
RSSリンクの表示
参考文献
QRコード
QRコード