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2017/10
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ファイナンス銘柄は儲かるのか
今だと、ファイナンス(公募、公募CB)の発表を聞いて、取りあえず空売りし、値決め日以降に買い戻すとある程度の収益が期待できると思う投資家は多いだろう。株主なら、この間の短期的下落に耐えるか、単価を下げるために一旦売って公募株取得等で買い戻すオペレーションをするかの選択になる。しかし、大規模なファイナンスは、既存の株主には大幅な希薄化を起こす弊害があるものの、その企業が新たなる事業計画に沿って大規模な設備投資や大型のM&Aを行う為に行うはずなので、将来の企業価値(つまり株価)増大に期待できるはずだ。少なくとも企業が示している資金使途の効果が期待できるものなら、公募株などは儲かるという期待も大きくなる。バブル期も大量のファイナンスが行われたたが、公募株は発行直後からの上昇期待が強かったので、個人投資家相手の営業店においては、公募株は得意客へ率先して渡す様な扱いだった。

この為に、日本証券業協会の自主規制ルール“有価証券の引受け等に関する規則”においては、「個人投資家等への広く公平な消化を促進し、公正を旨とした配分を行う」(第31条:公正な配分)とあり、公募増資などは、国内の個人投資家への配分を6~7割と厚くする慣行が引受証券会社で行われていた。

 しかし、これは公募株なら必ず儲かると言われていたバブル時代(断定的表現はその当時の業界評価)の規則の名残りで、もう20年以上も経っている。その間、日本の発行市場で何が起きたか辿ってみると下記の様な主な動きがある。

・1989年:公募増資のピークで年間発行金額が、5.8兆円(227社)。

・1990年4月:公募増資が事実上停止(大蔵省の行政指導)

・1994年4月:公募増資再開。但し、発行企業はROE10%以上とする発行企業のガイドラインと、引受証券会社が、発行企業に対して引き受ける公募株を発行済株式総数の15%まで制限したり、配当性向を30%以上とすることを要請する利益配分ルールがあった。

・1996年4月:上記のガイドラインやルールは撤廃され、完全自由化された。

・1990年代後半から、大型の公募増資(100億円以上の調達)では、国内・海外同時募集が行われるようになったが、公募増資公表前から海外機関投資家のニーズを探るソフト・ヒアリングという慣行が一般化した。これは事前に海外投資家のニーズを知ることで、海外販売分の数量的目途をたてる為とされていたが、昨年欧州などの機関投資家から、この慣行で事前にファイナンス情報がヘッジファンドなどに漏れ、公募公表前から空売りされている可能性があると指摘されている。

・各取引所に新興市場が整備されたことから、2000年代前半を中心にIPO(新規公開)ブームが起きる。この時、人気の高かったIPO株などが個人投資家に広く行きわたるように、引受証券会社は原則として10%以上を抽選して配分するルールを証券業協会が定める。(ルール制定は1997年)

・2009年、バブル期に匹敵する金額5兆円以上が公募増資され、2010年も3兆円以上と高水準の大型公募が続いている。本年は、減少が見込まれるものの、復興需要により、来年以降再びファイナンスニーズが増加する可能性がある。

 長々と日本の発行市場の沿革を書いたが、今、このファイナンスに関する個人投資家への重点配分を計った“公正な配分”のルールを見直すと言う。日本証券業協会が関係者の議論を経て、年内に見直し、国内機関投資家への配分も柔軟に行えるようにする目的のようだ。

20年来のルールを見直すというのは良い事だが、それで公募株の魅力が増したり、海外投資家に指摘されるような日本の悪しき発行慣行が是正されるのだろうか。そして、個人投資家から見て、公募株は買いという機運が高まるのだろうか。

日本の発行市場は、制度疲労を起こしかけているのかも知れない。
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