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2017/06
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自社株買い→金庫株→買収に利用:株主にとって理想だが・・
18日に報道された吉野家の海外展開の件で、少し思い出したことがある。記事の内容は、中国などに出店加速するという事と、同社株を20%超保有する伊藤忠から自社株を取得しするという事、2つの内容である。この2つの事は直接には結びつかないが、思い出したことは“会社法の対価の自由化”のことだ。この事例に簡単に当てはめると、吉野屋は伊藤忠から取得した自社株を使って、海外展開を進める為、企業を買収していく時に、対価として自社株を支払うスキームを指す。勿論、相手の会社の買収する時にTOB(公開買付)が必要な場合は、その対価として現金ではなく自社株で支払うことも法律上は可能になっている。つまり株主から取得した自社株を、通貨として発行会社が利用することが、2005年に制定された会社法で可能になった。

少し順を追って説明すると、
・1994年(旧商法改正):自社株取得が可能になったが、取得した自社株は、資本の払い戻しと見做され、消却することが前提であった。
・2001年(旧商法改正):取得した自社株を、消却せずそのまま保有する金庫株が可能になった。金庫株は、資金(資本)が必要な時に売り出したり、CB(現在の新株予約権付社債)の株式への転換や、ストックオプションの権利行使に利用できる。
・2005年(会社法制定):企業の資本政策について、対価の自由化の概念が取り入れられ、金庫株を配当として株主に割り当てることも、他企業の買収通貨として使うことも、会社法上は可能になった。
以上のように推移しており、自社株取得とその利用については、緩和されていて、企業が自社株を割安だと考えた時や余剰資金が有る時、自社株を取得し、その自社株を使ってM&Aや株主への配当も出来る。但し、自社株を使って相手企業に対してTOBをかける事に関しては、実務的な問題があって使われていない。
 
 現在、法制審議会において会社法の見直しが行われているが、金融庁から出されている要望の一つ(経済界からも同様の要望)に、自社株を対価としたTOBについて、企業側が実務的に使いやすい法制の改定を要望している。その背景は次の様なものだ。
[以下、金融庁提出参考資料14からの抜粋]
日本企業が、自社の株式を対価として、他の日本企業又は海外企業の株式を公開買付けにより取得することは、会社法上の規制(現物出資規制)との関係で実務的には行われていない。会社法上、現物出資については、原則として検査役調査及び発行企業の取締役等の填補責任規制の対象となること、現物出資が有利発行に該当すれば発行企業の株主総会決議が必要となること等が論点として挙げられている。これらの論点については、日本企業による企業買収の多様化・グローバル化のニーズを見極めつつ、株主・投資者保護を図りながら株式を対価とする公開買付けの実効性を高める観点から、現物出資を用いた他の取引類型における実態や、事前規制及び事後措置のあり方なども踏まえ、必要な検討をお願いしたい。また、日本企業が組織再編を行う場合に、米国等の証券規制の過度の適用を回避するために外国居住株主による権利行使を制限することが株主平等原則に抵触しないことを明確化するセーフハーバールールの制定等の法制の検討をお願いしたい。

つまり、金庫株にしていた自社株をTOBで使おうと思っても、手続きは面倒だし、決議する取締役のリスクも高い。また、米国株主がいる場合、過剰に米国企業並み開示を求める米規制を避ける為、現在、TOBは米国株主を除いた応募となる慣行が定着しているが、自社株を使うTOBにおいても、米国株主の応募を排除しなければ実務的に対応できないので、制度的な検討をお願いしたいということだろ。

筆者が思うのは、TOBなどで纏まって自社株を使うスキームが実務的に定着すれば、金庫株の出口が広がるので、会社側の自社株取得意欲も強まるのではと期待したい。標題の様に、自社株買いで金庫株がストックされ、その株が他企業の買収・TOBで使われ、結果として企業価値を向上させていくサイクルが、日本の資本市場に定着することを望んでいる。
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