*All archives* |  *Admin*

2017/09
<<  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  >>
信用取引制度をやさしく考える
今は株式市場を語る証券の支店営業マンも少なくなってしまったが、それでも市場における株式売買高の23.3%(2010年東証3市場の売買金額ベース)は個人投資家の分で、その内6割近くが信用取引と言われている。その個人投資家が、ヘッジやレバレッジ投資で活用する信用取引について、やさしく考えてみたい。(注:文中では説明を分かり易くするため“株券”と言っているが、2009年1月より完全ペーパレスになっているので、今は株式という表現になる。)

 信用取引制度は、米国のマージン取引をモデルに1951年にスタートしたが、仮需給を導入することで市場の流動性を高めることを目的にしている。その意味では、投資家にとってはレバレッジ投資や空売りから入ることが可能な先物取引やCFD取引などに性格が似ている。しかし、制度が始まった当時は、十分な貸株市場もなく、また顧客の資金需要をカバーする金融機能も十分でなかったので、顧客への信用供与に伴う受渡資金や株券を節約しようとして生まれたのが、証券金融会社の“貸借取引”とされている。

 信用取引における売買代金・株券の部分につき、この貸借取引を単純化して説明しようとするなら、証券金融会社が中に立ち、買い方には資金を提供して代わりに買い付けた株券を担保に取り、売り方には株券を貸付けて代わりに売却代金を担保として金利分だけを支払う、という仕組みになる。つまり、証券金融会社において、売買代金・株券が買い方・売り方で喰い合う部分を相殺することが可能で、その部分が資金も株券も節約可能となる。したがって、証券金融会社は買い方が多い場合には、短期金融市場などから売買差額分の資金を調達すればよく、また、売り方が多い場合には、生保など長期投資の機関投資家などから売買差額分の株券を借りてくる。この場合、顧客にレバレッジ投資効果を与える為に、信用供与するのは証券会社だか、その後の売買執行は、前述の証券金融会社を通じた取引になる。これが、現在の“制度信用取引”と呼ばれる制度の基本的な形だ。対象とする銘柄は、流動性や貸し株の状況により個別に指定される。当初は市場1部に限られていたが、1991年には市場2部、2004年にはジャスダック市場の銘柄も、貸借銘柄として指定することが出来ようになった。なお、この制度における信用取引の期限は、6ヵ月と定められている。

 一方、“一般信用取引”と呼ばれるものは、1998年に貸株市場が証券会社に解禁されたことで可能となった制度で、証券金融会社を通さない貸株が可能になり、証券会社自らが制度信用における証券金融の役割を演じることが出来る。つまり、買い方の顧客に買付資金を貸し付けることも、売り方に株を貸すことも、そして自社の顧客の売買分を相殺・融通することも可能になった。この制度における証券会社の問題は、自社顧客分において買い方が過剰になった場合の資金調達力と、売り方が過剰になった場合の株券調達力という事になる。資金調達に関しては、証券金融会社が証券会社の一般信用向けに融資する一般信用ファイナンスが始まっているし、自らの信用力で短期金融市場などからも調達しているが、株券の調達は、業者間の貸株市場から調達するか、自社の顧客保有の現物株を借りる方法で行う場合もある。ただし、顧客から借りた株の権利処理などオペレーションが複雑にもなるので、一般信用においては銘柄によって買いだけに制限することも多い。また、一般信用は証券会社が委託保証金率以外の顧客との取引条件を自由に決まられることから、期限は6ヵ月以上も可能で、無期限信用取引の様に期限を定めない取引も可能となっている。

信用取引は証券会社(特にネット証券)にとって重要な収益源だが、そのポイントは株券の調達にある。制度信用なら証券金融会社から、一般信用なら貸株市場か自社顧客からだが、どの株式がどれ位借りられているかは、投資家にとっても仮需給を推定する上で重要な情報だ。制度信用は、貸借取引残高、一般信用も含めたものは信用残高として基本的には週一回、信用取組みの多いものは毎日、公表される。
一方、市場売買の6割を占める海外投資家も、株式を借りて売却することがあるが、この仮需給の部分は公表されないし、また集計することも少し難しいかもしれない。しかし、信用取引が仮需給に関する指標を重要視するものなら、この部分の仮需給を計るものがなければ、仮需給取引における個人と海外投資家等との情報の非対称性は、大きなままだ。全体の融資・貸株残高というものが公表されれば良いが、海外ブローカーに報告を義務付けるのは難しそうだ。

信用取引をやさしく考えるはずが、最後の1節は難しい話になってしまった。問題点の指摘だけでは申し訳ないので、代案も考えてみたが、全体の貸株残高集計の代わりに、売買決済以外で株券が移動される数値を公表しては如何だろうか。株券を貸し借りすると、必ず証券保管振替機構(ほふり)の口座を株券が移動する。これをもって、貸株状況を推計するものの代用とすれば、現在の信用残高報告における貸株残高より、貸株状況の実態に近づくことが出来るかもしれない。

スポンサーサイト

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

Secret
(非公開コメント受付中)

No title
とても魅力的な記事でした!!
また遊びにきます。
ありがとうございます!!
最新記事
カテゴリ
最新コメント
プロフィール

ポーラスター

Author:ポーラスター
2009年1月スタート

最新トラックバック
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
RSSリンクの表示
参考文献
QRコード
QRコード