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市場を救うか---ライツ・イシューの現在の日本に於ける問題点
標題は、ライツ・イシュー制度の整備によって、発行市場機能が整備され、大型のファイナンスを売り材料とするような既存株主にとって辛いマーケットから、日本市場が脱却することを願ってつけた。
現時点でのライツ・イシューに係る問題点を、本質的な問題と技術的な問題に分け、なるべく簡単に書いてみたい。

【ライツ・イシューに係る本質的な問題】

○大型のファイナンスが企業の生き残りの為に必要な時があるのは分かるが、といって持分が3割も4割も突然希薄化するのは既存株主にとって避けたいことだ。第三者割当増資でも公募増資でも既存株主には希薄化といったダメージを与えるが、第三者割当に関しては25%以上を行う場合、第三者委員会か株主総会の承認が必要なように取引所ルールなどで実質的に規制している。では、大規模な公募増資なら自由に行って良いのか。この問題点は、海外の機関投資家からも再三指摘されている。

○ライツ・イシューとは新株予約権を使った株主割当増資である。しかし、昔からある株主割当増資と少し違うのは、新株を払い込まない株主は、その権利を新株予約権として他の投資家に売却することが出来る。既存株主は自分の持分の希薄化を完全に防ぐことは出来ないが、かなりの部分のカバーは出来る。少なくとも、ライツ・イシューと聞いて、公募増資の時の様に慌てて売る必要はない。

○ライツ・イシューは昨年3月にタカラレーベンが日本で最初に行ったとされるが、リテール証券(ネット証券を含む)で取扱い可能だったのは三分の一にも満たない。つまり、ライツ・イシューを取り扱うべき証券会社の実務が確立していない。本来は実務の問題は技術的な問題なはずだが、株主や投資家にちゃんとライツ・イシューのことが説明できなければ、業界の本質的問題と言わざるを得ない。

【ライツ・イシューに係る技術的な問題】

●ライツ・イシューは、株主全員に新株予約権を割り当て、それを新株に払い込むか権利として売却するか判断させる必要がある。その為、目論見書を株主及び新株予約権を市場から買った投資家に配布しなければならない。また、新株予約権の割り当てから新株の払込みまで二ヵ月近くあり、その間、もし投資判断に影響がありそうな事象が発生すれば、訂正の目論見書も配布しなければならない。株主が多ければ大変なコストとなる。
これを改善する為、Webの画面で目論見書が確認できるようにしておけば、実際の目論見書配布を免除するように法規制を変えた。

●ライツ・イシューは、株主や投資家の払込みに頼るので、公募増資の様に最初に予定した金額が全て払い込まれるという訳ではない。つまり売れ残り(払込み残り)がでるのだが、売れ残りをそのままにしてファイナンスを終了するのも無理のない考え方だ。
但し、どうしても必要資金を調達したい場合、売れ残ったものを証券会社に販売してもらう。この場合は、事前に株主や投資家に公表しておく必要がある。コミットメント型ライツ・イシューと言われる方法だが、この事が少し技術的問題を複雑にしている。つまり、この証券会社の行為を引受けと定義付けたり、大量のライツ(新株予約権)を再販する時に、5%ルールやTOB規制に掛からないよう法制度を整備しなければならなかった。

●証券会社が、株主や投資家に対してライツ(新株予約権)を行使することに対しアドバイスすることは、法律上の定義が無かったが、これを勧誘行為として行為規制の対象し、投資家の保護を図る制度整備が行われた。ただし、ライツの行使勧誘に対して、証券会社の報酬対価の実務がまだ整備されていない。例えば、新株予約権の払込みを取り扱った証券会社に対し、数%の手数料を支払うというような実務慣行がライツ・イシューの定着の為には必要だと考える。

なお、以上の3つの法制度整備は、金融商品取引法に係る内閣府令などで来年4月1日より施行される予定となっている。

●米国人株主が10%以上いる場合は、少し厄介だ。日本企業であっても、米国人がライツを行使しようとすると米国での開示をしなければならない。ライツ・イシューの盛んな欧州企業は、これを避ける為に、米国人株主の部分はライツを売却して、その代金を米国人株主に配布し直接ライツを行使する判断をさせない。日本企業のライツ・イシューもこれと同様に、米国人株主対策を行えば良いと思うが、実務慣行が確立していない為、会社法で言うところの株主平等原則に抵触しないかとの意見もあった。この意見に対して、ブルドックソースの買収防衛で使われた買収者の新株予約権行使を制限した事例での最高裁判決が、株主間で異なる新株予約権の行使対応の事例として上げられている。法学者の中には、異なる意見もあるかも知れないが、ファイナンスの遂行という目的が正しければ、問題とはならないという考え方も金融庁主催の研究会で示されている。この問題は、かなり技術的問題だと思うが、実務慣行が成立していない為の議論の為の議論の様にも思える。

どの様な問題であっても、本質的なことの解決の為、技術的な問題の整理と解消が行われて行かなければならないが、ライツ・イシューに係る議論もそうあって欲しいと願っている。

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