*All archives* |  *Admin*

2017/08
<<  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  >>
コーポレート・ガバナンス議論をやさしく考える
もうこの議論は10年以上もしている。だからと言って、議論に飽いたとかいう事ではなく、資本市場を構成している基本要素の会社(上場企業)というものが、どう運営されていくべきか、そして会社は誰のものかと言った議論に会社自らがどう答えていくか、コーポレート・ガバナンス向上の為の取組みは、日本の資本市場の品質向上の為の必要最低条件だ。ここで対照的な2つの事象を上げておきたい。

 中国などの新興国の企業にとって、日本の衰退産業と言われる分野の上場企業は、割安かどうかは別にして、コーポレート・ガバナンスが良いのが魅力的だと伝えられている。

 一方、欧米の機関投資家中心に、上場企業に対するガバナンス改善要望が常に示されていて、ファイナンスや配当政策など資本政策に関するもの、役員選任や報酬などの透明性、それらを外部からチェックする機能として社外取締役の充実など求めている。

 現在、法制審議会において会社法の見直しが行われており、詳しい法律議論はそちらに委ねるとして、上記の新興国企業の視点は、日本企業のコーポレート・ガバナンスを上から見た企業支配のものだろうし、海外の機関投資家の視点は、それを横から見た少数株主(支配権を持たないという意味)のものだろう。ただし、資本市場にその企業が居続ける限り、投資家という名の少数株主の要望にどう応えていくかが、このコーポレート・ガバナンス議論の行く先だろう。

なお、現在のコーポレート・ガバナンス議論は、“会社の経営形態がどうあるべきか”というものが中心になっているが、昔からある監査役会設置会社(取締役会と監査役会)が良いのか、社外取締役を多く取り入れた委員会設置会社(社外取締役の参加が必要な指名・報酬・監査の2つ委員会)が良いのか、委員会設置会社から監査委員会を取り出した監査委員会設置会社(経済産業省や経団連などが提案)が良いのか、そして社外取締役や社外監査役の社外と言う定義は、大株主や主要取引先などでも良いのか。

 どの様な形や定義にしろ、会社の不測のアクシデントや一部経営者の誤った判断から守る仕組みが求められていて、会社から独立した何らかの経営へのチェック機能が必要というところに纏まる。方や、投資家の方も、特に機関投資家は少数株主の代表として、コーポレート・ガバナンス向上への具体的行動を求められている様に思われる。

以下、ご参考までに、会社法見直しを受けて、現在金融庁主催で行われているコーポレート・ガバナンス連絡会議において、昨年の株主総会の特徴として説明されたもの(議事録より)。なお文末の注記は筆者。

<総論>
○6月の株主総会について、6月総会開催日の特定日への集中率は減少し、株主総会招集通知の発送が早期化。株主総会の場では、会社による丁寧な説明が行われる傾向が続く。来場株主数は引き続き増加傾向で、発言株主も増加傾向。
○株主提案の件数は増加傾向が続いており、提案にはコーポレート・ガバナンス論の核心に触れる内容のものがみられた。
○独立性の基準について機関投資家の間からは企業との考え方の相違を指摘する声もある(特に金融機関出身者を対象)。
<国内機関投資家の動向>
○企業年金連合会は取締役の独立性判断を厳格化。その他国内投資家も社外取締役の有無、独立性などコーポレート・ガバナンス体制に注目している。社外者への報酬等には厳しい見方をとり、その考え方は海外投資家に似ている。
○公的年金などスポンサーによる自発的な議決権行使は限定的。ヒアリング等を通じ、運用委託先の議決権行使に影響力を行使する傾向は変わらず。
○海外投資家は、取締役会の機能をモニタリング機能・アドバイザリー機能と考えており、業績については執行者が責任を負うべきものと考えているため、取締役会に対してはその責任を問わない。他方で、国内投資家は、取締役会を業務執行機関と見ているため、業績や資本効率性についても取締役会が責任を負うべきものとして介入してくるという特徴がある。また、企業不祥事をリストアップ、個々の取締役・監査役の役割にも注目する傾向が強まっている。
<海外機関投資家の動向について>
○大半はISS(注1)等外部の議決権行使助言会社の考え方に沿っている。社外取締役が少ないことが議決権行使の争点となっている。社外取締役がいない会社に対し社長・代表取締役等へ反対票を投ずる傾向が顕著になった。
○社外監査役や委員会設置会社における社外取締役のように、義務化された制度における社外役員の独立性に注目している。しかし、監査役設置会社の社外取締役の独立性には甘い。これは、監査役設置会社については一人でも良いから社外取締役をおいて欲しいという意思表示の表れ。
○配当性向に注目。海外の企業がそれを目標として公表するようになったためと思われる。
<海外の株主総会における特徴>
○アメリカの株主総会において、選任につき機関投資家の反対が多かった取締役の特徴としては、独立性、特定取引に関する情報開示が不十分、過剰兼務等が挙げられる。
○欧州では「Comply or Explain」原則(注2)を遵守する会社における議案支持率は高水準。また、役員報酬に関する議案も関心を引いている。
<国内外の株主総会が示すコーポレート・ガバナンスの方向性>
○「Comply or Explain」規範を持つ国では、安定株主比率が低くとも議案支持率は高い。機関投資家がこの規範を支持するため、会社による遵守宣言がある場合には賛成票の増加につながりやすい。規範のないアメリカでは株主提案が多発し、これが相当の支持を得ていることから、コーポレート・ガバナンスへの取り組みが拡散し、企業も個別の対応に追われる傾向がある。
○「Comply or Explain」規範は企業を対象とする行動規範であるため、企業みずからが現状を踏まえて制定することが望ましく、これを株主・機関投資家が評価・支持し、さらに遵守状況についての説明を開示義務とすることで実効性が高まる。あわせて、機関投資家も規範のメリットを享受するとともに、自らも受託者責任を認識した行使およびその開示に努めることが求められる。

注1:ISS=Institutional Shareholder Services大手議決権行使助言サービス機関
注2:「Comply or Explain」規範=欧州においては、企業と機関投資家などが協議して、コーポレート・ガバナンスに関する統合的な規範を作成(行政も関与)。遵守するか、そうでない場合は年次報告書等で説明をする。

スポンサーサイト

テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

Secret
(非公開コメント受付中)

最新記事
カテゴリ
最新コメント
プロフィール

ポーラスター

Author:ポーラスター
2009年1月スタート

最新トラックバック
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
RSSリンクの表示
参考文献
QRコード
QRコード