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2017/07
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利益相反問題の系譜
 証券会社における利益相反の問題は、議論の奥が深く、かつ実務からみると微妙な論点を含んでいますが、避けて通ることの出来ないものでもあります。世界的な傾向として、金融危機以降は特に市場と投資家の間に立つ証券・金融機関に対して、一般の投資家を意識した利益相反問題が厳格化しているようです。
最近の欧米金融機関によるLIBOR問題や、証券化商品の販売責任問題もそうですし、日本での増資インサイダー問題もある意味ではこの利益相反問題への厳格化の流れが影響しているとも言えます。

 そもそも証券会社の利益相反とは何なのかという事ですが、金融商品取引法には第36条に顧客に対する誠実義務は定められているものの、利益相反に関する特段の定めはありません。ただし、IOSCO(証券監督者国際機構)での定義などから、顧客の利益と証券会社の利益とが衝突する場合、若しくは顧客と他の顧客の利益が衝突する場合という考え方が業界内では一般的です。

例えば、今回の増資インサイダー問題では、法人顧客情報の管理は別にしても、現行の金商法のインサイダー取引規制では、インサイダー情報を第三者に漏洩しただけでは罪になりません。極論すると、特定のファンドにインサイダー情報を流しても、インサイダー取引を行うかどうかはファンドの問題で、インサイダー規制で情報の伝達者を処罰する規制はないのではないかとの見解が一部にありました。
しかし、この問題も証券会社に係る利益相反問題の視点から見直せば、増資インサイダー情報を得たファンドの利益と、増資銘柄を保有する株主及び資金を調達する発行企業の利益が、著しく衝突する処に市場仲介者としての証券会社がいることになります。特定のファンドの利益を優先する証券会社の行為が、市場の他のステーク・ホルダーがいる中で許されるのかということです。野村の首脳陣が見誤ったのは、この証券会社や金融機関による利益相反問題厳格化の流れではないでしょうか。

 4年前に成立し3年前から施行されているファイアーウォール規制緩和においては、この利益相反問題において別の角度から議論されています。ちょうど金融危機を挟んだ時期でしたが、金融業界を覆う雰囲気は欧米の投資銀行に追い付けといったものが中心にあり、その為、日本の証券や金融機関も欧米投資銀行並みの金融サービスを法人に提供すべきだとの規制緩和議論が、学界や行政にもありました。

未公開の法人情報を、証券会社が親銀行と共有することを可能としたり、銀行と証券会社の兼職規制を撤廃しましたが、その際、顧客企業に対する銀行の優先的地位が濫用されないよう、銀行・証券とも利益相反管理体制の整備が求められました。例えば、利益相反事例を上げ顧客企業に示すとか、顧客企業のやり取りは記録に残し5年間保存して、後の検査に対応できるようにしておくなど。インサイダー情報の管理は、当然です。
しかし、SMBC日興においては、未公開のM&A情報が銀行の取引顧客に流れ、複数のインサイダー取引が行われたことが明かになっており、将に利益相反体制の中身が問われています。

 また、法的議論ではありませんが、証券会社のM&Aなどの法人業務においては、顧客間の利益相反問題に配慮しなければならない事が多くあります。例えば、敵対的買収者のアドバイザー業務、ライバル企業間に対するM&Aやファイナンス提案など、相手に利益相反があることを示し、助言を断るのが常道ですが、個々の担当者レベルで判断するのに難しい場合もあり、その際は経営判断になります。

証券会社にとって、利益相反問題は微妙で難しいところがあるのは否定できませんが、この問題に関して市場のステーク・ホルダーが何を求めているか、戦略的に判断することも、また重要なことなのでしょう。
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テーマ : 証券・金融関連業務
ジャンル : ビジネス

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