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2017/06
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“社債市場の活性化”は、本当に必要なのか
社債市場の活性化は、アジアのコア・マーケットを目指す日本にとって勿論必要だ。だから、市場関係者・発行企業・学会などの有識者が集まって3年以上も議論を続けている。そして、この7月に市場活性化の為に、どの様な具体策を取るべきか報告書が纏められた。先ず、関係者の方々の多大な尽力に敬意を表したい。

ただ、この報告書を読んだ感想として、思わずコーポレートガバナンスの時の“会社は誰の為のものか”といった議論を思いだした。今から10年以上前になるが、コーポレートガバナンスの勉強会ということで上場企業の数社に呼ばれて、資本市場からみた在り方や論点を説明したが、先ず経営陣が株主や従業員・取引先・地域社会などのステーク・ホルダーにどの様に関わっていくかというところから説明を始めた。

社債市場活性化議論も、このステーク・ホルダーに関する配慮が行き届いている。つまり、投資家は勿論、発行企業・引受業者・社債の管理者と、社債市場に現在関係する人々が感じている不満や不足を洗い出し、改善を試みようとしているので、日本の社債市場の現状の姿が報告書から浮かび上がってくる。
だから、金融関係者や社債市場をこれから学ぼうとする方々には、良質の解説書として役立つだろう。

主要なポイントは、以下の4点だが、簡略化して纏めておく。(※順番は、社債市場活性化の為に重要度ではない。証券業協会の報告書の順)

①証券会社が社債を引き受ける場合の引受審査の見直し
この見直しの要点を簡単に言い切ると、証券会社が社債を引き受ける際の引受審査のスピーディー化だ。証券会社が、社債を引き受ける為には、企業の財務内容に問題ないか開示された資料をもとに判断するが、四半期開示が行われている現状では、一時的に審査確認作業の為、社債を発行出来ない時期が出来てしまう。社債の発行企業としては、良い市場環境の時にタイミング良く発行したいので、証券会社が監査法人と行う確認作業も含めて、審査手順をパターン化してスピーディー化を目指す。

②発行企業が、社債が他の債務に対してどの位劣後しているかの情報を、どの様に開示するか
社債の内容は、社債要項に定められるが、例えば自己資本がここまで減少したら、借り入れがここまで増えたら、社債の返済能力に支障が出る可能性があるので、社債を償還しますということがある。問題はこうした約束が、社債券者とではなく銀行などの他の債務者(銀行ローン借り入れなどによる)となされ、結果として社債券者の知らないところで、資産が劣化する可能性が生じることもある。
投資家としては、これら社債以外の債務に関する約束を公表して欲しいとのニーズが強いが、報告書では、発行企業が公表する内容をパターン化して、発行企業に公表を依頼するところから始めるという。

③社債を投資家の為に管理する社債管理会社の機能の明確化と充実
現状はA格付け以上の機関投資家向け債券(券面1億円以上)であれば、元利払いの実務を行う財務代理人のみで社債は発行できるが、一定以上の社債券者の意向を反映したり、低格付け債(BBB格未満)の発行を促す為、社債管理会社の機能を明確化して、その利用を進めようというのが報告書の要旨だ。この社債管理会社は金融機関が務めるが、発行企業へのローンなど社債券者と利益相反をどの様に遮断していくか重要になってくるので、今後も議論が続くと予想される。

④社債の取引価格情報を市場参加者間で、どの様に共有するか
投資家にとって最も重要なことは、市場情報の共有である。欧米の様に、取引された価格情報が投資家も含めて共有される事を期待していたが、取りあえず以下の様に試験的に試みられるようだ。
・(当分の間)、発行総額500億円以上で、A格以上、過去に一定量以上の取引があった銘柄
・取引価格は、証券会社から日本証券業協会へ当日中に報告、これを公表する
・実施時期は、ほふり(取引決済で価格情報の確認が可能)の新決済システムで対応が整う平成26年1月以降
行わないよりは良いが、一般の事業会社の発行が100~200億円の発行規模であることを考えると、随分限定的に行い、しかも相当実施が後ずれしている。

ここで標題に戻りたいが、この社債市場の活性化は、誰にとって本当に必要だったのだろうか。

社債を買った切りで償還まで保有する日本の機関投資家なのか、銀行の劣後債を粛々と購入する個人投資家なのか、BBB格未満で現状では発行出来ない中堅上場企業なのか、
今一度、誰の為の社債市場の活性化なのか目的を明確化された方が、実施される施策の優先順位と目標達成時期が見えてくるのではないだろうか。
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