*All archives* |  *Admin*

2017/08
<<  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  >>
株式市場の機能としての発行市場
株式市場の主役は、株式を上場する企業とその株式を売買する投資家ですが、機能としては大きく流通市場と発行市場に分けるのが業界の一般的な考え方です。株式市場は流通市場と発行市場が両輪で成り立っていというのが教科書的な書き方ですが、毎日株価が変化する流通市場に比べ、発行市場では時々IPO(新規株式公開)や公募増資が話題になるぐらいで、普段投資家からみて余り意識されることがありません。しかし、上場会社にとってリスクマネーを調達する発行市場の機能は重要です。

 流通市場の方は、毎日株式を売買しているので、取引の超高速化や上場企業のディスクロージャー(情報開示)の充実など、その時代の投資家のニーズに合わせて変化していきますが、発行市場の方の変化は、そのあり様が異なります。その理由は、発行市場の機能の中心になっているのが発行に係るルールだからです。このルールは、取引所などの上場規則と証券会社の引受ルールが中心となりますが、制度の継続性の観点から、これらのルールが大きく変更される時は、発行市場に何か大きな問題があった時となるのが普通でした。
 ルール中心の発行市場。そのルールを、今、大きく変える程の問題があるのかというのが本稿のテーマになります。誤解なきよう言いますが、問題があるのでルールを厳しくするという事だけが解決策ではありません。また、ルールである以上、それを決めるのは取引所や証券会社が中心になり、上場企業が遵守を求められるという関係になります。

 現在ある発行市場に係る問題については、以下の様なことが上げられます。

○IPO数が少ない。
過去の新興企業に関する不正会計処理や引受証券の不祥事から、上場予定企業に対する審査を厳格化する方向にありましたが、取引所と主幹事及び監査法人間の関連情報のやり取りを円滑化し、上場までの審査プロセスを明確化しようとしています。また、上場後に小規模な新興企業を支援していく策としては、アナリストレポート作成を支援したり、一部ディスクロージャー負担の軽減なども行われています。
一方、IPO企業の裾野拡大の為の取組みは、ベンチャーキャピタルの投資先のリスト化や、グリーンシート市場の活性化など上げられていますが、関係者が限られて個別の議論となり、IPO裾野拡大の可能性まではまだ距離がありそうです。

○大規模な公募増資などに関して規制がない。
海外の機関投資家などからは、既存株主の了承もなく発行済みの2割を超える公募増資が、取締役会だけで発行されるのは、おかしいのではないかとの指摘があります。しかし、新株の発行も既存株の消却も資本政策に関しては基本的に取締役会に授権されているのが日本の会社法です。発行したいというのは証券会社に止められませんが、ただし、どの数量まで引受けるのかは証券会社の判断ですので、引受ルールにより発行数量を制限することは可能です。

○国内の転換社債市場が縮小している。
国内発行の転換社債(新株予約権付社債)のマーケットは、IFRS(国際会計基準)の影響で新株予約権部分の時価会計処理が必要と考える企業が増えたことや、国内での上場・個人への販売には格付作業が必要なことから、その発行数量が減少しています。つまり、上場企業にとって公募増資よりも負担が重いファイナンス方法となっていますが、反対に既存株主から見て希薄化の負荷は公募よりも軽いと考えられています。また、海外での転換社債発行は格付け不要な場合が多いのですが、株主からみて販売先の投資家層が分かり難く、裁定取引への懸念が払しょく出来ていません。

○小規模な企業の公募ファイナンスが行い難い。
大規模な企業の発行済みの2割の超えるような大規模の公募増資が、市場での問題になる一方、時価総額の小規模な上場企業にとって、現状の公募ファイナンスは行い難いものです。これは、小規模な為に現在国内の転換社債発行に必要な格付けが事実上取得できないことと、小規模な金額の公募増資を引き受ける証券会社数が限られることによります。例えば、時価総額10億円の企業が、2億円の公募増資を行いたいと考えた場合、引受機能が完備された大手証券の全国の販売網でこれを扱うのは難しいと考える大手証券が多いのが現状ではないでしょうか。反対に、中堅以下の証券会社では引受機能が限定されていて、引き受けてとして対応できていないのも現実です。
(主幹事として元引受が可能な証券会社は、資本金30億円以上との金融商品取引法上の規制があります。)

そろそろ、発行市場全体の機能を見直した上で、グランドデザインを行うような抜本的な発行ルールの見直しが必要なのではないでしょうか。

スポンサーサイト
Secret
(非公開コメント受付中)

最新記事
カテゴリ
最新コメント
プロフィール

ポーラスター

Author:ポーラスター
2009年1月スタート

最新トラックバック
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
RSSリンクの表示
参考文献
QRコード
QRコード