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2017/10
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市場対策としての“空売り規制等”を考える
 本稿では、もう何度か取り上げている本邦の“空売り規制等”が10月末で期限となるが、予想通り来年4月末まで6ヵ月延長される。この規制は2008年のリーマンショックの直後から市場対策として取り入れられ、6ヵ月若しくは3ヵ月毎に延長され、今回で10回目の延長となる。規制の内容は以下の3つ。

①売付けの際に株の手当てがなされていない空売り(Naked Short Selling)の禁止
②一定規模(発行済株式総数の原則0.25%)以上の空売りポジションの保有者に対する、証券会社を通じた取引所への報告の義務付け。取引所による当該情報の公表。
③自社株の市場買付ルール(1日の買付額は、全体の25%以下、引け前30分の買付を行わない)の停止。(つまり→現在は、他の市場参加者と同様、買付数量や時間に制限がない状況)

其々に関して、市場対策としての意味を改めて考えてみたい。

一般論としては、市場対策で空売りを禁止してしまうこともある。今夏の欧州債務危機においても、欧州の一部の国が、銀行株を一時的に空売り禁止にした事例もある。しかし、空売りそのものは市場の流動性を確保する上で必要というのが、市場関係者の一般的な見識になっている。リーマンショック後3年以上も続いている日本の空売り規制も、空売りそのものを禁止するものではない。空売りしても良いが、ちゃんと株式を借りてから売り注文を出してという事になっているが、個人投資家が利用する信用取引での空売りは、日証金や証券会社から株式を借りて売る。海外のファンドなどの投資家は、外国証券が信託銀行などを通じて日本の機関投資家など大株主から借りた株式を売却する。
ここで問題となるのは、市場の取引シェア約2割の個人投資家の3倍の取引規模になる海外投資家の空売りにおける株式を借りる時期のことだ。個人投資家にとっては、日証金か証券会社から株式を借りて売るのは、信用取引の当たり前のルールだが、海外投資家にとって借りる予定で株式を売るということがある。例えば、売却してから決済は4日目なので、3日目までの株式を借りて4日目の決済に間に合わせる。場合によっては、株式を借りるのが間に合わない場合は、フェイルといって手数料を払って決済そのものを延長してしまう事もあった。この様なことを禁止したのが①のルールとなっている。

次の報告義務に関して、もともと注文を取り続ぐ証券会社は、投資家の売りが空売りかどうか確認して、取引所に報告する義務がある。②は、一定量の空売りをした投資家自らが報告義務を負うのだが、この報告内容が取引所で公衆縦覧される。実際の報告書を見てみると、外国証券や海外の裁定ファンドなどの報告が多い。報告義務があるから、不要不急の空売りが減少し、相場が安定するわけではない。しかし、個人投資家にとって、自分達の3倍以上の取引量を持つ海外投資家の空売り動向を推測そうことが出来る数少ない情報の一つとなっている。

三番目の自社株市場買付けルールの停止は、最後の買い手としての上場企業自らの市場からの自社株取得を促すものであることは間違いない。

一方、日本の空売り規制で元々ある売り下がりを禁じたアップティック・ルールは、国際的にみてローカル・ルール化(米国でも2007年に廃止)しているので、超高速化したアルゴリズム取引の時代に合わないとの市場関係者の意見は強い。筆者もそう考えるが、①と②は明かに個人投資家と海外投資家の情報格差是正に繋がるので、流動性低下の心配や若干の報告コスト増を懸念する外国証券を説得してでも、何等かの恒久化は検討すべきと考える。

なお、参考までに注目されている銘柄の空売りポジション(個々に0.25%以上の報告の合算、10月21日公表分)と、直近の信用残高(ネット証券Aの投資家向け情報、10月24日情報提供分)を比較してみる。
(以下の数字は、あくまでも空売り規制の意味を考える目的で集計したもので、集計には最善を尽くしていますが、報告数字の正確性や適時性には責任は負いません。よって、投資判断や投資助言には利用しないで下さい)

●オリンパス=大口空売りポジション、1183.2万株:信用売り残高216.1万株
●東京電力=大口空売りポジション、1235.8万株:信用売り残高6230万株
●JUKI=大口空売りポジション、717万株:信用売り残高717万株

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