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2017/10
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日本の金融機関にとって投資銀行業務とは=M&Aの場合
今はあまり言わなくなったが、ある程度の規模の金融機関なら、そのほとんどが投資銀行業務を強化しますと言っていた時期がある。中には米国の投資銀行をモデルとした投資銀行宣言を行っていた銀行もあった。ある時期とは、金融危機以前ということだが、リーマン破綻を契機に米国型投資銀行に対する不信が強まった。そしてそれは今でも解消されていないので、米国では投資銀行マンが余剰となるような投資銀行不況が続いているようだ。日本でも、証券や金融機関の投資銀行業務は冴えない。

 投資銀行業務の中核となるM&Aや上場企業のファイナンスは比較的高水準で、今後ともグローバル対応の強化や復興の為に資本増強需要で先行きは拡大が予想され、先行きは明るいはずだが、少なくとも証券会社の投資銀行部門の収益予想は厳しそうだ。それが何故なのかは、投資銀行業務の本質を考えなければならない。

 投資銀行部門が自らのM&A業務の状況を示すのに、よくリーグテーブルというものを使うが、これはM&A助言を行った案件をカウントする時、対象企業の時価総額を足し、その合計額でM&Aアドバイザーとしてのランキングを競う。これはM&Aで買収金額に合わせて、アドバイザーの成功報酬部分が決まることをベースにしている。しかし、大企業のM&Aほど日本では当事者間で基本的なことを決めてしまう場合が多く、例えば最近では新日鉄(時価総額1.6兆円)と住金(同7900億円)や東証(上場されていないが2~3000億円)と大証(970億円)などがそうだ。これらのケースは各社が複数のM&Aアドバイザーを指名しているが、アドバイザーへの報酬は多くても1千万程度ではないかと言われている。この収益性では、とても複数の人員を半年から1年以上は配置させるような案件ではないが、一旦案件が成立してしまえば、時価総額をアドバイザーのリーグテーブルに加算する。

 ビジネスは売上高ではなく収益性が重要という市場の原則から考えれば、一見リーグテーブルでM&Aを競うのは余り意味のない事の様に思える。しかし、このリーグテーブルを重視することは、アドバイザーとしての宣伝効果以外に、他の部門や他社との協働ビジネスへの波及効果を考えると別の側面が見えてくる。

 例えば、M&A案件の大きさ(時価総額)に係らず、当事者間で基本的なことが決められている案件で、実際の実務的な助言に対する報酬が少ない場合でも、
・M&Aで急遽必要になった資金の調達先を紹介する(他社との協働)
・案件の後で、必要な資本調達に関与する(自社内の他部門への波及)
・M&A後、不要な部門を売却したり、反対に強化する為に買収先を探したりする次のM&Aに関与(M&Aビジネス関与を持続させる)
などビジネスが拡がる可能性が高い。故に、投資銀行部門がリーグテーブルに拘ることの一理はある。

 つまりM&Aにおける投資銀行業務とは、助言を行うことだけの収益性は低くとも、その案件に関連するビジネスを取り込むことで、高収益性を維持できる仕事と言える。その為に、一見繋がらないような事や波及する事を案件に関連付け、全体をマネージメントする必要がある。また企業との持続的関係を維持する努力も必要だ。

 最近の日本の投資銀行業務が冴えないのは、この複数のビジネスを仕組む事について、障害のとなる事があったり(例えば、部門間及び顧客との利益相反問題が整理されていない)、助言活動中心となるバンカーそのものの能力不足(例えば、法規制の強化で以前ほど簡単に仕組めない)のように思える。

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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

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