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2017/07
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再び増資インサイダー問題について
証券取引等監視委員会による過去の公募増資に絡んだインサイダー取引の摘発が相次いでいます。
(※日付は、新聞などの報道日)

●3月21日、国際石油開発帝石(現JXホールディングス:5020)が2010年に実施した公募増資で、主幹事の法人セールスから公表前に増資情報が中央三井アセットのファンドマネージャーに流れ、事前に同銘柄を空売りしたことに対して、同行のインサイダー取引として課徴金勧告
●4月13日、対象銘柄は明らかにされていないが、SMBC日興が2009年度と2010年度に主幹事を務めた公募増資で、増資発表前に営業部店に対象銘柄の販売活動を指示した件に対し、金商法違反(インサイダー情報=法人関係情報の管理)で行政処分を勧告
●5月26日、みずほFG(5411)が2010年に実施した公募増資で、主幹事の法人セールスから公表前に増資情報が中央三井アセットのファンドマネージャーに流れ、増資により想定される損失を防ぐ目的で事前に保有していた同銘柄を売却したことに対して、同行のインサイダー取引として課徴金勧告
●5月29日、日本板硝子(5202)が2010年に実施した公募増資で、主幹事などから情報を入手して、増資公表前に同銘柄を空売りしたことに対して、同社のインサイダー取引として課徴金勧告

上記の件は、いずれも主幹事の証券会社内で本来は限定された関係者以外に知り得ないファイナンス情報(インサイダー情報)が、営業部門を通じて顧客のファンドや機関投資家に伝わり、公表前に空売りなどの当該銘柄の売却を行ったインサイダー取引に繋がっています。
≪上記の件に関係した主幹事証券は、報道では野村・日興・JPモルガン(海外販売分の主幹事)と言われています。≫

【引受主幹事証券の公募増資情報の流れ】
この公募増資に係るインサイダー取引問題の背景を、少し整理しておく必要があるのではと考えましたの、再び本稿で取り上げました。主幹事証券内における公募増資情報の扱いは、概ね以下の様になっています。
(※日程は、公募増資の公表日から遡ったもの)
○3ヵ月程度前:発行企業から、公募増資と調達金額の希望を伝えられ、引き受けるか如何か検討。
・調達金額が200億円以上であれば、海外でも募集を行う方法を取ることが多いので、別途海外での主幹事証券(主にロンドンの証券会社)を想定しておきます。
○2~3ヵ月程度前:主幹事証券が引き受ける為には、社内の審査(引受審査)を行いますが、発行企業や監査法人とのやり取りに2ヵ月程度かかります。また、スキームが複雑だったり、海外で募集を行う為に必要な書類の準備にも入りますので、英国法などに詳しい専門の弁護士とのやり取りも始まります。

以上は、発行企業と引受関連の専門家たちの公募増資準備なので、増資情報は厳格に管理されています。

問題となるのは、発行企業が希望する金額が、実際販売できるかどうか主幹事証券内で判断しなければなりませんが、金融危機後の公募増資の様に金額が大きかったり、発行済株式総数に対して新株の発行が大きな割合の場合、主幹事証券内でその判断を下す新株の販売責任者の検討は難しいものになります。

 その為、新株の販売責任者は当該新株に対する投資家の需要を考える根拠を欲します。海外の機関投資家などから批判が強かったソフトヒアリングと称して、一部の海外投資家に対してその需要を公募増資の公表日の1ヵ月程度前から聞くことは、この為に行われましたが、現在はインサイダー情報管理強化の中でさすがに実施しなくなったようです。しかし、発行企業に対して最終的に引受可能金額を提示する時に、自社内の販売力を想定しなければならないので、ここで実際に新株の販売を行う営業部門との接触が始まります。時期的には、公募の公表日の1~2週間前ですが、同時期に他の幹事証券に対して引受額の打診が始まります。ですから、この時期に公募増資のインサイダー情報を持つ関係者は、一気に多くなります。

この情報は、証券会社の情報管理ルールで定められた範囲に納まって、例え社内と言えども部外者(特に営業担当者)に漏れなければ問題はないのですが、最近SESCに摘発された件は、いずれも営業担当者からファンドの運用者に伝えられています。

 度重なるファイナンスに関する過去の不祥事から、証券会社の引受審査のプロセスとその内容は非常に厳格に運用されていますが、問題は新株の販売額を決定する段階で、営業体へファイナンス情報が拡散し易くなっているという証券会社の構造的な問題があります。この問題は、一定額以上を引き受ける他の証券会社も同じです。

【増資インサイダーに対する対処策について】
・主幹事証券内において
証券会社内におけるファイナンスに関する情報管理を厳格化することは当然です。また、簡単にかつ厳しめに言い切るなら、主幹事証券の販売責任者は自分が売り切れると思う額以上の新株を引受けなければいいのですが、その為には大規模な公募増資に対して、社内の需要予測を行う仕組みや、他社の需要を推測する為にシンジケーションを強化する取組みが必要です。

・ディスクロージャーについて
そもそも、公募増資が売り材料になっていることが問題ですが、調達した資金で発行企業が次の段階の成長が見込めることを投資家にアピール出来れば、増資による市場への供給増加の悪いイメージを払拭できるかも知れません。その為に、現状の目論見書(内容は有価証券届出書ベース)ベースで十分かとの思いをもつ証券会社の営業担当者は多いと思います。
現在、海外投資家などの為に公募公表後にロードショーを海外で開催している場合がありますが、国内の投資家向けにもロードショーを行い、これをインターネットで一般投資家も閲覧できるよう開示規制が緩和されればと思います。

・ファイナンス情報をインサイダー情報としない代替策について
 以前にも触れましたが、大規模な公募増資の代替策としてはライツ・オファーリングが有効です。日本では2年前のタカラレーベンの事例以外ありませんでしたが、このファイナンス方法に対する開示規制が本年4月以降緩和されたり、実務的問題の議論が整理されていますので、この方法による新株発行の増加を期待しています。
 一方、現制度でも発行登録制度を利用して、検討段階の早い時期に投資家に必要資金とその資金使途をアピールしていくと言う方法も考えられますが、現状の発行登録制度は大企業が使うことが前提になっていますので、例えば時価総額100億円以下の企業は使えません。公募増資に関する発行登録に関しては、この様な大企業向け基準を緩和しても良いのではないでしょうか。

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